(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、X軸とY軸とZ軸は、互いに直交する軸を表し、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向は、それぞれ、X軸、Y軸、Z軸に平行な方向を表す。
【0010】
図1は、本開示に係るアンテナの構成の一例を模式的に示す平面図である。
図2は、本開示に係るアンテナの構成の一例を模式的に示す断面図である。
図1,2に示されるアンテナ25は、無線通信機能を備えた電子機器に搭載される。電子機器は、アンテナ25を用いて無線通信を行う。アンテナ25が搭載される電子機器の具体例として、無線端末装置(携帯電話、スマートフォン、IoT(Internet of Things)機器など)や、無線基地局などが挙げられる。
【0011】
アンテナ25は、例えば、第5世代移動通信システム(いわゆる、5G)、ブルートゥース(登録商標)等の無線通信規格、IEEE802.11ac等の無線LAN(Local Area Network)規格に対応する。アンテナ25は、例えば、周波数が3〜30GHzのSHF(Super High Frequency)帯の電波や、周波数が30〜300GHzのEHF(Extremely High Frequency)帯の電波を送受可能に形成されている。アンテナ25は、グランド14を利用する不平衡な伝送線路の終端12に接続される。
【0012】
伝送線路の具体例として、マイクロストリップライン、ストリップライン、グランドプレーン付きコプレーナウェーブガイド(信号線の形成される導体面とは反対側の表面にグランドプレーンが配置されたコプレーナウェーブガイド)、コプレーナストリップラインなどが挙げられる。
【0013】
アンテナ25は、グランド14と、給電素子21と、放射素子22とを備える。
【0014】
グランド14は、グランドプレーンの一例である。グランド外縁14aは、X軸方向に延在し、グランド14の直線的な外縁の一例である。グランド14は、X軸及びY軸を含むXY平面に平行に配置され、例えば、XY平面に平行な基板13に形成されたグランドパターンである。
【0015】
基板13は、誘電体を主成分とする部材である。基板13の具体例として、FR4(Flame Retardant Type4)基板が挙げられる。基板13は、可撓性を有するフレキシブル基板でもよい。基板13は、第1の基板表面と、第1の基板表面とは反対側の第2の基板表面とを有する。例えば、第1の基板表面には、電子回路が実装され、第2の基板表面には、グランド14が形成されている。なお、グランド14は、第1の基板表面に形成されていても、基板13の内部に形成されていてもよい。
【0016】
基板13に実装される電子回路は、例えば、アンテナ25を介して信号を受信する受信機能と、アンテナ25を介して信号を送信する送信機能との少なくとも一方の機能を含む集積回路である。電子回路は、例えば、IC(Integrated Circuit)チップによって実現される。受信機能と送信機能との少なくとも一方の機能を含む集積回路は、通信用ICとも称される。
【0017】
給電素子21は、グランドプレーンを基準とする給電点に接続された第1の共振器の一例である。給電素子21は、伝送線路の終端12に接続されている。終端12は、グランド14をグランド基準とする給電点の一例である。
【0018】
給電素子21は、基板13に配置されてもよいし、基板13以外の箇所に配置されてもよい。給電素子21が基板13に配置されている場合、給電素子21は、例えば、基板13の第1の基板表面に形成された導体パターンである。
【0019】
給電素子21は、グランド14から離れる方向に延伸し、グランド14をグランド基準とする給電点(終端12)に接続されている。給電素子21は、放射素子22に対して非接触で高周波的に結合して給電可能な線状導体である。図面には、グランド外縁14aに対して直角な方向に延在する直線状導体と、グランド外縁14aに並走して延在する直線状導体とによって、L字状に形成された給電素子21が例示されている。図示の場合、給電素子21は、終端12を起点に端部21aから延伸してから曲折部21cで折れ曲がり、先端部21bまで延伸する。先端部21bは、他の導体が接続されていない開放端である。給電素子21は、X軸に平行な方向成分を持つ導体部分を有する。図面には、L字状の給電素子21が例示されているが、給電素子21の形状は、直線状、メアンダ状、ループ状などの他の形状でもよい。
【0020】
放射素子22は、第1の共振器に近接する第2の共振器の一例である。放射素子22は、例えば、給電素子21から離れて配置され、給電素子21が共振することにより放射導体として機能する。放射素子22は、例えば、給電素子21と電磁界結合又は磁界結合することにより非接触に給電されて放射導体として機能する。電磁界結合とは、電磁波による非接触結合を意味する。磁界結合とは、電磁結合又は電磁誘導による非接触結合を意味する。
【0021】
すなわち、本発明では、非接触結合のうち、静電容量結合(単に、静電結合又は容量結合とも称す)は、除かれる。なぜなら、平板コンデンサ間の距離が変動すると静電容量値が変動する場合と同様に、2つの導体間に静電容量結合が発生すると、2つの導体間に形成される静電容量の値は、距離の変動により変動し、静電容量の値の変動により共振周波数も変動するからである。逆にいえば、電磁界結合していれば、距離の変動による共振周波数の変化は好ましくは10%以内、より好ましくは5%以内、さらに好ましくは3%以内に抑えることができる。
【0022】
また、2つの導体間に静電容量結合が発生すると、2つの導体間には変位電流が流れ(平板コンデンサ間に変位電流が流れるのと同じ)、2つの導体は、別々の共振器としてではなく、一体となって1つの共振器として作用するからである。
【0023】
なお、静電容量結合を除くとは、静電容量結合が実質的な結合を支配する態様としては存在していないことを意味し、具体的には、2つの導体がそれぞれ別の共振器として働いている限りにおいて、静電容量結合のことは無視できるとの意味である。
【0024】
放射素子22は、X軸に平行な方向成分を持つ導体部分を有する。例えば、放射素子22は、X軸方向に平行なグランド外縁14aに沿うように延在する導体部分41を有する。導体部分41は、グランド外縁14aから離れて位置する。放射素子22がグランド外縁14aに沿った導体部分41を有することによって、例えば、アンテナ25の指向性を容易に調整することが可能となる。
【0025】
給電素子21と放射素子22は、例えば、互いに電磁界結合可能な距離で離れて配置されている。放射素子22は、給電素子21から給電を受ける給電部を有している。図面には、給電部として、導体部分41が示されている。放射素子22は、給電部で給電素子21を介して電磁界結合によって非接触で給電される。このように給電されることによって、放射素子22は、アンテナ25の放射導体として機能する。
【0026】
放射素子22は、給電素子21によって電磁界結合で非接触に給電されることにより、半波長ダイポールアンテナと同様の共振電流(一方の先端部23と他方の先端部24との間を定在波状に分布する電流)が放射素子22上に流れる。すなわち、放射素子22は、給電素子21によって電磁界結合で非接触に給電されることにより、ダイポールアンテナとして機能する。
【0027】
したがって、放射素子22は給電素子21によって電磁界結合で非接触で給電されるので、バランが無くてもアンテナ25を不平衡の伝送線路に接続することができる。なお、放射素子22が給電素子21によって磁界結合で非接触で給電される形態でも同様に、バランが無くてもアンテナ25を不平衡の伝送線路に接続することができる。また、アンテナの動作周波数が6GHz以上と高周波化すると、通信用ICとアンテナ間の伝送損失を低減するために、アンテナと通信用ICを同一基板上に配置することが考えられる。このような場合、通信用ICからの発熱を考慮したアンテナ基板材料の選定が必要になるが、本技術では、通信用ICとアンテナを物理的に離して接続できるため、アンテナへの熱伝導を防ぐことができ、アンテナ基板(例えば、基材部30)の選択肢を増やすことができる。例えば、耐熱性の低い樹脂などをアンテナ基板材料として使用できる。
【0028】
放射素子22は、誘電性の基材部30に設けられている。基材部30は、例えば、平面部を有する基板である。放射素子22の一部又は全部は、基材部30の表面に設けられてもよいし、基材部30の内部に設けられてもよい。図示の形態では、放射素子22は、基材部30の内側表面(グランド14に対向する表面)に配置されている。また、基材部30は、低誘電損失材料であることが好ましい。このような構成にすることにより、アンテナ性能を向上させることができる。また、基板13上にアンテナを形成する必要がないため、基板13にFR4などの汎用基板材料を利用することが可能となる。
【0029】
アンテナ25は、放射素子22と、導波器50と、反射器60とによって構成された平面八木宇田アンテナを含む構成を有する。放射素子22は、放射器(輻射器)として機能する。導波器50及び反射器60は、給電素子21及び放射素子22から離れて配置された導体エレメントである。
【0030】
アンテナ25は、放射素子22に対して特定の方向(図示の形態では、グランド14に平行なY軸方向の正側)に位置する少なくとも一つの導波器50を備える。導波器50は、X軸に平行な方向成分を持つ導体部分を有する。図面には、2つの導波器51,52が示されている。導波器51,52の各々の長さは、放射素子22の長さよりも短い。導波器は、導波素子とも称する。
【0031】
すなわち、放射素子22、導波素子51、52の長さをそれぞれL
22、L
51、L
52とする。L
51は、L
22の0.8〜0.99倍とすることが好ましく、0.85〜0.95倍とすることがより好ましい。同様に、L
52は、L
51より短くすることが好ましく、L
51の0.8〜0.99倍とすることがより好ましく、0.85〜0.95倍とすることがさらに好ましい。図では、導波素子が2個の場合の例であるが、3個以上でもよく、その場合は、L
51とL
52のような関係を持ちながら、各々の導波素子の長さを漸減させることが好ましい。
【0032】
また、放射素子22と導波素子51、52とは、平行又は略平行に配置することが好ましく、その間隔(2素子間の最短の距離)d
1、d
2は、共振時の波長をλとすると、いずれも0.2〜0.3λとすることが好ましく、0.23〜0.27λとすることがより好ましい。
【0033】
導波器51,52は、基材部30に設けられ、図示の形態では、基材部30の内側表面に配置されている。また、図示の形態では、導波器51,52は、放射素子22と同一の表面に配置されている。
【0034】
アンテナ25は、放射素子22に対して導波器50とは反対側に位置する一つの反射器60を備える。反射器60は、X軸に平行な方向成分を持つ導体部分を有する。図示の形態では、反射器60は、放射素子22及び給電素子21に対して、導波器50とは反対側に位置する。反射器60が放射素子22と給電素子21との両方に対して導波器50とは反対側に位置するので、反射器60が給電素子21に対して放射素子22側に位置する形態に比べて、アンテナ25の小型化が可能となる。反射器は、反射素子とも称する。
【0035】
反射器60の長さは、放射素子22の長さよりも長い。反射器60の長さをL
60とすると、L
60はL
22の1.01〜1.2倍とすることが好ましく、1.05〜1.15倍とすることがより好ましい。また、反射器60と放射素子22とは、平行又は略平行に配置することが好ましく、その間隔(2素子間の最短の距離)d
3は、共振時の波長をλとすると、いずれも0.2〜0.3λとすることが好ましく、0.23〜0.27λとすることがより好ましい。
【0036】
反射器60は、基材部30に設けられ、図示の形態では、基材部30の内側表面に配置される。また、図示の形態では、反射器60は、グランド14に対向するように放射素子22と同一の表面に配置されている。反射器60がグランド14に対向して配置されている。これにより、反射器60がグランド14に対向していない箇所に配置されている形態(例えば、反射器60がグランド外縁14aに対して放射素子22側に位置する形態)に比べて、アンテナ25の小型化が可能となる。
【0037】
このように、アンテナ25は、放射素子22に対して特定の方向(図示の形態では、グランド14に平行なY軸方向の正側)に位置する少なくとも一つの導波器50と、放射素子22に対して導波器50とは反対側に位置する一つの反射器60とを備える。これにより、放射素子22に対して特定の方向(図示の形態では、グランド14に平行なY軸方向の正側)に指向性を有するアンテナ25を実現することができる。特に、放射素子22、導波器50及び反射器60は、それぞれ、グランド14に平行な方向成分を持つ導体部分を有する。したがって、放射素子22に対して特定の方向(図示の形態では、グランド14に平行なY軸方向の正側)において、水平偏波のアンテナ利得を高めることができる。
【0038】
図1,2において、アンテナ25は、放射素子22に対して導波器50とは反対側に位置する反射器60を備える。しかしながら、アンテナ25は、放射素子22に対して導波器50とは反対側に位置するグランド14を反射器として使用してもよい。グランド14を反射器として使用する場合、図示の反射器60は無くてもよい。この場合でも、放射素子22に対して特定の方向(図示の形態では、グランド14に平行なY軸方向の正側)に指向性を有するアンテナ25を実現することができる。また、放射素子22および導波器50は、給電素子21と同一平面上にあってもよい。
【0039】
別の態様としては、導波素子50と放射素子22とを導体31(例えば、携帯機器の筐体など)を挟んで積層してもよい。概略図を
図26に示す。
図26では、導体31の両面に導波器50と放射素子22を積層させたものである。なお、
図26は、導波素子50が1個の例を示すが、導波素子50の個数は、2個以上の複数としてもよい。その場合には導波素子間には誘電体を介在させることが好ましい。導波素子が複数の場合、その間隔は共振時の波長をλとするとき、0.2〜0.3λとすることが好ましく、0.23〜0.27λとすることがより好ましい。また、導波素子と反射素子と放射素子との長さの関係も
図1と同様にすることが好ましい。
【0040】
また、
図27に示すように、導波素子50、放射素子22及び反射素子(又は、グランド14)を平行又は略平行に積層した状態で各素子の相対的な位置関係を調整することにより、指向性を制御することもできる。例えば、
図27のように、各素子のうち一の素子の長さ方向に対して垂直な方向Z1に、各素子の中心を直線状に揃えると、主たる放射方向A1は、その垂直な方向Z1になる。一方、
図28のように、各素子のうち一の素子の長さ方向に対して垂直な方向Z1から、各素子の中心を段階的に離れるようにすることにより、主たる放射方向A1を、その段階的に離していく方向に傾けることができる。
図27の構成を有するアンテナと
図28の構成を有するアンテナとを併用することにより、全方位の方向に放射するアンテナを疑似的に形成できる。
【0041】
<第1の実施例>
図3は、本開示に係るアンテナの第1の実施例を模式的に示す平面図である。
図4は、本開示に係るアンテナの第1の実施例を模式的に示す断面図である。第1の実施例の構成のうち上述の構成と同様の構成についての説明は、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。
【0042】
図3,4において、アンテナ125は、アンテナ25(
図1参照)の一例である。アンテナ125は、グランド114と、給電素子121と、放射素子122と、導波器150と、反射器160とを備える。
【0043】
グランド114は、グランド14(
図1参照)の一例である。グランド外縁114aは、グランド114の直線的な外縁の一例である。グランド114は、例えば、XY平面に平行な基板113に形成されたグランドパターンである。基板113は、基板13(
図1参照)の一例である。給電素子121は、給電素子21(
図1参照)の一例である。給電素子121は、伝送線路の終端112に接続されている。終端112は、グランド114をグランド基準とする給電点の一例である。放射素子122は、放射素子22(
図1参照)の一例である。放射素子122は、給電素子121と電磁界結合することにより非接触に給電されて放射導体として機能する。導波器150は、導波器50(
図1参照)の一例である。図面には、2つの導波器151,152が示されている。反射器160は、反射器60(
図1参照)の一例である。
【0044】
図5は、アンテナ125のリターンロス特性を解析したシミュレーションの一例を示す図である。電磁界シミュレーションとして、Microwave Studio(登録商標)(CST社)が使用される。縦軸は、Sパラメータ(Scattering parameters)の反射係数S11を示す。
【0045】
S11が極小値になる周波数が、インピーダンスマッチングをとることのできる周波数であり、この周波数をアンテナ125の動作周波数(共振周波数)とすることができる。
図5に示されるように、アンテナ125によれば、28GHzを含む帯域で、良好なインピーダンスマッチングが得られる。
【0046】
図6は、アンテナ125において、水平偏波のときの水平面内の指向性を解析したシミュレーション結果の一例を示す図である。
図7は、アンテナ125において、水平偏波のときの垂直面内の指向性を解析したシミュレーション結果の一例を示す図である。
図6,7は、アンテナ125の基本モードの共振周波数f(=28GHz)における指向性利得を表す。
【0047】
図6,7の解析時において、アンテナ125の放射素子122の一方の先端部(給電素子121が近接する側の先端部)を、X軸とY軸とZ軸とが交わる原点とする。φ(Phi)は、X軸及びY軸を含む平面内の任意の方向とX軸とがなす角度を表し、θ(Theta)は、φが指す方向とZ軸とを含む平面内の任意の方向とZ軸とがなす角度を表す。
【0048】
図6,7に示されるように、放射素子122に対してY軸方向の正側に指向性を有するアンテナ125を実現することができる。したがって、グランド114が水平面に平行になるようにアンテナ125が配置されることにより、水平面に平行な方向(水平方向)においてY軸方向の正側の指向性が向上する。よって、Y軸方向の正側から到来又はY軸方向の正側に放射する水平偏波のアンテナ利得(動作利得)を増大させることができる。
【0049】
なお、
図5〜7においてSパラメータ及びアンテナ利得を解析した時において、
図3,4に示された各部の寸法は、単位をmmとすると、
L1:10
L2:4
L3:12
L4:3.6
L5:0.12
L6:3.8
L7:4.2
L8:1.88
L9:1.88
L10:5
L11:1.88
L12:0.94
L13:1.06
L14:0.56
L15:0.12
L16:0.25
L17:0.05
である。また、アンテナ125の各導体のZ軸方向の厚さは、0.018μmである。また、給電点(終端112)には、バランが接続されていない。
【0050】
<第2の実施例>
図8は、本開示に係るアンテナの第2の実施例を模式的に示す平面図である。第2の実施例の構成のうち上述の構成と同様の構成についての説明は、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。
【0051】
図8において、アンテナ225は、給電点が互いに異なる複数のアンテナを備えるMIMO(Multiple Input and Multiple Output)アンテナの一例である。アンテナ225は、2つのアンテナ125A、125Bを有する。アンテナ125A,125Bは、それぞれ、アンテナ125と同じ構成(
図3,4参照)を有する。アンテナ125A,125Bは、X軸方向に並べて配置され、グランド114を共用する。
【0052】
図9は、アンテナ225において、アンテナ125Aとアンテナ125Bとの間の相関係数を解析したシミュレーション結果の一例を示す図である。
図9に示されるように、相関係数は、アンテナ125Aとアンテナ125Bの各々の共振周波数f(=28GHz)を含む帯域において所定値(例えば、0.3)以下の低い状態にある。したがって、アンテナ225を水平偏波用のMIMOアンテナとして機能させることができる。
【0053】
図10は、アンテナ225のリターンロス特性を解析したシミュレーションの一例を示す図である。電磁界シミュレーションとして、Microwave Studio(登録商標)(CST社)が使用される。縦軸は、Sパラメータ(Scattering parameters)の反射係数S11及び伝達係数S12を示す。
【0054】
反射係数S11が極小値になる周波数が、インピーダンスマッチングをとることのできる周波数であり、この周波数をアンテナ125の動作周波数(共振周波数)とすることができる。また、伝達係数S12が極小値になる周波数が、アンテナ間のアイソレーションを高くすることのできる周波数(言い換えれば、アンテナ間の相関係数を低くすることのできる周波数)である。
【0055】
図10において、反射係数S11は、アンテナ125Aの反射特性を表しており、伝達係数S12は、アンテナ125Bからアンテナ125Aへの伝達係数を表す。
図10に示されるように、アンテナ225の共振周波数28GHzを含む帯域(例えば、25〜30GHz)において、反射係数S11及び伝達係数S12が低く抑えられている。したがって、アンテナ225を、共振周波数28GHzでアンテナ125Aとアンテナ125Bとの間のアイソレーションを高くしたMIMOアンテナとして機能させることができる。
【0056】
図11は、アンテナ225において、水平偏波のときの水平面内の指向性を解析したシミュレーション結果の一例を示す図である。
図12は、アンテナ225において、水平偏波のときの垂直面内の指向性を解析したシミュレーション結果の一例を示す図である。
図11,12は、アンテナ225の基本モードの共振周波数f(=28GHz)における指向性利得を表す。
【0057】
図11,12の解析時において、アンテナ125Aの放射素子122の一方の先端部と、アンテナ125Bの放射素子122の一方の先端部との中点を、X軸とY軸とZ軸とが交わる原点とする。両アンテナの各々の一方の先端部とは、給電素子121が近接する側の先端部を表す。φ(Phi)は、X軸及びY軸を含む平面内の任意の方向とX軸とがなす角度を表し、θ(Theta)は、φが指す方向とZ軸とを含む平面内の任意の方向とZ軸とがなす角度を表す。
【0058】
図11,12に示されるように、2つの放射素子122に対してY軸方向の正側に指向性を有するアンテナ225を実現することができる。したがって、グランド114が水平面に平行になるようにアンテナ225が配置されることにより、水平面に平行な方向(水平方向)においてY軸方向の正側の指向性が向上する。よって、Y軸方向の正側から到来又はY軸方向の正側に放射する水平偏波のアンテナ利得(動作利得)を増大させることができる。
【0059】
なお、
図9〜12においてSパラメータ及びアンテナ利得を解析した時において、
図8に示された各部の寸法は、単位をmmとすると、
L1:10
L2:4
L3:12
L20:5.2
L21:1.08
である。それ以外の寸法については、第1の実施例と同じである。また、2つの給電点(終端112)には、バランが接続されていない。
【0060】
<第3の実施例>
図13は、本開示に係るアンテナの第3の実施例を模式的に示す斜視図である。
図14は、本開示に係るアンテナの第3の実施例を模式的に示す平面図である。
図15は、本開示に係るアンテナの第3の実施例を模式的に示す側面図である。第3の実施例の構成のうち上述の構成と同様の構成についての説明は、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。
【0061】
図13〜15において、アンテナ325は、アンテナ25(
図1参照)の一例である。アンテナ325は、グランド114と、給電素子321と、放射素子322と、導波器350と、反射器360とを備える。
【0062】
グランド114は、グランド14(
図1参照)の一例である。グランド外縁114aは、グランド114の直線的な外縁の一例である。グランド114は、例えば、XY平面に平行な基板113に形成されたグランドパターンである。基板113は、基板13(
図1参照)の一例である。給電素子321は、給電素子21(
図1参照)の一例である。給電素子321は、伝送線路の終端312に接続されている。終端312は、グランド114をグランド基準とする給電点の一例である。放射素子322は、放射素子22(
図1参照)の一例である。放射素子322は、給電素子321と電磁界結合することにより非接触に給電されて放射導体として機能する。導波器350は、導波器50(
図1参照)の一例である。図面には、1つの導波器350が示されている。反射器360は、反射器60(
図1参照)の一例である。
【0063】
アンテナ325において、放射素子322、導波器350及び反射器360は、それぞれ、グランド114の法線方向に平行な方向成分を持つ導体部分322b,360b,350bを有する。これにより、放射素子22に対して特定の方向(図示の形態では、グランド114に平行なY軸方向の正側)において、垂直偏波のアンテナ利得を高めることができる。
【0064】
図示の形態では、放射素子322、導波器350及び反射器360は、それぞれ、U字状(J字状を含む)の導体である。それぞれのU字状の開口部は、Y軸方向の負側に向けて開口し、具体的には、放射素子322に対して反射器360が配置されている側に向けて開口している。
【0065】
放射素子322は、Z軸方向に対向する一対の導体部分322a,322cと、一対の導体部分322a,322cのY軸方向の正側の端部のそれぞれを接続する導体部分322bとを有する。一対の導体部分322a,322cは、Y軸方向に延在し、導体部分322bは、Z軸方向に延在する。
【0066】
導波器350は、Z軸方向に対向する一対の導体部分350a,350cと、一対の導体部分350a,350cのY軸方向の正側の端部のそれぞれを接続する導体部分350bとを有する。一対の導体部分350a,350cは、Y軸方向に延在し、導体部分350bは、Z軸方向に延在する。
【0067】
反射器360は、Z軸方向に対向する一対の導体部分360a,360cと、一対の導体部分360a,360cのY軸方向の正側の端部のそれぞれを接続する導体部分360bとを有する。一対の導体部分360a,360cは、Y軸方向に延在し、導体部分360bは、Z軸方向に延在する。
【0068】
図13〜15において、アンテナ325は、放射素子322に対して導波器350とは反対側に位置する反射器360を備える。しかしながら、アンテナ325は、放射素子322に対して導波器350とは反対側に位置するグランド114を反射器として使用してもよい。グランド114を反射器として使用する場合、図示の反射器360は無くてもよい。この場合でも、放射素子322に対して特定の方向(図示の形態では、グランド14に平行なY軸方向の正側)に指向性を有するアンテナ325を実現することができる。
【0069】
図16は、アンテナ325のリターンロス特性を解析したシミュレーションの一例を示す図である。電磁界シミュレーションとして、Microwave Studio(登録商標)(CST社)が使用される。縦軸は、Sパラメータ(Scattering parameters)の反射係数S11を示す。
【0070】
S11が極小値になる周波数が、インピーダンスマッチングをとることのできる周波数であり、この周波数をアンテナ325の動作周波数(共振周波数)とすることができる。
図16に示されるように、アンテナ325によれば、28GHzを含む帯域で、良好なインピーダンスマッチングが得られる。
【0071】
図17は、アンテナ325において、垂直偏波のときの垂直面内の指向性を解析したシミュレーション結果の一例を示す図である。
図18は、アンテナ125において、垂直偏波のときの水平面内の指向性を解析したシミュレーション結果の一例を示す図である。
図17,18は、アンテナ325の基本モードの共振周波数f(=28GHz)における指向性利得を表す。
【0072】
図17,18の解析時において、放射素子322、導波器350及び反射器360を含むYZ平面とグランド外縁114aとの交点を、X軸とY軸とZ軸とが交わる原点とする。φ(Phi)は、X軸及びY軸を含む平面内の任意の方向とX軸とがなす角度を表し、θ(Theta)は、φが指す方向とZ軸とを含む平面内の任意の方向とZ軸とがなす角度を表す。
【0073】
図17,18に示されるように、放射素子322に対してY軸方向の正側に指向性を有するアンテナ325を実現することができる。したがって、グランド114が水平面に平行になるようにアンテナ325が配置されることにより、水平面に平行な方向(水平方向)においてY軸方向の正側の指向性が向上する。よって、Y軸方向の正側から到来又はY軸方向の正側に放射する垂直偏波のアンテナ利得(動作利得)を増大させることができる。
【0074】
なお、
図16〜18においてSパラメータ及びアンテナ利得を解析した時において、
図14,15に示された各部の寸法は、単位をmmとすると、
L1:10
L2:4
L3:12
L30:0.5
L31:0.12
L32:1
L33:1.61
L34:0.89
L35:1.61
L36:0.89
L37:1.61
L38:1.62
L39:0.191
である。それ以外の寸法については、第1の実施例と同じである。また、給電点(終端312)には、バランが接続されていない。
【0075】
<第4の実施例>
図19は、本開示に係るアンテナの第4の実施例を模式的に示す斜視図である。
図20は、本開示に係るアンテナの第4の実施例を模式的に示す平面図である。第4の実施例の構成のうち上述の構成と同様の構成についての説明は、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。
【0076】
図19,20において、アンテナ425は、給電点が互いに異なる複数のアンテナを備えるMIMOアンテナの一例である。アンテナ425は、2つのアンテナ325A、325Bを有する。アンテナ325A,325Bは、それぞれ、アンテナ325と同じ構成(
図13〜15参照)を有する。アンテナ325A,325Bは、X軸方向に並べて配置され、グランド114を共用する。
【0077】
図21は、アンテナ425において、アンテナ425Aとアンテナ425Bとの間の相関係数を解析したシミュレーション結果の一例を示す図である。
図21に示されるように、相関係数は、アンテナ325Aとアンテナ325Bの各々の共振周波数f(=28GHz)を含む帯域において所定値(例えば、0.3)以下の低い状態にある。したがって、アンテナ425を垂直偏波用のMIMOアンテナとして機能させることができる。
【0078】
図22は、アンテナ425のリターンロス特性を解析したシミュレーションの一例を示す図である。電磁界シミュレーションとして、Microwave Studio(登録商標)(CST社)が使用される。縦軸は、Sパラメータ(Scattering parameters)の反射係数S11及び伝達係数S12を示す。
【0079】
反射係数S11が極小値になる周波数が、インピーダンスマッチングをとることのできる周波数であり、この周波数をアンテナ425の動作周波数(共振周波数)とすることができる。また、伝達係数S12が極小値になる周波数が、アンテナ間のアイソレーションを高くすることのできる周波数(言い換えれば、アンテナ間の相関係数を低くすることのできる周波数)である。
【0080】
図22において、反射係数S11は、アンテナ325Aの反射特性を表しており、伝達係数S12は、アンテナ325Bからアンテナ325Aへの伝達係数を表す。
図22に示されるように、アンテナ425の共振周波数28GHzを含む帯域(例えば、25〜30GHz)において、反射係数S11及び伝達係数S12が低く抑えられている。したがって、アンテナ425を、共振周波数28GHzでアンテナ325Aとアンテナ325Bとの間のアイソレーションを高くしたMIMOアンテナとして機能させることができる。
【0081】
なお、
図21,22においてSパラメータ及びアンテナ利得を解析した時において、
図20に示された各部の寸法は、単位をmmとすると、
L1:10
L2:4
L3:12
L40:2
L41:1.38
である。それ以外の寸法については、第1の実施例と同じである。また、2つの給電点(終端312)には、バランが接続されていない。
【0082】
<第5の実施例>
図23は、本開示に係るアンテナの第5の実施例を模式的に示す平面図である。第5の実施例の構成のうち上述の構成と同様の構成についての説明は、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。
【0083】
図23において、アンテナ525は、給電点が互いに異なる複数のアンテナを備えるMIMOアンテナの一例である。アンテナ525は、2つのアンテナ125C、325Cを有する。アンテナ125Cは、アンテナ125と同じ構成(
図3,4参照)を有する第1のアンテナの一例である。アンテナ325Cは、アンテナ325と同じ構成(
図13〜15参照)を有する第2のアンテナの一例である。アンテナ125C,325Cは、X軸方向に並べて配置され、グランド114を共用する。
【0084】
アンテナ125Cにおいて、放射素子122、導波器150及び反射器160は、それぞれ、グランド114に平行な方向成分を持つ導体部分を有する。一方、アンテナ325Cにおいて、放射素子322、導波器350及び反射器360は、それぞれ、グランド114の法線方向に平行な方向成分を持つ導体部分を有する。
【0085】
図24は、アンテナ525において、アンテナ125Cとアンテナ325Cとの間の相関係数を解析したシミュレーション結果の一例を示す図である。
図24に示されるように、相関係数は、アンテナ125Cとアンテナ325Cの各々の共振周波数f(=28GHz)を含む帯域において所定値(例えば、0.3)以下の低い状態にある。したがって、アンテナ525を水平偏波用と垂直偏波用の両方に対応可能なMIMOアンテナとして機能させることができる。
【0086】
図25は、アンテナ525のリターンロス特性を解析したシミュレーションの一例を示す図である。電磁界シミュレーションとして、Microwave Studio(登録商標)(CST社)が使用される。縦軸は、Sパラメータ(Scattering parameters)の反射係数S11,S22及び伝達係数S12,S21を示す。
【0087】
反射係数S11,S22が極小値になる周波数が、インピーダンスマッチングをとることのできる周波数であり、この周波数をアンテナ425の動作周波数(共振周波数)とすることができる。また、伝達係数S12,S21が極小値になる周波数が、アンテナ間のアイソレーションを高くすることのできる周波数(言い換えれば、アンテナ間の相関係数を低くすることのできる周波数)である。
【0088】
図25において、反射係数S11,S22は、それぞれ、アンテナ125C,325Cの反射特性を表す。伝達係数S12は、アンテナ325Cからアンテナ125Cへの伝達係数を表す。伝達係数S21は、アンテナ125Cからアンテナ325Cへの伝達係数を表す。
図25に示されるように、アンテナ525の共振周波数28GHzを含む帯域(例えば、25〜30GHz)において、反射係数S11,S22及び伝達係数S12,S21が低く抑えられている。したがって、アンテナ525を、共振周波数28GHzでアンテナ125Cとアンテナ325Cとの間のアイソレーションを高くしたMIMOアンテナとして機能させることができる。
【0089】
なお、
図24,25においてSパラメータ及びアンテナ利得を解析した時において、
図23に示された各部の寸法は、単位をmmとすると、
L1:10
L2:4
L3:12
L50:1.38
である。それ以外の寸法については、第1の実施例及び第3の実施例と同じである。また、2つの給電点(終端112,312)には、バランが接続されていない。
【0090】
以上、アンテナ及びMIMOアンテナを実施形態により説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。他の実施形態の一部又は全部との組み合わせや置換などの種々の変形及び改良が、本発明の範囲内で可能である。
【0091】
本国際出願は、2017年4月27日に出願した日本国特許出願第2017−088786号に基づく優先権を主張するものであり、日本国特許出願第2017−088786号の全内容を本国際出願に援用する。