(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6927346
(24)【登録日】2021年8月10日
(45)【発行日】2021年8月25日
(54)【発明の名称】水質分析方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/18 20060101AFI20210812BHJP
G01N 21/59 20060101ALI20210812BHJP
【FI】
G01N33/18 Z
G01N21/59 Z
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2020-28487(P2020-28487)
(22)【出願日】2020年2月21日
【審査請求日】2020年9月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】角田 和彦
【審査官】
高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】
特開2018−119885(JP,A)
【文献】
特開2015−184273(JP,A)
【文献】
特開2010−181150(JP,A)
【文献】
特開2014−186027(JP,A)
【文献】
特開2019−174173(JP,A)
【文献】
特開2003−307521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/00 − 33/46
G01N 31/00 − 31/22
G01N 35/00 − 37/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定セル内のサンプル水による吸光又は散乱を発光体及び受光体によって測定する水質分析装置を用いる水質分析方法において、
測定セル内のサンプル水を測定後に排出すると共に、
測定セル内の残留サンプル水量が所定量以下になった後に測定セル内に洗浄水を供給して測定セルを洗浄する水質分析方法であって、
該サンプル水が硬度成分を含み、
該洗浄水がアルカリ性の洗浄剤を含み、
該測定セルは、下部に該サンプル水の流入口を有すると共に、上部に該洗浄水の供給口を有し、
該測定セル内の測定後のサンプル水を、該サンプル水の流入口から該測定セルより排出することを特徴とする水質分析方法。
【請求項2】
前記測定セル内の残留サンプル水の量が測定セルの容積の10%以下になった後に洗浄水を測定セル内に供給することを特徴とする請求項1の水質分析方法。
【請求項3】
前記測定セル内にサンプル水を供給する供給管が接続されており、
測定セル内のサンプル水の水位が該供給管の接続部分以下になった後に洗浄水を測定セル内に供給することを特徴とする請求項1又は2の水質分析方法。
【請求項4】
サンプル水の供給管に測定試薬の添加部が設けられていることを特徴とする請求項3の水質分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水質分析方法に係り、特に、比色法または比濁法を測定原理とする水質分析装置を用いた水質分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オンライン型の水質分析計においては、測定セルにサンプル水を注入し、測定項目に応じた測定試薬を添加し発色または白濁させ、測定試薬添加前後の吸光度の変化を測定する事によりサンプル水中の薬剤濃度を算出している(特許文献1,2)。
【0003】
この水質分析計にあっては、サンプル水中のSSまたは微生物が測定セル内で堆積または繁殖し、測定セル内壁が汚染(ファウリング)され、吸光度を測定するセンサーが正常な値を検出できなくなることがある。
【0004】
すなわち、従来では、測定セル内部に通水速度は2〜5cm/secで通水している。この通水速度では測定セル内部に一度付着したSSは剥離しないため測定セル内部に滞留してしまう。また、微生物由来のファウリングも流速が低いため、剥離せず、測定セル壁面上で繁殖してしまう。
【0005】
特許文献3には、かかる問題点を解決する水質分析方法として、測定セル内のサンプル水による吸光又は散乱を発光体及び受光体によって測定する水質分析装置を用いる水質分析方法において、測定セル内のサンプル水を測定サイクル毎に排出する水質分析方法が記載されている。なお、特許文献3には、測定セルからのサンプルの排出方法として、サンプル供給用ポンプを逆回転させる方法が記載されている。
【0006】
この特許文献3の水質分析方法によると、通水セル内部のメンテナンス頻度を少なくすることができる。しかし、完全に通水セル内の汚れを除去することはできないため、定期的なメンテナンスが必要であった。例えば、測定セルを洗浄するために、洗浄剤を測定セルに注入すると、洗浄剤がアルカリ性の場合、サンプル水中の硬度成分が析出してセル内面に付着するため、定期的なメンテナンスが必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−181150号公報
【特許文献2】特開2014−186027号公報
【特許文献3】特開2019−174173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、セル内面のファウリングによる測定誤差発生を防ぐことができると共に、メンテナンスの頻度を低減することができる水質分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の水質分析方法は、測定セル内のサンプル水による吸光又は散乱を発光体及び受光体によって測定する水質分析装置を用いる水質分析方法において、測定セル内のサンプル水を測定後に排出すると共に、測定セル内の残留サンプル水量が所定量以下になった後に測定セル内に洗浄水を供給して測定セルを洗浄することを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様では、前記測定セル内の残留サンプル水の量が測定セルの容積の10%以下になった後に洗浄水を測定セル内に供給する。
【0011】
本発明の一態様では、前記測定セル内にサンプル水を供給する供給管が接続されており、測定セル内のサンプル水の水位が該供給管の接続部分以下になった後に洗浄水を測定セル内に供給する。
【0012】
本発明の一態様では、サンプル水の供給管に測定試薬の添加部が設けられている。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、測定後に測定セル内を洗浄水で洗浄することにより測定セル内部のファウリングを防止し、精度の高い水質測定を行うことができる。
【0014】
本発明では、測定セル内の残留サンプル水が規定量以下(全量排出を含む。)となった後に洗浄水を測定セル内に供給するので、洗浄水中の洗浄薬成分とサンプル水とが反応して析出物が析出することが防止され、析出物による測定セル内部のファウリングが防止される。
【0015】
また、測定セル内部のサンプル水の残留量が少なくなってから洗浄水を供給することにより、洗浄水へのサンプル水の混入が抑制され、測定セル内部の洗浄効率が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施の形態に係る水質分析装置の概略的な断面図である。
【
図2】本発明方法の一例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1を参照して実施の形態について説明する。測定セル1は、下部にサンプル水の流入口2を有し、上部にサンプル水の流出口3を有する。測定セル1の一方の側面は透明部4となっており、該透明部4の反対側のセル内面は白色の反射面5となっている。透明部4の外部を覆うようにカバー8が設けられ、該カバー8内に、発光ダイオード等よりなる発光体6と、フォトダイオード等よりなる受光体7とが設けられている。発光体6からの光がセル1内のサンプル水を透過し、反射面5で反射され、サンプル水を透過して受光体7で受光され、吸光度が測定される。セル1の容積は0.3〜3.0mL特に0.5〜1.0mL程度が好適であるが、これに限定されない。
【0018】
サンプル水の流入口2にサンプル水の供給管9が接続されている。該供給管9に第1試薬の注入管11と第2試薬の注入管12とが接続されている。
【0019】
測定セル1の上部に、洗浄水の供給口16が設けられている。該供給口16に、バルブ14を有した洗浄水供給配管15が接続されている。
【0020】
サンプル水は、ポンプ例えばチューブポンプ10から供給管9を介して測定セル1に供給される。供給管9を流れる間に第1及び第2試薬をそれぞれ定量的に添加し、吸光度を測定する。
【0021】
測定サイクル毎にチューブポンプ10を逆回転させて測定セル1内の水を一旦排出する。この際、測定セル1内の残留サンプル水量が規定量以下となった後に測定セル1内に洗浄水を供給して測定セル1を洗浄する。
【0022】
このように測定セル1内の残留サンプル水量が規定量以下となった後に測定セル1内に洗浄水を供給して測定セル1を洗浄することにより、サンプル水中の硬度成分と洗浄剤成分との反応による、洗浄剤注入点での析出(詰まり)を防止することができる。すなわち、洗浄水注入時のサンプル水と洗浄水とが混合することによるサンプル水中の硬度成分の析出がなくなるため、高濃度の洗浄剤含有洗浄水を測定セル1に注入した場合であっても、洗浄水供給口16付近が詰まりにくくなる。これにより、効率の良い測定セル1の洗浄と長期安定稼働が可能となる。さらに、洗浄剤含有洗浄水が残留サンプル水で薄まることなく、高濃度のまま測定セル1内に供給されるので、洗浄効果を高くすることが可能となる。
【0023】
この実施の形態では、サンプル水は測定セル1内に下部から導入し、測定セル1上部から流出するようにしているところから、測定セル1内の下部に汚れ等が溜まる。しかし、チューブポンプ10の通水方向を反転させることにより、測定セル1内の下部に溜まった汚れや試薬を含むサンプル水を排出することができる。また、測定セル1内の水位が減少することに伴い、測定セル1内に負圧が発生し、試薬の供給流路内に残った試薬も一緒に排水することができる。これにより、洗浄水を注入した際に試薬成分が析出する問題を解消することができる。
【0024】
本手法での測定シーケンスの一例を
図2に示す。
【0025】
本発明でも、特許文献3と同様に、セル1内のサンプル水の線速度が6cm/sec以上、例えば6〜20cm/sec好ましくは6〜10cm/secとなるようにサンプル水量を制御するのが好ましい。このようにサンプル水の線速度を6cm/sec以上とすることにより、測定セル1のファウリングが防止される。即ち、6cm/sec以上の通水速度にすることで、水流の剪断力により測定セル内壁に付着したファウリング物質はセル内壁から剥離し測定セル外に放出される。また測定セル内の通水速度を上げることにより発生する乱流もファウリング物質の剥離に寄与している。
【0026】
なお、測定を行っている間、継続してサンプル水線速度を6cm/sec以上としてもよく、測定に先だってサンプル水線速度を6cm/sec以上とし、測定時にはサンプル水線速度をそれよりも低い値(停止も含む。)として測定を行ってよい。
【0027】
上記測定セル1は反射面5を有しているが、セル1の両側面を透明部とし、一方の透明部の外側に発光体を配置し、他方の透明部の外側に受光体を配置してもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 測定セル
5 反射面
6 発光体
7 受光体
9 サンプル水の供給管
10 チューブポンプ
16 洗浄水供給口
【要約】 (修正有)
【課題】セル内面のファウリングによる測定誤差発生を防ぐことができると共に、メンテナンスの頻度を低減することができる水質分析方法を提供する。
【解決手段】測定セル1内のサンプル水による吸光又は散乱を発光体6及び受光体7によって測定する水質分析装置を用いる水質分析方法において、測定セル1内のサンプル水を測定後に排出すると共に、測定セル1内の残留サンプル水量が所定量以下になった後に測定セル1内に洗浄水を供給して測定セルを洗浄する。
【選択図】
図1