(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本開示を制限するものではない。
【0011】
本開示において「〜」を用いて示された数値範囲には、「〜」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、各成分には、該当する物質が複数種含まれていてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において、各成分に該当する粒子には、複数種の粒子が含まれていてもよい。組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、各成分の粒子径は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
本開示において「層」又は「膜」との語には、当該層又は膜が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
本開示において、各層の厚みは、ミクロトーム等を用いて測定対象から試験片を作製し、電子顕微鏡により任意の5箇所の厚みを測定して得られた算術平均値をいう。
【0012】
<装飾品>
本開示の第一の装飾品は、基材と、前記基材上に設けられた銀粒子を含む銀粒子層と、を有し、前記銀粒子層の表面抵抗率が、10
4Ω/□以上であり、前記銀粒子が、前記銀粒子層中において前記銀粒子層の厚み方向に積み重なっているものである。
また、本開示の第二の装飾品は、基材と、前記基材上に設けられた銀粒子を含む銀粒子層と、を有し、前記銀粒子層の表面抵抗率が、10
7Ω/□以上とされたものである。
以下、本開示の第一の装飾品及び第二の装飾品を合わせて本開示の装飾品と称することがある。
本開示の装飾品は、ミリ波レーダーの透過性に優れる。その理由は明確ではないが、以下のように推察される。
本開示の第一の装飾品では、基材上に銀粒子を含む銀粒子層が設けられるところ、銀粒子層の表面抵抗率が、10
4Ω/□以上であり、且つ、銀粒子が、前記銀粒子層中において前記銀粒子層の厚み方向に積み重なっていることから、銀粒子層を構成する銀粒子と銀粒子との間は、適度な空隙が形成された状態となりやすい。
同様に、本開示の第二の装飾品では、基材上に銀粒子を含む銀粒子層が設けられるところ、銀粒子層の表面抵抗率が10
7Ω/□以上であると、銀粒子層を構成する銀粒子と銀粒子との間は、適度な空隙が形成された状態となりやすい。
銀粒子と銀粒子との間に形成された空隙をミリ波レーダーが通過することで、ミリ波レーダーの透過性を確保可能となる。そのため、本開示の装飾品はミリ波レーダーの透過性に優れると推察される。
【0013】
以下、本開示の装飾品を構成する各部材について説明する。本開示の装飾品は基材と銀粒子層とを有し、必要に応じてその他の層を有してもよい。
【0014】
−基材−
本開示の装飾品は、基材を有する。
基材の材質は特に限定されず、ガラス等の無機材料、樹脂等の有機材料などを用いることができる。樹脂としては、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0015】
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ビニル系ポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ABS樹脂(アクリロニトリル(Acrylonitrile)−ブタジエン(Butadiene)−スチレン(Styrene)共重合樹脂)、ポリエステル、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0016】
熱硬化性樹脂としては、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂等が挙げられる。
【0017】
装飾品をエンブレム等の自動車部品に用いる場合には、基材の材質としては、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ABS樹脂等を用いることが好ましい。ポリプロピレンは、樹脂の中でも比重が軽く、加工しやすく、引張強度、衝撃強度及び圧縮強度が高く、耐候性及び耐熱性にも優れている。ABS樹脂は、プラスチック素材の中でも比較的表面処理を施しやすく、よって基材の成形後に塗装等を施しやすい樹脂であり、耐薬品性及び剛性に優れ、耐衝撃性、耐熱性及び耐寒性にも長けている。ポリカーボネートは、プラスチック素材の中でも耐衝撃性が高く、耐候性及び耐熱性にも優れ、透明性にも長けている。また、ポリカーボネートは、加工もしやすく、プラスチック素材の中でも比較的軽く、丈夫な素材である。
【0018】
基材の厚みは、装飾品の用途に応じて適宜設計できる。基材の形状も特に制限されない。
【0019】
−銀粒子層−
本開示の装飾品は、銀粒子を含む銀粒子層を有する。
銀粒子層は、銀鏡反応により形成されたものであってもよい。また、銀粒子層に含まれる銀粒子は、銀鏡反応により析出した銀粒子(析出銀粒子)を含んでもよい。さらに、銀粒子層は、銀粒子が島状に点在する海島構造を呈していてもよい。
第一の装飾品が有する銀粒子層では、銀粒子が、銀粒子層中において銀粒子層の厚み方向に積み重なっている。一方、第二の装飾品が有する銀粒子層では、銀粒子が、銀粒子層中において銀粒子層の厚み方向に積み重なっていてもよいし、積み重なっていなくともよい。
銀鏡反応による銀粒子層の形成は、水溶性銀塩水溶液並びに還元剤及び強アルカリ成分を含む還元剤水溶液の2液を、基材表面上又は後述するアンダーコート層表面上(以下、基材表面及び後述するアンダーコート層表面を、合わせて「銀鏡反応処理面」と称する場合がある。)で混合されるように塗布する。これにより酸化還元反応が生じて銀粒子が生じ、銀粒子層が形成される。
【0020】
銀粒子層の形成に用いられる水溶性銀塩水溶液は、硝酸銀等の水溶性銀塩と、アンモニアと、アミノアルコール化合物、アミノ酸及びアミノ酸塩からなる群より選択される少なくとも1種のアミン化合物と、を水中に溶解して得られる。
アミン化合物の具体例としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等のアミノアルコール化合物、グリシン、アラニン、グリシンナトリウム等のアミノ酸又はその塩などが挙げられる。
【0021】
水溶性銀塩水溶液に含まれる硝酸銀等の水溶性銀塩の含有率、アンモニアの含有率及びアミン化合物の含有率は特に限定されるものではない。
【0022】
水溶性銀塩水溶液は、必要に応じて添加剤等のその他の成分を含有してもよい。
添加剤の種類は特に限定されるものではなく、界面活性剤等の従来から公知の添加剤を用いることができる。界面活性剤としては、一分子中に、「親水性」の部位と「親油性」の部位とを有する化合物が挙げられ、界面活性剤として上市された材料を用いることもできる。
添加剤としては、アニオン系化合物、カチオン系化合物、非イオン系化合物、両性系化合物、多価カルボン酸等が挙げられる。
アニオン系化合物に含まれる親水性部位としては、カルボキシ基(COO
−)、スルホン酸基(SO
3−)、硫酸エステル構造、リン酸エステル構造等が挙げられる。カチオン系化合物に含まれる親水性部位としては、アミン塩構造、4級アンモニウム塩(NR
4+)構造等が挙げられる。非イオン系化合物に含まれる親水性部位としては、酸化エチレン付加重合体(PEO)構造、ポリオール構造等が挙げられる。両性系化合物は、アニオン系化合物に含まれる親水性部位及びカチオン系化合物に含まれる親水性部位を一分子中に含むものである。両性系化合物は、pHによりアニオン又はカチオンのどちらかの性質を示すことがある。
添加剤としては、アニオン系化合物であることが好ましく、リン酸エステル構造を含む化合物であることがより好ましい。
【0023】
リン酸エステル構造を含む化合物は、下記一般式(I)で表される化合物とリン酸とのエステル化物を含むことが好ましい。
【0025】
一般式(I)において、Rは炭素数が10〜20の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表し、炭素数が10〜15の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましい。nは1又は2以上の整数を表す。
Rの具体例としては、n−デシル基、n−ドデシル基、n−ペンタデシル基、n−エイコシル基等の直鎖状アルキル基、(CH
3)
2CH−(CH
2)
m−で表されるイソアルキル基(mは7〜17の整数を表す。)等が挙げられる。
リン酸エステル構造を含む化合物は、下記一般式(IA)で表される化合物と、リン酸とのエステル化物を含むことがより好ましい。一般式(IA)において、nは1又は2以上の整数を表し、1又は2が好ましく1がより好ましい。
【0027】
水溶性銀塩水溶液に必要に応じて含まれる上述の添加剤含有率は、0.05質量%〜20質量%であることが好ましく、1質量%〜10質量%であることがより好ましく、1質量%〜5質量%であることがさらに好ましい。
【0028】
銀粒子層の形成に用いられる還元剤水溶液は、還元剤と強アルカリ成分とを水中に溶解して得られる。
還元剤の具体例としては、硫酸ヒドラジン、炭酸ヒドラジン、ヒドラジン水和物等のヒドラジン化合物、亜硫酸ナトリウム等の亜硫酸塩化合物、チオ硫酸ナトリウム等のチオ硫酸塩化合物などが挙げられる。
強アルカリ成分の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
還元剤水溶液は、必要に応じて上述のアミン化合物を含有してもよい。
還元剤水溶液は、必要に応じてホルミル基を含む化合物を含有してもよい。ホルミル基を含む化合物の具体例としては、グルコース、グリオキサール等が挙げられる。
還元剤水溶液に含まれる還元剤の含有率及び強アルカリ成分の含有率並びに必要に応じて含有されるアミン化合物の含有率及びホルミル基を含む化合物の含有率は特に限定されるものではない。
【0029】
還元剤水溶液は、必要に応じて添加剤を含有してもよい。還元剤水溶液に使用可能な添加剤は、水溶性銀塩水溶液の場合と同様である。
還元剤水溶液に必要に応じて含まれる添加剤の含有率は、0.05質量%〜20質量%であることが好ましく、1質量%〜10質量%であることがより好ましく、1質量%〜5質量%であることがさらに好ましい。
【0030】
水溶性銀塩水溶液及び還元剤水溶液の2液を、銀鏡反応処理面上で混合されるように塗布する方法としては、2種の水溶液を予め混合し、この混合液をスプレーガン等を用いて銀鏡反応処理面に吹き付ける方法、スプレーガンのヘッド内で2種の水溶液を混合して直ちに吐出する構造を有する同芯スプレーガンを用いて吹き付ける方法、2種の水溶液を2つのスプレーノズルを持つ2頭スプレーガンから各々吐出させ吹き付ける方法、2種の水溶液を2つの別々のスプレーガンを用いて、同時に吹き付ける方法等がある。これらは状況に応じて任意に選ぶことができる。
【0031】
銀鏡反応により銀粒子層を形成する場合、水溶性銀塩水溶液及び還元剤水溶液の2液を塗布する前に、銀鏡反応処理面に対して表面活性化処理が行われてもよい。表面活性化処理は、無機スズ化合物を含有する表面活性化処理液を銀鏡反応処理面に付与して第一スズイオンを銀鏡反応処理面に付着させるものである。その後、表面活性化処理した銀鏡反応処理面に、銀鏡反応により銀粒子層を形成させることができる。
【0032】
無機スズ化合物を含有する表面活性化処理液で銀鏡反応処理面を処理する処理方法としては、基材を表面活性化処理液中に浸漬する方法、銀粒子層を形成させる銀鏡反応処理面の表面に表面活性化処理液を塗布する方法等が挙げられる。表面活性化処理液の塗布方法としては、基材の形状を選ばないスプレー塗布が好適である。表面活性化処理後、銀鏡反応処理面に余分に付着した表面活性化処理液を脱イオン水又は精製蒸留水で洗浄することが好ましい。
【0033】
表面活性化処理液は、塩化スズ(II)、酸化スズ(II)、硫酸スズ(II)等の無機スズ化合物と、必要に応じて塩化水素、過酸化水素、多価アルコール等とを水中に溶解して得られる。表面活性化処理液に含有されるこれら成分の含有率は特に限定されない。
【0034】
表面活性化処理液により銀鏡反応処理面を処理した後、銀鏡反応により銀粒子層を形成する前に、硝酸銀等の水溶性銀塩を含有する処理液を用いて銀イオンによる活性化処理を行ってもよい。この活性化処理で用いる処理液中の水溶性銀塩の含有率は特に限定されない。
この処理液を、表面活性化処理液で処理された銀鏡反応処理面に接触させる。これら活性化処理には、基材の形状を選ばないスプレー塗布が好適である。
【0035】
銀鏡反応により銀粒子層を形成した後、脱イオン水、蒸留水等を用いて銀粒子層の表面を水洗し、その表面上に残留する銀鏡反応後の溶液等を取り除いてもよい。
さらに、銀粒子層中の銀と、塩化物イオン、硫化物イオン等の残留イオンとの反応活性を低下させるため、水酸化カリウム等の強アルカリ成分と亜硫酸ナトリウム等の亜硫酸塩とを含む水溶液である不活性化処理液で銀粒子層を処理してもよい。不活性化処理には、基材の形状を選ばないスプレー塗布が好適である。
不活性化処理液で銀粒子層を処理した後、脱イオン水、蒸留水等を用いて銀粒子層の表面を水洗し、その表面上に残留する不活性化処理液の残渣を取り除いてもよい。
【0036】
不活性化処理液に含まれる強アルカリ成分の含有率及び亜硫酸塩の含有率は、特に限定されない。
【0037】
銀粒子層の厚みは特に制限されず、30nm〜200nm程度であることが好ましい。
【0038】
銀粒子層の厚み方向の断面を観察したときに、銀粒子層に占める銀粒子の割合は、95%以下であることが好ましく、70%以下であることがより好ましく、60%〜65%であることがさらに好ましい。銀粒子層に占める銀粒子の割合が95%以下であると、ミリ波レーダーの透過性がより向上する傾向にある。
【0039】
銀粒子層に占める銀粒子の割合とは、以下のようにして測定された値をいう。
装飾品における銀粒子層の厚み方向の断面について、30万倍の倍率で透過型電子顕微鏡写真を撮影する。得られた電子顕微鏡写真に対して、銀粒子層の厚み方向の中央を通る中央線を決定する。次いで、中央線と銀粒子とが重複する部分の長さを求める。中央線と銀粒子とが重複する部分の長さを中央線全体の長さで除した値の百分率を、銀粒子層に占める銀粒子の割合と定義する。
【0040】
第一の装飾品では、銀粒子層の表面抵抗率は、10
4Ω/□以上であり、10
5Ω/□以上であることが好ましく、10
6Ω/□以上であることがより好ましい。
第二の装飾品では、銀粒子層の表面抵抗率は、10
7Ω/□以上であり、2×10
7Ω/□以上であることが好ましく、5×10
7Ω/□以上であることがより好ましい。
なお、銀粒子層の表面抵抗率の上限は、特に限定されるものではないが、10
10Ω/□以下であってもよい。
銀粒子層の表面抵抗率は、JIS K6911:2006に準じて測定された値をいう。
【0041】
銀粒子層の表面抵抗率は、例えば、水溶性銀塩水溶液又は還元剤水溶液のpH又は濃度を調整するか、水溶性銀塩水溶液及び還元剤水溶液の塗布時間を調整することで、調整することができる。
【0042】
銀粒子層に含まれる銀粒子と基材との間には、スズが存在していてもよい。銀粒子と基材との間にスズが存在することで、基材と銀粒子との密着性が向上する傾向にある。
銀粒子と基材との間に存在するスズは、上述の表面活性化処理により銀鏡反応処理面上に供給されたものである。
【0043】
−アンダーコート層−
基材と銀粒子層との密着性を向上させる観点、及び、基材に平滑面を形成する観点から、基材と銀粒子層との間に、アンダーコート層が設けられてもよい。
【0044】
アンダーコート層の形成には、フッ素樹脂塗料、ポリエステル樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、メラミン樹脂塗料、シリコーン樹脂塗料、アクリルシリコーン樹脂塗料、アクリルウレタン樹脂塗料等を用いてもよく、アクリルシリコーン樹脂塗料又はアクリルウレタン樹脂塗料を用いることが好ましい。アクリルシリコーン樹脂塗料は、基材に対する付着性に優れ、光沢保持性及び保色性が高く、耐薬品性、耐油性及び耐水性にも優れている。アクリルウレタン樹脂塗料は、塗膜が柔らかく、密着性に優れ、耐久性、耐候性及び耐薬品性にも優れている。これらの樹脂塗料は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
アンダーコート層の厚みは特に制限されず、平滑面を確保する観点からは、5μm〜25μm程度であることが好ましい。
【0046】
アンダーコート層と基材との密着性を高めるために、アンダーコート層と基材との間にプライマー層を設けてもよい。
【0047】
−トップコート層−
銀粒子層の保護を目的として、銀粒子層上にトップコート層が設けられてもよい。
トップコート層は、装飾品の最外面に設けられる層であり、トップコート層によって銀粒子層が保護されやすくなる。
トップコート層としては、銀粒子層を隠蔽しない透明性を有することが好ましく、無色クリア(無色透明)であっても、着色されたカラークリア(有色透明)であってもよい。
【0048】
トップコート層の形成には、樹脂塗料を用いることができ、熱硬化性樹脂を用いてもよい。熱硬化性樹脂としては、フッ素樹脂塗料、ポリエステル樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、メラミン樹脂塗料、シリコーン樹脂塗料、アクリルシリコーン樹脂塗料、アクリルウレタン樹脂塗料等が挙げられ、アクリルシリコーン樹脂塗料又はアクリルウレタン樹脂塗料を用いることが好ましい。アクリルシリコーン樹脂塗料は、基材に対する付着性、光沢保持性、保色性、耐薬品性、耐油性及び耐水性に優れている。アクリルウレタン樹脂塗料は、塗膜が柔らかく、密着性に優れ、耐久性、耐候性及び耐薬品性にも優れている。これらの樹脂塗料は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
トップコート層の厚みは特に限定されず、20μm〜40μm程度であることが好ましい。トップコート層の厚みが20μm以上であると、銀粒子層を充分保護できる傾向にあり、40μm以下であると、経時変化によるクラック、剥がれ、密着不良等が発生しにくい傾向にある。
【0050】
本開示の装飾品はミリ波レーダーの透過性に優れるため、本開示の装飾品を自動車のエンブレムに適用した場合に、自動車のエンブレムの後側に配置されたミリ波レーダーの送受信機の性能に影響を与えにくい。
【0051】
<銀鏡膜形成液>
本開示の銀鏡膜形成液は、水溶性銀塩とアンモニアとアミン化合物と添加剤とを含有する水溶性銀塩溶液と、還元剤と強アルカリ成分とを含有する還元剤水溶液と、を含む。
水溶性銀塩溶液に含有される水溶性銀塩、アミン化合物、添加剤、各成分の含有率等は、上述の通りである。
還元剤水溶液に含有される還元剤、強アルカリ成分、必要に応じて含有されるその他の成分、各成分の含有率等は、上述の通りである。
本開示の銀鏡膜形成液は、自動車のエンブレム等のほか、その他の内外装品の部品にも展開可能である。
【実施例】
【0052】
以下、本開示の実施例を説明するが、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
【0053】
<実施例1A>
(アンダーコート層の形成)
縦:70mm、横:150mm、厚み:2mmの平面状ポリカーボネート基材を準備し、IPA(イソプロピルアルコール)を含ませたウエスで基材の表面を脱脂及び洗浄し、油膜、汚れ及び塵埃を除去し、その後、基材を乾燥した。
また、アクリル樹脂系塗料と、希釈シンナーと、イソシアネート系の硬化剤とを所定量で配合し、これらを撹拌し、アンダーコート層用組成物を調製した。
調製したアンダーコート層用組成物を基材にスプレーガンで吹き付け、80℃に設定した乾燥炉内にて1時間乾燥し、平均厚み15μmのアンダーコート層を形成した。
【0054】
(銀粒子層の形成)
アンダーコート層が形成された基材を純水でスプレー洗浄した後、無機スズ化合物を含有する表面活性化処理液をスプレー塗布し、純水による充分なスプレー洗浄の後、水溶性銀塩を含有する処理液を塗布して、銀鏡析出の活性化処理を施した。そして、2頭スプレーガンにて、リン酸エステル構造を含む化合物を添加した水溶性銀塩水溶液と還元剤水溶液の2液を一定時間塗布し、銀鏡反応による銀粒子層を形成した。その後、純水でスプレー洗浄を行い、不活性化処理液を塗布し、さらに純水によるスプレー洗浄を行った。そして、銀粒子層表面の水分を除去するため、圧縮空気(エアブロー)を吹き付けた後、乾燥炉内で乾燥した。
【0055】
銀粒子層の形成された基材の断面を、カッターを用いて切り出し、切り出した断面をステンレスカッターでトリミングし、その後、ウルトラミクロトームにより、ダイヤモンドナイフを用いて超薄断面切片を作製した。その切片を、透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、JEM−2100)を用いて撮影した。得られた電子顕微鏡写真の一例を
図1に示す。
図1中の点線は、銀粒子層の厚み方向の中央を通る中央線である。撮影条件は、倍率30万倍、及びビーム強度200kVとした。得られた電子顕微鏡写真に基づいて銀粒子層に占める銀粒子の割合を求めたところ、62.8%であった。なお、電子顕微鏡写真における相対的に明度の低い部分が銀粒子を示す。
図1から、銀粒子が島状に分布して海島構造が形成されており、銀粒子が銀粒子層の厚み方向に積み重なっていることがわかる。
さらに、銀粒子層の表面抵抗率を低抵抗率計(商品名:ロレスタEP、ダイヤインスツルメンツ社)を用いて四探針法によって測定したところ、6.8×10
7Ω/□であった。
【0056】
(トップコート層の形成)
アクリル樹脂系塗料と、希釈用シンナーと、硬化剤とを所定量で配合し、これらを撹拌し、トップコート層用組成物を調製した。
【0057】
銀粒子層を乾燥した後、自然冷却して、装飾品の温度が室温(25℃)になったことを確認した後、調製したトップコート層用組成物をスプレーガンで吹き付け、80℃に設定した乾燥炉内にて30分乾燥し、平均厚み25μmのトップコート層を形成し、実施例1Aの装飾品を得た。
【0058】
[評価]
−ミリ波透過減衰量の測定−
得られた装飾品について、下記方法によりミリ波(76.575GHz)を装飾品に透過させた際の減衰量を測定したところ、透過減衰量は0.89dBであった。
透過減衰量は、JIS R1679:2007(電波吸収体のミリ波帯における電波吸収特性測定方法)で規定される、送信アンテナと受信アンテナの間に試料を置いて電磁波を試料へ垂直に照射する自由空間法で求められた透過波(透過係数)から算出した。
ここで、透過減衰量は、透過係数を用いて次式より算出できる。
透過減衰量=20log
10(透過係数)
【0059】
<比較例1A>
銀鏡反応を生じさせる際に、水溶性銀塩水溶液にリン酸エステル構造を含む化合物を添加しなかった以外は実施例1Aと同様にして比較例1Aの装飾品を得た。
得られた装飾品を、実施例1Aと同様に評価したところ、減衰量は49.35dBであった。
なお、比較例1Aにおいて、銀鏡反応により形成された層では、銀粒子が密集した状態となっていた。
さらに、銀鏡反応により形成された層の表面抵抗率を実施例1Aと同様にして測定したところ、4.0×10
−1Ω/□であった。
【0060】
<実施例1B>
実施例1Aにおいて、2頭スプレーガンにて、水溶性銀塩水溶液と還元剤水溶液の2液の塗布時間を1.5倍に変更した以外は実施例1Aと同様にして実施例1Bの装飾品を得た。
得られた装飾品を、実施例1Aと同様に評価したところ、減衰量は0.929dBであった。
なお、実施例1Bにおいて、銀鏡反応により形成された層では、銀粒子が島状に分布して海島構造が形成されており、銀粒子が銀粒子層の厚み方向に積み重なっていた。
さらに、銀鏡反応により形成された層の表面抵抗率を実施例1Aと同様にして測定したところ、2.4×10
6Ω/□であった。
【0061】
<実施例2B>
実施例1Aにおいて、2頭スプレーガンにて、水溶性銀塩水溶液と還元剤水溶液の2液の塗布時間を1.8倍に変更した以外は実施例1Aと同様にして実施例2Bの装飾品を得た。
得られた装飾品を、実施例1Aと同様に評価したところ、減衰量は0.912dBであった。
なお、実施例2Bにおいて、銀鏡反応により形成された層では、銀粒子が島状に分布して海島構造が形成されており、銀粒子が銀粒子層の厚み方向に積み重なっていた。
さらに、銀鏡反応により形成された層の表面抵抗率を実施例1Aと同様にして測定したところ、8.1×10
5Ω/□であった。
【0062】
<実施例3B>
実施例1Aにおいて、2頭スプレーガンにて、水溶性銀塩水溶液と還元剤水溶液の2液の塗布時間を2.0倍に変更した以外は実施例1Aと同様にして実施例3Bの装飾品を得た。
得られた装飾品を、実施例1Aと同様に評価したところ、減衰量は0.917dBであった。
なお、実施例3Bにおいて、銀鏡反応により形成された層では、銀粒子が島状に分布して海島構造が形成されており、銀粒子が銀粒子層の厚み方向に積み重なっていた。
さらに、銀鏡反応により形成された層の表面抵抗率を実施例1Aと同様にして測定したところ、5.5×10
4Ω/□であった。
【0063】
<比較例1B>
実施例1Aにおいて、2頭スプレーガンにて、水溶性銀塩水溶液と還元剤水溶液の2液の塗布時間を2.2倍に変更した以外は実施例1Aと同様にして比較例1Bの装飾品を得た。
得られた装飾品を、実施例1Aと同様に評価したところ、減衰量は1.027dBであった。
なお、比較例1Bにおいて、銀鏡反応により形成された層では、銀粒子が島状に分布して海島構造が形成されており、銀粒子が銀粒子層の厚み方向に積み重なっていた。
さらに、銀鏡反応により形成された層の表面抵抗率を実施例1Aと同様にして測定したところ、2.2×10
3Ω/□であった。
【0064】
2019年6月21日に出願された国際特許出願PCT/JP2019/024748号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に援用されて取り込まれる。