(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
対物レンズにより試料面上に電子ビームの焦点が合わされている状態で、第1段目と第2段目と第3段目の環状の多段電極を用いて、前記第2段目の電極に印加する正の第1の電位を可変にし、前記第1段目の電極に印加する第2の電位と前記第3段目の電極に印加する第3の電位とを固定にして、前記試料面の凹凸に応じてダイナミックに前記電子ビームの焦点を調整する工程と、
前記第1段目の電極に印加する前記第2の電位を前記第1の電位よりも高い正の電位にして、前記第2段目の電極の光軸側に浮遊する低エネルギー成分の電子を前記第1段目の電極側に排除する工程と、
を備えたことを特徴とする電子ビームのダイナミックフォーカス調整方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
試料面から反射した反射電子等を試料面に戻さないようにできることから、2段目の電極に正の電位を印加する方法が検討されている。しかし、対物レンズによる磁場の強度が大きくなるのに伴い、静電レンズの中央部の空間に電子が閉じ込められ、負の空間電位が形成され、電子ビームの軌道に影響を与えるといった問題が生じてきた。かかる問題は、描画装置に限るものではなく、電子ビームを照射する装置について同様の問題が生じ得る。
【0007】
そこで、本発明の一態様では、電子ビームの軌道に影響を与える負の空間電位が形成されないようにしながらダイナミックフォーカス調整が可能な装置および方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様の電子ビーム照射装置は、
電子ビームを放出する放出源と、
電子ビームを試料面上の所望の位置に偏向する偏向器と、
電子ビームを試料面上に結像する対物レンズと、
電子ビームの光軸に沿って偏向器よりも下流側であって対物レンズの磁場中に配置され、中心部に電子ビームが通過する第1の開口部が形成された、正の第1の電位が可変に印加される環状の第1の電極と、
対物レンズの磁場中であって、偏向器と第1の電極との間に配置され、中心部に電子ビームが通過する第2の開口部が形成された、第1の電位よりも高い正の第2の電位が印加される環状の第2の電極と、
対物レンズの磁場中であって、第1の電極に対して第2の電極とは反対側に配置され、中心部に電子ビームが通過する第3の開口部が形成された、第1の電位よりも低い第3の電位が印加される環状の第3の電極と、
を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、偏向器と第2の電極との間に配置され、負の電位が印加される環状の第4の電極をさらに備えると好適である。
【0010】
また、第2の電極は、第1の電極よりも中心軸上の磁束密度が低い位置の対物レンズの磁場中に配置されると好適である。
【0011】
また、第2の電極の裏面側にオゾンを供給する供給部をさらに備えると好適である。
【0012】
本発明の一態様の電子ビームのダイナミックフォーカス調整方法は、
対物レンズにより試料面上に電子ビームの焦点が合わされている状態で、第1段目と第2段目と第3段目の環状の多段電極を用いて、第2段目の電極に印加する正の第1の電位を可変にし、第1段目の電極に印加する第2の電位と第3段目の電極に印加する第3の電位とを固定にして、試料面の凹凸に応じてダイナミックに電子ビームの焦点を調整する工程と、
第1段目の電極に印加する第2の電位を第1の電位よりも高い正の電位にして、第2段目の電極の光軸側に浮遊する低エネルギー成分の電子を第1段目の電極側に排除する工程と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、電子ビームの軌道に影響を与える負の空間電位が形成されないようにしながらダイナミックフォーカス調整ができる。その結果、高精度な描画を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施の形態では、電子ビーム照射装置の一例として、電子ビーム描画装置について説明する。但し、電子ビーム照射装置は、描画装置に限るものではなく、例えば、検査装置等の電子ビームを照射する装置であれば構わない。また、実施の形態では、1本の電子ビームにより構成されるシングルビームが照射される構成について説明する。但し、電子ビームは、シングルビームに限るものではなく、複数本の電子ビームにより構成されるマルチビームであっても構わない。また、電子ビーム描画装置の一例として、可変成形型の描画装置について説明する。
【0016】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における描画装置の構成を示す概念図である。
図1において、描画装置100は、描画機構150と制御系回路160を備えている。描画装置100は、電子ビーム描画装置の一例である。特に、可変成形型(VSB型)の描画装置の一例である。描画機構150は、電子鏡筒102と描画室103を備えている。電子鏡筒102内には、電子銃201、照明レンズ202、ブランキング偏向器(ブランカー)212、ブランキングアパーチャ基板214、第1の成形アパーチャ基板203、投影レンズ204、偏向器205、第2の成形アパーチャ基板206、対物レンズ207、偏向器208、及び静電レンズ220が配置されている。描画室103内には、少なくともXY方向に移動可能なXYステージ105が配置される。XYステージ105上には、レジストが塗布された描画対象となる試料101(基板)が配置される。試料101には、半導体装置を製造するための露光用のマスクやシリコンウェハ等が含まれる。マスクにはマスクブランクスが含まれる。
【0017】
制御系回路160は、制御計算機110、メモリ112、偏向制御回路120、レンズ制御回路122、ダイナミックフォーカス制御回路124、及び磁気ディスク装置等の記憶装置140,142を有している。制御計算機110、メモリ112、偏向制御回路120、レンズ制御回路122、ダイナミックフォーカス制御回路124、及び記憶装置140,142は、図示しないバスを介して互いに接続されている。偏向制御回路120には、偏向器208が接続され、制御される。また、偏向制御回路120には、図示していないが、ブランキング偏向器212、及び偏向器205が接続され、制御される。レンズ制御回路122には、対物レンズ207が接続され、制御される。また、レンズ制御回路122には、図示していないが、照明レンズ202、及び投影レンズ204が接続され、制御される。ダイナミックフォーカス制御回路124には、静電レンズ220が接続され、制御される。
【0018】
制御計算機110内に必要な入力データ或いは演算された結果はその都度メモリ112に記憶される。
【0019】
チップパターンのデータが定義されたチップデータが描画装置100の外部から入力され、記憶装置140に格納されている。
【0020】
ここで、
図1では、実施の形態1を説明する上で必要な構成を記載している。描画装置100にとって、通常、必要なその他の構成を備えていても構わない。
【0021】
図2は、実施の形態1における各領域を説明するための概念図である。
図2において、試料101の描画領域10は、偏向器208の偏向可能幅で、例えばy方向に向かって短冊状に複数のストライプ領域20に仮想分割される。各ストライプ領域20は、メッシュ状に複数のサブフィールド(SF)30(副偏向領域)に仮想分割される。そして、各SF30の各ショット位置にショット図形32,34がそれぞれ描画される。
【0022】
描画処理を行う場合、制御計算機110は、偏向制御回路120、レンズ制御回路122、ダイナミックフォーカス制御回路124、及び描画機構150等を制御して、描画処理を開始する。制御計算機110では、記憶装置140に格納されたチップデータ(描画データ)を読み出し、チップデータ内の複数の図形パターンを図形パターン毎に描画装置100で成形可能なサイズの複数のショット図形に分割し、ショット図形毎にショットデータを生成する。ショットデータには、図形種、図形のショット位置座標、及びショットサイズ等が定義される。生成されたショットデータは、記憶装置142に格納される。
そして、描画機構150は、偏向制御回路120、レンズ制御回路122、及びダイナミックフォーカス制御回路124による制御のもと、各ショット位置に、電子ビーム200を用いてパターンを描画する。具体的には、以下のように動作する。
【0023】
電子銃201(放出源)から放出された電子ビーム200は、ブランキング偏向器212内を通過する際にブランキング偏向器212によって、例えば、ビームONの状態では、ブランキングアパーチャ基板214を通過するように制御され、ビームOFFの状態では、ビーム全体がブランキングアパーチャ基板214で遮へいされるように偏向される。ビームOFFの状態からビームONとなり、その後ビームOFFになるまでにブランキングアパーチャ基板214を通過した電子ビーム200が1回の電子ビームのショットとなる。ブランキング偏向器212は、通過する電子ビーム200の向きを制御して、ビームONの状態とビームOFFの状態とを交互に生成する。例えば、ビームONの状態では電圧を印加せず、ビームOFFの際にブランキング偏向器212に電圧を印加すればよい。かかる各ショットの照射時間で試料101に照射される電子ビーム200のショットあたりの照射量が調整されることになる。
【0024】
以上のようにブランキング偏向器212とブランキングアパーチャ基板214を通過することによって生成された各ショットの電子ビーム200は、照明レンズ202により矩形の穴を持つ第1の成形アパーチャ基板203全体を照明する。ここで、電子ビーム200をまず矩形に成形する。そして、第1の成形アパーチャ基板203を通過した第1のアパーチャ像の電子ビーム200は、投影レンズ204により第2の成形アパーチャ基板206上に投影される。偏向器205によって、かかる第2の成形アパーチャ基板206上での第1のアパーチャ像は偏向制御され、ビーム形状と寸法を変化させる(可変成形を行なう)ことができる。かかる可変成形はショット毎に行なわれ、通常ショット毎に異なるビーム形状と寸法に成形される。そして、第2の成形アパーチャ基板206を通過した第2のアパーチャ像の電子ビーム200は、対物レンズ207により焦点を合わせられる。言い換えれば、第2のアパーチャ像の電子ビーム200は、対物レンズ207により試料101面上に結像される。なお、静電レンズ220によって照射位置の凹凸面に沿ってダイナミックに焦点調整される。そして、第2のアパーチャ像の電子ビーム200は、偏向器208によって試料101面上の所望の位置に偏向される。言い換えれば、第2のアパーチャ像の電子ビーム200は、偏向器208によって連続的に移動するXYステージ105に配置された試料101の所望する位置に照射される。以上のように、偏向器によって、電子ビーム200の複数のショットが順に基板となる試料101上へと偏向される。
【0025】
なお、試料101面の凹凸は、図示しないZセンサ等により予め試料面上の凹凸分布を測定しておけばよい。或いは、図示しないZセンサ等により試料面上の凹凸高さをリアルタイムに測定しながら、凹凸に応じて焦点位置をダイナミックに調整してもよい。測定データはダイナミックフォーカス制御回路124に出力され、かかるデータに沿って、焦点位置が補正される。
【0026】
図3は、実施の形態1における対物レンズ付近の配置構成および磁場の一例を示す図である。
図3(b)では、紙面のサイズの都合上対物レンズ断面が光軸に対して左側(片側)だけを示している。
図3(b)において、対物レンズ207は、ポールピース218が電子ビームの光軸の下流側に開口するように配置され、ポールピース218内部にコイル217が配置される。ポールピース218が光軸の下流側に開口する場合、対物レンズ207が励磁された場合で生じる軸上磁場は、
図3(a)に示すように、ポールピース218開口部の若干光軸上流側から下流側に向かって徐々に大きくなり、試料面101面付近で最大値を経て、徐々に小さくなる。静電レンズ220は、かかる対物レンズ207の磁場中に配置される。
【0027】
図3(b)において、静電レンズ220は、例えば第1段目の電極222、第2段目の電極224、及び第3段目の電極226といった3段の環状の多段電極により構成される。
図3(a)及び
図3(b)に示すように、第2段目の電極224(第1の電極)は、電子ビームの光軸に沿って偏向器208よりも下流側であって対物レンズ207の磁場中に配置され、中心部に電子ビーム200が通過する開口部(第1の開口部)が形成される。第2段目の電極224は、ダイナミックフォーカス用の制御電極となる。また、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、第1段目の電極222(第2の電極)は、対物レンズ207の磁場中であって、偏向器208と電極224との間に配置され、中心部に電子ビーム200が通過する開口部(第2の開口部)が形成される。なお、第1段目の電極222(第2の電極)は、第2段目の電極224(第1の電極)よりも中心軸上の磁束密度が低い位置の対物レンズ207の磁場中に配置される。そして、第1段目の電極222は、偏向器208と第2段目の電極224との間の制限アパーチャ基板を兼ねる。第3段目の電極226(第3の電極)は、対物レンズ207の磁場中であって、電極224に対して電極222とは反対側に配置され、中心部に電子ビーム200が通過する開口部(第3の開口部)が形成される。また、第3段目の電極222は、第2段目の電極224と試料101との間の対物アパーチャ基板を兼ねる。また、
図3(b)に示すように、第2段目の電極224に対して、第1段目の電極222と第3段目の電極226のz方向の厚さを薄くしても良い。同程度の厚さでも構わない。静電レンズとしての機能上は、第2段目の電極224に対して、第1段目の電極222と第3段目の電極226のz方向の厚さを厚くしても構わない。
【0028】
図4は、実施の形態1の比較例における対物レンズの磁場内の状態の一例を示す図である。実施の形態1の比較例では、図示しない対物レンズの磁場内に第1段目の電極302、第2段目の電極304、及び第3段目の電極306で構成される静電レンズ300を配置する。実施の形態1の比較例では、試料101面、第1段目の電極302、及び第3段目の電極306にグランド電位を印加した状態で、第2段目の電極304に正の電位を可変に印加することによって、フォーカス調整を行う。
図4において、第1段目の電極302の開口部を通過した入射電子は、試料面や、第3段目の電極306に衝突して低エネルギーの2次電子を生じる。また、静電レンズ中央部に存在する中性ガスが電離して、やはり低エネルギーの電子やイオン(正、負)を生じる。第2段目の電極304に正の電位を印加することにより、試料面に衝突して生じた2次電子等が試料面に戻ることを回避できる。しかし、以下のような問題が生じる。
【0029】
図5は、実施の形態1の比較例における対物レンズの磁場内の状態の一例を示す上面図である。
図5では、第2段目の電極304の中間高さ位置を上方から見た場合を示している。
図5において、対物レンズによる磁場の向きは光軸の下流側(−z方向)に向いている。また、電場の向きはx,y軸面内において光軸に向いている。かかる状態において、上述した低エネルギーの2次電子を含む電子や同じく低エネルギーのイオン(正、負)は、対物レンズによる磁場によってx,y方向(横方向)の移動が制限される。また、これらの低エネルギーの電子やイオンは、z方向(高さ方向)には、電位差によって移動が制限される。そのため、
図5に示すように、第2段目の電極304の中央空間内で旋回しながらドリフトする。
【0030】
例えば、運動エネルギーが1eVの電子の速度は、5.9×10
5m/s程度、同じく1eVの水素原子の速度は、約1.4×10
4m/s程度となる。そして、磁束密度1kGの磁場中で1eVの電子のラーマー半径ρは、約0.03mm程度、同じく1eVの水素原子のラーマー半径ρは、約1.5mm程度となる。ここで、第2段目の電極304の中央の開口半径が例えば5mm程度とすると、低エネルギーの電子やイオンは、ラーマー半径ρが開口半径よりも小さいため電極304の内壁には当たらず、磁場によってトラップされ、中央空間内で旋回することになる。その結果、これらの低エネルギーの電子や負イオンは、第2段目の電極304の中央空間に閉じ込められる。よって、電極304の中央空間に負の空間電位が形成される。かかる負の空間電位によって、描画のための入射電子の軌道が影響を受け、試料面101上の照射位置の位置ずれを生じさせることになる。そこで、実施の形態1では、かかる負の空間電位を排除する。
【0031】
図6は、実施の形態1における対物レンズの磁場内の状態の一例を示す図である。実施の形態1では、図示しない対物レンズ207の磁場内に上述したように第1段目の電極222、第2段目の電極224、及び第3段目の電極226で構成される静電レンズ220を配置する。実施の形態1では、第2段目の電極224に、正の電位(第1の電位)を可変に印加する。一方、第1段目の電極222には、第2段目の電極224に印加される正の電位(第1の電位)よりも高い正の電位(第2の電位)が印加される。そして、試料101面、及び第3段目の電極226には、グランド電位が印加される。第2段目の電極224に印加される正の電位が、例えば0〜+100Vの範囲で可変に制御される場合に、第1段目の電極222には、かかる範囲よりも高い例えば+150Vの電位が印加される。第1段目の電極222の電位と第3段目の電極226の電位とが固定された状態で、第2段目の電極224の電位に正の電位を可変に印加することによって、高速にダイナミックにフォーカス調整を行うことができる。
【0032】
図6においても、
図4と同様、第1段目の電極222の開口部を通過した入射電子は、試料101面や、第3段目の電極226に衝突して低エネルギーの2次電子を生じる。また、静電レンズ220中央部の中性ガスが電離して、やはり低エネルギーの電子やイオン(正、負)を生じる。しかし、実施の形態1では、第2段目の電極224に印加される正の電位よりも高い正の電位が第1段目の電極222に印加されているので、負の電荷を持つ低エネルギー成分の電子や負イオンは、上方の第1段目の電極222に引き付けられ、吸収される。その結果、電極304の中央空間に負の空間電位が形成されない、或いは小さくなるようにできる。なお、低エネルギーの正イオンはその量が少なく、電場により補足されにくいいため影響は無視できる。
【0033】
よって、実施の形態1の電子ビームのダイナミックフォーカス調整方法では、ダイナミックフォーカス工程として、対物レンズ207により試料101面上に電子ビーム200の焦点が合わされている状態で、第1段目と第2段目と第3段目の環状の多段電極を用いて、第2段目の電極224に印加する正の電位を可変にし、第1段目の電極222に印加する電位と第3段目の電極226に印加する電位とを固定にして、試料101面の凹凸に応じてダイナミックに電子ビーム200の焦点を調整する。
【0034】
そして、低エネルギー成分除去工程として、第1段目の電極222に印加する電位を第2段目の電極224に印加する電位よりも高い正の電位にして、第2段目の電極224の光軸側に浮遊する負の低エネルギー成分11の電子や負イオンを第1段目の電極222側に排除する。
【0035】
以上のように、実施の形態1によれば、電子ビーム200の軌道に影響を与える負の空間電位が形成されないようにしながらダイナミックフォーカス調整ができる。その結果、高精度な描画を行うことができる。
【0036】
実施の形態2.
図7は、実施の形態2における対物レンズの磁場内の状態の一例を示す図である。実施の形態2では、
図7に示すように、実施の形態1の構成に、さらに、オゾン(O
3)供給装置126とオゾン(O
3)供給口230を配置する。その他の描画装置100の構成は
図1と同様である。また、以下、特に説明する点以外の内容は実施の形態1と同様である。
【0037】
オゾン(O
3)供給装置126は、制御計算機110によって制御される。また、オゾンを供給するO
3供給口230(供給部)は、
図7に示すように、静電レンズ220内の第1段目の電極222(第2の電極)の裏面側に配置する。上述したように、第2段目の電極224の光軸側に浮遊する低エネルギー成分の電子や負イオンを第1段目の電極222側に引き付ける。そして、第1段目の電極222裏面に負の低エネルギー成分11の電子や負イオンを衝突させる。かかる衝突によって、電極222には、不純物(コンタミ)13が付着してしまう。そこで、実施の形態2では、電極222裏面にオゾンガスを供給する。かかるオゾンガスによって、付着したコンタミ13を洗浄すると共に、コンタミ13の付着自体を抑制できる。
【0038】
実施の形態3.
図8は、実施の形態3における対物レンズの磁場内の状態の一例を示す図である。実施の形態3では、
図8に示すように、静電レンズ220内の第1段目の電極222の代わりに外周形状を光軸下流側に向かって先細りする円錐形状にした第1段目の電極223を配置する。その他の描画装置100の構成は
図1と同様である。また、以下、特に説明する点以外の内容は実施の形態1と同様である。
【0039】
実施の形態3では、電極223の位置の中心軸上の磁束密度は第1段目の電極222の位置の中心軸上の磁束密度よりも小さくし、第1段目の電極223の外周形状を試料面に向かって密になる磁力線形状に沿った形状にする。かかる形状により、第1段目の電極223への負の低エネルギー成分11の電子や負イオンの衝突位置を第2段目の電極224から遠くできる。そのため、仮に付着したコンタミによる電場が形成された場合でも、かかる電場の影響を小さくできる。
【0040】
実施の形態4.
図9は、実施の形態4における対物レンズの磁場内の状態の一例を示す図である。実施の形態4では、
図9に示すように、実施の形態4における静電レンズ220は、第1段目の電極222の上方に、さらに、環状のリターディング電極228(第4の電極)を配置する。具体的には、偏向器208と第1段目の電極222(第2の電極)との間にリターディング電極228(第4の電極)を配置する。リターディング電極228には、負の電位が印加される。その他の描画装置100の構成は
図1と同様である。また、以下、特に説明する点以外の内容は実施の形態1と同様である。
【0041】
かかる構成により、第1段目の電極222に引き付けられ、電極222中央の開口部を通過してしまった負の低エネルギー成分11の電子や負イオンを、リターディング電極228の負電位で向きを反転させ、電極222上面に衝突させることができる。これにより、静電レンズ220の上方に配置された偏向器208に低エネルギー成分の電子や負イオンが衝突することを回避或いは低減できる。その結果、偏向器208へのコンタミの付着を回避或いは低減できる。よって、付着したコンタミによる電場に起因した偏向ずれを回避或いは低減できる。
【0042】
実施の形態5.
図10は、実施の形態5における対物レンズの磁場内の状態の一例を示す図である。実施の形態5では、
図10に示すように、第1段目の電極222裏面を、例えば内外周が六角形に形成された筒状の正六角柱を隙間なく並べたハニカム構造50に形成する。或いは、第1段目の電極222裏面を、凹凸を持ったコルゲート構造に形成する。同様に、第2段目の電極224の内壁を例えば内外周が六角形に形成された筒状の正六角柱を隙間なく並べたハニカム構造52に形成する。或いは、第2段目の電極224内壁を、凹凸を持ったコルゲート構造に形成する。その他の描画装置100の構成は
図1と同様である。また、以下、特に説明する点以外の内容は実施の形態1と同様である。
【0043】
かかる構成により、電極222裏面に負の低エネルギー成分11の電子や負イオンが衝突した場合に反転させずにトラップ(捕集)できる。同様に、電極224内壁に負の低エネルギー成分11の電子や負イオンが衝突した場合に反転させずにトラップ(捕集)できる。
【0044】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。
【0045】
また、静電レンズ220を構成する各電極は、例えば金属材等の導電性材料を用いる。或いは、第1段目の電極222、及び/或いは第2段目の電極224をカーボン(C)材で構成しても好適である。カーボン(C)材を用いることで、2次電子の発生を抑制できる。
【0046】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。例えば、描画装置100を制御する制御部構成については、記載を省略したが、必要とされる制御部構成を適宜選択して用いることは言うまでもない。
【0047】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての電子ビーム照射装置及び電子ビームのダイナミックフォーカス調整方法は、本発明の範囲に包含される。