【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年1月28日 ウェブサイトにて公開 https://www.nissui.co.jp/news/20200128.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
タンパク質と脂質と水分とを含有し、かつ、流動性を有する混合物を、加熱部と該加熱部に続く非加熱部とを有する筒体の中を移動させながら、内部加熱方式により連続的に加熱凝固して成形させる熱凝固タンパク質加工食品を切断刃にて動的切断を行って切断することにより複数本の麺状体とする、麺状体集合体の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように熱凝固タンパク質加工食品の麺状体集合体は、麺状体同士がコンパクトに粘着していないと、集合体が不均一で嵩張ることになり、麺状体同士が接触している部位と接触していない部位にムラが生じ、乾燥状態、酸化状態、保水性、微生物との接触、麺状体中の揮発成分の拡散、冷凍時の氷結晶の成長に差が生じ、味、食感、保存耐性、冷凍耐性が不均一となりうる。また集合体が嵩張ると、商品が大きくなり、商品の包装コスト、保管コスト、輸送コストがかかってしまう。本発明は、均一性とコンパクトさを備えた熱凝固タンパク質加工食品の麺状体集合体及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下のとおりである。
[1]熱凝固タンパク質加工食品によって麺状に成形された複数本の麺状体が、長手方向に沿って互いに表面で粘着している、麺状体集合体。
[2]前記麺状体集合体が、前記粘着した部位で麺状体に分離できることを特徴とする[1]の麺状体集合体。
[3]前記麺状体の長手方向の垂直断面の形状が略四角形状である、[1]又は[2]の麺状体集合体。
[4]前記粘着が、各麺状体の長手方向の50%以上で粘着したものである、[1]から[3]のいずれかに記載の麺状体集合体。
[5]前記麺状体の長手が少なくとも5cm以上である、[1]から[4]のいずれかに記載の麺状体集合体。
[6]前記麺状体の長手方向の垂直断面の最大径が1mm〜30mmである、[1]から[5]のいずれかに記載の麺状体集合体。
[7]前記麺状体の長手方向の垂直断面の最小径が0.1mm〜20mmである、[1]から[6]のいずれかに記載の麺状体集合体。
[8]前記麺状体の長手方向の垂直断面の平均面積が1mm
2〜300mm
2である、[1]から[7]のいずれかに記載の麺状体集合体。
[9]前記熱凝固タンパク質加工食品が、タンパク質と脂質と水分とを含有し、かつ、流動性を有する混合物を、加熱部と該加熱部に続く非加熱部とを有する筒体の中を移動させながら、内部加熱方式により連続的に加熱凝固して成形させる加工食品であって、前記加熱凝固して成形した熱凝固タンパク質加工食品が、互いに粘着するよう麺状に切断された、[1]から[8]のいずれかに記載の麺状体集合体。
[10]前記切断の前に切断刃にかかる圧力が、0.1MPa以上である、[9]に記載の麺状体集合体。
[11]前記切断の際の切断刃が、動的切断を行うものである、[9]又は[10]に記載の麺状体集合体。
[12]タンパク質と脂質と水分とを含有し、かつ、流動性を有する混合物を、加熱部と該加熱部に続く非加熱部とを有する筒体の中を移動させながら、内部加熱方式により連続的に加熱凝固して成形させる熱凝固タンパク質加工食品を切断刃にて動的切断を行って切断することにより複数本の麺状体とする、麺状体集合体の製造方法。
[13]前記切断された複数本の麺状体が、複数本長手方向に沿って互いに表面で粘着している、[12]に記載の製造方法。
[14]前記切断の前に前記切断刃にかかる圧力が、0.1MPa以上である、[12]又は[13]に記載の麺状体集合体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、均一性とコンパクトさを備えた熱凝固タンパク質加工食品の麺状体集合体及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の記述において、ある特定の諸元について数値が列挙されている場合、先に記載されている数値よりも後に記載されている数値がより望ましいことを意味する。
【0011】
熱凝固タンパク質加工食品は、食品として利用可能なタンパク質を、加熱により不可逆的なゲルを形成させることで作ることができる。熱凝固タンパク質加工食品は、加熱により不可逆なゲルが形成され、かつ、形成されたゲルの中に保持される限り、ゲルを形成するタンパク質以外の成分を含んでいてもよい。食品として利用可能なタンパク質として、動物タンパク、植物タンパク、微生物タンパクを挙げることができる。
【0012】
動物タンパクの原材料として、脊椎動物、節足動物、軟体動物を用いてもよい。脊椎動物として魚類、鳥類、両生類、爬虫類、ほ乳類を用いてもよい。節足動物として、昆虫類、甲殻類を用いてもよい。軟体動物として、貝類、頭足類を用いてもよい。魚類として、タラ類、サメ類、ベラ類、イトヨリ類、ナマズ類、トビウオ類、ホッケ類、タチウオ類、エソ類、グチ類を用いてもよい。魚類として白身魚を用いてもよい。甲殻類としてカニ類、エビ類を用いてもよい。動物タンパクの原材料となる組織は、筋肉、卵、乳を用いてもよい。
【0013】
植物タンパクの原材料として、穀物、豆類を用いてもよい。穀物として、小麦、トウモロコシを用いてもよい。豆類として、大豆、エンドウ豆、そら豆を用いてもよい。植物タンパクの原材料となる組織は、果実、種子を用いてもよい。種子の一部として、胚芽、胚乳、子葉を用いてもよい。
【0014】
微生物タンパクの原材料として、糸状菌類、酵母類、細菌類を用いてもよい。微生物タンパクの原材料として、微生物から抽出したたんぱく質、微生物を培養した培地から得られるタンパク質を用いてもよい。
【0015】
前記のタンパク質は、加熱により不可逆的なゲルを形成する限り、1種類を用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0016】
加熱の方法は、加熱の対象となる被加熱体が全体として加熱されるのであれば、外部加熱でもよいし、内部加熱でもよい。外部加熱として直接加熱、間接加熱を用いてもよい。内部加熱として、ジュール加熱、マイクロ波加熱、高周波加熱を用いてもよい。
【0017】
前記加熱により不可逆的に形成されるゲルの強度としては、麺状体とした場合に、少なくとも常温常圧下で固体となるような保形性を有する必要がある。また、麺状体とした場合に、体温以上の温度、40℃以上、50℃以上、60℃以上又は70℃以上で固体となるような保形性を有する場合は、温かく調理して喫食可能となるので有利である。暖かく調理する場合は、喫食時に少なくとも100℃以下と設定可能してもよい。麺状体とした場合に、体温以下の温度、30℃以下、20℃以下、10℃以下、5℃以下又は0℃以下で固体となるような保形性を有する場合は、冷たく調理して喫食可能となるので有利である。冷たく調理する場合には、少なくとも喫食時にマイナス20℃以上と設定可能してもよい。また麺状体とした場合に0℃以下で3日以上、10日以上、30日以上、60日以上又は90日以上保存した後、解凍後に常温常圧下で固体となるような保形性を有する場合は、冷凍保存が可能となるので有利である。前記、温かく調理して喫食可能となる性質と、冷たく調理して喫食可能となる性質と、冷凍保存が可能となる性質は、任意に組み合わせて、より有利な性質を持たせてもよい。
【0018】
前記加熱により不可逆的に形成されるゲルの強度としては、麺状体として喫食した場合に、麺と感じる程度の固さがあると、麺として調理して喫食可能となるので有利である。麺として調理して喫食可能となる態様として、うどん類、そば類、ラーメン類、焼きそば類、パスタ類であってもよい。麺と感じる程度の固さは、たとえばゲルの破断強度として100g/mm以上、150g/mm以上又は200g/mm以上とすることができる。また麺として喫食に適した固さはたとえばゲルの破断強度として500g/mm以下、400g/mm以下又は300g/mm以下とすることができる。ゲルの破断強度は、レオメーターを用いて測定できる。ゲルの破断強度を測定するレオメーターとしてはたとえば、サン科学社のレオテックスなどを用いることができる。ゲルの破断強度を測定する際に用いるプランジャーとしてはピアノ線を用いるなどした線状のプランジャーを用いてもよい。測定に用いるピアノ線の太さはたとえば径が0.1mm、0.2mm又は0.3mmであってもよい。ゲルの破断強度を測定する際に用いるプランジャーとしては測定に用いる部分が略球状のプランジャーを用いてもよい。測定に用いる略球状の球の半径はたとえば2.5mm、3mm、5mm又は10mmであってもよい。
【0019】
麺と感じる程度の固さを有するゲルの製造方法は、たとえば特許文献1に記載がある。麺状体として喫食した場合に、麺と感じる程度の固さがある麺状体は、全体としてそれ以上の固さのゲル強度を有する熱凝固タンパク質加工食品を切断することにより作ることができる。麺状体に切断される前の熱凝固タンパク質加工食品のゲル強度は、熱凝固タンパク質加工食品を1cm凹ませるために必要な力(g重)として定義されるゲル強度(単位:g重/cm)を指標として、100g重/cm(0.98N/cm)以上、150g重/cm(1.5N/cm)以上、200g重/cm(2.0N/cm)以上、250g重/cm(2.5N/cm)以上又は300g重/cm(2.9N/cm)以上として設定できる。また、麺状体に切断される前の熱凝固タンパク質加工食品のゲル強度は、1000g重/cm(9.8N/cm)以下、500g重/cm(4.9N/cm)以下又は300g重/cm(2.9N/cm)以下として設定できる。ゲル強度はレオメーターを用いて測定できる。ゲル強度を測定するレオメーターとしてはたとえば、レオテックス(サン科学)などを用いることができる。ゲル強度を測定する際に用いるプランジャーとしてはピアノ線を用いるなどした線状のプランジャーを用いてもよい。測定に用いるピアノ線の太さはたとえば径が0.1mm、0.2mm又は0.3mmであってもよい。ゲル強度を測定する際に用いるプランジャーとしては測定に用いる部分が略球状のプランジャーを用いてもよい。測定に用いる略球状の球の半径はたとえば2.5mm、3mm、5mm又は10mmであってもよい。
【0020】
熱凝固タンパク質加工食品の麺状体を、熱凝固タンパク質加工食品の切断により作ることで、麺状体の表面が圧力突出で引きずられるときに生じるケバ立ちを抑制することができ、麺状体の表面が滑らかとなり、麺として喫食した際に滑らかな食感とすることができる。麺状体の表面は、たとえば電子顕微鏡で観察することにより、ケバ立ちの程度を観察可能である。
【0021】
熱凝固タンパク質加工食品を切断する際に、切断の前に切断刃にかかる圧力が、配管が耐えられる圧力を超えてしまうと、麺状体に切断される前に配管が変形又は破裂し、麺状体に切断できなくなる。熱凝固タンパク質加工食品の製造に用いられる配管が耐えられる圧力は、利便性、加熱方法の必要性から生じる強度などの点から、1MPa未満、1.5MPa未満、2MPa未満又は3MPa未満である。このため、麺と感じる程度の固さがある麺状体は、全体としてそれ以上の固さのゲル強度を有する熱凝固タンパク質加工食品を切断する際に動的切断で行うことで、作ることができる。
【0022】
配管および切断刃にかかる圧力が1MPa未満、0.5MPa未満又は0.1MPa未満であっても、長時間、たとえば10分以上、30分以上、1時間以上又は3時間以上の連続運転をすると、切断刃に熱凝固タンパク質加工食品が少しずつ付着し、切断刃の切れ味が悪くなる、熱凝固タンパク質加工食品が配管または切断刃に詰まるなどの問題が生じる場合がある。動的切断により詰まりを抑制し、安定して製造することができる。
【0023】
動的切断は、熱凝固タンパク質加工食品の切断の際に、熱凝固タンパク質加工食品に対して切断刃を動的に作用させることによる切断である。動的切断は、熱凝固タンパク質加工食品が切断刃に接触している際に常に動的に作用させること、間欠的に動的に作用させることを含む。動的切断には、切断刃を回転させること、振動させること又は往復運動をさせることを含む。動的切断を行うことで、切断刃にかかる圧力を軽減させることができる。動的切断を行うことで、熱凝固タンパク質加工食品の切断の際に、熱凝固タンパク質加工食品を切断刃に送り出す配管が圧力により変形又は破裂することを防ぐことができる。動的切断を行うことで、熱凝固タンパク質加工食品を麺状体に切断する際に、切断刃への熱凝固タンパク質加工食品の付着を抑制し、熱凝固タンパク質加工食品が配管または切断刃に詰まることを防ぐことができる。動的切断を行うことで、熱凝固タンパク質加工食品を切断する際に、切断の前に切断刃にかかる圧力が、0.1MPa以上、0.5MPa以上、1MPa以上、1.5MPa以上、2MPa以上又は3MPa以上となる、熱凝固タンパク質加工食品からでも切断をすることができる。
【0024】
動的切断は、熱凝固タンパク質加工食品の切断の際に、熱凝固タンパク質加工食品に対して、複数の切断刃を同時に、全て動的に作用させることで行うこともできる。熱凝固タンパク質加工食品の切断の際に、熱凝固タンパク質加工食品に対して、複数の切断刃を同時に、全て動的に作用させる場合には、各切断刃の厚みは2mm以下、1mm以下、0.5mm以下、0.3mm以下又は0.1mm以下とすることで、切断刃の間から切断された熱凝固タンパク質加工食品が送り出されやすくなる。切断刃は強度の点から0.01mm以上、0.05mm以上又は0.1mm以上とすることができる。
【0025】
熱凝固タンパク質加工食品の切断の際に、熱凝固タンパク質加工食品に対して、複数の切断刃を同時に、全て動的に作用させることで、用いた切断刃の数に応じて複数の熱凝固タンパク質加工食品の麺状体を同時に作ることができる。
【0026】
動的切断は、熱凝固タンパク質加工食品の切断の際に、熱凝固タンパク質加工食品に対して、複数回行うことができる。熱凝固タンパク質加工食品に対して、複数回切断を行う場合には、複数の切断の間隔を10cm以内、5cm以内、3cm以内又は1cm以内とすることで、熱凝固タンパク質加工食品の変形が抑制され、麺状体に加工しやすくなる。たとえば切断を2回行う場合には、第一の切断を行う切断刃と第二の切断を行う切断刃との間隔が10cm以内、5cm以内、3cm以内又は1cm以内とすることで、より均質な麺状体を作ることができる。
【0027】
熱凝固タンパク質加工食品の切断の際に、熱凝固タンパク質加工食品に対して、複数の切断刃を同時に、全て動的に作用させ、かつ動的切断を複数回行う場合には、動的切断を、切断刃を振動させること又は往復運動をさせることで行うことで、切断刃の厚みを所定以下とし、かつ、切断間隔を所定以下とする調整を行いやすい。たとえば略四角形状の配管を用いて熱凝固タンパク質加工食品を送り出すようにし、所定の間隔で切断刃を平行に並べて第一の切断刃とし、第一の切断刃と直交するように、所定の間隔で第二の切断刃を平行に並べて、2回の動的切断を行うことで、長手方向の垂直断面の形状が略四角形状となる、太さの揃った麺状体を同時に作ることができる。同様に、たとえば略三角形状又は略六角状の配管を用いて熱凝固タンパク質加工食品を送り出すようにし、所定の間隔で切断刃を平行に並べて第一の切断刃とし、第一の切断刃と60℃の角度に交わるように、所定の間隔で第二の切断刃を平行に並べて、かつ、第一の切断刃と120℃の角度に交わるように、所定の間隔で第三の切断刃を平行に並べて、3回の動的切断を行うことで、長手方向の垂直断面の形状が、各切断刃の間隔に応じ、略三角形状又は略六角形状となる、太さの揃った麺状体を同時に作ることができる。
【0028】
熱凝固タンパク質加工食品の麺状体は、長手方向で所定の長さで切断することで、所定の長さの麺状体とすることができる。喫食したとき麺と感じやすくするため、麺状体の長さを、少なくとも5cm以上、10cm以上、15cm以上、20cm以上、25cm以上、30cm以上、40cm以上又は50cm以上とすることができる。喫食したとき麺として食べやすくするため、麺状体の長さを、少なくとも2m以下、1.5m以下、1m以下、80cm以下、70cm以下、60cm以下、50cm以下、40cm以下又は30cm以下とすることができる。
【0029】
麺状体の太さは、麺状体の長手方向の垂直断面の最大径、すなわち垂直断面の重心を通過する直線が最も長くなる場合の長さ、として示すことができる。麺状体として喫食した場合に、麺と感じる程度の太さとなるため、麺状体の長手方向の垂直断面の最大径を少なくとも1mm以上、2mm以上、3mm以上、5mm以上又は7mm以上とすることができる。喫食したとき麺として食べやすくするため、麺状体の長手方向の垂直断面の最大径少を多くとも30mm以下、20mm以下、15mm以下、10mm以下又は8mm以下とすることができる。
【0030】
麺状体の太さは、麺状体の長手方向の垂直断面の最小径、すなわち垂直断面の重心を通過する直線が最も短く場合の長さ、として示すことができる。麺状体として喫食した場合に、麺と感じる程度の太さとなるため、麺状体の長手方向の垂直断面の最小径を少なくとも0.5mm以上、0.7mm以上、1mm以上、1.5mm以上、2mm以上又は3mm以上とすることができる。喫食したとき麺として食べやすくするため、麺状体の長手方向の垂直断面の最小径少を多くとも20mm以下、10mm以下、7mm以下又は5mm以下とすることができる。
【0031】
麺状体の太さは、麺状体の長手方向の垂直断面の平均面積として示すことができる。麺状体として喫食した場合に、麺と感じる程度の太さとなるため、麺状体の長手方向の垂直断面の平均面積を少なくとも1mm
2以上、5mm
2以上、10mm
2以上、15mm
2以上、20mm
2以上、30mm
2以上又は50mm
2以上とすることができる。喫食したとき麺として食べやすくするため、麺状体の長手方向の垂直断面の平均面積を多くとも300mm
2以下、200mm
2以下、100mm
2以下、75mm
2以下又は50mm
2以下とすることができる。熱凝固タンパク質加工食品の麺状体は、所望の用途に合わせて、前記の麺状体の性質を任意に組み合わせることができる。
【0032】
熱凝固タンパク質加工食品の麺状体集合体は、熱凝固タンパク質加工食品を麺状体に切断後、そのまま互いに粘着させることで作ることができる。熱凝固タンパク質加工食品の麺状体同士の粘着は、熱凝固タンパク質加工食品の粘性に基づいて発生する。熱凝固タンパク質加工食品の麺状体は、麺状体に加工した後は、柔らかく、纏まりにくい性質を有する。熱凝固タンパク質加工食品の麺状体は、麺状体を個別に製造した後、互いに揃えて配置しても、一部しか粘着が発生しない。熱凝固タンパク質加工食品の麺状体集合体は、熱凝固タンパク質加工食品を麺状体に切断後、そのまま互いに粘着させて作ることで、各麺状体の長手方向の50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上又は95%以上で互いに粘着させることができる。熱凝固タンパク質加工食品の麺状体集合体は、熱凝固タンパク質加工食品を麺状体に切断後、そのまま互いに粘着させて作ることで、各麺状体の長手方向の50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上又は95%以上で互いに粘着した、熱凝固タンパク質加工食品の麺状体集合体を作ることができる。
【0033】
熱凝固タンパク質加工食品の麺状体集合体は、熱凝固タンパク質加工食品を麺状体に切断後、そのまま互いに粘着させて作ることで、全体として均一で、コンパクトな集合体とすることができる。熱凝固タンパク質加工食品の麺状体集合体は、全体として均一で、コンパクトな集合体となることで、保存性、冷凍耐性又は輸送適性を備えた集合体とすることができる。
【0034】
熱凝固タンパク質加工食品の麺状体集合体は、麺状体集合体とした場合に、少なくとも常温常圧下で固体となるような保形性を有する必要がある。また、麺状体集合体とした場合に、体温以上の温度、40℃以上、50℃以上、60℃以上又は70℃以上で固体となるような保形性を有する麺状体から構成される場合は、温かく調理して喫食可能となるので有利である。暖かく調理する場合は、喫食時に少なくとも100℃以下と設定可能してもよい。麺状体集合体とした場合に、体温以下の温度、30℃以下、20℃以下、10℃以下、5℃以下又は0℃以下で固体となるような保形性を有する麺状体から構成される場合は、冷たく調理して喫食可能となるので有利である。冷たく調理する場合には、少なくとも喫食時にマイナス20℃以上と設定可能してもよい。また麺状体集合体とした場合に0℃以下で3日以上、10日以上、30日以上、60日以上又は90日以上保存した後、解凍後に常温常圧下で固体となるような保形性を有する麺状体から構成される場合は、冷凍保存が可能となるので有利である。前記、温かく調理して喫食可能となる性質と、冷たく調理して喫食可能となる性質と、冷凍保存が可能となる性質は、任意に組み合わせて、より有利な性質を持たせてもよい。
【0035】
熱凝固タンパク質加工食品の麺状体集合体は、ゲルの破断強度として100g/mm以上、150g/mm以上又は200g/mm以上となるように構成することができる。また、熱凝固タンパク質加工食品の麺状体集合体は、ゲルの破断強度として500g/mm以下、400g/mm以下、300g/cm
2以下となるように構成することができる。
【0036】
熱凝固タンパク質加工食品の麺状体集合体は、喫食したとき麺と感じやすくするため、少なくとも5cm以上、10cm以上、15cm以上、20cm以上、25cm以上、30cm以上、40cm以上又は50cm以上となる麺状体から構成することができる。喫食したとき麺として食べやすくするため、少なくとも2m以下、1.5m以下、1m以下、80cm以下、70cm以下、60cm以下、50cm以下、40cm以下又は30cm以下となる麺状体から構成することができる。
【0037】
熱凝固タンパク質加工食品の麺状体集合体は、喫食した場合に、麺と感じる程度の太さとなるため、麺状体の長手方向の垂直断面の最大径を少なくとも1mm以上、2mm以上、3mm以上、5mm以上、7mm以上又は10mm以上の麺状体から構成することができる。また、熱凝固タンパク質加工食品の麺状体集合体は、喫食したとき麺として食べやすくするため、麺状体の長手方向の垂直断面の最大径を多くとも30mm以下、20mm以下、15mm以下又は11mm以下の麺状体から構成することができる。
【0038】
熱凝固タンパク質加工食品の麺状体集合体は、麺状体として喫食した場合に、麺と感じる程度の太さとなるため、麺状体の長手方向の垂直断面の平均面積を少なくとも1mm
2以上、5mm
2以上、10mm
2以上、15mm
2以上、20mm
2以上、30mm
2以上又は50mm
2以上の麺状体から構成とすることができる。熱凝固タンパク質加工食品の麺状体集合体は、喫食したとき麺として食べやすくするため、麺状体の長手方向の垂直断面の平均面積を多くとも300mm
2以下、200mm
2以下、100mm
2以下、75mm
2以下又は50mm
2以下の麺状体から構成することができる。
【0039】
熱凝固タンパク質加工食品の麺状体集合体は、所望の用途に合わせて、前記の麺状体の性質を任意に組み合わせた麺状体で構成することができる。また、熱凝固タンパク質加工食品の麺状体集合体は、熱凝固タンパク質加工食品を麺状体に切断後、そのまま互いに粘着させることで作ることで、集合体を構成する各麺状体の前記の性質のばらつきを、麺状体の平均値から±20%以内、±10%以内、±5%以内、±3%以内又は±1%以内に抑えることができる。
【0040】
熱凝固タンパク質加工食品の麺状体集合体は、熱凝固タンパク質加工食品を麺状体に切断後、そのまま互いに粘着させ、その後、凍結することで、熱凝固タンパク質加工食品の麺状体集合体の冷凍体を作ることができる。熱凝固タンパク質加工食品の麺状体集合体は、熱凝固タンパク質加工食品を麺状体に切断後、そのまま互いに粘着させ、その後、凍結した、熱凝固タンパク質加工食品の麺状体集合体の冷凍体は、凍結時及び凍結解凍後に分離することが抑制され、保存性、冷凍耐性又は輸送適性を備えた冷凍体とすることができる。熱凝固タンパク質加工食品の麺状体集合体は、熱凝固タンパク質加工食品を麺状体に切断後、そのまま互いに粘着させ、その後、凍結した、熱凝固タンパク質加工食品の麺状体集合体の冷凍体は、湯戻しした際に、粘着した部位ですぐに分離することで喫食可能となり、調理時間を短くすることができる。
【0041】
熱凝固タンパク質加工食品の麺状体集合体は、熱凝固タンパク質加工食品を麺状体に切断後、そのまま互いに粘着させ、その後、そのまま又は凍結して容器に詰めることで、容器詰めの熱凝固タンパク質加工食品の麺状体集合体又は容器詰めの熱凝固タンパク質加工食品の麺状体集合体の冷凍体を作ることができる。容器詰めの熱凝固タンパク質加工食品の麺状体集合体の容器としては、脱気又はガス置換が可能な包材を用いることで保存期間を長くすることができる。容器詰めの熱凝固タンパク質加工食品の麺状体集合体の冷凍体の容器としては、脱気又はガス置換が可能な性質に加え、冷凍耐性のある包材を用いることで保存期間を長くし、冷凍保存耐性を向上させることができる。
【0042】
図1は、本実施形態の麺状体集合体70(
図6〜
図8参照)の製麺装置10の模式図である。タンパク質と脂質と水分とを含有し、かつ、流動性を有する混合物が、筒体20の中を移動し、内部加熱装置30を有する加熱部21に送り込まれる。混合物は加熱部21で内部加熱方式により連続的に加熱凝固された加工食品である、熱凝固タンパク質加工食品に成形される。成形された熱凝固タンパク質加工食品は、筒体20の中で加熱部21に続く非加熱部22に設けられた切断装置40の中に装着された切断刃45、46(
図2及び
図3参照)にて切断され、麺状に成形された複数本の麺状体60(
図6〜
図8参照)が得られる。この切断の際、切断装置40に装着された振動装置50(たとえば、プラスチックボールバイブレータ)により切断刃45、46に振動が与えられることで、熱凝固タンパク質加工食品は動的切断を受けることになる。複数本の麺状体60は長手方向に沿って互いに表面で粘着した麺状体集合体70となる。
【0043】
図2は、切断装置40の概要を模式的に示す組図である。切断装置40は、上流側で筒体20の断面形状を円形から四角形に変更する断面形状変更ノズル41と、その下流側に装着され切断刃45、46を収容するブレードホルダー42と、その下流側に装着され麺状体集合体70を吐出する吐出ノズル43とを備えた構造である。ブレードホルダー42には連続して2つのブレード枠44が収容される。上流側のブレード枠44には第一の切断刃45が装着され、下流側のブレード枠44には第二の切断刃46が装着される。各々のブレード枠44には、
図3に示すように、それぞれ複数本の切断刃45、46が等間隔で並行に装着される。第一の切断刃45と第二の切断刃46とは互いに直交する方向に装着される。第一の切断刃45及び第二の切断刃46には、前記したように振動装置50により振動が加えられることで、各々で動的切断が行われる。ここで、第一の切断刃45と第二の切断刃46とにより2回の動的切断を行うことの意義については前記したとおりである。これら直交する第一の切断刃45と第二の切断刃46とで動的切断を行うことで、ほぼ均等な格子状の断面形状の麺状体60(
図7参照)が得られる。なお、断面形状変更ノズル41で筒体20の断面形状を円形から四角形に変更するのは、断面形状が円形のままでは均等な格子状の断面形状とならず、圧力が均一にかからずに目詰まりが起こってしまうからである。
【0044】
また、切断装置40の変形例として、
図4(A)の側面視の組図に示すように、ブレード枠44を吐出方向に沿って傾斜した形状に形成し、第一の切断刃45を吐出方向に沿って傾斜した状態に装着し、第二の切断刃46を上に行くほど吐出方向よりに位置させるように装着することもできる。このように切断刃45、46を装着することで、
図4(B)の側面断面に示すように、筒体20の中を移動する熱凝固タンパク質加工食品が切断刃45、46に当たる位置を上下で異ならせることができる。これにより、切断刃45、46に係る圧力を分散することができ、よりスムーズな切断が可能となる。
【0045】
なお、筒体20の変形例として、
図5の模式図に示すように、筒体20をY字状に分岐させて、それぞれの下流側に切断装置40を設け、フラップ25を切り替えることで、熱凝固タンパク質加工食品の流路を切り替えることができる。この構成により、一方の分岐で切断装置40を稼働させつつ、もう一方の分岐の切断装置40の切断刃45、46の交換等のメンテナンスを行うことができ、それにより製麺装置10の稼働率を向上させることができる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例にて発明の一態様を説明する。しかしながら、本発明はそれらに何ら限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は質量基準である。
【0047】
[実施例]
(1)魚肉ソーセージ様の麺状体原材料及び魚麺様の麺状体原材料の調整
魚肉ソーセージ様の麺状体原材料及び魚麺様の麺状体原材料の配合は下記表1に示すとおりとした。すり身にはマダラとスケトウダラの混合物が用いられた。植物タンパクには、大豆タンパクが用いられた。前記2種類の原材料を、それぞれ下記表1の配合で、すり身に塩を添加して塩摺りし、その後、調味料、植物タンパク、油脂、でんぷん及び水を添加して、混合し、ペースト状にすることで、熱凝固タンパク質加工食品の原材料となる、配合1(魚肉ソーセージ様)及び配合2(魚麺様)の2種類の練り肉が調整された。
【0048】
【表1】
【0049】
上記表1における配合2の熱凝固タンパク質加工食品のゲル強度を、レオテックスSD−200(サン科学)を用いて測定した。熱凝固タンパク質加工食品を品温20〜25℃に調整し、長さ2cmに切断し、長手方向の垂直断面が上向きになるように試料台に載せ、5mm径球状のプランジャーで押込み、ゲル強度(g重/cm)を測定した。その結果、ゲル強度は200〜350g重/cm(2.0〜3.4N/cm)であった。
【0050】
(2)魚肉ソーセージ様の麺状体集合体及び魚麺様の麺状体集合体の製造
(1)で得られた2種類の練り肉を、それぞれ特許文献1の実施例1のマイクロ波加熱を用いて製造した条件(具体的には、筒体の外周に金属壁で3つに区分けされたそれぞれの区画に連続マイクロ波加熱装置(廣電社製)を120°の位相で装着し、85℃で加熱)で加熱し、魚肉ソーセージ様の熱凝固タンパク質加工食品と魚麺様の熱凝固タンパク質加工食品を製造した。いずれの場合も加熱直後の熱凝固タンパク質加工食品は、熱凝固タンパク質加工食品を送り出す方向に垂直な面が略正方形となる配管を用いて、切断刃まで押圧移動させ、2組の、6箇所の隙間がいずれも3mm間隔となるよう平行に配置された5枚の切断刃を用いて略6等分に切断した。いずれの場合も第一の5枚の切断刃は、切断刃がいずれも鉛直方向に水平になるよう配置し、第二の5枚の切断刃は、切断刃がいずれも鉛直方向に垂直になるように配置し、2組の切断刃を通過した後は、長手方向の垂直断面の一辺が略3mmの正方形が6列×6行で、36本の麺状体集合体となるよう切断した(
図7参照)。なお、切断刃の厚みは0.5mmであった。切断は、いずれの切断刃もプラスチックボールバイブレータ(ネッター社製、ボールバイブレータ NCB―2)を用いて、100Hz〜400Hzとなるよう振動を与えながら、切断した。第一の切断刃にかかる圧力は5Pa以下となるよう押圧を調整し、切断後の麺状体が3cm/秒以上の吐出となるよう押圧を調整した。吐出された麺状体集合体は、長手方向に垂直に20cm間隔で切断した。以上により、
図6に示されるような、長さが20cmで、略3mmの正方形が6列×6行で、36本の麺状体から構成される、魚肉ソーセージ様の麺状体集合体及び魚麺様の麺状体集合体を得た。
【0051】
(3)魚肉ソーセージ様の麺状体集合体及び魚麺様の麺状体集合体の評価
(2)で得られた2種類の麺状体集合体は、
図8に示すように、いずれも各麺状体同士は長手方向95%以上で互いに粘着し、常温常圧で分離することがなく、十分な保形性を示した。それぞれの麺状体集合体のゲル破断強度をレオテックスSD−700(サン科学)で測定したところ、いずれも200〜300g/mm(2.0〜2.9N/cm)であった。また、それぞれの麺状体集合体をマイナス20℃で1箇月間凍結保存したが、解凍後も常温常圧で分離することがなく、十分な保形性を示した。また、いずれの場合も、凍結前及び凍結解凍後も、湯戻しした場合に、すぐに分離することで、喫食に適した状態となった。また、凍結解凍後の魚麺様の麺状体集合体を用いて、うどん、ちゃんぽん、ペスカトーレ、ペペロンチーノ、たらこパスタ及び韓国風鍋うどんを製造したが、いずれも魚肉すり身から生じる出汁味が加わることで、美味となった。
【0052】
上記表1における配合2の熱凝固タンパク質加工食品で製造した麺状体集合体の、冷凍及び解凍を経た状態の破断強度を、レオテックスSD−700(サン科学)を用いて測定した。麺状体集合体を包装し、95℃60分蒸煮した後、冷凍、自然解凍し、品温20〜25℃に調整した後、160〜170mmの長さに切断し、ピアノ線使用した切断応力測定用プランジャー(ピアノ線の直径0.3mm)を用いて、麺状体集合体をプランジャーで垂直方向に破断したときの破断強度(g/mm)を測定した。その結果、破断強度は200〜300g/mm(2.0〜2.9N/cm)であった。
【0053】
[比較例]
なお、比較例として、上記表1に示す各配合と同様に調整した練り肉を用いて、切断刃を振動させずに麺状体集合体の製造を試みた。用いた方法は、切断刃を振動させないこと以外は全て実施例と同一であったが、いずれの練り肉も切断されず、押圧が上昇し、配管の耐えうる圧力を超えてしまったため、配管が変形したため、製造を中止した。よって、動的切断は、上記表1に示す各配合のような練り肉を、
図6〜
図8に示すような細い麺状体になるようにスムーズに切断するのにきわめて有効であることが分かった。
【0054】
このように本開示により、均一性とコンパクトさを備えた熱凝固タンパク質加工食品の麺状体集合体を製造することができた。