(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6929596
(24)【登録日】2021年8月13日
(45)【発行日】2021年9月1日
(54)【発明の名称】ブレードケース
(51)【国際特許分類】
B65D 85/30 20060101AFI20210823BHJP
B23Q 13/00 20060101ALI20210823BHJP
【FI】
B65D85/30
B23Q13/00
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-137219(P2017-137219)
(22)【出願日】2017年7月13日
(65)【公開番号】特開2019-18875(P2019-18875A)
(43)【公開日】2019年2月7日
【審査請求日】2020年5月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(72)【発明者】
【氏名】片山 靖教
(72)【発明者】
【氏名】蔦永 裕行
【審査官】
佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−280073(JP,A)
【文献】
特開平10−086987(JP,A)
【文献】
実公平06−040136(JP,Y2)
【文献】
特開2002−086370(JP,A)
【文献】
特開2001−158492(JP,A)
【文献】
米国特許第05078266(US,A)
【文献】
特開2003−170980(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2017/0021986(US,A1)
【文献】
米国特許第06267239(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/30
B23Q 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワッシャータイプのブレードを収容するブレードケースであって、
底板を有する収容部と、
天板を有する蓋部と、
該収容部と該蓋部とを開閉できるように連結するヒンジ部と、を備え、
該底板には、該ブレードの外周よりも直径が大きく該ブレードを収容できる円形の凹部が設けられ、
該天板には、該収容部に対して該蓋部が閉じられた状態において該凹部より外側で該底板に接する凸部が設けられ、
該底板に設けられた該凹部の底、又は該天板の該凸部より内側の領域には、該収容部に対して該蓋部が開かれるとき、又は該蓋部に対して該収容部が開かれるときに、該ブレードと該底板、又は該ブレードと該天板との間に作用する静電気の力を抑制するための逃げ穴が設けられていることを特徴とするブレードケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状の被加工物を切削加工する際に用いられるブレードを収容するためのブレードケースに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機やパーソナルコンピュータに代表される電子機器では、電子回路等のデバイスを備えるデバイスチップが必須の構成要素になっている。デバイスチップは、例えば、シリコン等の半導体材料でなるウェーハの表面を複数の分割予定ライン(ストリート)で区画し、各領域にデバイスを形成した後、この分割予定ラインに沿ってウェーハを分割することで得られる。
【0003】
ウェーハを複数のデバイスチップへと分割する際には、例えば、回転軸(スピンドル)に環状のブレード(切削ブレード)が装着された切削装置を使用する。ブレードを高速に回転させた上で被加工物の分割予定ラインに沿って深く切り込ませることで、この被加工物を切断して複数のデバイスチップへと分割できる。
【0004】
ブレードの一態様として、砥粒が結合材で固定された切刃のみでなるワッシャータイプが知られている。このワッシャータイプのブレードには、厚みが100μm以下の薄い物も多い。そこで、搬送等の際には、ブレードをブレードケースに収容してその破損を防いでいる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−82817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述のブレードケースは、例えば、ブレードを収容するための収容領域(凹部)のある収容部と、収容領域を閉じるための蓋部と、で構成されており、ブレードを収容領域に収容した状態で、蓋部によって収容領域が閉じられる。なお、このブレードケースでは、テープ等によって蓋部が収容部に留められることになる。
【0007】
ブレードケースからブレードを取り出す際には、通常、収容部を下にした状態で蓋部側が開かれる。ブレードは、収容部の収容領域に収容されているので、仮に、蓋部側が開かれた状態でブレードケースを傾けたとしても、ブレードがブレードケースから脱落して破損することはない。
【0008】
ところが、誤って、蓋部を下にした状態で収容部側を開いてしまうことがある。この場合には、収容部の収容領域によってブレードが保持されないので、例えば、ブレードケースを傾けてしまうと、ブレードがブレードケースから脱落して破損する恐れがある。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、蓋部を下にした状態で収容部側を開いた場合でも、蓋部によりブレードを保持できるブレードケースを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、ワッシャータイプのブレードを収容するブレードケースであって、底板を有する収容部と、天板を有する蓋部と、該収容部と該蓋部とを開閉できるように連結するヒンジ部と、を備え、該底板には、該ブレードの外周よりも直径が大きく該ブレードを収容できる円形の凹部が設けられ、該天板には、該収容部に対して該蓋部が閉じられた状態において該凹部より外側で該底板に接する凸部が設けられ
、該底板に設けられた該凹部の底、又は該天板の該凸部より内側の領域には、該収容部に対して該蓋部が開かれるとき、又は該蓋部に対して該収容部が開かれるときに、該ブレードと該底板、又は該ブレードと該天板との間に作用する静電気の力を抑制するための逃げ穴が設けられているブレードケースが提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様に係るブレードケースは、収容部を構成する底板に、ブレードの外周よりも直径が大きくブレードを収容できる円形の凹部が設けられているとともに、蓋部を構成する天板に、収容部に対して蓋部が閉じられた状態において凹部より外側で底板に接する凸部が設けられている。そのため、蓋部を下にした状態で収容部側を開いた場合でも、凸部によってブレードが保持される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】ブレードケース等の構成例を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2(A)は、ブレードが収容部側に載せられた状態を模式的に示す断面図であり、
図2(B)は、ブレードがブレードケースに収容された状態を模式的に示す断面図であり、
図2(C)は、ブレードが蓋部側に載った状態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るブレードケース2の構成例を模式的に示す斜視図である。ブレードケース2は、切刃のみでなるいわゆるワッシャータイプのブレード(ワッシャーブレード)11を収容できるように構成されており、収容部4と蓋部6とを含む。
【0015】
このブレードケース2に収容されるブレード11は、例えば、ダイヤモンド等の砥粒を金属や樹脂等の結合材で固めて、中央に開口部11aを有する環状に形成される。ブレード11の厚みは、代表的には、0.1mm〜0.3mm程度であり、ブレード11の外径(外周の直径)は、代表的には、54mm〜58mm程度である。ただし、ブレード11の材質、大きさ(径、厚み)、製法等に特段の制限はない。
【0016】
収容部4及び蓋部6は、ヒンジ部8によって互いに連結されている。収容部4、蓋部6及びヒンジ部8の材質等に特段の制限はないが、本実施形態では、これらをポリプロピレン等の樹脂で一体に形成している。収容部4は、底板10を有しており、その一方の面10a側には、平面視で概ね円形の凹部12が設けられている。この凹部12が、ブレード11を収容する収容領域となる。よって、凹部12の直径は、ブレード11の外径よりも大きくなっている。
【0017】
凹部12の中央には、凹部12の底面から突出する円柱状の凸部14が設けられている。凸部14の外周14aの直径は、ブレード11の内径(開口部11aの直径)よりも小さくなっている。また、凹部12の底面には、複数の穴(逃げ穴)16が凸部14を囲むように形成されている。
【0018】
このように、凹部12の底面に穴16を設けることで、底板10とブレード11との間に作用する静電気の力を弱められる。つまり、ブレードケース2に収容されたブレード11を取り扱い易くなる。また、ブレードケース2に収容されたブレード11を目視し易くなる。なお、本実施形態では、底板10を貫通しない平面視で概ね円形の穴16を設けているが、穴16の形状、配置、大きさ、数量等に特段の制限はない。また、底板10のヒンジ部8と反対側の位置には、外向きの爪部18が設けられている。
【0019】
蓋部6は、天板20を有している。天板20の一方の面20a側の外周部には、側壁22が設けられている。また、天板20の面20a側、且つ側壁22より内側の領域には、平面視で概ね環状の凸部24が設けられている。凸部24の内径は、凹部12の直径よりも大きくなっている。
【0020】
面20aの凸部24で囲まれる領域の中央には、平面視で円形の凹部26が設けられている。凹部26の直径は、凸部14の外周14aの直径よりも僅かに大きくなっている。よって、この凹部26に凸部14を挿入できる。また、面20aの凸部24で囲まれた領域には、複数の穴(逃げ穴)28が凹部26を囲むように形成されている。
【0021】
このように、面20aの凸部24で囲まれた領域に穴28を設けることで、天板20とブレード11との間に作用する静電気の力を弱められる。つまり、ブレードケース2に収容されたブレード11を取り扱い易くなる。また、ブレードケース2に収容されたブレード11を目視し易くなる。
【0022】
なお、本実施形態では、天板20を貫通しない平面視で概ね円形の穴28を設けているが、穴28の形状、配置、大きさ、数量等に特段の制限はない。また、ヒンジ部8の反対側に位置する側壁22の内側には、内向きの爪部30が設けられている。
【0023】
このように構成されたブレードケース2では、ヒンジ部8を支点に蓋部6を回転させて閉じることで、ブレード11を収容する凹部12を閉塞させられる。この状態で、爪部18と爪部30とを係合させれば、蓋部6の閉じた閉状態が維持される。一方で、蓋部6を開いた開状態では、凹部12も開放される。なお、収容部4に対して蓋部6が閉じられた閉状態では、上述した凸部24が凹部12より外側で底板10の面10aに接する。
【0024】
次に、本実施形態に係るブレードケース2の使用例を説明する。
図2(A)は、ブレード11が収容部4側に載せられた状態を模式的に示す断面図であり、
図2(B)は、ブレード11がブレードケース2に収容された状態を模式的に示す断面図であり、
図2(C)は、ブレード11が蓋部6側に載った状態を模式的に示す断面図である。
【0025】
ブレードケース2にブレード11を収容する際には、例えば、
図2(A)に示すように、収容部4の凹部12内にブレード11を配置する。すなわち、凹部12の底面にブレード11を載せる。なお、この凹部12内には、予め緩衝材等を配置しておくと良い。これにより、ブレード11の破損をより確実に防止できるようになる。
【0026】
ブレード11を収容部4側に載せた後には、
図2(B)に示すように、蓋部6を閉じて爪部18と爪部30とを係合させる。これにより、ブレード11は、ブレードケース2に収容される。なお、収容部4の凹部12内にブレード11を配置した状態で蓋部6を閉じると、蓋部6の凸部24で囲まれる領域とブレード11との間に空間が生まれる。
【0027】
この空間により、外部からの力がブレード11に伝わり難くなるので、ブレード11の破損を防止できる。更に、この空間を埋めるように、蓋部6の凸部24で囲まれる領域に予め緩衝材等を配置しておいても良い。これにより、ブレード11の破損をより確実に防止できるようになる。
【0028】
ブレード11をブレードケース2から取り出す際に、例えば、蓋部6を下にした状態で収容部4側を開いてしまった状況を想定する。この場合には、
図2(C)に示すように、ブレード11が蓋部6側に載ることになる。本実施形態では、蓋部6に凸部24が設けられているので、仮に、ブレードケース2が傾いたとしても、ブレード11は凸部24によって保持される。よって、ブレード11がブレードケース2から脱落してしまうことはない。
【0029】
なお、本実施形態では、ブレード11の載る面20aに穴28を設けているので、ブレードケース2の開閉等によって発生し、天板20とブレード11との間に作用する静電気の力(引力)は弱められる。よって、蓋部6からブレード11を容易に取り出せる。同様に、収容部4側にも穴16を設けているので、収容部4を下にした状態で蓋部6を開いた場合にも、底板10とブレード11との間に作用する静電気の力(引力)が弱められ、収容部4からブレード11を容易に取り出せる。
【0030】
以上のように、本実施形態に係るブレードケース2は、収容部4を構成する底板10に、ブレード11の外周よりも直径が大きくブレード11を収容できる円形の凹部12が設けられているとともに、蓋部6を構成する天板20に、収容部4に対して蓋部6が閉じられた状態において凹部12より外側で底板10に接する凸部24が設けられている。そのため、蓋部6を下にした状態で収容部4側を開いた場合でも、凸部24によってブレード11が保持される。
【0031】
なお、本発明は、上記実施形態等の記載に制限されず種々変更して実施可能である。例えば、上記実施形態では、蓋部6に環状の凸部24を設けているが、この凸部の形状、配置、数量等に特段の制限はない。例えば、複数の凸部を環状に配置することで、ブレード11を保持できるようにしても良い。
【0032】
また、上記実施形態では、収容部4及び蓋部6の双方に複数の穴(逃げ穴)16,28を設けているが、例えば、収容部4及び蓋部6の一方にのみ1又は複数の穴を設けることもできる。もちろん、このような穴を設けなくても良い。
【0033】
その他、上記実施形態及び変形例に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更できる。
【符号の説明】
【0034】
2 ブレードケース
4 収容部
6 蓋部
8 ヒンジ部
10 底板
10a 第1面
12 凹部
14 凸部
14a 外周
16 穴(逃げ穴)
18 爪部
20 天板
20a 第1面
22 側壁
24 凸部
26 凹部
28 穴(逃げ穴)
30 爪部
11 ブレード
11a 開口部