特許第6929910号(P6929910)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6929910陰極構成体、電子銃、及びこのような電子銃を有するリソグラフィシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6929910
(24)【登録日】2021年8月13日
(45)【発行日】2021年9月1日
(54)【発明の名称】陰極構成体、電子銃、及びこのような電子銃を有するリソグラフィシステム
(51)【国際特許分類】
   H01J 1/20 20060101AFI20210823BHJP
   H01J 37/305 20060101ALI20210823BHJP
   H01J 1/146 20060101ALI20210823BHJP
   H01J 37/06 20060101ALI20210823BHJP
   H01J 3/02 20060101ALI20210823BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20210823BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20210823BHJP
【FI】
   H01J1/20
   H01J37/305 B
   H01J1/146
   H01J37/06 Z
   H01J3/02
   H01L21/30 541B
   G03F7/20 504
   H01L21/30 541H
   H01L21/30 541W
   H01L21/30 551
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2019-168023(P2019-168023)
(22)【出願日】2019年9月17日
(62)【分割の表示】特願2016-544160(P2016-544160)の分割
【原出願日】2014年12月22日
(65)【公開番号】特開2020-9777(P2020-9777A)
(43)【公開日】2020年1月16日
【審査請求日】2019年10月16日
(31)【優先権主張番号】61/921,546
(32)【優先日】2013年12月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ディヌ−グールトレル、ローラ
(72)【発明者】
【氏名】ホガーボルスト、エリック・ペトルス
【審査官】 大門 清
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05623183(US,A)
【文献】 特開平10−255679(JP,A)
【文献】 特開2011−040398(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/070837(WO,A1)
【文献】 特開平08−255558(JP,A)
【文献】 特開2003−346671(JP,A)
【文献】 特公昭48−018024(JP,B1)
【文献】 特開2006−221983(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 1/13− 1/28
H01J 37/30−37/36
H01J 37/06
H01J 3/02
H01L 21/30
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に電子を放出するための、放出周縁で境界が定められた放出表面を収容している陰極本体と、
前記長手方向と交差する横断方向に前記陰極本体を少なくとも部分的に囲み、前記放出表面によって放出された前記電子を集束させるための、アパーチャ周縁で境界が定められた電子透過アパーチャを有する集束電極と
を具備し、
前記陰極本体は、前記集束電極と前記陰極本体との間の環状間隙内で、前記横断方向への移動を許容するように配置され、前記陰極本体の許容された移動は、前記長手方向の軸に沿ってアライメントされた位置からの移動であり、
前記アパーチャ周縁が、前記陰極本体の許容された移動の位置を超えて、前記横断方向へ、前記放出周縁を超えた内側に延びるように、前記アパーチャ周縁は、オーバーラップ距離にわたって、前記放出周縁を超えて前記放出表面の上に横断方向に延びている、陰極構成体。
【請求項2】
前記アパーチャ周縁及び前記放出周縁は、準同形に成形されている請求項1に記載の構成体。
【請求項3】
前記集束電極は、前記放出表面に面している内側電極表面を有し、3つのスペーシング要素が、前記集束電極と前記放出部分との間にスペーシングを設けるために配置されている、請求項1または2に記載の構成体。
【請求項4】
支持構造をさらに具備し、前記支持構造には、前記集束電極と前記陰極本体との少なくとも一方を前記支持構造に対して制限するための制限構成体が設けられている請求項1ないし3のいずれか1に記載の構成体。
【請求項5】
前記制限構成体は、各々が陰極構成体の表面領域に面しているエンドストップを有する請求項4に記載の構成体。
【請求項6】
前記陰極本体は、電子を放出するための放出表面が設けられた放出部分と、加熱されたとき、前記放出部分に向かって拡散して前記放出表面から第1の蒸発速度で発せられる仕事関数低下粒子を放出する材料を保持するためのリザーバーとを有する熱電子陰極を収容している請求項1ないし5のいずれか1に記載の構成体。
【請求項7】
前記集束電極は、前記放出表面から放出された前記電子を集束させるための集束表面を有し、
調節可能な熱源が、前記集束表面上への仕事関数低下粒子の蓄積が防止される温度に前記集束表面を保つように構成されている請求項6に記載の構成体。
【請求項8】
前記集束電極は、さらに、前記陰極本体の少なくとも一部分に面し、使用中に前記陰極本体によって放出された熱放射を受け取るように配置された熱捕集表面を有し、前記熱捕集表面は、前記集束表面と熱伝達をする請求項7に記載の構成体。
【請求項9】
前記仕事関数低下粒子は、バリウムを含み、
前記調整可能な熱源は、900Kを上回り、1300Kを下回る前記集束表面温度を保つように構成されている請求項7または8に記載の構成体。
【請求項10】
前記集束表面には、電子放出を抑制するためのコーティングが設けられている請求項7ないし9のいずれか1に記載の構成体。
【請求項11】
前記調節可能な熱源は、前記仕事関数低下粒子が前記放出部分に向かって拡散して前記放出表面から第1の蒸発速度で発せられるように、前記リザーバーを加熱するように配置されている請求項7ないし10のいずれか1に記載の構成体。
【請求項12】
前記調節可能な熱源は、ヒーター陰極を有する請求項7ないし11のいずれか1に記載の構成体。
【請求項13】
前記調整可能な熱源は、前記陰極本体内に、又は前記陰極本体によって形成されたレセプタクル内に配置されている請求項7ないし12のいずれか1に記載の構成体。
【請求項14】
電子ビームを生成するための電子銃であって、
複数の電子を生成するための、請求項1ないし13のいずれか1に記載の陰極構成体と、
前記生成された電子を前記電子ビームに成形するための少なくとも1つの成形電極とを具備する電子銃。
【請求項15】
少なくとも1つの電子ビームレットを使用してターゲットを露光するための電子ビームリソグラフィシステムであって、このシステムは、
少なくとも1つの電子ビームレットを生成するためのビームレット生成器と、
少なくとも1つの変調されたビームレットを形成するために少なくとも1つの電子ビームレットをパターニングするためのビームレット変調器と、
少なくとも1つの変調されたビームレットをターゲットの表面上に投影するためのビームレット投影器とを有し、
前記ビームレット生成器は、請求項14に記載の電子銃を有する電子ビームリソグラフィシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陰極構成体、このような陰極構成体を有する電子銃、及びこのような電子銃を有するリソグラフィシステムに関する。さらに、本発明は、このような陰極構成体内の表面からの仕事関数低下粒子(work function lowering particle)の放出を調節するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子銃は、一般的に、放出表面と、放出された電子を所定の空間的に限定された軌道に向けるための集束電極と、放出された電子を加速し、ターゲットに向かって偏向させるための1つ又は複数のさらなる電極とを有する、電子放出源、すなわち陰極を有する。電子放出源は、熱電子陰極タイプであってよい。熱電子陰極は、陰極に、放出表面上に存在する材料の仕事関数を超えるのに十分なエネルギーを用いて電子を放出させる、発熱体例えば電気フィラメントによって加熱された陰極と定義されることができる。一般に、集束電極は、陰極の放出表面に比較的近接して位置され、陰極と同じ電位である。集束電極の形状は、放出表面から出された放出された電子が所望の様式ではね返されるように選定される。
【0003】
ディスペンサータイプの熱電子陰極は、蒸発させられた材料を連続的に交換するための尺度を有する熱電子陰極のカテゴリである。例えば、ディスペンサータイプの熱電子陰極は、加熱すると仕事関数低下粒子をリザーバーから放出表面に拡散させる材料で満たされた内部リザーバーを有する陰極本体を有することができる。放出表面における仕事関数低下粒子の存在が、電子放出に必要とされる最小エネルギーを低下させる。残念ながら、熱電子陰極内で拡散される仕事関数低下粒子が電子放出を刺激しうるだけでなく、粒子又は粒子から形成される反応生成物が集束電極の表面に堆積しうる。堆積は、例えば、仕事関数低下粒子は正に帯電したバリウムイオンであるが、集束電極は放出された電子を電子ビームにはね返すために負の電位に保たれるときに発生する。集束電極の表面上での仕事関数低下粒子の蓄積は、寸法変化と、場合によっては、その結果、集束電極の充電になり、これは、電子を集束させるために印加される電場を著しく乱す。集束電極が陰極放出表面に近接して位置されると、集束電極上での粒子蓄積は、陰極放出表面における放出分散も歪ませうる。さらに、集束電極上での粒子の蓄積は、その仕事関数を変化させることがあり、それが、集束電極からの電子放出の増加につながることがある。これらの影響が、生成される電子ビームの品質に悪影響を及ぼすことがある。
【0004】
電子ビームリソグラフィのための電子銃などの、熱電子陰極を使用するアプリケーションでは、陰極からの高く安定した電子放出及び電流密度が必要なことがある。これを達成するために、集束電極に対する放出表面のアライメントが重要である。小さなアライメント不良が、ビーム電流や電流密度などのビームの性質の許容できない変化をすでに引き起こしている可能性があるからである。
【発明の概要】
【0005】
より長い時間の期間、すなわち改善された寿命にわたって良好な性能を有する熱電子陰極を提供することが望ましい。この目的のために、第1の態様では、電子を放出するための放出表面が設けられた放出部分と、加熱されたとき放出部分に向かって拡散して放出表面から第1の蒸発速度で発せられる仕事関数低下粒子を放出する材料を保持するためのリザーバーとを有する熱電子陰極と、使用中に陰極の放出表面から放出された電子を集束させるための集束表面を有する集束電極と、集束表面上の仕事関数低下粒子の蓄積が防止される又は少なくとも最小限にされる温度に集束電極の集束表面を保つように構成された調整可能な熱源とを具備する陰極構成体が提供される。
【0006】
集束表面の温度は、仕事関数低下粒子が集束表面に到達する速度に等しい又はこれよりも高い第2の蒸発速度で仕事関数低下粒子が集束表面から放出される、すなわち蒸発する閾値温度に又はこれを上回るように保たれることができる。
【0007】
仕事関数低下粒子は、陰極の使用中に放出表面の温度により放出表面から出て、集束電極の表面上に、特に集束表面上に堆積しうる。集束表面からの仕事関数低下粒子の蒸発速度が集束表面上の仕事関数低下粒子の到達の速度よりも高い温度に集束表面を保つことによって、集束表面上の仕事関数低下粒子の蓄積が回避されることができる又は少なくとも最小限にされることができる。これにより、陰極構成体の寿命が増加されることができる。
【0008】
あるいは、又はより具体的には、電子を放出するための放出表面を有する放出部分と、加熱されたとき、放出部分に向かって拡散して放出表面から第1の蒸発速度で発せられる仕事関数低下粒子を放出する材料を保持するためのリザーバーとを有する熱電子陰極と、陰極の放出表面の近くに設けられ、使用中に陰極の放出表面から放出された電子を集束させるための集束表面を有する集束電極と、閾値温度を上回る温度に集束電極の集束表面を保つように構成された調整可能な熱源とを具備し、閾値温度は、第2の蒸発速度における集束表面からの仕事関数低下粒子の放出が、集束表面における仕事関数低下粒子の到達速度に等しい、又は第1の蒸発速度に等しい温度に相当する、陰極構成体が提供される。
【0009】
「〜の近くに」という用語は、本明細書において、陰極の放出部分とこの放出部分に面する集束電極の表面との間の約1〜15ミクロン(μm)の距離を指す。集束表面は、陰極放出表面から離れるように向いていることができ、特に、それに対して鈍角で方向付けられることができる。
【0010】
放出部分は、仕事関数低下粒子を有するリザーバーの上方に位置されたペレット、例えばタングステンを有する多孔性マトリックスを有することができる。あるいは、陰極は、含浸されたペレットを有してもよく、ペレット自体が仕事関数低下粒子を含有する。
【0011】
ピアス電極とも称される集束電極は、透過アパーチャの最小セクションにアパーチャ周縁によって結び付けられた電子透過アパーチャが設けられた円盤形部分を有することができる。アパーチャ周縁は、好ましくは、放出部分の近くに配置されることができる。アパーチャ周縁によって規定され、透過アパーチャの最小アパーチャを形成する平面と放出表面によって規定された平面との間の距離は、好ましくは約1〜15μmである。
【0012】
集束表面は、約138°の円錐角度を有する切頭円錐形切り込みを形成することができる。放出部分に面する内側電極表面と集束表面との間に形成される角度は、ピアス角と称されることが多い。集束表面及び内側電極表面によって結び付けられる集束電極部分の厚さは、薄くあるべきである。集束表面、特に集束表面と陰極の放出部分との間の距離は、放出表面によって放出された電子の軌道に、したがって陰極構成体によって生成される電子ビームの性質にも強く影響を与える。理想的には、陰極から放出された電子の軌道は、
放出表面から離れる実質的な長手方向に沿って、実質的に直線であるべきである。内側電極表面と放出部分との間の距離は、電子ビームの擾乱を引き起こす、放出表面から放出された電子の軌道の屈曲、すなわち湾曲を引き起こすことができる。
【0013】
透過アパーチャは、放出表面よりも小さくてよい。透過アパーチャ周縁と放出表面周縁が両方とも円形である場合、透過アパーチャ周縁は、一般的には100〜200μmの範囲で、放出表面周縁よりも小さい直径を有することができる。例えば、透過アパーチャは1mmの直径を有することができ、陰極放出表面直径は1.2mmの直径を有することができる。これにより、アライメント要件があまり重要でなくなることができる。集束電極と陰極との間にアライメント不良が存在する場合でも、放出された電子の流れは、一定のままであることができる。
【0014】
いくつかの実施形態では、熱電子陰極は、放出部分及びリザーバーを収容している、陰極ハウジングとも称される陰極本体を有する。放出部分は、好ましくは、放出表面が陰極本体の周囲リムと実質的に面一であるように配置されることができる。集束電極は、陰極本体の少なくとも一部分に面し、使用中に陰極本体によって放出された熱放射を受け取るように配置された熱捕集表面を有することができる。したがって、熱捕集表面は、陰極本体の少なくとも一部分に面するなどのために延長部を有する。熱捕集表面は、集束表面と熱伝達をする。好ましくは、熱捕集表面は、陰極本体の外表面を少なくとも部分的に囲んでいる。
【0015】
好ましくは、集束電極の熱捕集表面は、熱電子陰極内の一般的な熱放射変動の時間スケールで、集束表面と良好に熱接触する。熱接触は、集束表面と、熱捕集表面と、それらの相互接続部分を高い熱伝導性を有する1つ又は複数の材料、例えばモリブデン、ジルコニウム、もしくはチタンなどの金属、又はモリブデン、ジルコニウム及びチタンの少なくとも1つを有する合金、例えばTZM合金から作製することによって達成されることができる。
【0016】
いくつかの実施形態では、1つ又は複数の半径方向の隙間が、熱捕集表面と陰極本体の外表面との間に規定されている。半径方向の隙間は、陰極本体と集束電極の熱捕集表面との間の熱伝導を低下させることができる。陰極本体と集束電極との間の低下された熱伝導は、これらの2つの構造間の熱伝達に対する熱放射の相対的な影響を増加させる。陰極本体と熱捕集表面との間に半径方向の隙間を設けるために、3つ以上の半径方向のスペーサ又はタブが、円筒形シェルの内部に設けられることができる。
【0017】
熱捕集表面は、動作中に陰極本体によって放出された熱放射の吸収を可能にする。その後、集束電極の集束表面は、熱捕集表面から集束電極への熱的伝達によって加熱される。「熱放射」という用語は、本明細書において、例えば赤外振動数や光学振動数における、放射による加熱に関連する電磁効果及びエネルギー効果を指す。
【0018】
動作中、陰極本体は、放出部分が所望の速度で電子を放出するために、十分に高い温度に至らされる。陰極本体と放出部分とを加熱するさまざまな方法が用いられてよい。好ましくは、これらの方法は、陰極本体及び放出部分の加熱を実行するが、集束電極を直接的に加熱しない。
【0019】
調整可能な熱源は、使用中に陰極本体からの熱放射を介して集束電極の間接的な加熱を提供することができる。調整可能な熱源は、特に指定された電子放出が生じる公称温度まで、陰極を加熱するために提供されることができる。
【0020】
本明細書に説明される実施形態による、陰極構成体の設計によって、特に集束電極の配
置形状、場合によっては集束電極の材料と、陰極本体と集束電極との間の相対距離によって、集束表面は、上で定義された温度を達成することができる。特に、陰極本体から放射された熱を受ける内側集束電極表面積と集束電極からの熱放射による冷却を提供する外側集束電極表面積との関係は、集束電極の温度に影響を与える。
【0021】
いくつかの実施形態では、調整可能な熱源は、仕事関数低下粒子が放出部分に向かって拡散して放出表面から第1の蒸発速度で発せられるように、リザーバーを加熱するように配置されることができる。
【0022】
調整可能な熱源は、ヒーター陰極を有することができ、これは、ヒーター陰極放出表面から放出された電子によって陰極構成体のリザーバーを加熱するように配置されることができる。ヒーター陰極は、放出された電子が、例えばヒーター陰極集束電極によって、熱電子陰極又はその一部分に衝突するビームに集束されるように配置されることができる。ヒーター陰極は、約1〜10mAのビーム電流を有する電子ビームを生成するように構成されることができる。
【0023】
あるいは、調整可能な熱源は、陰極本体内に、又は陰極本体によって形成されたレセプタクル内に配置されることができる。調整可能な熱源は、リザーバーと陰極本体とを加熱するために、熱電子陰極内に配置された加熱フィラメントを有することができる。あるいは、調整可能な熱源は、レーザーを有してもよく、レーザーによって放出されたレーザー光ビームは、リザーバーと陰極本体とを加熱するように構成される。また、これらの構成では、集束電極は、陰極本体からの熱放射を介して加熱されることができる。
【0024】
あるいは、調整可能な熱源は、集束電極を直接的に加熱するために配置されることができる。これは、集束電極内に配置されたヒータフィラメントによって実現されてもよいし、レーザー照射によって集束電極を加熱することによって実現されてもよい。あるいは、調整可能な熱源は、上記のように配置されたヒーター陰極を有してもよく、このヒーター陰極によって放出された電子の一部分は、これを直接的に加熱するために集束電極に向かってそらされることができる。
【0025】
いくつかの実施形態では、集束電極は、陰極本体を囲んでいるシェルを有し、このシェルには、少なくともその一部分が熱捕集表面を形成している内側表面が設けられている。シェルは、円筒形であることができる。
【0026】
実質的に、シェルの内側表面全体が熱捕集表面を形成することができる。あるいは、内側表面の1つ又は複数の部分が熱捕集表面を形成してもよい。熱捕集表面の面積は、集束電極によって吸収される熱放射の量に影響を与える。集束電極は、外側集束電極表面からの熱放射によって熱を失うことがある。そのため、集束電極の内側面積と外側面積との比は、集束電極の温度に影響を与える。比較的大きな外側面積は、集束電極のより多くの冷却を意味する。このようにして、固定された陰極温度の場合、集束電極の配置形状に応じて、集束表面の900K〜1300Kの範囲内の温度が到達可能である。
【0027】
したがって、例えば、熱捕集表面の面積と、陰極本体に対するその方向、例えば陰極本体と熱捕集表面との間の距離と、集束電極の外部表面領域とを調整することによって、集束電極の温度が、特に集束表面の温度が調整可能である。
【0028】
集束電極に到達する陰極本体からの熱放射量を制限するために、1つ又は複数の熱遮蔽要素が陰極本体と集束電極との間に配置されることができ、より低い熱吸収を提供するコーティング又は層が集束電極の内側表面上に設けられることができる。これにより、集束電極の配置形状が、したがって、その温度が調整されることができる。
【0029】
いくつかの実施形態では、放出部分には、放出表面を囲んでいる非放出表面が設けられ、集束電極は、放出部分に面している内側電極表面を有し、内側電極表面と非放出表面との少なくとも一方には、集束電極と放出表面との間にスペーシングを設けるための、zパッドとも称される3つのスペーシング構造が設けられている。
【0030】
非放出表面は、放出表面を囲み、好ましくは放出表面と面一である、陰極本体のリムを有することができる。スペーシング構造は、アパーチャ周縁によって規定された平面と、放出表面によって規定された平面とを互いにほぼ平行に、長手方向に間隔を空けてアライメントされることができる。スペーシング構造は、好ましくは、集束電極と放出表面との間の熱伝導を制限するように、放出部分と比較して小さい寸法を有する。放出表面は、例えば、0.5〜6平方ミリメートル程度の表面積を有してもよく、各スペーサ構造の最大断面は0.01〜0.1平方ミリメートル程度であってよい。スペーシング構造は、好ましくは、1〜10μmの高さと、約100μmの幅とを有する。スペーシング構造は、集束電極と同じ材料から作製されることができる。あるいは、スペーシング構造は、他の材料、例えばアルミニウム(Al)又は熱絶縁材料を含むことができる。スペーシング構造は、実質的に円筒形であることができる。あるいは、スペーシング構造は、他の適切な形状、例えば角錐形又は円錐台形を有してもよい。
【0031】
小さな、定義された寸法の3つのスペーシング構造によって、非放出表面と集束電極、特に内側電極表面との間の、安定し明確に定義された距離及び制御された機械的接触が得られることができる。これにより、放出部分と集束電極との間の熱伝導が制限されることができる。
【0032】
熱電子陰極及び集束電極は、好ましくは、陰極から、すなわちハウジング又は放出表面から、集束電極への直接的熱伝導が回避される又は少なくとも最小限にされるように配置される。陰極から集束電極への熱的伝達は、したがって、主に熱放射によって行われる。熱放射を介した熱伝達は、熱伝導による熱伝達よりも安定し、再現可能であると考えられる。熱伝導は、例えば、接続された構造要素間の接触圧力及び接触面積に依存する。
【0033】
スペーシング要素によって陰極本体と集束電極との間に形成される機械的接触の熱的安定性を提供するために、スペーシング要素は、焼結を可能にしない1つ又は複数のブロッキング層を有することができ、このブロッキング層は、好ましくは導電性である。あるいは、機械的接触は、焼結を可能にするが焼結度が時間とともに増加しても熱伝導度が変化しないように構成された層を介して形成されてもよい。
【0034】
あるいは、陰極の使用中に焼結が生じた場合でも、陰極と集束電極との間の熱伝導が適時に変化しないように、大きな接触面積、例えば最大にされた接触面積が非放出表面と内側電極表面との間に提供されてよい。
【0035】
シェルは、集束電極と支持構造との少なくとも一方に対して陰極本体を制限するための制限構成体(confinement arrangement)を収容するための1つ又は複数の角度方向隙間(angular spacing)を有することができる。これらは、シェル構造にスリット又は切り込みとして形成されることができる。
【0036】
陰極構成体は、支持構造を有することができ、支持構造には、支持構造に対する集束電極と陰極本体との少なくとも一方の移動を限定又は制限するための制限構成体が設けられている。これにより、陰極本体は、集束電極に対して拘束されることができる。集束電極は、支持構造に対して拘束されることができる。支持構造は、以下に説明される電子銃内に支持電極を有してもよいし、その一部を形成してもよい。
【0037】
制限構成体(confining arrangement)は、陰極本体と集束電極との少なくとも一方の1つ又は複数の表面領域に面するが、これからある距離のところに配置される表面領域を有する1つ又は複数のエンドストップを有することができる。これにより、制限構成体と陰極構成体との間の物理的接触が回避され、陰極構成体と支持構造との間の熱伝導を最小限にしうる。制限構成体は、1つもしくは複数の集束電極エンドストップあるいは1つもしくは複数の陰極エンドストップを有することができる。集束電極エンドストップ及び陰極エンドストップは、単一ユニットであってもよいし、別個の構造内に有してもよい。
【0038】
この構成によって、陰極が、使用中に意図された方向に配置されたとき、陰極本体は、重力によって内側電極表面に、特にスペーシング構造に載っている。同様に、集束電極は、重力によって支持構造に載る。この方向では、エンドストップは、陰極構成体の表面からある距離のところに配置される。しかしながら、陰極構成体が、支持構造とともに、意図された方向に対して傾けられる、例えば上下反対にされる場合、エンドストップは、陰極構成体の要素がばらばらになり、支持構造から落ちるのを防止する。
【0039】
仕事関数低下粒子は、バリウムを含むことができる。この場合、調整可能な熱源は、好ましくは、900Kの閾値温度を上回る集束電極の集束表面の温度を保つように構成される。900Kを上回る集束表面温度を保つと、集束表面上に堆積されている可能性のあるバリウムが集束表面から蒸発する速度は、放出表面から出たバリウム粒子が集束表面に到達する速度よりも高い。その結果、集束表面上のバリウム粒子の蓄積が減少される。特に、この蓄積は、単一の単層に減少されることができる。理想的には、バリウム粒子の堆積及び最終的には蓄積が回避されることができる。
【0040】
その混入を回避するために上昇された温度に集束電極を保つことが望ましいが、増加された集束電極温度は、集束表面からの電子放出の確率を増加させる。集束表面の温度は、陰極本体の温度よりも低くあるべきである。
【0041】
いくつかの実施形態では、調整可能な熱源は、さらに、1300Kのさらなる閾値温度を下回る集束表面の温度を保つように構成されている。1300Kを下回る電極温度を保つことによって、好ましくは集束表面が炭酸塩化された又は仕事関数増加コーティングを用いてコーティングされたことと組み合わせて、集束電極によって放出された電子の流れは、陰極の放出表面によって放出された電流の0.01〜0.1%を下回ったままである。
【0042】
集束表面は、1100Kを上回る温度で仕事関数を増加させる処理を受けることができる。これにより、電子放出もまた、1100Kを上回る温度において抑制されることができる。例えば、集束電極又は少なくとも集束表面は、電子放出抑制コーティングでできていてもよいし、これを用いてコーティングされてもよい。集束電極、特に集束表面は、ジルコニウムを用いてコーティングされてもよいし、チタン−ジルコニウム−モリブデンを含む合金を用いてコーティングされてもよい。あるいは、集束表面は炭酸塩化されてもよい。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態は、陰極本体を収容するためのキャビティを規定する円筒形シェルと、外表面に円形の電子透過アパーチャと集束表面とが設けられた前面カバーとを有する集束電極に関し、熱捕集表面が円筒形シェルの内側表面に設けられている。シェルは、熱電子陰極などの陰極を収容するための内側空隙、すなわちキャビティを囲んでいると考えられうる。円形のアパーチャによって、対称的な電子ビームが生成されることができる。この集束電極は、本明細書において説明される陰極構成体のいずれか1つの集束電極であってよい。
【0044】
円筒形シェルは、集束電極と陰極本体との少なくとも一方を支持構造に対して制限するための制限構成体を収容するための角度方向隙間を有することができる。これは、上に説明されたような制限構成体であることができる。
【0045】
集束表面は、好ましくは、前面カバーの内側電極表面に対してある角度で方向付けられ、これにより、上に説明されたように、電子透過アパーチャのところに鋭角が形成される。したがって、集束表面及び内側電極表面は、透過アパーチャのところに収束している。
【0046】
集束電極は、内側電極表面に、集束電極と陰極本体との間のスペーシングを設けるための3つのスペーシング構造を有することができる。これらのスペーシング構造は、陰極構成体に関して上に説明されたスペーシング構造に類似してもよいし、これと同一であってもよい。
【0047】
集束電極は、円筒形シェルの内部に、陰極本体と集束電極との間に1つ又は複数の半径方向の隙間を設けるために、半径方向のスペーサを有することができる。好ましくは、3つ又は4つの半径方向のスペーサが設けられる。
【0048】
表面からの仕事関数低下粒子の放出を調節するための方法が提供される。この方法は、上に説明された実施形態のいずれか1つによる陰極構成体を用意することと、集束表面に到達する又は陰極の放出表面から発せられる仕事関数低下粒子の蒸発速度に等しい蒸発速度における集束表面からの仕事関数低下粒子の放出に対応する閾値温度を上回るように集束電極の温度を保つこととを有する。すなわち、集束電極は、仕事関数低下粒子やその反応生成物の蒸発フラックスが陰極の放出表面から発せられる仕事関数低下粒子の集束表面における到達速度に等しい温度に保たれる。好ましくは、集束表面は、集束表面からの仕事の蒸発速度が集束電極上への仕事関数低下粒子やその反応生成物の堆積速度よりも高い温度に保たれることができる。好ましくは、集束表面は、これが行われる可能な最低温度に保たれる。
【0049】
本方法は、集束表面からの電子の放出によって作り出される第1の電流密度に対応するさらなる閾値温度を下回るように集束電極の温度を保つことを含むことができ、第1の電流密度は、陰極の放出表面からの電子の放出によって作り出される第2の電流密度の0.01〜0.1%である。
【0050】
仕事関数低下粒子は、バリウムを含むことができる。本方法は、陰極構成体の使用中に集束電極の温度を900Kないし1300Kに保つことを含むことができる。
【0051】
陰極構成体を有する電子銃によって生成される電子ビームの高く安定した電流密度を得るために、集束電極に対する陰極のアライメントが重要である。第2の態様によれば、陰極構成体が提供され、この陰極構成体は、
長手方向に電子を放出するための、放出周縁で境界が定められた放出表面を収容している陰極本体と、
横断方向に陰極本体を少なくとも部分的に囲み、動作中に放出表面によって放出された電子を集束させるために放出表面の近くに電子透過アパーチャを有する集束電極とを具備し、アパーチャは、アパーチャ周縁で境界が定められている。
【0052】
陰極本体は、アライメントされた位置から最大横断距離を超えて集束電極内に移動可能に配置され、アパーチャ周縁は、最大横断距離を超えるオーバーラップ距離にわたって、放出周縁を超えて放出表面の上に横断方向に延びている。
【0053】
第2の態様による陰極構成体の陰極は、第1の態様に関して説明されるような熱電子陰極であることができる。
【0054】
集束電極は、第1の態様に関して上に説明されたのと同じようにして、集束電極上への仕事関数低下粒子の蓄積を回避するなどのために加熱されることができる。
【0055】
放出周縁は、放出表面と陰極本体の周囲リムとの間の境界、すなわちインターフェースによって形成されることができる。放出表面は、好ましくは、陰極本体のリムと面一である。放出表面は、陰極ペレット、例えば第1の態様による陰極構成体の実施形態に関して説明された仕事関数低下粒子を有する、リザーバー上に配置された多孔性ペレット内に含まれることができる。
【0056】
アパーチャ周縁は、放出周縁の内部に径方向に配置されている。すなわち、放出周縁は、アパーチャ周縁よりも大きい表面積を囲んでいる。したがって、放出表面は、アパーチャ周縁の面積よりも大きい。言い換えれば、集束電極は、放出周縁を超えて放出表面の上に横断方向に延びている。オーバーラップ距離は、集束電極内の陰極本体にとって可能な遊びの最大量に関連する最大横断距離よりも大きいので、アパーチャは常に放出表面の上に完全に配置されている。すなわち、陰極本体が、集束電極に対して完全にアライメントされた位置になくても、このことは、陰極によって放出された電子の流れに影響を与えない。このようにして、陰極本体が、アライメントされた位置から外れても、電子透過アパーチャは、長手方向で見られる、放出表面上に完全に投影される。
【0057】
最大横断距離は、好ましくは10〜35μm、より好ましくは約10〜15μmの範囲内にある。最大横断距離とは、陰極本体がアライメントされた中心位置から移動可能な距離のことである。
【0058】
オーバーラップ距離は、10μm〜100μmの範囲内にあることができ、好ましくは50μmに等しくてよい。これにより、機械公差が、透過周縁がサイズに関して放出周縁と等しい陰極構成体の場合の約1μmから約50μmに緩和されることができる。
【0059】
上に説明されたように、集束電極は、放出部分に面する集束電極の内側電極表面が放出表面又は放出表面と面一の陰極本体のリムから1〜15μm、好ましくは1μm又は5μmの距離のところに位置決めされることができるように配置されることができる。集束電極は、第1の態様に関して上に説明された集束電極であることができる。
【0060】
アパーチャ周縁と放出周縁とは、同様に成形されることができ、好ましくは円形である。円形のアパーチャ周縁は、対称的な電子ビームの形成を可能にする。
【0061】
集束電極は、好ましくは、放出表面に面する内側電極表面と、集束電極と放出部分との間にスペーシングを設けるために配置された3つのスペーシング要素とを有する。これらのスペーシング要素は、上に説明されたスペーシング要素であることができる。
【0062】
半径方向スペーサ、すなわちタブは、好ましくは3つ又は4つであり、円筒形シェルの内側表面と陰極本体との間に環状間隙を設けるために、集束電極によって形成された円筒形シェルの内側表面上に設けられることができる。
【0063】
第3の態様によれば、集束電極が提供される。この集束電極は、陰極本体を有する陰極を収容するためのキャビティを規定する円筒形シェルと、円筒形シェルの第1の端に位置された前面カバーとを具備し、この前面カバーは、内側電極表面と、集束表面と、電子透過アパーチャとを有する。円筒形シェルは、支持構造に対して集束電極と陰極本体との少
なくとも一方を制限するための制限構成体を収容するための角度方向隙間を有する。
【0064】
第1の態様や第2の態様の集束電極は、第3の態様による集束電極であることができる。したがって、第3の態様による集束電極に関して上に説明されたさまざまな特徴、実施形態、及び利点は、第1の態様及び第2の態様に関して上に説明された特徴に類似することができる。制限構成体は、第1の態様に関して上に説明された制限構成体であることができる。
【0065】
角度方向隙間は、シェル構造内のスリット又は切り込みによって設けられることができる。切り込みは、円筒形シェルの第2の端から延びており、第1の端からある距離のところで終わっていることができる。この距離は、好ましくは、長手方向に沿った、陰極本体の第1の端の寸法よりも大きい。これにより、角度方向隙間を通って突き出すように配置され、陰極本体の表面に面する制限構成体のエンドストップ同士の間に、ある距離が与えられることができる。
【0066】
集束表面は、前面カバー内の円錐形切り込みによって配置されることができる。集束表面と内側電極表面は、透過アパーチャ周縁を形成するために、透過アパーチャのところで収束していることができる。
【0067】
内側電極表面は、陰極前表面、特に放出表面を囲んでいる非放出表面を支持するように適合された3つのスペーシング要素を有することができる。上に説明されたように、スペーシング構造は、放出表面によって規定された平面を透過アパーチャによって規定された平面と平行にアライメントするように構成されている。
【0068】
円筒形シェルは、円筒形シェルから延びた支持要素を有することができる。支持要素及び支持構造は、集束電極が、重力によって、3つの支持要素と支持構造との間に形成される3つの実質的な点接触を介して支持構造に載るように構成されることができる。集束電極の横断運動や長手方向軸のまわりでの集束電極の回転を制限するさらなる支持要素が設けられることができる。
【0069】
第4の態様によれば、陰極構成体は、ソース陰極構成体を有し、ヒーター陰極構成体が設けられる。ソース陰極構成体は、第1の態様又は第2の態様の任意の実施形態による陰極構成体であることができる。
【0070】
ソース陰極構成体は、陰極本体と、電子を放出するための放出表面を有する放出部分と、加熱されたとき、仕事関数低下粒子を放出するための材料を有するリザーバー又はペレットとを有し、リザーバーやペレットは、仕事関数低下粒子が放出表面に向かって拡散するように構成されている。ヒーター陰極構成体は、材料が仕事関数低下粒子を放出し、放出表面が電子を放出するように、陰極本体の一部分を加熱するように構成されたヒーター陰極を有する。
【0071】
ヒーター陰極構成体は、ヒーター陰極から放出された電子を電子ビームに集めるように配置された集束電極を有することができる。ヒーター陰極及びソース陰極は、好ましくは、ヒーター陰極構成体によって生成された電子ビームが、レセプタクルと称される、陰極本体の一部分によって囲まれた空間(volume)内に集束されるように、互いに対して配置される。レセプタクルは、ソース陰極構成体のリザーバー又はペレットに面する最も内側の端表面を有するようにして配置される。レセプタクルは、最も内側の端表面によって一端で閉じ、レセプタクルから脱出する電子の量を最小限にするなどのための深さを有する、中空円筒を形成することができる。
【0072】
ヒーター陰極構成体及びソース陰極構成体は、好ましくは、長手方向軸に沿って同軸にアライメントされる。特に、ヒーター陰極集束電極は、陰極本体と、ソース陰極集束電極と、あるいはこれらの両方と同軸にアライメントされることができる。
【0073】
ヒーター陰極は、Iタイプの熱電子陰極、例えば含浸されたペレットを有する陰極などの熱電子陰極を有することができる。ヒーター陰極は、フィラメントワイヤによって加熱されることができる。ヒーター陰極は、標準的な熱電子陰極であってよい。
【0074】
ソース陰極構成体は、ヒーター陰極構成体のための陽極として機能することができる。1kV程度の電位差が、ソース陰極構成体とヒーター陰極構成体との間に印加されることができる。
【0075】
ヒーター陰極の集束電極は、−6kVの電位を有することができ、同じ電位がヒーター陰極に印加される。電子銃内に位置されたとき、ヒーター陰極集束電極は、GM1電極と称されうる。ヒーター陰極フィラメントは、ヒーター陰極集束電極に対して+8Vの電位を有することができる。ソース陰極構成体は、−5kVの電位を有することができる。
【0076】
電子ビームを生成するための電子銃、すなわち電子源が提供される。この電子銃は、上に説明された、複数の電子を放出するための態様又は実施形態のいずれかによる陰極構成体と、放出された電子を電子ビームに成形又は集束させるための少なくとも1つの成形電極とを有する。
【0077】
電子銃は、1つ又は複数の成形電極を有することができる。例えば、電子銃は、3つの成形電極を有することができる。成形電極は、各々、成形アパーチャとも称されるアパーチャが設けられた導電性本体を有することができる。成形アパーチャは、同軸にアライメントされる。
【0078】
好ましくは、成形アパーチャは、集束電極の透過アパーチャと同軸にアライメントされる。
【0079】
本発明のいくつかの実施形態は、少なくとも1つの電子ビームレットを使用してターゲットを露光するための電子ビームリソグラフィシステムに関し、このシステムは、少なくとも1つの電子ビームレットを生成するためのビームレット生成器と、少なくとも1つの変調されたビームレットを形成するために少なくとも1つの電子ビームレットをパターン化するためのビームレット変調器と、少なくとも1つの変調されたビームレットをターゲットの表面上に投影するためのビームレット投影器とを有し、ビームレット生成器は、上に説明された実施形態のいずれか1つによる電子銃を有する。
【0080】
さまざまな実施形態が、図面に示される実施形態を参照してさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0081】
図1a図1aは、陰極構成体を概略的に示す断面図である。
図1b図1bは、図1aの陰極構成体の断面の一部分を概略的に示す斜視図である。
図2a図2aは、陰極構成体を概略的に示す斜視図である。
図2b図2bは、陰極構成体のための集束電極の一部分を概略的に示す斜視図である。
図3図3は、陰極構成体を概略的に示す断面図である。
図4図4は、支持構造内に、特に電子銃内に取り付けられた陰極構成体を概略的に示す断面斜視図である。
図5図5は、電子銃の一部を概略的に示す断面図である。
図6図6は、電子ビームリソグラフィシステムを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0082】
図並びに以下の説明は、さまざまな実施形態の例並びに図示することを意図しており、限定するものと解釈されるべきではない。代わりの実施形態が、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、可能でありうる。
【0083】
「長手」方向は、図においてZ軸によって示される方向を指し、「横断」方向は、Z軸に垂直な任意の方向、すなわち、X軸及びY軸によって張られる平面内の任意の方向に対応する。「半径」方向は、X軸及びY軸によって張られる平面内の横断方向を指し、Z方向に沿って中心軸から離れるように指し示す。この取り決めは、非限定的であるようにして使用され、以下に説明される例示的な実施形態における空間的関係を明らかにする働きをするにすぎない。
【0084】
陰極構成体20は、電子ビームを形成するために、複数の電子を放出するように構成されている。陰極構成体20は、好ましくはディスペンサータイプである熱電子陰極と、集束(ピアス)電極40とを有する。図1aに示される熱電子陰極は、放出表面32が設けられた放出部分30を収容している陰極本体又はハウジング22と、加熱されたとき仕事関数低下粒子70を放出する材料を保持するためのリザーバー38とを有する。放出部分は、リザーバー38が陰極内のシールされたスペースを与えるように、陰極本体22の内側表面にシールされた多孔性ペレット本体28、例えばタングステンペレットを有することができる。ペレット本体28は、放出表面32を形成している第1の端表面と、リザーバー38に面している第2の端表面とを有するように配置された円筒形であることができる。放出部分30は、陰極本体22の第1の端24に設けられている。陰極本体22は、放出部分30とリザーバー38とを封じ込めている外表面36を有する中空本体である。好ましくは、第1の端24において、陰極本体22は、集束電極40に面している表面、すなわちリム34を形成するのに十分な厚さを有する。表面34は、好ましくは、放出表面32と完全にアライメントされている。このリム34は、以下では、非放出表面34と称される。好ましくは、非放出表面34と放出表面32とが、単一の陰極表面を形成するために、例えば、ろう付けによって、互いに接合される。
【0085】
リザーバー38は、放出部分30に面している開端を備えたカップ形状であることができ、加熱するとリザーバー38から多孔性ペレット本体28を通って放出表面32に拡散する仕事関数低下粒子70を含む材料で満たされていることができる。好ましくは、粒子は、放出表面32において仕事関数低下層を形成する。このような仕事関数低下層は、陰極放出表面32からの電子放出に必要とされる最小エネルギーを減少させ、電子放出の均一性をさらに改良することができる。仕事関数低下粒子は、陰極の使用中に第1の蒸発速度Φcで放出表面32から発せられる。これら粒子は、後で放出表面32に到達する粒子70と置き換えられる。好ましくは、ディスペンサータイプの熱電子陰極は、放出表面32における仕事関数低下粒子の継続的な置き換えを可能にする。
【0086】
集束電極40は、導電性材料でできている。集束電極40は、放出表面32から放出された電子を透過させるための電子透過アパーチャ44が設けられた平面状本体、例えばプレートを有する。電子透過アパーチャ44は、好ましくは、円対称電子ビーム生成を可能にするために、円形である。
【0087】
集束電極40は、陰極の放出表面32から放出された電子を集束させるための集束表面42を有する。集束表面42は、放出表面32から出た電子を放出表面32から離れるような所望の方向にはね返すのに適した電場分散を生成することを可能にする形状を有する。図1a並びに図1bでは、集束電極40の集束表面42は、切頭円錐形切り込みの外側
に傾斜した表面によって規定され、この集束表面42は、透過アパーチャ44を囲んでいる。
【0088】
陰極構成体20の集束電極40の少なくとも一部分は、放出表面32の近くに設けられている。本明細書における「近く」との用語は、放出表面32によって規定されたS2平面と透過アパーチャ平面S1との間の約1〜15μmの距離Dに相当する。好ましくは、約5μmの、場合によってはさらに小さい長手方向の隙間60が、内側電極表面46と陰極表面との間に形成される。透過アパーチャ平面S1は、電子透過アパーチャ44に面している集束表面42のエッジによって張られる。したがって、図1a並びに図1bの透過アパーチャ平面S1は、電子透過アパーチャが最小直径を有する平面内に位置されている、すなわち、放出表面32に最も近接して位置されている。好ましくは、透過アパーチャ平面S1は、放出表面32によって放出された電子に対して実質的に等方性の集束効果をもたらすために、放出表面32と平行にアライメントされる。
【0089】
一実施形態では、アパーチャ周縁45は、放出表面32よりも小さい断面に広がっていることができ、これにより、内側電極表面46が、図3に関して説明される陰極構成体に類似して、放出表面32の上に重なりを有するようにして延びている。これにより、透過アパーチャ周縁の突出部は、常に、放出表面32の周縁の中に完全に位置されることができる。
【0090】
熱電子陰極構成体の寿命は、集束表面42からの仕事関数低下粒子の放出又は蒸発の速度が放出表面32から発せられる仕事関数低下粒子が集束表面42に到達する速度Φcに等しい又はこれを超える閾値温度Te−を上回る温度Teに集束電極の集束表面42を保つことによって延ばされることができる。このような閾値温度Te−を上回るように集束表面42を保つことが、集束表面42上への仕事関数低下粒子の堆積によって形成される層の発達を防止する。このような粒子の堆積は、陰極構成体20の性能に悪影響を与える。言い換えれば、集束表面42の十分に高い温度は、集束表面42上の仕事関数低下粒子の蓄積を減少させ、大部分は、これを防止すらする。
【0091】
陰極の陰極本体22及び放出部分30内で熱を生成するさまざまな方法が用いられることができる。好ましくは、これらの方法は、陰極本体22や放出部分30の熱を引き起こすが、集束電極40を直接的に加熱しない。
【0092】
集束表面42を十分に高い温度に至らせることを達成するために、陰極構成体20は、集束電極40も加熱されるようにして陰極を加熱するための調整可能な熱源を有する。好ましくは、集束電極40は、陰極本体22によって放出された熱放射Q、例えば赤外線放射によって加熱される。陰極本体22及び集束電極40は、陰極本体22からの、及び場合によっては同じく放出表面32からの熱伝達が、その結果、上記で特定された範囲内の集束表面温度になるように配置され構成されることができる。
【0093】
調整可能な熱源と組み合わせた、陰極本体及び集束電極の配置形状及び相対的配置は、陰極動作中に集束表面42の温度を制御するように構成されている。調整可能な熱源の適切な調整によって、電極温度Teは、電極温度Teが、陰極の放出表面から発せられる仕事関数低下粒子の速度がこのような仕事関数低下粒子が集束表面42から蒸発する速度に実質的に等しい閾値温度Te−を上回るように達成されることができる。
【0094】
図1aに描かれる実施形態では、調整可能な熱源は、熱電子陰極を加熱するように配置された補助陰極、すなわちヒーター陰極50の形態をとる。ヒーター陰極50は、好ましくは、電子が放出される速度を制御するための調整可能な電源を有し、したがって、熱電子陰極に供給される熱エネルギーを調節することが可能である。ヒーター陰極50は、例
えば、約1〜10mAのビーム電流を有する電子ビームを生成するように構成されることができ、放出された電子は、1キロボルトの電位差を超えて陰極本体22に向かって加速され、その結果、約1〜10Wの電力をもたらす。このような電力は、ソース陰極を約1500Kの温度に至らせるには十分である。
【0095】
ヒーター陰極50は、レセプタクル又はファラデーカップ25と称される陰極本体22の後側部分25に向かって電子を放出するように配置されている。好ましくは、レセプタクル25によって受け取られる電子の運動エネルギーの一部分が熱に変換される。レセプタクル25は、ヒーター陰極50から直接的に、又は放出表面32から離れるように向けられているリザーバー38の端に隣接する表面上への電子の衝突後の後方散乱電子の形態で間接的に、のいずれかで、電子を受け取るように配置されている。レセプタクル25は、電子の脱出を最小限にするための深さを有する。電子の衝突の結果として、電子の運動エネルギーが熱に変換され、その結果、レセプタクル25及びリザーバー38が加熱される。したがって、ヒーター陰極50(又は他の調整可能な熱源)から電子を受け取ると、陰極本体22が加熱される。加熱された陰極本体22は、外表面36から少なくとも部分的に外側に放射される熱(例えば赤外線)放射Qを介して、その熱エネルギーのうちいくらかを失う。陰極本体22を囲んでいる集束電極40の熱捕集表面52は、陰極本体22によって放出された熱放射Qの大部分を受け取り、吸収する。同様に、熱捕集表面52は、非放出表面34から熱放射を受け取るために、内側電極表面46上に配置されることができる。熱捕集表面52は、集束電極表面42と良好に熱伝達をする。その結果、受け取られた熱エネルギーのかなりの部分が集束表面42に伝導される。
【0096】
したがって、調整可能な熱源は、制御可能な量の熱エネルギーをリザーバー38に供給し、熱放射によって集束電極40に伝達される熱の量に影響を与える。したがって、調整可能な熱源は、概して集束電極40に、特に集束電極40の集束表面42に供給される熱エネルギーを間接的に制御する。
【0097】
代わりの実施形態では、調整可能な熱源は、集束電極40に直接的に熱的に接続された発熱体によって形成されることができる。例えば、フォーカス電極内に配置される電気フィラメントが使用可能である。あるいは、ヒーター陰極から放出された電子ビームの一部は、これを直接的に加熱するためにそらされ、フォーカス電極に向かって向けられることができる。
【0098】
代わって、あるいは追加的に、他の熱源が、熱電子陰極を加熱するために使用されてもよい。例えば、制御可能な電気加熱フィラメントが、陰極本体22内に設けられてもよいし、レセプタクル25内に設けられてもよい。また、この場合、集束電極40は、陰極本体22からの熱放射によって加熱されることができる。
【0099】
いくつかの実施形態では、電気フィラメントなどのディスペンサータイプの熱電子陰極においてリザーバーを加熱するための標準的な熱源に加えて、調整可能な熱源が使用されることができる。
【0100】
図1a、図1b、図2a並びに図2bに示される実施形態では、集束電極40は、陰極本体22を囲んでいるシェル54を有する。あるいは、シェル54は、陰極本体22を部分的に囲んでいてもよい。シェル54には、内側表面が設けられ、シェル54は、中空円筒の形状をとることができる。内側表面の少なくとも一部分は、陰極本体22によって放出された熱放射Qを吸収するように構成された熱捕集表面52を形成する。例えば図1aに示されるように、熱捕集表面52は、陰極本体22の外表面36を囲み、臥位表面36の内側に面している。内側電極表面46は、非放出表面34から放出された熱放射を吸収するように構成されることができる。吸収された熱放射Qは、集束電極40と、特にその
集束表面42とを加熱する。上に説明されたように、集束表面42は、熱捕集表面52と良好に熱伝達をする。熱捕集表面52は、集束電極40と、特にその集束表面42とを加熱するために、陰極本体22によって放出された熱放射Qを吸収することによって、陰極本体22によって放出された熱放射Qの効率的な再使用を可能にする。
【0101】
好ましくは、シェル54と陰極本体22とは、同軸にアライメントされる。半径方向の隙間58が、外側陰極表面36と熱捕集表面52との間に規定されている。半径方向の隙間58は、熱捕集表面52と外側陰極表面36との間に半径方向に延びており、第1の陰極端24から長手方向Zに沿って延びている。半径方向の隙間は、図2bに示されるように、第1の陰極端24に面するシェル54の内側表面のまわりに周方向に分散された4つの半径方向のスペーサ、すなわちパッド59によって維持されることができる。
【0102】
内側電極表面46は、好ましくは、図1b並びに図2bに示されるように、透過アパーチャ44の周囲に沿って均等に分散された3つのスペーシング構造、すなわちコンタクトパッド48を有する。スペーシング構造48は、非放出表面34と接触しているように配置されている。3つのスペーシング構造48は、実質的に円筒の形状を有することができる。各スペーシング構造48は、好ましくは、集束電極40と非放出表面34との間の熱伝導を最小限にするように、放出部分30の断面と比較して小さい横断面を有する。スペーシング構造48は、内側電極表面と同じ材料から形成されてもよいし、内側電極表面と異なる材料から形成されてもよい。3つのスペーシング構造48の末端は、平面S2にわたる3つの一致しない点を規定する。スペーサ構造48は、内側電極表面46と非放出表面34との間に長手方向の隙間60を同時に規定しながら、放出表面32と透過アパーチャ平面S1の正確な平行なアライメントを維持する助けとなる。
【0103】
好ましくは、陰極本体22とシェル54との間の半径方向の隙間58において真空が達成される。このような真空は、陰極本体22と集束電極40との間の熱伝導を低下させる(さらには、なくす)熱絶縁を提供する。陰極本体22と集束電極40との間の熱伝導を最小限にすることによって、熱放射Qは、主要な熱伝達機構となる。熱伝導効果による高い温度勾配は、このように回避され、集束電極40内のより均質な温度分布をもたらす。さらに、集束電極は、より早く平衡温度に到達することができる。
【0104】
先に述べられたように、陰極の放出表面32から発せられる仕事関数低下粒子は、集束電極40上に、特に集束表面42などの、放出表面に極めて近接した表面上に、少なくとも部分的に沈殿することができる。しかしながら、集束表面42が十分に加熱された場合、このような堆積された粒子は、表面42から放出される、すなわち蒸発する。このような仕事関数低下粒子の蒸発は、電極温度Teに応じて速度Φeで生じる。
【0105】
したがって、ヒーター陰極50によって出力される電力の調節は、集束電極40に供給される熱エネルギーの量に対する制御を与える。ヒーター陰極50の出力の適切な調整によって、陰極本体22の加熱の量、及び特にこれにより集束電極40及びその集束表面42の加熱の量は、集束電極40の電極温度Teが適切に設定及び/又は調節されるようにして影響を及ぼされることができる。上に説明されたように、集束電極、特に熱捕集表面領域及び外部表面領域の配置形状は、集束電極の温度に影響を与える。先に説明されたように、陰極動作中に閾値温度Te−を上回るように電極温度Teを保つことによって、仕事関数低下粒子の蒸発速度Φは、仕事関数低下粒子が集束表面に到達する速度よりも高い。
【0106】
残念ながら、集束電極40の温度Teを上昇させすぎることは、その結果、集束表面42による電子のかなりの放出になりうる。したがって、集束電極40の温度を、さらなる閾値温度Te+を下回るように保つことが好ましい。実験は、閾値温度Te+に適した値
は、集束表面42からの電子放出が陰極の放出表面32からの電子放出の約0.01%である電極温度Teに相当することを示している。
【0107】
本発明の実施形態において使用される仕事関数低下粒子70は、バリウム(Ba)を含む。この場合、調整可能な熱源50は、電極温度Teを、約900Kに等しい閾値温度Te−を上回り、約1300Kに等しいさらなる閾値温度Te+を下回るように保つように構成されることができる。このような場合、集束表面42の温度Teは、±50Kの許容された温度変動を有する、900Kから1300Kの間の温度に保たれることができる。より高い温度範囲では、例えば1200K〜1300Kの集束表面温度の場合、集束表面は、好ましくは、その仕事関数をさらに増加させるために、コーティング又は炭化などの処理を受けるべきである。
【0108】
前に説明されたように、900Kを上回る集束電極40の電極温度Teは、集束電極40からのBa含有粒子の蒸発速度が、陰極放出表面32からこのようなBa含有粒子が発せられる速度よりも高い、又は少なくともこのような粒子が集束表面42に到達する速度よりは高いことを保証する。したがって、集束表面42上のバリウム堆積の蓄積が減少され、ほとんどの場合は回避される。増加された仕事関数と組み合わせて、電極温度Teを、1300Kを下回るように保つことは、集束電極40によって放出された電子の電流密度が、陰極放出表面32によって放出された電子の電流密度の0.01〜0.1%を下回ることを保証する。
【0109】
熱源の調整制御は、処理装置(例えば、コンピュータ装置)上で実行されるとこのような装置に方法を実行するための命令を与えるコンピュータコード、すなわちコンピュータプログラム製品を介して実施されることができる。コンピュータプログラム製品は、コンピュータ可読媒体上に記憶されてよい。
【0110】
図2aは、陰極構成体20の一実施形態の後側部分を概略的に示す斜視図である。図2aは、角度(すなわち方向角)方向に沿った有限の半径方向厚さを有し、陰極本体22を収容するための内側空隙、すなわちキャビティを囲んでいる円筒形シェル54を有する集束電極40を示している。陰極本体22は、図1a並びに図1bに示されるような陰極本体であることができる。シェル54は、角度方向隙間56a、56b、56cを有し、これらは、シェル54を長手方向軸とも称される共通軸のまわりに対称的に置かれた3つのシェル部分55a、55b、55cにさらに分割している。集束電極40は、集束表面42によって囲まれた円形の電子透過アパーチャ44が設けられた前面カバーを有する(図2aには示されない)。円筒形シェル部分55a〜55cの内側表面領域は、熱捕集表面52を共同で規定する。図2aに示される角度方向隙間56a〜56cは、角度方向並びに長手方向Zに沿って延びている切り込み、例えば直線状又はらせん状の切り込みによって規定される。隙間56a〜56cは、図4並びに図5を参照して説明されるように、集束電極40と陰極本体22との少なくとも一方を支持構造に制限するための制限構成体を収容するために使用されることができる。
【0111】
シェル54には、集束電極を長手方向に支持するための集束電極支持要素57aが設けられることができる。支持要素57aは、図4に示されるように、支持要素62との接触部を形成する突起、すなわちコンタクトパッドを有することができる。コンタクトパッドは、150μmの直径と、100μmの高さとを有することができる。また、集束電極40から延びている実質的に円筒形状の構造として示される3つの横断支持要素57bが設けられることができる。これらは、長手方向軸のまわりの集束電極の回転を制限する。支持要素57は、円筒形シェル54と一体的に形成されてもよいし、それに付着されてもよい。エンドストップ構造65aを有する制限構成体65を有する支持構造62内に取り付けられた、本明細書で説明される円筒形シェル54を有する陰極構成体が図4に示される
【0112】
図2bは、角度方向共通部分56a〜56cと集束電極支持要素57a、bとスペーシング構造48と半径方向スペーサ59とが設けられた円筒形シェル54を有する集束電極40を概略的に示す斜視断面図である。
【0113】
電子ビームリソグラフィでは、電子ビーム操作における収差効果が最小限にできるように、横断方向に極めて均質である電子ビームとともに機能することが望ましい。
【0114】
図3は、陰極構成体20の一実施形態を示す長手方向の断面図であり、陰極の放出表面32と集束電極40の透過アパーチャ44とが、生成される電子ビームの均質性を改良するために適切にアライメントされている。陰極本体22は、長手方向Zに電子を放出するための放出表面32を有する。放出表面32は、放出周縁35で境界が定められている。集束電極40は、横断方向X、Yに陰極本体22を(少なくとも部分的に)囲んでいる。集束電極40は、動作中に放出表面32によって放出された電子を集束させるために、放出表面32の近くに電子透過アパーチャ44を有する。透過アパーチャ44は、アパーチャ周縁45で境界が定められている。陰極本体22は、アライメントされた位置R0から最大横断距離d1を超えて集束電極40内に移動可能に配置される。アパーチャ周縁45は、最大横断距離d1を超えるオーバーラップ距離d2を有して、放出周縁35を超えて放出表面32の上に横断方向に延びている。言い換えれば、集束電極は、放出周縁をオーバーラップ距離d2だけ超えて延びていることによって、放出表面の一部と重なり合っている。図3から理解できるように、放出周縁35は、アパーチャ周縁45よりも大きい領域を規定する。好ましくは、アパーチャ周縁45と放出周縁35の両方は円形であり、これにより、アパーチャ直径45の直径は放出周縁35よりも小さい。
【0115】
最大横断距離d1を超えるオーバーラップ距離d2は、アライメントされた位置R0において、アパーチャ周縁45が放出周縁35を超えて横断距離d1よりも長くにわたって至る所で内側に突き出していることを暗示している。アライメントされた位置R0において、陰極本体22及び透過アパーチャ44は、放出表面32からの電子放出のために、及び透過アパーチャ44を通る電子透過のために、最適にアライメントされている。アライメントされた位置R0からの任意の横断偏差は、放出表面32の新しい部分を明らかにする。要件d2>d1は、任意の横断アライメント不良が放出表面32の異なる部分のみを明らかにすることを保証する。したがって、放出表面32によって放出され、アパーチャ44を通って透過される電子の密度は、比較的均質なままであり、その結果、比較的均質な電子ビーム4をもたらす。
【0116】
陰極本体22は、シェル54の内側表面54aに面している表面36を有する。最大横断距離d1は、図3では、内側表面54aと表面36との間の距離として定義される。放出表面によって規定された放出平面S2上へのアパーチャ周縁45の突出部45aは、不適切なアライメントの場合ですら、放出周縁35内に完全にある。
【0117】
集束電極40は、放出表面32に面している内側表面46を有し、放出表面32から長手方向距離hのところに配置されている。この長手方向距離hは、図1a、図1b並びに図2bに示される陰極構成体に対して説明されるように、例えば、スペーシング構造48によって、長手方向隙間60として設けられることができる。
【0118】
オーバーラップ距離d2は、好ましくは、最大横断距離d1に応じて10マイクロメートル〜100マイクロメートルの範囲内にある。最大横断距離d1は、10〜35μmの範囲内にあることができる。これにより、フォーカス電極40に対する陰極本体22のアライメントに関する機械公差が緩和可能である。
【0119】
アパーチャ周縁45と放出周縁35は、好ましくは、同様に成形される(すなわち「準同形」)。図1bに示される実施形態では、放出周縁35とアパーチャ周縁45とは、両方とも円形であり、その結果、放出表面32と透過アパーチャ44との間の任意の横断アライメント不良が、アライメントされた位置R0から離れる半径方向の相対的変位のみに依存する、極めて対称的な陰極構成体20になる。
【0120】
図3に示される陰極構成体の集束電極40は、図2a並びに図2bを参照して説明される円筒形シェル54を有することができる。
【0121】
図3に示される陰極構成体は、図1a並びに図1bを参照して説明されるのと同様にしてフォーカス電極40を加熱するように構成されることができる。
【0122】
図4は、電子銃の支持電極などの支持構造62に取り付けられた陰極構成体20を概略的に示す図である。陰極構成体20は、上に説明された実施形態のいずれかによる陰極構成体であることができる。陰極構成体20及び支持構造62は、例えば電子ビームリソグラフィにおいて、使用中に配置されることが意図される方向で示されている。支持構造62は、例えば図5又は図6に示されるような電子銃2の支持電極、すなわちG0電極を有することができる。支持電極62は、通常、集束電極40と同じ電位に保たれ、電子銃の電子光学の一部を形成することができる。制限構成体65も、この電位に維持されることができる。
【0123】
陰極本体22は、重力によって、内側電極表面46、好ましくは上に説明された3つのスペーシング構造48の上に載る。3つのスペーシング構造48は、放出平面S2をアパーチャ平面S1とアライメントし、放出部分と内側電極表面46との間にスペーシング60を設ける。
【0124】
集束電極40は、同じく重力によって、3つの長手方向支持要素57aを介して支持構造62上に載る。図4に示されるように、支持要素57aは、支持構造62との点接触を形成することができる。支持要素57aと支持構造62との間に3つの点接触を形成することによって、フォーカス電極40、特にアパーチャ平面S1は、支持電極の平面と並行にアライメントされることができる。点接触を介して、集束電極40と支持構造62との間の熱伝導が最小限にされる。
【0125】
制限構成体65は、集束電極40に対して陰極本体22を、支持構造62に対して集束電極40を制限するように設けられている。制限構成体65は、集束電極40に対する陰極本体22の移動を限定するために、シェル構造54の各角度方向隙間56a〜56cを通って突き出す制限構造、すなわちエンドストップ65aを有することができる。具体的には、エンドストップ65aは、陰極構成体を有する電子銃2の取り付け、取り外し、保管、輸送中の相対運動をブロックすることができる。陰極本体22の第1の端24の表面24aと表面24aに面するエンドストップ65aの表面との間、及び角度方向隙間56a〜56cの周縁と隙間周縁に面するエンドストップ表面65aの表面との間に、間隙が形成される。
【0126】
さらに、制限構成体は、長手方向軸まわりでの回転や横断支持要素57bを介した集束電極40の横断運動を制限するためのブロッキング構造を有することができる。
【0127】
エンドストップ65aと陰極構成体20の対応する表面との間の距離は、エンドストップ65aが、電子銃によって生成される電子ビームの劣化を引き起こしうる陰極構成体の機械的張力や変形を引き起こすことなく、異なる構造的特徴の熱膨張を可能にする。これ
により、熱膨張(の差)による構造の変形又は他の損傷が回避されることができる。また、陰極構成体20と支持構造62との間の熱伝導も回避されることができる。
【0128】
図5は、図1a並びに図1bに示されるような陰極構成体20を有する電子銃2を概略的に示す断面図である。あるいは、電子銃2は、図3に示されるような陰極構成体20を有してもよいし、本明細書で説明される陰極構成体の他の任意の実施形態を有してもよい。レセプタクル25とリザーバー38とを加熱するように配置されたヒーター陰極50が示されている。しかしながら、あるいは、上に説明されたように、他の熱源が使用されてもよい。図5に示されるように、ヒーター陰極50は、熱電子陰極と、特に透過アパーチャ44と同軸にアライメントされる。ヒーター陰極から放出された電子は、上に説明されたように、陰極本体22とリザーバー38とを加熱するためにレセプタクル25に入る電子ビームへと形成される。ヒーター陰極集束電極は、電子をレセプタクル25内に集束させるために設けられることができる。ヒーター陰極集束電極は、以下で説明される電極6a〜6cと形状が類似であってよく、好ましくは、これらと、及び透過アパーチャ44と同軸にアライメントされる。電子がヒーター陰極から熱電子陰極まで加速されるように、代表的には約1kVである電位差が、ヒーター陰極と陰極構成体20との間に印加される。例えば、ヒーター陰極構成体、特にその集束電極は、−6kVの電位が印加されることができ、集束電極40と支持電極62とを含む陰極構成体20は、−5kVの電位を有することができる。
【0129】
電子銃2は、さらに、透過アパーチャ44と同軸に、陰極から放出された電子の電子ビーム4を形成するためにこの順番に配置された電極6a〜6cを有し、これら電極は本明細書では成形電極とも称される。一般に、長手方向軸に沿って向けられた発散電子ビーム4が形成される。電子銃の用語では、電極6a〜6cは、G1〜G3電極とも称されることができる。個々の電極6a〜6cに異なる電位を印加することによって、電場が、所望のビーム形状が得られるように陰極構成体20の放出表面32から離れる方向に電子を案内するように生成される。例えば、+3kV、−4.2kV、+2.5kVになる電位が、それぞれ、電極6a、6b、6cに印加されることができる。図5には、3つの電極6a〜6cが示されているが、異なる数の電極6a〜6cが使用されてもよいことが理解されるべきである。
【0130】
成形電極6a〜6cは、成形コントローラとも称される電源ユニット8に通信可能に接続されることができる。電源ユニット8は、動的であるようにして、例えば変化する環境状況を補償するように、また、異なる形状のその電子ビーム4を得るように、電極6a〜6cに印加される電圧を制御することができる。そのフィラメントと集束電極とを含むヒーター陰極50も、電源ユニット8に接続されることができる。
【0131】
成形電極6a〜6cは、各々、好ましくは完全に円形であり高い精度で同軸にアライメントされる成形アパーチャ10a〜10cが設けられた導電性本体を有する。
【0132】
陰極構成体20は、G0電極とも称される支持電極を有する支持構造62に取り付けられている。支持電極は、第1の成形電極6aと同様の形状であり、電源8に接続されることができる。支持構造62は、好ましくは、図4に示されるような支持構造であることができ、エンドストップ65aを備えた制限構成体65を有する。
【0133】
上に説明された電子銃2は、荷電粒子ビームレットリソグラフィシステムの、例えば図6を参照して説明されるリソグラフィシステム、特に複数の荷電粒子ビームレット5を使用してターゲット18の表面上にパターンを転写するための荷電粒子マルチビームレットリソグラフィシステム1の一部であることができる。
【0134】
図6は、荷電粒子リソグラフィシステム1の一実施形態を示す簡略化された概略図である。リソグラフィシステムは、例えば、米国特許第6,897,458号、第6,958,804号、第7,019,908号、第7,084,414号、第7,129,502号、米国特許出願公開第2007/0064213号、並びに同時係属中の米国特許出願第61/031,573号、61/031,594号、第61/045,243号、第61/055,839号、第61/058,596号及び第61/101,682号に記載されており、これらは、全て本発明の権利者に譲渡されており、その内容全体が全て参照として本明細書に組み込まれる。
【0135】
図6に示される実施形態では、リソグラフィシステム1は、複数のビームレット5を生成するためのビームレット生成器2、12、13と、変調されたビームレットを形成するためにビームレット5をパターニングするためのビームレット変調器14、15と、変調されたビームレットをターゲット18の表面上に投影するためのビームレット投影器16、17とを有する。ビームレット生成器2、12、13は、電子ビーム4を生じさせるための電子銃2を有する。図6では、電子銃2は、実質的に均質な拡大する電子ビーム4を生じさせる。ビームレット生成器2、12、13は、電子ビーム4をコリメートするためのコリメータ電極アセンブリ12と、複数のビームレット5を形成するためのアパーチャアレイ13とをさらに有する。アパーチャアレイ13は電子ビーム4の所望の一部分をブロックするが、電子ビーム4の他の部分は、複数の電子ビームレット5を生じさせるように、アパーチャアレイ13を通過する。システムは、多数のビームレット5、好ましくは約10,000〜1,000,000のビームレットを生成する。
【0136】
ビームレット変調器14、15は、ビームレットブランカアレイ14と、ビームレットストッパアレイ15とを有する。ビームレットブランカアレイ14は、電子ビームレット5のうちの1つ又は複数を偏向させるための複数のブランカを有する。偏向された電子ビームレット5と偏向されていない電子ビームレット5が、複数のアパーチャを有するビームレットストッパアレイ15に到達する。ビームレットブランカアレイ14とビームレットストッパアレイ15とは、選択されたビームレット5をブロックするか通過させるように協働する。一般に、ビームレットブランカアレイ14がビームレット5を偏向させると、ビームレット5はビームレットストッパアレイ15内の対応するアパーチャを通過せず、ブロックされる。しかしながら、ビームレットブランカアレイ14がビームレット5を偏向されないと、ビームレット5はビームレットストッパアレイ15内の対応するアパーチャを通過する。あるいは、ビームレット5は、ビームレットブランカアレイ14内の対応するブランカによって偏向されると、ビームレットストッパアレイ15を通過することができ、偏向されないと、ビームレットストッパアレイ15によってブロックされることができる。ビームレット変調器14、15は、制御ユニット90によって提供されるパターンデータ入力に基づいてビームレット5にパターンを提供するように配置されている。制御ユニット90は、データ記憶ユニット91と、読み出しユニット92と、データ変換ユニット93とを有し、制御ユニット90は、システム1の残りの部分から遠隔に、例えばシステム1が配置されているクリーンルームの外部に、位置されることができる。
【0137】
変調されたビームレットは、ビームレット投影器16、17によってターゲット18のターゲット表面上に投影される。ビームレット投影器16、17は、ターゲット表面の上で変調されたビームレットを走査するためのビームレット偏向器アレイ16と、変調されたビームレットをターゲット18の表面上に集束するための投影レンズの1つ又は複数のアレイを有する投影レンズ構成体17とを有する。ターゲット18は、一般に、その移動が制御ユニット90などの制御ユニットによって制御されることができる移動可能なステージ19上に配置される。
【0138】
リソグラフィアプリケーションでは、ターゲット18は、通常、荷電粒子感応性層、す
なわちレジスト層を有するウェーハを有する。レジスト膜の一部分は、電子ビームレットによる照射の結果として化学的に変性される。その結果として、膜の照射された部分は、現像液に多少可溶性であり、その結果、ウェーハ上のレジストパターンが得られる。ウェーハ上のレジストパターンは、その後、すなわち半導体製造の技術分野で知られている注入ステップ、エッチングステップ、堆積ステップによって、下位層に転写可能である。明らかに、照射が均一でない場合、レジストが均一に発達されず、パターン内の欠陥に至ることがある。高品質の突出部は、したがって、再現可能な結果を提供するリソグラフィシステムを得ることに関連する。
【0139】
偏向器アレイ16は、ビームレットストッパアレイ15を通過する各ビームレットを偏向させるように配置された走査偏向器アレイの形態をとることができる。偏向器アレイ16は、比較的小さい駆動電圧の印加を可能にする複数の電界偏向器を有することができる。偏向器アレイ16は、投影レンズ構成体17の上流に描かれているが、偏向器アレイ16は、投影レンズ構成体17とターゲット18の表面との間に配置されてもよい。
【0140】
投影レンズ構成体17は、偏向器アレイ16による偏向の前又は後にビームレット5を集束させるように配置されることができる。好ましくは、集束は、直径が約10〜30ナノメートルの幾何学的スポットサイズをもたらす。このような好ましい実施形態では、投影レンズ構成体17は、好ましくは、約100〜500分の1、最も好ましくは可能な限り大きい、例えば300〜500分の1の範囲の縮小を提供するように配置される。
【0141】
上に説明された方法の任意の実施形態は、処理装置(例えば、コンピュータ装置を有することができる制御ユニット90)上で実行されると実行するためにこのような装置に命令を提供するコンピュータコード、すなわちコンピュータプログラム製品を介して実施可能である。コンピュータプログラム製品は、コンピュータ可読媒体上に記憶されてよい。
【0142】
陰極及び電子銃に関する本明細書における教示は、必ずしも荷電粒子としての電子の生成及び放出に限定されるとは限らない。教示は、正の電気又は負の電気のいずれかを有する、イオンなどの他のタイプの荷電粒子の生成に等しく良好に適用されることができる。また、図6に示されるのと同様のシステムが、例えばイオンビームを生じさせるためのイオン源を使用することによって、異なるタイプの放射とともに使用されてよいことが理解されなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0143】
【特許文献1】米国特許第6,897,458号
【特許文献2】第6,958,804号
【特許文献3】第7,019,908号
【特許文献4】第7,084,414号
【特許文献5】第7,129,502号
【特許文献6】米国特許出願公開第2007/0064213号
図1a
図1b
図2a
図2b
図3
図4
図5
図6