特許第6930251号(P6930251)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6930251塗布膜形成方法、塗布膜形成装置及び記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6930251
(24)【登録日】2021年8月16日
(45)【発行日】2021年9月1日
(54)【発明の名称】塗布膜形成方法、塗布膜形成装置及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20210823BHJP
   G03F 7/30 20060101ALI20210823BHJP
   B05C 11/02 20060101ALI20210823BHJP
   B05C 11/08 20060101ALI20210823BHJP
   B05D 1/40 20060101ALI20210823BHJP
【FI】
   H01L21/30 564D
   H01L21/30 564C
   G03F7/30 502
   B05C11/02
   B05C11/08
   B05D1/40 A
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-130178(P2017-130178)
(22)【出願日】2017年7月3日
(65)【公開番号】特開2019-12806(P2019-12806A)
(43)【公開日】2019年1月24日
【審査請求日】2020年4月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002756
【氏名又は名称】特許業務法人弥生特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100091513
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133776
【弁理士】
【氏名又は名称】三井田 友昭
(72)【発明者】
【氏名】柴田 直樹
【審査官】 山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−201428(JP,A)
【文献】 特開2005−216961(JP,A)
【文献】 特開平10−135198(JP,A)
【文献】 特開2005−101036(JP,A)
【文献】 特開平07−221006(JP,A)
【文献】 特開2012−024705(JP,A)
【文献】 特開平02−232921(JP,A)
【文献】 特開2017−107919(JP,A)
【文献】 特開2005−246312(JP,A)
【文献】 特開2007−189185(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
B05C 11/02
B05C 11/08
B05D 1/40
G03F 7/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
段差パターンが形成された基板の表面に塗布膜を形成する塗布膜形成方法において、
水平に保持した基板の表面に塗布液を塗布する工程と、
基板に塗布した塗布液が流動性をもっている間に当該塗布液の液膜の表面に、下面が平坦面である平坦化部材の当該下面を接触させる工程と、
基板と平坦化部材の下面との少なくとも一方を鉛直軸周りに回転させて塗布膜の表面を平坦化すると共に塗布膜を乾燥させる工程と、
その後基板の表面と、平坦化部材の下面と、を引き離す工程と、を含み、
前記平坦化部材は、下面に塗布液から揮発する溶媒を排出するための通気口を備え、下面が基板の表面全体を覆うように構成されることを特徴とする塗布膜形成方法。
【請求項2】
基板と平坦化部材の下面との少なくとも一方を鉛直軸周りに回転させる工程は、基板が鉛直軸周りに回転することを特徴とする請求項1に記載の塗布膜形成方法。
【請求項3】
塗布液を塗布する工程と、塗布液の液膜の表面に、平坦化部材の下面を接触させる工程と、の間に塗布膜の表面の流動性を低下させる工程を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の塗布膜形成方法。
【請求項4】
塗布膜の表面の流動性を低下させる工程は、表面に塗布液を塗布した基板を水平に保持し、鉛直軸周りに回転させることを特徴とする請求項3に記載の塗布膜形成方法。
【請求項5】
基板と平坦化部材の下面との少なくとも一方を鉛直軸周りに回転させる工程は、塗布膜を加熱して、塗布膜の乾燥を促進させることを特徴とする請求項1ないしのいずれか一項に記載の塗布膜形成方法。
【請求項6】
基板と平坦化部材の下面との少なくとも一方を鉛直軸周りに回転させる工程は、塗布膜の表面を陰圧にして、塗布膜の乾燥を促進させることを特徴とする請求項1ないしのいずれか一項に記載の塗布膜形成方法。
【請求項7】
基板の表面と、平坦化部材の下面と、を引き離す工程は、基板から見た平坦化部材の下面の回転数が500rpm以下、あるいは基板及び平坦化部材の下面の回転を停止した状態で引き離すことを特徴とする請求項1ないしのいずれか一項に記載の塗布膜形成方法
【請求項8】
段差パターンが形成された基板の表面に塗布膜を形成する塗布膜形成装置に用いられるコンピュータプログラムを格納した記憶媒体であって、
前記コンピュータプログラムは、請求項1ないしのいずれか一項に記載の塗布膜形成方法を実行するステップ群を実行するプログラムを含むことを特徴とする記憶媒体。
【請求項9】
段差パターンが形成された基板の表面に塗布膜を形成する塗布膜形成装置において、
基板を水平に保持する基板保持部と、
前記基板保持部に保持された基板に向けて塗布液を供給する塗布液供給部と、
その下面に前記基板保持部に保持された基板の表面と対向する平坦面を備えた平坦化部材と、
基板と平坦化部材の下面との少なくとも一方を鉛直軸周りに回転させる回転機構と、
前記平坦化部材を昇降させる昇降機構と、
水平に保持した基板の表面に塗布液を塗布するステップと、基板に塗布した塗布液が流動性をもっている間に当該塗布液の液膜の表面に、平坦化部材の下面を接触させるステップと、基板と平坦化部材の下面との少なくとも一方を鉛直軸周りに回転させて塗布膜の表面を平坦化すると共に塗布膜を乾燥させるステップと、その後基板の表面と、平坦化部材の下面と、を引き離すステップと、を実行するように制御する制御部と、を備え
前記平坦化部材は、下面に塗布液から揮発する溶媒を排出するための通気口を備え、下面が基板の表面全体を覆うように構成されることを特徴とする塗布膜形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に段差パターンを有する基板の上に塗布膜を形成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体回路の高集積化に伴い、より複雑な3次元構造を持つデバイスが検討されている。このようなデバイスを製造する場合、基板に形成された段差パターンに局部的にエッチングを行う工程が含まれる場合があり、段差パターン内部にウエハの表面にレジスト液を塗布することが行われる。またエッチング工程において、レジスト膜に対するエッチング対象のエッチング選択比が小さい場合があり、このためレジスト膜を例えばμmオーダーもの厚い膜とする要請がある。このようにレジスト膜を厚膜とするためにレジスト液として例えば200cP以上もの高粘度のものを用いる場合がある。
【0003】
例えば半導体ウエハ(以下「ウエハ」という」にレジスト液の塗布するにあたっては、通常基板にレジスト液を供給すると共に、基板を回転させてレジスト液を基板の表面に塗り広げるスピンコーティング法が用いられる。しかしながら段差パターンの形成された基板に粘度の高い塗布液をスピンコーティングにより塗布したときに、基板に形成された凹部の上方において塗布膜の表面が窪んでしまい、塗布膜の表面が平坦にならないことがある。また基板にスピンコーティングにより塗布膜を塗布すると、基板の外周側は遠心力が強く、膜厚が安定しにくく平坦化しにくい問題がある。
【0004】
特許文献1には、水平に保持した基板と隙間を介して対向するように平板状の蓋体を設け、蓋体の下面に開口した塗布液供給口から塗布液を供給し、蓋体と基板との隙間に塗布液を満たして乾燥させることにより、平坦な塗布膜を得る技術が記載されている。
しかしながら塗布膜と蓋体との隙間が狭いと、塗布液が流れにくく、段差パターンが形成された基板にレジスト液を塗布するときに段差パターンの内部に隙間なく充填されないおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6068377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、その目的は、表面に段差パターンを有する基板の上に表面が平坦な塗布膜を形成する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の塗布膜形成方法は、段差パターンが形成された基板の表面に塗布膜を形成する塗布膜形成方法において、
水平に保持した基板の表面に塗布液を塗布する工程と、
基板に塗布した塗布液が流動性をもっている間に当該塗布液の液膜の表面に、下面が平坦面である平坦化部材の当該下面を接触させる工程と、
基板と平坦化部材の下面との少なくとも一方を鉛直軸周りに回転させて塗布膜の表面を平坦化すると共に塗布膜を乾燥させる工程と、
その後基板の表面と、平坦化部材の下面と、を引き離す工程と、を含み、
前記平坦化部材は、下面に塗布液から揮発する溶媒を排出するための通気口を備え、下面が基板の表面全体を覆うように構成されることを特徴とする。
【0008】
本発明の記憶媒体は、段差パターンが形成された基板の表面に塗布膜を形成する塗布膜形成装置に用いられるコンピュータプログラムを格納した記憶媒体であって、
前記コンピュータプログラムは、上述の塗布膜形成方法を実行するステップ群を実行するプログラムを含むことを特徴とする。
【0009】
本発明の塗布膜形成装置は、段差パターンが形成された基板の表面に塗布膜を形成する塗布膜形成装置において、
基板を水平に保持する基板保持部と、
前記基板保持部に保持された基板に向けて塗布液を供給する塗布液供給部と、
その下面に前記基板保持部に保持された基板の表面と対向する平坦面を備えた平坦化部材と、
基板と平坦化部材の下面との少なくとも一方を鉛直軸周りに回転させる回転機構と、
前記平坦化部材を昇降させる昇降機構と、
水平に保持した基板の表面に塗布液を塗布するステップと、基板に塗布した塗布液が流動性をもっている間に当該塗布液の液膜の表面に、平坦化部材の下面を接触させるステップと、基板と平坦化部材の下面との少なくとも一方を鉛直軸周りに回転させて塗布膜の表面を平坦化すると共に塗布膜を乾燥させるステップと、その後基板の表面と、平坦化部材の下面と、を引き離すステップと、を実行するように制御する制御部と、を備え
前記平坦化部材は、下面に塗布液から揮発する溶媒を排出するための通気口を備え、下面が基板の表面全体を覆うように構成されることを特徴とする。




【発明の効果】
【0010】
本発明は、表面に段差パターンを有する基板の上に塗布膜を形成するにあたって、基板に塗布液を塗布し、塗布膜が流動性をもっているうちに、塗布膜の表面に、その下面が塗布膜と並行する平坦化部材の当該下面を接触させている。更に基板と平坦化部材の下面との少なくとも一方を鉛直軸周りに回転させ塗布膜を平坦化しながら乾燥し、塗布膜が乾燥した後、塗布膜の表面と、平坦化部材の下面とを引き離すようにしている。そのため基板に形成される塗布膜の表面を平坦化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施の形態に係るレジスト塗布装置の縦断面図である。
図2】第1の実施の形態に係るレジスト塗布装置の平面図である。
図3】レジスト塗布装置に適用される平板部の構成を示す斜視図である。
図4】被処理基板の表面構造を示す断面図である。
図5】第1の実施の形態に係るレジスト塗布装置の作用を示す説明図である。
図6】レジスト液の塗布後のウエハの表面構造を示す断面図である。
図7】第1の実施の形態に係るレジスト塗布装置の作用を示す説明図である。
図8】第1の実施の形態に係るレジスト塗布装置の作用を示す説明図である。
図9】第1の実施の形態に係るレジスト塗布装置の作用を示す説明図である。
図10】第1の実施の形態に係るレジスト塗布装置の作用を示す説明図である。
図11】第1の実施の形態に係るレジスト塗布装置の作用を示す説明図である。
図12】第1の実施の形態に係るレジスト塗布装置の作用を示す説明図である。
図13】平板部の他の例を示す断面図である。
図14】平板部の他の例を示す斜視図である。
図15】平板部に形成する通気口の他の例を示す平面図である。
図16】第2の実施の形態に係るレジスト塗布装置の縦断面図である。
図17】第2の実施の形態の作用を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1の実施の形態]
本発明の塗付膜形成装置をレジスト塗布装置に適用した第1の実施の形態について説明する。図1に示すようにレジスト塗布装置は、例えば直径300mmのウエハWの裏面中央部を真空吸着することにより、当該ウエハWを水平に保持する基板保持部であるスピンチャック11を備えている。このスピンチャック11は、下方より軸部12を介して回転機構13に接続されており、当該回転機構13により鉛直軸回りに回転することができる。
【0013】
スピンチャック11の下方側には、軸部12を隙間を介して取り囲むように円形板14が設けられる。また円形板14に周方向に3か所の貫通孔17が形成され、各貫通孔17には各々昇降ピン15が設けられている。これら昇降ピン15の下方には、共通の昇降板18が設けられ、昇降ピン15は昇降板18の下方に設けられた昇降機構16により昇降自在に構成されている。
【0014】
またスピンチャック11に保持されたウエハWの周囲を取り囲むようにカップ体2が設けられている。カップ体2は、回転するウエハWより飛散したり、こぼれ落ちた排液を受け止め、当該排液をレジスト塗布装置外に排出する。カップ体2は、前記円形板14の周囲に断面形状が山型のリング状に設けられた山型ガイド部21を備え、山型ガイド部21の外周端から下方に伸びるように環状の垂直壁23が設けられている。山型ガイド部21は、ウエハWよりこぼれ落ちた液を、ウエハWの外側下方へとガイドする。
【0015】
また、山型ガイド部21の外側を取り囲むように垂直な筒状部22と、この筒状部22の上縁から内側上方へ向けて斜めに伸びる上側ガイド部24とが設けられている。上側ガイド部24には、周方向に複数の開口部25が設けられている。また上側ガイド部24の基端側周縁から上方に伸びるように筒状部31が設けられ、この筒状部31の上縁から、スピンチャック11に保持されたウエハWの周縁部上方に向けて、伸び出すように傾斜壁32が設けられる。
【0016】
筒状部22の下方側は、山型ガイド部21及び垂直壁23の下方に断面が凹部型となるリング状の液受け部26が形成されている。この液受け部26においては、その底面における外周側に排液路27が接続されると共に、排液路27よりも内周側には、排気管28が下方から突入する形で設けられている。当該スピンチャック11に保持されたウエハWの回転により飛散した液は、傾斜壁32、上側ガイド部24及び垂直壁23、31により受け止められて排液路27に導入される。
【0017】
レジスト塗布装置は、ウエハWに溶剤及び50〜5000cP程度の中粘度及び高粘度の塗布液であるレジスト液を供給するためのノズルユニット5を備えている。ノズルユニット5は、下方に向けて夫々レジスト液と、溶剤とを吐出する、塗布液ノズルであるレジスト液ノズル50と、溶剤ノズル51と、を備えている。レジスト液ノズル50及び溶剤ノズル51は、夫々供給管52、54を介してレジスト液供給機構53、溶剤供給機構55に接続されている。
【0018】
レジスト液供給機構53及び溶剤供給機構55は、例えばポンプ、バルブ、フィルタなどの機器を備えており、溶剤ノズル51及びレジスト液ノズル50の先端から夫々溶剤及びレジスト液を所定量を吐出するように構成されている。ノズルユニット5は、図2に示すようにアーム56、移動体57、図示しない昇降機構及びガイドレール58を含む移動機構により、ウエハWの中央部上方の吐出位置とカップ体2の外の待機バス59との間で移動するように構成されている。
【0019】
またレジスト塗布装置は、レジスト膜を塗布したウエハWの周縁部に向けてリンスを供給する周縁側リンスノズル6を備えている。周縁側リンスノズル6は、供給管61を介して例えばポンプ、バルブ、フィルタなどの機器を備えたリンス液供給機構62に接続されている。周縁側リンスノズル6は、図2に示すようにアーム63、移動体64、図示しない昇降機構及びガイドレール65を含む移動機構により、ウエハWの中心部上方と、ウエハWの外部に設けられた周縁側リンスノズル6の待機バス60と、の間を移動自在に構成されている。ノズルユニット5及び周縁側リンスノズル6は、互いに干渉しないように、例えば異なる高さに設けている。
【0020】
レジスト塗布装置は、図1図3に示すようにレジスト膜の表面を平坦化するための、平坦化部材である平板部7を備えている。この平板部7は、傾斜壁32の先端部の内周よりも小さく、ウエハWよりも大きい円板状に形成され、平板部7の下面がスピンチャック11に保持されたウエハWの上面(表面)全体と対向するように設けられている。平板部7は、その全面に厚さ方向に貫通する内径1mmの複数の通気口75が分散して設けられている。また平板部7の下面(裏面)側は、全面が例えばフラクタル構造処理、あるいはフッ素樹脂コーティングなどの撥水加工が行われた平坦面となっている。
【0021】
また平板部7は、図1及び図3に示すようにカップ体2の傾斜壁32を避けるように設けられた支持部材71により水平な姿勢で支持され、支持部材71は、昇降機構72を介して旋回機構73に接続されている。この昇降機構72により、平板部7は、図1に鎖線で示す上昇位置と平板部7の下面がウエハWの表面に押し付けられる下降位置との間で昇降する。
【0022】
平板部7の下降位置の高さ位置は、下降位置にある平板部7の下面の高さ位置が、スピンチャック11に保持されたレジスト液塗布前のウエハWの表面における、後述する段差パターンがエッチングされていない領域の表面の高さ位置から、目標とするレジスト膜の膜厚の分上方の高さ位置、例えば10μm上方の高さに設定されている。また上昇位置にある平板部7は旋回機構73により、図1図2に示す回転中心Cを中心に旋回し、ウエハWの上方と、カップ体2の外部の待機位置との間を旋回移動する。
【0023】
また図1に示すようにレジスト塗布装置は、制御部10を備えている。制御部10には、例えばフレキシブルディスク、コンパクトディスク、ハードディスク、MO(光磁気ディスク)及びメモリーカードなどの記憶媒体に格納されたプログラムがインストールされる。インストールされたプログラムは、後述のレジスト膜の形成処理を実行するために、レジスト塗布装置の各部に制御信号を送信してその動作を制御するように命令(各ステップ)が組み込まれている。
【0024】
続いて上述の実施の形態に係るレジスト塗布装置の作用について説明する。先ず平板部7、ノズルユニット5、及び周縁側リンスノズル6が夫々、待機位置、待機バス59及び60に位置した状態で、外部の図示しない搬送アームにより被処理基板であるウエハWが搬送される。ウエハWは、搬送アームと、昇降ピン15の協働作用により、スピンチャック11に受け渡される。図4は被処理基板であるウエハWの一例を示す。このウエハWは、例えば酸化シリコン層101と、窒化シリコン層102が交互に積層されており、表面に、溝状の段差パターン100が形成されている。図4では、段差パターン100の溝は、図の表面側から裏面側に向かって伸びるように形成されている。溝状の段差パターン100の側壁は、交互に積層された層の内、酸化シリコン層101の上面が露出するように階段状にエッチングがなされている。
【0025】
次いで搬送アームを退避させ、ノズルユニット5を移動させ溶剤ノズル51をウエハWの中心部の上方に位置させる。さらにウエハWを100〜1000rpmで回転させると共にウエハWに向けてプリウエット用の溶剤を吐出する。これにより溶剤が遠心力によりウエハWの表面を広がり、段差パターン100内部及び、ウエハWの表面が濡れた状態になる。
【0026】
続いてノズルユニット5を移動させ、レジスト液ノズル50をウエハWの中心部の上方に位置させ、図5に示すようにウエハWを100〜4000rpmの回転数で回転させ、レジスト液を供給する。これにより段差パターン100の内部にレジスト液が満たされ、段差パターン100の上方を含むウエハWの表面がレジスト液の液膜でおおわれる。
【0027】
この時粘度が高いレジスト液を段差パターン100の形成されたウエハWに塗布すると、図6に示すようにレジスト膜103の表面において、段差パターン100の上方が窪むことがある。またウエハWの周縁部においては、レジスト膜103の膜厚が不均一になることがある。この時ウエハWの表面におけるレジスト膜103の膜厚は、ウエハWの表面の段差パターン100の形成されていない領域におけるレジスト膜103の最大膜厚が、目標膜厚よりも厚い膜厚、例えば、100cpのレジスト液での目標膜厚10μmに対して20μm程度の膜厚に形成されている。
【0028】
続いて図7に示すようにレジスト液の供給を停止し、ノズルユニット5をカップ体2外部に退避させると共に、ウエハWを例えば100〜2000rpmの回転数で5〜10秒、例えば5秒回転させる。これによりレジスト膜103の表面が僅かに流動性が下がると共にレジスト膜103の内部が高い流動性を保った状態になる。
【0029】
その後図8に示すように待機位置にある平板部7を旋回させて、ウエハWの上方に位置させ、ウエハWの回転数を20〜500rpm以下に減速した後、図9に示すように平板部7を下降させ、平板部7の下面をレジスト膜103の表面に押し当てる。次いで図10に示すように平板部7をレジスト膜103に押し当てた状態で、ウエハWの回転数を1000〜1500rpm、例えば1000rpmに上昇させ、30〜100秒間維持する。平板部7を接触させる前の、レジスト膜103の膜厚は、ウエハWの表面の上方において、目標膜厚よりも厚い20μmとなっており、平板部7は、下降位置において、その下面の高さ位置が、ウエハWの表面の上方よりも10μm上方に設定されている。そのため平板部7をレジスト膜103に押し当てることで、レジスト膜103が下方に押される。
【0030】
既述のようにレジスト膜103は内部が流動性を保持した状態になっているため、平板部7の下面をレジスト膜103の表面に押し当てることにより、図9に示すようにレジスト膜103の突出部分が下方に押し下げられるように変形して、レジスト膜103の表面が平板部7の下面に沿って均され平坦になり、余分なレジスト液がウエハWの外に押し出される。更にこのとき外側に押し出されるレジスト液が、レジスト膜103の窪んでいる部位に供給されることで、レジスト膜103上の窪みが埋まることで均されて、レジスト膜の表面が平坦になる。またウエハWの中心部寄りのレジスト膜103が周縁部側に移動し、ウエハWの周縁部のスピンコーティングにより薄膜化した領域の膜厚が厚くなると共に膜厚の面内均一性が良くなる。
【0031】
また平板部7には、通気口75が設けられているため、レジスト膜103は通気口75を介して、雰囲気に接した状態になっている。そのため図10に示すように、ウエハWを回転することで、レジスト膜103中の溶媒の気化が促進され、気化した溶媒が通気口75から排出される。これにより平坦化されたレジスト膜103が乾燥し固化する。通気口75は、直径1mmで形成され、レジスト液は50cP以上と粘度が高い。そのためレジスト液の表面張力により、通気口75にレジスト液が進入することはない。従って通気口75によりレジスト膜103の表面が荒らされることはない。
またレジスト膜103は、ウエハWの中心側で乾きにくい傾向があるが、ウエハWを回転させることで、レジスト膜103の内部が撹拌される。そのためレジスト膜103が均一に乾きやすくなり、レジスト膜103の乾燥時間を短くすることができる。
【0032】
さらにその後、ウエハWの回転を停止すると共に、図11に示すように平板部7を上昇させて、平板部7の下面と、レジスト膜103の表面とを引き離す。このときウエハWの回転を停止しておくことで、レジスト膜103の表面が、平板部7の下面側の通気口75の縁により剪断されることを防ぐことができる。また平板部7の底面は撥水処理が行われている。そのためレジスト液が平板部7の下面になじみにくく、レジスト膜103が張り付きにくいため、平板部7の下面をレジスト膜103から引き離すときに、レジスト膜103の表面が千切れにくい。
【0033】
続いて平板部7を上昇位置まで上昇させ、さらに平板部7を旋回させて、カップ体2の外部に退避させる。次いで図12に示すように周縁側リンスノズル6を、ウエハWの周縁部上方に移動させる。その後必要に応じてウエハWを500〜1500rpmで回転させると共に、ウエハWの周縁に向けてリンス液を吐出する。これにより、レジスト膜103の外周部が除去される。
【0034】
上述の実施の形態によれば、表面に段差パターン100の形成されたウエハWの上にレジスト膜103を形成するにあたって、ウエハWにレジスト液を塗布し、レジスト膜103の内部が流動性をもっているうちにレジスト膜103の表面と、レジスト膜103の表面と対向する平板部7の下面とを接触させる。更に平板部7の下面をレジスト膜103の表面に接触させた状態で、ウエハWを回転させレジスト膜103を平坦化しながら乾燥している。さらにレジスト膜103が乾燥した後、レジスト膜103の表面と、平板部7の下面とを引き離すようにしている。そのためウエハWに形成されるレジスト膜103の表面を平坦化することができる。
【0035】
またウエハWにレジスト液を塗布した後、ウエハWを回転させてレジスト膜103の表面の流動性を下げる工程を行わずに、レジスト膜103の表面に平板部7の下面を接触させた場合にも、レジスト膜103が流動性をもっている状態でレジスト膜103の表面に平板部7の下面を接触させることができるため、レジスト膜103の表面を平坦化することができる。ウエハWにレジスト液を塗布した後、ウエハWを回転させてレジスト膜103の表面を乾燥させる工程を行うことで、レジスト膜103は、流動性を保ちつつ、表面の粘着性が下がる。そのためレジスト膜103の表面の平板部7の裏面への張り付きをより確実に抑制することができる。またレジスト膜103の表面の流動性を下げる工程は、例えばレジスト膜の表面に窒素ガスなどの不活性ガスを吹き付けたり、レジスト膜103を加熱してもよい。
【0036】
また平板部7の上部にチャンバを設け、平板部7の上面の雰囲気を陰圧にするように構成してもよい。例えば図13に示すように平板部7の上方に空間を構成する扁平な円筒形のチャンバ76を設ける。さらにチャンバ76の天板部にチャンバ76内の雰囲気を吸引する吸引口77を設け、吸引口77に吸引管78を介して吸引ポンプ79を接続する。
【0037】
上述のレジスト塗布装置においては、平板部7の下面をレジスト膜103の表面に押し当てた後、チャンバ76の内部を陰圧にする。さらにウエハWを回転させてレジスト膜103の表面を平坦化する。このように平板部7の上方の雰囲気を陰圧にすることで、レジスト膜103中の溶剤の気化が速くなり、レジスト膜103が乾燥しやすくなる。従ってウエハWの処理時間を短くすることができる。
【0038】
また平板部7にレジスト膜103を加熱する加熱部を設けてもよい。このようなレジスト塗布装置の例としては、平板部7にヒータを埋設した構成が挙げられる。このレジスト塗布装置においては、平板部7の下面をレジスト膜103の表面に押し当てたときにレジスト膜103が加熱される。これによりレジスト膜103の乾燥を速めることができるためウエハWの処理時間を短くすることができる。
【0039】
また昇降機構72により、平板部7の下降位置の高さを調整できるように構成してもよい。このように構成することでスピンチャック11に保持されたウエハWと平板部7の下面との間隔を調整することができ、成膜されるレジスト膜103の膜厚を調整できる。また昇降機構72により、平板部7をレジスト膜103の表面に押しつける圧力を調整できるように構成してもよい。平板部7の押し付ける圧力を調整することで、同様にレジスト膜103の膜厚を調整することができる。
【0040】
また基板保持部をウエハWの周縁部も保持するように構成してもよい。例えばスピンチャック11の周方向等間隔に水平に伸びる梁部を4本設ける。このように構成することで、スピンチャック11に保持されるウエハWの周縁の撓みを抑制することができる。ウエハWの周縁が撓んでいると、塗布膜の表面に平坦面を接触させて塗布膜の平坦化を行った時に、撓みの分だけウエハWの周縁の塗布膜の膜厚が厚くなってしまう。そのため基板保持部をウエハWの周縁部も保持するように構成することで、ウエハWの撓みを抑えた状態で、塗布膜の平坦化を行うことができる。従って、ウエハWの周縁部の塗布膜がより確実に平坦化される。またスピンチャック11の径を大きくして、ウエハWのより周縁側の領域まで支持することで、ウエハWの撓みを抑制するようにしてもよい。
【0041】
さらに平板部7の下面をレジスト膜103の表面に押し当て、ウエハWの静止させた状態で、平板部7を鉛直軸周りに回転させてもよい。例えば図14に示すように平板部7の中心部上方に回転軸80を設け、支持部材71の先端に設けた回転機構81により平板部7を鉛直軸周りに回転するように構成すればよい。このように構成することで、平板部7を押し当てることにより、レジスト膜103が平坦化される。また平板部7をレジスト膜103に接触させて、回転させることで、レジスト膜103の内部に回転する力を加えることができる。そのためレジスト膜103の内部を撹拌することができるためレジスト膜103の乾燥が促進される。
【0042】
上述の実施の形態に示すようにレジスト膜103の表面に平板部7の下面を接触させた状態で、ウエハWを鉛直軸周りに回転させることで、ウエハWの乾燥が促進される。そのためレジスト膜103の表面に平板部7の下面を接触させた状態でウエハWと平板部7とを同じ方向に同じ速度で回転させてもよい。また平板部7に形成する通気口は、例えば図15に示すように格子の4隅部分を切断しないように、平板部7の縦横に並び、平板部7を厚さ方向に貫通する切込み82を形成してもよい。
【0043】
さらにレジスト膜103の表面と平板部7の下面とを引き離すときに、ウエハWは回転していてもよい。しかしながら塗布膜の剪断を防ぐ観点からウエハW及び平板部7の回転数は、500rpm以下、好ましくは、50〜500rpmであることが好ましい。
さらにレジスト膜103の表面に平板部7の下面を接触させる工程において、ウエハWの回転を停止してもよい。スピンチャック11にがたつきがある場合には、ウエハWを高速回転した状態で平板部7の底面に接触させたときに、ウエハWがぶれ、平板部7の下面と、ウエハWとが傾いた状態で接触し、ごくわずかにレジスト膜103が傾くことがある。そのためレジスト膜103の表面と、平板部7の下面と、を接触させる工程におけるウエハWの回転数は500rpm以下、好ましくは50〜500rpm以下であることが好ましい。
【0044】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態に係る塗布膜形成装置について説明する。図16は、第2の実施の形態に係る塗布膜形成装置をレジスト塗布装置に適用した例を示し、第1の実施の形態に示したレジスト塗布装置の平板部に代えて、平坦化用のパッド9が設けられており、パッド9をウエハWの表面を移動させてレジスト膜の表面を平坦化するように構成されている。
【0045】
第2の実施の形態に係るレジスト塗布装置は、図1図3に示した第1の実施の形態において示したレジスト塗布装置の平板部7に代えて、レジスト膜103の平坦化用のパッド9を備えている。パッド9は図16に示すように下面がレジスト膜の表面に押し当てられる直径30〜50mmの扁平な円柱形の平坦化部材であるパッド部材90を備えている。パッド部材90の下面は、平板部7の下面と同様に平坦面となっていると共に撥水加工がなされている。
【0046】
またパッド部材90の上面に板状部材91が設けられ、板状部材91は、カップ体2の外部からスピンチャック11に保持されたウエハWの中心部上方に向けて梁出す支持部93の先端に、パッド部材90の下面がスピンチャック11に保持されたウエハWと並行するように支持されている。また支持部93は、昇降機構72を介して、旋回機構73に接続されている。この昇降機構72により、パッド9は、上方位置と、パッド9の下面をレジスト膜103に接触させて、レジスト膜103を平坦化する下降位置と、の間を昇降する。またパッド9は旋回機構73により旋回し、パッド9を下降位置にて旋回させることで、パッド9はウエハWの中心部と、ウエハWの周縁部との間で移動し、パッド9を上昇位置にて旋回させることで、パッド9は、ウエハWの中心部上方と、カップ体2の外部の待機位置との間で移動する。
【0047】
第2の実施の形態に係るレジスト塗布装置においては、塗布膜を平坦化すると共に乾燥させる工程において、パッド9の下面をレジスト膜103の表面に接触させた後、図17に示すようにウエハWを回転させながら、パッド9をウエハWの径方向に、例えば10〜20mm/秒の速度で複数回往復させる。このように構成することでウエハWに形成した塗布膜の表面全体を均して平坦化することができる。またウエハWを停止した状態でパッド9をウエハWの表面を移動させて、塗布膜の表面全体を均すようにしてもよい。
【符号の説明】
【0048】
2 カップ体
7 平板部
9 パッド
10 制御部
11 スピンチャック
13 回転機構
50 レジスト液ノズル
51 溶剤ノズル
75 通気口
100 段差パターン
103 レジスト膜
W ウエハ
図1
図2
図3
図4
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図10
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