特許第6930816号(P6930816)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6930816硬化性粒状シリコーン組成物、それからなる半導体用部材、およびその成型方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6930816
(24)【登録日】2021年8月16日
(45)【発行日】2021年9月1日
(54)【発明の名称】硬化性粒状シリコーン組成物、それからなる半導体用部材、およびその成型方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/04 20060101AFI20210823BHJP
   C08J 5/00 20060101ALI20210823BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20210823BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20210823BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20210823BHJP
【FI】
   C08L83/04
   C08J5/00CFH
   C08K3/00
   H01L23/30 F
【請求項の数】16
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2018-532996(P2018-532996)
(86)(22)【出願日】2017年8月4日
(86)【国際出願番号】JP2017028385
(87)【国際公開番号】WO2018030287
(87)【国際公開日】20180215
【審査請求日】2020年7月8日
(31)【優先権主張番号】特願2016-155384(P2016-155384)
(32)【優先日】2016年8月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】719000328
【氏名又は名称】ダウ・東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山崎 亮介
【審査官】 岡谷 祐哉
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/051600(WO,A1)
【文献】 特開2007−332259(JP,A)
【文献】 特開2008−019424(JP,A)
【文献】 特開2009−235368(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/04
C08K 3/00
H01L 23/29
C08J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)軟化点が30℃以上であり、ヒドロシリル化反応性基および/またはラジカル反応性基を有する、平均一次粒子径が1〜5000μmのホットメルト性シリコーン微粒子、
(B)平均粒子径10.0μm以上の粗大粒子を含まない無機フィラー、および
(C)硬化剤を含有してなり、
前記(A)成分と前記(B)成分がそれぞれ粒状に分散し、
硬化により、
25℃における貯蔵弾性率(G')の値が2000MPa以下であり、かつ、
150℃における貯蔵弾性率(G')の値が100MPa以下である硬化物を与えることを特徴とする、硬化性粒状シリコーン組成物。
【請求項2】
(B)成分が、軟化点を有さないか又は前記(A)成分の軟化点以下では軟化しないフィラーである、請求項1に記載の硬化性粒状シリコーン組成物。
【請求項3】
(B)成分が、平均粒子径が5.0μm以上の粗大粒子を含まない無機フィラーである、請求項1または請求項2に記載の硬化性粒状シリコーン組成物。
【請求項4】
(B)成分が、補強性フィラー、白色顔料、熱伝導性フィラー、導電性フィラー、蛍光体、またはこれらの少なくとも2種の混合物である、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の硬化性粒状シリコーン組成物。
【請求項5】
(B)成分が、(b1)平均粒子径0.1μm以下の無機フィラーと(b2)平均粒子径0.1〜5.0μmの無機フィラーを1/99〜50/50の質量比で含有する、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の硬化性粒状シリコーン組成物。
【請求項6】
(A)成分が、(A)樹脂状オルガノポリシロキサン、(A)少なくとも1種のオルガノポリシロキサンを部分架橋してなるオルガノポリシロキサン架橋物、(A)樹脂状オルガノシロキサンブロックと鎖状オルガノシロキサンブロックからなるブロックコポリマー、またはこれらの少なくとも2種の混合物からなるシリコーン微粒子である、請求項1に記載の硬化性粒状シリコーン組成物。
【請求項7】
(A)成分が、(A)成分中のケイ素原子結合有機基の10モル%以上がアリール基であり、その平均一次粒子径が1〜10μmである真球状シリコーン微粒子である、請求項1または請求項6に記載の硬化性粒状シリコーン組成物。
【請求項8】
(B)成分の含有量が、(A)成分100質量部に対して10〜2000質量部である、請求項1に記載の硬化性粒状シリコーン組成物。
【請求項9】
硬化性粒状シリコーン組成物がペレット状またはシート状である、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の硬化性粒状シリコーン組成物。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の硬化性粒状シリコーン組成物を硬化させてなる、硬化物。
【請求項11】
請求項10に記載の硬化物の、半導体装置用部材としての使用。
【請求項12】
請求項10に記載の硬化物を備えた半導体装置。
【請求項13】
パワー半導体装置、光半導体装置およびフレキシブル回路基盤上に実装された半導体装置から選ばれる、請求項12の半導体装置。
【請求項14】
下記工程(I)〜(III)から少なくともなる硬化物の成型方法。
(I)請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の硬化性粒状シリコーン組成物を(A)成分の軟化点以上に加熱して、溶融する工程;
(II)前記工程(I)で得られた硬化性シリコーン組成物を金型に注入する工程 又は 型締めにより金型に前記工程(I)で得られた硬化性シリコーン組成物を行き渡らせる工程;および
(III)前記工程(II)で注入した硬化性シリコーン組成物を硬化する工程
【請求項15】
請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の硬化性粒状シリコーン組成物を硬化させてなる硬化物により、半導体素子のオーバーモールド成型及びアンダーフィルを一度に行う被覆工程を含む、請求項14の硬化物の成型方法。
【請求項16】
請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の硬化性粒状シリコーン組成物を硬化させてなる硬化物により、単独又は複数の半導体素子を搭載した半導体ウエハ基板の表面を覆い、かつ、半導体素子の間隙が当該硬化物により充填されるようにオーバーモールド成型する被覆工程を含む、請求項14の硬化物の成型方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性粒状シリコーン組成物、この硬化性粒状シリコーン組成物から成型されるペレットに関する。さらに、本発明は、硬化性粒状シリコーン組成物またはペレット、シートを用いる硬化物、この硬化物の成型方法、この硬化物を備える半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
硬化性シリコーン組成物は、硬化して、優れた耐熱性、耐寒性、電気絶縁性、耐候性、撥水性、透明性を有する硬化物を形成することから、幅広い産業分野で利用されている。こうした硬化性シリコーン組成物の硬化物は、他の有機材料と比較し変色しにくく、また、物理的物性の低下が小さいため、光学材料および半導体装置の封止剤としても適している。
【0003】
本出願人は、特許文献1および特許文献2において、いわゆるホットメルト性の硬化性粒状シリコーン組成物および反応性シリコーン組成物を提案している。しかしながら、これらのシリコーン組成物を硬化させてなる硬化物は、特に室温から150℃程度の高温における柔軟性および強靭性が不十分である場合がある。
【0004】
また、本出願人は、特許文献3および特許文献4において、液状(ペースト状)の硬化性シリコーン組成物を提案している。しかしながら、これらの液状乃至ペースト状の硬化性シリコーン組成物は、取扱作業性、硬化特性およびギャップフィル性が十分ではなく、かつ、硬化物の室温から150℃程度の高温における柔軟性および強靭性が不十分であり、特に、硬化物の柔軟性不足により、反りや破損の問題を生じる場合がある。
【0005】
一方、特許文献5および特許文献6には、粗大粒子を含む混合フィラーを用いたホットメルト性の硬化性組成物が開示されているが、硬化物の室温における貯蔵弾性率が極めて高く(例えば、特許文献5では5000MPa以上である)、柔軟性に乏しいため、室温で変形や折り曲げを受ける用途には適用することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際特許出願PCT/JP2016/000959
【特許文献2】特開2014−009322号公報
【特許文献3】国際公開第2016/038836号パンフレット
【特許文献4】特開2013−076050号公報
【特許文献5】特開2013−221075号公報
【特許文献6】国際公開第2013/051600号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ホットメルト性を有し、取扱い作業性および硬化特性に優れると共に、溶融時のギャップフィル性に優れ、室温から150℃程度の高温における柔軟性および強靭性に優れた硬化物を与える硬化性粒状シリコーン組成物、およびこの硬化性粒状シリコーン組成物を成型してなるペレット等を提供することにある。また、本発明の他の目的は、こうした硬化性粒状シリコーン組成物およびペレット等の硬化物からなる半導体装置用部材、当該硬化物を有する半導体装置、および、硬化物の成型方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の硬化性粒状シリコーン組成物は、
(A)軟化点が30℃以上であり、ヒドロシリル化反応性基および/またはラジカル反応性基を有するホットメルト性シリコーン微粒子、
(B)平均粒子径10.0μm以上の粗大粒子を実質的に含まない無機フィラー(微粒子)、および
(C)硬化剤を含有してなり、
硬化により、
25℃における貯蔵弾性率(G')の値が2000MPa以下であり、かつ、
150℃における貯蔵弾性率(G')の値が100MPa以下である硬化物を与えることを特徴とする。
【0009】
(B)成分は、軟化点を有さないか又は前記(A)成分の軟化点以下では軟化しないフィラーであることが好ましく、平均粒子径5.0μm以上の粗大粒子を実質的に含まないものであることが好ましい。また、硬化物の機能性および物理特性の見地から、(B)成分は、補強性フィラー、白色顔料、熱伝導性フィラー、導電性フィラー、蛍光体、またはこれらの少なくとも2種の混合物であることが好ましく、特に、室温〜高温における柔軟性および高いギャップフィル性の見地から、(b1)平均粒子径0.1μm以下の無機フィラーと(b2)平均粒子径0.1〜5.0μmの無機フィラーを1/99〜50/50の質量比で含有することが特に好ましい。
【0010】
(A)成分は、(A)樹脂状オルガノポリシロキサン、(A)少なくとも1種のオルガノポリシロキサンを部分架橋してなるオルガノポリシロキサン架橋物、(A)樹脂状オルガノシロキサンブロックと鎖状オルガノシロキサンブロックからなるブロックコポリマー、またはこれらの少なくとも2種の混合物からなるシリコーン微粒子であることが好ましい。また、(A)成分は(A)成分中のケイ素原子結合有機基の10モル%以上がアリール基であり、その平均一次粒子径が1〜10μmである真球状シリコーン微粒子であることが特に好ましく、このような真球状シリコーン微粒子は、スプレードライヤー等の使用により得られたものであることが好ましい。
【0011】
(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して10〜2000質量部の範囲であることが好ましく、特に、50〜900質量部の範囲であることが好ましい。本発明の組成物は、粗大粒子を実質的に含まないことから、(B)成分を大量に配合することが可能であり、組成物全体の50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上の量的範囲で(B)成分を配合することができ、かつ、好適である。
【0012】
このような本発明の硬化性粒状シリコーン組成物はペレット状またはシート状であることが好ましい。
【0013】
本発明の硬化性粒状シリコーン組成物は硬化物の形態で利用可能であり、半導体装置用部材として利用することができる。
【0014】
本発明の硬化性粒状シリコーン組成物およびその硬化物は、半導体装置に用いることができ、当該硬化物により封止材、光反射材等を形成してなる、パワー半導体装置、光半導体装置およびフレキシブル回路基盤上に実装された半導体装置が提供される。特に、本発明の硬化性粒状シリコーン組成物は溶融時のギャップフィル性に優れ、その硬化物は室温〜高温における柔軟性に優れ、強靭であるため、いわゆるモールドアンダーフィルやウェハモールディングにより半導体素子が一括封止された半導体装置や、変形(折り曲げ等)を利用の前提とするフレキシブル回路基板上で本硬化物により半導体素子が封止された封止後半導体素子基盤が好適に提供される。
【0015】
本発明の硬化性粒状シリコーン組成物の成型方法は、少なくとも以下の工程を含む。
(I)請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の硬化性粒状シリコーン組成物を(A)成分の軟化点以上に加熱して、溶融する工程;
(II)前記工程(I)で得られた硬化性シリコーン組成物を金型に注入する工程 又は 型締めにより金型に前記工程(I)で得られた硬化性シリコーン組成物を行き渡らせる工程; および
(III)前記工程(II)で注入した硬化性シリコーン組成物を硬化する工程
なお、上記の成型方法は、トランスファー成型、コンプレッション成型、あるいはインジェクション成型を含み、本発明の硬化性粒状シリコーン組成物はこれらの成型用材料として好適に用いられる。さらに、本発明の硬化性粒状シリコーン組成物は、硬化物により、半導体素子のオーバーモールド及びアンダーフィルを一度に行う被覆工程である、いわゆるモールドアンダーフィル方式や、半導体素子を搭載した半導体ウェハ基板の表面を覆い、かつ、半導体素子の間隙を充填するオーバーモールド成型であり、8インチは12インチなどの比較的大きなウェハを一括封止してもよいウェハモールディング方式の成型用材料として、好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の硬化性粒状シリコーン組成物(ペレット状、シート状等の形態を含む)は、ホットメルト性を有し、取扱い作業性および硬化特性に優れると共に、溶融時のギャップフィル性に優れ、室温から150℃程度の高温における柔軟性および強靭性に優れた硬化物を与える。また、本発明の硬化物は、半導体装置の部材として有用であり、本発明の成型方法を用いることで、これらの硬化物を用途に合わせて効率よく製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[硬化性粒状シリコーン組成物]
本発明の硬化性粒状シリコーン組成物は、以下の(A)〜(C)成分を含有し、かつ、硬化により室温から高温で柔軟性を有する硬化物を与えることを特徴とする。
(A)軟化点が30℃以上であり、ヒドロシリル化反応性基および/またはラジカル反応性基を有するホットメルト性シリコーン微粒子、
(B)平均粒子径10.0μm以上の粗大粒子を実質的に含まない無機フィラー(微粒子)、および
(C)硬化剤
【0018】
以下、組成物の各成分および任意成分について説明する。なお、本発明において、「平均粒子径」とは別に定義しない限り、粒子の一次平均粒子径を意味するものとする。
【0019】
(A)成分は、本組成物に良好なホットメルト性を与え、(C)硬化剤により硬化する、軟化点が30℃以上であり、ヒドロシリル化反応性基および/またはラジカル反応性基を有するホットメルト性シリコーン微粒子である。
【0020】
(A)成分中のヒドロシリル化反応性基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基等の炭素数2〜20のアルケニル基、およびケイ素原子結合水素原子が例示される。このヒドロシリル化反応性基としては、アルケニル基が好ましい。このアルケニル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、好ましくは、ビニル基、ヘキセニル基である。(A)成分は、一分子中に少なくとも2個のヒドロシリル化反応性基を有することが好ましい。
【0021】
(A)成分中のヒドロシリル化反応性基以外のケイ素原子に結合する基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のハロゲン置換アルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のハロゲン置換アリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、アルコキシ基、および水酸基が例示される。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ピレニル基等のアリール基;フェネチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;およびこれらの基に結合している水素原子の一部または全部を塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基が例示される。特に、フェニル基、水酸基が好ましい。
【0022】
また、(A)成分中のラジカル反応性基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の炭素数1〜20のアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基等の炭素数2〜20のアルケニル基;3−アクリロキシプロピル基、4−アクリロキシブチル基等のアクリル含有基;3−メタクリロキシプロピル基、4−メタクリロキシブチル基等のメタクリル含有基;およびケイ素原子結合水素原子が例示される。このラジカル反応性基としては、アルケニル基が好ましい。このアルケニル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、好ましくは、ビニル基、ヘキセニル基である。(A)成分は、一分子中に少なくとも2個のラジカル反応性基を有することが好ましい。
【0023】
(A)成分中のラジカル反応性基以外のケイ素原子に結合する基としては、炭素数1〜20のハロゲン置換アルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のハロゲン置換アリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、アルコキシ基、および水酸基が例示され、前記と同様の基が例示される。特に、フェニル基、水酸基が好ましい。特に、(A)成分は、分子中の全有機基の10モル%以上がアリール基、特に、フェニル基であることが好ましい。
【0024】
(A)成分は、それ自体がホットメルト性を有し、後述する(C)硬化剤により硬化する。このような(A)成分は、
(A)樹脂状オルガノポリシロキサン、
(A)少なくとも1種のオルガノポリシロキサンを架橋してなるオルガノポリシロキサン架橋物、
(A)樹脂状オルガノシロキサンブロックと鎖状オルガノシロキサンブロックからなるブロックコポリマー、
またはこれらの少なくとも2種の混合物
からなるシリコーン微粒子が好ましい。
【0025】
(A)成分はヒドロシリル化反応性基および/またはラジカル反応性基を有する樹脂状オルガノポリシロキサンであり、T単位又はQ単位を多く有し、アリール基を有するホットメルト性の樹脂状オルガノポリシロキサンであることが好ましい。このような(A)成分としては、トリオルガノシロキシ単位(M単位)(オルガノ基はメチル基のみ、メチル基とビニル基またはフェニル基である。)、ジオルガノシロキシ単位(D単位)(オルガノ基はメチル基のみ、メチル基とビニル基またはフェニル基である。)、モノオルガノシロキシ単位(T単位)(オルガノ基はメチル基、ビニル基、またはフェニル基である。)及びシロキシ単位(Q単位)の任意の組み合わせからなるMQ樹脂、MDQ樹脂、MTQ樹脂、MDTQ樹脂、TD樹脂、TQ樹脂、TDQ樹脂が例示される。なお、(A)成分は、分子中に少なくとも2個のヒドロシリル化反応性基および/またはラジカル反応性基を有し、分子中の全有機基の10モル%以上がアリール基、特に、フェニル基であることが好ましい。
【0026】
また、(A)成分は、少なくとも1種のオルガノポリシロキサンを架橋してなるので、(C)硬化剤により硬化する際にクラックが発生しにくく、硬化収縮を小さくすることができる。ここで、「架橋」とは、原料であるオルガノポリシロキサンをヒドロシリル化反応、縮合反応、ラジカル反応、高エネルギー線反応等により、前記オルガノポリシロキサンを連結することである。このヒドロシリル化反応性基やラジカル反応性基(高エネルギー線反応性基を含む)としては、前記と同様の基が例示され、縮合反応性基としては、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アシルオキシ基が例示される。
【0027】
(A)成分を構成する単位は限定されず、シロキサン単位、シルアルキレン基含有シロキサン単位が例示され、また、得られる硬化物に十分な硬度と機械的強度を付与することから、同一分子内に樹脂状ポリシロキサン単位と鎖状ポリシロキサン単位を有することが好ましい。すなわち、(A)成分は、樹脂状(レジン状)オルガノポリシロキサンと鎖状(直鎖状または分岐鎖状を含む)オルガノポリシロキサンとの架橋物であることが好ましい。(A)成分中に、樹脂状オルガノポリシロキサン構造−鎖状オルガノポリシロキサン構造を導入することで、(A)成分は良好なホットメルト性を示すと共に、(C)硬化剤により、良好な硬化性を示す。
【0028】
(A)成分は、
(1)一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと一分子中にケイ素原子結合水素原子を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサンのヒドロシリル化反応を経て、分子中に樹脂状オルガノポリシロキサン構造−鎖状オルガノポリシロキサン構造をアルキレン結合により連結したもの
(2)一分子中に少なくとも2個のラジカル反応性基を有する少なくとも2種のオルガノポリシロキサンの有機過酸化物によるラジカル反応を経て、分子中に樹脂状オルガノポリシロキサン構造−鎖状オルガノポリシロキサン構造をシロキサン結合またはアルキレン結合により連結したもの
(3)少なくとも2種のオルガノポリシロキサンの縮合反応を経て、分子中に樹脂状オルガノポリシロキサン構造−鎖状オルガノポリシロキサン構造をシロキサン(−Si−O−Si−)結合により連結したもの
のいずれかである。このような(A)成分は、樹脂構造−鎖状構造のオルガノポリシロキサン部分がアルキレン基または新たなシロキサン結合により連結された構造を有するので、ホットメルト性が著しく改善される。
【0029】
上記(1)および(2)において、(A)成分中に含まれるアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基等の炭素数2〜20のアルケニル基が例示され、これらは直鎖状でも分岐鎖状でもよく、好ましくは、エチレン基、ヘキシレン基である。
【0030】
樹脂状オルガノポリシロキサンと鎖状(直鎖状または分岐鎖状を含む)オルガノポリシロキサンの架橋物は、例えば、以下のシロキサン単位およびシルアルキレン基含有シロキサン単位により構成される。
M単位:RSiO1/2で表されるシロキサン単位、
D単位:RSiO2/2で表されるシロキサン単位、
M/RD単位:R1/2SiO1/2で表されるシルアルキレン基含有シロキサン単位およびR1/2SiO2/2で表されるシルアルキレン基含有シロキサン単位から選ばれる少なくとも1種のシロキサン単位、ならびに
T/Q単位:RSiO3/2で表されるシロキサン単位およびSiO4/2で表されるシロキサン単位から選ばれる少なくとも1種のシロキサン単位
【0031】
式中、Rは、各々独立に、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のハロゲン置換アルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のハロゲン置換アリール基、または炭素数7〜20のアラルキル基であり、前記と同様の基が例示される。Rは、メチル基、ビニル基、フェニル基が好ましい。ただし、全シロキサン単位のうち、少なくとも2個のRはアルケニル基であることが好ましい。
【0032】
また、式中、Rは、各々独立に、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のハロゲン置換アルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のハロゲン置換アリール基、または炭素数7〜20のアラルキル基であり、前記Rと同様の基が例示される。Rは、メチル基、フェニル基が好ましい。
【0033】
また、式中、Rは他のシロキサン単位中のケイ素原子に結合した、直鎖状または分岐鎖状の炭素数2〜20のアルキレン基である。アルキレン基としては、前記と同様の基が例示され、エチレン基、ヘキシレン基が好ましい。
【0034】
M単位は(A)成分の末端を構成するシロキサン単位であり、D単位は直鎖状のポリシロキサン構造を構成するシロキサン単位である。なお、これらのM単位またはD単位、特に、M単位上にアルケニル基があることが好ましい。一方、RM単位およびRD単位はシルアルキレン結合を介して他のシロキサン単位中のケイ素原子に結合し、かつ、酸素原子を介して他のシロキサン単位中のケイ素原子に結合するシロキサン単位である。T/Q単位はポリシロキサンに樹脂状の構造を与える分岐のシロキサン単位であり、(A)成分がRSiO3/2で表されるシロキサン単位および/またはSiO4/2で表されるシロキサン単位を含むことが好ましい。特に、(A)成分のホットメルト性を向上させ、(A)成分中のアリール基の含有量を調整することから、(A)成分はRSiO3/2で表されるシロキサン単位を含むことが好ましく、特に、Rがフェニル基であるシロキサン単位を含むことが好ましい。
【0035】
M/RD単位は、(A)成分の特徴的な構造の1つであり、Rのアルキレン基を介して、ケイ素原子間が架橋された構造を表す。具体的には、R1/2SiO1/2で表されるアルキレン基含有シロキサン単位およびR1/2SiO2/2で表されるアルキレン基含有シロキサン単位から選ばれる少なくとも1種のシロキサン単位であり、(A)成分を構成する全シロキサン単位の少なくとも二つはこれらのアルキレン基含有シロキサン単位であることが好ましい。Rのアルキレン基を有するシロキサン単位間の好適な結合形態は前記の通りであり、二つのアルキレン基含有シロキサン単位間のRの数は、M単位における酸素等と同様に結合価「1/2」として表現している。仮にRの数を1とすれば、[O1/2SiRSiR1/2]、[O1/2SiRSiR2/2]および[O2/2SiRSiR2/2]で表されるシロキサンの構造単位から選ばれる少なくとも1以上が(A)成分中に含まれ、各酸素原子(O)は、前記のM,D,T/Q単位に含まれるケイ素原子に結合する。かかる構造を有することで、(A)成分は、D単位からなる鎖状ポリシロキサン構造、T/Q単位を含む樹脂状ポリシロキサン構造を分子内に有する構造を比較的容易に設計可能であり、その物理的物性において著しく優れたものである。
【0036】
上記(1)において、一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと一分子中にケイ素原子結合水素原子を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサンとを、[アルケニル基のモル数]/[ケイ素原子結合水素原子のモル数]>1となる反応比でヒドロシリル化反応させることにより得ることができる。
【0037】
上記(2)において、一分子中に少なくとも2個のラジカル反応性基を有する少なくとも2種のオルガノポリシロキサンを、系中の全てのラジカル反応性基が反応するには足りない量の有機過酸化物によるラジカル反応させることにより得ることができる。
【0038】
上記(1)および(2)において、(A)成分は、樹脂状シロキサン構造を有するオルガノポリシロキサンと、鎖状シロキサン構造を有するオルガノポリシロキサンをヒドロシリル化反応またはラジカル反応したものである。
【0039】
例えば、(A)成分は、
(A)分子中にRSiO3/2(式中、Rは、前記と同様の基である。)で表されるシロキサン単位および/またはSiO4/2で表されるシロキサン単位を含有し、かつ、炭素数2〜20のアルケニル基またはケイ素原子結合水素原子あるいはラジカル反応性の基を有する、少なくとも1種の樹脂状オルガノポリシロキサン、および
(A)分子中にRSiO2/2で表されるシロキサン単位(式中、Rは、前記と同様の基である。)を含有し、かつ、前記の(A)成分とヒドロシリル化反応またはラジカル反応可能な基であって、炭素数2〜20のアルケニル基またはケイ素原子結合水素原子を有する少なくとも1種の鎖状オルガノポリシロキサンを、
(A)成分または(A)成分中のヒドロシリル化反応性基および/またはラジカル反応性基が反応後に残存するように設計された比率で反応させて得たオルガノポリシロキサンである。
【0040】
上記(1)において、(A)成分の少なくとも一部が、炭素数2〜20のアルケニル基を有する樹脂状オルガノポリシロキサンである場合、(A)成分の少なくとも一部はケイ素原子結合水素原子を有する鎖状オルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0041】
同様に、(A)成分の少なくとも一部が、ケイ素原子結合水素原子を有する樹脂状オルガノポリシロキサンである場合、(A)成分の少なくとも一部は炭素数2〜20のアルケニル基を有する鎖状オルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0042】
このような(A)成分は、
(a)成分:下記(a1−1)成分および/または下記(a1−2)成分からなる分子中に炭素数2〜20のアルケニル基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサンを有機過酸化物でラジカル反応させたもの、または
(a)成分と、
(a)オルガノハイドロジェンポリシロキサンを、
ヒドロシリル化反応用触媒の存在下において、上記(a)成分に含まれる炭素原子数2〜20のアルケニル基に対して、上記(a)成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0.2〜0.7モルとなる量でヒドロシリル化反応させたものが好ましい。
【0043】
(a1−1)成分は、分岐単位の量が比較的多いポリシロキサンであり、平均単位式:
(RSiO1/2)(RSiO2/2)(RSiO3/2)(SiO4/2)(R1/2)
で表される一分子中にアルケニル基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサンである。式中、Rは、各々独立に、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のハロゲン置換アルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のハロゲン置換アリール基、または炭素数7〜20のアラルキル基であり、前記Rと同様の基が例示される。Rは、メチル基、ビニル基、またはフェニル基であることが好ましい。ただし、Rの少なくとも2個はアルケニル基である。また、ホットメルト性が良好であることから、全Rの10モル%以上、あるいは20モル%以上がフェニル基であることが好ましい。また、式中、Rは水素原子または炭素数1〜6のアルキル基であり、前記と同様のアルキル基が例示される。
【0044】
また、式中、aは0〜0.7の範囲内の数、bは0〜0.7の範囲内の数、cは0〜0.9の範囲内の数、dは0〜0.7の範囲内の数、eは0〜0.1の範囲内の数、かつ、c+dは0.3〜0.9の範囲内の数、a+b+c+dは1であり、好ましくは、aは0〜0.6の範囲内の数、bは0〜0.6の範囲内の数、cは0〜0.9の範囲内の数、dは0〜0.5の範囲内の数、eは0〜0.05の範囲内の数、かつ、c+dは0.4〜0.9の範囲内の数、a+b+c+dは1である。これは、a、b、およびc+dがそれぞれ上記範囲内の数であると、得られる硬化物の硬度や機械的強度が優れたものとなるからである。
【0045】
このような(a1−1)成分としては、次のオルガノポリシロキサンが例示される。式中、Me、Ph、Viはそれぞれメチル基、フェニル基、ビニル基を表す。
(ViMeSiO1/2)0.25(PhSiO3/2)0.75(HO1/2)0.02
(ViMeSiO1/2)0.25(PhSiO3/2)0.75
(ViMeSiO1/2)0.20(PhSiO3/2)0.80
(ViMeSiO1/2)0.15(MeSiO1/2)0.38(SiO4/2)0.47(HO1/2)0.01
(ViMeSiO1/2)0.13(MeSiO1/2)0.45(SiO4/2)0.42(HO1/2)0.01
(ViMeSiO1/2)0.15(PhSiO3/2)0.85(HO1/2)0.01
(MeSiO2/2)0.15(MeViSiO2/2)0.10(PhSiO3/2)0.75(HO1/2)0.04
(MeViPhSiO1/2)0.20(PhSiO3/2)0.80(HO1/2)0.05
(ViMeSiO1/2)0.15(PhSiO3/2)0.75(SiO4/2)0.10(HO1/2)0.02
(PhSiO2/2)0.25(MeViSiO2/2)0.30(PhSiO3/2)0.45(HO1/2)0.04
(MeSiO1/2)0.20(ViMePhSiO1/2)0.40(SiO4/2)0.40(HO1/2)0.08
【0046】
(a1−2)成分は、鎖状シロキサン単位の量が比較的多いポリシロキサンであり、平均単位式:
(RSiO1/2)a'(RSiO2/2)b'(RSiO3/2)c'(SiO4/2)d'(R1/2)e'
で表される、一分子中に炭素数2〜20のアルケニル基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサンである。式中、RおよびRは前記と同様の基である。
【0047】
また、式中、a'は0.01〜0.3の範囲内の数、b'は0.4〜0.99の範囲内の数、c'は0〜0.2の範囲内の数、d'は0〜0.2の範囲内の数、e'は0〜0.1の範囲内の数、かつ、c'+d'は0〜0.2の範囲内の数、a'+b'+c'+d'は1であり、好ましくは、a'は0.02〜0.20の範囲内の数、b'は0.6〜0.99の範囲内の数、c'は0〜0.1の範囲内の数、d'は0〜0.1の範囲内の数、j'は0〜0.05の範囲内の数、かつ、c'+d'は0〜0.1の範囲内の数、a'+b'+c'+d'は1である。これは、a'、b'、c'、d'がそれぞれ上記範囲内の数であると、得られる硬化物に強靭性を付与できるからである。
【0048】
このような(a1−2)成分としては、次のオルガノポリシロキサンが例示される。式中、Me、Ph、Viはそれぞれメチル基、フェニル基、ビニル基を表す。
ViMeSiO(MePhSiO)18SiMeVi、すなわち、(ViMeSiO1/2)0.10(MePhSiO2/2)0.90
ViMeSiO(MePhSiO)30SiMeVi、すなわち、(ViMeSiO1/2)0.063(MePhSiO2/2)0.937
ViMeSiO(MePhSiO)150SiMeVi、すなわち、(ViMeSiO1/2)0.013(MePhSiO2/2)0.987
ViMeSiO(MeSiO)18SiMeVi、すなわち、(ViMeSiO1/2)0.10(MeSiO2/2)0.90
ViMeSiO(MeSiO)30SiMeVi、すなわち、(ViMeSiO1/2)0.063(MeSiO2/2)0.937
ViMeSiO(MeSiO)35(MePhSiO)13SiMeVi、すなわち、(ViMeSiO1/2)0.04(MeSiO2/2)0.70(MePhSiO2/2)0.26
ViMeSiO(MeSiO)10SiMeVi、すなわち、(ViMeSiO1/2)0.17(MeSiO2/2)0.83
(ViMeSiO1/2)0.10(MePhSiO2/2)0.80(PhSiO3/2)0.10(HO1/2)0.02
(ViMeSiO1/2)0.20(MePhSiO2/2)0.70(SiO4/2)0.10(HO1/2)0.01
HOMeSiO(MeViSiO)20SiMeOH
MeViSiO(MePhSiO)30SiMeVi
MeViSiO(MeSiO)150SiMeVi
【0049】
(a1−1)成分は得られる硬化物に硬度と機械的強度を付与するという観点から好ましく用いられる。(a1−2)成分は得られる硬化物に強靭性を付与できるという観点から任意成分として添加できるが、以下の(a)成分で鎖状シロキサン単位を多く有する架橋剤を用いる場合はそちらで代用してもよい。いずれの場合においても、分岐状シロキサン単位を多く有する成分と鎖状シロキサン単位を多く有する成分の質量比が50:50〜100:0の範囲内、あるいは60:40〜100:0の範囲内であることが好ましい。これは、分岐状シロキサン単位を多く有する成分と鎖状シロキサン単位を多く有する成分との質量比が上記範囲内の値であると、得られる硬化物の硬度ならびに機械的強度が良好となるからである。
【0050】
なお、(a)成分を、有機過酸化物によるラジカル反応する場合、(a1−1)成分と(a1−2)成分を10:90〜90:10の範囲内で反応させ、(a)成分を用いなくてもよい。
【0051】
(a)成分は、ヒドロシリル化反応において、(a1−1)成分および/または(a1−2)成分を架橋するための成分であり、一分子中にケイ素原子結合水素原子を少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサンである。(a)成分中の水素原子以外のケイ素原子に結合する基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のハロゲン置換アルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のハロゲン置換アリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、アルコキシ基、エポキシ基含有基、または水酸基が例示され、前記と同様の基が例示される。
【0052】
このような(a)成分は限定されないが、好ましくは、平均組成式:
SiO(4−k−m)/2
で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。式中、Rは、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のハロゲン置換アルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のハロゲン置換アリール基、または炭素数7〜20のアラルキル基であり、前記Rと同様の基が例示され、好ましくは、メチル基、またはフェニル基である。
【0053】
また、式中、kは1.0〜2.5の範囲の数、好ましくは、1.2〜2.3の範囲の数であり、mは0.01〜0.9の範囲の数、好ましくは、0.05〜0.8の範囲の数であり、かつ、k+mは1.5〜3.0の範囲の数、好ましくは、2.0〜2.7の範囲の数である。
【0054】
(a)成分は、分岐状シロキサン単位を多く有する樹脂状オルガノハイドロジェンポリシロキサンであってもよく、鎖状シロキサン単位を多く有する鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンであってもよい。具体的には、(a)成分は、下記(a2−1)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン、下記(a2−2)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン、またはこれらの混合物が例示される。
【0055】
(a2−1)成分は、平均単位式:
[RSiO1/2][RSiO2/2][RSiO3/2][SiO4/2](R1/2)
で表されるケイ素原子結合水素原子を有する樹脂状オルガノハイドロジェンポリシロキサンである。式中、Rは、各々独立に、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のハロゲン置換アルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のハロゲン置換アリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、または水素原子であり、前記Rと同様の基が例示される。また、式中、Rは水素原子または炭素数1〜6のアルキル基であり、前記と同様の基が例示される。
【0056】
また、式中、fは0〜0.7の範囲内の数、gは0〜0.7の範囲内の数、hは0〜0.9の範囲内の数、iは0〜0.7の範囲内の数、jは0〜0.1の範囲内の数、かつ、h+iは0.3〜0.9の範囲内の数、f+g+h+iは1であり、好ましくは、fは0〜0.6の範囲内の数、gは0〜0.6の範囲内の数、hは0〜0.9の範囲内の数、iは0〜0.5の範囲内の数、jは0〜0.05の範囲内の数、かつ、h+iは0.4〜0.9の範囲内の数、f+g+h+iは1である。
【0057】
(a2−2)成分は、平均単位式:
(RSiO1/2)f'(RSiO2/2)g'(RSiO3/2)h'(SiO4/2)i'(R1/2)j'
で表される、一分子中にケイ素原子結合水素原子を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサンである。式中、RおよびRは前記と同様の基である。
【0058】
また、式中、f'は0.01〜0.3の範囲内の数、g'は0.4〜0.99の範囲内の数、h'は0〜0.2の範囲内の数、i'は0〜0.2の範囲内の数、j'は0〜0.1の範囲内の数、かつ、h'+i'は0〜0.2の範囲内の数、f'+g'+h'+i'は1であり、好ましくは、f'は0.02〜0.20の範囲内の数、g'は0.6〜0.99の範囲内の数、h'は0〜0.1の範囲内の数、i'は0〜0.1の範囲内の数、j'は0〜0.05の範囲内の数、かつ、h'+i'は0〜0.1の範囲内の数、f'+g'+h'+i'は1である。
【0059】
上記のとおり、(a)成分において、分岐状シロキサン単位を多く有するレジン状のオルガノポリシロキサンは、硬化物に硬度と機械的強度を付与し、鎖状シロキサン単位を多く有する得られるオルガノポリシロキサンは、硬化物に強靭性を付与するものであるので、(a)成分として(a2−1)成分と(a2−2)成分を適宜用いることが好ましい。具体的には、(a)成分中に分岐状シロキサン単位が少ない場合には、(a)成分として(a2−1)成分を主に用いることが好ましく、(a)成分中に鎖状シロキサン単位が少ない場合には、(a2−2)成分を主に用いることが好ましい。(a)成分は、(a2−1)成分と(a2−2)成分の質量比が50:50〜100:0の範囲内、あるいは60:40〜100:0の範囲内であることが好ましい。
【0060】
このような(a)成分としては、次のオルガノポリシロキサンが例示される。式中、Me、Phはそれぞれメチル基、フェニル基を表す。
PhSi(OSiMeH)、すなわち、Ph0.67Me1.330.67SiO0.67
HMeSiO(MeSiO)20SiMeH、すなわち、Me2.000.09SiO0.95
HMeSiO(MeSiO)55SiMeH、すなわち、Me2.000.04SiO0.98
PhSi(OSiMeH)、すなわち、Ph0.25Me1.500.75SiO0.75
(HMeSiO1/2)0.6(PhSiO3/2)0.4、すなわち、Ph0.40Me1.200.60SiO0.90
【0061】
(a)成分の添加量は、(a)成分中のアルケニル基に対して、(a)成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0.2〜0.7となる量であり、好ましくは、0.3〜0.6となる量である。これは、(a)成分の添加量が上記範囲内であると、得られる硬化物の初期の硬度および機械的強度が良好となるためである。
【0062】
(a)成分をラジカル反応するために用いる有機過酸化物は限定されず、下記(C)成分で例示する有機過酸化物を用いることができる。ラジカル反応する際、(a)成分は、(a1−1)成分と(a1−2)成分の質量比が10:90〜90:10の範囲内の混合物であることが好ましい。なお、有機過酸化物の添加量は限定されないが、(a)成分100質量部に対して、0.1〜5質量部の範囲内、0.2〜3質量部の範囲内、あるいは0.2〜1.5質量部の範囲内であることが好ましい。
【0063】
また、(a)成分と(a)成分とをヒドロシリル化反応するために用いるヒドロシリル化反応用触媒は限定されず、下記(C)成分で例示するヒドロシリル化反応用触媒を用いることができる。なお、ヒドロシリル化反応用触媒の添加量は、(a)成分と(a)成分の合計量に対して、ヒドロシリル化反応用触媒中の白金系金属原子が質量単位で、0.01〜500ppmの範囲内、0.01〜100ppmの範囲内、あるいは0.01〜50ppmの範囲内となる量であることが好ましい。
【0064】
上記(A)は、下記(a)成分および下記(a)成分を、縮合反応用触媒により縮合反応させたものである。
【0065】
(a)成分は、平均単位式:
(RSiO1/2)(RSiO2/2)(RSiO3/2)(SiO4/2)(R1/2)
で表される縮合反応性のオルガノポリシロキサンである。式中、Rは、各々独立に、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のハロゲン置換アルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のハロゲン置換アリール基、または炭素数7〜20のアラルキル基であり、前記と同様の基が例示される。また、式中のRは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数2〜5のアシル基であり、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;アシルオキシ基が例示される。(a)成分は、一分子中に少なくとも1個のケイ素原子結合水酸基、ケイ素原子結合アルコキシ基、またはケイ素原子結合アシロキシ基を有する。また、一分子中、少なくとも2個のRはアルケニル基であり、全Rの10モル%以上、または20モル%以上がフェニル基であることが好ましい。
【0066】
式中、pは0〜0.7の範囲内の数、qは0〜0.7の範囲内の数、rは0〜0.9の範囲内の数、sは0〜0.7の範囲内の数、tは0.01〜0.10の範囲内の数、かつ、r+sは0.3〜0.9の範囲内の数、p+q+r+sは1であり、好ましくは、pは0〜0.6の範囲内の数、qは0〜0.6の範囲内の数、rは0〜0.9の範囲内の数、sは0〜0.5の範囲内の数、tは0.01〜0.05の範囲内の数、かつ、r+sは0.4〜0.9の範囲内の数である。これは、p、q、およびr+sがそれぞれ上記範囲内の数であると、25℃において柔軟性を持ちつつも、非流動性で、表面粘着性が低く、高温での溶融粘度が十分に低いホットメルト性のシリコーンが得られるからである。
【0067】
(a)成分は、平均単位式:
(RSiO1/2)p'(RSiO2/2)q'(RSiO3/2)r'(SiO4/2)s'(R1/2)t'
で表される縮合反応性のオルガノポリシロキサンである。式中、RおよびRは前記と同様の基である。(a)成分は、一分子中に少なくとも1個のケイ素原子結合水酸基、ケイ素原子結合アルコキシ基、またはケイ素原子結合アシロキシ基を有する。また、式中、p'は0.01〜0.3の範囲内の数、q'は0.4〜0.99の範囲内の数、r'は0〜0.2の範囲内の数、s'は0〜0.2の範囲内の数、t'は0〜0.1の範囲内の数、かつ、r'+s'は0〜0.2の範囲内の数、p'+q'+r'+s'は1であり、好ましくは、p'は0.02〜0.20の範囲内の数、q'は0.6〜0.99の範囲内の数、r'は0〜0.1の範囲内の数、s'は0〜0.1の範囲内の数、t'は0〜0.05の範囲内の数、かつ、r'+s'は0〜0.1の範囲内の数である。これは、p'、q'、r'、s'がそれぞれ上記範囲内の数であると、25℃において柔軟性を持ちつつも、非流動性で、表面粘着性が低く、高温での溶融粘度が十分に低いホットメルト性のシリコーンが得られるからである。
【0068】
(a)成分と(a)成分を縮合反応するための縮合反応用触媒は限定されず、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、オクテン酸錫、ジブチル錫ジオクテート、ラウリン酸錫等の有機錫化合物;テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート、ジブトキシビス(エチルアセトアセテート)等の有機チタン化合物;その他、塩酸、硫酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等の酸性化合物;アンモニア、水酸化ナトリウム等のアルカリ性化合物;1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン(DBU)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)等のアミン系化合物が例示され、好ましくは、有機錫化合物、有機チタン化合物である。
【0069】
また、(A)成分は、樹脂状オルガノシロキサンブロックと鎖状オルガノシロキサンブロックからなるブロックコポリマーである。このような(A)成分は、好ましくは、40〜90モル%の式[RSiO2/2]のジシロキシ単位、10〜60モル%の式[RSiO3/2]のトリシロキシ単位からなり、0.5〜35モル%のシラノール基[≡SiOH]を含むことが好ましい。ここで、Rは、各々独立に、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のハロゲン置換アルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のハロゲン置換アリール基、または炭素数7〜20のアラルキル基であり、前記と同様の基が例示される。一分子中、少なくとも2個のRはアルケニル基である。また、前記ジシロキシ単位[RSiO2/2]は、1つの直鎖ブロック当たりに平均して100〜300個のジシロキシ単位を有する直鎖ブロックを形成し、前記トリシロキシ単位[RSiO3/2]は、少なくとも500g/モルの分子量を有する非直鎖ブロックを形成し、少なくとも30%の非直鎖ブロックが互いに結合しており、各直鎖ブロックは、少なくとも1つの非直鎖ブロックと−Si−O−Si−結合を介して結合しており、少なくとも20000g/モルの質量平均分子量を有し、0.5〜4.5モル%の少なくとも1つのアルケニル基を含む、樹脂状オルガノシロキサンブロック共重合体である。
【0070】
(A)成分は、(a)樹脂状オルガノシロキサンまたは樹脂状オルガノシロキサンブロック共重合体と、(a)鎖状オルガノシロキサン、さらに必要に応じて(a)シロキサン化合物を縮合反応して調製される。
【0071】
(a)成分は、平均単位式:
[RSiO1/2][RSiO2/2]ii[RSiO3/2]iii[RSiO3/2]iv[SiO4/2]
で表される樹脂状オルガノシロキサンである。式中、Rは、各々独立に、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のハロゲン置換アルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のハロゲン置換アリール基、または炭素数7〜20のアラルキル基であり、前記と同様の基が例示される。また、式中、Rは、各々独立に、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のハロゲン置換アルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のハロゲン置換アリール基、または炭素数7〜20のアラルキル基であり、前記Rと同様の基が例示される。
【0072】
また、式中、i、ii、iii、iv、およびvは、各シロキシ単位のモル分率を表し、iは0〜0.6の数であり、iiは0〜0.6の数であり、iiiは0〜1の数であり、ivは0〜1の数であり、vは0〜0.6の数であり、ただし、ii+iii+iv+v>0であり、かつ、i+ii+iii+iv+v≦1である。また、(a)成分は、一分子中に0〜35モル%のシラノール基[≡SiOH]を含むことが好ましい。
【0073】
(a)成分は、一般式:
3−α(X)αSiO(RSiO)βSi(X)α3−α
で表される直鎖状のオルガノシロキサンである。式中、Rは前記と同じであり、前記と同様の基が例示される。また、式中、Xは、−OR、F、Cl、Br、I、−OC(O)R、−N(R、または−ON=CR(ここで、Rは水素原子または炭素数1〜6のアルキル基である。)から選択される加水分解性基である。また、式中、αは、各々独立して、1、2、または3であり、βは50〜300の整数である。
【0074】
(a)成分は、一般式:
SiX
で表されるシロキサン化合物である。式中、R、R、およびXは前記と同様の基である。
【0075】
(a)成分と(a)成分および/または(a)成分を縮合反応するための縮合反応用触媒は限定されず、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、オクテン酸錫、ジブチル錫ジオクテート、ラウリン酸錫等の有機錫化合物;テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート、ジブトキシビス(エチルアセトアセテート)等の有機チタン化合物;その他、塩酸、硫酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等の酸性化合物;アンモニア、水酸化ナトリウム等のアルカリ性化合物;1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン(DBU)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)等のアミン系化合物が例示される。
【0076】
(A)成分は、好ましくはホットメルト性を示し、具体的には、25℃において非流動性であり、100℃の溶融粘度が8000Pa・s以下であることが好ましい。非流動性とは、無負荷の状態で流動しないことを意味し、例えば、JIS K 6863−1994「ホットメルト接着剤の軟化点試験方法」で規定されるホットメルト接着剤の環球法による軟化点試験方法で測定される軟化点未満での状態を示す。すなわち、25℃において非流動性であるためには、軟化点が25℃よりも高い必要がある。
【0077】
(A)成分は、100℃の溶融粘度が8000Pa・s以下、5000Pa・s以下、あるいは10〜3000Pa・sの範囲内であることが好ましい。100℃の溶融粘度が上記の範囲内であると、ホットメルト後、25℃に冷却した後の密着性が良好である。
【0078】
(A)成分は微粒子状であれば、粒子径は限定されないが、平均一次粒子径は1〜5000μmの範囲内、1〜500μmの範囲内、1〜100μmの範囲内、1〜20μmの範囲内、あるいは1〜10μmの範囲内であることが好ましい。この平均一次粒子径は、例えば、光学顕微鏡またはSEMで観察することにより求めることができる。(A)成分の形状は限定されず、球状、紡錘状、板状、針状、不定形状が例示され、均一に溶融することから、球状あるいは真球状であることが好ましい。特に(A)成分を1〜10μmの真球状とすることで本配合物の溶融特性及び硬化後の機械的物性を良好に改善できる
【0079】
(A)成分を製造する方法は限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、(A)成分を単に微粒子化する方法、あるいは少なくとも2種類のオルガノポリシロキサンを架橋させる工程と、その反応物を微粒子化する工程を同時にまたは別々に行う方法が挙げられる。
【0080】
少なくとも2種類のオルガノポリシロキサンを架橋させた後、得られたシリコーンを微粒子化する方法としては、例えば、前記シリコーンを、粉砕機を用いて粉砕する方法や、溶剤存在下において直接微粒子化する方法が挙げられる。粉砕機は限定されないが、例えば、ロールミル、ボールミル、ジェットミル、ターボミル、遊星ミルが挙げられる。また、前記シリコーンを溶剤存在下において直接微粒子化する方法としては、例えば、スプレードライヤーによるスプレー、あるいは2軸混練機やベルトドライヤーによる微粒子化が挙げられる。本発明においては、スプレードライヤーによるスプレーにより得られた真球状のホットメルト性シリコーン微粒子を用いることが、粒状配合物の溶融特性、硬化物の柔軟性、(B)成分の配合量、製造時の効率および組成物の取扱い作業性の見地から特に好ましい。
【0081】
スプレードライヤー等の使用により、真球状で、かつ、平均一次粒子径が1〜500μmである(A)成分を製造することができる。なお、スプレードライヤーの加熱・乾燥温度は、シリコーン微粒子の耐熱性等に基づいて適宜設定する必要がある。なお、シリコーン微粒子の二次凝集を防止するため、シリコーン微粒子の温度をそのガラス転移温度以下に制御することが好ましい。このようにして得られたシリコーン微粒子は、サイクロン、バッグフィルター等で回収できる。
【0082】
均一な(A)成分を得る目的で、上記工程において、硬化反応を阻害しない範囲内で溶剤を用いてもよい。溶剤は限定されないが、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素;テトラヒドロフラン、ジプロピルエーテル等のエーテル類;ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン等のシリコーン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類が例示される。
【0083】
本発明の(B)成分は、平均粒子径10.0μm以上の粗大粒子を実質的に含まない無機フィラーであり、かかる粗大粒子を含まない無機フィラーを前記の(A)成分と共に用いることで、溶融時のギャップフィル性に優れ、硬化して室温から高温で柔軟な硬化物を与える硬化性粒状シリコーン組成物を提供することができる。ここで、平均粒子径10.0μm以上または5.0μm以上の粗大粒子を実質的に含まないとは、電子顕微鏡等で(B)成分を観察した場合に粒子の長径において平均粒子径10.0μm以上または5.0μm以上の粗大粒子が観察されないか、レーザー回折散乱式粒度分布測定等により(B)成分の粒子径分布を測定した場合に平均粒子径10.0μm以上または5.0μm以上の粗大粒子の体積比率が1%未満であることをいう。
【0084】
このような、(B)成分は、軟化点を有さないか又は前記(A)成分の軟化点以下では軟化しない少なくとも1種のフィラーであることが好ましく、本組成物の取扱い作業性を向上し、本組成物の硬化物に機械的特性やその他の特性を付与する成分であってもよい。(B)成分としては、無機フィラー、有機フィラー、およびこれらの混合物が例示され、無機フィラーが好ましい。この無機フィラーとしては、補強性フィラー、白色顔料、熱伝導性フィラー、導電性フィラー、蛍光体、およびこれらの少なくとも2種の混合物が例示され、特に、平均粒子径5μm以上の粗大粒子を実質的に含まない補強性フィラーを含有することが好ましい。また、有機フィラーとしては、シリコーン樹脂系フィラー、フッ素樹脂系フィラー、ポリブタジエン樹脂系フィラーが例示される。なお、これらのフィラーの形状は特に制限されるものではなく、球状、紡錘状、扁平状、針状、不定形等であってよい。
【0085】
本組成物を封止剤、保護剤、接着剤、光反射材等の用途で使用する場合には、硬化物に機械的強度を付与し、保護性または接着性を向上させることから、(B)成分として補強性フィラーを配合することが好ましい。この補強性フィラーとしては、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、溶融シリカ、焼成シリカ、ヒュームド二酸化チタン、石英、炭酸カルシウム、ケイ藻土、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、炭酸亜鉛が例示される。また、これらの補強性フィラーを、メチルトリメトキシシラン等のオルガノアルコキシシラン;トリメチルクロロシラン等のオルガノハロシラン;ヘキサメチルジシラザン等のオルガノシラザン;α,ω−シラノール基封鎖ジメチルシロキサンオリゴマー、α,ω−シラノール基封鎖メチルフェニルシロキサンオリゴマー、α,ω−シラノール基封鎖メチルビニルシロキサンオリゴマー等のシロキサンオリゴマー等により表面処理してもよい。この補強性フィラーは、平均粒子径5μm以上の粗大粒子を実質的に含まないものである。さらに、補強性フィラーとして、メタケイ酸カルシウム、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、セピオライト、ゾノライト、ホウ酸アルミニウム、ロックウール、ガラスファイバー等の繊維状フィラーを用いてもよい。
【0086】
特に、本組成物に、溶融時の良好なギャップフィル性を付与し、硬化物の室温〜高温における柔軟性を付与する見地から、(B)成分は、(b1)平均粒子径0.1μm以下の無機フィラー、好適には補強性フィラーと(b2)平均粒子径0.1〜5.0μmのの無機フィラー、好適には補強性フィラーの混合物であることが好ましい。両者の配合比は任意であるが、1/99〜20/80、1/99〜50/50、または5/95〜40/60の質量比であってよい。特に、(b1−1)平均粒子径0.1μm以下、好適には0.05μm以下のフュームドシリカと(b2−1)平均粒子径0.1〜5.0μm、好適には0.15〜4.0μmの溶融シリカを、1/99〜20/80で含有するものでよく、好適には、1/99〜50/50、より好適には、5/95〜40/60の質量比で含有することが好ましい。かかる無機フィラーの混合物の粒子は(A)成分の粒子径と同じ又は小さいサイズとなる場合、溶融時に良好なシリコーンーフィラーマトリックスを形成できる。これにより硬化物の柔軟性及び機械的強度が改善される。また、実質的に粗大粒子を含有しないため、良好なギャップフィル性も達成できる。
【0087】
本発明の硬化性粒状シリコーン組成物は、光反射材、特に光半導体(LED)用途に用いる光反射材として用いることができ、硬化物の白色度を付与し、光反射性を向上させることから、(B)成分として、平均粒子径10.0μm以上の粗大粒子を実質的に含まない白色顔料を用いてもよい。この白色顔料としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム等の金属酸化物;ガラスバルーン、ガラスビーズ等の中空フィラー;その他、硫酸バリウム、硫酸亜鉛、チタン酸バリウム、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド、酸化アンチモンが例示される。光反射率と隠蔽性が高いことから、酸化チタンが好ましい。また、UV領域の光反射率が高いことから、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、チタン酸バリウムが好ましい。また、この白色顔料をシランカップリング剤、シリカ、酸化アルミニウム等で表面処理してもよい。特に好適な白色顔料は、平均粒子径が0.5μm以下の酸化チタン微粒子であり、組成物中に高充填することにより、硬化物に可視波長領域における高い光反射率と隠蔽性を与え、さらに、可視波長領域における光反射率が低波長側と高波長側を比較した場合にほとんど変化しないという実益がある。
【0088】
(B)成分は、平均粒子径10.0μm以上の粗大粒子を実質的に含まない限り、(A)成分に該当しないシリコーン微粒子を含んでもよく、応力緩和特性等を改善、あるいは所望により調整することができる。シリコーン微粒子は、非反応性のシリコーンレジン微粒子およびシリコーンエラストマー微粒子が挙げられるが、柔軟性または応力緩和特性の改善の見地から、シリコーンエラストマー微粒子が好適に例示される。
【0089】
シリコーンエラストマー微粒子は、主としてジオルガノシロキシ単位(D単位)からなる直鎖状ジオルガノポリシロキサンの架橋物である。シリコーンエラストマー微粒子は、ヒドロシリル化反応やシラノール基の縮合反応等によるジオルガノポリシロキサンの架橋反応により調製することができ、中でも、側鎖又は末端に珪素結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと側鎖又は末端にアルケニル基等の不飽和炭化水素基を有するジオルガノポリシロキサンを、ヒドロシリル化反応触媒下で架橋反応させることによって好適に得ることができる。シリコーンエラストマー微粒子は、球状、扁平状、及び不定形状等種々の形状を取りうるが、分散性の点から球状であることが好ましく、中でも真球状であることがより好ましい。こうしたシリコーンエラストマー微粒子の市販品としては、例えば、東レ・ダウコーニング社製の「トレフィルEシリーズ」、「EPパウダーシリーズ」、信越化学工業社製の「KMPシリーズ」等を挙げることができる。
なお、シリコーンエラストマー微粒子は、表面処理がされていてもよい。表面処理剤の例としては、例えば、メチルハイドロジェンポリシロキサン、シリコーンレジン、金属石鹸、シランカップリング剤、シリカ、酸化チタン等の無機酸化物、パーフルオロアルキルシラン、及びパーフルオロアルキルリン酸エステル塩等のフッ素化合物等が挙げられる。
【0090】
また、本組成物をLEDの波長変換材料に用いる場合には、光半導体素子からの発光波長を変換するため、(B)成分として蛍光体を配合してもよい。この蛍光体としては、平均粒子径5μm以上の粗大粒子を実質的に含まないかぎり、特に制限はなく、発光ダイオード(LED)に広く利用されている、酸化物系蛍光体、酸窒化物系蛍光体、窒化物系蛍光体、硫化物系蛍光体、酸硫化物系蛍光体等からなる黄色、赤色、緑色、および青色発光蛍光体が例示される。酸化物系蛍光体としては、セリウムイオンを包含するイットリウム、アルミニウム、ガーネット系のYAG系緑色〜黄色発光蛍光体;セリウムイオンを包含するテルビウム、アルミニウム、ガーネット系のTAG系黄色発光蛍光体;セリウムやユーロピウムイオンを包含するシリケート系緑色〜黄色発光蛍光体が例示される。また、酸窒化物系蛍光体としては、ユーロピウムイオンを包含するケイ素、アルミニウム、酸素、窒素系のサイアロン系赤色〜緑色発光蛍光体が例示される。窒化物系蛍光体としては、ユーロピウムイオンを包含するカルシウム、ストロンチウム、アルミニウム、ケイ素、窒素系のカズン系赤色発光蛍光体が例示される。硫化物系蛍光体としては、銅イオンやアルミニウムイオンを包含するZnS系緑色発色蛍光体が例示される。酸硫化物系蛍光体としては、ユーロピウムイオンを包含するYS系赤色発光蛍光体が例示される。本組成物では、これらの蛍光体を2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0091】
さらに、本組成物には、硬化物に熱伝導性または電気伝導性を付与するため、熱伝導性フィラーまたは導電性フィラーを含有してもよい。この熱伝導性フィラーまたは導電性フィラーとしては、平均粒子径5μm以上の粗大粒子を実質的に含まないかぎり、金、銀、ニッケル、銅、アルミニウム等の金属微粉末;セラミック、ガラス、石英、有機樹脂等の微粉末表面に金、銀、ニッケル、銅等の金属を蒸着またはメッキした微粉末;酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化亜鉛等の金属化合物;グラファイト、およびこれらの2種以上の混合物が例示される。本組成物に電気絶縁性が求められる場合には、金属酸化物系粉末、または金属窒化物系粉末が好ましく、特に、酸化アルミニウム粉末、酸化亜鉛粉末、または窒化アルミニウム粉末が好ましい。
【0092】
(B)成分の含有量は限定されないが、(A)成分100質量部に対して10〜2000質量部の範囲内、10〜1500質量部の範囲内、あるいは10〜1000質量部の範囲内で配合することができる。特に、本発明の(B)成分は、平均粒子径10.0μm以上の粗大粒子を実質的に含まず、(A)成分に対して比較的大量に配合しても、組成物の取り扱い作業性やホットメルト時のギャップフィル性が低下せず、かつ、得られる硬化物の室温〜高温下における柔軟性と機械的強度が優れることから、(A)成分100質量部に対して50〜900質量部、100〜800質量部、および150〜750質量部の範囲で配合することが好適である。さらに、本発明の組成物は、全体の50質量%以上、60質量%以上および70質量%が上記の(B)成分であってよい。
【0093】
(C)成分は、(A)成分を硬化するための硬化剤であり、(A)成分を硬化できるものであれば限定されない。(A)成分がアルケニル基を有する場合には、(C)成分は、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンとヒドロシリル化反応用触媒であり、(A)成分がアルケニル基を含有し、ヒドロシリル化反応用触媒を含有する場合には、(C)成分は、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンのみでよいが、ヒドロシリル化反応用触媒を併用してもよい。また、(A)成分がアルケニル基を有する場合には、(C)成分は有機過酸化物でもよく、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンを併用してもよい。一方、(A)成分がケイ素原子結合水素原子を有する場合には、(C)成分は、一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンとヒドロシリル化反応用触媒であり、(A)成分がケイ素原子結合水素原子を有し、ヒドロシリル化反応用触媒を含有する場合には、(C)成分は、一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンのみでよいが、ヒドロシリル化反応用触媒を併用してもよい
【0094】
(C)成分中のオルガノポリシロキサンとしては、前記(a)および/または前記(a)で表されるアルケニル基含有オルガノポリシロキサン、あるいは前記(a)および/または前記(a)で表されるケイ素原子結合水素原子含有オルガノポリシロキサンが例示される。
【0095】
(C)成分としてオルガノポリシロキサンを使用する場合、その含有量は限定されないが、本組成物が硬化するためには、本組成物中のアルケニル基1モルに対してケイ素原子結合水素原子が0.5〜20モルとなる範囲内の量、あるいは1.0〜10モルとなる範囲内の量であることが好ましい。
【0096】
ヒドロシリル化反応用触媒としては、白金系触媒、ロジウム系触媒、パラジウム系触媒が例示され、本組成物の硬化を著しく促進できることから白金系触媒が好ましい。この白金系触媒としては、白金微粉末、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金−アルケニルシロキサン錯体、白金−オレフィン錯体、白金−カルボニル錯体、およびこれらの白金系触媒を、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂で分散あるいはカプセル化した触媒が例示され、特に、白金−アルケニルシロキサン錯体が好ましい。このアルケニルシロキサンとしては、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、これらのアルケニルシロキサンのメチル基の一部をエチル基、フェニル基等で置換したアルケニルシロキサン、これらのアルケニルシロキサンのビニル基をアリル基、ヘキセニル基等で置換したアルケニルシロキサンが例示される。特に、この白金−アルケニルシロキサン錯体の安定性が良好であることから、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンであることが好ましい。加えて、取扱作業性および組成物のポットライフの改善の見地から、熱可塑性樹脂で分散あるいはカプセル化した微粒子状の白金含有ヒドロシリル化反応触媒を用いてもよい。なお、ヒドロシリル化反応を促進する触媒としては、鉄、ルテニウム、鉄/コバルトなどの非白金系金属触媒を用いてもよい。
【0097】
ヒドロシリル化反応用触媒の添加量は、(A)成分に対して、金属原子が質量単位で0.01〜500ppmの範囲内となる量、0.01〜100ppmの範囲内となる量、あるいは、0.01〜50ppmの範囲内となる量であることが好ましい。
【0098】
有機過酸化物としては、過酸化アルキル類、過酸化ジアシル類、過酸化エステル類、および過酸化カーボネート類が例示される。
【0099】
過酸化アルキル類としては、ジクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、tert−ブチルクミル、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、3,6,9−トリエチル−3,6,9−トリメチル−1,4,7−トリパーオキソナンが例示される。
【0100】
過酸化ジアシル類としては、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイドが例示される。
【0101】
過酸化エステル類としては、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、α−クミルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ヘキシルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−アミルパーオキシル−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、ジ−tert−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、tert−アミルパーオキシ−3,5,5―トリメチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシ−3,5,5―トリメチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−ブチルパーオキシトリメチルアディペートが例示される。
【0102】
過酸化カーボネート類としては、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジセチルパーオキシジカーボネート、ジミリスチルパーオキシジカーボネートが例示される。
【0103】
この有機過酸化物は、その半減期が10時間である温度が90℃以上、あるいは95℃以上であるものが好ましい。このような有機過酸化物としては、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ−(2−t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、3,6,9−トリエチル−3,6,9−トリメチル−1,4,7−トリパーオキソナンが例示される。
【0104】
有機過酸化物の含有量は限定されないが、(A)成分100質量部に対して、0.05〜10質量部の範囲内、あるいは0.10〜5.0質量部の範囲内であることが好ましい。
【0105】
また、本組成物には、本発明の目的を損なわない限り、その他任意の成分として、硬化遅延剤や接着付与剤を含有してもよい。
【0106】
硬化遅延剤としては、2−メチル−3−ブチン−2−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、2−フェニル−3−ブチン−2−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノール等のアルキンアルコール;3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン等のエンイン化合物;テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン、テトラメチルテトラヘキセニルシクロテトラシロキサン等のアルケニル基含有低分子量シロキサン;メチル−トリス(1,1−ジメチルプロピニルオキシ)シラン、ビニル−トリス(1,1−ジメチルプロピニルオキシ)シラン等のアルキニルオキシシランが例示される。この硬化遅延剤の含有量は限定されないが、本組成物に対して、質量単位で、10〜10000ppmの範囲内であることが好ましい。
【0107】
接着付与剤としては、ケイ素原子に結合したアルコキシ基を一分子中に少なくとも1個有する有機ケイ素化合物が好ましい。このアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、メトキシエトキシ基が例示され、特に、メトキシ基が好ましい。また、有機ケイ素化合物中のアルコキシ基以外のケイ素原子に結合する基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン化アルキル基等のハロゲン置換もしくは非置換の一価炭化水素基;3−グリシドキシプロピル基、4−グリシドキシブチル基等のグリシドキシアルキル基;2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基等のエポキシシクロヘキシルアルキル基;3,4−エポキシブチル基、7,8−エポキシオクチル基等のエポキシアルキル基;3−メタクリロキシプロピル基等のアクリル基含有一価有機基;水素原子が例示される。この有機ケイ素化合物は本組成物中のアルケニル基またはケイ素原子結合水素原子と反応し得る基を有することが好ましく、具体的には、ケイ素原子結合水素原子またはアルケニル基を有することが好ましい。また、各種の基材に対して良好な接着性を付与できることから、この有機ケイ素化合物は一分子中に少なくとも1個のエポキシ基含有一価有機基を有するものであることが好ましい。こうした有機ケイ素化合物としては、オルガノシラン化合物、オルガノシロキサンオリゴマー、アルキルシリケートが例示される。このオルガノシロキサンオリゴマーあるいはアルキルシリケートの分子構造としては、直鎖状、一部分枝を有する直鎖状、分枝鎖状、環状、網状が例示され、特に、直鎖状、分枝鎖状、網状であることが好ましい。有機ケイ素化合物としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシラン化合物;一分子中にケイ素原子結合アルケニル基もしくはケイ素原子結合水素原子、およびケイ素原子結合アルコキシ基をそれぞれ少なくとも1個ずつ有するシロキサン化合物、ケイ素原子結合アルコキシ基を少なくとも1個有するシラン化合物またはシロキサン化合物と一分子中にケイ素原子結合ヒドロキシ基とケイ素原子結合アルケニル基をそれぞれ少なくとも1個ずつ有するシロキサン化合物との混合物、メチルポリシリケート、エチルポリシリケート、エポキシ基含有エチルポリシリケートが例示される。この接着付与剤は低粘度液状であることが好ましく、その粘度は限定されないが、25℃において1〜500mPa・sの範囲内であることが好ましい。また、この接着付与剤の含有量は限定されないが、本組成物の合計100質量部に対して0.01〜10質量部の範囲内であることが好ましい。
【0108】
さらに、本組成物には、本発明の目的を損なわない限り、その他任意の成分として、前記(a1)〜前記(a4)の少なくとも1種の液状オルガノポリシロキサン;酸化鉄(ベンガラ)、酸化セリウム、セリウムジメチルシラノレート、脂肪酸セリウム塩、水酸化セリウム、ジルコニウム化合物等の耐熱剤;カルナウバワックス、モンタンワックス、ステアリン酸カルシウム、モンタン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、モンタン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、モンタン酸亜鉛、エステル系ワックス、オレフィン系ワックス等の離型剤;その他、染料、白色以外の顔料、難燃性付与剤等を含有してもよい。
【0109】
上記の組成物は、平均粒子径10.0μm以上の粗大粒子を実質的に含まない(B)成分を、(A)成分であるホットメルト性シリコーン微粒子と併用することにより、溶融(ホットメルト)時のギャップフィル性に優れ、硬化物が室温から高温、具体的には、25℃〜150℃において柔軟であり、応力緩和特性に優れ、かつ、室温で折り曲げ等の変形が生じても破損しにくいという優れた特性を有する。上記の(B)成分は無機フィラーを含むことが好適であるが、白色顔料、熱伝導性フィラー、導電性フィラー、蛍光体等を用いることにより、光反射率の向上等の更なる機能性を付与することが可能である。
【0110】
具体的には、上記組成物を硬化してなる硬化物は、25℃における貯蔵弾性率(G')の値が2000MPa以下であり、かつ、150℃における貯蔵弾性率(G')の値が100MPa以下である。かかる硬化物は室温(25℃)および高温(150℃)のいずれにおいても柔軟であり、半導体基盤等の基材への密着性と追従性に優れ、かつ、近年導入が進んでいるフレキシブル半導体基盤のように変形を前提とした半導体素子の封止用途であっても、封止した半導体素子の破損あるいは剥離、ボイド等の欠陥の発生が抑制される。なお、特に高い伸びおよび変形に対する追従性が求められる用途にあっては、25℃における貯蔵弾性率(G')の値が1500MPa以下、1000MPa以下にしてもよく、かつ、150℃における貯蔵弾性率(G')の値が50MPa以下または40MPa以下にしてもよい。
【0111】
本組成物をペレット状で使用してもよい。本組成物のペレットは、本組成物を打錠成型して得られるものであり、取扱い作業性および硬化性が優れる。なお、「ペレット」は、「タブレット」とも言うことがある。ペレットの形状は限定されないが、通常、球状、楕円球状あるいは円柱状である。また、ペレットの大きさは限定されないが、例えば、500μm以上の平均粒子径または円相当径を有する。
【0112】
本組成物はシート状に成型して使用しても良い。例えば、平均厚みが500μm以上、好適には数mmの硬化性粒状シリコーン組成物からなるシートは、ホットメルト性を有し、高温下で加熱硬化性を有するので、特にコンプレッション成型等に用いる場合、取扱作業性および溶融特性に優れる点で有利である。
【0113】
本組成物は、25℃において非流動性である。ここで、非流動性とは、無負荷の状態で変形・流動しないことを意味し、好適には、ペレットまたはタブレット等に成型した場合に、25℃かつ無負荷の状態で変形・流動しないものである。このような非流動性は、例えば、25℃のホットプレート上に成型した本組成物を置き、無負荷または一定の加重をかけても、実質的に変形・流動しないことにより評価可能である。25℃において非流動性であると、該温度での形状保持性が良好で、表面粘着性が低いからである。
【0114】
本組成物の軟化点は100℃以下であることが好ましい。このような軟化点は、ホットプレート上で、100グラム重の荷重で上から10秒間押し続け、荷重を取り除いた後、組成物の変形量を測定した場合、高さ方向の変形量が1mm以上となる温度を意味する。
【0115】
本組成物は、100℃の溶融粘度が8000Pa・s以下、6000Pa・s以下、あるいは5000Pa・s以下であることが好ましい。また、100℃の溶融粘度が10Pa・s以上であることが好ましい。これは、本組成物をホットメルト後、25℃に冷却した後の基材への密着性が良好であるからである。なお、ここで言う溶融粘度は、レオメーターAR2000EX(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)等によりせん断速度5[1/s]で測定可能である。
【0116】
本組成物は、硬化特性が優れる。本組成物の硬化特性は、レオメーターを用いて評価することができる。本組成物の硬化特性は、150〜180℃の一定の温度で3分後のトルク値を100としたとき、1%トルク値と90%トルク値が得られる時間(秒)をそれぞれT、T90とする値に基づいて評価できる。本組成物は、150〜180℃の一定の温度で測定したときのTが20秒以上、あるいは25秒以上であることが好ましい。また、150〜180℃で測定したときのT90が145秒以下、あるいは140秒以下であることが好ましい。なお、測定に用いるレオメーターとしては、レオメーターMDR2000(アルファテクノロジーズ社製)が例示される。
【0117】
[硬化性粒状シリコーン組成物の製造方法]
本組成物は、(A)成分〜(C)成分、さらにその他任意の成分を、(A)成分の軟化点未満の温度で粉体混合することにより製造することができる。本製造方法で用いる粉体混合機は限定されず、一軸または二軸の連続混合機、二本ロール、ロスミキサー、ホバートミキサー、デンタルミキサー、プラネタリミキサー、ニーダーミキサー、ラボミルサー、小型粉砕機、ヘンシェルミキサーが例示され、好ましくは、ラボミルサー、小型粉砕機、ヘンシェルミキサーである。
【0118】
[硬化物の成型方法]
本組成物は、次の工程(I)〜(III)から少なくともなる方法により硬化することができる。
(I)本組成物を(A)成分の軟化点以上に加熱して、溶融する工程;
(II)前記工程(I)で得られた硬化性シリコーン組成物を金型に注入する工程、又は型締めにより金型に前記工程(I)で得られた硬化性シリコーン組成物を行き渡らせる工程;および
(III)前記工程(II)で注入した硬化性シリコーン組成物を硬化する工程
【0119】
本組成物は、上記のとおり、溶融時のギャップフィル性、硬化物の室温〜高温における柔軟性に優れることから、硬化物により、半導体素子のオーバーモールド及びアンダーフィルを一度に行う被覆工程(いわゆる、モールドアンダーフィル法)を含む成型方法に極めて好適に用いることができる。さらに、本組成物は、上記の特性により、単独又は複数の半導体素子を搭載した半導体ウエハ基板の表面を覆い、かつ、半導体素子の間隙が当該硬化物により充填されるようにオーバーモールド成型する被覆工程(いわゆる、ウェハモールディング)を含む成型方法に好適に用いることができる。
【0120】
上記工程において、トランスファー成型機、コンプレッション成型機、インジェクション成型機、補助ラム式成型機、スライド式成型器、二重ラム式成型機、または低圧封入用成型機等を用いることができる。特に、本発明組成物は、トランスファー成型およびコンプレッション成型により硬化物を得る目的で好適に利用できる。特に、本発明組成物をシート状に成型したものは、コンプレッション成型用の材料として有用である。
【0121】
最後に、工程(III)において、工程(II)で注入(適用)した硬化性シリコーン組成物を硬化する。なお、(C)成分として有機過酸化物を用いる場合には、加熱温度は150℃以上、あるいは170℃以上であることが好ましい。
【0122】
半導体等の保護部材として好適であることから、本組成物を硬化して得られる硬化物の25℃におけるタイプDデュロメータ硬さが50以上、あるいは60以上であることが好ましい。なお、このタイプDデュロメータ硬さは、JIS K 6253−1997「加硫ゴムおよび熱可塑性ゴムの硬さ試験方法」に準じてタイプDデュロメータによって求められる。
【0123】
さらに、柔軟性を要求されるフレキシブル用途の半導体の封止材として好適であることから、JIS K 6911-1995「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に規定の方法により測定した硬化物の曲げ伸び率は2%以上、あるいは4%以上であることが好ましい。
【0124】
[組成物の用途]
本組成物は、ホットメルト性を有し、溶融(ホットメルト)時のギャップフィル性、取扱い作業性および硬化性が優れているので、半導体用の封止剤やアンダーフィル剤;SiC、GaN等のパワー半導体用の封止剤やアンダーフィル剤;発光ダイオード、フォトダイオード、フォトトランジスタ、レーザーダイオード等の光半導体用の封止剤や光反射材;電気・電子用の接着剤、ポッティング剤、保護剤、コーティング剤として好適である。また、本組成物は、ホットメルト性を有するので、トランスファー成型、コンプレッション成型、あるいはインジェクション成型用の材料としても好適である。特に、成型時にモールドアンダーフィル法やウェハモールディング法を用いる半導体用の封止剤として用いることが好適である。
【0125】
[硬化物の用途]
本発明の硬化物の用途は特に制限されるものではないが、本発明組成物がホットメルト性を有し、成形性、ギャップフィル特性に優れ、かつ、硬化物は上記の室温における柔軟性、高い応力緩和特性、曲げ伸び率等を有する。このため、本組成物を硬化してなる硬化物は、半導体装置用部材として好適に利用することができ、半導体素子やICチップ等の封止材、光半導体装置の光反射材、半導体装置の接着剤・結合部材として好適に用いることができる。
【0126】
本発明の硬化物からな部材を備えた半導体装置は特に制限されるものではないが、特に、パワー半導体装置、光半導体装置およびフレキシブル回路基盤に搭載された半導体装置であることが好ましい。
【実施例】
【0127】
本発明の硬化性粒状シリコーン組成物、およびその製造方法を実施例と比較例により詳細に説明する。なお、式中、Me、Ph、Viは、それぞれメチル基、フェニル基、ビニル基を表す。また、各実施例、比較例の硬化性シリコーン組成物について、軟化点、溶融粘度、成型性、成型物の反り、硬化物の曲げ伸び率、貯蔵弾性率を次のようにして測定し、表1および表2に示した。
【0128】
[ホットメルト性シリコーンの軟化点]
ホットメルト性シリコーンを25℃〜100℃に設定したホットプレート上に置き、スパチュラにて状態を確認しながら液状化した温度を軟化点とした。
【0129】
[硬化性粒状シリコーン組成物の軟化点]
硬化性粒状シリコーン組成物をφ14mm×22mmの円柱状のペレットに成型した。このペレットを25℃〜100℃に設定したホットプレート上に置き、100グラム重の荷重で上から10秒間押し続け、荷重を取り除いた後、該ペレットの変形量を測定した。高さ方向の変形量が1mm以上となった温度を軟化点とした。
【0130】
[溶融粘度]
ホットメルト性シリコーン及び硬化性粒状シリコーン組成物の100℃における溶融粘度を、レオメーターAR2000EX(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて、せん断速度5(1/s)で測定した。
【0131】
[成型性及び成型物の反り]
硬化性粒状シリコーン組成物を、トランスファー成形機を用いて銅製のリードフレームと一体成型し、縦35mm×横25mm×高さ1mmの成形物を作製した。成型条件は、実施例1〜7,9、および比較例1,2においては、金型温度を150℃、型締め時間を120秒とし、実施例8においては、金型温度を180℃、型締め時間を120秒とした。金型から成形物を取り出した後、25℃まで冷ましてから、クラックの有無やリードフレームからの剥離等の成型不良の有無を目視で確認した。
また、成型後のリードフレームの片側をテープで水平な机に固定し、もう片側の机からの浮き上がり距離を定規を用いて測定し、成型物の反り値とした。
【0132】
[硬化物の貯蔵弾性率]
硬化性粒状シリコーン組成物を150℃で2時間加熱して硬化物を作製した。この硬化物の−50℃から250℃までの貯蔵弾性率をレオメーターARES(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて測定し、25℃及び150℃における値を読み取った。
【0133】
[硬化物の曲げ伸び]
硬化性粒状シリコーン組成物を150℃で2時間加熱して硬化物を作製した。この硬化物の曲げ伸びを、JIS K 6911-1995「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に規定の方法により3点曲げ試験を行い、伸び率を読み取った。
【0134】
[参考例1]
1Lのフラスコに、25℃において白色固体状で、平均単位式:
(PhSiO3/2)0.80(MeViSiO1/2)0.20
で表される樹脂状オルガノポリシロキサンの55質量%−トルエン溶液 270.5g、式:
HMeSiO(PhSiO)SiMe
で表される、粘度5mPa・sの分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジフェニルシロキサン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.6質量%) 21.3g(前記樹脂状オルガノポリシロキサン中のビニル基1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が0.5モルとなる量)、および白金の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン溶液(白金金属の含有量=約4000ppm) 0.034g(本液状混合物に対して白金金属が質量単位で10ppmとなる量)を投入し、室温で均一に攪拌した。その後、オイルバスにてフラスコ内の温度を100℃まで上げて、トルエン還流下、2時間攪拌して、上記樹脂状オルガノポリシロキサンに由来する樹脂状オルガノシロキサンと上記ジフェニルシロキサンに由来する鎖状オルガノシロキサンからなり、上記反応に関与しなかったビニル基を有するオルガノシロキサン架橋物(1)のトルエン溶液を調製した。なお、このオルガノシロキサン架橋物(1)を、FT−IRにて分析したところ、ケイ素原子結合水素原子のピークは観測されなかった。また、このオルガノシロキサン架橋物(1)の軟化点は75℃であり、その100℃での溶融粘度は700Pa・sであった。
【0135】
[参考例2]
温度計、テフロン(登録商標)製撹拌羽、および水冷コンデンサに連結し、予めトルエンを充填したディーン・スターク装置を備えた500mLの4つ口丸底フラスコに、平均単位式:
(PhSiO3/2)
(式中、nは、本オルガノポリシロキサンの重量平均分子量が1500となる正数である。)
で表されるオルガノポリシロキサンの56.5質量%−トルエン溶液 318.6gを、窒素雰囲気下で投入した。トルエンの還流温度で30分間加熱し、0.54gの水を除去した。次に、108℃まで冷却し、予め、メチルトリアセトキシシラン/エチルトリアセトキシシランのモル比1:1の混合物 4.24g(0.0187モル)と分子鎖両末端シラノール基封鎖メチルフェニルポリシロキサン(重合度=181) 220g(1.614モル)とを室温で1時間反応させたメチルフェニルポリシロキサン混合物 224.24gを加えた。反応混合物を窒素雰囲気中、トルエン還流温度で2時間加熱して、さらに2.01gの水を除去した。その後、反応溶液を再度108℃まで冷却し、ビニルメチルジアセトキシシラン 11.91g(0.0633モル)を加え、トルエン還流温度でさらに1時間加熱し、1.05gの水を除去した。この反応混合物を90℃まで冷却して、脱イオン水 47.8gを加え、その後、共沸蒸留により水を除去した。この反応溶液を再度108℃まで冷却し、メチルトリアセトキシシラン/エチルトリアセトキシシランのモル比1:1の混合物 21.57g(0.0949モル)を加え、1時間還流させた後、反応混合物を90℃まで冷却して、脱イオン水 47.8gを加え、さらに、還流して共沸蒸留により水を除去した(こうした水を加えて除去する手順を2回繰り返した)。同じ水の処理を3回繰り返し、最後に、118℃で揮発分 103.6gを蒸留により除去し、この反応溶液の固形分を約70質量%に調整した。得られた生成物は、ビニル基を2モル%含有する樹脂状オルガノシロキサンブロックと直鎖状オルガノシロキサンブロックからなるオルガノシロキサンブロックコポリマーであることがわかった。また、このオルガノシロキサンブロックコポリマー(2)の軟化点は85℃であり、その100℃での溶融粘度は2800Pa・sであった。
【0136】
次に、このオルガノシロキサンブロックコポリマーの固形分濃度50質量%にした溶液 292gに、白金の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン溶液(白金金属の含有量=約4000ppm) 0.034g(本液状混合物に対して白金金属が質量単位で10ppmとなる量)を加え、室温(25℃)で均一に攪拌して、白金触媒を含有するオルガノシロキサンブロックコポリマー(2)のトルエン溶液を調製した。
【0137】
[参考例3]
1Lのフラスコに、25℃において白色固体状で、平均単位式:
(PhSiO3/2)0.80(MeViSiO1/2)0.20
で表される樹脂状オルガノポリシロキサンの55質量%−トルエン溶液 270.5g、および白金の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン溶液(白金金属の含有量=約4000ppm) 0.034gを投入し、室温(25℃)で均一に攪拌して、白金金属として質量単位で10ppm含有する樹脂状オルガノポリシロキサン(3)のトルエン溶液を調製した。また、この樹脂状オルガノポリシロキサン(3)の軟化点は100℃であり、その100℃での溶融粘度は100Pa・sであった。
【0138】
[参考例4]
参考例1で調製したオルガノシロキサン架橋物(1)のトルエン溶液を40℃のスプレードライによりトルエンを除去しながら微粒子化して、真球状のホットメルト性シリコーン微粒子(1)を調製した。この微粒子を光学顕微鏡で観測したところ、粒子径が5〜10μmであり、平均粒子径は7.5μmであった。
【0139】
[参考例5]
参考例1で調製したオルガノシロキサン架橋物(1)のトルエン溶液を150℃に加熱した二軸混練機に投入し、トルエンを除去し、得られたオルガノシロキサン架橋物(1)を冷やしながらボールミルにより粉砕して、不定形状のホットメルト性シリコーン微粒子(2)を調製した。この微粒子を光学顕微鏡で観測したところ、粒子径が1000〜3000μmであり、平均粒子径は1500μmであった。
【0140】
[参考例6]
参考例2で調製したオルガノシロキサンブロックコポリマー(2)のトルエン溶液を40℃のスプレードライによりトルエンを除去しながら粒子化し、真球状のホットメルト性シリコーン微粒子(3)を調製した。この微粒子を光学顕微鏡で観測したところ、粒子径が5〜10μmであり、平均粒子径は6.5μmであった。
【0141】
[参考例7]
参考例3で調製した樹脂状オルガノポリシロキサン(3)のトルエン溶液を40℃のスプレードライによりトルエンを除去しながら粒子化し、真球状のホットメルト性シリコーン微粒子(4)を調製した。この微粒子を光学顕微鏡で観測したところ、粒子径が5〜10μmであり、平均粒子径は7.9μmであった。
【0142】
[実施例1]
ホットメルト性シリコーン微粒子(1) 89.3g、式:
HMeSiO(PhSiO)SiMe
で表される、粘度5mPa・sの分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジフェニルシロキサン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.6質量%) 10.7g、{シリコーン微粒子(1)中のビニル基1モルに対して、上記ジフェニルシロキサン中のケイ素原子結合水素原子が1.0モルとなる量}、1−エチニル−1−シクロヘキサノール(本組成物に対して質量単位で300ppmとなる量)、平均粒子径0.5μmの溶融シリカ(新日鉄マテリアルズ マイクロン社製のSP507−05)290.2g、および平均粒子径0.04μmのフュームドシリカ(日本アエロジル社のAEROSIL50)13.4gを小型粉砕機に一括投入し、室温(25℃)で1分間攪拌を行い、均一な白色の硬化性粒状シリコーン組成物を調製した。次に、この組成物を打錠機により、打錠して、直径14mm、高さ22mmの円柱状のペレットを作製した。
【0143】
[実施例2]
ホットメルト性シリコーン微粒子(1) 74.1g、式:
HMeSiO(PhSiO)SiMe
で表される、粘度5mPa・sの分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジフェニルシロキサン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.6質量%) 11.1g、粘度1,000mPa・sであり、
平均式 MeViSiO(MePhSiO)17.5SiMeVi
で表される分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン(ビニル基の含有量=2.1質量%) 14.8g
{シリコーン微粒子(1)と分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン中のビニル基1モルに対して、上記ジフェニルシロキサン中のケイ素原子結合水素原子が1.0モルとなる量}、1−エチニル−1−シクロヘキサノール(本組成物に対して質量単位で300ppmとなる量)、平均粒子径0.5μmの溶融シリカ(新日鉄マテリアルズ マイクロン社製のSP507−05)288.9g、および平均粒子径0.04μmのフュームドシリカ(日本アエロジル社のAEROSIL50)14.8gを小型粉砕機に一括投入し、室温(25℃)で1分間攪拌を行い、均一な白色の硬化性粒状シリコーン組成物を調製した。次に、この組成物を打錠機により、打錠して、直径14mm、高さ22mmの円柱状のペレットを作製した。
【0144】
[実施例3]
ホットメルト性シリコーン微粒子(1) 70.2g、式:
HMeSiO(PhSiO)SiMe
で表される、粘度5mPa・sの分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジフェニルシロキサン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.6質量%) 11.2g、粘度1,000mPa・sであり、
平均式 MeViSiO(MePhSiO)17.5SiMeVi
で表される分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン(ビニル基の含有量=2.1質量%) 18.6g
{シリコーン微粒子(1)と分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン中のビニル基1モルに対して、上記ジフェニルシロキサン中のケイ素原子結合水素原子が1.0モルとなる量}、および平均粒子径0.1μmの溶融シリカ(龍森社製のEMIX−100)126.3g、および平均粒子径0.04μmのフュームドシリカ(日本アエロジル社のAEROSIL50)26.0gを小型粉砕機に一括投入し、室温(25℃)で1分間攪拌を行い、均一な白色の硬化性粒状シリコーン組成物を調製した。次に、この組成物を打錠機により、打錠して、直径14mm、高さ22mmの円柱状のペレットを作製した。
【0145】
[実施例4]
ホットメルト性シリコーン微粒子(3) 90.9g、式:
HMeSiO(PhSiO)SiMe
で表される、粘度5mPa・sの分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジフェニルシロキサン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.6質量%) 4.5g、平均単位式:
(PhSiO3/2)0.4(HMeSiO1/2)0.6
で表される、一分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する、粘度25mPa・sの分岐鎖状オルガノポリシロキサン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.65質量%) 4.5g
{シリコーン微粒子(3)中のビニル基1モルに対して、上記ジフェニルシロキサンと上記オルガノポリシロキサン中のケイ素原子結合水素原子が1.0モルとなる量}、および平均粒子径0.5μmの溶融シリカ(新日鉄マテリアルズ マイクロン社製のSP507−05)290.9g、および平均粒子径0.04μmのフュームドシリカ(日本アエロジル社のAEROSIL50)9.1gを小型粉砕機に一括投入し、室温(25℃)で1分間攪拌を行い、均一な白色の硬化性粒状シリコーン組成物を調製した。次に、この組成物を打錠機により、打錠して、直径14mm、高さ22mmの円柱状のペレットを作製した。
【0146】
[実施例5]
ホットメルト性シリコーン微粒子(4) 78.1g、式:
HMeSiO(PhSiO)SiMe
で表される、粘度5mPa・sの分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジフェニルシロキサン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.6質量%) 21.9g、平均単位式:
{シリコーン微粒子(4)中のビニル基1モルに対して、上記ジフェニルシロキサン中のケイ素原子結合水素原子が1.0モルとなる量}、および平均粒子径0.5μmの溶融シリカ(新日鉄マテリアルズ マイクロン社製のSP507−05)285.2g、および平均粒子径0.04μmのフュームドシリカ(日本アエロジル社のAEROSIL50)19.5gを小型粉砕機に一括投入し、室温(25℃)で1分間攪拌を行い、均一な白色の硬化性粒状シリコーン組成物を調製した。次に、この組成物を打錠機により、打錠して、直径14mm、高さ22mmの円柱状のペレットを作製した。
【0147】
[実施例6]
ホットメルト性シリコーン微粒子(1) 74.1g、式:
HMeSiO(PhSiO)SiMe
で表される、粘度5mPa・sの分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジフェニルシロキサン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.6質量%) 11.1g、粘度1,000mPa・sであり、
平均式 MeViSiO(MePhSiO)17.5SiMeVi
で表される分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン(ビニル基の含有量=2.1質量%) 14.8g
{シリコーン微粒子(1)と分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン中のビニル基1モルに対して、上記ジフェニルシロキサン中のケイ素原子結合水素原子が1.0モルとなる量}、1−エチニル−1−シクロヘキサノール(本組成物に対して質量単位で300ppmとなる量)、平均粒子径0.5μmの酸化チタン(堺化学工業製のSX−3103)132.2g、および平均粒子径0.04μmのフュームドシリカ(日本アエロジル社のAEROSIL50)23.3gを小型粉砕機に一括投入し、室温(25℃)で1分間攪拌を行い、均一な白色の硬化性粒状シリコーン組成物を調製した。次に、この組成物を打錠機により、打錠して、直径14mm、高さ22mmの円柱状のペレットを作製した。
【0148】
[実施例7]
ホットメルト性シリコーン微粒子(3) 90.9g、式:
HMeSiO(PhSiO)SiMe
で表される、粘度5mPa・sの分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジフェニルシロキサン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.6質量%) 4.5g、平均単位式:
(PhSiO3/2)0.4(HMeSiO1/2)0.6
で表される、一分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する、粘度25mPa・sの分岐鎖状オルガノポリシロキサン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.65質量%) 4.5g
{シリコーン微粒子(3)中のビニル基1モルに対して、上記ジフェニルシロキサンと上記オルガノポリシロキサン中のケイ素原子結合水素原子が1.0モルとなる量}、および平均一次粒子径0.44μmのアルミナ(住友化学製のAES−12)286.4g、および平均粒子径0.04μmのフュームドシリカ(日本アエロジル社のAEROSIL50)13.6gを小型粉砕機に一括投入し、室温(25℃)で1分間攪拌を行い、均一な白色の硬化性粒状シリコーン組成物を調製した。次に、この組成物を打錠機により、打錠して、直径14mm、高さ22mmの円柱状のペレットを作製した。
【0149】
[実施例8]
ホットメルト性シリコーン微粒子(1) 66.7g、
平均式 MeViSiO(MePhSiO)17.5SiMeVi
で表される分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン(ビニル基の含有量=2.1質量%) 33.3g、
2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン(半減期が10時間である温度が118℃である。) 1.7g、および平均粒子径0.1μmの溶融シリカ(龍森社製のEMIX−100) 124.7gおよび平均粒子径0.04μmのフュームドシリカ(日本アエロジル社のAEROSIL50)20.0gを小型粉砕機に一括投入し、室温(25℃)で1分間攪拌を行い、白色で均一な硬化性粒状シリコーン組成物を調製した。次に、この組成物を打錠機により打錠して、直径14mm、高さ22mmの円柱状のペレットを作製した。
【0150】
[実施例9]
ホットメルト性シリコーン微粒子(2) 89.3g、式:
HMeSiO(PhSiO)SiMe
で表される、粘度5mPa・sの分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジフェニルシロキサン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.6質量%) 10.7g、{シリコーン微粒子(2)中のビニル基1モルに対して、上記ジフェニルシロキサン中のケイ素原子結合水素原子が1.0モルとなる量}、1−エチニル−1−シクロヘキサノール(本組成物に対して質量単位で300ppmとなる量)、平均粒子径0.5μmの溶融シリカ(新日鉄マテリアルズ マイクロン社製のSP507−05)290.2g、および平均粒子径0.04μmのフュームドシリカ(日本アエロジル社のAEROSIL50)13.4gを小型粉砕機に一括投入し、室温(25℃)で1分間攪拌を行い、均一な白色の硬化性粒状シリコーン組成物を調製した。次に、この組成物を打錠機により、打錠して、直径14mm、高さ22mmの円柱状のペレットを作製した。
【0151】
[比較例1]
ホットメルト性シリコーン微粒子(1) 89.3g、式:
HMeSiO(PhSiO)SiMe
で表される、粘度5mPa・sの分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジフェニルシロキサン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.6質量%) 5.4g、平均単位式:
(PhSiO3/2)0.4(HMeSiO1/2)0.6
で表される、一分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する、粘度25mPa・sの分岐鎖状オルガノポリシロキサン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.65質量%) 5.4g{シリコーン微粒子(1)中のビニル基1モルに対して、上記ジフェニルシロキサンと上記オルガノポリシロキサン中のケイ素原子結合水素原子が1.0モルとなる量}、1−エチニル−1−シクロヘキサノール(本組成物に対して質量単位で300ppmとなる量)、および平均粒子径15μmの球状シリカ(新日鉄マテリアルズ マイクロン社製のHS−202) 401.8gを小型粉砕機に一括投入し、室温(25℃)で1分間攪拌を行い、均一な白色の硬化性粒状シリコーン組成物を調製した。次に、この組成物を打錠機により、打錠して、直径14mm、高さ22mmの円柱状のペレットを作製した。
【0152】
[比較例2]
平均単位式:
(MeViSiO2/2)0.25(PhSiO2/2)0.30(PhSiO3/2)0.45(HO1/2)0.02
で表されるメチルビニルフェニルポリシロキサン 68.2g、平均式:
ViMeSiO(MePhSiO)17.5SiViMe
で表されるジメチルビニルシロキシ末端ポリメチルフェニルシロキサン 9.1g、式:
(HMeSiO)SiPh
で表される1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジフェニルトリシロキサン 22.7g(上記のメチルビニルフェニルポリシロキサンおよびジメチルビニルシロキシ末端ポリメチルフェニルシロキサンのビニル基の合計1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が1.15モルとなる量)、白金の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン溶液(本組成物に対して白金金属が質量単位で5.0ppmとなる量)、1−エチニル−1−シクロヘキサノール(本組成物に対して質量単位で300ppmとなる量)、平均粒子径15μmの球状シリカ(新日鉄マテリアルズ マイクロン社製のHS−202) 300.0g を混合して、25℃での粘度が620Pa・sであるペースト状の硬化性シリコーン組成物を調製した。
【0153】
この組成物を120℃で10分間加熱したところ、25℃で粘度が測定不能な固体であり、100℃以上に加熱すると流動化するホットメルト性を有していた。この組成物を100℃以上で流動化させた後、150℃にて10分間加熱したところ、ホットメルト性は失われた。この組成物を直径14mmのテフロン(登録商標)製のチューブに注入し、120℃で10分加熱することで高さ22mmの円柱状のペレットを作成した。
【0154】
[比較例3]
式:
−(MeViSiO2/2)
で表される直鎖状メチルビニルシロキサンブロックを有し、分子鎖両末端が水酸基で封鎖されたメチルビニルポリシロキサン 24.2g、式:
MeViSiO(MeSiO)46SiMeVi
で表される分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン 22.5g、平均粒子径15μmの球状シリカ(新日鉄マテリアルズ マイクロン社製のHS−202) 400g、n−オクチルトリエトキシシラン 11.0g、および粘度125mPa・sである、式:
MeSiO(MeSiO)110Si(OMe)
で表される分子鎖片末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、他の分子鎖片末端がトリメトキシシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン 11.0gをロスミキサーに投入し、室温で混合した後、減圧下、150℃に加熱しながら混練して、シリコーンベースを調製した。
【0155】
次に、室温下、このシリコーンベースに、式:
−(MeHSiO2/2)50
で表される直鎖状メチルハイドロジェンシロキサンブロックを有し、分子鎖両末端がトリメチルシロシキ基で封鎖されたメチルハイドロジェンポリシロキサン 22.5g(シリコーンベース中のメチルビニルポリシロキサンと分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン中のビニル基の合計1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が1.5モルとなる量)、粘度20mPa・sの分子鎖両末端水酸基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合オリゴマーと3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランとの質量比1:2の縮合反応物 5.5g、および1−エチニル−1−シクロヘキサノール(本組成物に対して、質量単位で200ppmとなる量)を混合した後、白金の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンの1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン溶液(本組成物に対して、白金原子が質量単位で3ppmとなる量)を混合して、25℃での粘度が340Pa・sであるペースト状の硬化性シリコーン組成物を調製した。
【0156】
[比較例4]
平均単位式:
(MeViSiO2/2)0.15(MeSiO2/2)0.15(PhSiO2/2)0.30(PhSiO3/2)0.40(HO1/2)0.04
で表されるメチルビニルフェニルポリシロキサン 55.2g、式:
(MeViSiO)
で表される1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン 13.8g、式:
(HMeSiO)SiPh
で表される1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジフェニルトリシロキサン 30.9g
(上記のメチルビニルフェニルポリシロキサンおよび1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン中のビニル基の合計1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が0.9モルとなる量)、白金の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンの1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン溶液(本組成物に対して白金金属が質量単位で3.5ppmとなる量)、1−エチニル−1−シクロヘキサノール(本組成物に対して質量単位で200ppmとなる量)、および平均粒子径15μmの球状シリカ(新日鉄マテリアルズ マイクロン社製のHS−202) 400.0gを混合して、粘度が104Pa・sであるペースト状の硬化性シリコーン組成物を調製した。
【0157】
【表1】


【0158】
【表2】