(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の光学系と、第1の光学フィルタ及び第2の光学フィルタから構成される光学フィルタであって、第1の波長帯域の光を透過させる前記第1の光学フィルタ及び前記第1の波長帯域と異なる第2の波長帯域の光を透過させる前記第2の光学フィルタから構成される前記光学フィルタと、第2の光学系と、が被写体側から順に配列された撮像光学系と、
2次元状に配列された光電変換素子により構成された複数の画素を有する指向性センサであって、前記光学フィルタを介して入射する光束をそれぞれ瞳分割して選択的に受光する指向性センサと、
前記指向性センサから、前記第1の光学フィルタを介して受光した第1の画像と、前記第2の光学フィルタを介して受光した第2の画像と、をそれぞれ取得する画像取得部と、
を有する撮像装置であって、
前記第1の光学フィルタ及び前記第2の光学フィルタは前記撮像光学系の入射瞳の位置において前記撮像光学系の光軸に垂直な面内の異なる領域にそれぞれ配置され、
前記第1の光学系は、前記指向性センサの撮像面において像高が高い位置に結像される高像高光束を、前記高像高光束の上光線と下光線とが平行な状態で前記第1の光学フィルタ及び前記第2の光学フィルタに入射させる撮像装置。
前記第1の光学系は、前記高像高光束と前記撮像面の中心に結像される中心光束とを、前記高像高光束の前記上光線と前記高像高光束の前記下光線との成す角度が第1のしきい値以下であり、かつ前記高像高光束の前記下光線と前記中心光束の下光線との成す角度が第2のしきい値以下の状態で前記第2の光学フィルタに入射させる請求項2に記載の撮像装置。
前記第1の光学系は、前記高像高光束と前記撮像面の中心に結像される中心光束とを、前記高像高光束の前記上光線と前記中心光束の上光線との成す角度が第3のしきい値以下であり、かつ前記高像高光束の前記下光線と前記中心光束の下光線との成す角度が第4のしきい値以下の状態で前記第1の光学フィルタに入射させる請求項2または3に記載の撮像装置。
前記第1の光学フィルタ及び前記第2の光学フィルタは、650nm以上740nm以下の波長帯域における互いに重複しない波長帯域の光を前記第1の波長帯域の光及び前記第2の波長帯域の光としてそれぞれ透過させる請求項1から7のいずれか1項に記載の撮像装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上述した特許文献1では、光学フィルタを湾曲させるので加工に手間が掛かる。特に、複数の波長で画像を取得する場合にこの問題が顕著となる。具体的には、特許文献1の技術ではそれぞれの波長に対応して湾曲度合いの異なる複数の光学フィルタを設けなければならず、加工に手間が掛かる上に光学系の構成が複雑になってしまう。
【0005】
このように、従来の技術では複数の波長(特に、複数の狭帯域波長)で画像を取得し、取得した画像に基づいて被写体の計測を行うことが困難であった。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、透過波長シフトが少ない画像を複数の波長で取得できる撮像装置、及び複数の波長で取得した透過波長シフトが少ない画像に基づいて被写体の計測を精度良く行うことができる画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するため、本発明の第1の態様に係る撮像装置は、第1の光学系と、第1の光学フィルタ及び第2の光学フィルタから構成される光学フィルタであって、第1の波長帯域の光を透過させる第1の光学フィルタ及び第1の波長帯域と異なる第2の波長帯域の光を透過させる第2の光学フィルタから構成される光学フィルタと、第2の光学系と、が被写体側から順に配列された撮像光学系と、2次元状に配列された光電変換素子により構成された複数の画素を有する指向性センサであって、光学フィルタを介して入射する光束をそれぞれ瞳分割して選択的に受光する指向性センサと、指向性センサから、第1の光学フィルタを介して受光した第1の画像と、第2の光学フィルタを介して受光した第2の画像と、をそれぞれ取得する画像取得部と、を有する撮像装置であって、第1の光学フィルタ及び第2の光学フィルタは撮像光学系の入射瞳の位置において撮像光学系の光軸に垂直な面内の異なる領域にそれぞれ配置され、第1の光学系は、指向性センサの撮像面において像高が高い位置に結像される高像高光束を、高像高光束の上光線と下光線とが平行な状態で第1の光学フィルタ及び第2の光学フィルタに入射させる。
【0008】
像高が高い位置に結像される高像高光束は光軸に対し大きな角度で入射するので透過波長シフトが大きくなる。しかしながら第1の態様に係る撮像装置では、第1の光学系が、高像高光束を上光線と下光線とが平行な状態で第1の光学フィルタ及び第2の光学フィルタに入射させる。したがって第1,第2の光学フィルタにおいて高像高光束の入射角度差による透過波長シフトが抑制され、透過波長シフトが少ない画像を複数の波長で取得することができる。また第1の態様では、透過波長帯域が異なる光学フィルタの透過光を指向性センサにより瞳分割して受光するので、波長が異なる複数の画像を同時に取得することができる。
【0009】
なお第1の態様において、上光線と下光線とが「平行」とは完全な平行に限らず、透過波長のシフトの影響が許容できる範囲で角度差があってもよい。また「像高が高い位置」は例えば像高が7割の位置とすることができるが、他の像高(8割、10割等)で規定してもよい。
【0010】
第2の態様に係る撮像装置は第1の態様において、第1の光学フィルタが光軸を中心とする第1の領域に配置され、第2の光学フィルタが第1の領域の外側の第2の領域に配置され、第1の光学系は、高像高光束を、高像高光束の上光線と下光線とが平行な状態で第2の光学フィルタに入射させる。第1の光学フィルタが光軸を中心とする領域に配置され、第2の光学フィルタが第1の光学フィルタの外側の領域に配置される場合、第2の光学フィルタに入射する高像高光束の上光線と下光線との入射角度差による影響(透過波長シフトの量及び差)が大きくなる。したがって第2の態様のように、第1の光学系が、高像高光束を、高像高光束の上光線と下光線とが平行な状態で第2の光学フィルタに入射させることが波長シフトを抑制するために効果的である。
【0011】
第3の態様に係る撮像装置は第2の態様において、第1の光学系は、高像高光束と撮像面の中心に結像される中心光束とを、高像高光束の上光線と中心光束の上光線との成す角度が第1のしきい値以下であり、かつ高像高光束の下光線と中心光束の下光線との成す角度が第2のしきい値以下の状態で第2の光学フィルタに入射させる。第2の態様について上述したように、第2の光学フィルタに入射する高像高光束の上光線と下光線との入射角度差による影響(透過波長シフトの量及び差)が大きくなる。このため第3の態様では、第2の光学フィルタに入射する光束どうしの成す角度を規定することにより、入射角度差による影響を抑制している。なお、第1,第2のしきい値は許容される透過波長シフトに応じて設定することができる。
【0012】
第4の態様に係る撮像装置は第2または第3の態様において、第1の光学系は、高像高光束と撮像面の中心に結像される中心光束とを、高像高光束の上光線と中心光束の上光線との成す角度が第3のしきい値以下であり、かつ高像高光束の下光線と中心光束の下光線との成す角度が第4のしきい値以下の状態で第1の光学フィルタに入射させる。第4の態様によれば、第1の光学フィルタに入射する光束どうしの成す角度を規定することにより、入射角度差による影響を抑制することができる。なお、第3,第4のしきい値は許容される透過波長シフトに応じて設定することができる。
【0013】
第5の態様に係る撮像装置は第1から第4の態様のいずれか1つにおいて、第1の光学系はアフォーカル光学系を構成する。アフォーカル光学系とは、平行光束がレンズに入射し同じく平行光束が射出する非焦点光学系である。第5の態様では光学フィルタよりも被写体側に配置される第1の光学系がアフォーカル光学系なので、第1の光学系から平行光束が射出し、高像高光束の上光線と下光線とが光学フィルタに対し平行に入射して、透過波長シフトの差が少なくなる。なお第5の態様において、第1の光学系の構成が、透過角度及びこれに起因する透過波長シフトの影響が許容できる範囲でアフォーカル光学系と異なっていてもよい。
【0014】
第6の態様に係る撮像装置は第5の態様において、アフォーカル光学系のアフォーカル倍率は1未満である。アフォーカル倍率とは、アフォーカル光学系に入射する平行光束と出射する平行光束とを瞳径の比率で表した数値である。第6の態様ではアフォーカル倍率が1未満なので、出射する光束の径は入射する光束の径より大きくなる。
【0015】
第7の態様に係る撮像装置は第1から第6の態様のいずれか1つにおいて、指向性センサは、瞳分割部として機能する遮光マスクまたはマイクロレンズアレイを有する。第7の態様は、選択的受光のための具体的構成の一態様を示すものである。
【0016】
第8の態様に係る撮像装置は第1から第7の態様のいずれか1つにおいて、第1の光学フィルタ及び第2の光学フィルタは、650nm以上740nm以下の波長帯域における互いに重複しない波長帯域の光を第1の波長帯域の光及び第2の波長帯域の光としてそれぞれ透過させる。第8の態様によれば、可視域赤色の波長帯域における2波長で画像を取得することができる。
【0017】
上述した目的を達成するため、本発明の第9の態様に係る画像処理装置は第1から第
8の態様のいずれか1つに係る撮像装置と、第1の画像及び第2の画像から被写体の計測を行う計測部と、を備える。第
9の態様によれば、第1から第
8の態様のいずれか1つに係る撮像装置で取得した第1,第2の画像を用いるので、
複数の波長で取得した透過波長シフトが少ない画像に基づいて被写体の計測を精度良く行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明の撮像装置によれば透過波長シフトが少ない画像を複数の波長で取得することができ、本発明の画像処理装置によれば複数の波長で取得した透過波長シフトが少ない画像に基づいて被写体の計測を精度良く行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明に係る撮像装置及び画像処理装置の実施形態について、詳細に説明する。
【0021】
<第1の実施形態>
<画像処理装置の全体構成>
図1は第1の実施形態に係る画像処理装置10(画像処理装置)の構成を示す図である。
図1に示すように、画像処理装置10は撮像装置20(撮像装置)と解析装置30(計測部)とを備え、撮像装置20で取得した画像を解析装置30に入力して、解析装置30で被写体の計測を行う。撮像装置20と解析装置30とを1つの筐体に収納してもよいし、別の筐体に収納してもよい。
【0022】
<撮像装置の構成>
撮像装置20は撮像光学系50(撮像光学系)、受光ユニット22(指向性センサ)、画像取得部24(画像取得部)、及び画像記録部26を備え、波長が異なる光を受光して複数の画像を撮像する機能を有する。なお、
図1では撮像光学系50の構成(レンズ枚数、形状、配置等)を簡略化して記載している。詳細な構成は以下で説明する。
【0023】
<撮像光学系の構成>
撮像光学系50は、第1の光学系51、光学フィルタ53、及び第2の光学系52が、被写体側から順に共通の光軸AX1を中心として配置されており、光学フィルタ53(光学フィルタ)により、光が透過する領域ごとに異なる透過波長特性を持つ。
図2は撮像光学系50のレンズ配置を示す図である。第1の光学系51はレンズL1,L2から構成されるアフォーカル光学系である。第2の光学系52はレンズL3〜L8から構成され、第1の光学系51及び光学フィルタ53を透過した光束を受光ユニット22の撮像面22Aに結像させる。光学フィルタ53は撮像光学系50の入射瞳の位置において、平板54の前面(被写体側)に配置される。
【0024】
<第1の光学系の構成>
第1の実施形態に係る撮像装置20では、撮像光学系50の入射瞳の位置に光学フィルタ53が配置され、第1の光学系51を透過した光が光学フィルタ53に入射する。光学フィルタ53での透過波長シフトを抑制するためには、撮影倍率無限倍で考えた場合、まず絞り空間、すなわち光学フィルタ53が配置される入射瞳の位置での軸上光束が光軸とできるだけ平行になっていることが望ましい。したがって第1の光学系51はアフォーカル光学系を形成することが望ましい(アフォーカル光学系に対する忠実度は、光軸と光線の角度の許容範囲で考えればよい)。さらに、軸外光束もできるだけ光軸と平行であることが望ましい。
【0025】
つまり、軸外光束は撮像光学系50の絞り空間(入射瞳の位置)において入射角度よりかなり緩い角度であることが望まれるので、アフォーカル光学系の成立を前提とすればアフォーカル倍率Υ<1である必要がある。Υはアフォーカル光学系においての入射光束の太さを射出光束の太さで割ったもので、同時に角倍率、アフォーカル軸外光の入射時と射出時の角度の差でもある。
図6等に示すように、第1の実施形態に係る撮像装置20では軸上光束が絞り空間(瞳位置)において太くなっている(すなわち、アフォーカル倍率が1未満)。なお、撮像光学系50の全系の焦点距離は、このアフォーカル倍率と絞り以降(入射瞳位置より撮像素子側)の光学系の焦点距離を掛けたものになる。
【0026】
したがって、撮像光学系50の絞り空間(入射瞳の位置)に光学フィルタを配置する場合、撮影画角を広くしようとすると、アフォーカル倍率(角倍率)が1未満のアフォーカル系(あるいは、透過角度及び/または透過波長シフトが許容される範囲内でアフォーカル系的に挙動する光学系)を絞り(入射瞳)より前の光学系で構成することが必要である。
図3は撮像光学系50のレンズデータを示す図であり、矩形で囲んだ箇所が光学フィルタ53が配置された面を示す。第1の光学系51のアフォーカル倍率(角倍率)は0.668である。
【0027】
<光学フィルタの構成>
光学フィルタ53は第1の光学フィルタ53A(第1の光学フィルタ)及び第2の光学フィルタ53B(第2の光学フィルタ)により構成され、撮像光学系50の瞳位置において、光軸AX1と垂直な面内の異なる領域(平板54の前面)にそれぞれ配置される(
図2参照)。
図4に示すように、第1の光学フィルタ53Aは光軸AX1を中心とする円形の領域(第1の領域)に配置され、第2の光学フィルタ53Bは第1の領域の周辺(外側)の環状の領域(第2の領域)に配置される。第1の光学フィルタ53A及び第2の光学フィルタ53Bは、誘電多層膜により形成することができる。
【0028】
このような光学フィルタ53により、撮像光学系50を通過した被写体光のうち、第1の光学フィルタ53A(第1の瞳領域)を通過した光は第1の波長帯域、第2の光学フィルタ53B(第2の瞳領域)を通過した光は第2の波長帯域を有する光となる。第1の光学フィルタ53A及び第2の光学フィルタ53Bの透過波長の具体的な値については、後述する実施例により説明する。
【0029】
<受光ユニットの構成>
撮像光学系50を通過した被写体光は、受光ユニット22に入射する。受光ユニット22は2次元状に配列された光電変換素子により構成された複数の画素を有し、第1の光学フィルタ53A及び第2の光学フィルタ53Bを介して入射する光束をそれぞれ瞳分割して選択的に受光する。また、マイクロレンズ152が1つの受光素子に対して1つ配設されている。マイクロレンズ152は光軸AX1に垂直な面内において規則的に配置され、それぞれのマイクロレンズ152には受光素子162が配置されている。受光素子162は、MOS(Metal Oxide Semiconductor)またはCMOS型撮像素子が用いられる。受光素子162としては、この他に、CCD型撮像素子(CCD:Charge Coupled Device)などの固体撮像素子を用いてもよい。
【0030】
図5は、光軸AX1を含む面における受光ユニット22の断面図である。
図5において、光線122A及び光線122Bは、それぞれ第1の光学フィルタ53A,第2の光学フィルタ53Bを通過した光線を模式的に示す。受光素子162の受光面には光学フィルタの配置に対応して遮光マスク162A(瞳分割部)または遮光マスク162B(瞳分割部)が配置されている。第1の光学フィルタ53A(円形)に対応した円環状の遮光マスク162Aは光線122Bを遮光し、第2の光学フィルタ53B(円環状)に対応した円形の遮光マスク162Bは光線122Aを遮光する。これにより受光素子162は光線122Aと光線122Bとを分離して受光する。受光ユニット22は、それぞれ分離して受光した光による信号を、画像信号として画像取得部24に供給する。
【0031】
<画像取得部及び画像記録部の構成>
画像取得部24は、第1の光学フィルタ53Aを介して受光した画像i1(第1の画像)と第2の光学フィルタ53Bを介して受光した画像i2(第2の画像)とをそれぞれ取得する。すなわち画像取得部24は、画像信号から、それぞれ波長の異なる2つの画像を取得する。画像記録部26は、画像取得部24が取得した画像i1,i2を記録する。画像記録部26は不揮発性メモリに画像を記録してもよい。不揮発性メモリは画像記録部26が有してもよい。また、不揮発性メモリは、撮像装置20に対して着脱可能に設けられた外部メモリであってもよい。画像記録部26は、撮像装置20の外部(例えば解析装置30)に画像を出力することができる。
【0032】
<解析装置の構成>
解析装置30は処理部100(計測部)、記憶部200、表示部300、及び操作部400を備え、互いに接続されて必要な情報が送受信される。これらの構成要素については各種の配置形態を採用することができ、各構成要素が1箇所(1筐体内、1室内等)に配置されていてもよいし、離れた場所に配置されネットワークを介して接続されていてもよい。
【0033】
<処理部の構成>
処理部100は画像入力部110及び計測部120(計測部)を備える。画像入力部110は図示せぬ記録媒体インタフェース、その制御回路、及び撮像装置20との通信(無線、有線)を制御する通信制御部等により構成され、撮像装置20で取得した画像を入力する。計測部120は、画像入力部110が入力した画像に基づいて被写体の計測を行う(後述)。
【0034】
上述した制御回路、通信制御部、及び計測部120の機能は、各種のプロセッサ(processor)を用いて実現できる。各種のプロセッサには、例えばソフトウェア(プログラム)を実行して各種の機能を実現する汎用的なプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)が含まれる。また、上述した各種のプロセッサには、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)も含まれる。さらに、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路なども上述した各種のプロセッサに含まれる。
【0035】
各部の機能は1つのプロセッサにより実現されてもよいし、複数のプロセッサを組み合わせて実現されてもよい。また、複数の機能を1つのプロセッサで実現してもよい。複数の機能を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアント、サーバなどのコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組合せで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の機能として実現する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)などに代表されるように、システム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の機能は、ハードウェア的な構造として、上述した各種のプロセッサを1つ以上用いて構成される。さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)である。
【0036】
上述したプロセッサあるいは電気回路がソフトウェア(プログラム)を実行する際は、実行するソフトウェアのプロセッサ(コンピュータ)読み取り可能なコードをROM(Read Only Memory)等の非一時的記録媒体に記憶しておき、プロセッサがそのソフトウェアを参照する。非一時的記録媒体に記憶しておくソフトウェアは、画像の入力及び被写体の計測を実行するためのプログラムを含む。ROMではなく各種光磁気記録装置、半導体メモリ等の非一時的記録媒体にコードを記録してもよい。ソフトウェアを用いた処理の際には例えばRAM(Random Access Memory)が一時的記憶領域として用いられ、また例えば不図示のEEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)に記憶されたデータを参照することもできる。
【0037】
<記憶部の構成>
記憶部200は光磁気ディスク、半導体メモリ等の非一時的記録媒体及びその制御部により構成され、入力した画像、計測結果等が関連付けて記憶される。
【0038】
<表示部及び操作部の構成>
表示部300はモニタ310(表示装置)を備えており、入力した画像、記憶部200に記憶された画像及び情報、処理部100による処理の結果等を表示することができる。操作部400は入力デバイス及び/またはポインティングデバイスとしてのキーボード410及びマウス420を含んでおり、ユーザはこれらのデバイス及びモニタ310の画面を介して、被写体の計測に必要な操作を行うことができる。
【0039】
<透過波長シフトの例(ケース1)>
上述した構成の撮像装置20における透過波長シフトの実施例について、比較例を参照しつつ説明する。
【0040】
<実施例の構成>
本実施例において、第1の光学フィルタ53A、及び第2の光学フィルタ53Bは可視域赤色の波長帯域における重複しない2波長の光をそれぞれ透過させる。具体的には、650nm以上740nm以下の波長帯域における互いに重複しない波長帯域をそれぞれ第1の波長帯域(垂直入射時の第1の光学フィルタ53Aの透過波長:670nm)、第2の波長帯域(垂直入射時の第2の光学フィルタ53Bの透過波長:710nm)としている。
図6は光学フィルタ53に対する光線の入射の様子を示す図である。
図6の(a)部分は第1の光学フィルタ53Aに対する高像高光束(像高7割)、中心光束の入射を示し、(b)部分は第2の光学フィルタ53Bに対する高像高光束(像高7割)、中心光束の入射を示す。
図6では、光学フィルタ53の配置を明示するため、厚みを強調して記載している。
【0041】
なお、実施例における平板54(基板)の屈折率は1.5であり、第1の光学フィルタ53A,第2の光学フィルタ53Bの実効的屈折率はそれぞれ1.83,2.04である。
【0042】
<比較例の構成>
比較例において、撮像光学系60はダブルガウス型の光学系であり、
図7に示すように第1の光学系61及び第2の光学系62により構成される。光学フィルタ63は撮像光学系60の入射瞳の位置に配置され、光軸AX2を中心とした円形の領域に配置された第1の光学フィルタ63Aと、その外側に配置された第2の光学フィルタ63Bとにより構成される。また、実施例と同様に、撮像光学系60に対応する撮像素子(不図示)の各受光素子には第1の光学フィルタ63A,第2の光学フィルタ63Bの配置に対応して異なる形状の遮光マスク(不図示)が設けられる。
【0043】
比較例においても、実施例と同様に第1の光学フィルタ63Aは波長が670nmの光を透過させ、第2の光学フィルタ63Bは波長が710nmの光を透過させる。
図7の(a)部分は第1の光学フィルタ63Aに対する高像高光束(像高7割)、中心光束の入射を示し、(b)部分は第2の光学フィルタ63Bに対する高像高光束(像高7割)、中心光束の入射を示す。なお
図7では、光学フィルタ
63の配置を明示するため、厚みを強調して記載している。
【0044】
なお比較例においても、光学フィルタ63が配置される基板の屈折率は1.5であり、第1の光学フィルタ63A,第2の光学フィルタ63Bの実効的屈折率はそれぞれ1.83,2.04である。
【0045】
<実施例及び比較例における光線の透過角度及び透過波長>
上述した構成の実施例及び比較例について、光学フィルタへの入射角度を
図8の(a)部分に、光学フィルタの透過波長を
図8の(b)部分に示す。また、
図9の(a)部分は比較例についての透過波長のグラフであり、(b)部分は実施例についての透過波長のグラフである。なお、
図9に示す透過波長のグラフを概念的にまとめた様子を
図10に示す。
【0046】
光学フィルタの透過波長λθ(入射角θの時の透過中心波長)は、垂直入射時の透過中心波長をλ0とし、基板の屈折率をNeとし、N*を光学フィルタの実効的屈折率とした場合に、以下の式(1)で表すことができる。
【0048】
<比較例の評価>
図8,9から分かるように、比較例においては第2の光学フィルタ63Bを透過する高像高光束の上光線と下光線とで透過角度の差が9.8deg(=22.1deg−12.3deg)と大きく、これにより透過波長の差が18.9nmとなっている。このため、取得される画像は画面の周辺部分(像高が高い位置)において広い波長帯域の透過光で構成されてしまい、狭帯域波長を用いる計測に適さない。また比較例では、第1の光学フィルタ63Aを透過する高像高光束と中心光束とで透過角度の差が16.8degと大きく、得られる画像は周辺と中心とで大きく異なる透過波長(透過波長の差が19.1nm)で構成された画像になってしまうので、特定波長を用いる計測に適さない。
【0049】
<実施例の評価>
上述した比較例に対し実施例では、第2の光学フィルタ53Bを透過する高像高光束の上光線と下光線とで透過角度の差が1.58deg(実質的に平行)であり、これにより透過波長の差が2.1nmと小さくなっているので、狭帯域波長を用いる計測に適している。透過波長の差が小さいのは、アフォーカル光学系である第1の光学系51が、高像高光束と中心光束とを実質的に平行な状態で第2の光学フィルタ53Bに入射させるためである。
【0050】
また実施例では、第1の光学フィルタ53Aを透過する高像高光束と中心光束とで透過角度の差が11.04degと比較例より小さく、得られる画像は周辺と中心とで透過波長の差が小さい(8.2nm)ので、狭帯域(例えば10nm以下)の波長を用いる計測に適している。透過波長の差が小さいのは、アフォーカル光学系である第1の光学系51が、第2の光学フィルタ53Bだけでなく第1の光学フィルタ53Aについても、高像高光束と中心光束とを実質的に平行な状態で入射させるためである。
【0051】
<入射角度に対するしきい値>
実施例の結果より、透過波長のシフトを抑制して狭帯域波長に適した画像を取得するためには、第2の光学フィルタ53Bに入射する高像高光束の上光線と高像高光束の下光線との成す角度との差は5deg以下(第1のしきい値以下)であることが好ましく、2deg以下であることがさらに好ましい。また、第2の光学フィルタ53Bに入射する高像高光束の下光線と中心光束の下光線との成す角度との差は15deg以下(第2のしきい値以下)であることが好ましく、10deg以下であることがさらに好ましい。
【0052】
また、第1の光学フィルタ53Aに入射する高像高光束の上光線と中心光束の上光線との成す角度との差は15deg以下(第3のしきい値以下)であることが好ましく、同様に第1の光学フィルタ53Aに入射する高像高光束の下光線と中心光束の下光線との成す角度との差は15deg以下(第4のしきい値以下)であることが好ましい。
【0053】
なお、上述した第1〜第4のしきい値は、光線どうしの透過波長差がしきい値(例えば、10nm、5nm等)以下となるように設定することができる。
【0054】
<透過波長シフトの例(ケース2)>
上述した実施例では第1の光学フィルタ53A,第2の光学フィルタ53Bがそれぞれ610nm、710nmの波長の光(可視域赤色)を透過する場合について説明したが、これと異なる波長の光を透過する光学フィルタを用いてもよい。例えば、光軸を中心とする円形の領域に配置された第1の光学フィルタが1696nmの光を透過させ,第1の光学フィルタの周辺の環状の領域に配置された第2の光学フィルタが1426nmの光を透過させてもよい。このような配置の光学フィルタを用いた場合の透過波長を
図11に示す(入射角度は
図8の(a)部分と同じである)。また、
図11の表をグラフ化して
図12に示す。
【0055】
図11,12から分かるように、実施例では比較例に対して透過波長差が小さく、狭帯域波長、特定波長を用いる計測に適した画像を取得することができる。例えば、比較例においては、高像高光束に対する第2の光学フィルタ(周辺環状フィルタ)の透過波長は上光線と下光線とで45.3nmの差があるが、実施例においては4.9nmの差しかない。また、比較例においては、第2の光学フィルタに対する高像高光束の下光線と中心光束の下光線とで透過波長に62.5nmの差があるが、実施例においては15.0nmの差しかない。なお、ケース2において光学系のレンズ構成及び配置は上述したケース1と同じであり、また光学フィルタは光学系の入射瞳の位置に配置される。
【0056】
ケース2における光学フィルタへの入射角度はケース1と同じであるが、光学フィルタの透過波長がケース1と異なるため、入射角度差が同じでも波長シフト量が異なる。このためケース2では入射角度のしきい値をケース1と変えてもよいし、波長シフトに対するしきい値を設定してもよい。例えば、第2の光学フィルタに対する高像高光束の上光線と下光線との透過波長差のしきい値を10nm(好ましくは5nm)とし、第2の光学フィルタに対する高像高光束の下光線と中心光束の下光線とで透過波長の差のしきい値が20nmとすることができる。
【0057】
<第1の実施形態の効果>
以上説明したように、第1の実施形態に係る撮像装置20では、アフォーカル光学系である第1の光学系51が高像高光束と中心光束とを実質的に平行な状態で第2の光学フィルタ53Bに入射させ、また第1の光学フィルタ53Aについても高像高光束と中心光束とを実質的に平行な状態で入射させる。これにより透過角度の差及び波長シフトを抑制することができ、複数の波長において、狭帯域波長を使う計測、特定波長を使う計測に適した画像を取得することができる。
【0058】
<光学フィルタの配置の他の例>
本発明に係る撮像装置では、
図13の(a)部分に示すように、第1の光学フィルタ56A及び第2の光学フィルタ56Bを光軸と垂直な面内において上下方向(左右方向、斜め方向でもよい)に分離して異なる領域に配置した光学フィルタ56を用いてもよい。
図13の(a)部分に示す配置の場合、各光学フィルタの広がりは分割方向(図の上下方向)には半分になるが分割方向と直交する方向(図の左右方向)では全直径に渡って広がるので、上述した比較例のような構成の光学系では図の左右方向から入射する光線の角度差による透過波長の変動が大きくなってしまう。しかしながら上述した実施例のような構成の光学系(撮像光学系50)では、入射する光線の角度差による透過波長の変動を抑制することができる。なぜならば第1の光学系51が、第1の光学フィルタ56A及び第2の光学フィルタ56Bに対して、高像高光束をその上光線と下光線とが平行な状態で入射させるからである。
【0059】
また本発明に係る撮像装置では、
図13の(b)部分に示すように、第1の光学フィルタ57A及び第2の光学フィルタ57Bを光軸と垂直な面内において対向する扇型の領域に分離して異なる領域に配置した光学フィルタ57を用いてもよい。このような配置においても、上述した比較例のような構成の光学系では入射する光線の角度差による透過波長の変動が大きくなってしまうが、
図13の(b)部分に示す配置の場合と同様に、上述した実施例のような構成の光学系(撮像光学系50)では、入射する光線の角度差による透過波長の変動を抑制することができる。また、
図13の(b)部分に示す配置の場合、
図13の(a)部分に示す配置の場合と比較して光量バランスがとれ光量ムラ(シェーディング)を目立たなくすることができる。
【0060】
なお、上述した光学フィルタ56,57も、第1の実施形態における光学フィルタ53と同様に撮像光学系50の入射瞳の位置に配置する。また光学フィルタ56,57を用いる場合も、受光素子162の受光面上に光学フィルタの配置に対応した配置の遮光マスクを設けることにより、第1,第2の光学フィルタを透過した光束をそれぞれ分離して受光することができる。
【0061】
なお、上述した例では単一の光学フィルタ(光学フィルタ53,56,57)を用いる場合について説明したが、透過波長特性の異なる複数の光学フィルタを切り替えて用いてもよい。例えば、ターレットのように回転する部材に複数の光学フィルタを設け、所望のフィルタを撮像光学系の光路(入射瞳の位置)に挿入してもよい。また、板状部材に複数の光学フィルタを設け、その板状部材を並進移動させることにより所望の光学フィルタを撮像光学系の光路(入射瞳の位置)に挿入してもよい。
【0062】
<マイクロレンズによる瞳分割>
第1の実施形態に係る画像処理装置10では瞳分割部として機能する遮光マスク162A,162Bを受光素子162上に設けているが、瞳分割部としてマイクロレンズアレイを用いてもよい。具体的には互いに分離した複数の受光素子(例えば2つ)に対して1つのマイクロレンズを設け、個々の受光素子が異なる瞳領域(透過波長が異なる光学フィルタ)を通過した光を受光してもよい。
【0063】
<画像処理装置による計測>
第1の実施形態に係る画像処理装置10では、撮像装置20で取得した画像を解析装置30(画像入力部110)に入力し、計測部120により被写体の計測を行うことができる。このような計測の例を説明する。
【0064】
<水質検査への適用>
一般に、海洋及び湖沼の水質をリモートセンシングにより検査する場合には、クロロフィルa(Chl.a(Chlorophyll-a))、溶存有機物(DOM:Dissolved organic matter)、または浮遊懸濁物質(SS:suspended solids)の水中の濃度を推定することにより行われる。溶存有機物としては、例えば有色溶存有機物(CDOM:Colored dissolved organic matter)が使われる。これらの物質の水中の濃度を推定する場合には、水質検査対象の水面での分光反射率を測定することにより行われ、濃度を推定する物質、その推定される物質の濃度、及び水質検査を行う場所(外洋、沿岸、湖沼、または河口付近)によって、最適な分光反射率を測定するための波長帯域が変化する。以下に、水質検査を行う場合に検出される代表的な物質とその検出に使用される波長帯域に関して説明する。
【0065】
[クロロフィルa]
クロロフィルaは、水質検査において水中の濃度が推定される代表的な物質の一つである。
【0066】
図14は、典型的な富栄養水の分光反射率に関して示す図である。同図では、X軸に波長が示されY軸に反射率が示されており、典型的な富栄養水の分光反射率のグラフが示されている。
【0067】
典型的な富栄養水の分光反射率の特性は、波長が570nm付近に極大値を持つ。また、波長670nm付近の極小はクロロフィルaによる光の吸収が起因するものである。特に富栄養水の湖沼及び沿岸における水質検査においては、650nmから720nmまでの波長での反射率の最小値と最大値との比または差が、水中のクロロフィルaの濃度と相関が高いことが知られている。そこで、この波長帯域の反射率の最小値と最大値とを使用して、クロロフィルaの濃度の推定が行われる。なお、クロロフィルaの濃度の増加に伴い、最大値は高波長側へシフトしていくことが知られているが、撮像装置20において第1の光学フィルタ及び第2の光学フィルタでの透過させる波長帯域を変化させることにより、この高波長側へのシフトにも対応することができる。
【0068】
基本的なクロロフィルaの推定モデルとして、「Chl.a」をクロロフィルaの濃度とし、R(λ)を波長λの反射率とした場合に以下の式(2)で表される2波長のバンド比によるモデルが知られている。
【0070】
上述の推定モデルにおいて使われる2波長は水域によって異なることが知られている。そこで、画像処理装置10を使用してクロロフィルaの濃度に基づいて水質検査を行う場合には、例えば上述した第1の光学フィルタ及び第2の光学フィルタが650nm以上740nm以下の波長帯域内の互いに重複しない第1の波長帯域の光及び第2の波長帯域の光をそれぞれ透過させる光学フィルタを用いる。例えば、ケース1の実施例のように、第1の光学フィルタとして670nm(第1の波長帯域)の光を透過させる光学フィルタを用い、第2の光学フィルタが710nm(第2の波長帯域)の光を透過させる光学フィルタを用いる。これにより、第1の実施形態に係る撮像装置20で波長シフトの少ない画像を取得して、解析装置30(計測部120)でクロロフィルaの濃度を正確に計測することができる。
【0071】
<土壌検査への適用>
2波長を用いた計測では、さまざまな対象物の性質を抽出する正規化指標を用いることが知られている。正規化指標は2つの波長λ1,λ2における反射率をR(λ1),R(λ2)として[R(λ1)−R(λ2)]/[R(λ1)+R(λ2)]により定義することができ、例えば土壌水分比(単位重量の乾燥度に含まれる水分重量)の推定に適用することができる。[R(1696nm)−R(1426nm)]/[R(1696nm)+R(1426nm)]で定義される正規化指標NDSMI(Normalized Difference Soil Moisture Index)は、土壌水分比0%〜60%の範囲において、良い近似を得ることができる。すなわちλ1=1696nm,λ2=1426nmであり、ケース2について上述したように、第1の実施形態に係る撮像装置20により波長シフトの少ない画像を取得して解析装置30(計測部120)で土壌水分比を正確に計測することができる。
【0072】
<その他の計測例>
本発明に係る画像処理装置10(計測部120)では、透過波長が異なる光学フィルタを用いることで、上述した指標以外の指標を算出することができる。例えばλ1=1070nm,λ2=1550nmとして人肌を検出する、λ1=1460nm,λ2=1280nmとしてナラ枯れを検出する、等が可能である。また上述した指標に限らず、他の計測を行うことも可能である。
【0073】
以上で本発明の実施形態に関して説明してきたが、本発明は上述した態様に限定されず、本発明の精神を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。