特許第6932070号(P6932070)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6932070
(24)【登録日】2021年8月19日
(45)【発行日】2021年9月8日
(54)【発明の名称】フォーカスリング及び半導体製造装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20210826BHJP
   H05H 1/46 20060101ALN20210826BHJP
【FI】
   H01L21/302 101B
   H01L21/302 101G
   !H05H1/46 A
   !H05H1/46 M
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-229015(P2017-229015)
(22)【出願日】2017年11月29日
(65)【公開番号】特開2019-102521(P2019-102521A)
(43)【公開日】2019年6月24日
【審査請求日】2020年7月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】須川 直樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 直行
(72)【発明者】
【氏名】永関 一也
【審査官】 長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−168690(JP,A)
【文献】 特開2011−108764(JP,A)
【文献】 特開2011−124377(JP,A)
【文献】 特開2013−125823(JP,A)
【文献】 特開2005−260011(JP,A)
【文献】 特開2006−270019(JP,A)
【文献】 特開2010−028073(JP,A)
【文献】 特開2013−149935(JP,A)
【文献】 特開2012−232897(JP,A)
【文献】 特開2002−016126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/302、21/3065、21/461、
21/67−21/683、
H01J 37/30−37/36、
H05H 1/00− 1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体製造装置用のフォーカスリングであって、
電気を通す上側の第1のフォーカスリング及び下側の第2のフォーカスリングと、
前記第1のフォーカスリングと前記第2のフォーカスリングとの間に配置され、前記第1のフォーカスリングと前記第2のフォーカスリングとを電気的に絶縁する絶縁部材と、を有し、
前記第2のフォーカスリングの上面の一部はプラズマ空間に露出する、
フォーカスリング。
【請求項2】
前記絶縁部材は、前記フォーカスリングの一部にリング状、スリット状又は島状に設けられる、
請求項1に記載のフォーカスリング
【請求項3】
前記絶縁部材は、前記フォーカスリングからリング状、スリット状又は島状に露出する、
請求項2に記載のフォーカスリング
【請求項4】
前記フォーカスリングの前記絶縁部材以外の部分を構成する物質は、半導体である、
請求項1〜3のいずれか一項に記載のフォーカスリング
【請求項5】
前記絶縁部材は、体積抵抗率が1×1012〜1×1017[Ω・cm]の範囲内の物質である、
請求項1〜4のいずれか一項に記載のフォーカスリング
【請求項6】
前記絶縁部材は、シリコン酸化物、シリコーン、アクリル又はエポキシのいずれかである、
請求項5に記載のフォーカスリング
【請求項7】
前記フォーカスリングは、直流電流の入口となる接点から前記絶縁部材の配置により画定する前記フォーカスリングの経路に直流電流を通す、
請求項1〜6のいずれか一項に記載のフォーカスリング
【請求項8】
前記フォーカスリングの経路を通る直流電流の出口となる前記フォーカスリングのリング状の表面の幅は、0.5mm以上である、
請求項7に記載のフォーカスリング
【請求項9】
前記絶縁部材の厚さは、2μm〜750μmの範囲である、
請求項1〜8のいずれか一項に記載のフォーカスリング
【請求項10】
前記絶縁部材は、前記フォーカスリングの内周側、外周側又はその間において、所定の高さに1つ又は複数配置される、
請求項1〜9のいずれか一項に記載のフォーカスリング
【請求項11】
前記絶縁部材は、前記フォーカスリングを分割した2以上の部材を電気的に接続しないように接着する接着剤である、
請求項1〜10のいずれか一項に記載のフォーカスリング
【請求項12】
前記絶縁部材は、溶射により前記フォーカスリングの表面に形成される溶射膜である、
請求項1〜11のいずれか一項に記載のフォーカスリング
【請求項13】
処理室内の載置台と、
前記載置台の上に設けられた静電チャックと、
前記静電チャックの上に載置され、被処理体の周縁部に置かれたフォーカスリングと、を有し、
前記フォーカスリングは、
電気を通す上側の第1のフォーカスリング及び下側の第2のフォーカスリングと、
前記第1のフォーカスリングと前記第2のフォーカスリングとの間に配置され、前記第1のフォーカスリングと前記第2のフォーカスリングとを電気的に絶縁する絶縁部材と、を有し、
前記第2のフォーカスリングの上面の一部はプラズマ空間に露出する、
半導体製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置用の部品及び半導体製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フォーカスリングは、半導体製造装置の処理室内において載置台上のウェハの周縁部に配置され、処理室内にてプラズマ処理が行われる際にプラズマをウェハWの表面に向けて収束させる。このとき、フォーカスリングはプラズマに曝露され、消耗する。
【0003】
その結果、ウェハのエッジ部においてイオンの照射角度が斜めになり、エッチング形状にチルティング(tilting)が生じる。また、ウェハのエッジ部のエッチングレートが変動し、ウェハWの面内におけるエッチングレートが不均一になる。そこで、フォーカスリングが所定以上消耗したときには新品のものに交換することが行われている。ところが、その際に発生する交換時間が生産性を低下させる要因の一つになっている。
【0004】
これに対して、直流電源から出力される直流電流をフォーカスリングに印加することで、エッチングレートの面内分布を制御することが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−239222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、フォーカスリングの表面に形成されるシースの変化が大きく、プラズマの状態変化が大きくなるため、エッチングレート又はチルティングの制御性に欠けるという課題がある。
【0007】
同様に、フォーカスリング以外の半導体製造装置に用いられる部材であって、プラズマに露出することで消耗する部材では、部材の消耗により部材の表面に形成されるシースが変化し、それに応じてプラズマの状態が変化する。
【0008】
上記課題に対して、一側面では、本発明は、エッチングレート又はチルティングの少なくともいずれかの制御性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、一の態様によれば、半導体製造装置用のフォーカスリングであって、電気を通す上側の第1のフォーカスリング及び下側の第2のフォーカスリングと、前記第1のフォーカスリングと前記第2のフォーカスリングとの間に配置され、前記第1のフォーカスリングと前記第2のフォーカスリングとを電気的に絶縁する絶縁部材と、を有し、前記第2のフォーカスリングの上面の一部はプラズマ空間に露出する、フォーカスリングが提供される。
【発明の効果】
【0010】
一の側面によれば、エッチングレート又はチルティングの少なくともいずれかの制御性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係る半導体製造装置の断面の一例を示す図。
図2】フォーカスリングの消耗によるエッチングレート及びチルティングの変動を説明するための図。
図3】一実施形態に係るフォーカスリングの断面の一例を示す図。
図4】一実施形態に係るフォーカスリングの上面の一例を示す図。
図5】一実施形態に係る絶縁部材の特性の一例を示す図。
図6】一実施形態の変形例に係るフォーカスリングの断面の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く。
【0013】
[半導体製造装置]
まず、本発明の一実施形態に係る半導体製造装置1の一例について、図1を参照しながら説明する。図1は、一実施形態に係る半導体製造装置1の断面の一例を示す図である。本実施形態に係る半導体製造装置1は、RIE(Reactive Ion Etching)型の半導体製造装置である。
【0014】
半導体製造装置1は、金属製、例えば、アルミニウム又はステンレス鋼製の円筒型の処理容器10を有し、その内部は、プラズマエッチングやプラズマCVD等のプラズマ処理が行われる処理室となっている。処理容器10は接地されている。
【0015】
処理容器10の内部には、円板状の載置台11が配設されている。載置台11は、被処理体の一例としての半導体ウェハW(以下、「ウェハW」という。)を載置する。載置台11は、静電チャック25を有する。載置台11は、アルミナ(Al)から形成された筒状保持部材12を介して処理容器10の底から垂直上方に延びる筒状支持部13に支持されている。
【0016】
静電チャック25は、アルミニウムから形成された基台25cと、基台25c上の誘電層25bとを有する。静電チャック25の周縁部にはフォーカスリング30が載置されている。静電チャック25及びフォーカスリング30の外周は、インシュレータリング32により覆われている。インシュレータリング32の内側面には、フォーカスリング30及び基台25cに接するようにアルミリング50が設けられている。
【0017】
誘電層25bには、導電膜からなる吸着電極25aが埋設されている。直流電源26はスイッチ27を介して吸着電極25aに接続されている。静電チャック25は、直流電源26から吸着電極25aに印加された直流電流によりクーロン力等の静電力を発生させ、該静電力によりウェハWを吸着保持する。
【0018】
載置台11には、第1高周波電源21が整合器21aを介して接続されている。第1高周波電源21は、プラズマ生成およびRIE用の第1の周波数(例えば、13MHzの周波数)の高周波電力を載置台11に印加する。また、載置台11には、第2高周波電源22が整合器22aを介して接続されている。第2高周波電源22は、第1の周波数よりも低いバイアス印加用の第2の周波数(例えば、3MHzの周波数)の高周波電力を載置台11に印加する。これにより、載置台11は下部電極としても機能する。
【0019】
また、直流電源28はスイッチ29を介して給電ライン21bに接続されている。直流電源28と給電ライン21bとの接続ポイントと第1高周波電源21の間にはブロッキングコンデンサ23が設けられている。ブロッキングコンデンサ23は、直流電源28からの直流電流を遮断し、直流電流が第1高周波電源21へ流れないようにする。静電チャック25は、直流電源28から印加された直流電流によりクーロン力等の静電力を発生させ、該静電力によりフォーカスリング30を吸着保持する。
【0020】
基台25cの内部には、例えば、円周方向に延在する環状の冷媒室31が設けられている。冷媒室31には、チラーユニットから配管33、34を介して所定温度の冷媒、例えば、冷却水が循環供給され、静電チャック25を冷却する。
【0021】
また、静電チャック25には、ガス供給ライン36を介して伝熱ガス供給部35が接続されている。伝熱ガス供給部35は、伝熱ガスをガス供給ライン36を介して静電チャック25の上面とウェハWの裏面の間の空間に供給する。伝熱ガスとしては、熱伝導性を有するガス、例えば、Heガス等が好適に用いられる。
【0022】
処理容器10の側壁と筒状支持部13との間には排気路14が形成されている。排気路14の入口には環状のバッフル板15が配設されると共に、底部に排気口16が設けられている。排気口16には、排気管17を介して排気装置18が接続されている。排気装置18は、真空ポンプを有し、処理容器10内の処理空間を所定の真空度まで減圧する。また、排気管17は可変式バタフライバルブである自動圧力制御弁(automatic pressure control valve)(以下、「APC」という)を有し、APCは自動的に処理容器10内の圧力制御を行う。さらに、処理容器10の側壁には、ウェハWの搬入出口19を開閉するゲートバルブ20が取り付けられている。
【0023】
処理容器10の天井部にはガスシャワーヘッド24が配設されている。ガスシャワーヘッド24は、電極板37と、該電極板37を着脱可能に支持する電極支持体38とを有する。電極板37は、多数のガス通気孔37aを有する。電極支持体38の内部にはバッファ室39が設けられ、このバッファ室39のガス導入口38aには、ガス供給配管41を介して処理ガス供給部40が接続されている。また、処理容器10の周囲には、環状又は同心状に延びる磁石42が配置されている。
【0024】
半導体製造装置1の各構成要素は、制御部43に接続されている。制御部43は、半導体製造装置1の各構成要素を制御する。各構成要素としては、例えば、排気装置18、整合器21a,22a、第1高周波電源21、第2高周波電源22、スイッチ27、29、直流電源26、28、伝熱ガス供給部35および処理ガス供給部40等が挙げられる。
【0025】
制御部43は、CPU43a及びメモリ43bを備え、メモリ43bに記憶された半導体製造装置1の制御プログラム及び処理レシピを読み出して実行することで、半導体製造装置1にエッチング等の所定の処理を実行させる。また、制御部43は、所定の処理に応じて、ウェハWやフォーカスリング30を静電吸着するための静電吸着処理等を制御する。
【0026】
半導体製造装置1では、例えばエッチング処理の際、先ずゲートバルブ20を開き、ウェハWを処理容器10内に搬入し、静電チャック25上に載置する。直流電源26からの直流電流を吸着電極25aに印加し、ウェハWを静電チャック25に吸着させ、直流電源28からの直流電流を基台25cに印加し、フォーカスリング30を静電チャック25に吸着させる。また、伝熱ガスを静電チャック25とウェハWの間に供給する。そして、処理ガス供給部40からの処理ガスを処理容器10内に導入し、排気装置18等により処理容器10内を減圧する。さらに、第1高周波電源21及び第2高周波電源22から第1高周波電力及び第2高周波電力を載置台11に供給する。
【0027】
半導体製造装置1の処理容器10内では、磁石42によって一方向に向かう水平磁界が形成され、載置台11に印加された高周波電力によって鉛直方向のRF電界が形成される。これにより、ガスシャワーヘッド24から吐出した処理ガスがプラズマ化し、プラズマ中のラジカルやイオンによってウェハWに所定のプラズマ処理が行われる。
【0028】
[フォーカスリングの消耗]
次に、図2を参照して、フォーカスリング30の消耗によって生じるシースの変化と、エッチングレート及びチルティングの変動について説明する。図2(a)に示すように、フォーカスリング30が新品の場合、ウェハWの上面とフォーカスリング30の上面とが同じ高さになるようにフォーカスリング30の厚さが設計されている。このとき、プラズマ処理中のウェハW上のシースとフォーカスリング30上のシースとは同じ高さになる。この状態では、ウェハW上及びフォーカスリング30上へのプラズマからのイオンの照射角度は垂直になり、この結果、ウェハW上に形成されるホール等のエッチング形状は垂直になり、エッチング形状が斜めになるチルティング(tilting)は生じない。また、ウェハWの面内全体においてエッチングレートが均一に制御される。
【0029】
ところが、プラズマ処理中、フォーカスリング30はプラズマに曝露され、消耗する。そうすると、図2(b)に示すように、フォーカスリング30の上面は、ウェハWの上面よりも低くなり、フォーカスリング30上のシースの高さはウェハW上のシースの高さよりも低くなる。
【0030】
このシースの高さに段差が生じているウェハWのエッジ部においてイオンの照射角度が斜めになり、エッチング形状のチルティング(tilting)が生じる。また、ウェハWのエッジ部のエッチングレートが変動し、ウェハWの面内におけるエッチングレートに不均一が生じる。
【0031】
これに対して、本実施形態では、直流電源28から出力される直流電流をフォーカスリング30に印加することで、エッチングレートの面内分布及びチルティングを制御する。しかし、直流電流がフォーカスリング30の上面全面からプラズマ空間に通されると、フォーカスリング30の上面全面のシースが変化するため、プラズマの状態変化が大きくなり、エッチングレート及びチルティングの制御性に欠けることになる。
【0032】
そこで、本実施形態に係るフォーカスリング30では、エッチングレート及びチルティングの制御性を向上させるために、フォーカスリング30の上面の一部のシースが変化するようにフォーカスリング30を構成する。
【0033】
[フォーカスリングの構成]
以下に、本実施形態に係るフォーカスリング30の構成の一例について、図3及び図4を参照しながら説明する。図3は、本実施形態に係るフォーカスリング30及びその周辺の断面の一例を示す図である。図4は、本実施形態に係るフォーカスリングの上面の一例を示す図である。
【0034】
本実施形態に係るフォーカスリング30は、シリコンで形成された2つのリング状の部材30a、30bに分割されている。部材30aは、フォーカスリング30の内周側にて上面にて突出する凸部30a1を有する。フォーカスリング30は、凸部30a1がウェハWの周縁部に近接するように静電チャック25上に配置される。部材30aの凸部30a1の外周側は、凸部30a1よりも薄く、フラットな形状を有する。
【0035】
フォーカスリング30の一部はリング状の絶縁部材30cにより形成されている。本実施形態では、凸部30a1の外周側にて部材30aの上部にリング状の絶縁部材30cを介して部材30bが載置されている。
【0036】
絶縁部材30cは、フォーカスリング30を分割した部材30aと部材30bを電気的に接続しないように接着させる接着剤であってもよい。絶縁部材30cは、無機物のSiO2、有機物のシリコーン、アクリル、エポキシのいずれかにより形成されている。部材30aと部材30bの間には隙間30dがあり、絶縁部材30cは、フォーカスリング30の上面の隙間30dからリング状に露出している。
【0037】
このようにして絶縁部材30cと隙間30dとによって部材30aと部材30bとが接触しない構成とすることで、部材30aと部材30bとを電気的に接続しないようにすることができる。
【0038】
ただし、絶縁部材30cの形状は、リング状に限らない。例えば、絶縁部材30cは、フォーカスリング30の一部に、スリット状又は島状に設けられてもよい。この場合においても、部材30aと部材30bとが接触しない又は部材30aと部材30bとが極力接触しないように、絶縁部材30c及び隙間を設けることで、部材30aと部材30bとを電気的に接続しない又は電気的な接続を最小限にすることができる。
【0039】
図4に示すように、フォーカスリング30の外径はφ360mmであり、内径はφ300mmであるが、これに限らない。例えば、フォーカスリング30の外径はφ380mmであってもよいし、それ以外であってもよい。また、例えば、フォーカスリング30の内径はφ302mmであってもよいし、それ以外であってもよい。図3及び図4に示す凸部30a1の上面のリング状の幅Lは、0.5mm以上であればよく、0.5mm〜30mmの範囲内であることが好ましい。
【0040】
部材30aと部材30bの間の隙間30dは、100μm以上になると、フォーカスリング30及びウェハWの上方にて生成されるプラズマが、隙間30dに入り込み、異常放電が発生するおそれがある。このため、隙間30dは、例えば、100μm又はそれ以下に管理される。
【0041】
絶縁部材30cは、体積抵抗率が1×1012〜1×1017[Ω・cm]の範囲内の物質であってもよい。例えば、絶縁部材30cは、無機物のSiO有機物のシリコーン、アクリル、エポキシのいずれかの膜であってもよい。図5を参照すると、SiOの体積抵抗率は1×1017[Ω・cm]である。また、エポキシの体積抵抗率は1×1012〜1×1017[Ω・cm]であり、アクリルの体積抵抗率は1×1015[Ω・cm]であり、シリコーンの体積抵抗率は1×1014〜1×1015[Ω・cm]である。よって、SiO、シリコーン、アクリル、エポキシのいずれの物質も体積抵抗率が1×1012〜1×1017[Ω・cm]の範囲内の物質である。
【0042】
図3に示す絶縁部材30cの厚さHは、2μm〜750μmの範囲の厚さであってもよい。例えば、絶縁部材30cがSiOの場合、絶縁部材30cの厚さHは、2μm〜30μmの範囲のいずれかの厚さであってもよい。絶縁部材30cがシリコーン、アクリル、エポキシのいずれかの場合、絶縁部材30cの厚さHは、2μm〜750μmの範囲のいずれかの厚さであってもよい。
【0043】
絶縁部材30cは、フォーカスリング30の内周側、外周側又はその間の所定の高さに1つ又は複数配置されてもよい。所定の高さとは、フォーカスリング30の上面であってもよいし、フォーカスリング30の内部であってもよい。
【0044】
[直流電流の経路]
静電チャック25には、直流電源28から直流電流が印加される。図3に示すように、フォーカスリング30と基台25cとはアルミリング50を介して電気的に安定して接続される。本実施形態では、アルミリング50に接触するフォーカスリング30の側面が、直流電流の入口となる接点である。ただし、接点の位置はこれに限らない。
【0045】
直流電流は、基台25c、アルミリング50、フォーカスリング30の順に流れる。フォーカスリング30の内部では、絶縁部材30cが抵抗層となり、直流電流は、絶縁部材30cにより隔てられ、部材30aと分離した部材30b側には流れない。
【0046】
よって、直流電流は、フォーカスリング30の内部において、直流電流の入口となる接点から絶縁部材30cの配置により画定する経路に通される。つまり、直流電流は、部材30aの外周側面側から入り、内周側へ向かって流れ、直流電流の出口となる内周上面(リング状の凸部30a1の上面)からプラズマ空間に通される。直流電流の出口となるリング状の凸部30a1の上面の幅Lは0.5mm以上であることが好ましい。
【0047】
以上に説明したように、本実施形態に係るフォーカスリング30によれば、直流電流の経路となる部材30aの凸部30a1が、フォーカスリング30の内周側にて上部に突出するように設けられている。また、絶縁部材30cは、フォーカスリング30の外周側で部材30aと部材30bを分離する。また、内周側では、部材30aと部材30bが接触しないように隙間30dが設けられている。かかる構成により、図4に示すフォーカスリング30の上面のうち、内周側の凸部30a1の上面からプラズマ空間へ直流電流を通し、外周側の部材30bの上面からプラズマ空間へ直流電流を流さないようにすることができる。
【0048】
直流電流をフォーカスリング30の上面全面からプラズマ空間に通した場合、フォーカスリング上に形成されるシースの変化が大きくなる。これにより、プラズマの状態変化が大きくなり、エッチングレート及びチルティングの制御性が悪くなる。これに対して、本実施形態によれば、直流電流は、絶縁部材30cの配置により画定されるフォーカスリング30の経路を通り、フォーカスリング30の上面の一部からプラズマ空間に通される。これにより、フォーカスリング30上のシースの変化を部分的にすることができ、かつシースを変化させたい領域のみ変化させることができる。このため、プラズマの状態変化が部分的かつ小さくなり、エッチングレート及びチルティングの制御性を向上させることができる。この結果、チルティングの発生を抑制し、エッチング形状を垂直にすることができる。また、ウェハWの面内におけるエッチングレートを均一にすることができる。
【0049】
なお、図3では、フォーカスリング30と基台25cの間に隙間があり、直流電流は、電気的に接続された基台25c、アルミリング50、フォーカスリング30の順に流れるようにしたが、これに限らない。例えば、フォーカスリング30の下面と基台25cを接触させることで、フォーカスリング30の下面が、直流電流の入口である接点となる。
【0050】
また、例えば、アルミリング50とフォーカスリング30を、フォーカスリング30の下面で接触させた場合には、アルミリング50に接触するフォーカスリング30の下面が、直流電流の入口である接点となる。
【0051】
また、基台25cの側面の直流電流を通したくない箇所は、イットリア(Y)等を溶射した溶射膜でコーティングすることが好ましい。
【0052】
[変形例]
最後に、本実施形態の変形例に係るフォーカスリング30について、図6を参照しながら説明する。図6は、本実施形態に係るフォーカスリング30の断面の一例を示す図である。
【0053】
(変形例1)
図6(a)の変形例1に係るフォーカスリング30は、直流電流の出口となる部材30aの凸部30a1が、リング状のフォーカスリング30の外周側に設けられている。絶縁部材30cは、フォーカスリング30の内周側で部材30aと部材30bを分離する。外周側では、部材30aと部材30bとが接触しないように隙間30dが設けられている。その他の構成は、図3の本実施形態に係るフォーカスリング30と同じである。
【0054】
変形例1において、直流電流は、部材30aの外周側から入って外周側を流れ、直流電流の出口となるリング状の凸部30a1の上面からプラズマ空間に通される。
(変形例2)
図6(b)の変形例2に係るフォーカスリング30は、直流電流の出口となる部材30aの凸部30a1が、リング状のフォーカスリング30の中央に設けられている。絶縁部材30c1、30c2は、フォーカスリング30の外周側と内周側で部材30aと部材30b1、及び部材30aと部材30b2を分離する。中央では、部材30aと部材30b1及び部材30b2とが接触しないように隙間が設けられている。その他の構成は、図3の本実施形態に係るフォーカスリング30と同じである。
【0055】
変形例2において、直流電流は、部材30aの外周側から入り、中央に向けて流れ、中央のリング状の凸部30a1の上面からプラズマ空間に通される。
(変形例3)
図6(c)の変形例3に係るフォーカスリング30は、直流電流の出口となる部材30aの凸部30a1、30a2が、リング状のフォーカスリング30の外周側と中央との間及び内周側と中央との間に2つ設けられている。絶縁部材30c1、30c2、30c3は、フォーカスリング30の外周側と中央と内周側で、部材30aと部材30b1、部材30aと部材30b2、及び部材30aと部材30b3を分離する。部材30aと部材30b1、部材30aと部材30b2及び部材30aと部材30b3とが接触しないように隙間が設けられている。その他の構成は、図3の本実施形態に係るフォーカスリング30と同じである。
【0056】
変形例3において、直流電流は、部材30aの外周側から入り、中央に向けて流れ、外周側と内周側と中央との間のリング状の凸部30a1、30a2の上面からプラズマ空間に通される。変形例3では、凸部30a1及び凸部30a2の上面の合計の幅が0.5mm以上であればよく、0.5mm〜30mmの範囲内であることが好ましい。
(変形例4)
図6(d)の変形例4に係るフォーカスリング30は、直流電流の出口となる部材30aの凸部30a1が、フォーカスリング30の内周側に設けられている。絶縁部材30cは、フォーカスリング30の上面に設けられている。この場合、絶縁部材30cは、シート状のSiO等の部材を張り付けてもよいし、溶射によりSiO等の溶射膜を絶縁部材30cとして成膜してもよい。ただし、この場合、絶縁部材30cがフォーカスリング30の上面にてプラズマに露出されるため、イットリア(Y)によりフォーカスリング30をコーティングし、プラズマ耐性を高める必要がある。本実施形態では、フォーカスリング30を複数の部材に分割する必要がない。
【0057】
変形例4において、直流電流は、部材30aの外周側から入り、内周側に向けて流れ、リング状の凸部30a1の上面からプラズマ空間に通される。
【0058】
変形例1〜変形例4のいずれにおいても、フォーカスリング30の上面の一部から直流電流をプラズマ空間へ通すことで、フォーカスリング30上に形成されるシースの変化を小さくすることができる。これにより、プラズマの状態変化を小さくすることで、エッチングレート及びチルティングの制御性を向上させることができる。なお、半導体製造装置用の部品は、シリコン等の半導体であることが好ましい。
【0059】
以上、半導体製造装置用の部品及び半導体製造装置を上記実施形態により説明したが、本発明に係る半導体製造装置用の部品及び半導体製造装置は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【0060】
上記実施形態及び変形例では、フォーカスリング30について説明したが、本発明に係る半導体製造装置用の部品は、これに限らない。半導体製造装置用の部品は、高周波電力及び直流電流を印加する部品であって、半導体製造装置に用いられる部品であればよい。一例としては、高周波電力及び直流電流を印加する上部電極に適用することができる。この場合においても、本発明によれば、上部電極がプラズマに露出することで消耗しても、エッチングレート及びチルティングの制御性を向上させることができる。ただし、エッチングレート及びチルティングの少なくともいずれかの制御性を向上させることができればよい。
【0061】
本発明に係る半導体製造装置は、Capacitively Coupled Plasma(CCP)、Inductively Coupled Plasma(ICP)、Radial Line Slot Antenna、Electron Cyclotron Resonance Plasma(ECR)、Helicon Wave Plasma(HWP)のどのタイプにも適用可能である。
【0062】
また、本明細書では、半導体製造装置1にて処理される被処理体の一例としてウェハWを挙げて説明した。しかし、被処理体は、これに限らず、LCD(Liquid Crystal Display)、FPD(Flat Panel Display)に用いられる各種基板、CD基板、プリント基板等であっても良い。
【符号の説明】
【0063】
1 :半導体製造装置
10 :処理容器
11 :載置台
15 :バッフル板
18 :排気装置
21 :第1高周波電源
22 :第2高周波電源
23 :ブロッキングコンデンサ
25 :静電チャック
25a:吸着電極
25b:誘電層
25c:基台
26 :直流電源
28 :直流電源
30 :フォーカスリング
30a、30b:部材
30a1:凸部
30c:絶縁部材
30d:隙間
31 :冷媒室
35 :伝熱ガス供給部
43 :制御部
50 :アルミリング
図1
図2
図3
図4
図5
図6