(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1実施形態]
図1において、本発明の放射線画像検出装置に相当する電子カセッテ10は、第1センサパネル11Aおよび第2センサパネル11Bが筐体12内に収容されたものである。各センサパネル11A、11Bは、平面視が矩形状の薄板であり、その厚さ方向TDに順に配置されている。
【0018】
筐体12は、直方体形状をした可搬型の箱であり、例えば、フイルムカセッテやIP(Imaging Plate)カセッテ、CR(Computed Radiography)カセッテと略同様の、国際規格ISO(International Organization for Standardization)4090:2001に準拠した大きさである。筐体12は、炭素繊維が混入された樹脂あるいはアルミニウムやニッケルのフィラーが混入された樹脂、アルミニウム合金、マグネシウム合金といった導電性材料で形成される。
【0019】
電子カセッテ10は、被写体Hが仰臥する撮影台13のホルダ14にセットされる。そして、放射線源に相当するX線源15から照射されて被写体Hを透過した、放射線に相当するX線(一点鎖線で示す)を受けて、放射線画像に相当するX線画像を検出する。
【0020】
電子カセッテ10はコンソール16と接続され、これらは各種情報を通信する。各種情報には、電子カセッテ10で検出したX線画像や、コンソール16を介してオペレータが入力する撮影メニュー等が含まれる。撮影メニューは、例えば、頭部、胸部等の撮影部位、立位、臥位、座位等の姿勢、正面、側面、背面等のX線に対する被写体Hの向きの組である。
【0021】
コンソール16は、例えばノート型パーソナルコンピュータといったコンピュータをベースに、オペレーティングシステム等の制御プログラムや、各種アプリケーションプログラムをインストールして構成される。コンソール16は、ディスプレイ17、およびタッチパッドやキーボード等の入力デバイス18を有する。ディスプレイ17には、電子カセッテ10から送信されたX線画像等が表示される。
【0022】
図2において、X線が入射する筐体12の前面には矩形状の開口が形成されており、開口にはX線透過性を有する透過板25が取り付けられている。そして、この透過板25の直下に第1センサパネル11Aおよび第2センサパネル11Bが配されている。ここで、各センサパネル11A、11Bが順に配置される厚さ方向TDとは、筐体12の前面とこれに対向する筐体12の背面の法線と平行な方向である。第1センサパネル11Aは、第1光検出基板26Aと第1シンチレータ27Aとで構成される。第1光検出基板26Aと第1シンチレータ27Aは、X線が入射する筐体12の前面側からみて、第1光検出基板26A、第1シンチレータ27Aの順に配置されている。同様に、第2センサパネル11Bも、第2光検出基板26Bと第2シンチレータ27Bとで構成され、これらは筐体12の前面側からみて、第2光検出基板26B、第2シンチレータ27Bの順に配置されている。なお、筐体12の前面側からみて、シンチレータ27、光検出基板26の順に配置したセンサパネルを用いてもよい。また、アモルファスセレン等の光導電膜によりX線を直接電荷に変換する直接変換型のセンサパネルを用いてもよい。
【0023】
第1シンチレータ27Aは、例えばCsI:Tl(タリウム賦活ヨウ化セシウム)といった蛍光体を有し、第2シンチレータ27Bは、例えばGOS(Gd
2O
2S:Tb、テルビウム賦活ガドリニウムオキシサルファイド)といった蛍光体を有する。各シンチレータ27A、27Bは、入射したX線を可視光に変換して放出する。各光検出基板26A、26Bは、各シンチレータ27A、27Bから放出された可視光を検出して電荷に変換する。
【0024】
筐体12内には、各センサパネル11A、11Bに加えて、基台28が収容されている。基台28の表面(X線が入射される側の面)29には、シート状の断熱材30が取り付けられている。各センサパネル11A、11Bは、この断熱材30を介して基台28の表面29に取り付けられている。断熱材30は、例えばスポンジシート等で構成される。一方、基台28の裏面(表面29と対向する面)31には、各種回路が搭載された三つの回路基板32、33、34が、金属製のスペーサー35を介して実装固定されている。
【0025】
基台28は、樹脂製の接着剤等で筐体12の内面に固定されている。なお、筐体12内には、これらの他にも、コンソール16と有線通信し、かつ商用電源からの電力を受けるためのケーブルコネクタ(図示せず)が収容されている。コンソール16と無線通信するためのアンテナや、電子カセッテ10をワイヤレスで駆動するためのバッテリを、筐体12内に収容してもよい。
【0026】
筐体12の背面側から基台28を平面視した
図3において、回路基板32〜34は、基台28の裏面31の片側(
図3では上側)に寄せて、互いに近接して配置されている。回路基板32〜34は、平面視でいずれも長方形状であり、その長辺方向LDと短辺方向SDが一致する配置とされている。
【0027】
破線の円内に示すように、基台28は、ピッチ系炭素繊維40にマトリクス樹脂41を含浸させたピッチ系炭素繊維強化樹脂42で形成されている。ピッチ系炭素繊維40は、周知のように、コールタールまたは石油重質分といったピッチプリカーサを炭素化して得られるものである。
【0028】
ピッチ系炭素繊維40は、その繊維方向FDが一方向に揃えられている。ピッチ系炭素繊維40はマトリクス樹脂41よりも熱伝導率が高いので、その繊維方向FDに沿って熱が伝わりやすい。このため、ピッチ系炭素繊維40の繊維方向FDが一方向に揃えられていた場合、ピッチ系炭素繊維強化樹脂42は、繊維方向FDの熱伝導率が高くなる。基台28は、こうしたピッチ系炭素繊維強化樹脂42で形成されているため、熱伝導性に異方性を有する。より具体的には、基台28は、繊維方向FDと平行な方向DTCの熱伝導性が高い。
【0029】
回路基板32〜34は、長辺方向LDが方向DTCに対して直交する(短辺方向SDが方向DTCと平行となる)配置とされている。また、回路基板32〜34は、その長辺の長さL1、L2、L3が、長辺方向LDに沿う基台28の辺の長さL4の1/4以上(L1、L2、L3≧(1/4)・L4)である。
【0030】
回路基板32〜34は、前述のように、裏面31の片側に寄せて配置されている。このため、裏面31は、一点鎖線で示す中心線CLによって、回路基板の実装密度が相対的に高い高密度領域45と、実装密度が相対的に低い低密度領域46の二つの領域に等分される。より詳しくは、高密度領域45には、回路基板32、33と回路基板34の半分が配置され、低密度領域46には、回路基板34のもう半分のみが配置されている。
【0031】
高密度領域45には全回路基板32〜34のうちの大半が配置され、低密度領域46には回路基板34の半分のみが配置されている。このため、高密度領域45は、回路基板の発熱量が相対的に大きい高熱領域にも相当し、低密度領域46は、回路基板の発熱量が相対的に小さい低熱領域にも相当する。
【0032】
裏面31の熱伝導性が高い方向DTCは、高密度かつ高熱領域45から低密度かつ低熱領域46に向かう方向となっている。このため、裏面31は、高密度領域から低密度領域に向かう方向の熱伝導性が高く、かつ高熱領域から低熱領域に向かう方向の熱伝導性が高い、と言える。
【0033】
回路基板の実装密度とは、文字通り、裏面31を二等分した領域のそれぞれにおける、回路基板が占める面積の割合である。回路基板の発熱量とは、具体的には回路基板の駆動熱の最高到達温度である。
【0034】
回路基板の発熱量が相対的に大きい、小さいとは、配置される回路基板の発熱量の合計の比較結果である。すなわち、裏面31を二等分した領域のうちの一方の領域に配置される回路基板の発熱量の合計が、他方の領域に配置される回路基板の発熱量の合計よりも高い場合、一方の領域が高熱領域、他方の領域が低熱領域となる。このため、一方の領域に配置される回路基板が一つで、他方の領域に配置される回路基板が四つであっても、一方の領域に配置される一つの回路基板の発熱量が、他方の領域に配置される四つの回路基板の発熱量の合計よりも高ければ、一方の領域が高熱領域、他方の領域が低熱領域となる。つまり、高熱領域、低熱領域の区別は、配置される回路基板の個数には依存せず、あくまでも配置される回路基板の発熱量の合計で決まる。
【0035】
図4において、第1光検出基板26Aは、ガラス基板(図示せず)上に、N行×M列の二次元マトリックス状に配列された第1画素50Aと、N本の第1ゲート線51Aと、M本の第1信号線52Aとが設けられたものである。第1ゲート線51Aは、第1画素50Aの行方向に沿うX方向に延伸し、かつ第1画素50Aの列方向に沿うY方向に所定のピッチで配置されている。第1信号線52Aは、Y方向に延伸し、かつX方向に所定のピッチで配置されている。第1ゲート線51Aと第1信号線52Aとは直交しており、第1ゲート線51Aと第1信号線52Aの交差点に対応して第1画素50Aが設けられている。
【0036】
N、Mは2以上の整数で、例えばN=2880、M=2304である。なお、第1画素50Aの配列は、
図4のように正方配列でなくともよい。第1画素50Aを45°傾けて、かつ千鳥状に配置してもよい。
【0037】
第1画素50Aは、周知のように、可視光の入射によって電荷(電子−正孔対)を発生してこれを蓄積する第1光電変換部53A、および第1TFT(Thin Film Transistor)54Aを備える。第1光電変換部53Aは、電荷を発生する半導体層とその上下に上部電極および下部電極を配した構造を有している。半導体層は例えばPIN(p-intrinsic-n)型であり、上部電極側にN型層、下部電極側にP型層が形成されている。第1TFT54Aは、ゲート電極が第1ゲート線51Aに、ソース電極が第1信号線52Aに、ドレイン電極が第1光電変換部53Aの下部電極にそれぞれ接続されている。なお、TFT型ではなく、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型の光検出基板を用いてもよい。
【0038】
第1光電変換部53Aの上部電極にはバイアス線(図示せず)が接続されている。このバイアス線を通じて上部電極に正のバイアス電圧が印加される。正のバイアス電圧の印加により半導体層内に電界が生じる。このため、光電変換により半導体層内で発生した電子−正孔対のうちの電子は、上部電極に移動してバイアス線に吸収され、正孔は、下部電極に移動して電荷として収集される。
【0039】
なお、第2光検出基板26Bは、第1光検出基板26Aと同じ構成である。このため、第2光検出基板26Bの構成部品には、数字の後に「B」の添え字を付加して、第1光検出基板26Aの構成部品と区別し、説明を省略する。
【0040】
回路基板32〜34に搭載された各種回路は、第1回路部60Aと第2回路部60Bのいずれかに属する。第1回路部60Aは第1センサパネル11A用である。また、第2回路部60Bは第2センサパネル11B用である。すなわち、センサパネルと回路部のペアは、第1センサパネル11Aと第1回路部60Aのペア、第2センサパネル11Bと第2回路部60Bのペアの二つある。
【0041】
第1回路部60Aは、第1ゲート駆動回路61A、第1信号処理回路62A、および制御回路63で構成される。第2回路部60Bは、第2ゲート駆動回路61B、第2信号処理回路62B、および制御回路63で構成される。つまり、制御回路63は、各回路部60A、60Bで共用される。
【0042】
第1ゲート駆動回路61Aは、第1ゲート線51Aの端部に接続され、第1TFT54Aを駆動するゲートパルスを発する。制御回路63は、第1ゲート駆動回路61Aを通じて第1TFT54Aを駆動し、かつ第1信号処理回路62Aの駆動を制御することにより、第1センサパネル11Aの動作を制御する。具体的には、制御回路63は、第1画素50Aから暗電荷を読み出してリセット(破棄)する画素リセット動作と、X線の到達線量に応じた電荷を第1画素50Aに蓄積させる画素電荷蓄積動作と、第1信号線52Aを通じて第1画素50Aに蓄積された電荷を第1信号処理回路62Aに読み出す画像読み出し動作とを第1センサパネル11Aに実行させる。
【0043】
第1信号処理回路62Aは、画像読み出し動作で読み出された第1画素50Aの蓄積電荷を、アナログの電圧信号に変換する。そして、アナログの電圧信号に対して周知の相関二重サンプリング処理を施し、アナログの電圧信号からノイズ成分を除去する。続いて第1信号処理回路62Aは、アナログの電圧信号を、その電圧値に応じたデジタル信号に変換(アナログ/デジタル変換)し、デジタル信号を制御回路63に出力する。制御回路63は、内蔵のメモリ(図示せず)に、第1信号処理回路62Aからのデジタル信号をX線画像(第1X線画像、
図5参照)として記憶する。なお、第2回路部60Bは、第1回路部60Aと同じ構成である。このため、第2光検出基板26Bの場合と同じく、第2回路部60Bの説明は省略する。
【0044】
電源部64は、制御回路63の制御の下、各センサパネル11A、11Bと各回路部60A、60Bに給電する。電源部64にはスイッチング電源が設けられている。スイッチング電源は、パルス変調方式、例えばパルス幅変調(PWM;Pulse Width Modulation)方式により、バッテリや商用電源からの電力に基づく電圧を、各センサパネル11A、11Bと各回路部60A、60Bに適合した電圧に変換して出力する。
【0045】
図5において、コンソール16は、第1センサパネル11Aから第1X線画像を、第2センサパネル11Bから第2X線画像をそれぞれ受信する。第1X線画像と第2X線画像は、X線源15から照射されて被写体Hを透過したX線に感応して各画素50A、50Bに蓄積された電荷に基づくもので、被写体Hの体内構造を表すものである。
【0046】
第1X線画像および第2X線画像は、環境温度等の電子カセッテ10の使用環境に起因するノイズ等の固定パターンノイズによるアーチファクトを除去するオフセット補正処理を施された後、ES画像生成部70に入力される。ES画像生成部70は、第1X線画像と第2X線画像とから、ES画像を生成する。具体的には、ES画像生成部70は、第2X線画像に所定の係数を乗算したものから、第1X線画像に所定の係数を乗算したものを画素単位で減算する。こうしたサブトラクション処理で生成されたES画像は、例えば、軟部組織が除去され、骨部組織が強調されたものとなる。
【0047】
骨密度算出部71は、骨に関する指標値として、被写体Hの撮影部位における骨密度を算出する。具体的には、骨密度算出部71は、まず、ES画像生成部70からのES画像を解析し、ES画像内の骨部組織の領域を抽出する。そして、例えば骨部組織の領域の画素値の代表値(平均値、最大値、最頻値等)に、画素値を骨量に変換する変換係数を乗算し、骨量を算出する。骨密度算出部71は、算出した骨量を骨部組織の領域の面積で除算することで、骨密度を算出する。
【0048】
コンソール16は、骨密度算出部71で算出した骨密度を、ES画像生成部70で生成したES画像等とともにディスプレイ17に表示する。このように、各センサパネル11A、11Bから出力された各X線画像は、骨に関する指標値の算出に利用される。なお、骨密度に加えて、あるいは代えて、骨量をディスプレイ17に表示してもよい。
【0049】
ES画像生成部70、骨密度算出部71は、例えば、X線撮影に関わるアプリケーションプログラムを実行することにより、コンソール16のCPU(Central Processing Unit)に構築される。これら各部のうちの一部または全部を電子カセッテ10のCPUに構築し、電子カセッテ10でES画像の生成や骨密度の算出を行っても構わない。
【0050】
次に、上記構成による作用を説明する。電子カセッテ10を用いた被写体HのX線撮影を行う場合、オペレータは、電子カセッテ10の電源をオンし、電子カセッテ10を撮影台13のホルダ14にセットする。そして、電子カセッテ10、X線源15、および被写体Hの相互の位置関係を調整した後、X線源15からX線を照射させる。
【0051】
X線源15から照射されて被写体Hを透過したX線は、透過板25を介して第1センサパネル11Aおよび第2センサパネル11Bに入射される。各センサパネル11A、11Bでは、X線の照射を受けて、画素リセット動作後に画素電荷蓄積動作が実行され、各画素50A、50BにX線の到達線量に応じた電荷が蓄積される。
【0052】
X線の照射終了後、各センサパネル11A、11Bで画像読み出し動作が実行される。これにより、第1センサパネル11Aから第1X線画像が、第2センサパネル11Bから第2X線画像が、それぞれ出力される。
【0053】
各センサパネル11A、11Bに各種動作を実行させることで、各回路部60A、60Bに含まれる回路基板32〜34は発熱する。回路基板32〜34の駆動熱は、スペーサー35を介して、これらが実装された基台28の裏面31に伝わる。
【0054】
基台28は、
図3に示したように、ピッチ系炭素繊維40にマトリクス樹脂41を含浸させたピッチ系炭素繊維強化樹脂42で形成され、ピッチ系炭素繊維40の繊維方向FDが一方向に揃えられていて、繊維方向FDと平行な方向DTCの熱伝導性が高くなっている。このため、基台28の裏面31に伝わった回路基板32〜34の駆動熱は方向DTCに沿って裏面31全体に速やかに拡散され、基台28の裏面31が直ちに熱平衡状態となる。したがって、回路基板32〜34の駆動熱で、基台28の裏面31、ひいては基台28の表面29に取り付けられた各センサパネル11A、11Bが局所的に熱せられることを低減することができる。各X線画像に局所的な濃度ムラが発生して画質が劣化する、という問題を改善することができる。
【0055】
また、平面視で長方形状の回路基板32〜34を、その長辺方向LDが方向DTCと直交する配置とするので、幅狭な短辺からではなく幅広な長辺から多く回路基板32〜34の駆動熱を拡散させることができ、基台28の裏面31が熱平衡状態となる速度をより速めることができる。
【0056】
回路基板32〜34の長辺の長さL1、L2、L3は、長辺方向LDに沿う基台28の辺の長さL4の1/4以上である。このため、より幅広い領域に回路基板32〜34の駆動熱を拡散させることができ、各センサパネル11A、11Bが局所的に熱せられることを効果的に防止することができる。反対に、回路基板32〜34の長辺の長さL1、L2、L3が、長辺方向LDに沿う基台28の辺の長さL4の1/4よりも短かった場合は、裏面31の熱伝導性に異方性を付与することによる回路基板32〜34の駆動熱の拡散効果は限定的となる。なお、回路基板の長辺の長さは、長辺方向LDに沿う基台28の辺の長さの1/2以上であることがより好ましい。
【0057】
裏面31は、回路基板の実装密度が相対的に高い高密度領域かつ回路基板の発熱量が相対的に大きい高熱領域45と、実装密度が相対的に低い低密度領域かつ発熱量が相対的に小さい低熱領域46の二つの領域に等分される。そして、高密度かつ高熱領域45から低密度かつ低熱領域46に向かう方向の熱伝導性が高くなっている。このため、高密度かつ高熱領域45から低密度かつ低熱領域46に効率的に駆動熱を拡散させることができ、基台28の裏面31が熱平衡状態となる速度をさらに速めることができる。
【0058】
基台28の表面29には断熱材30が取り付けられており、断熱材30を介して各センサパネル11A、11Bが基台28の表面29に取り付けられているので、基台28の裏面31に伝わった回路基板32〜34の駆動熱が、各センサパネル11A、11Bに伝わることを効果的に防止することができる。
【0059】
各センサパネル11A、11Bは、X線が入射する筐体12の前面側からみて、各光検出基板26A、26B、各シンチレータ27A、27Bの順に配置されている。このため、各シンチレータ27A、27B、各光検出基板26A、26Bの順に配置されている場合と比べて、各光検出基板26A、26Bに回路基板32〜34の駆動熱がより伝わり難くなる。
【0060】
各X線画像は、電子カセッテ10からコンソール16に送信される。コンソール16では、
図5に示したように、ES画像生成部70でES画像が生成され、さらにES画像に基づいて骨密度算出部71で骨密度が算出される。骨密度はES画像等とともにディスプレイ17に表示される。
【0061】
骨密度といった骨に関する指標値の算出の元となるX線画像の画質が保証されていないと、指標値の信頼性が大きく低下するおそれがある。しかしながら、本発明では、X線画像の画質が比較的高いレベルで保証されるので、指標値の信頼性を向上させることができる。
【0062】
また、各センサパネル11A、11Bを厚さ方向に順に配置した構成では、
第2センサパネル11Bへの到達線量は、
第1センサパネル11Aへの到達線量の10〜20%と、どうしても低下してしまう。このため、第2X線画像のSN(Signal-Noise)比は低くなり、もし回路基板32〜34の駆動熱でセンサパネル11Bが局所的に熱せられ、第2X線画像に局所的な濃度ムラが発生してしまった場合は、その影響が比較的高くなる。したがって、各センサパネル11A、11Bを厚さ方向に順に配置した構成では、本発明は有効である。
【0063】
なお、基台28は、全体がピッチ系炭素繊維強化樹脂42で形成されている必要はない。ピッチ系炭素繊維強化樹脂42を含んでいればよく、より具体的には、少なくとも裏面31がピッチ系炭素繊維強化樹脂42で形成されていればよい。
【0064】
[第2実施形態]
図6に示す第2実施形態の電子カセッテ80は、各センサパネル11A、11Bの構成や、基台81の表面82に断熱材30を介して各センサパネル11A、11Bが取り付けられている構造等は、
図2に示した上記第1実施形態の電子カセッテ10と同じである。電子カセッテ10との相違点は、基台81の裏面83にシート84が貼り付けられている点である。
【0065】
基台81は、上記第1実施形態の基台28のようなピッチ系炭素繊維強化樹脂製ではなく、例えばステンレス製である。代わりにシート84が、上記第1実施形態の基台28と同じく、ピッチ系炭素繊維にマトリクス樹脂を含浸させたピッチ系炭素繊維強化樹脂で形成されている。図示は省略するが、このシート84のピッチ系炭素繊維も、その繊維方向FDが一方向に揃えられている。また、繊維方向FDと平行な、熱伝導性が高い方向DTCに対して、回路基板32〜34の長辺方向LDが直交する配置とされている。さらに、高密度領域から低密度領域、あるいは高熱領域から低熱領域に向かう方向の熱伝導性が高くなっている。
【0066】
このように、上記第1実施形態の基台28のごとく、基台自体をピッチ系炭素繊維強化樹脂で形成するのではなく、本実施形態の基台81のように、ピッチ系炭素繊維強化樹脂のシートを裏面に貼り付けることで、基台の少なくとも裏面の面内における熱伝導性に異方性を付与してもよい。
【0067】
上記各実施形態では、ピッチ系炭素繊維の繊維方向FDを揃えることで、基台の熱伝導性に異方性を付与しているが、本発明はこれに限定されない。以下の
図7〜
図10等に示す方法で、基台の熱伝導性に異方性を付与してもよい。
【0068】
図7に示す基台90は、その裏面91に複数の溝92がストライプ状に形成されている。溝92が延びる方向に対して直交する方向においては、溝92が熱伝導経路を寸断しているため、熱が伝わり難い。対して溝92が延びる方向と平行な方向DTCにおいては、隣り合う溝92の間の部分93が熱伝導経路となるため、熱が伝わりやすい。つまり、基台90は、溝92によって方向DTCの熱伝導性が高くなっていて、熱伝導性に異方性が付与されている。
【0069】
図8に示す基台100は、表面101から裏面102にわたって貫通した複数の等幅のスリット103が等間隔に形成された一次元格子状である。
図7の溝92と同じく、スリット103が延びる方向に対して直交する方向においては、スリット103が熱伝導経路を寸断しているため、熱が伝わり難い。対してスリット103が延びる方向と平行な方向DTCにおいては、隣り合うスリット103の間の繋ぎ目部分104が熱伝導経路となるため、熱が伝わりやすい。つまり、基台100は、スリット103によって方向DTCの熱伝導性が高くなっていて、熱伝導性に異方性が付与されている。
【0070】
図9に示す基台110は、
図8に示す一次元格子状の基台100に対して、二次元格子状(網目状)としたものである。スリット113は、表面111から裏面112にわたって貫通し、等幅で等間隔に形成されている点では、
図8のスリット103と同じである。
【0071】
しかし、スリット113は、その延びる方向と平行な方向DTCに対して直交する方向に沿う繋ぎ目部分114によって、方向DTCにおいて所々寸断されている。より具体的には、スリット113は、5本の繋ぎ目部分114によって、方向DTCに沿って6分割されている。この繋ぎ目部分114の本数は、方向DTCに対して直交する方向に沿って数えた、隣り合うスリット113の間の繋ぎ目部分115の数14よりも少ない。そして、両繋ぎ目部分114、115の幅WV、WHは同じである。したがって、繋ぎ目部分114により形成される方向DTCと直交する方向に沿う熱伝導経路よりも、繋ぎ目部分115により形成される方向DTCに沿う熱伝導経路のほうが熱を伝えやすい。このため、基台110は、依然として、方向DTCの熱伝導性が高くなっていて、熱伝導性に異方性が付与されている。また、繋ぎ目部分114があることで、
図8に示す基台100よりも、機械的強度が増している。
【0072】
図9に示す基台110において、繋ぎ目部分115の本数に対して、繋ぎ目部分114の本数を少なくすることに加えて、あるいは代えて、繋ぎ目部分115の幅WHを、繋ぎ目部分114の幅WVよりも太くしてもよい。
【0073】
さらに、
図10に示す基台120のように、方向DTCに沿う隣り合うスリット121の間の繋ぎ目部分122を、他の部分よりも熱伝導率が高い材料としてもよい。例えば、繋ぎ目部分122を銅、他の部分をステンレスとする。こうすれば、より方向DTCの熱伝導性を高くすることができる。
【0074】
このように、基台の熱伝導性に異方性を付与する方法としては、様々な方法を採用することが可能である。なお、図示は省略したが、
図7〜
図10の場合も、回路基板は、その長辺方向LDが方向DTCに対して直交する配置とされる。また、高密度領域から低密度領域、あるいは高熱領域から低熱領域に向かう方向の熱伝導性が高くなっている。
【0075】
図11に示す基台130のように、熱伝導性が高い方向DTCを、基台の裏面の各領域で変更してもよい。また、熱伝導性が高い方向DTCを、基台の辺に対して傾けてもよい。
【0076】
図11において、基台130は、平面視が三角形状の三つのブロック130A、130B、130Cを接合した構成である。ブロック130Aは基台130の中央部に配され、各ブロック130B、130Cはブロック130Aの左右に対称に配されている。
【0077】
回路基板131、132、133は、裏面134の片側(
図11では上側)に寄せて、互いに近接して配置されている。回路基板131は、各ブロック130A〜130Cに跨って配置されている。回路基板132はブロック130Bに、回路基板133はブロック130Cに、それぞれ配置されている。
【0078】
基台130の裏面134は、上記第1実施形態の場合と同じく、一点鎖線で示す中心線CLによって、高密度かつ高熱領域135と、低密度かつ低熱領域136の二つの領域に等分される。
【0079】
ブロック130Aにおいて、熱伝導性が高い方向DTCAは、基台130の辺と平行である。対して、ブロック130B、130Cの熱伝導性が高い方向DTCB、DTCCは、基台130の辺に対して傾いている。より詳しくは、方向DTCB、DTCCは、高密度かつ高熱領域135から低密度かつ低熱領域136に向かって、外側に広がる方向となっている。各ブロック130A〜130Cは、破線の円内に示すように、ピッチ系炭素繊維40の繊維方向FDA、FDB、FDCを変更することで、熱伝導性が高い方向DTCA、DTCB、DTCCを互いに異ならせている。
【0080】
このように、熱伝導性が高い方向DTCを、基台の裏面の各領域で変更してもよいし、熱伝導性が高い方向DTCを、基台の辺に対して傾けてもよい。なお、ブロック130Aの熱伝導性が高い方向DTCAはもちろんのこと、ブロック130B、130Cの熱伝導性が高い方向DTCB、DTCCも、基板の辺に対して傾いてはいるが、高密度かつ高熱領域135から低密度かつ低熱領域136に向かう方向には違いはない。したがって、裏面134も、高密度領域から低密度領域に向かう方向の熱伝導性が高く、かつ高熱領域から低熱領域に向かう方向の熱伝導性が高い、と言える。
【0081】
上記第2実施形態のピッチ系炭素繊維強化樹脂製のシート84の貼り付け方向を変更する、
図7の溝92の延設方向を変更する、あるいは、
図8〜
図10のスリット103、113、121の延設方向を変更する等して、熱伝導性が高い方向DTCを、基台の裏面の各領域で変更したり、熱伝導性が高い方向DTCを、基台の辺に対して傾けてもよい。
【0082】
図12の基台140に示すように、裏面141を複数の領域142、143、144に分割し、各領域142〜144の熱伝導性を変更してもよい。
【0083】
基台140では、各領域142〜144におけるピッチ系炭素繊維40の密度を変更することで、各領域142〜144で熱伝導性を変更している。具体的には、中央の領域142のピッチ系炭素繊維40の密度を、左右両領域143、144よりも高める。こうすることで、領域142の熱伝導性を領域143、144の熱伝導性よりも高めている。
【0084】
この場合、熱伝導性が高い領域142には、発熱量が相対的に大きい回路基板145を配置し、熱伝導性が低い領域143、144には、発熱量が相対的に小さい回路基板146、147を配置する。こうすれば、発熱量が相対的に大きい回路基板145の駆動熱をより積極的に拡散させることができる。
【0085】
なお、
図12では、基台140がピッチ系炭素繊維強化樹脂42で形成されている例を示したが、上記第2実施形態のピッチ系炭素繊維強化樹脂のシート84に適用してもよい。
【0086】
また、
図7の溝92に適用してもよい。この場合は、熱伝導性を高めたい領域の溝92の本数を、熱伝導性を低めたい領域よりも減らす。あるいは、熱伝導性を高めたい領域の隣り合う溝92の間の部分93の幅を、熱伝導性を低めたい領域よりも太くする。さらに、
図8〜
図10のスリット103、113、121に適用してもよい。この場合は、熱伝導性を高めたい領域の繋ぎ目部分104、115、122の本数を、熱伝導性を低めたい領域よりも増やす。あるいは、熱伝導性を高めたい領域の隣り合う繋ぎ目部分104、115、122の幅を、熱伝導性を低めたい領域よりも太くする。
【0087】
全ての回路基板を、長辺方向LDが方向DTCと直交する配置としなくともよい。長辺方向LDが方向DTCと直交する配置とする回路基板は、例えば、その長辺が、長辺方向に沿う基台の辺の1/4以上の長さの回路基板だけでもよいし、全回路基板のうちの少なくとも発熱量が最も大きい回路基板だけでもよい。
【0088】
高密度領域と低密度領域を画定する中心線と、高熱領域と低熱領域を画定する中心線が一致する場合を例示したが、回路基板のレイアウトによっては、高密度領域と低密度領域を画定する中心線と、高熱領域と低熱領域を画定する中心線が直交する場合も考えられる。この場合は、熱伝導性が高い方向DTCを、高熱領域から低熱領域に向かう方向とする。
【0089】
基台の裏面に実装される回路基板は、平面視で長方形状に限らない。平面視で正方形状でもよいし、平面視で多角形状、円形状、楕円形状等でもよい。
【0090】
ここで、長方形状、正方形状、多角形状、円形状、楕円形状等の文言は、回路基板の全体的な輪郭が当該形状に沿っているということである。このため、例えば全体的な輪郭が長方形状の回路基板の四つの角部が面取りされていたり、円形状の回路基板の中心部が丸く繰り抜かれていたりする場合等、部分的に欠けている場合も含む。
【0091】
なお、「二つのセンサパネルが厚さ方向に順に配置」されている状態とは、上記各実施形態の二つのセンサパネルが密着して配置されている状態に限らない。二つのセンサパネルが密着しておらず、二つのセンサパネルが隙間で隔てられている状態や、二つのセンサパネルの間に、X線の軟線成分の入射を制限するX線フィルタ等の介挿物がある状態も含む。
【0092】
上記各実施形態では、二つのセンサパネル11A、11Bが厚さ方向TDに順に配置された電子カセッテを例示したが、本発明はこれに限定されない。一つのセンサパネルを有する電子カセッテについても、本発明は適用することが可能である。
【0093】
上記各実施形態では、放射線画像検出装置として電子カセッテを例示したが、本発明はこれに限定されない。撮影台に固定される据え置き型の放射線画像検出装置に対しても、本発明は適用することが可能である。また、本発明は、X線に限らず、γ線等の他の放射線を使用する場合にも適用することができる。
【0094】
なお、本明細書中に記載の「あるいは」、「または」なる接続詞は、文脈によっては、これらの接続詞で繋げられた複数の選択肢のうちのいずれか一つ、という限定的解釈を意図する表現ではなく、複数の選択肢の組み合わせも含む表現である。例えば、「選択肢A、あるいは選択肢Bを行う。」という文章は、文脈によっては、「選択肢Aを行う。」、「選択肢Bを行う。」、「選択肢Aおよび選択肢Bを行う。」の三通りの意があると解釈すべきである。
【0095】
本発明は、上記各実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない限り種々の構成を採用し得ることはもちろんである。