特許第6932141号(P6932141)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6932141
(24)【登録日】2021年8月19日
(45)【発行日】2021年9月8日
(54)【発明の名称】電気変色素子
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/155 20060101AFI20210826BHJP
【FI】
   G02F1/155
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-558115(P2018-558115)
(86)(22)【出願日】2017年6月12日
(65)【公表番号】特表2019-518235(P2019-518235A)
(43)【公表日】2019年6月27日
(86)【国際出願番号】KR2017006058
(87)【国際公開番号】WO2017217710
(87)【国際公開日】20171221
【審査請求日】2018年11月5日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0072932
(32)【優先日】2016年6月13日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】トン・ヒョン・イ
(72)【発明者】
【氏名】チャン・ユン・リム
(72)【発明者】
【氏名】チェ・スン・ハン
(72)【発明者】
【氏名】ス・ヒ・イ
(72)【発明者】
【氏名】トゥ・フン・ソン
【審査官】 岩村 貴
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭64−090422(JP,A)
【文献】 特開2005−316180(JP,A)
【文献】 実開平01−142927(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0177026(US,A1)
【文献】 特開昭62−143032(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/15−1/163
G09F 9/30
G09G 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極層;第1電極層上に設けられる第1電気変色層;第1電気変色層上に設けられる電解質層;電解質層上に設けられる第2電気変色層;および第2電気変色層上に設けられる第2電極層を含む電気変色素子であって、
前記電気変色素子は、電解質層を挟んで互いに向き合う第1電気変色層および第2電気変色層のそれぞれの対向面にそれぞれ設けられた第1補助電極層および第2補助電極層を含み、
それぞれの補助電極層は、金属材質で形成された電極部および前記電極部を絶縁させるように前記電極部を取り囲む絶縁部を含み、
第1および第2補助電極層を第1電極層上にそれぞれ投影させた場合、投影前の第1電極層の面積に対する投影後の第1および第2補助電極層で覆われていない第1電極層の面積の比率である第1電極層の開口率に基づいて、着色および脱色時に、透過率が調節されるように設けられ、
開口率は第1および第2補助電極層の線幅およびピッチにより決定される、電気変色素子。
【請求項2】
前記開口率が増加するほど透過率が増加し、前記開口率が低くなるほど透過率が減少する、請求項1に記載の電気変色素子。
【請求項3】
それぞれの補助電極層はメタルメッシュまたはメタルストリップパターンに形成された、請求項1に記載の電気変色素子。
【請求項4】
前記絶縁部は樹脂材質で形成された、請求項1に記載の電気変色素子。
【請求項5】
前記絶縁部はアクリレートまたはエポキシ系列の樹脂で形成された、請求項4に記載の電気変色素子。
【請求項6】
前記絶縁部は無機フィラーまたは無機充填剤をさらに含む、請求項4に記載の電気変色素子。
【請求項7】
前記絶縁部は幅が5mm以下であり、厚さが2mm以下である、請求項1に記載の電気変色素子。
【請求項8】
前記電極部は幅が3mm以下であり、厚さが1mm以下である、請求項1に記載の電気変色素子。
【請求項9】
第1および第2補助電極層は電解質層を基準として対称的に配列された、請求項1に記載の電気変色素子。
【請求項10】
第1および第2補助電極層は電解質層を基準として非対称的に配列された、請求項1に記載の電気変色素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気変色素子に関するものである。
【0002】
本出願は2016年6月13日付韓国特許出願第10−2016−0072932に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【背景技術】
【0003】
電気変色素子とは、電気変色物質が電気化学的に酸化または還元反応を起こす時に現れる可逆的な色の変化を利用する素子を意味する。このような電気変色素子は応答速度が遅い短所があるものの、少ない費用でも広い面積の素子を製造することができ、特に消費電力が低いという長所がある。そのため、スマートウインドウ、スマート鏡、電子ペーパーまたは次世代建築窓戸素材のように、多様な分野で電気変色素子が注目されている。
【0004】
通常の電気変色素子は、第1電極(例えば、ITO電極)、前記第1電極上に設けられた電気変色層、前記電気変色層上に設けられた電解質層、前記電解質層上に設けられたイオン貯蔵層、および前記イオン貯蔵層上に設けられた第2電極(例えば、ITO電極)を含んで形成される。前記電気変色層および/またはイオン貯蔵層は、電気変色物質を含むことができ、印加される電圧により色が変わり得る。また、第1電極および/または第2電極の一面には、ガラスまたは高分子樹脂から形成された透明基材がさらに設けられ得る。
【0005】
従来の電気変色素子は遅い反応速度を克服するために、低い抵抗を有する透明電極の導入が必要であった。特に、既存のITO電極は高い抵抗のため、広い面積の電気変色素子で発生する電圧降下(voltage drop)による変色反応の速度差を引き起こしており、これを克服するための技術として、メタルメッシュ(metal mesh)、OMOのように低い抵抗を有する透明電極の開発が活発に進められている。
【0006】
また、電気変色素子の反応速度を向上させるための多様な形態の補助電極の開発が進められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は反応速度を向上させることによって、高速駆動が可能な電気変色素子を提供することを解決課題とする。
【0008】
また、本発明は補助電極からの金属の溶出を防止できる電気変色素子を提供することを解決課題とする。
【0009】
また、本発明は補助電極を通じて反応速度を向上させるとともに、着色および脱色時に透過率の範囲を調節できる電気変色素子を提供することを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の課題を解決するために、本発明の一側面によると、第1電極層と、第1電極層上に設けられる第1電気変色層と、第1電気変色層上に設けられる電解質層と、電解質層上に設けられる第2電気変色層、および第2電気変色層上に設けられる第2電極層を含む電気変色素子であって、前記電気変色素子は、電解質層を挟んで互いに向き合う第1電気変色層および第2電気変色層のそれぞれの対向面にそれぞれ設けられた第1補助電極層および第2補助電極層を含む、電気変色素子が提供される。
【0011】
このとき、前記電気変色素子は、第1および第2補助電極層を第1電極層上にそれぞれ投影させた場合、第1および第2補助電極層で覆われた第1電極層の面積に基づいて、着色および脱色時に、透過率が調節できるように設けられる。
【0012】
また、前記電気変色素子は、第1および第2補助電極層を第1電極層上にそれぞれ投影させた場合、投影前の第1電極層の面積に対する投影後の第1および第2補助電極層で覆われていない第1電極層の面積の比率である第1電極層の開口率に基づいて、着色および脱色時に、電気変色素子の特定位置での透過率が調節できるように設けられ得る。
【0013】
また、前記電気変色素子は前記開口率が増加するほど透過率が増加し、前記開口率が低くなるほど透過率が減少するように設けられ得る。
【0014】
また、それぞれの補助電極層はメタルメッシュまたはメタルストリップパターンに形成され得る。
【0015】
また、それぞれの補助電極層は、金属材質で形成された電極部および前記電極部を絶縁させるように前記電極部を取り囲む絶縁部を含むことができる。
【0016】
前記絶縁部はイオンまたは電子の浸透を防止するように設けられ、前記絶縁部は樹脂材質で形成され得る。
【0017】
また、前記絶縁部はアクリレートまたはエポキシ系列の樹脂で形成され得る。
【0018】
また、前記絶縁部は無機フィラーまたは無機充填剤をさらに含むことができる。
【0019】
また、前記絶縁部は幅が5mm以下であり、厚さが2mm以下であり得る。
【0020】
また、前記電極部は幅が3mm以下であり、厚さが1mm以下であり得る。
【0021】
また、第1および第2補助電極層は、電解質層を基準として対称的に配列され得る。
【0022】
また、第1および第2補助電極層は、電解質層を基準として非対称的に配列され得る。
【0023】
また、開口率は、第1および第2補助電極層の線幅およびピッチにより決定され得る。
【0024】
また、本発明のさらに他の側面によると、第1電極層と、第1電極層上に設けられる第1電気変色層と、第1電気変色層上に設けられる電解質層と、電解質層上に設けられる第2電気変色層;および第2電気変色層上に設けられる第2電極層を含む電気変色素子であって、電解質層を挟んで互いに向き合う第1電極層および第2電極層のそれぞれの対向面にそれぞれ設けられた第1補助電極層および第2補助電極層を含む電気変色素子が提供される。
【0025】
ここで、前記電気変色素子は、第1および第2補助電極層を第1電極層上にそれぞれ投影させた場合、投影後の第1および第2補助電極層で覆われた第1電極層の面積に基づいて、着色および脱色時に、透過率を調節できるように設けられる。
【発明の効果】
【0026】
以上で詳察した通り、本発明の一実施例と関連した電気変色素子は次のような効果を有する。
【0027】
一対の補助電極を向き合うようにするか、すれ違うように配列することによって、電気変色素子の反応速度を向上させることができ、これにより、高速駆動が可能な長所を有する。また、絶縁を通じて前記補助電極から金属が溶出することを防止することができる。また、前記補助電極を通じて着色および脱色時に、透過率の範囲を調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の第1実施例と関連した電気変色素子を示す概念図。
図2】本発明の第2実施例と関連した電気変色素子を示す概念図。
図3】第1補助電極層を示す概念図。
図4】第1補助電極層を示す概念図。
図5】第1補助電極層を示す概念図。
図6】第1補助電極層を示す概念図。
図7】第1補助電極層を示す概念図。
図8】補助電極層による電気変色素子の反応速度の変化を説明するためのグラフ。
図9】補助電極層による電気変色素子の反応速度の変化を説明するためのグラフ。
図10】開口率と透過率の関係を説明するための表。
図11】開口率と透過率の関係を説明するための表。
図12】第1および第2補助電極層の配列を説明するための概念図。
図13】第1および第2補助電極層の配列を説明するための概念図。
図14】第1および第2補助電極層の配列を説明するための概念図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の一実施例に係る電気変色素子を、添付された図面を参照して詳細に説明する。
【0030】
また、図面符号にかかわらず同一又は対応する構成要素は同一または類似する参照番号を付与し、これに対する重複説明は省略し、説明の便宜のために図示された各構成部材の大きさおよび形状は誇張されたり縮小され得る。
【0031】
図1は本発明の第1実施例と関連した電気変色素子100を示す概念図であり、図2は本発明の第2実施例と関連した電気変色素子200を示す概念図である。
【0032】
また、図3図7は第1補助電極層180を示す概念図である。
【0033】
図1を参照すると、第1実施例と関連した電気変色素子100は、第1電極層130と第1電極層130上に設けられる第1電気変色層150と第1電気変色層150上に設けられる電解質層170と電解質層170上に設けられる第2電気変色層160および第2電気変色層160上に設けられる第2電極層140を含む。
【0034】
また、符号110は第1電極層130が設けられる第1基板を示し、符号120は第2電極層140が設けられる第2基板を示す。
【0035】
また、電気変色素子100は電解質層170を挟んで互いに向き合う第1電気変色層150および第2電気変色層160のそれぞれの対向面にそれぞれ設けられた第1補助電極層180および第2補助電極層190を含む。
【0036】
図2を参照すると、第2実施例と関連した電気変色素子200は、第1電極層130と第1電極層130上に設けられる第1電気変色層150と第1電気変色層150上に設けられる電解質層170と電解質層170上に設けられる第2電気変色層160および第2電気変色層160上に設けられる第2電極層140を含む。
【0037】
また、電気変色素子200は、電解質層170を挟んで互いに向き合う第1電極層130および第2電極層140のそれぞれの対向面にそれぞれ設けられた第1補助電極層180および第2補助電極層190を含む。
【0038】
図1および図2を参照すると、第1実施例の電気変色素子100と第2実施例の電気変色素子200は第1補助電極層180および第2補助電極層190の形成位置でのみ差を有し、それぞれの補助電極層180、190は同じ構造を有する。
すなわち、図1図2において、同じ符号で表示された構成要素は同一である。
【0039】
前記第1基板110と第2基板120は、ガラスまたは高分子樹脂(例えば、PET、PESなど)で形成され得る。
【0040】
前記第1および第2電極層130、140は電気変色層150、170に電荷を供給する要素であって、それぞれITO(Indium Tin Oxide)、FTO(Fluor doped Tin Oxide)、AZO(Aluminium doped Zinc Oxide)、GZO(Galium doped Zinc Oxide)、ATO(Antimony doped Tin Oxide)、IZO(Indium doped Zinc Oxide)、NTO(Niobium doped Titanium Oxide)、ZnO、OMO(Oxide/Metal/Oxide)およびCTOで構成されたグループから選択される透明伝導性酸化物(transparent conductive oxide);銀ナノワイヤー(Ag nanowire);メタルメッシュ(Metal mesh);またはOMO(oxide metal oxide)のうちいずれか一つを含んで形成され得る。また、前記第1および第2電極層130、140はそれぞれ透明電極層であって、光に対して高い透過率を有し、低い面抵抗を有し、耐浸透性を有する材料を含んで構成され得、電極プレート状に構成され得る。
【0041】
それぞれの電極層150、170の形成方法は特に制限されず、公知の方法を制限なく使うことができる。例えば、スパッタリング、または印刷(スクリーン印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷など)等の工程を通じて、ガラス基材層上に透明伝導性酸化物粒子を含む薄膜の電極層を形成することができる。このように製造された電極層は、真空方式の場合、10nm〜500nm範囲の厚さを有することができ、印刷方式の場合、0.1μm〜20μm範囲の厚さを有することができる。一つの例示において、前記電極層を含んだ電気変色素子は、可視光線に対する透過率が70%〜95%であり得る。本明細書において、電気変色素子の透過率とは、電極層を含んだ透過率であって、可視光線に対する透過率を意味する。
【0042】
また、第1電気変色層150は、第2電気変色層160に含まれる電気変色物質とは相補的な発色特性を有する変色物質を含むことができる。相補的な発色特性とは、電気変色物質が着色され得る反応の種類が互いに異なる場合を指すもので、例えば、酸化性変色物質が第2電気変色層160に使われる場合、還元性変色物質が第1電気変色層150に使われる場合を意味する。相補的発色特性を有する変色物質が第1電気変色層150と第2電気変色層160にそれぞれ含まれることによって、例えば還元反応による第1電気変色層150の着色と、酸化反応による第2電気変色層160の着色を同時に行うことができ、その反対の場合には第1電気変色層150と第2電気変色層160の脱色を同時に行うことができる。その結果、素子全体の着色および脱色を同時に行うことができる。前記のような着色および脱色は、素子に印加される電圧の極性により交代され得る。
【0043】
一つの例示において、第2電気変色層160に酸化性変色物質が使われる場合、第1電気変色層150はタングステンオキサイド(WOx)のような還元性変色物質を電気変色物質として含むことができる。電気変色物質を含む第1および第2電気変色層150、170の形成方法は特に制限されず、例えば蒸着によって行われ得る。
【0044】
酸化性変色物質とは、酸化反応が起きる場合に変色する物質を意味し得、還元性変色物質とは、還元反応が起きる場合に変色する物質を意味し得る。酸化性変色物質としては、Co、Rh、Ir、Ni、Cr、MnおよびFeの酸化物、例えばLiNiO、IrO、NiO、V、LixCoO、RhまたはCrO等があり、還元性変色物質としては、Ti、V、Nb、Ta、MoおよびWの酸化物、例えばWO、MoO、Nb、TaまたはTiO等があるが、前記酸化物に本出願の変色物質が制限されるものではない。
【0045】
電解質層170は電気変色物質の変色や脱色のために水素イオンやリチウムイオンの移動環境を提供する物質であって、電解質層に使われる電解質の種類は特に制限されず、液状電解質、ゲルポリマー電解質または無機個体電解質が使われ得る。
【0046】
前記電解質は、例えばH、Li、Na、K、Rb、またはCsを含む化合物のうち一つ以上の化合物を含むことができる。一つの例示において、電解質層は、LiClO、LiBF、LiAsF、またはLiPFのようなリチウム塩化合物を含むことができる。電解質に含まれる前記イオンは、印加される電圧の極性により、第1電気変色層150または第1電気変色層170に挿入されるか、それから脱離すると共に素子の変色または光透過率の変化に関与することができる。
【0047】
一つの例示において、前記電解質はカーボネート化合物をさらに含むことができる。カーボネート系化合物は誘電率が高いので、リチウム塩が提供するイオン伝導度を高めることができる。カーボネート系化合物としては、PC(propylene carbonate)、EC(ethylene carbonate)、DMC(dimethyl carbonate)、DEC(diethyl carbonate)およびEMC(ethylmethyl carbonate)のうちいずれか一つ以上が使われ得る。
【0048】
一つの例示において、電解質層に無機固体電解質が使われる場合、前記電解質はLiPONまたはTaを含むことができる。また、前記無機固体電解質はLiPONまたはTaにB、S、Wのような成分が添加された電解質であり得る。
【0049】
また、電気変色素子100、200は各電気変色層150、170に電圧を印加するための電源(駆動部)をさらに含むことができる。
【0050】
また、第1および第2補助電極層180、190は、それぞれ電気伝導性が高い金属材質で形成され得、例えば、銀(Ag)、銅(Cu)などの高い電気伝導性を有する材料で形成され得る。また、第1補助電極層180と第2補助電極層190は、それぞれメタルメッシュ(metal mesh)またはメタルストリップ(metal strip)パターンを有することができる。また、第1および第2補助電極層190、180は同じ構造を有するため、第1補助電極層を例にして説明する。図4および図5を参照すると、メタルメッシュパターン180−1は、第1方向に延びた第1成分と、第1成分と交差するように第2方向に延びた第2成分を含むことができる。この時、複数個の第1成分と第2成分の交差構造によって複数個の開口部を有する。また、メタルストリップパターン180−2は一方向に延びた帯の形状となっている。
【0051】
また、第1補助電極層180と第2補助電極層190は、それぞれ金属材質の電極部および電気変色素子100、200の作動時に前記電極部の溶出を防止するために電極部を絶縁させる絶縁部を含むことができる。具体的には、イオンまたは電子の浸透によって、電極部の溶出の問題が発生する可能性がある。前記絶縁部は前記電極部を取り囲む層構造であり得る。例えば、図1で、絶縁部は電極部を電解質層170と絶縁させるように電極部を取り囲むことができる。また、図2で、絶縁部は電極部をそれぞれ第1および第2電気変色層150、170と絶縁させるように電極部を取り囲むことができる。
【0052】
前記絶縁部はイオンまたは電子の浸透を防止する材料であって、樹脂材料を含んで構成され得る。
【0053】
図3は、第1補助電極層180を示す概念図であって、図3を参照すると、電極部181および絶縁部182のそれぞれに対して、一つの例示において、a(絶縁部の幅)は5mm以下であり得、b、c(電極部の幅)、dはそれぞれ3mm以下であり得、e(電極部の厚さ)は1mm以下であり得、f(絶縁部の厚さ)は2mm以下であり得る。また、c/aは0.9以下であり得、b/dは1.5以下であり得る。
【0054】
図8および図9は、補助電極層による電気変色素子の反応速度の変化を説明するためのグラフである。具体的には、図8および図9は、電極層と500ピッチと10μmの線幅を有する補助電極層をすべて形成した場合(Case2)と電極層(ITO)だけを形成した場合(Case1)との着色(図8)および脱色(図9)時の、反応速度の差を説明するためのグラフである。図8および図9を参照すると、ITO電極層のみを用いた場合(Case1)と補助電極層を共に用いた場合(Case2)とを比較して、約80%の反応時点の速度が着色時には約2.7倍上昇し、脱色時には約4倍上昇することを確認することができる。
【0055】
図10および図11は、開口率と透過率の関係を説明するための表である。
【0056】
電気変色素子100、200は、第1および第2補助電極層180、190を第1電極層130(または第2電極層)上にそれぞれ投影させた場合、第1および第2補助電極層180、190で覆われた第1電極層130(または第2電極層)の面積に基づいて、着色および脱色時に、透過率が調節できるように設けられる。具体的には、第1および第2補助電極層180、190を第1電極層130上にそれぞれ投影させた場合、投影前の第1電極層130の面積に対する投影後の第1および第2補助電極層180、190で覆われていない第1電極層の面積の比率である第1電極層130の開口率に基づいて、着色および脱色時に、電気変色素子の特定位置での透過率が調節できるように設けられ得る。
【0057】
図10はメタルメッシュタイプにおいてピッチおよび線幅による開口率および透過率の関係を説明するための表である。図10を参照すると、前記開口率が増加するほど透過率が増加し、前記開口率が低くなるほど透過率が減少することを確認することができる。すなわち、投影後の第1電極層130(または第2電極層)上の第1および第2補助電極層180、190で覆われた面積が増加するほど透過率は低下し、逆に、第1電極層130(または第2電極層)上の第1および第2補助電極層180、190で覆われた面積が減少するほど透過率が増加する。
【0058】
図11を参照すると、単面適用とは、電気変色素子の全体層の構成の半分の領域である、PET/ITO/WO3構造における測定結果であり、両面適用とは、電気変色素子の全体層の構成の全体の領域である、PET/ITO/WO3/GPE/PB/ITO/PET構造における測定結果を意味する。図11を参照すると、開口率および透過率は、第1および第2補助電極層180、190の線幅およびピッチにより決定されることを確認することができる。
【0059】
図12図14は第1および第2補助電極層の配列を説明するための概念図である。本図面において、図面番号300は第1補助電極層が形成され得る第1電極層または第1電気変色層を示し、図面番号400は第2補助電極層が形成され得る第2電極層または第2電気変色層を示す。
【0060】
第1および第2補助電極層180、190は電解質層を基準として対称的に配列され得る。これとは異なり、図12図14を参照すると、第1および第2補助電極層180、190は電解質層を基準として非対称的に配列され得る。すなわち、第1および第2補助電極層190、180は電解質層170を基準としてすれ違いに配列され得る。
【0061】
図13および図14のように、電場の密集程度によって特定の透過率までに到達するのにかかる時間の差が発生し得る。
【0062】
また、一つの例示において、前記電気変色素子100、200は第1および第2補助電極層190、180の形成面積を考慮して、素子の開口率が約50〜95%であり、透過率が約40〜93%となるように設けられ得る。
【0063】
以上で説明された本発明の好ましい実施例は例示の目的のために開示されたものであって、本発明に対する通常の知識を有する当業者であれば、本発明の思想と範囲内で多様な修正、変更、付加が可能であり、このような修正、変更および付加も下記の特許請求の範囲に属するものとみなされるべきである。
【0064】
本発明によると、電気変色素子の反応速度を向上させることができ、これに伴い、高速駆動が可能な長所を有する。
【0065】
また、前記補助電極を通じて着色および脱色時に、透過率の範囲を調節することができる。
【符号の説明】
【0066】
100 電気変色素子
110 第1基板
120 第2基板
130 第1電極層
140 第2電極層
150 第1電気変色層
160 第2電気変色層
170 電解質層
180 第1補助電極層
180−1 メタルメッシュパターン
180−2 メタルストリップパターン
181 電極部
182 絶縁部
190 第2補助電極層
200 電気変色素子
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