【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書では、−80℃乃至30℃領域で動力学的分析(dynamic mechanical analysis)時における位相角(Phase angle)の温度に応じた変化率が最も大きい地点である主緩和温度(main relaxation temperature、Tr)が0℃以下に現れる、ホログラム記録媒体が提供される。
【0012】
また、本明細書では、前記ホログラム記録媒体を含む光学素子が提供される。
【0013】
また、本明細書では、可干渉性のレーザにより前記ホログラム記録媒体に含まれている光反応性単量体を選択的に重合させる段階を含む、ホログラフィック記録方法が提供される。
【0014】
以下、発明の具体的な実施形態に係るホログラム記録媒体、光学素子、およびホログラフィック記録方法についてより詳細に説明する。
【0015】
本明細書で、(メタ)アクリレートは、メタクリレートまたはアクリレートを意味する。
【0016】
本明細書で、(共)重合体は、単独重合体または共重合体(ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体を含む)を意味する。
【0017】
また、本明細書で、ホログラム(hologram)は、露光過程を通じて全体可視範囲および近紫外線範囲(300〜800nm)で光学的情報が記録された記録メディアを意味し、例えばインライン(ガボール(Gabor))ホログラム、オフアクシス(off−axis)ホログラム、完全穿孔(full−aperture)移転ホログラム、白色光透過ホログラム(“レインボーホログラム”)、デニシューク(Denisyuk)ホログラム、オフアクシス反射ホログラム、エッジリタラチャー(edge−literature)ホログラムまたはホログラフィックステレオグラム(stereogram)などの視覚的ホログラム(visual hologram)のすべてを含む。
【0018】
本明細書において、アルキル基は、直鎖または分枝鎖であってもよく、炭素数は特に限定されないが、1乃至40であることが好ましい。一実施状態によれば、前記アルキル基の炭素数は1乃至20である。また一つの実施状態によれば、前記アルキル基の炭素数は1乃至10である。また一つの実施状態によれば、前記アルキル基の炭素数は1乃至6である。アルキル基の具体的な例としては、メチル、エチル、プロピル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、1−メチル−ブチル、1−エチル−ブチル、ペンチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、ヘキシル、n−ヘキシル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、4−メチル−2−ペンチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチル、ヘプチル、n−ヘプチル、1−メチルヘキシル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、オクチル、n−オクチル、tert−オクチル、1−メチルヘプチル、2−エチルヘキシル、2−プロピルペンチル、n−ノニル、2,2−ジメチルヘプチル、1−エチル−プロピル、1,1−ジメチル−プロピル、イソヘキシル、2−メチルペンチル、4−メチルヘキシル、5−メチルヘキシルなどがあるが、これらに限定されない。
【0019】
本明細書において、アルキレン基は、アルカン(alkane)に由来する2価の官能基であり、例えば、直鎖型、分枝型または環状として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソブチレン基、sec−ブチレン基、tert−ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基などになることができる。
【0020】
発明の一実施形態によれば、−80℃乃至30℃領域で動力学的分析(dynamic mechanical analysis)時における位相角(Phase angle)の温度に応じた変化率が最も大きい地点である主緩和温度(main relaxation temperature、Tr)が0℃以下に現れる、ホログラム記録媒体が提供され得る。
【0021】
本発明者らは、−80℃乃至30℃領域で動力学的分析(dynamic mechanical analysis)時における位相角(Phase angle)の温度に応じた変化率が最も大きい地点である主緩和温度(main relaxation temperature、Tr)が0℃以下、または−15℃以下、または−15℃乃至−50℃であるホログラム記録媒体が薄い厚さを有しながらも、大きい屈折率変調値を実現できるという点を実験を通じて確認して発明を完成した。
【0022】
前述のように、−80℃乃至30℃領域で動力学的分析(dynamic mechanical analysis、DMA)時における位相角(Phase angle)の温度に応じた変化率が最も大きい地点である主緩和温度(main relaxation temperature、Tr)が0℃以下、または−15℃以下、または−15℃乃至−50℃であることから、前記ホログラム記録媒体を構成する成分の流動性(mobility)が常温でも大幅向上して記録特性が向上することができる。また、媒体自体の流動性が大きいほど、モノマーの拡散方向とは反対に低屈折物質の逆拡散(counter−diffusion)が発生して屈折率変調値の極大化が可能である。
【0023】
通常知られているとおり、前記位相角(Phase angle)はG’’(損失弾性率、loss modulus)/G’(保存弾性率、strorage modulus)で計算されるtan deltaの角度値であり、動力学的分析(dynamic mechanical analysis)時に導出され得る。
【0024】
そして、前述のように、前記主緩和温度(main relaxation temperature、Tr)は、−80℃乃至30℃領域で動力学的分析時における位相角(Phase angle)の温度に応じた変化率が最も大きい地点であってもよい。このような位相角(Phase angle)は、DMA extension modeでフィルム形態のホログラム記録媒体に一定の周波数(frequency)による変形(strain)を与えながら測定するようになる。持続的な変形が起こる状態でサンプル周囲のチャンバー温度を変更しながら損失弾性率と保存弾性率を測定して温度に応じた位相角変化値を計算することができる。
【0025】
前記動力学的分析は、通常知られた装置および方法によることもでき、具体的に、前記動力学的分析は、0.1%の応力変形(strain)、1Hzの周波数(frequency)および5℃/minの昇温速度の条件で行われてもよい。
【0026】
一方、前述した実施形態のホログラム記録媒体は、高分子マトリックスまたはその前駆体;および光反応性単量体;を含むことができる。
【0027】
前記高分子マトリックスまたはその前駆体は、前記ホログラム記録媒体およびこれから製造された最終製品の支持体の役割を果たすことができ、前記光反応性単量体は、記録単量体としての役割を果たすことができ、これらの使用によりホログラフィック記録時に前記高分子マトリックス上で前記光反応性単量体が選択的に重合されて、屈折率が異なる部分による屈折率変調が現れ得る。
【0028】
前記−80℃乃至30℃領域で動力学的分析(dynamic mechanical analysis)時における位相角(Phase angle)の温度に応じた変化率が最も大きい地点である主緩和温度(main relaxation temperature、Tr)が0℃以下を満たす場合、前記高分子マトリックスまたはその前駆体の具体的な例が大きく限定されるのではない。
【0029】
また、前記高分子マトリックスの屈折率が大きく限定されるのではないが、例えば1.45乃至1.70、または1.455乃至1.60、または1.46乃至1.53であってもよい。
【0030】
前記高分子マトリックスまたはその前駆体の一例として、シラン系官能基が分枝鎖に位置する(メタ)アクリレート系(共)重合体およびシラン架橋剤を含む高分子マトリックスが挙げられる。
【0031】
前記シラン系官能基が分枝鎖に位置する(メタ)アクリレート系(共)重合体およびシラン架橋剤を含む高分子マトリックスまたはその前駆体を含むフォトポリマー組成物から形成されるホログラムがより薄い厚さ範囲でも以前に知られたホログラムに比べて大幅向上した屈折率変調値および優れた温度、湿度に対する耐久性を実現することができる。
【0032】
前記シラン架橋剤とシラン系官能基が分枝鎖に位置する(メタ)アクリレート系(共)重合体を含む高分子マトリックスまたはその前駆体を用いることによって、前記フォトポリマー組成物からコーティングフィルムやホログラムを製造時に架橋密度が最適化されて既存のマトリックスに比べて温度と湿度に対して優れた耐久性を確保することができる。それだけでなく、前述した架橋密度の最適化を通じて、高い屈折率を有する光反応性単量体と低い屈折率を有する成分間の流動性(mobility)を高めることによって屈折率変調を極大化させて記録特性が向上することができる。
【0033】
特に、シラン系官能基を含む変性(メタ)アクリレート系(共)重合体と末端のシラン系官能基を含むシラン架橋剤間にはゾルゲル反応を通じてシロキサン結合を媒介とする架橋構造を容易に導入することができ、このようなシロキサン結合を通じて温度と湿度に対して優れた耐久性が確保され得る。
【0034】
前記高分子マトリックス上で前述したシラン系官能基が分枝鎖に位置する(メタ)アクリレート系(共)重合体とシラン架橋剤は、それぞれ別個の成分で存在することもでき、またこれらが互いに反応して形成される複合体の形態で存在することもできる。
【0035】
前記(メタ)アクリレート系(共)重合体でシラン系官能基が分枝鎖に位置することができる。前記シラン系官能基は、シラン官能基またはアルコキシシラン官能基を含むことができ、好ましくはアルコキシシラン官能基としてトリメトキシシラン基を用いることができる。
【0036】
前記シラン系官能基は、前記シラン架橋剤に含まれているシラン系官能基とゾルゲル反応を通じてシロキサン結合を形成して前記(メタ)アクリレート系(共)重合体とシラン架橋剤を架橋させることができる。
【0037】
前記シラン架橋剤は、分子当たり平均1個以上のシラン系官能基を有する化合物またはその混合物であってもよく、前記1以上のシラン系官能基を含む化合物であってもよい。前記シラン系官能基は、シラン官能基またはアルコキシシラン官能基を含むことができ、好ましくはアルコキシシラン官能基としてトリエトキシシラン基を用いることができる。前記シラン系官能基は、前記(メタ)アクリレート系(共)重合体に含まれているシラン系官能基とゾルゲル反応を通じてシロキサン結合を形成して前記(メタ)アクリレート系(共)重合体とシラン架橋剤を架橋させることができる。
【0038】
この時、前記シラン架橋剤は、前記シラン系官能基の当量が200g/個乃至1000g/個であってもよい。これによって、前記(メタ)アクリレート系(共)重合体とシラン架橋剤間の架橋密度が最適化されて、既存のマトリックスに比べて温度と湿度に対して優れた耐久性を確保することができる。それだけでなく、前述した架橋密度の最適化を通じて、高い屈折率を有する光反応性単量体と低い屈折率を有する成分間の流動性(mobility)を高めることによって屈折率変調を極大化させて記録特性を向上させることができる。
【0039】
前記シラン架橋剤に含まれている前記シラン系官能基の当量が1000g/個以上と過度に増加するようになると、マトリックスの架橋密度低下により記録後の回折格子の境界面が崩れることがあり、緩い架橋密度および低いガラス転移温度により単量体および可塑剤成分が表面に溶出してヘイズを発生させることがある。前記シラン架橋剤に含まれている前記シラン系官能基の当量が200g/個未満と過度に減少するようになると、架橋密度が過度に高くなってモノマーと可塑剤成分の流動性を阻害し、それによって記録特性が顕著に低くなるという問題が発生することがある。
【0040】
より具体的に、前記シラン架橋剤は、重量平均分子量が100乃至2000、または300乃至1000、または300乃至700である線状のポリエーテル主鎖および前記主鎖の末端または分枝鎖に結合したシラン系官能基を含むことができる。
【0041】
前記重量平均分子量が100乃至2000である線状のポリエーテル主鎖は、下記の化学式3で表される繰り返し単位を含むことができる。
【0042】
[化学式3]
−(R
8O)
n−R
8−
【0043】
前記化学式3で、R
8は炭素数1乃至10のアルキレン基であり、nは1以上、または1乃至50、または5乃至20、または8乃至10の整数である。
【0044】
前記シラン架橋剤が柔軟なポリエーテルポリオールを主鎖に導入することによってマトリックスのガラス転移温度および架橋密度調節を通じて成分の流動性を向上させることができる。
【0045】
一方、前記シラン系官能基とポリエーテル主鎖の結合は、ウレタン結合を媒介とすることができる。具体的に、前記シラン系官能基とポリエーテル主鎖は、ウレタン結合を通じて相互間結合を形成することができ、より具体的には前記シラン系官能基に含まれているケイ素原子がウレタン結合の窒素原子と直接または炭素数1乃至10のアルキレン基を媒介として結合し、前記ポリエーテル主鎖に含まれているR
8官能基がウレタン結合の酸素原子と直接結合することができる。
【0046】
このように前記シラン系官能基とポリエーテル主鎖がウレタン結合を媒介として結合することは、前記シラン架橋剤がシラン系官能基を含むイソシアネート化合物と重量平均分子量が100乃至2000である線状のポリエーテルポリオール化合物間の反応を通じて製造された反応生成物であるためである。
【0047】
より具体的に、前記イソシアネート化合物は、脂肪族、脂環式、芳香族または芳香脂肪族のモノ−イソシアネート、ジ−イソシアネート、トリ−イソシアネートまたはポリ−イソシアネート;またはウレタン、尿素、カルボジイミド、アシル尿素、イソシアヌレート、アロファネート、ビューレット、オキサジアジントリオン、ウレトジオンまたはイミノオキサジアジンジオン構造を有するジ−イソシアネートまたはトリイソシアネートのオリゴ−イソシアネートまたはポリ−イソシアネート;を含むことができる。
【0048】
前記シラン系官能基を含むイソシアネート化合物の具体的な例としては、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
【0049】
また、前記ポリエーテルポリオールは、例えば、スチレンオキシド、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、ブチレンオキシド、エピクロロヒドリンの多重添加生成物とこれらの混合添加生成物およびグラフト生成物、そして多価アルコールまたはこれらの混合物の縮合により得られるポリエーテルポリオールおよび多価アルコール、アミンおよびアミノアルコールのアルコキシ化により得られるものである。
【0050】
前記ポリエーテルポリオールの具体的な例としては、1.5乃至6のOH官能度および200乃至18000g/モル間の数平均分子量、好ましくは1.8乃至4.0のOH官能度および600乃至8000g/モルの数平均分子量、特に好ましくは1.9乃至3.1のOH官能度および650乃至4500g/モルの数平均分子量を有する、ランダムまたはブロック共重合体形態のポリ(プロピレンオキシド)、ポリ(エチレンオキシド)およびこれらの組み合わせ、またはポリ(テトラヒドロフラン)およびこれらの混合物である。
【0051】
このように、前記シラン系官能基とポリエーテル主鎖がウレタン結合を媒介として結合する場合、より容易にシラン架橋剤を合成することができる。
【0052】
前記シラン架橋剤の重量平均分子量(GPC測定)は、1000乃至5,000,000であってもよい。重量平均分子量はGPC法により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(単位:g/mol)を意味する。前記GPC法により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を測定する過程では、通常知られた分析装置と示差屈折検出器(Refractive Index Detector)などの検出器および分析用カラムを用いることができ、通常適用される温度条件、溶媒、流速(flow rate)を適用することができる。前記測定条件の具体的な例として、30℃の温度、クロロホルム溶媒(Chloroform)および1mL/minの流速(flow rate)が挙げられる。
【0053】
一方、前記(メタ)アクリレート系(共)重合体は、シラン系官能基が分枝鎖に位置する(メタ)アクリレート繰り返し単位および(メタ)アクリレート繰り返し単位を含むことができる。
【0054】
シラン系官能基が分枝鎖に位置する(メタ)アクリレート繰り返し単位の例としては。下記の化学式1で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0055】
【化1】
【0056】
前記化学式1で、R
1乃至R
3は、それぞれ独立して、炭素数1乃至10のアルキル基であり、R
4は水素または炭素数1乃至10のアルキル基であり、R
5は炭素数1乃至10のアルキレン基である。
【0057】
好ましくは前記化学式1で、R
1乃至R
3は、それぞれ独立して、炭素数1のメチル基であり、R
4は炭素数1のメチル基であり、R
5は炭素数3のプロピレン基である、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−503)由来繰り返し単位またはR
1乃至R
3は、それぞれ独立して、炭素数1のメチル基であり、R
4は水素であり、R
5は炭素数3のプロピレン基である、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−5103)由来繰り返し単位であってもよい。
【0058】
また、前記(メタ)アクリレート繰り返し単位の例としては、下記の化学式2で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0059】
【化2】
【0060】
前記化学式2で、R
6は炭素数1乃至20のアルキル基であり、R
7は水素または炭素数1乃至10のアルキル基であり、好ましくは前記化学式2で、R
6は炭素数4のブチル基であり、R
7は水素である、ブチルアクリレート由来繰り返し単位であってもよい。
【0061】
前記化学式2の繰り返し単位:前記化学式1の繰り返し単位間のモル比率は0.5:1乃至14:1であってもよい。前記化学式1の繰り返し単位のモル比率が過度に減少するようになると、マトリックスの架橋密度が過度に低くなって支持体としての役割を果たすことができず、記録後の記録特性の減少が発生することがあり、前記化学式1の繰り返し単位のモル比率が過度に増加するようになると、マトリックスの架橋密度が過度に高くなって各成分の流動性が劣ることによって屈折率変調値の減少が発生することがある。
【0062】
前記(メタ)アクリレート系(共)重合体の重量平均分子量(GPC測定)は、100,000乃至5,000,000、または300,000乃至900,000であってもよい。重量平均分子量はGPC法により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(単位:g/mol)を意味する。前記GPC法により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を測定する過程では、通常知られた分析装置と示差屈折検出器(Refractive Index Detector)などの検出器および分析用カラムを用いることができ、通常適用される温度条件、溶媒、流速(flow rate)を適用することができる。前記測定条件の具体的な例として、30℃の温度、クロロホルム溶媒(Chloroform)および1mL/minの流速(flow rate)が挙げられる。
【0063】
一方、前記(メタ)アクリレート系(共)重合体は、前記シラン系官能基の当量が300g/個乃至2000g/個、または500g/個乃至2000g/個、または550g/個乃至1800g/個、または580g/個乃至1600g/個、または586g/個乃至1562g/個であってもよい。前記当量はシラン官能基間の分子量の平均値を意味し、前記当量値が小さいほど官能基の密度が高く、前記当量値が大きいほど官能基密度が小さくなる。
【0064】
これによって、前記(メタ)アクリレート系(共)重合体とシラン架橋剤間の架橋密度が最適化されて、既存のマトリックスに比べて温度と湿度に対して優れた耐久性を確保することができる。それだけでなく、前述した架橋密度の最適化を通じて、高い屈折率を有する光反応性単量体と低い屈折率を有する成分間の流動性(mobility)を高めることによって、屈折率変調を極大化させて記録特性を向上させることができる。
【0065】
前記(メタ)アクリレート系(共)重合体に含まれている前記シラン系官能基の当量が300g/個未満と過度に減少するようになると、マトリックスの架橋密度が過度に高くなって成分の流動性を阻害し、それによって記録特性の減少が発生することがある。また、前記(メタ)アクリレート系(共)重合体に含まれている前記シラン系官能基の当量が2000g/個超過と過度に増加するようになると、架橋密度が過度に低くて支持体としての役割を果たすことができず、記録後に生成された回折格子の境界面が崩れて屈折率変調値が時間が経過しながら減少することがある。
【0066】
一方、前記(メタ)アクリレート系(共)重合体100重量部に対して、前記シラン架橋剤含有量が10重量部乃至90重量部、または20重量部乃至70重量部、または22重量部乃至65重量部であってもよい。
【0067】
前記反応生成物で、前記(メタ)アクリレート系(共)重合体100重量部に対して、前記シラン架橋剤含有量が過度に減少するようになると、マトリックスの硬化速度が顕著に遅くなって支持体としての機能を失い、記録後の回折格子の境界面が簡単に崩れることがあり、前記反応生成物で、前記(メタ)アクリレート系(共)重合体100重量部に対して、前記シラン架橋剤含有量が過度に増加するようになると、マトリックスの硬化速度は速くなるが、反応性シラン基含有量の過度な増加により他の成分との相溶性の問題が発生してヘイズが発生するようになる。
【0068】
また、前記反応生成物のモジュラス(貯蔵弾性率)が0.01MPa乃至5MPaであってもよい。前記モジュラス測定方法の具体的な例として、TA InstrumentsのDHR(discovery hybrid rheometer)装備を利用して常温(20℃乃至25℃)で1Hzの周波数(frequency)で貯蔵弾性率(storage modulus)(G’)値を測定することができる。
【0069】
また、前記反応生成物のガラス転移温度が−40℃乃至10℃であってもよい。前記ガラス転移温度測定方法の具体的な例として、DMA(dynamic mechanical analysis)測定装備を利用して応力変形(strain)0.1%、周波数(frequency)1Hz、昇温速度5℃/minのセッティング条件で−80℃〜30℃領域で光重合組成物がコーティングされたフィルムの位相角(Phase angle)(Loss modulus)変化を測定する方法が挙げられる。
【0070】
前記高分子マトリックスまたはその前駆体の他の一例として、1以上のイソシアネート基を含む化合物とポリオール間の反応生成物を含む高分子マトリックスが挙げられる。
【0071】
前記1以上のイソシアネート基を含む化合物は、分子当たり平均1個以上のNCO官能基を有する公知の化合物またはその混合物であってもよく、前記1以上のイソシアネート基を含む化合物であってもよい。
【0072】
より具体的に前記1以上のイソシアネート基を含む化合物は、脂肪族、脂環式、芳香族または芳香脂肪族のモノ−、ジ−、トリ−またはポリ−イソシアネートである。また、前記1以上のイソシアネート基を含む化合物は、ウレタン、尿素、カルボジイミド、アシル尿素、イソシアヌレート、アロファネート、ビューレット、オキサジアジントリオン、ウレトジオンまたはイミノオキサジアジンジオン構造を有する単量体型ジ−および/またはトリイソシアネートの比較的に分子量が大きい2次産物(オリゴ−およびポリイソシアネート)であってもよい。
【0073】
前記1以上のイソシアネート基を含む化合物の具体的な例としては、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,8−ジイソシアネート−4−(イソシアネートメチル)オクタン、2,2,4−および/または2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、異性体ビス(4,4’−イソシアネートシクロヘキシル)メタンおよび任意の要望される異性体含有量を有するその混合物、イソシアネートメチル−1,8−オクタンジイソシアネート、1,4−シクロへキシレンジイソシアネート、異性体シクロヘキサンジメチレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−および/または2,6−トルエンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、2,4’−または4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび/またはトリフェニルメタン4,4’,4”−トリイソシアネートなどが挙げられる。
【0074】
前記1以上のイソシアネート基を含む化合物と反応して高分子マトリックスを形成するポリオールは、2乃至20炭素数を有する脂肪族、芳香脂肪族または脂環式ジオール、トリオールおよび/または高級ポリオールであってもよい。
【0075】
前記ポリオールは、300g/mol乃至10,000g/molの水酸基当量と100,000乃至1,500,0000g/molの重量平均分子量を有することができる。
【0076】
前記ジオールの例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−ブチルプロパンジオール、トリメチルペンタンジオール、ジエチルオクタンジオール位置異性体、1,3−ブチレングリコール、シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−および1,4−シクロヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン)、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピオネートがある。
【0077】
また、前記トリオールの例としては、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンまたはグリセロールがある。適した高度−官能性アルコールは、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトールまたはソルビトールである。
【0078】
また、前記ポリオールとしては、比較的大きい分子量の脂肪族および脂環式ポリオール、例えばポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ヒドロキシ−官能性アクリル樹脂、ヒドロキシ−官能性ポリウレタン、ヒドロキシ−官能性エポキシ樹脂などを用いることができる。
【0079】
前記ポリエステルポリオールは、例えばエタンジオール、ジ−、トリ−またはテトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、ジ−、トリ−またはテトラプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ジヒドロキシシクロヘキサン、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオールまたはこれらの混合物のような多価アルコールを用い、任意にトリメチロールプロパンまたはグリセロールのようにより高い官能性のポリオールを同時に用い、例えばコハク酸、グルタール酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、o−フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸またはトリメリット酸、および酸無水物、例えばo−フタル酸無水物、トリメリット酸無水物またはコハク酸無水物、またはこれらの混合物のような脂肪族、脂環式または芳香族のジ−またはポリカルボン酸またはその無水物から公知の方式で製造され得るような、線状ポリエステルジオールである。もちろん、脂環式および/または芳香族のジ−およびポリヒドロキシ化合物もまたポリエステルポリオールの製造のための多価アルコールとして適する。遊離ポリカルボン酸の代わりに、低級アルコールの相応するポリカルボン酸無水物または相応するポリカルボキシレート、またはこれらの混合物をポリエステルの製造に用いることも可能である。
【0080】
また、前記高分子マトリックスの合成に用いることができるポリエステルポリオールとしては、ラクトンの単一−または共重合体があり、これは好ましくはブチロラクトン、ε−カプロラクトンおよび/またはメチル−ε−カプロラクトンのようなラクトンまたはラクトン混合物の、例えばポリエステルポリオール用合成成分として前記で言及された小さい分子量の多価アルコールのような適した2官能性および/またはより高い官能性の開始剤分子との添加反応により得られる。
【0081】
また、ヒドロキシル基を有するポリカーボネートもまた予備重合体合成のためのポリヒドロキシ成分として適しているが、例えばジオール、例えば1,4−ブタンジオールおよび/または1,6−ヘキサンジオールおよび/または3−メチルペンタンジオールの、ジアリールカーボネート、例えばジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネートまたはホスゲンとの反応によって製造され得るものである。
【0082】
また、前記高分子マトリックスの合成に用いることができるポリエーテルポリオールは、例えばスチレンオキシド、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、ブチレンオキシド、エピクロロヒドリンの多重添加生成物とこれらの混合添加生成物およびグラフト生成物、そして多価アルコールまたはこれらの混合物の縮合により得られるポリエーテルポリオールおよび多価アルコール、アミンおよびアミノアルコールのアルコキシ化により得られるものである。前記ポリエーテルポリオールの具体的な例としては、1.5乃至6のOH官能度および200乃至18000g/モル間の数平均分子量、好ましくは1.8乃至4.0のOH官能度および600乃至8000g/モルの数平均分子量、特に好ましくは1.9乃至3.1のOH官能度および650乃至4500g/モルの数平均分子量を有する、ランダムまたはブロック共重合体形態のポリ(プロピレンオキシド)、ポリ(エチレンオキシド)およびこれらの組み合わせ、またはポリ(テトラヒドロフラン)およびこれらの混合物である。
【0083】
一方、前記光反応性単量体は、多官能(メタ)アクリレート単量体または単官能(メタ)アクリレート単量体を含むことができる。
【0084】
前述のように、前記フォトポリマー組成物の光重合過程で単量体が重合されてポリマーが相対的に多く存在する部分では屈折率が高くなり、高分子バインダーが相対的に多く存在する部分では屈折率が相対的に低くなって屈折率変調ができるようになり、このような屈折率変調により回折格子が生成される。
【0085】
具体的に、前記光反応性単量体の一例としては、(メタ)アクリレート系α、β−不飽和カルボン酸誘導体、例えば(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリルまたは(メタ)アクリル酸などや、またはビニル基(vinyl)またはチオール基(thiol)を含む化合物が挙げられる。
【0086】
前記光反応性単量体の一例として屈折率が1.5以上、または1.53以上、または1.5乃至1.7である多官能(メタ)アクリレート単量体が挙げられ、このような屈折率が1.5以上、または1.53以上、または1.5乃至1.7である多官能(メタ)アクリレート単量体は、ハロゲン(Halogen)原子(臭素、ヨウ素など)、硫黄(S)、リン(P)、または芳香族環(aromatic ring)を含むことができる。
【0087】
前記屈折率が1.5以上である多官能(メタ)アクリレート単量体のより具体的な例としては、ビスフェノールA変性ジアクリレート系、フルオレンアクリレート系(HR6022など−Miwon社)、ビスフェノールフルオレンエポキシアクリレート系(HR6100、HR6060、HR6042など−Miwon社)、ハロゲン化エポキシアクリレート系(HR1139、HR3362など−Miwon社)などが挙げられる。
【0088】
前記光反応性単量体の他の一例として単官能(メタ)アクリレート単量体が挙げられる。前記単官能(メタ)アクリレート単量体は、分子内部にエーテル結合およびフルオレン官能基を含むことができ、このような単官能(メタ)アクリレート単量体の具体的な例としては、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、o−フェニルフェノールエチレンオキシド(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−(フェニルチオ)エチル(メタ)アクリレート、またはビフェニルメチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0089】
一方、前記光反応性単量体としては、50g/mol乃至1000g/mol、または200g/mol乃至600g/molの重量平均分子量を有することができる。前記重量平均分子量はGPC法により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。
【0090】
一方、前記実施形態のホログラム記録媒体は、光開始剤をさらに含むことができる。前記光開始剤は、光または化学放射線により活性化される化合物であり、前記光反応性単量体など光反応性官能基を含有する化合物の重合を開始する。
【0091】
前記光開始剤としては、通常知られた光開始剤を大きい制限なしに用いることができるが、その具体的な例としては光ラジカル重合開始剤、光陽イオン重合開始剤、または光陰イオン重合開始剤が挙げられる。
【0092】
前記光ラジカル重合開始剤の具体的な例としては、イミダゾール誘導体、ビスイミダゾール誘導体、N−アリールグリシン誘導体、有機アジド化合物、チタノセン、アルミネート着物、有機過酸化物、N−アルコキシピリジニウム塩、チオキサントン誘導体、アミン誘導体などが挙げられる。より具体的に、前記光ラジカル重合開始剤としては、1,3−ジ(t−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’’−テトラキス(t−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3−フェニル−5−イソオキサゾロン、2−メルカプトベンズイミダゾール、ビス(2,4,5−トリフェニル)イミダゾール、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(製品名:Irgacure 651/製造会社:BASF)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(製品名:Irgacure 184/製造会社:BASF)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1(製品名:Irgacure 369/製造会社:BASF)、およびビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタン(製品名:Irgacure 784製造会社:BASF)、Ebecryl P−115(製造会社:SK entis)などが挙げられる。
【0093】
前記光陽イオン重合開始剤としては、ジアゾニウム塩(diazonium salt)、スルホニウム塩(sulfonium salt)、またはヨードニウム塩(iodonium salt)が挙げられ、例えばスルホン酸エステル、イミドスルホネート、ジアルキル−4−ヒドロキシスルホニウム塩、アリールスルホン酸−p−ニトロベンジルエステル、シラノール−アルミニウム錯体、(η6−ベンゼン)(η5−シクロペンタジエニル)鉄(II)などが挙げられる。また、ベンゾイントシレート、2,5−ジニトロベンジルトシレート、N−トシルフタル酸イミドなども挙げられる。前記光陽イオン重合開始剤のより具体的な例としては、Cyracure UVI−6970、Cyracure UVI−6974およびCyracure UVI−6990(製造会社:Dow Chemical Co.in USA)やIrgacure 264およびIrgacure 250(製造会社:BASF)またはCIT−1682(製造会社:Nippon Soda)などの市販製品が挙げられる。
【0094】
前記光陰イオン重合開始剤としては、ボレート塩(Borate salt)が挙げられ、例えばブチリルクロリンブチルトリフェニルボレート(BUTYRYL CHOLINE BUTYLTRIPHENYLBORATE)などが挙げられる。前記光陰イオン重合開始剤のより具体的な例としては、Borate V(製造会社:Spectra group)などの市販製品が挙げられる。
【0095】
また、前記実施形態のフォトポリマー組成物は、一分子(類型I)または二分子(類型II)開始剤を用いることもできる。前記自由ラジカル光重合のための(類型I)システムは、例えば第三級アミンと組み合わせられた芳香族ケトン化合物、例えばベンゾフェノン、アルキルベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーの(Michler’s)ケトン)、アントロンおよびハロゲン化ベンゾフェノンまたは前記類型の混合物である。前記二分子(類型II)開始剤としては、ベンゾインおよびその誘導体、ベンジルケタール、アシルホスファインオキシド、例えば2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスファインオキシド、ビスアシルホスファインオキシド、フェニルグリオキシルエステル、カンファーキノン、アルファ−アミノアルキルフェノン、アルファ−、アルファ−ジアルコキシアセトフェノン、1−[4−(フェニルチオ)フェニル]オクタン−1,2−ジオン2−(O−ベンゾイルオキシム)およびアルファ−ヒドロキシアルキルフェノンなどが挙げられる。
【0096】
前記実施形態のホログラム記録媒体は、前記高分子マトリックスまたはその前駆体1重量%乃至80重量%;前記光反応性単量体1重量%乃至80重量%;および光開始剤0.1重量%乃至20重量%;を含むことができる。後述するように、前記フォトポリマー組成物が有機溶媒をさらに含む場合、前述した成分の含有量はこれら成分の総合(有機溶媒を除いた成分の総合)を基準にする。
【0097】
一方、前記ホログラム記録媒体は、ホスフェート系化合物および低屈折率フッ素系化合物からなる群より選択された1種以上をさらに含むことができる。
【0098】
前記ホスフェート系化合物および低屈折率フッ素系化合物は、光反応性単量体に比べて低い屈折率を有しており、高分子マトリックスの屈折率を低めてフォトポリマー組成物の屈折率変調を極大化させることができる。しかも、前記ホスフェート系化合物は、可塑剤の役割を果たして、前記高分子マトリックスのガラス転移温度を低めて光反応性単量体と低屈折成分の流動性(mobility)を高め、フォトポリマー組成物の成形性向上にも寄与することができる。
【0099】
より具体的に、前記低屈折率フッ素系化合物は、反応性が殆どない安定性を有し、低屈折特性を有するため、前記フォトポリマー組成物内に添加時に高分子マトリックスの屈折率をより低めることができるため、モノマーとの屈折率変調を極大化させることができる。
【0100】
前記フッ素系化合物は、エーテル基、エステル基およびアミド基からなる群より選択された1種以上の官能基および2以上のジフルオロメチレン基を含むことができる。より具体的に、前記フッ素系化合物は、2個のジフルオロメチレン基間の直接結合またはエーテル結合を含む中心官能基の両末端にエーテル基を含む官能基が結合した下記の化学式4の構造を有することができる。
【0101】
【化3】
【0102】
前記化学式4で、R
11およびR
12は、それぞれ独立して、ジフルオロメチレン基であり、R
13およびR
16は、それぞれ独立して、メチレン基であり、R
14およびR
15は、それぞれ独立して、ジフルオロメチレン基であり、R
17およびR
18は、それぞれ独立して、ポリアルキレンオキシド基であり、mは1以上、または1乃至10、または1乃至3の整数である。
【0103】
好ましくは前記化学式4で、R
11およびR
12は、それぞれ独立して、ジフルオロメチレン基であり、R
13およびR
16は、それぞれ独立して、メチレン基であり、R
14およびR
15は、それぞれ独立して、ジフルオロメチレン基であり、R
17およびR
18は、それぞれ独立して、2−メトキシエトキシメトキシ基であり、mは2の整数である。
【0104】
前記フッ素系化合物は、屈折率が1.45未満、または1.3以上1.45未満であってもよい。前述のように光反応性単量体が1.5以上の屈折率を有するため、前記フッ素系化合物は光反応性単量体より低い屈折率を通じて、高分子マトリックスの屈折率をより低めることができるため、モノマーとの屈折率変調を極大化させることができる。
【0105】
具体的に、前記フッ素系化合物含有量は、光反応性単量体100重量部に対して、30重量部乃至150重量部、または50重量部乃至110重量部であってもよい。
【0106】
前記フッ素系化合物含有量は、光反応性単量体100重量部に対して過度に減少するようになると、低屈折成分の不足により記録後の屈折率変調値が低くなり、前記フッ素系化合物含有量が光反応性単量体100重量部に対して過度に増加するようになると、その他成分との相溶性の問題でヘイズが発生したり一部のフッ素系化合物がコーティング層の表面で溶出するという問題が発生することがある。
【0107】
前記フッ素系化合物は、重量平均分子量(GPC測定)が300以上、または300乃至1000であってもよい。重量平均分子量測定の具体的な方法は前述したとおりである。
【0108】
一方、前記ホスフェート系化合物の具体的な例としては、トリフェニルホスフェート、トリクレシルホスフェート、クレシルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェートなどが挙げられる。
【0109】
前記ホスフェート系化合物は、前述したフッ素系化合物と共に1:5乃至5:1の重量比率に添加されてもよい。前記ホスフェート系化合物は、屈折率が1.5未満であり、分子量が700以下であってもよい。
【0110】
一方、前記ホログラム記録媒体は、光感応染料をさらに含むことができる。前記光感応染料は、前記光開始剤を増感させる増感色素の役割を果たすが、より具体的に前記光感応染料は、光重合体組成物に照射された光により刺激されてモノマーおよび架橋モノマーの重合を開始する開始剤の役割も共に果たすことができる。前記フォトポリマー組成物は、光感応染料0.01重量%乃至30重量%、または0.05重量%乃至20重量%含むことができる。
【0111】
前記光感応染料の例が大きく限定されるのではなく、通常知られた多様な化合物を用いることができる。前記光感応染料の具体的な例としては、セラミドニンのスルホニウム誘導体(sulfonium derivative)、ニューメチレンブルー(new methylene blue)、チオエリスロシントリエチルアンモニウム(thioerythrosine triethylammonium)、6−アセチルアミノ−2−メチルセラミドニン(6−acetylamino−2−methylceramidonin)、エオシン(eosin)、エリスロシン(erythrosine)、ローズベンガル(rose bengal)、チオニン(thionine)、ベーシックイエロー(baseic yellow)、ピナシアノールクロリド(Pinacyanol chloride)、ローダミン6G(rhodamine 6G)、ガロシアニン(gallocyanine)、エチルバイオレット(ethyl violet)、ビクトリアブルーR(Victoria blue R)、セレスチンブルー(Celestine blue)、キナルジンレッド(Quinaldine Red)、クリスタルバイオレット(crystal violet)、ブリリアントグリーン(Brilliant Green)、アストラゾンオレンジ G(Astrazon orange G)、ダルレッド(darrow red)、ピロニンY(pyronin Y)、ベーシックレッド29(basic red 29)、ピリリウムI(pyrylium iodide)、サフラニンO(Safranin O)、シアニン、メチレンブルー、アズールA(Azure A)、またはこれらの2以上の組み合わせが挙げられる。
【0112】
一方、前記ホログラム記録媒体の製造時には有機溶媒が用いられてもよい。前記有機溶媒の非制限的な例を挙げると、ケトン類、アルコール類、アセテート類およびエーテル類、またはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0113】
このような有機溶媒の具体的な例としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトンまたはイソブチルケトンなどのケトン類;メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、またはt−ブタノールなどのアルコール類;エチルアセテート、i−プロピルアセテート、またはポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのアセテート類;テトラヒドロフランまたはプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類;またはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0114】
前記有機溶媒は、前記ホログラム記録媒体を製造するためのフォトポリマー組成物に含まれる各成分を混合する時に添加されたり、各成分が有機溶媒に分散または混合された状態で添加されながら前記フォトポリマー組成物に含まれてもよい。前記フォトポリマー組成物中の有機溶媒の含有量が過度に小さい場合、前記フォトポリマー組成物の流れ性が低下して最終製造されるフィルムに縞柄ができるなど不良が発生することがある。また、前記有機溶媒の過剰添加時に固形分含有量が低くなり、コーティングおよび成膜が十分になさらず、フィルムの物性や表面特性が低下することがあり、乾燥および硬化過程で不良が発生することがある。これによって、前記フォトポリマー組成物は、含まれる成分の全体固形分の濃度が1重量%乃至70重量%、または2重量%乃至50重量%になるように有機溶媒を含むことができる。
【0115】
前記フォトポリマー組成物は、その他添加剤、触媒などをさらに含むことができる。例えば、前記フォトポリマー組成物は、前記高分子マトリックスや光反応性単量体の重合を促進するために通常知られた触媒を含むことができる。前記触媒の例としては、スズオクタノエート、亜鉛オクタノエート、ジブチルスズジラウレート、ジメチルビス[(1−ヨウ素ネオデシル)オキシ]スタナン、ジメチルスズジカルボキシレート、ジルコニウムビス(エチルヘキサノエート)、ジルコニウムアセチルアセトネート、p−トルエンスルホン酸(p−toluenesulfonic acid)または第三級アミン、例えば1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ジアザビシクロノナン、ジアザビシクロウンデカン、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン、1,3,4,6,7,8−ヘキサヒドロ−1−メチル−2H−ピリミド(1,2−a)ピリミジンなどが挙げられる。
【0116】
前記その他添加剤の例としては消泡剤が挙げられ、前記消泡剤としてはシリコーン系反応性添加剤を用いることができ、その例としてTego Rad 2500が挙げられる。
【0117】
一方、前記ホログラム記録媒体は、5μm乃至30μmの厚さでも0.020以上または0.021以上、または0.020乃至0.035の屈折率変調値(n)を実現することができる。
【0118】
また、前記ホログラム記録媒体は、5μm乃至30μmの厚さで50%以上、または85%以上、または85乃至99%の回折効率を実現することができる。
【0119】
前記ホログラム記録媒体を製造するためのフォトポリマー組成物は、これに含まれるそれぞれの成分を均一に混合し、20℃以上の温度で乾燥および硬化を行った後、所定の露光過程を経て全体可視範囲および近紫外線領域(300乃至800nm)での光学的適用のためのホログラムとして製造され得る。
【0120】
前記フォトポリマー組成物中の高分子マトリックスまたはその前駆体を形成する成分をまず均質に混合し、前述したシラン架橋剤を後ほど触媒と共に混合してホログラムの形成過程を準備することができる。
【0121】
前記フォトポリマー組成物は、これに含まれるそれぞれの成分の混合には通常知られた混合器、攪拌機またはミキサーなどを特別な制限なしに用いることができ、前記混合過程での温度は0℃乃至100℃、好ましくは10℃乃至80℃、特に好ましくは20℃乃至60℃であってもよい。
【0122】
一方、前記フォトポリマー組成物中の高分子マトリックスまたはその前駆体を形成する成分をまず均質に混合した後、20℃以上の温度で硬化される液体配合物になることができる。前記硬化の温度は前記フォトポリマーの組成により変わることがあり、例えば30℃乃至180℃の温度で加熱することによって促進される。
【0123】
前記硬化時には前記フォトポリマーが所定の基板やモールドに注入されたりコーティングされた状態であってもよい。
【0124】
一方、前記フォトポリマー組成物から製造されたホログラム記録媒体に視覚的ホログラムの記録する方法は、通常知られた方法を大きい制限なしに用いることができ、後述する実施形態のホログラフィック記録方法で説明する方法を一つの例として採用することができる。
【0125】
一方、発明のまた他の実施形態によれば、可干渉性のレーザにより前記フォトポリマー組成物に含まれている光反応性単量体を選択的に重合させる段階を含む、ホログラフィック記録方法が提供され得る。
【0126】
前述のように、前記フォトポリマー組成物を混合および硬化する過程を通じて視覚的ホログラムが記録されていない状態の媒体を製造することができ、所定の露出過程を通じて前記媒体上に視覚的ホログラムを記録することができる。
【0127】
前記フォトポリマー組成物を混合および硬化する過程を通じて提供される媒体に、通常知られた条件下で公知の装置および方法を利用して視覚的ホログラムを記録することができる。
【0128】
一方、発明のまた他の実施形態によれば、ホログラム記録媒体を含む光学素子が提供され得る。
【0129】
前記光学素子の具体的な例としては、光学レンズ、鏡、偏向鏡、フィルター、拡散スクリーン、回折部材、塗光体、導波管、映写スクリーンおよび/またはマスクの機能を有するホログラフィック光学素子、光メモリシステムの媒質と光拡散板、光波長分割器、反射型、透過型カラーフィルターなどが挙げられる。
【0130】
前記ホログラム記録媒体を含む光学素子の一例としてホログラムディスプレイ装置が挙げられる。
【0131】
前記ホログラムディスプレイ装置は、光源部、入力部、光学系および表示部を含む。前記光源部は、入力部および表示部で物体の3次元映像情報を提供、記録および再生することに使用されるレーザビームを照射する部分である。また、前記入力部は、表示部に記録する物体の3次元映像情報を予め入力する部分であり、例えば、電気駆動液晶SLM(electrically addressed liquid crystal SLM)に空間別光の強さと位相のような物体の3次元情報を入力することができ、この時、入力ビームを用いることができる。前記光学系はミラー、偏光器、ビームスプリッタ、ビームシャッター、レンズなどから構成されてもよく、前記光学系は、光源部で放出されるレーザビームを入力部に送る入力ビーム、表示部に送る記録ビーム、基準ビーム、消去ビーム、読み出しビームなどで分配することができる。
【0132】
前記表示部は、入力部から物体の3次元映像情報を伝達されて光学駆動SLM(opticallya ddressed SLM)からなるホログラムプレートに記録し、物体の3次元映像を再生することができる。この時、入力ビームと基準ビームの干渉を通じて物体の3次元映像情報を記録することができる。前記ホログラムプレートに記録された物体の3次元映像情報は、読み出しビームが生成する回折パターンにより3次元映像として再生され、消去ビームは形成された回折パターンを迅速に除去するために用いることができる。一方、前記ホログラムプレートは3次元映像を入力する位置と再生する位置の間で移動され得る。