【実施例】
【0017】
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0018】
吸着剤1(TG)の作製方法
水酸化ナトリウム水溶液(0.225mol/L、50mL)に、ミモザタンニン(28g)を添加し、24時間撹拌を行なうことで十分に溶解させた。ホルムアルデヒド(37wt%、6mL)を添加し、撹拌しながら室温で1時間予備架橋を行なった。その後、80℃で24時間静置し、ゲル化させた。作製した塊状のゲルを粉砕し、125-250μmにふるい分けし、蒸留水、硝酸(0.05mol/L)、蒸留水で順次洗浄した。ろ別し、-30℃で凍らせた後、凍結乾燥装置により十分に凍結乾燥し、吸着剤1(TG)を得た。
【0019】
吸着剤2(PTG)および吸着剤3(QTG)の作製方法
水酸化ナトリウム水溶液(0.225mol/L、25mL)に、吸着剤2(PTG)ではパインタンニン(14g)を、吸着剤3(QTG)ではケブラチョタンニン(14g)を添加し、24時間撹拌を行なうことで十分に溶解させた。ホルムアルデヒド(37wt%、3mL)を添加し、撹拌しながら室温で1時間予備架橋を行なった。その後、80℃で24時間静置し、ゲル化させた。作製した塊状のゲルを粉砕し、125〜250μmにふるい分けし、蒸留水、硝酸(0.05mol/L)、蒸留水で順次洗浄した。ろ別し、-30℃で凍らせた後、凍結乾燥装置により十分に凍結乾燥し、吸着剤2(PTG)および吸着剤3(QTG)を得た。
【0020】
吸着剤4〜7(TG-A〜D)の作製方法
水酸化ナトリウム水溶液(0.225mol/L、12.5mL)に、産地、採取時期の異なるミモザタンニン(7g)を添加し、24時間撹拌を行なうことで十分に溶解させた。ホルムアルデヒド(37wt%、1.5mL)を添加し、撹拌しながら室温で1時間予備架橋を行なった。その後、80℃で24時間静置し、ゲル化させた。作製した塊状のゲルを粉砕し、125〜250μmにふるい分けし、蒸留水、硝酸(0.05mol/L)、蒸留水で順次洗浄した。ろ別し、-30℃で凍らせた後、凍結乾燥装置により十分に凍結乾燥し、吸着剤4〜7(TG-A〜D)を得た。
【0021】
比較用吸着剤
比較のため吸着試験を行なった吸着剤を表1にまとめる。
【表1】
表1:比較試験用の吸着剤
【0022】
実施例1
ビス[(+)-タルトラト]二アンチモン(III)酸二カリウム三水和物(和光純薬工業社製)を硫酸水溶液に200mg-Sb/Lとなるように溶解し、硫酸濃度200g/Lに調整することで吸着試験水溶液を調製した。この時、銅ありの系では硫酸銅(II)五水和物(和光純薬工業社製)を25g-Cu/Lとなるように添加した。
各吸着試験水溶液5mLに吸着剤1(TG)および比較用吸着剤(R1〜9)を50mg加え、振とうしながら25℃で3日間吸着試験を行なった。その後、溶液を採取し、0.20μmのメンブレンフィルターでろ過し、ICP発光分析装置により水溶液中のアンチモン濃度を測定し、マスバランスからアンチモンの吸着剤に対する吸着率(%)を算出した。各吸着剤によるアンチモンの吸着試験結果を
図1に示す。
銅なしの系では吸着剤1(TG)および比較用吸着剤R6〜9においてアンチモンの吸着が確認された。銅ありの系では銅なしの系と同様に吸着剤1(TG)および比較用吸着剤R6〜8においてアンチモンの吸着が確認されたが、比較用吸着剤R9においては、アンチモンは吸着しないことが明らかとなった。この結果より、吸着剤1(TG)および比較用吸着剤R6〜8によりアンチモンの吸着が可能であることが示唆された。
【0023】
実施例2
硝酸ビスマス(III)五水和物(和光純薬工業社製)を硫酸水溶液に200mg-Bi/Lとなるように溶解し、硫酸濃度200g/Lに調整することで吸着試験水溶液を調製した。この時、銅ありの系では硫酸銅(II)五水和物を25g-Cu/Lとなるように添加した。
各吸着試験水溶液5mLに吸着剤1(TG)および比較用吸着剤(R1〜9)を50mg加え、振とうしながら25℃で3日間吸着試験を行なった。その後、溶液を採取し、0.20μmのメンブレンフィルターでろ過し、ICP発光分析装置により水溶液中のビスマス濃度を測定し、マスバランスからビスマスの吸着剤に対する吸着率(%)を算出した。各吸着剤によるビスマスの吸着試験結果を
図2に示す。
銅なしの系では比較用吸着剤R3、R6〜9においてビスマスの吸着が確認された。銅ありの系では銅なしの系と同様に比較用吸着剤R3、R6〜8においてビスマスの吸着が確認されたが、比較用吸着剤R9ではビスマスの吸着率が著しく低下することが明らかとなった。この結果より、吸着剤1(TG)はビスマスを吸着しないことが明らかとなり、同条件においてはアンチモンが吸着することを鑑みるとアンチモンの選択的な吸着が期待できる。
【0024】
実施例3
ビス[(+)-タルトラト]二アンチモン(III)酸二カリウム三水和物および硝酸ビスマス(III)五水和物を硫酸水溶液に200mg-Sb及び200mg-Bi/Lとなるように溶解し、硫酸銅(II)五水和物を25g-Cu/Lとなるように溶解し、硫酸濃度200g/Lに調整することで吸着試験水溶液を調製した。
吸着試験水溶液5mLに吸着剤1(TG)および比較用吸着剤(R1〜9)を50mg加え、振とうしながら25℃で3日間吸着試験を行なった。その後、溶液を採取し、0.20μmのメンブレンフィルターでろ過し、ICP発光分析装置により水溶液中の金属イオン濃度を測定し、マスバランスからアンチモン、ビスマスおよび銅の吸着剤に対する吸着率(%)を算出した。各吸着剤による吸着試験結果を
図3に示す。
アンチモンおよびビスマスの単独系での試験結果(
図1、2)から示唆されたように、アンチモンでは吸着剤1(TG)および比較用吸着剤R6〜8、ビスマスでは比較用吸着剤R3、R6〜9においてそれぞれ吸着が確認された。この結果より、アンチモンを吸着し、ビスマスを吸着しない、つまりアンチモンを選択的に吸着可能である吸着剤は吸着剤1(TG)だけであることが明らかとなった。
【0025】
実施例4
ビス[(+)-タルトラト]二アンチモン(III)酸二カリウム三水和物を硫酸水溶液に200mg-Sb/Lとなるように溶解し、硫酸銅(II)五水和物を25g-Cu/Lとなるように溶解し、任意の硫酸濃度に調整することで吸着試験水溶液を調製した。
各吸着試験水溶液5mLに吸着剤1(TG)および比較用吸着剤(R6、8)を50mg加え、振とうしながら25℃で3日間吸着試験を行なった。その後、溶液を採取し、0.20μmのメンブレンフィルターでろ過し、ICP発光分析装置により水溶液中のアンチモン濃度を測定し、マスバランスからアンチモンの吸着剤に対する吸着率(%)を算出した。各種吸着剤によるアンチモン吸着の硫酸濃度依存性を
図4に示す。
比較用吸着剤R6では、アンチモン吸着率は硫酸濃度に対して依存性は見られなかった。一方で、吸着剤1(TG)および比較用吸着剤R8では、アンチモン吸着率は硫酸濃度に対して依存性があり、硫酸濃度が高くなるほどアンチモン吸着率は減少した。銅電解液に用いられる硫酸濃度域(2mol/L程度)では吸着剤1(TG)および比較用吸着剤R6、8は高いアンチモン吸着率を有することが明らかとなった。これらの結果より、硫酸濃度依存性が見られた吸着剤1(TG)および比較用吸着剤R8では高濃度硫酸により吸着したアンチモンが脱着可能で、比較用吸着剤R6では硫酸ではアンチモンを脱着できないことが示唆された。
【0026】
実施例5
硝酸ビスマス(III)五水和物を硫酸水溶液に200mg-Bi/Lとなるように溶解し、硫酸銅(II)五水和物を25g-Cu/Lとなるように溶解し、任意の硫酸濃度に調整することで吸着試験水溶液を調製した。
各吸着試験水溶液5mLに吸着剤1(TG)および比較用吸着剤(R6、8)を50mg加え、振とうしながら25℃で3日間吸着試験を行なった。その後、溶液を採取し、0.20μmのメンブレンフィルターでろ過し、ICP発光分析装置により水溶液中のビスマス濃度を測定し、マスバランスからビスマスの吸着剤に対する吸着率(%)を算出した。各種吸着剤によるビスマス吸着の硫酸濃度依存性を
図5に示す。
比較用吸着剤R6、8では、ビスマス吸着率は硫酸濃度に対して依存性があり、硫酸濃度が高くなるほどビスマス吸着率は減少した。特に比較用吸着剤R8で著しい吸着率の減少が確認された。また、吸着剤1(TG)では硫酸濃度に関係なくビスマスの吸着が確認されなかった。
【0027】
実施例6
硫酸銅(II)五水和物を硫酸水溶液に任意の濃度になるように溶解し、硫酸濃度200g/Lに調整することで吸着試験水溶液を調製した。
各吸着試験水溶液5mLに吸着剤1(TG)および比較用吸着剤(R6、8)を50mg加え、振とうしながら25℃で3日間吸着試験を行なった。その後、溶液を採取し、0.20μmのメンブレンフィルターでろ過し、ICP発光分析装置により水溶液中の銅濃度を測定し、マスバランスから銅の吸着剤に対する吸着量(mmol/g)を算出した。各種吸着剤による銅の吸着等温線を
図6に示す。
吸着剤1(TG)および比較用吸着剤R6、8において、銅の吸着は確認されなかった。このため、銅電解液から主要金属元素である銅を損失することなく、不純物を除去できることが示唆された。
【0028】
実施例7
ビス[(+)-タルトラト]二アンチモン(III)酸二カリウム三水和物を硫酸水溶液に4mmol/Lとなるように溶解し、硫酸銅(II)五水和物を25g-Cu/Lとなるように溶解し、硫酸鉄(III)n水和物(和光純薬工業社製)を任意の濃度になるように溶解し、硫酸濃度200g/Lに調整することで吸着試験水溶液を調製した。
各吸着試験水溶液5mLに吸着剤1(TG)および比較用吸着剤(R6、8)を50mg加え、振とうしながら25℃で3日間吸着試験を行なった。その後、溶液を採取し、0.20μmのメンブレンフィルターでろ過し、ICP発光分析装置により水溶液中の鉄濃度を測定し、マスバランスから鉄の吸着剤に対する吸着量(mmol/g)を算出した。各種吸着剤による鉄の吸着等温線を
図7に示す。
比較用吸着剤R6においては、3価の鉄の吸着が確認された。一方で、吸着剤1(TG)および比較用吸着剤R8では、3価の鉄を吸着しないことが明らかとなった。このため、吸着剤1(TG)および比較用吸着剤R8では3価の鉄の吸着をさせないように前処理する必要がないことが示唆された。
【0029】
実施例8
ヒ酸(As(V))の系ではヒ酸水素二ナトリウム七水和物(和光純薬工業社製)、亜ヒ酸の系(As(III))では三酸化二ヒ素(Alfa Aesar)を硫酸水溶液に200mg-As/Lとなるように溶解し、硫酸銅(II)五水和物を25g-Cu/Lとなるように溶解し、任意の硫酸濃度に調整することで吸着試験水溶液を調製した。
各吸着試験水溶液5mLに吸着剤1(TG)を50mg加え、振とうしながら25℃で3日間吸着試験を行なった。その後、溶液を採取し、0.20μmのメンブレンフィルターでろ過し、ICP発光分析装置により水溶液中のヒ素濃度を測定し、マスバランスからヒ素の吸着剤に対する吸着率(%)を算出した。各種吸着剤によるヒ素吸着の硫酸濃度依存性を
図8に示す。
ヒ酸、亜ヒ酸ともに吸着率が硫酸濃度に依存し、アンチモンの吸着傾向とは異なり、硫酸濃度が高くなるほど、ヒ素吸着率も上昇した。また、銅電解液に用いられる硫酸濃度域(2mol/L程度)ではヒ素の吸着率は低いため、アンチモン脱着・回収時後に不純物除去プロセスを設ける必要がないことが示唆された。
【0030】
実施例9
ビス[(+)-タルトラト]二アンチモン(III)酸二カリウム三水和物を硫酸水溶液に任意の濃度になるように溶解し、硫酸銅(II)五水和物を25g-Cu/Lとなるように溶解し、硫酸濃度200g/Lに調整することで吸着試験水溶液を調製した。
各吸着試験水溶液5mLに吸着剤1(TG)および比較用吸着剤(R6、8)を10〜50mg加え、振とうしながら25、50℃で3日間吸着試験を行なった。その後、溶液を採取し、0.20μmのメンブレンフィルターでろ過し、ICP発光分析装置により水溶液中のアンチモン濃度を測定し、マスバランスからアンチモンの吸着剤に対する吸着量(mmol/g)を算出した。各種吸着剤によるアンチモンの吸着等温線を
図9に示す。
試験温度25℃では、比較用吸着剤R6のアンチモン吸着容量が大きく、吸着剤1(TG)および比較用吸着剤R8の吸着容量は同程度であった。試験温度50℃では、比較用吸着剤R6の吸着等温線は25℃の時と変化なく、吸着容量も大きいことが明らかとなった。また、比較用吸着剤R8の吸着容量は25℃の時と比較すると、著しく低下することが明らかとなった。これは酸による吸着剤の劣化が温度の高い領域では促進されたことが原因であると考えられる。一方、吸着剤1(TG)においてはアンチモンの吸着容量が25℃よりも50℃のほうが高いことが明らかとなった。実操業の銅電解液の温度は50℃程度であることを考慮すると、吸着剤1(TG)および比較用吸着剤R6はアンチモン吸着に使用可能であることが示唆された。
【0031】
実施例10
ビス[(+)-タルトラト]二アンチモン(III)酸二カリウム三水和物を硫酸水溶液に1mmol/Lとなるように溶解し、硫酸濃度200g/Lに調整することで吸着試験水溶液を調製した。この時、銅ありの系では硫酸銅(II)五水和物を25g/Lとなるように添加した。
吸着試験水溶液5mLに吸着剤1(TG)を50mg加え、振とうしながら25℃で吸着試験を行なった。所定の時間後、溶液を採取し、0.20μmのメンブレンフィルターでろ過し、ICP発光分析装置により水溶液中のアンチモン濃度を測定し、マスバランスからアンチモンの吸着剤に対する吸着率(%)を算出した。吸着剤1(TG)によるアンチモンの吸着速度を
図10に示す。
吸着剤1(TG)によるアンチモンの吸着速度は銅の有無には依存せず、同等であった。吸着開始から10分程度でアンチモン吸着率は50%に達し、4時間程度で吸着平衡に至ったことが明らかとなった。
【0032】
実施例11
ビス[(+)-タルトラト]二アンチモン(III)酸二カリウム三水和物を硫酸水溶液に4mmol/Lとなるように溶解し、硫酸銅(II)五水和物を25g-Cu/Lとなるように溶解し、硫酸濃度200g/Lに調整することで吸着試験水溶液を調製した。
吸着試験水溶液60mLに吸着剤1(TG)を0.6g加え、振とうしながら25℃で3日間吸着試験を行なった。その後、溶液を採取し、0.20μmのメンブレンフィルターでろ過し、ICP発光分析装置により水溶液中のアンチモン濃度を測定し、マスバランスからアンチモンの吸着剤に対する吸着量(mmol/g)を算出した。吸着剤1(TG)によるアンチモンの吸着量は0.284mmol/gであった。
上記のアンチモン吸着後の吸着剤1(TG)10mgに脱着液5mL加え、振とうしながら25℃で2日間脱着試験を行なった。その後、溶液を採取し、0.20μmのメンブレンフィルターでろ過し、ICP発光分析装置により水溶液中のアンチモン濃度を測定し、マスバランスからアンチモン脱着率(%)を算出した。なお、脱着液には、任意の濃度に調製した塩酸、硫酸、硝酸を用いた。各種酸によるアンチモンを吸着させた吸着剤1(TG)からのアンチモン脱着試験結果を
図8に示す。
脱着液として各種酸(塩酸、硫酸、硝酸)を用いた系では、脱着液の酸濃度を高くするほどアンチモンの脱着率が上昇することが確認された。特に塩酸では高い脱着率が得られ、4mol/L以上の塩酸では吸着したすべてのアンチモンが定量的に回収できることが明らかとなった。
【0033】
実施例12
ビス[(+)-タルトラト]二アンチモン(III)酸二カリウム三水和物を硫酸水溶液に4mmol/Lとなるように溶解し、硫酸銅(II)五水和物を25g-Cu/Lとなるように溶解し、硫酸濃度200g/Lに調整することで吸着試験水溶液を調製した。
吸着試験水溶液60mLに吸着剤1(TG)を0.6g加え、振とうしながら25℃で3日間吸着試験を行なった。その後、溶液を採取し、0.20μmのメンブレンフィルターでろ過し、ICP発光分析装置により水溶液中のアンチモン濃度を測定し、マスバランスからアンチモンの吸着剤に対する吸着量(mmol/g)を算出した。吸着剤1(TG)によるアンチモンの吸着量は0.284mmol/gであった。
上記のアンチモン吸着後の吸着剤1(TG)10mgに脱着液5mL加え、振とうしながら25℃で2日間脱着試験を行なった。その後、溶液を採取し、0.20μmのメンブレンフィルターでろ過し、ICP発光分析装置により水溶液中のアンチモン濃度を測定し、マスバランスからアンチモン脱着率(%)を算出した。なお、脱着液には、1mol/Lの硫酸水溶液に任意の濃度の塩化ナトリウム水溶液もしくは酒石酸ナトリウムカリウム水溶液を加えたものを用いた。また、添加なしの系では1mol/Lの硫酸水溶液を脱着液として用いた。塩添加によるアンチモンを吸着させた吸着剤1(TG)からのアンチモン脱着試験結果を
図12に示す。
脱着液として酸に塩(塩化ナトリウムおよび酒石酸ナトリウムカリウム)を添加したものを用いた系では、塩を添加していない1mol/Lの硫酸だけでは脱着率が20%程度だったのに対して、塩の添加により脱着率が上昇することが明らかとなった。これらは塩を添加することで、アンチモンと錯体を形成し、吸着剤からの脱着が促進したためであると考えられる。
【0034】
実施例13
ビス[(+)-タルトラト]二アンチモン(III)酸二カリウム三水和物、硝酸ビスマス(III)五水和物硫酸鉄(III)n水和物、三酸化二ヒ素を硫酸水溶液に200mg-Sb、200mg-Bi、200mg-Fe及び200mg-As/Lとなるように溶解し、硫酸銅(II)五水和物を25g-Cu/Lとなるように溶解し、硫酸濃度200g/Lに調整することで吸着試験水溶液を調製した。
内径5mm、長さ10cmのガラスカラムに、吸着剤1(TG)を充填し(カラム体積: 1.96cm
3)、200g/Lの硫酸水溶液を十分に通液させた。その後、吸着剤1(TG)を充填したカラムに吸着試験水溶液を定流量(0.098mL/分、空間速度: 3 h
-1)で通液し、流出液を分取した。その後、洗浄液(200g/L硫酸水溶液)、脱着液(4mol/Lの塩酸水溶液)を順次流し、流出液を分取した。分取した各フラクションについて、ICP発光分析装置により水溶液中の各元素濃度Cを測定した。各元素の初期濃度C
0対する各フラクションにおける各元素の濃度の変化を
図13に示す。
吸着試験溶液を通液後、すぐにビスマス、ヒ素、鉄、銅はカラム内の吸着剤と相互作用せず、流出した。一方、アンチモンはカラム内に保持された。アンチモンが破過した後、4mol/Lの塩酸水溶液の脱着液で吸着した元素を脱着させた。脱着液中にはビスマス、ヒ素、鉄、銅はほとんど含有しておらず、アンチモンのみを選択的に回収することができた。また、回収されたアンチモンは初期濃度の13.3倍に濃縮することができた。この結果より吸着剤を充てんしたカラムに吸着試験水溶液を通液させるだけでアンチモンのみが選択的にカラム内に保持され、酸で容易に脱着・回収できることが明らかとなった。
【0035】
実施例14
ビス[(+)-タルトラト]二アンチモン(III)酸二カリウム三水和物および硝酸ビスマス(III)五水和物を硫酸水溶液に200mg-Sb及び200mg-Bi/Lとなるように溶解し、硫酸銅(II)五水和物を25g-Cu/Lとなるように溶解し、硫酸濃度200g/Lに調整することで吸着試験水溶液を調製した。
各吸着試験水溶液5mLに吸着剤1〜3(TG、PTG、QTG)を50mg加え、振とうしながら25℃で3日間吸着試験を行なった。その後、溶液を採取し、0.20μmのメンブレンフィルターでろ過し、ICP発光分析装置により水溶液中の金属イオン濃度を測定し、マスバランスからアンチモン、ビスマスおよび銅の吸着剤に対する吸着率(%)を算出した。各種タンニン吸着剤によるアンチモンの吸着試験結果を
図14に示す。
吸着剤の原料がパインタンニン(PTG)およびケブラチョタンニン(QTG)であっても、ミモザタンニン(TG)と同様にアンチモンを選択的に吸着することが可能であることが明らかとなった。
【0036】
実施例15
ビス[(+)-タルトラト]二アンチモン(III)酸二カリウム三水和物を硫酸水溶液に任意の濃度になるように溶解し、硫酸銅(II)五水和物を25g-Cu/Lとなるように溶解し、硫酸濃度200g/Lに調整することで吸着試験水溶液を調製した。
各吸着試験水溶液5mLに吸着剤1〜3(TG、PTG、QTG)を10〜50mg加え、振とうしながら25℃で3日間吸着試験を行なった。その後、溶液を採取し、0.20μmのメンブレンフィルターでろ過し、ICP発光分析装置により水溶液中のアンチモン濃度を測定し、マスバランスからアンチモンの吸着剤に対する吸着量(mmol/g)を算出した。各種タンニン吸着剤によるアンチモンの吸着等温線を
図15に示す。
吸着剤2(PTG)および吸着剤3(QTG)によるアンチモンの吸着容量は吸着剤1(TG)と比較して、若干小さくなることが明らかとなった。この吸着容量の違いは、吸着剤乾燥重量当たりの官能基量が異なっていることに起因していると推測される。
【0037】
実施例16
ビス[(+)-タルトラト]二アンチモン(III)酸二カリウム三水和物および硝酸ビスマス(III)五水和物を硫酸水溶液に200mg-Sb及び200mg-Bi/Lとなるように溶解し、硫酸銅(II)五水和物を25g-Cu/Lとなるように溶解し、硫酸濃度200g/Lに調整することで吸着試験水溶液を調製した。
各吸着試験水溶液5mLに吸着剤4〜7(TG-A〜D)を50mg加え、振とうしながら25℃で3日間吸着試験を行なった。その後、溶液を採取し、0.20μmのメンブレンフィルターでろ過し、ICP発光分析装置により水溶液中の金属イオン濃度を測定し、マスバランスからアンチモン、ビスマスおよび銅の吸着剤に対する吸着率(%)を算出した。各種ミモザタンニン吸着剤によるアンチモンの吸着試験結果を
図16に示す。
産地、採取時期の異なるミモザタンニンを用いて作製した各吸着剤はアンチモンを選択的に吸着可能であることが明らかとなった。また、吸着率はバラつきが小さいことが明らかとなった。
【0038】
実施例17
ビス[(+)-タルトラト]二アンチモン(III)酸二カリウム三水和物を硫酸水溶液に任意の濃度になるように溶解し、硫酸銅(II)五水和物を25g-Cu/Lとなるように溶解し、硫酸濃度200g/Lに調整することで吸着試験水溶液を調製した。
各吸着試験水溶液5mLに吸着剤4〜7(TG-A〜D)を10〜50mg加え、振とうしながら25℃で3日間吸着試験を行なった。その後、溶液を採取し、0.20μmのメンブレンフィルターでろ過し、ICP発光分析装置により水溶液中のアンチモン濃度を測定し、マスバランスからアンチモンの吸着剤に対する吸着量(mmol/g)を算出した。各種ミモザタンニン吸着剤によるアンチモンの吸着等温線を
図17に示す。
産地、採取時期の異なるミモザタンニンを用いて作製した各吸着剤によるアンチモン吸着容量はバラつきが小さいことが明らかとなった。