(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記溝に前記ピンを嵌合させて、前記第1筒に対して前記第2筒を光軸方向に相対的に位置決めする、及び/又は、前記第1筒に対する前記第2筒の相対的な回転可能範囲を規制する、
請求項1から9のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、カム筒と固定筒との間に弾性部材を組み込むと、回転の摺動にムラが発生し、レンズの駆動が不安定になるという欠点がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ガタを防止しつつ、スムーズに駆動できるレンズ鏡筒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段は、次のとおりである。
【0007】
(1)嵌合して相対的に回転可能に保持される第1筒及び第2筒と、第1筒の複数箇所に備えられる弾性変形可能な複数のピンと、第2筒の複数箇所に備えられ、複数のピンが嵌合される複数の溝であって、光軸と直交する方向に延びる複数の溝と、を備えたレンズ鏡筒であって、複数のピンは、少なくとも1つの第1ピンと、少なくとも1つの第2ピンと、で構成され、第1ピンは、第1筒及び第2筒に対して径方向外方に向かって外径が縮小するテーパー形状を有し、第1ピンが、溝に嵌合されると、第1ピンの外周面が溝の縁部に押圧当接されて、第1筒を第2筒に対して径方向内方に付勢する、レンズ鏡筒。
【0008】
本態様によれば、第1筒には、弾性変形可能なピンが複数箇所に備えられる。第2筒には、そのピンが嵌合される複数の溝が備えられる。各溝は光軸と直交して配置される。すなわち、回転方向(光軸を中心とする軸周りの方向)に沿って配置される。したがって、溝にピンを嵌合させることにより、第1筒と第2筒との間の光軸方向の位置決めができる。また、溝の長さを規定することにより、回転可能範囲の規制もできる。第1筒に備えられるピンは、少なくとも第1ピン及び第2ピンで構成される。第1ピンは、テーパー形状を有し、第1筒及び第2筒に対して径方向外方(径方向の外側に向かう方向)に向かって外径が縮小する。第1ピンは、その外周面が溝の縁部に押圧当接するように、溝に嵌合される。第1ピンは、弾性変形可能であるため、このように溝に嵌合させると、第1筒を第2筒に対して径方向内方(径方向の内側に向かう方向)に向けて付勢する。これにより、第1筒と第2筒との間に生じるガタを片寄せできる。すなわち、ガタ寄せできる。これにより、第1筒と第2筒との間に生じるガタを除去できる。また、各ピンが嵌合する溝は、回転方向に沿って配置されるため、第1筒と第2筒との間の回転動作を阻害することもない。すなわち、スムーズな回転を確保できる。
【0009】
なお、第2ピンの形状については、通常のピンを使用できる。すなわち、溝に嵌入されることにより、溝の内壁面に当接するピンを使用できる。
【0010】
(2)第1ピンは、第1筒及び第2筒に対して径方向外方に向かって外径が縮小する円弧状のテーパー形状を有する、上記(1)のレンズ鏡筒。
【0011】
本態様によれば、第1ピンが、円弧状のテーパー形状を有する。すなわち、その外周の断面が円弧形状を有する。これにより、第1ピンが溝に対して弾性変形不能に嵌合してしまうのを防止できる(いわゆる、食い付きを防止できる。)。
【0012】
(3)第2ピンは、外周面が外側に向かって円弧状に膨らんだ形状を有する、上記(1)又は(2)のレンズ鏡筒。
【0013】
本態様によれば、第2ピンが、外側に向かって外周面が円弧状に膨らんだ形状を有する。これにより、溝の内壁面に点ないし点に近い状態で当接させることができ、第2ピンにかかる負荷を低減できる。
【0014】
(4)第1ピンは、第1ピン軸部と、第1ピン軸部との間に隙間をもって同心状に配置された環状又は筒状の第1ピン外周部と、第1ピン軸部に対して第1ピン外周部を支持する第1ピン支持部と、を備える上記(1)から(3)のいずれか一のレンズ鏡筒。
【0015】
本態様によれば、第1ピンが、第1ピン軸部と、第1ピン軸部との間に隙間をもって同心状に配置された環状又は筒状の第1ピン外周部と、第1ピン軸部に対して第1ピン外周部を支持する第1ピン支持部と、を備える。これにより、外周部のみを径方向に弾性変形可能に構成できる。
【0016】
(5)第1ピンが、樹脂による一体成形品であり、同軸上に挿通される締結部材によって第1筒に固定される、上記(4)のレンズ鏡筒。
【0017】
本態様によれば、第1ピンが、樹脂による一体成形品で構成される。すなわち、所定の金型を用いて樹脂で射出成形され、一体成形品として構成される。また、同軸上に挿通される締結部材によって第1筒に固定される。これにより、容易に製造できる。
【0018】
(6)第2ピンは、第2ピン軸部と、第2ピン軸部との間に隙間をもって同心状に配置された環状又は筒状の第2ピン外周部と、第2ピン軸部に対して第2ピン外周部を支持する第2ピン支持部と、を備える上記(1)から(5)のいずれか一のレンズ鏡筒。
【0019】
本態様によれば、第2ピンが、第2ピン軸部と、第2ピン軸部との間に隙間をもって同心状に配置された環状又は筒状の第2ピン外周部と、第2ピン軸部に対して第2ピン外周部を支持する第2ピン支持部と、を備える。これにより、外周部のみを径方向に弾性変形可能に構成できる。
【0020】
(7)第2ピンが、樹脂による一体成形品であり、同軸上に挿通される締結部材によって第1筒に固定される、上記(6)のレンズ鏡筒。
【0021】
本態様によれば、第2ピンが、樹脂による一体成形品で構成される。すなわち、所定の金型を用いて樹脂で射出成形され、一体成形品として構成される。また、同軸上に挿通される締結部材によって第1筒に固定される。これにより、容易に製造できる。
【0022】
(8)第1ピンが嵌合される溝は、面取りされた縁部を有する、上記(1)から(7)のいずれか一のレンズ鏡筒。
【0023】
本態様によれば、第1ピンが嵌合される溝の縁部が面取りされる。これにより、第1ピンの外周面を安定して溝の縁部に当接させることができる。
【0024】
(9)第1筒には、3本のピンが等間隔で配置され、3本のピンは、1つが第1ピンで構成され、残りが第2ピンで構成される、上記(1)から(8)のいずれか一のレンズ鏡筒。
【0025】
本態様によれば、第1筒に3本のピンが等間隔で配置される。3本のピンは、1つが第1ピンで構成され、残りが第2ピンで構成される。これにより、安定してガタを除去できる。
【0026】
(10)溝にピンを嵌合させて、第1筒に対して第2筒を光軸方向に相対的に位置決めする、及び/又は、第1筒に対する第2筒の相対的な回転可能範囲を規制する、上記(1)から(9)のいずれか一のレンズ鏡筒。
【0027】
本態様によれば、溝にピンを嵌合させることにより、第1筒に対して第2筒を光軸方向に相対的に位置決めする。又は、溝にピンを嵌合させることにより、第1筒に対する第2筒の相対的な回転可能範囲を規制する。あるいは、その双方を行う。これにより、別途、位置決め手段あるいは回転可能範囲を規制する手段を設ける必要がなくなり、レンズ鏡筒の構成を簡素化できる。
【0028】
(11)第2筒が、固定された第1筒の外周に嵌合し、第1筒の外周を回転可能に保持される、上記(1)から(10)のいずれか一のレンズ鏡筒。
【0029】
本態様によれば、第2筒が、固定された第1筒の外周に嵌合し、第1筒の外周を回転可能に保持される。すなわち、第1筒が、いわゆる固定筒、第2筒が、いわゆる回転筒で構成され、第1筒の外周を第2つ筒が回転可能に保持される。
【0030】
(12)第1筒が直進溝を備えた固定筒であり、第2筒がカム溝を備えたカム筒である、上記(11)のレンズ鏡筒。
【0031】
本態様によれば、第1筒が直進溝を備えた固定筒で構成され、第2筒がカム溝を備えたカム筒で構成される。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、ガタを防止しつつ、スムーズに駆動できる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、添付図面に従って本発明を実施するための好ましい形態について詳説する。
【0035】
ここでは、本発明をレンズ交換式カメラの交換レンズに適用した場合を例に説明する。特に、カム機構によってレンズ群を移動させてズームする機能を備えた交換レンズに本発明を適用した場合を例に説明する。
【0036】
[交換レンズの構成]
図1及び
図2は、本発明が適用された交換レンズの概略構成を示す断面図である。
図1は、広角端の状態を示しており、
図2は、望遠端の状態を示している。
【0037】
交換レンズ1は、そのレンズ鏡筒10の基端部(像側の端部)にマウント12を備える。交換レンズ1は、マウント12を介して、カメラ本体に着脱自在に装着される。レンズ鏡筒10の内部には、複数のレンズ群が配置される。
【0038】
《レンズ構成》
図3は、変倍操作した場合の各レンズ群の移動状態を示す図である。同図(A)は、広角端でのレンズ配置を示しており、同図(B)は望遠端でのレンズ配置を示している。
【0039】
レンズ鏡筒10は、その内部に物体側から順に第1レンズ群G1、第2レンズ群G2、第3レンズ群G3、第4レンズ群G4及び第5レンズ群G5を備える。各レンズ群は、少なくとも1枚のレンズで構成される。また、各レンズ群は、光軸Zに沿って配置される。
【0040】
第1レンズ群G1から第5レンズ群のうち、第1レンズ群G1、第2レンズ群G2、第3レンズ群G3及び第4レンズ群G4は、変倍に際して移動するレンズ群である。一方、第5レンズ群G5は、変倍に際して固定のレンズ群である。
【0041】
第2レンズ群G2は、物体側から順に第2レンズ群前群G2a及び第2レンズ群後群G2bを備える。第2レンズ群後群G2bはフォーカスレンズ群を構成し、独立して移動する。第2レンズ群後群G2bを光軸Zに沿って移動させることにより、フォーカシングされる。
【0042】
第3レンズ群G3は、絞りStを含む。絞りStは、たとえば、虹彩絞りで構成される。絞りStの開口量を調整することにより、光量が調整される。
【0043】
《鏡筒の構成》
レンズ鏡筒10は、固定筒20、カム筒30、移動筒40及び外装筒50を備える。また、レンズ鏡筒10は、第1レンズ群G1を保持する第1レンズ保持枠LF1、第2レンズ群G2を保持する第2レンズ保持枠LF2、第3レンズ群G3を保持する第3レンズ保持枠LF3、第4レンズ群G4を保持する第4レンズ保持枠LF4及び第5レンズ群G5を保持する第5レンズ保持枠LF5を備える。
【0044】
固定筒20、カム筒30及び移動筒40は、内側から固定筒20、カム筒30、移動筒40の順で嵌合されて、多重構造の筒体を構成する。具体的には、固定筒20の外周にカム筒30が嵌合され、カム筒30の外周に移動筒40が嵌合されて、多重構造の筒体を構成する。
【0045】
〈固定筒〉
固定筒20は、円筒状の筒体で構成され、たとえば、アルミ等の金属で構成される。固定筒20は、その基端部(像側の端部)にマウント12を備える。したがって、交換レンズ1をカメラ本体に装着すると、固定筒20はカメラ本体に固定される。固定筒20には、光軸Zに沿って延びる複数の直進溝が備えられる。
【0046】
〈カム筒〉
カム筒30は、円筒状の筒体で構成され、たとえば、アルミ等の金属で構成される。カム筒30は、固定筒20の外周に嵌合されることにより、固定筒20の外周を周方向に回転自在に保持される。固定筒20は第1筒の一例であり、カム筒30は第2筒の一例である。カム筒30には、複数のカム溝が備えられる。なお、便宜上、
図1及び
図2には、1つのカム溝(移動筒40を駆動する第1カム溝30A)のみを図示している。
【0047】
カム筒30には、カム筒30を固定筒20に対して光軸方向に位置決めし、かつ、固定筒20との間のガタを除去する機構が備えられる。この機能については、後述する。
【0048】
〈移動筒〉
移動筒40は、円筒状の筒体で構成される。移動筒40は、カム筒30の外周に嵌合されることにより、固定筒20の外周を光軸に沿って移動自在に保持される。移動筒40を移動させる機構については、後述する。
【0049】
〈外装筒〉
外装筒50は、円筒状の筒体で構成される。外装筒50は、交換レンズ1の外装を構成する。外装筒50は、その基端部において、固定筒20に固定される。したがって、交換レンズ1をカメラ本体に装着すると、外装筒50もカメラ本体に固定される。
【0050】
外装筒50には、ズームの操作手段としてズームリング52が備えられる。ズームリング52は、外装筒50の外周を周方向に回転自在に設けられる。ズームリング52は、図示しない連結部材を介してカム筒30と連結され、その回転がカム筒30に伝達される。したがって、ズームリング52を回転させると、カム筒30が回転する。
【0051】
また、外装筒50には、フォーカスの操作手段としてフォーカスリング54が備えられる。フォーカスリング54は、外装筒50の外周を周方向に回転自在に設けられる。フォーカスリング54は、図示しないセンサによって、その回転量が検出される。
【0052】
〈第1レンズ保持枠〉
第1レンズ保持枠LF1は、円筒状の筒体で構成される。第1レンズ保持枠LF1は、その内周部の同軸上に第1レンズ群G1を保持する。
【0053】
第1レンズ保持枠LF1は、移動筒40の内周部の同軸上に配置され、移動筒40に一体的に保持される。したがって、移動筒40と共に移動する。第1レンズ保持枠LF1は、移動筒40の先端部(物体側の端部)に保持される。
【0054】
〈第2レンズ保持枠〉
第2レンズ保持枠LF2は、円筒状の筒体で構成される。第2レンズ保持枠LF2は、その内周部の同軸上に第2レンズ群G2を保持する。
【0055】
上記のように、第2レンズ群G2は、第2レンズ群前群G2a及び第2レンズ群後群G2bを備える。第2レンズ群前群G2aは、第2レンズ保持枠LF2の同軸上に一体的に保持される。一方、第2レンズ群後群G2bは、第2レンズ保持枠LF2の内周に備えられた一対のガイドシャフトGSを移動自在に支持される。一対のガイドシャフトGSは、光軸Zに沿って配置される。これにより、第2レンズ群後群G2bが独立して移動自在に保持される。第2レンズ保持枠LF2には、第2レンズ群後群G2bの駆動手段として、図示しないリニアモータが備えられる。第2レンズ群後群G2bは、このリニアモータに駆動されて移動する。
【0056】
第2レンズ保持枠LF2は、固定筒20の内周部の同軸に配置される。第2レンズ保持枠LF2は、固定筒20の内周部を光軸Zに沿って移動自在に保持される。第2レンズ保持枠LF2を移動させる機構については、後述する。
【0057】
〈第3レンズ保持枠〉
第3レンズ保持枠LF3は、円筒状の筒体で構成される。第3レンズ保持枠LF3は、その内周部の同軸上に第3レンズ群G3を保持する。また、第3レンズ保持枠LF3は、その内周部の同軸上に絞りユニットSUを保持する。
【0058】
第3レンズ保持枠LF3は、固定筒20の内周部の同軸に配置される。第3レンズ保持枠LF3は、固定筒20の内周部を光軸Zに沿って移動自在に保持される。第3レンズ保持枠LF3を移動させる機構については、後述する。
【0059】
〈第4レンズ保持枠〉
第4レンズ保持枠LF4は、円筒状の筒体で構成される。第4レンズ保持枠LF4は、その内周部の同軸上に第4レンズ群G4を保持する。
【0060】
第4レンズ保持枠LF4は、固定筒20の内周部の同軸に配置される。第4レンズ保持枠LF4は、固定筒20の内周部を光軸Zに沿って移動自在に保持される。第4レンズ保持枠LF4を移動させる機構については、後述する。
【0061】
〈第5レンズ保持枠〉
第5レンズ保持枠LF5は、円筒状の筒体で構成される。第5レンズ保持枠LF5は、その内周部の同軸上に第5レンズ群G5を保持する。
【0062】
第5レンズ保持枠LF5は、固定筒20の内周部の同軸に配置される。第5レンズ保持枠LF5は、固定筒20に一体的に保持される。
【0063】
《移動筒の駆動機構》
図4は、
図1の4−4断面図である。
【0064】
移動筒40は、その基端部(像側の端部)の内周に3本の第1カムフォロア60Aを備える。3本の第1カムフォロア60Aは、移動筒40の内周部の同一円周上に配置され、かつ、等間隔に配置される。各第1カムフォロア60Aは、図示しないネジでネジ止めされて、移動筒40に取り付けられる。
【0065】
カム筒30は、所定の軌跡を有する3本の第1カム溝30Aを備える。3本の第1カム溝30Aは、3本の第1カムフォロア60Aに対応して等間隔に配置される。
【0066】
固定筒20は、光軸Zに沿って延びる3本の第1直進溝20Aを備える。3本の第1直進溝20Aは、3本の第1カムフォロア60Aに対応して等間隔に配置される。
【0067】
移動筒40に備えられた3本の第1カムフォロア60Aは、それぞれ3本の第1カム溝30A及び第1直進溝20Aに嵌合される。これにより、カム筒30を回転させると、カムの作用によって、移動筒40が光軸Zに沿って移動する。
【0068】
《第2レンズ保持枠の駆動機構》
図5は、第2レンズ保持枠の駆動に関わる構成の断面図である。また、
図6は、
図5の6−6断面図である。
【0069】
第2レンズ保持枠LF2は、外周部に3本の第2カムフォロア60Bを備える。3本の第2カムフォロア60Bは、第2レンズ保持枠LF2の外周部の同一円周上に配置され、かつ、等間隔に配置される。各第2カムフォロア60Bは、図示しないネジでネジ止めされて、第2レンズ保持枠LF2に取り付けられる。
【0070】
カム筒30は、所定の軌跡を有する3本の第2カム溝30Bを備える。3本の第2カム溝30Bは、3本の第2カムフォロア60Bに対応して等間隔に配置される。なお、
図5には、便宜上、第2カム溝30Bのみを図示している。
【0071】
固定筒20は、光軸Zに沿って延びる3本の第2直進溝20Bを備える。3本の第2直進溝20Bは、3本の第2カムフォロア60Bに対応して等間隔に配置される。
【0072】
第2レンズ保持枠LF2に備えられた3本の第2カムフォロア60Bは、それぞれ3本の第2カム溝30B及び第2直進溝20Bに嵌合される。これにより、カム筒30を回転させると、カムの作用によって、第2レンズ保持枠LF2が光軸Zに沿って移動する。
【0073】
《第3レンズ保持枠及び第4レンズ保持枠の駆動機構》
図7は、第3レンズ保持枠及び第4レンズ保持枠の駆動に関わる構成の断面図である。また、
図8は、
図7の8−8断面図、
図9は、
図7の9−9断面図である。
【0074】
第3レンズ保持枠LF3は、外周部に3本の第3カムフォロア60Cを備える。3本の第3カムフォロア60Cは、第3レンズ保持枠LF3の外周部の同一円周上に配置され、かつ、等間隔に配置される。各第3カムフォロア60Cは、図示しないネジでネジ止めされて、第3レンズ保持枠LF3に取り付けられる。
【0075】
また、第4レンズ保持枠LF4は、外周部に3本の第4カムフォロア60Dを備える。3本の第4カムフォロア60Dは、第4レンズ保持枠LF4の外周部の同一円周上に配置され、かつ、等間隔に配置される。各第4カムフォロア60Dは、図示しないネジでネジ止めされて、第4レンズ保持枠LF4に取り付けられる。
【0076】
カム筒30は、所定の軌跡を有する3本の第3カム溝30C及び第4カム溝30Dを備える。3本の第3カム溝30Cは、3本の第3カムフォロア60Cに対応して等間隔に配置される。また、3本の第4カム溝30Dは、3本の第4カムフォロア60Dに対応して等間隔に配置される。なお、
図5には、便宜上、第3カム溝30C及び第4カム溝30Dのみを図示している。
【0077】
固定筒20は、光軸Zに沿って延びる3本の共通直進溝20CDを備える。3本の共通直進溝20CDは、3本の第3カムフォロア60C及び第4カムフォロア60Dに対応して等間隔に配置される。
【0078】
第3レンズ保持枠LF3に備えられた3本の第3カムフォロア60Cは、それぞれ3本の第3カム溝30C及び共通直進溝20CDに嵌合される。また、第4レンズ保持枠LF4に備えられた3本の第4カムフォロア60Dは、それぞれ3本の第4カム溝30D及び共通直進溝20CDに嵌合される。これにより、カム筒30を回転させると、カムの作用によって、第3レンズ保持枠LF3及び第4レンズ保持枠LF4が光軸Zに沿って移動する。
【0079】
《カム筒の位置決め及びガタの除去機構》
〔カム筒の位置決め及びガタの除去機構の構成〕
上記のように、カム筒30には、カム筒30を固定筒20に対して光軸方向に位置決めし、かつ、固定筒20との間のガタを除去する機構が備えられる。本機構は、固定筒20(第1筒)の複数箇所に備えられる複数本のピン及びカム筒30(第2筒)の複数箇所に備えられる複数本の溝で構成される。
【0080】
図10は、
図5の10−10断面図である。
【0081】
3本のピンは、固定筒20の外周部の同一円周上に配置され、かつ、等間隔で配置される。3本のピンは、形状の異なる2種類のピンで構成される。一方を第1ピン110、他方を第2ピン120とする。本実施の形態のレンズ鏡筒10は、3本のうち1本が第1ピン110、残りが第2ピン120で構成される。
【0082】
3本の溝は、第1ピン110が嵌合する第1溝130及び第2ピン120が嵌合する第2溝140で構成される。第1溝130及び第2溝140は、光軸Zと直交する方向に延びる溝として、カム筒30の周面の同一円周上に一定の間隔で配置される。
【0083】
〔ピン〕
(1)第1ピン
図11は、第1ピンの構成を示す斜視図である。
図12は、第1ピンの構成を示す正面図である。
図13は、第1ピンの構成を示す平面図である。
図14は、第1ピンの構成を示す底面図である。
図15は、
図13の15−15断面図である。
図16は、
図13の16−16断面図である。
【0084】
第1ピン110は、先端(固定筒20及びカム筒30に対して径方向外方の端部)に向かって外径が縮小するテーパー形状を有する。特に、本実施の形態の第1ピン110は、外周の断面が円弧形状を有し、円弧状のテーパー形状を有する。
【0085】
第1ピン110は、第1ピン軸部110aと、その第1ピン軸部110aとの間に隙間をもって同心状に配置された環状の第1ピン外周部110bと、第1ピン軸部110aに対して第1ピン外周部110bを支持する第1ピン支持部110cと、を備える。
【0086】
第1ピン軸部110aは、中空の円柱形状を有し、軸に沿って中空部110fを有する。中空部110fは、第1ピン110を固定筒20にネジで取り付ける際に、ネジの挿通部として機能する。
【0087】
第1ピン軸部110aは、その先端側の端面(上面)に円形の凹部110dを有する。この凹部110dは、第1ピン110を固定筒20にネジで取り付ける際に、そのネジの座部として機能する。また、第1ピン軸部110aは、その基端部側の端面(底面)に位置決め穴110eを有する(
図23参照)。この位置決め穴110eは、第1ピン110を固定筒20に取り付ける際に、固定筒20側に備えられたボス150aが嵌入されて、第1ピン110を位置決めする機能を有する(
図23参照)。
【0088】
第1ピン外周部110bは、第1ピン110の本体を構成する。したがって、その外形は、先端に向かって外径が縮小する円弧状のテーパー形状を有する。第1ピン外周部110bは、弾性変形可能に構成され、第1ピン軸部110aの同心状に配置される。
【0089】
第1ピン支持部110cは、第1ピン外周部110bの内周部において、第1ピン外周部110bを2箇所で支持する。
【0090】
第1ピン110は、所定の金型を用いて樹脂で射出成形され、一体成形品として構成される。たとえば、POM(POM:Polyoxymethylene又はPolyacetal/ポリオキシメチレン又はポリアセタール)によって射出成形され、一体成形品として構成される。第1ピン外周部110bは、樹脂による弾性を利用して、弾性変形可能に構成される。第1ピン110は、第1ピン軸部110aの中空部に締結部材としてのネジが通されて、固定筒20にネジ止めされる。
【0091】
(2)第2ピン
図17は、第2ピンの構成を示す斜視図である。
図18は、第2ピンの構成を示す正面図である。
図19は、第2ピンの構成を示す平面図である。
図20は、第2ピンの構成を示す底面図である。
図21は、
図19の21−21断面図である。
図22は、
図19の22−22断面図である。
【0092】
第2ピン120は、外周面が外側に向かって円弧状に膨らんだ形状(いわゆる樽形状)を有する。第2ピン120は、第2ピン軸部120aと、その第2ピン軸部120aとの間に隙間をもって同心状に配置された環状の第2ピン外周部120bと、第2ピン軸部120aに対して第2ピン外周部120bを支持する第2ピン支持部120cと、を備える。
【0093】
第2ピン軸部120aは、中空の円柱形状を有し、軸に沿って中空部90fを有する。中空部120fは、第2ピン120を固定筒20にネジで取り付ける際に、ネジの挿通部として機能する。
【0094】
第2ピン軸部120aは、その先端側の端面(上面)に円形の凹部120dを有する。この凹部120dは、第2ピン120を固定筒20にネジで取り付ける際に、そのネジの座部として機能する(
図24参照)。また、第2ピン軸部120aは、その基端部側の端面(底面)に位置決め穴120eを有する。この位置決め穴120eは、第2ピン120を固定筒20に取り付ける際に、固定筒20側に備えられたボス160aが嵌入されて、第2ピン120を位置決めする機能を有する(
図24参照)。
【0095】
第2ピン外周部120bは、第2ピン120の本体を構成する。したがって、その外形は、外周面が外側に向かって円弧状に膨らんだ形状(いわゆる樽形状)を有する。第2ピン外周部120bは、弾性変形可能に構成され、第2ピン軸部120aの同心状に配置される。
【0096】
第2ピン支持部120cは、第2ピン外周部120bの内周部において、第2ピン外周部120bを2箇所で支持する。
【0097】
第2ピン120は、所定の金型を用いて樹脂で射出成形され、一体成形品として構成される。たとえば、POMによって射出成形され、一体成形品として構成される。第2ピン外周部120bは、樹脂による弾性を利用して、弾性変形可能に構成される。第2ピン120は、第2ピン軸部120aの中空部に締結部材としてのネジが通されて、固定筒20にネジ止めされる。
【0098】
〔溝〕
(1)第1溝
図23は、第1溝の構成を示す断面図である。同図は光軸Zと平行な断面を示している。
【0099】
同図に示すように、第1溝130は、幅が2段階に切り替わる構造を有し、幅の広い幅広部130aと、幅の狭い嵌合部130bとを有する。幅広部130aは、カム筒30の径方向の内側に位置する。
【0100】
第1溝130は、嵌合部130bが実質的に嵌合用の溝を構成し、幅広部130aは、第1ピン110に対して非接触の領域として構成される。したがって、幅広部130aは、第1ピン110の外径よりも大きな幅を有する。一方、嵌合部130bは、第1ピン110の外径よりも若干狭い幅を有する。したがって、第1ピン110を嵌合部130bに嵌合させると、第1ピン110は弾性変形して嵌合部130bに嵌合する(つぶれ変形して嵌合する。)。
【0101】
第1溝130は、嵌合部130bの縁部(カム筒30の径方向の内側の縁部)130cが面取りされる(いわゆるC面取り)。この縁部130cは、第1ピン110との当接部として機能する。
【0102】
(2)第2溝
図24は、第2溝の構成を示す断面図である。同図は光軸Zと平行な断面を示している。
【0103】
同図に示すように、第2溝140は、一定の幅を有する。第2溝140は、第2ピン120の外径よりも若干狭い幅を有する。したがって、第2ピン120を第2溝140に嵌合させると、第2ピン120は弾性変形して第2溝140に嵌合する(つぶれ変形して嵌合する。)。
【0104】
第2溝140に嵌合した第2ピン120は、その外周面が第2溝140の内壁面140aに押圧当接する。第2ピン120は、外周面が外側に向かって円弧状に膨らんだ形状を有するので、点ないし点に近い状態で第2溝140の内壁面140aに当接する。
【0105】
〔ピンの取り付け〕
(1)第1ピンの取り付け
図23に示すように、固定筒20には、第1ピン110を取り付ける位置に第1ピン取付穴150が備えられる。
【0106】
第1ピン取付穴150は、円形状の凹部で構成され、その内径は、第1ピン110の第1ピン軸部110aの外径と同じ径(あるいは、若干小さい径)を有する。第1ピン110は、その第1ピン軸部110aを第1ピン取付穴150に嵌めることにより、固定筒20に取り付けられる。
【0107】
第1ピン取付穴150は、底部にボス150aを有する。ボス150aは、第1ピン軸部110aの底面に備えられた位置決め穴110eに嵌合する。ボス150aが位置決め穴110eに嵌まるように、第1ピン110を取り付けることにより、第1ピン110が位置決めされる。第1ピン110は、第1溝130に嵌合させた際、その第1ピン支持部110cが第1溝130の幅方向の中央に位置するように位置決めされる。
【0108】
また、第1ピン取付穴150は、底部の中央にネジ穴150bを有する。第1ピン取付穴150に取り付けられた第1ピン110は、そのネジ穴150bに第1ピン固定用ネジ152を螺合させることにより、固定筒20に固定される。第1ピン固定用ネジ152は、第1ピン軸部110aの中空部110fに挿通されて、ネジ穴150bに螺合される。第1ピン固定用ネジ152は、締結部材の一例である。
【0109】
(2)第2ピンの取り付け
図24に示すように、固定筒20には、第2ピン120を取り付ける位置に第2ピン取付穴160が備えられる。
【0110】
第2ピン取付穴160は、円形状の凹部で構成され、その内径は、第2ピン120の第2ピン軸部120aの外径と同じ径(あるいは、若干小さい径)を有する。第2ピン120は、その第2ピン軸部120aを第2ピン取付穴160に嵌めることにより、固定筒20に取り付けられる。
【0111】
第2ピン取付穴160は、底部にボス160aを有する。ボス160aは、第2ピン軸部120aの底面に備えられた位置決め穴120eに嵌合する。ボス160aが位置決め穴120eに嵌まるように、第2ピン120を取り付けることにより、第2ピン120が位置決めされる。第2ピン120は、第2溝140に嵌合させた際、その第2ピン支持部120cが第2溝140の幅方向の中央に位置するように位置決めされる。
【0112】
また、第2ピン取付穴160は、底部の中央にネジ穴160bを有する。第2ピン取付穴160に取り付けられた第2ピン120は、そのネジ穴160bに第2ピン固定用ネジ162を螺合させることにより、固定筒20に固定される。第2ピン固定用ネジ162は、第2ピン軸部120aの中空部120fに挿通されて、ネジ穴160bに螺合される。第2ピン固定用ネジ162は、締結部材の一例である。
【0113】
〈カム筒の位置決め及びガタの除去機構の作用〉
〔位置決めの機能〕
レンズ鏡筒10を組み付けると、第1ピン110が第1溝130に嵌合し、かつ、第2ピン120が第2溝140に嵌合する。
【0114】
第1溝130の嵌合部130bの幅は第1ピン110の外径よりも狭く、また、第2溝140の幅は第2ピン120の外径よりも狭い。このため、第1ピン110を第1溝130の嵌合部130bに嵌合させると、第1ピン110は、その外周面が嵌合部130bの両側の縁部130cに押圧当接する。また、第2ピン120を第2溝140に嵌合させると、第2ピン120は、その外周面が第2溝140の両側の内壁面140aに押圧当接する。これにより、カム筒30が、固定筒20に対して光軸Zに位置決めされる。
【0115】
〔ガタを除去する機能〕
図25は、第1ピンと第1溝との嵌合状態を示す図である。
【0116】
同図に示すように、第1ピン110が第1溝130に嵌合すると、第1ピン110は、その外周部が第1溝130の嵌合部130bの縁部130cに押圧当接する。これにより、第1ピン110は、縁部130cから径方向の内側に向かって力F1を受ける。この力F1は、第1ピン110の外形がテーパー形状であることから、第1ピン110に対して、径方向の力F1a及び軸方向の力F1bとして作用する。径方向の力F1aは、第1ピン110の外周部を押しつぶす力F1aとして作用する。一方、軸方向の力F1bは、第1ピン110を固定筒20に向けて押し込む力F1bとして作用する。
【0117】
図26は、第2ピンと第2溝との嵌合状態を示す図である。
【0118】
同図に示すように、第2ピン120が第2溝140に嵌合すると、第2ピン120は、その外周部が第2溝140の内壁面140aに押圧当接する。第2溝140の内壁面140aに当接するので、第2ピン120が受ける力F2は、ほぼ径方向の力のみとなる。すなわち、その外周部を押しつぶす力だけとなる。
【0119】
上記のように、第1ピン110は、固定筒20に向けて押し込む力F1bを受ける。第1ピン110及び第2ピン120は、共に弾性変形可能であるため、第1ピン110が固定筒20に向けて押し込む力F1bを受けることにより、固定筒20は、カム筒30に対して相対的に一方向に付勢される。すなわち、第1ピン110が固定筒20に向けて押し込む方向(径方向内方)に付勢される。この結果、固定筒20とカム筒30とが相対的に片寄せされ、その間のガタが除去される。すなわち、ガタ寄せされて、ガタが除去される。
【0120】
[交換レンズの作用]
以上のように構成される本実施の形態の交換レンズ1は、ズームリング52を回転操作することにより、固定筒20に対して、カム筒30が回転する。カム筒30が回転すると、カムの作用によって、移動筒40、第2レンズ保持枠LF2、第3レンズ保持枠LF3及び第4レンズ保持枠LF4が光軸Zに沿って移動する。この結果、第1レンズ群G1、第2レンズ群G2、第3レンズ群G3及び第4レンズ群G4が光軸Zに沿って移動し、焦点距離が変化する。すなわち、ズームする。
【0121】
カム筒30は、固定筒20に嵌合されて、固定筒20の周りを回転可能に保持されるが、カム筒30及び固定筒20は、3本のピン(第1ピン110及び第2ピン120)及び3本の溝(第1溝130及び第2溝140)の作用によって、その間のガタが除去される。これにより、軸ズレ、軸倒れ等の発生を防止できる。
【0122】
また、このガタを除去する機構は、光軸Zと直交する方向に延びる溝とピンとで構成されるため、カム筒30の回転を阻害することもない。これにより、カム筒30の回転をスムーズにでき、ズームリング52の操作感を良好にできる。また、カム筒30をモータ等で駆動する場合には、その駆動を安定化でき、精度よく駆動を制御できる。
【0123】
また、ピンが溝を摺動する構成であるため、ゴミの発生、異音の発生等も防止できる。
【0124】
更に、このガタを除去する機構は、位置決めの機能も兼ねているため、別途、位置決めの機構を備える必要がない。これにより、全体の構成を簡素化できる。
【0125】
[変形例]
《第1ピンの変形例》
図27は、第1ピンの他の一例を示す図である。
【0126】
同図に示す第1ピン110は、外周部の形状を円錐台形状としたものである。すなわち、外周部の径が、先端に向かって直線状に縮小する形状としたものである。このように、第1ピン110は、先端に向かって外径が縮小するテーパー形状を有していればよい。
【0127】
なお、上記実施の形態のように、円弧状のテーパー形状とすることにより、第1ピン110が、第1溝130に対して弾性変形不能に嵌合してしまうのを防止できる。すなわち、ピンの食い付きを防止できる。
【0128】
また、
図27に示すように、第1ピン110と第1溝130との当接部である幅広部130aの縁部130cは、必ずしも面取りする必要はない。面取りした場合には、第1ピン110を安定して第1ピン110に嵌合させることができる。
【0129】
また、第1ピン110の外周部の形状、すなわち、第1ピン外周部110bの形状は、嵌合させる第1溝130の深さ(カム筒30の厚さ)等に応じて軸方向に伸びた形状、すなわち、筒状としてもよい。
【0130】
また、上記実施の形態では、固定筒20の備えられた第1ピン取付穴150に第1ピン軸部110aを嵌めて、第1ピン110を固定筒20に取り付ける構造としているが、第1ピン110を固定筒20に取り付ける構造は、これに限定されるものではない。この他、たとえば、固定筒20に凸部を設け、かつ、第1ピン軸部110aの底面に凹部を設け、固定筒20の凸部を第1ピン軸部110aの凹部に嵌合させて、第1ピン110を固定筒20に取り付ける構造としてもよい。
【0131】
《第2ピンの変形例》
第2ピン120は、その外周面が第2溝140の内壁面140aに押圧当接した状態で第2溝140に嵌合できる形状であればよい。すなわち、第2ピン120については、一般的な形状のピンを採用できる。
【0132】
図28は、第2ピンの他の一例を示す図である。
【0133】
同図に示す第2ピン120は、外径が一定のピンである。本構成の第2ピン120は、第2溝140に嵌合されることにより、その外周面が第2溝140の内壁面140aに線接触する。
【0134】
また、第2ピン120の外周部の形状、すなわち、第2ピン外周部120bの形状は、嵌合させる第2溝140の深さ(カム筒30の厚さ)等に応じて軸方向に伸びた形状、すなわち、筒状としてもよい。
【0135】
また、上記実施の形態では、固定筒20の備えられた第2ピン取付穴160に第1ピン軸部120aを嵌めて、第2ピン120を固定筒20に取り付ける構造としているが、第2ピン120を固定筒20に取り付ける構造は、これに限定されるものではない。この他、たとえば、固定筒20に凸部を設け、かつ、第2ピン軸部120aの底面に凹部を設け、固定筒20の凸部を第2ピン軸部120aの凹部に嵌合させて、第1ピン120を固定筒20に取り付ける構造としてもよい。
【0136】
《ピンの数及びレイアウト》
上記実施の形態では、3本のピン及び3本の溝を用いて、固定筒20とカム筒30との間のガタを取り除く構成としているが、ピン及び溝の数は、これに限定されるものではない。少なくとも2本のピン及び2本の溝で構成することができる。
【0137】
図29は、2本のピン及び2本の溝で固定筒とカム筒との間のガタを除去する機構の構成を示す断面図である。
【0138】
2本のピンは、一方が第1ピン110、他方が第2ピン120で構成される。同様に、2本の溝は、一方が第1溝130、他方が第2溝140で構成される。第1ピン110及び第2ピン120は、互いに対向する位置に配置される。これにより、固定筒20をカム筒30に対して相対的に一方向に付勢でき、固定筒20とカム筒30との間のガタを除去できる。
【0139】
このように、ピン及び溝は、少なくとも第1ピン及び第2ピンを1本ずつ含む少なくとも2本のピンと、そのピンの構成に対応した少なくとも2本の溝で構成できる。
【0140】
複数のピン及び溝は、等間隔又は等間隔に近い状態で配置することが好ましい。これにより、固定筒20に対してカム筒30を安定して保持できる。
【0141】
《溝の機能》
上記実施の形態では、ピンと溝によってカム筒30を光軸方向に位置決めする構成としているが、ピンと溝によって、カム筒30の回転可能範囲を規制する構成としてもよい。また、その双方の機能を実現するように構成してもよい。
【0142】
ピンと溝によって、カム筒30の回転可能範囲を規制する場合は、溝の長さをカム筒30の可動範囲に対応した長さで構成する。たとえば、カム筒30の回転可能範囲を60°とする場合、60°に対応した角度範囲で溝を配置する。カム筒30は、ピンが溝の端部に当接することにより、回転が規制される。
【0143】
《第1筒及び第2筒の構成》
上記実施の形態では、第1筒を固定筒20、第2筒をカム筒30とする例で説明したが、第1筒及び第2筒の構成は、これに限定されるものではない。相対的に回転する関係のものであれば、他の構成のレンズ鏡筒にも本発明は適用できる。
【0144】
《その他のレンズ鏡筒への適用》
上記実施の形態では、本発明をレンズ交換式カメラの交換レンズのレンズ鏡筒に適用した場合を例に説明したが、本発明の適用は、これに限定されるものではない。いわゆるレンズ一体式のカメラに組み込まれたレンズ装置のレンズ鏡筒にも同様に適用できる。また、プロジェクタ、顕微鏡、望遠鏡、双眼鏡等のカメラ以外の光学機器のレンズ鏡筒にも適用できる。
【0145】
また、上記実施の形態では、ズーム用のレンズ群をカム機構によって移動させるレンズ鏡筒に本発明を適用した場合を例に説明したが、フォーカス用のレンズ群をカム機構によって移動させるレンズ鏡筒にも同様に本発明を適用することができる。
【0146】
また、カム筒(回転筒)を回転させる手段は、手動に限らず、モータであってもよい。