【文献】
丹羽 一輝,”災害情報収集・活用システムの開発について”,モバイル’16 研究論文集,特定非営利活動法人モバイル学会,2016年 3月10日,p.35-40
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された被害調査システムでは、被災地域で調査を行う調査担当者は、建物の被害の程度(全壊、半壊など)を判定できる知識を持った者でなければならない。そのため、大規模な災害が発生し、調査対象となる建物の数が膨大になった場合には、被災建物の数に対して調査担当者の人数が不足し、迅速な調査を実施することが困難となる。その結果、迅速な罹災証明書の発行も困難となる。
【0007】
本発明は、上述の問題を解決するために創案されたものであり、被災物の被害の程度を判定できる知識を持たない者でも、被災地域において被災物の被害の程度を認定するために必要な情報を収集でき、その情報を被災していない場所に送ることのできる被害調査システム及びその使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る被害調査システムは、被災物に関する情報を収集管理する管理サーバ装置と、表示手段および写真撮影手段を有し、前記管理サーバ装置にネットワークを介して接続される携帯端末装置と、を含んで構成されるものであって、前記携帯端末装置において被災物の被害の程度の判断基準を指定する判断基準指定手段と、撮影された写真の画像データと、指定された被災物の被害の程度の判断基準とを含む被災物情報を前記携帯端末装置から前記管理サーバ装置に送信する被災物情報送信手段と、を備える、ことを特徴としている。
【0009】
かかる構成を備える被害調査システムによれば、被災物の被害の程度を判定できる知識を持たない者でも、前記判断基準指定手段にて被災物が該当すると思われる被害の程度の判断基準を指定し、前記写真撮影手段にて被災物の写真を撮影し、前記被災物情報送信手段にて被災物情報を管理サーバ装置に送信することにより、管理サーバ装置において被災物の被害の程度を認定するために必要な情報を収集することができる。
【0010】
好ましくは、前記構成を備える被害調査システムにおいて、前記判断基準指定手段による被災物の被害の程度の判断基準の指定は、ユーザの選択操作により指定されるもの、とする。
【0011】
好ましくは、前記構成を備える被害調査システムにおいて、携帯端末装置のユーザの数値入力操作により入力された数値に基づいて被災物の被害の程度を判定する被害程度判定手段を備え、前記被災物情報送信手段により送信される被災物情報に、前記判定の結果が更に含まれる、ものとする。
【0012】
好ましくは、前記構成を備える被害調査システムにおいて、被災物の被害の程度の判断基準に対応付けて「写真撮影に関する助言」を、管理サーバ装置又は携帯端末装置において記憶する撮影助言記憶手段と、前記判断基準指定手段により指定された被災物の被害の程度の判断基準に対応付けられた「写真撮影に関する助言」を、携帯端末装置のユーザに知らせる撮影方法助言手段と、を備える、ものとする。
【0013】
好ましくは、前記構成を備える被害調査システムにおいて、前記携帯端末装置において前記写真撮影手段により写真が撮影された場所の位置情報を取得する位置情報取得手段をさらに備え、前記被災物情報送信手段により送信される被災物情報に、前記写真が撮影された場所の位置情報が更に含まれる、ものとする。
【0014】
好ましくは、前記構成を備える被害調査システムにおいて、前記携帯端末装置において被災物の所有者情報を入力する所有者情報入力手段をさらに備え、前記被災物情報送信手段により送信される被災物情報に、前記被災物の所有者情報が更に含まれる、ものとする。
【0015】
好ましくは、前記構成を備える被害調査システムにおいて、前記管理サーバ装置又は前記管理サーバ装置に接続された他の端末装置において、前記管理サーバ装置が前記携帯端末装置から受信した被災物情報を表示させる被災物情報表示手段と、前記被災物情報表示手段により表示させた画面上で被災物情報に関する指摘事項を文字入力可能な指摘事項入力手段と、文字入力された前記指摘事項を当該被災物情報の送信元に通知する指摘事項通知手段と、を備える、ものとする。
【0016】
好ましくは、前記構成を備える被害調査システムにおいて、前記管理サーバ装置において被災物のサンプル画像を複数記憶するサンプル画像記憶手段と、前記複数のサンプル画像から1又は複数のサンプル画像の選択を受け付け、前記指摘事項通知手段により通知される指摘事項に添付するサンプル画像添付手段と、を備える、ものとする。
【0017】
好ましくは、前記構成を備える被害調査システムにおいて、前記管理サーバ装置又は前記管理サーバ装置に接続された他の端末装置において、前記携帯端末装置から受信した被災物情報に含まれる被災物の写真画像を前記指摘事項通知手段により通知される指摘事項に添付する被災物写真添付手段を備える、ものとする。
【0018】
好ましくは、前記構成を備える被害調査システムにおいて、前記サンプル画像添付手段又は被災物写真添付手段により指摘事項に添付されるサンプル画像又は被災物写真に手書入力するための手書入力手段を備える、ものとする。
【0019】
好ましくは、前記構成を備える被害調査システムにおいて、前記管理サーバ装置又は前記管理サーバ装置に接続された他の端末装置において地図を出力する地図出力手段と、前記管理サーバ装置又は前記管理サーバ装置に接続された他の端末装置において、前記携帯端末装置から送信された被災物情報に、被害の程度の判定結果を示す情報を付与する判定結果付与手段と、前記地図出力手段により出力される地図上で、前記判定結果が付与された被災物の位置に所定形態の表示を行う被災物位置表示手段と、を備える、ものとする。
【0020】
好ましくは、前記構成を備える被害調査システムにおいて、前記被災物位置表示手段により表示される前記所定形態の表示は、当該被災物の被害の程度の判定結果に応じて異なる色に色分けされている、ものとする。
【0021】
本発明の被害調査システムの使用方法は、前記被害調査システムの使用方法であって、被災物の見本又は模型を所定の場所に配置しておき、前記判断基準指定手段により、前記見本又は模型が示す被害の程度の判断基準を指定し、前記携帯端末装置の写真撮影手段により前記見本又は模型を撮影して得られる写真の画像データと、前記判断基準指定手段により指定された被害の程度の判断基準とを含む被災物情報を、前記被災物情報送信手段により、前記管理サーバ装置に送信する、ことを特徴とするものである。
【0022】
かかる構成を備える被害調査システムの使用方法によれば、被災物の見本又は模型を実際の被災物と想定して被害調査システムを使用することにより、被害調査システムの使用を体験学習することができるので、実際の災害発生時に被害調査システムを正しく使用することができる者を養成することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の被害調査システムによれば、被災物の被害の程度を判定できる知識を持たない者でも、携帯端末装置を使用して被災地域において被災物の被害の程度を認定するために必要な情報を収集でき、管理サーバ装置にその情報を送信することができる。
例えば被災地域以外の場所に管理サーバが設置されていれば、その管理サーバに携帯端末装置から被災物の被害の程度を認定するために必要な情報を送信することにより、被災地域以外の場所で、被災物の被害の程度を判定できる知識および権限を持つ者によって被災物の被害の程度を効率的に認定することができ、迅速な罹災証明書の発行が可能となる。
【0024】
本発明の被害調査システムの使用方法によれば、実際の災害発生時に被害調査システムを正しく使用することができる者を養成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態に係る被害調査システムについて、図面を参照しつつ説明する。
【0027】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る被害調査システム1は、防災センター2内に設置された管理サーバ装置3と、この管理サーバ装置3にインターネット等のネットワーク4を介して接続される携帯端末型のクライアント装置(以下「携帯端末装置5」という。)で主に構成される。
図1に示す例では、携帯端末装置5が被災地域6にあり、防災センター2(管理サーバ装置3)は被災地域6から離れた場所にある。
【0028】
管理サーバ装置3は、例えば、コンピュータに所定のプログラムが組み込まれたものからなり、そのプログラムの実行により後述するサービスを提供するサーバとして機能する。
【0029】
管理サーバ装置3は、利用者の識別情報(ID)、認証情報(パスワード)等を事前に登録する利用者登録機能を備えている。本実施形態では、所定の権限を有する者(例えばシステム管理者)が管理サーバ装置3において所定の入力操作を行うことにより上記利用者の識別情報、認証情報等を登録することができる。携帯端末装置5において被害調査アプリケーションプログラム(以下「被害調査アプリ」ともいう。)を起動し、起動画面で管理サーバ装置3に登録されている識別情報および認証情報を入力し、認証処理をパスすることで当該携帯端末装置5は管理サーバ装置3に対してサービス利用可能に接続される。
【0030】
携帯端末装置5は、液晶モニタ等からなる表示機能、タッチパネルや物理キー等からなる情報入力機能、写真撮影機能などを備えている。本実施形態では、携帯端末装置5として、「被害調査アプリ」をインストールしたスマートフォンを例示する。携帯端末装置5は、「被害調査アプリ」の実行により、後述する管理サーバ装置3が提供するサービスを受ける。なお、携帯端末装置5に「被害調査アプリ」をインストールする代わりに、携帯端末装置5に組み込まれたブラウザを通じて後述する管理サーバ装置3が提供するサービスを受けるようにしてもよい。
【0031】
携帯端末装置5は、位置情報取得機能、所有者情報入力機能、判断基準指定機能、撮影方法助言機能、被災物情報送信機能等を備えている。各機能について、以下に詳述する。
【0032】
位置情報取得機能は、例えばGPS機能であり、この機能により取得された位置情報(GPSデータ)は、写真撮影により取得した写真データに埋め込まれる。撮影した写真データには、少なくとも、上記位置情報として緯度・緯度の情報が埋め込まれる。なお、位置情報取得機能は上記のものに限定されず、写真撮影された場所の位置情報を取得できるものであればよい。例えば、携帯端末装置5において、写真撮影の際に、地図を表示し、その地図上の特定の場所をユーザに選択(タッチ)させることにより、選択された場所を写真撮影された場所の位置情報とするものとしてもよい。あるいは、携帯端末装置5において、写真撮影の際に、ユーザに住所の入力を要求する表示を行い、ユーザが入力した住所を写真撮影された場所の位置情報とするものとしてもよい。
【0033】
所有者情報入力機能は、被災物の所有者の情報を入力する機能である。被災物の所有者の情報は、氏名、住所、連絡先、個人番号、被災物の固定資産識別情報(例えば固定資産納税通知書に記載される所有者コード)などが挙げられる。なお、本機能による所有者情報は、事前入力が可能である。事前入力された所有者情報は、携帯端末装置5の記憶部又は管理サーバ装置3に記憶され、後述する写真データのアップロード(送信)の際に読み出されて、写真データ等とともに管理サーバ装置3へアップロードされる。
【0034】
判断基準指定機能は、ユーザが基準を満たしていると考える被災物の被害の程度の判断基準を選択操作により指定するものである。ここで選択指定される被災物の被害の程度の判断基準には、罹災証明書を発行する地方公共団体等が被害の程度(全壊、大規模半壊、半壊等)を認定する際に使用する判断基準が適用される。例えば
図2に示すように、携帯端末装置5の画面に被害の程度の判断基準を表示するボタン7〜9と、何れの被害の程度の判断基準にも該当しない場合に選択すべきボタン10を用意し、ユーザにより何れかのボタン7〜9が選択(タッチ)されると、選択されたボタン7〜9に表示されている被害の程度の判断基準が指定される。一方、ボタン10が選択された場合は、更に詳細に各種情報を入力することにより、被害の程度の判断基準を選択操作により指定する画面(例えば後述する
図12等)が表示される。指定された被災物の被害の程度の判断基準の情報は、後述する写真データ等のアップロード操作により、管理サーバ装置3へアップロードされる。
【0035】
撮影方法助言機能は、被災物が指定された被害の程度の判断基準を満たしているか否かを判定するために必要な写真の撮影に関する助言を文字情報の表示によりユーザに知らせるものである。携帯端末装置5又は管理サーバ装置3には、各被害の程度の判断基準に対応付けて「写真撮影に関する助言」が記憶されている。被災物を写真撮影する際に、指定された被災物の被害の程度の判断基準に対応する「写真撮影に関する助言」が携帯端末装置5の記憶部又は管理サーバ装置3から読み出され、例えば
図3に示すように、携帯端末装置5の画面に、「写真撮影に関する助言」12を表示する。なお、本実施形態では、「写真撮影に関する助言」は、文字情報の表示によりユーザに知らされるが、文字情報の表示に代えて、又は文字情報の表示とともに、携帯端末装置5における音声ガイダンスの実行によりユーザに知らされてもよい。
【0036】
被災物情報送信機能は、撮影して得られた写真データ、撮影された場所の位置情報、所有者情報入力機能により入力された被災物の所有者情報、前記判断基準指定手段により指定された被災物の被害の程度の判断基準などを1件の被災物の情報(例えば、1件の被災物に係る情報として互いに紐付された情報)として管理サーバ装置3に送信するものである。
【0037】
次に、管理サーバ装置3が持つ機能について説明する。管理サーバ装置3は、前記した利用者登録機能のほか、被災物情報表示機能、指摘事項通知機能、サンプル画像添付機能、被災物写真添付機能、手書入力機能、判定結果付与機能、地図表示機能、被災物位置表示機能等を備えている。各機能について、以下に詳述する。
【0038】
被災物情報表示機能は、管理サーバ装置3の表示装置又は管理サーバ装置3に接続された端末装置(前記携帯端末装置5以外の端末装置;以下同じ。)の表示装置において、携帯端末装置5からアップロードされた被災物の情報(被災物の所有者情報、被災物の写真画像、被災物の被害の程度の判断基準、被災物の位置情報等)を表示する機能である。
【0039】
指摘事項通知機能は、携帯端末装置5からアップロードされた被災物情報について指摘事項があれば、管理サーバ装置3又は管理サーバ装置3に接続された端末装置において、被災物情報を表示させた画面上で、被災物情報に関する指摘事項を文字入力することにより、当該被災物情報の送信元に指摘事項を通知する機能である。例えば
図4に示すように、被災物の情報(被災物の所有者情報、被災物の写真画像、被災物の被害の程度の判断基準、被災物の位置情報等)、指摘事項入力欄37を表示する指示書作成画面38を、管理サーバ装置3又は管理サーバ装置3に接続された端末装置において表示させ、ユーザが入力操作により指摘事項入力欄37に指摘事項を入力し、通知ボタン39を選択することで、当該被災物情報の送信元の携帯端末装置5へ指摘事項を通知することができる。本機能により、もし、被災物情報に含まれる被災物の写真の撮り方に問題があり、指定された被害の程度の判断基準を満たしているか否かを判断できない場合や、写真の撮り方に問題は無いものの、指定された被害の程度の判断基準を満たしていないと判断した場合などに、その旨を被災物情報の送信元に対して通知することができる。なお、本実施形態では、指摘事項入力欄37に指摘事項を入力した後、通知ボタン39を選択することで、指摘事項を含む指示書データが管理サーバ装置3に保存され、その後、当該被災物情報の送信元の携帯端末装置5が管理サーバ装置3に接続(ログイン)されたときに、その携帯端末装置5において上記指示書データ(指摘事項を含む指示書)が閲覧可能となる。
【0040】
サンプル画像付加機能は、上記指摘事項にサンプル画像を添付する機能である。サンプル画像は、管理サーバ装置3に多数記憶されており、管理サーバ装置3の画面上又は管理サーバ装置3に接続された端末装置の画面上での操作により、1又は複数のサンプル画像を選ぶことができる。サンプル画像は、被害の程度の判断基準ごとに1又は複数用意されている。管理サーバ装置3側のユーザ(被災物の被害の程度を認定する人)は、被災物の写真の撮り方に問題がある場合に、参考になりそうなサンプル画像を選んで指摘事項に添付することができる。そうすることで、被災物の写真の送信元に対して、好ましい写真の撮り方を的確に伝えることができる。本実施形態では、
図4に示す指示書作成画面38において、左欄に多数用意されているサンプル画像41をサンプル画像貼付欄42へドラッグ&ドロップ操作することで、指摘事項にサンプル画像41を添付できる。このように指摘事項入力欄37に指摘事項を入力し、サンプル画像貼り付け欄42にサンプル画像を貼り付けた後、通知ボタン39を選択することで、指摘事項およびサンプル画像を含む指示書データが管理サーバ装置3に保存され、その後、当該被災物情報の送信元の携帯端末装置5が管理サーバ装置3に接続(ログイン)されたときに、その携帯端末装置5において上記指示書データ(指摘事項およびサンプル画像を含む指示書)が閲覧可能となる。
【0041】
被災物写真添付機能は、上記指摘事項に被災物写真画像(携帯端末装置5から送られてきた被災物の写真画像)を添付する機能である。管理サーバ装置3側のユーザ(被災物の被害の程度を認定する人)は、被災物の写真の撮り方に問題がある場合に、被災物の写真画像を指摘事項に添付することで、被災物の写真画像を参照しながら指摘事項を記載することができ、指摘事項を通知される者は、指摘事項に被災物の写真画像が添付されていることで、当該指摘事項を理解しやすくなる。本実施形態では、
図4に示す指示書作成画面38において、被災物の写真画像43を画像貼付欄44へドラッグ&ドロップ操作することで、指摘事項に被災物の写真画像43を添付できるようになっている。このように指摘事項入力欄37に指摘事項を入力し、被災物の写真画像43を画像貼付欄44にサンプル画像を貼り付けた後(必要に応じてサンプル画像41も画像貼付欄42に貼り付けた後)、通知ボタン39を選択することで、指摘事項および被災物の写真画像(サンプル画像)を含む指示書データが管理サーバ装置3に保存され、その後、当該被災物情報の送信元の携帯端末装置5が管理サーバ装置3に接続(ログイン)されたときに、その携帯端末装置5において上記指示書データ(指摘事項および被災物の写真画像(サンプル画像)を含む指示書)が閲覧可能となる。
【0042】
手書入力機能は、上記サンプル画像付加機能、被災物写真添付機能により指摘事項に添付されるサンプル画像41、被災物の写真画像43に対して手書入力するための機能である。本実施形態では、例えば
図4に示す指示書作成画面38の画像貼付欄42,44に貼り付けられた画像にスタイラス等を用いて書き込むことができる機能となっている。もし、被災物の写真の撮り方に問題があって指定された被害の程度の判断基準を満たしているか否かを判断できない場合は、指摘事項に添付する被災物の写真画像に手書入力を行うとともに、指摘事項においてその手書入力部分を参照すれば、問題の指摘を分かり易く相手に伝えることができる。例えば、送られてきた被災物の写真画像の問題箇所を手書入力により丸で囲むとともに、「丸で囲んだ部分の拡大写真を撮ってください。」、「丸で囲んだ部分が分かりにくいので、他の角度から丸で囲んだ部分の写真を撮ってください。」等を指摘事項として記載することで、送信元に問題点を的確に伝えることができる。
【0043】
判定結果付与機能は、管理サーバ装置3又は管理サーバ装置に接続された端末装置において、携帯端末装置5からアップロードされた被災物情報に対して、被害の程度(例えば、「全壊」、「大規模半壊」、「半壊」、「半壊に至らない」等)の判定結果を示す情報(以下「判定結果情報」)を付与する機能である。判定結果情報の付与は、管理サーバ装置3又は管理サーバ装置に接続された端末装置のユーザ(被災物の被害の程度を認定する人)の操作により行われ、判定結果情報が付与された被災物情報は管理サーバ装置3に保存される。地方公共団体等は、管理サーバ装置3に収集された各被災物情報の判定結果に従って罹災証明書を発行することにより、効率的に罹災証明書を発行することができる。
【0044】
地図表示機能は、管理サーバ装置3又は管理サーバ装置3に接続された端末装置において地図を表示出力するものである。また、被災物位置表示機能は、地図表示機能により表示出力される地図上で、判定結果情報が付与された被災物の位置に所定形態の表示を行うものである。例えば、
図5に示すように、地図上に略扇形のマーク46〜48を表示し、当該マーク46〜48を被災物の被害の程度に応じて異なる色に色分けしたものとする。
図5では、黒く塗り潰したマーク46は「全壊」の被災物の位置を示し、左下がり斜線を付したマーク47は「大規模半壊」の被災物の位置を示し、右下がり斜線を付したマーク48は「半壊」の被災物の位置を示している。この地図から、被害の度合いの分布を一目で把握することができる。
【0045】
以下、大規模災害が発生した場合における被害調査システム1の使用例について
図6および
図7のフローチャートを参照しつつ説明する。なお、以下の使用例は、「災害に係る住家の被害認定基準運用指針 平成25年6月 内閣府(防災担当)」に記載された被害認定フローに対応したものとなっているが、本発明の技術思想の適用は上記被害認定フローに限定されず、その技術思想を逸脱しない範囲で地方公共団体等が独自に定める被害認定調査にも適用することが可能である。
【0046】
先ず、大規災害が発生した被災地域において、罹災証明書を取得しようとする者、その他の者により携帯端末装置5の「被害調査アプリ」が起動され、所定の認証操作が行われる。なお、その他の者としては、被災物の所有者に依頼された者、地方公共団体の職員などが挙げられるが、携帯端末装置5の操作ができる人であれば誰でもよい。
【0047】
携帯端末装置5において「被害調査アプリ」が起動し、ID、パスワードを使用した認証処理が完了すると、
図8に示すように、被災物の所有者情報の入力画面13が表示される(ST1)。この画面13では、被災物の所有者情報の入力欄として、「1.被災物の所有者の氏名」、「2.被災物の住所」、「3.被災物の所有者の連絡先」、「4.被災物の所有者の個人番号」、「5.被災物の固定資産識別情報」の入力欄が表示される。各欄14〜18に情報が入力され、更新ボタン19が選択されると、入力された情報が管理サーバ装置3において記憶される(携帯端末装置5に記憶させてもよい。)。この入力画面13を用いた被災物の所有者情報の入力は、被災前に事前入力することも可能であり、その場合、入力された情報は、管理サーバ装置3(又は携帯端末装置5)に登録(記憶)される。そして、予め所有者情報が登録されている場合には、この所有者情報の入力画面13を表示させるときに、各入力欄14〜18に既に登録されている情報が表示される。この場合、登録されている所有者情報の訂正、変更等があれば上書きして更新ボタン19を押すことで登録情報を更新できる。
【0048】
被災物の所有者情報の入力画面13の各入力欄14〜18に所有者情報が入力され、更新ボタン19が選択された場合、または、予め被災物の所有者情報が登録されており、そのまま更新ボタン19が選択された場合は、次に、
図9に示すように、初期メニュー画面として、被災の種別(地震、水害、風害)、被災物の構造の種別(木造・プレハブ、非木造)、調査種別(第1次調査、第2次調査)を選択するための初期メニュー画面21が表示される(ST2)。なお、
図9において、被災物の構造の種別である「非木造」は、初期メニュー画面21の下方に隠れており、画面21を上にスクロールすることで画面に現れる。
【0049】
この初期メニュー画面21でユーザにより何れの表示が選択されると、携帯端末装置5は、選択された表示に対応付けられたチェックシート(チェック項目画面)を管理サーバ装置3からダウンロードして表示する。例えば、選択された表示が「地震 木造・プレハブ 第1次調査用チェックシート」である場合(ST3:YES)、携帯端末装置5は、
図2に示すような、地震により被災した木造・プレハブ住家に用いる第1次調査用チェックシート画面22を表示する(ST4)。なお、選択された表示が「地震 木造・プレハブ 第1次調査用チェックシート」以外のものである場合(ST3:NO)、各選択項目に応じたチェックシート画面が管理サーバ装置3からダウンロードされて表示され、それぞれの処理がなされる(ST27)。本実施形態では、選択された表示が「地震 木造・プレハブ 第1次調査用チェックシート」である場合についてのみ説明し、選択された表示がその他の場合である場合の詳細な説明(ST27の詳細な説明)は省略する。
【0050】
図2に示すチェックシート画面22は、住家の被害の程度の判断基準をユーザー(申請者)の選択操作により指定するためのものであり、外観を一見して全壊であると判別可能な被害の程度の判断基準を3例表示する。また、前記3例の何れにも当てはまらない場合に選択すべき項目(「4.何れにも該当しない」)も併せて表示する。
【0051】
チェックシート画面22のボタン7〜9の何れかが選択指定されると(ST5:YES)、携帯端末装置5は、被害の程度の判断基準毎に予め用意された写真準備画面を表示する(ST6)。
【0052】
例えば
図2のチェックシート画面22のボタン7が選択された場合は、携帯端末装置5は
図3に示すような写真準備画面23を表示する。この写真準備画面23には、指定した被害の程度の判断基準を被災物が満たしていることを証明する写真の撮影に関する注意事項を記載した注意事項記載欄12(写真撮影に関する助言12)、撮影すべき写真の参考例となる写真のサンプル画像25、各種アイコン26〜28、添付された写真を表示する添付写真表示欄29、撮影写真に関するコメント入力欄30が表示される。アイコン27がタッチされると、写真を撮影、添付する操作画面が開く。アイコン26がタッチされると、添付された写真データが削除される。アイコン28がタッチされると、携帯端末装置5内の画像ファイルのフォルダが開かれ、そのフォルダから画像ファイルを選択でき、選択された画像ファイルが添付される。
【0053】
また、
図2のチェックシート画面22のボタン8が選択された場合は、携帯端末装置5は
図10に示すような写真準備画面32を表示する。この写真準備画面32にも、注意事項記載欄12(写真撮影に関する助言12)、撮影すべき写真の参考例となる写真のサンプル画像25、各種アイコン26〜28、添付された写真を表示する添付写真表示欄29、撮影写真に関するコメント入力欄30が表示される。
【0054】
また、
図2のチェックシート画面22のボタン9が選択された場合は、携帯端末装置5は
図11に示すような写真準備画面33を表示する。この写真準備画面33にも、注意事項記載欄12(写真撮影に関する助言12)、撮影すべき写真の参考例となる写真のサンプル画像25、各種アイコン26〜28、添付された写真を表示する添付写真表示欄29、撮影写真に関するコメント入力欄30が表示される。
【0055】
上記の写真準備画面23,32,33において、アイコン27がタッチされると、携帯端末装置5は、写真撮影用の画面を表示し、ユーザが画面内に表示される被写体を見ながら同画面内に表示される撮影ボタンをタッチすることで写真撮影が実行され(ST7)、撮影により得られた写真データが後に管理サーバ装置3にアップロードされる被災物情報に含められる。また、携帯端末装置5は、撮影により得られる写真データに、GPS機能により取得する位置情報を埋め込む。携帯端末装置5は、写真撮影の実行後、再び写真準備画面23,32,33を表示し、撮影により得られた写真データの画像を添付写真表示欄29に表示する。その後、ユーザにより写真準備画面23,32,33の送信ボタン34がタッチされると、携帯端末装置5は、撮影により得られた写真データ、写真撮影された場所の位置情報、被災物の所有者情報、指定された被災物の被害の程度の判断基準、撮影写真に関するコメント等を1件の被災物の情報として管理サーバ装置3にアップロード(送信)する(ST8)。なお、位置情報取得機能が、位置情報を写真データに埋め込むタイプのものでない場合は、各種の方法(例えば既述した、地図上の特定の場所のタッチ、住所の入力等)により取得された写真撮影された場所の位置情報は写真データに埋め込まれず、写真データ、被災物の所有者情報、指定された被災物の被害の程度の判断基準、撮影写真に関するコメント等と一緒に管理サーバ装置3にアップロード(送信)される。以下同じ。
【0056】
一方、
図2のチェックシート画面22のボタン10(「4.何れにも該当しない」)が選択された場合は(ST5:NO)、携帯端末装置5は
図12に示すような第1の外壁等の傾斜チェックシート画面36を表示する(ST11)。この傾斜チェックシート画面36では、外壁又は柱の傾斜が所定値以上(本実施形態では1/20以上)か否かがユーザの選択操作により指定される。この画面36で、外壁又は柱の傾斜が所定値以上である旨の指定(「はい」の選択)がなされれば(ST12:YES)、
図13に示すような第2の外壁等の傾斜チェックシート画面49を表示する(ST13)。
【0057】
第2の外壁等の傾斜チェックシート画面49においてアイコン27がタッチされると、
図14に示すような写真準備画面51が表示される。この写真準備画面51にも、注意事項記載欄12(写真撮影に関する助言12)、撮影すべき写真の参考例となる写真のサンプル画像25、各種アイコン26〜28、添付された写真を表示する添付写真表示欄29、撮影写真に関するコメント入力欄30が表示される。上記の写真準備画面51において、アイコン27がタッチされると(ST14)、携帯端末装置5は、写真撮影用の画面を表示し、ユーザが画面内に表示される被写体を見ながら同画面内に表示される撮影ボタンをタッチすることで写真撮影が実行され(ST15)、撮影により得られた写真データが後に管理サーバ装置3にアップロードされる被災物情報に含められる。また、携帯端末装置5は、撮影により得られる写真データに、GPS機能により取得する位置情報を埋め込む。携帯端末装置5は、写真撮影の実行後、再び写真準備画面51を表示し、撮影により得られた写真データの画像を添付写真表示欄29に表示する。外壁の四隅または柱の四隅の写真を撮影を完了した後、更新ボタン54をタッチすると、
図13の第2の外壁等の傾斜チェックシート画面49に戻る。
【0058】
続いて、第2の外壁等の傾斜チェックシート画面49において、アイコン52がタッチされると、
図15に示すような傾斜値入力用画面53が表示される。この傾斜値入力用画面53では、外壁の四隅または柱の四隅の傾斜値入力欄56〜59、コメント入力欄60が表示される。傾斜値入力欄56〜59に測定した外壁又は柱の傾斜値をそれぞれ入力し、必要に応じてコメント入力欄60に傾斜値に関するコメントを入力した後、更新ボタン54をタッチすると(ST16:YES)、第2の外壁等の傾斜チェックシート画面49(
図13参照)に戻り、傾斜値入力欄56〜59に入力された4つの傾斜値の平均値が自動計算されてその算出値62が表示される(ST17)。なお、4つの傾斜値の平均値の自動計算は、携帯端末装置5において行われるが、管理サーバ装置3側で行ってもよい。
【0059】
写真準備画面51による写真撮影および傾斜値入力用画面53による傾斜値の入力が完了し、第2の外壁等の傾斜チェックシート画面49において送信ボタン63がタッチされると、携帯端末装置5において前記ST17において算出した傾斜値が所定値以上(本実施形態では1/20以上)であるか否かを判定し、所定値以上であると判定すれば(ST18:YES)、携帯端末装置5は、撮影により得られた写真データ、4隅の外壁又は柱の傾斜値の平均値が所定値以上である旨を示す情報(指定された被災物の被害の程度の判断基準)、写真撮影された場所の位置情報、被災物の所有者情報、傾斜値に関するコメント等を1件の被災物の情報として管理サーバ装置3にアップロード(送信)する(ST19)。
【0060】
一方、前記ST17において算出した傾斜値が所定値以上(本実施形態では1/20以上)でなければ(ST17:NO)、その旨を携帯端末装置5の画面に表示(例えば「傾斜値が1/20未満です。外壁又は柱の傾斜では罹災証明書の申請はできません。」)を一定時間行い(ST20)、ST21の処理に移行する。
【0061】
一方、
図12の第1の外壁等の傾斜チェックシート画面36で外壁又は柱の傾斜が所定値未満である旨の選択(「いいえ」の選択)がなされた場合(ST12:NO)、および、前記S20の表示が行われた後は、
図16に示すような、部位による判定チェックシート一覧画面64を表示する(ST21)。
【0062】
部位による判定チェックシート一覧画面64では、「屋根」の損傷率チェックシート、「壁(外壁)」の損傷率チェックシート及び「基礎」の損傷率チェックシートが用意されており、各部位のチェックシートの指示に従って数値入力することで、住家全体の被害の程度が判定され、判定された被害の程度が申請する被害の程度として自動的に指定される。この判定方法では、先ず、住家を「屋根」「壁(外壁)」「基礎」に区分し、各部位の損傷率を外観目視により把握し、それに部位別の構成比(屋根は15%、壁(外壁)は75%、基礎は10%)を乗じたものの合計を住家の損害割合として算出する。そして、住家の損害割合が50%以上の場合の被害の程度を全壊、住家の損害割合が40%以上50%未満の場合の被害の程度を大規模半壊、住家の損害割合が20%以上40%未満の場合の被害の程度を半壊、住家の損害割合が20%未満の場合の被害の程度を半壊に至らないと判定する。被害調査システム1では、各部位のチェックシートの指示に従って数値入力すると、住家全体の被害の程度(全壊、大規模半壊、半壊等)が自動的に判定され、申告する被害の程度として指定される。
【0063】
図16に示す部位による判定チェックシート一覧画面64には、屋根の損傷率チェックシートの写真準備画面66(
図17参照)を開くためのアイコン27A、屋根の損傷率チェックシートの数値入力画面67(
図18参照)を開くためのアイコン68A、壁(外壁)の損傷率チェックシートの写真準備画面69(
図19参照)を開くためのアイコン27B、壁(外壁)の損傷率チェックシートの数値入力画面70(
図20参照)を開くためのアイコン68A、基礎の損傷率チェックシートの写真準備画面71(
図21参照)を開くためのアイコン27C、基礎の損傷率チェックシートの数値入力画面72(
図22参照)を開くためのアイコン68Cが表示される。
【0064】
屋根の損傷率チェックシートの写真準備画面66(
図17参照)には、屋根の損傷率を証明するための写真の撮影に関する注意事項を記載した注意事項記載欄12(写真撮影に関する助言12)、撮影すべき写真の参考例となる写真のサンプル画像25、各種アイコン26〜28、添付された写真を表示する添付写真表示欄29、撮影写真に関するコメント入力欄30が表示される。各アイコン26〜28の機能は既述した同符号のアイコンの機能と同様である。また、同様に、撮影により得られた写真データには位置情報が埋め込まれるようになっている。この写真準備画面66には、最大5つの屋根部分(「第1の部分」〜「第5の部分」)の写真データを添付することができ、各欄に用意されたアイコン27,28を使用することで損傷程度の異なる屋根部分の写真画像をそれぞれ区別して添付できるようになっている。全ての屋根の損傷部分について写真撮影を行った後、更新ボタン73をタッチすることで、部位による判定チェックシート一覧画面64(
図16参照)に戻る。
【0065】
屋根の損傷率チェックシートの数値入力画面67(
図18参照)には、屋根の各部分の損傷程度の入力欄74、各部分の屋根全体に対する面積割合の入力欄75、損傷程度の例示表76が表示される。損傷程度の例示表76には、複数の損傷程度(本実施形態では、10%、25%、50%、75%、100%の5段階の損傷程度)と、各損傷程度に該当する損傷例を記載した文章とが表示される。なお、
図18においては、損傷程度の例示表76は上部のみが表示されているが、画面をスクロール操作することにより、損傷程度の例示表の隠れている部分を見ることができる。
【0066】
ユーザが損傷程度の例示表76を参照しながら、屋根の各部分の損傷程度の入力欄74に損傷程度(10%、25%、50%、75%又は100%)を入力し、面積割合の入力欄75に屋根の各部分の屋根全体に対する面積割合(この割合はユーザが屋根を目視することにより判断する)を入力すると、携帯端末装置5において屋根全体の損傷率が計算され、ユーザにより更新ボタン77がタッチされると、携帯端末装置5において部位による判定チェックシート一覧画面64が再び表示され、
図23に示すように、当該画面64に屋根全体の損傷率の算出結果78が追加表示される。例えば第1の部分の損傷程度が10%、第1の部分の面積割合が75/100であり、第2の部分の損傷程度が25%、第2の部分の面積割合が25/100であり、その他の部分に損傷がない場合の屋根全体の損傷率は、(75/100)×10%+(25/100)×25%=13.75%となる。
【0067】
壁(外壁)の損傷率チェックシートの写真準備画面69(
図19参照)には、壁(外壁)の損傷率を証明するための写真の撮影に関する注意事項を記載した注意事項記載欄12(写真撮影に関する助言12)、撮影すべき写真の参考例となる写真のサンプル画像25、各種アイコン26〜28、添付された写真を表示する添付写真表示欄29、撮影写真に関するコメント入力欄30が表示される。各アイコン26〜28の機能は既述した同符号のアイコンの機能と同様である。また、同様に、撮影により得られた写真データには位置情報が埋め込まれるようになっている。この写真準備画面66には、最大5つの壁(外壁)部分(「第1の部分」〜「第5の部分」)の写真データを添付することができるようになっており、各欄に用意されたアイコン27,28を使用することで損傷程度の異なる壁(外壁)部分の写真画像をそれぞれ区別して添付できるようになっている。全ての壁(外壁)の損傷部分について写真撮影を行った後、更新ボタン79をタッチすると、部位による判定チェックシート一覧画面64(
図16)に戻る。
【0068】
壁(外壁)の損傷率チェックシートの数値入力画面70(
図20参照)には、壁(外壁)の各部分の損傷程度の入力欄74、各部分の全外壁面積に対する面積割合の入力欄75、損傷程度の例示表81が表示される。損傷程度の例示表81には、複数の損傷程度(本実施形態では、10%、25%、50%、75%、100%の5段階の損傷程度)と、各損傷程度に該当する損傷例を記載した文章とが表示される。なお、
図20においては、損傷程度の例示表81は上部のみが表示されているが、画面をスクロール操作することにより、損傷程度の例示表81の隠れている部分を見ることができる。
【0069】
ユーザが損傷程度の例示表81を参照しながら、壁(外壁)の各部分の損傷程度の入力欄74に損傷程度(10%、25%、50%、75%又は100%)を入力し、面積割合の入力欄75に壁(外壁)の各部分の全外壁面積に対する面積割合を入力すると、携帯端末装置5において壁(外壁)全体の損傷率が計算され、ユーザにより更新ボタン82がタッチされると、携帯端末装置5において部位による判定チェックシート一覧画面64が再び表示され、
図23に示すように、当該画面64に壁(外壁)全体の損傷率の算出結果83が追加表示される。例えば第1の部分の損傷程度が10%、第1の部分の面積割合が25/100であり、第2の部分の損傷程度が25%、第2の部分の面積割合が50/100であり、その他の部分に損傷がない場合の壁(外壁)全体の損傷率は、(25/100)×10%+(50/100)×25%=15%となる。
【0070】
基礎の損傷率チェックシートの写真準備画面71(
図21参照)には、基礎の損傷率を証明するための写真の撮影に関する注意事項を記載した注意事項記載欄12(写真撮影に関する助言12)、撮影すべき写真の参考例となる写真のサンプル画像25、各種アイコン26〜28、添付された写真を表示する添付写真表示欄29、撮影写真に関するコメント入力欄30が表示される。各アイコン26〜28の機能は既述した同符号のアイコンの機能と同様である。また、同様に、撮影により得られた写真データには位置情報が埋め込まれるようになっている。この写真準備画面71には、最大5つの基礎部分(「第1の部分」〜「第5の部分」)の写真データを添付することができるようになっており、各欄に用意されたアイコン27,28を使用することで損傷程度の異なる基礎部分の写真画像をそれぞれ区別して添付できるようになっている。全ての基礎の損傷部分について写真撮影を行った後、更新ボタン84をタッチすると、部位による判定チェックシート一覧画面64(
図16)に戻る。
【0071】
基礎の損傷率チェックシートの数値入力画面72(
図22参照)には、基礎の各部分の損傷基礎長(損傷程度)の入力欄85、外周基礎長入力欄86、損傷基礎長の判定方法の説明文87が表示される。
【0072】
ユーザが損傷基礎長の判定方法の説明文87を参照しながら、基礎の各部分の損傷基礎長(損傷程度)の入力欄85に損傷基礎長を入力し、外周基礎長入力欄86に外周基礎長を入力すると、携帯端末装置5において基礎全体の損傷率が計算され、ユーザにより更新ボタン88がタッチされると、携帯端末装置5において部位による判定チェックシート一覧画面64が再び表示され、
図23に示すように、当該画面64に基礎全体の損傷率の算出結果89が追加表示される。例えば外周基礎長が40mであり、1mの損傷基礎長が3カ所ある場合の基礎全体の損傷率は、(3/40)×100%=7.5%となる。
【0073】
また、部位による判定チェックシート一覧画面64(
図23参照)では、屋根の損傷率の算出結果78、壁(外壁)の損傷率の算出結果83および基礎の損傷率の算出結果89が出揃った段階で、住家の損害割合を算出し、その算出結果90を表示する。例えば、屋根、壁(外壁)、基礎の構成比をそれぞれA%(本実施形態では15%)、B%(本実施形態では75%)、C%(本実施形態では10%)とし、屋根全体の損傷率a%、壁(外壁)全体の損傷率b%、基礎全体の損傷率c%とした場合に、住家の損害割合をA×a+B×b+C×cにより算出してその算出結果90を表示するとともに、住家の被害の程度(全壊、大規模半壊、半壊、半壊に至らない)92も同画面64に表示する。住家の被害の程度は、携帯端末装置5により住家の損害割合に基づいて判定される。例えば、住家の損害割合が50%以上の場合を全壊、40%以上50%未満の場合を大規模半壊、20%以上40%未満の場合を半壊、20%未満の場合を半壊に至らないと判定される。
【0074】
以上のようにして、携帯端末装置5に各部位の写真準備画面66,69,71が表示され(ST22)、ユーザにより写真撮影に関する助言12に従って写真撮影が行われ(ST23)、携帯端末装置5に各部位の数値入力画面67,70,72が表示され、数値入力後に更新ボタン77,82,88がタッチされると(ST24:YES)、住家の損傷割合および被害の程度が算出表示される(ST25)。そして、
図23の画面64の送信ボタン91がタッチされると、携帯端末装置5は、撮影により得られた写真データ、写真撮影された場所の位置情報、被災物の所有者情報、被害の程度の判断基準、判定により自動的に指定された住家の被害の程度、撮影写真に関するコメント等を1件の被災物の情報として管理サーバ装置3にアップロード(送信)する(ST26)。
【0075】
一方、管理サーバ装置3は、前記ST10、ST19、ST26で、携帯端末装置5から送信された被災情報を受信すると、受信順に申請番号を付与して当該被災物情報を自装置3の記憶部に格納する。記憶した被災物情報は、管理サーバ装置3又は管理サーバ装置3に接続された端末装置において、受信順に被災物情報リストとして表示され、未処理、処理中、再申請、処理済を示すアイコンが各被災情報に付されて表示される。
【0076】
防災センター2に、被災物の被害の程度を判定できる知識と権限を持った担当者(以下「災害専門家」ともいう。)を待機させておき、各災害専門家が、管理サーバ装置3に接続された端末装置において、被災情報リスト表示させ、被災情報リストから未処理アイコンが付された何れか1つを選択することで、被災物情報を画面で確認することができる。この画面には、地震、水害、風害等の災害種別情報、木造・プレハブ、非木造等の被災物の種別情報、第1次調査又は第2次調査の調査種別情報、送信者が指定した被害の程度の判断基準、被災物の写真、各写真についてのコメント、被災物を撮影した場所の位置情報等が表示される。
【0077】
各災害専門家は、画面に表示された送信者が指定した被災物の被害の程度の判断基準と、被災物の写真画像とを確認して、申請された被災物が指定された被害の程度の判断基準を満たしていると判断すれば、所定の申請受理のための操作(以下「申請受理操作」という。)を行い、携帯端末装置5から申請された被災物が被害の程度の判断基準を満たしている旨の判定(以下「申請受理処理」ともいう。)を行う。この申請受理処理がなされた場合、その旨の情報が、オンライン又は地方自治体の職員等を通じて、罹災証明書の発行部門のシステムに転送又は手入力され、申請者(被災物の所有者)は、申請した内容に応じた被害の程度(全壊、大規模半壊、半壊等)の罹災証明書の発行を受けることができる。また、申請受理処理がなされた案件については、被災物情報リストにおいて処理済アイコンが付される。
【0078】
一方、災害専門家は、画面に表示された被災物の写真撮影に問題があり、被害の程度を判定できない場合は、指摘事項通知機能により、
図4に示したような、指示書作成画面38を表示し、既述したようにして、指示書データを作成し、当該被災物情報の送信元に対して問題点を通知する。これにより、当該案件については、被災物情報リストにおいて処理中アイコンが付される。
【0079】
その後、指摘事項通知を受けた申請者(携帯端末装置5のユーザ)が、指示書データに従って撮り直した写真データ等を管理サーバ装置3にアップロードすると、当該案件について、被災物情報が再アップロードされた旨を示す再申請アイコンが被災物情報リストの当該案件の被災物情報に付される。災害専門家は、再申請アイコンにより、当該案件が再申請(再アップロード)に係る案件であることを容易に判断でき、当該案件の内容を再度確認した上で問題が解消されていれば、申請受理処理を行う。
【0080】
なお、申請受理処理が完了した案件については、管理サーバ装置3又は管理サーバ装置3に接続された端末装置において、地図表示機能および被災物位置表示機能により、既述したように、地図上で、被災物の位置および、全壊、大規模半壊、半壊等の被災物の被害の程度を確認できるマーク46〜48を表示させることができる(
図5参照)。
【0081】
<被害調査システムの実施形態の変形例>
既述した実施形態において、管理サーバ装置3側で実行される計算処理、判定処理等を携帯端末装置5側で実行させるようにしてもよい。また、携帯端末装置5側で実行される計算処理、判定処理等を管理サーバ装置3側で実行させるようにしてもよい。
【0082】
既述した実施形態において、管理サーバ装置3と携帯端末装置5とが通信可能に接続されていないオフライン状態であっても、携帯端末装置5単独で一定の処理動作(管理サーバ装置3への送信処理以外の処理動作)を行う、オフラインモード機能を携帯端末装置5に持たせてもよい。オフラインモード機能は、災害でネットワーク通信設備の稼働状態が悪化している地域等で有効である。
【0083】
既述した実施形態においては、判断基準指定機能として、ユーザが被災物の被害の程度の判断基準を選択操作により指定するものを例示したが、判断基準指定機能はこれに限定されない。例えば、携帯端末装置5において、被害の程度の判断基準を文字により入力するテキスト入力欄を表示し、テキスト入力欄への文字列(例えば「一見して住家全部が倒壊」等の文字列)の入力操作によって被害の程度の判断基準を指定するようにすることも可能である。
【0084】
<被害調査システムの使用方法>
以下、本発明の実施の形態に係る被害調査システム1の他の使用方法について説明する。被害調査システム1は、被災物の被害の程度を判定できる知識を持たない者でも、被災地域において被災物の被害の程度を認定するために必要な情報を収集できるものである。しかし、どのように使い易いシステムであっても、災害発生時に実際に使用してみると使用方法を誤って管理サーバ装置3に送信すべき情報を送信できないおそれがある。
【0085】
そのため、災害発生時に、被害調査システム1を正しく使用できるように、被害調査システム1の使用を体験学習しておくことが望ましいと考えられる。
【0086】
そこで、本発明の実施形態に係る被害調査システムの使用方法では、被災物の見本又は模型を所定の場所に配置しておき、被災物の見本又は模型を実際の被災物と想定して被害調査システム1を使用する。例えば、全壊の建物、大規模半壊の建物、半壊の建物、半壊に至らない建物や、損傷箇所(屋根、基礎、柱等)のそれぞれ異なる建物をそれぞれ模した模型を配置しておき、それぞれの模型を実際の被災物と想定してユーザ(体験学習者)が携帯端末装置5を使用し、各模型が示す被害の程度の判断基準を指定し、適切な写真を撮影して、それらの情報を正しく管理サーバ装置3に送信できるように使用方法を体験学習できる。
【0087】
また、被害調査システム1に精通した者を教員、指導員等として、体験学習者に対して被害調査システム1の携帯端末装置5の使用方法を指導し、問題なく使用できる者を多数養成することも考えられる。そして、一定以上のレベルまで養成された者に対して、被害調査システム1の携帯端末装置5を適切に使用できる者であることを証する資格を付与し、実際に大規模災害が発生した時に、多数養成された当該資格保持者により、被害調査システム1が利用されれば、罹災証明書を発行するために必要な情報を迅速かつ確実に収集できるようになる。