特許第6934300号(P6934300)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6934300板状ワークの加工方法及びそれを用いる加工装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6934300
(24)【登録日】2021年8月25日
(45)【発行日】2021年9月15日
(54)【発明の名称】板状ワークの加工方法及びそれを用いる加工装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/56 20060101AFI20210906BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20210906BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20210906BHJP
   H01L 21/50 20060101ALI20210906BHJP
【FI】
   H01L21/56 R
   B24B41/06 L
   H01L21/68 A
   H01L21/50 G
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-6662(P2017-6662)
(22)【出願日】2017年1月18日
(65)【公開番号】特開2018-117041(P2018-117041A)
(43)【公開日】2018年7月26日
【審査請求日】2019年11月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(72)【発明者】
【氏名】禹 俊洙
【審査官】 安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−141268(JP,A)
【文献】 特開2011−192781(JP,A)
【文献】 特開平06−097343(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/56
H01L 21/50
H01L 21/67−687
B24B 41/06
H05K 3/22−26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上面のパターン層を封止する樹脂層を形成し該樹脂層側が凹状に反った板状ワークの反りを低減させ板状ワークを保持テーブルに保持させ加工する板状ワークの加工方法であって、
該樹脂層を吸引保持可能な吸引保持面となる押し面を有する搬入プレートで板状ワークの該樹脂層を加熱する加熱工程と、
板状ワークの該樹脂層の反対面全面を接触可能に載置する載置面を有するテーブルと板状ワークの該樹脂層の表面に接触可能な吸引保持面となる該押し面を有する該搬入プレートとを用い、該テーブルに載置した板状ワークを該搬入プレートで押して平坦化させる平坦化工程と、
該平坦化工程の後、該搬入プレートの該吸引保持面となる該押し面を該樹脂層の表面から離間させ、該吸引保持面から噴出するエアーによって該樹脂層を冷却する冷却工程と、
該冷却工程後、板状ワークを加工する加工工程とを、備える板状ワークの加工方法。
【請求項2】
請求項1記載の板状ワークの加工方法を用いる加工装置であって、
板状ワークの反りを低減させる反り低減手段と、板状ワークを保持する保持テーブルと、該保持テーブルが保持した板状ワークを加工具で加工する加工手段と、を備え、
該反り低減手段は、該樹脂層を加熱する加熱手段と、該樹脂層が加熱された板状ワークを平坦化させる押圧手段と、該押圧手段で押圧された該樹脂層を冷却する冷却手段と、を備え、
該押圧手段は、板状ワークの上面を吸引保持する該吸引保持面となる該押し面を有する該搬入プレートを備え、該搬入プレートで該テーブルに板状ワークを押して平坦化させ、
該冷却手段は、該吸引保持面となる該押し面に連通するエアー供給源を備え、板状ワークを該吸引保持面となる該押し面から離間させた後、該吸引保持面となる該押し面から該樹脂層にエアーを噴出して、板状ワークの反りを低減させて該保持テーブルに保持させた板状ワークを冷却した後、該加工手段で加工する加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に樹脂層が形成される板状ワークの加工方法及びそれを用いる加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パッケージ基板の製造では、PCB基板の上面にパターン層が形成され、パターン層上にデバイスチップを搭載させてパターン層にデバイスチップを配線した後、デバイスチップと配線とをモールド樹脂で封止している(例えば、特許文献1参照)。モールド樹脂は加熱され溶融した状態でPCB基板の上面に供給され、その後、冷却されてPCB基板上にモールド樹脂層が形成される。モールド樹脂層はPCB基板上で空気溜まりができないように形成され、厚みを均一にするために研削される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5420505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、溶融したモールド樹脂が冷却される際に樹脂が収縮することにより、パッケージ基板に反りが生じる。パッケージ基板に生じた反りの力が強い場合、パッケージ基板のPCB基板側を保持テーブルに吸引保持させると、パッケージ基板と保持テーブルの保持面との間でエアーがリークして、パッケージ基板を吸引保持できない問題がある。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、樹脂層が形成された板状ワークの反りを低減させる板状ワークの加工方法及びそれを用いる加工装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の板状ワークの加工方法は、基板の上面のパターン層を封止する樹脂層を形成し樹脂層側が凹状に反った板状ワークの反りを低減させ板状ワークを保持テーブルに保持させ加工する板状ワークの加工方法であって、樹脂層を吸引保持可能な吸引保持面となる押し面を有する搬入プレートで板状ワークの樹脂層を加熱する加熱工程と、板状ワークの樹脂層の反対面全面を接触可能に載置する載置面を有するテーブルと板状ワークの樹脂層の表面に接触可能な吸引保持面となる押し面を有する搬入プレートとを用い、テーブルに載置した板状ワークを搬入プレートで押して平坦化させる平坦化工程と、平坦化工程の後、搬入プレートの吸引保持面となる押し面を樹脂層の表面から離間させ、吸引保持面から噴出するエアーによって樹脂層を冷却する冷却工程と、冷却工程後、板状ワークを加工する加工工程とを、備える。
【0007】
これらの構成によれば、加熱することにより樹脂層を軟化して、板状ワークに搬入プレートを押し付けて平坦化する。また、平坦化工程後に樹脂層を冷却することにより、板状ワークが平坦化された状態が維持される。これらにより、樹脂層が形成された板状ワークの反りを低減させることができる。この状態で板状ワークを保持テーブルに搬送して吸引保持させることで、板状ワークの安定した保持が可能になり、加工中に板状ワークが保持テーブルから外れることを防止できる。
【0008】
本発明の一態様の加工装置は、上記板状ワークの加工方法を用いる加工装置であって、板状ワークの反りを低減させる反り低減手段と、板状ワークを保持する保持テーブルと、保持テーブルが保持した板状ワークを加工具で加工する加工手段と、を備え、反り低減手段は、樹脂層を加熱する加熱手段と、樹脂層が加熱された板状ワークを平坦化させる押圧手段と、押圧手段で押圧された樹脂層を冷却する冷却手段と、を備え、押圧手段は、板状ワークの上面を吸引保持する吸引保持面となる押し面を有する搬入プレートを備え、搬入プレートでテーブルに板状ワークを押して平坦化させ、冷却手段は、吸引保持面となる押し面に連通するエアー供給源を備え、板状ワークを吸引保持面となる押し面から離間させた後、吸引保持面となる押し面から樹脂層にエアーを噴出して、板状ワークの反りを低減させて保持テーブルに保持させた板状ワークを冷却した後、加工手段で加工する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、樹脂層が形成された板状ワークの反りを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施の形態に係る研削装置の斜視図である。
図2】本実施の形態に係る板状ワーク仮置き工程を示す図である。
図3】本実施の形態に係る加熱工程を示す図である。
図4】本実施の形態に係る平坦化工程を示す図である。
図5】本実施の形態に係る冷却工程を示す図である。
図6】本実施の形態に係る板状ワーク保持工程を示す図である。
図7】変形例に係る温風噴出ユニットの斜視図である。
図8】変形例に係る加熱工程を示す図である。
図9】変形例に係る平坦化工程を示す図である。
図10】変形例に係る冷却工程を示す図である。
図11】変形例に係る板状ワーク保持工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本実施の形態に係る研削装置について説明する。図1は、本実施の形態に係る研削装置の斜視図である。なお、本実施の形態に係る研削装置は、図1に示すように研削加工専用の装置構成に限定されず、例えば、研削加工、研磨加工、洗浄加工等の一連の加工が全自動で実施されるフルオートタイプの加工装置に組み込まれてもよい。
【0012】
図1に示すように、研削装置1は、フルオートタイプの加工装置であり、被加工物である板状ワークWに対して搬入処理、研削加工、洗浄処理、搬出処理からなる一連の作業を全自動で実施するように構成されている。
【0013】
本実施の形態に係る板状ワークWは、CSP(Chip Size Package)、QFN(Quad Flat Non-leaded Package)等のパッケージ基板である。板状ワークWは、PCB基板等で形成される長方形の基板S(図2参照)の表面にパターン層(不図示)が形成され、パターン層上のデバイスチップ(不図示)がモールド樹脂層R(図2参照)で封止されて一体的にパッケージングされている。板状ワークWの上面は格子状の分割予定ラインによって区画されており、分割予定ラインによって区画された各領域に各デバイスチップが含まれている。モールド樹脂層R側は、研削砥石によって研削される。モールド樹脂としては、加熱により軟化される樹脂が用いられる。
【0014】
研削装置1の基台11の前側には、複数の板状ワークWが収容された一対のカセットCが載置されている。一対のカセットCの後方には、カセットCに対して板状ワークWを出し入れするカセットロボット16が設けられている。カセットロボット16の一方側には、板状ワークWを載置する仮置きテーブル21が設けられている。また、カセットロボット16の他方側には、加工済みのワークWを洗浄する洗浄機構26が設けられている。仮置きテーブル21と洗浄機構26の間には、加工前の板状ワークWを保持テーブル41に搬入する搬入手段31と、保持テーブル41から加工済みの板状ワークWを搬出する搬出手段36とが設けられている。
【0015】
カセットロボット16は、多節リンクからなるロボットアーム17の先端にワーク保持部18を設けて構成されている(図2参照)。カセットロボット16では、カセットCから仮置きテーブル21に加工前の板状ワークWが搬送される他、洗浄機構26からカセットCに加工済みの板状ワークWが搬送される。
【0016】
仮置きテーブル21は、長方形に形成されており、基台11の内部に設けられた回転手段23により回転される。また、仮置きテーブル21の上面には、板状ワークWの一方の面、すなわち基板S側の面全面を接触可能に載置する載置面22が形成されており、載置面22に基板S側を下にして板状ワークWが載置される。仮置きテーブル21の回転により、後述する搬入手段31の搬入プレート34が板状ワークWの他方の面、すなわちモールド樹脂層R側の面全面に押し当てられるように、仮置きテーブル21の位置が調整される。
【0017】
搬入手段31は、上下方向に延在する移動部としての回動軸32と、回動軸32の上端に支持された搬入アーム33と、搬入アーム33の先端に設けられたワークWを吸引保持する搬入プレート(搬送パッド)34と、を備えている。搬入アーム33は先端部33aが伸縮し、回動軸32は、上下移動可能かつ回動可能に構成されている。搬入プレート34は、搬入アーム33の先端部33aの伸縮、回動軸32の回動により水平面内における位置調整がなされ、回動軸32の上下移動により高さ方向における位置調整がなされる。
【0018】
搬入プレート34は長方形に形成され、板状ワークWと同じ形状の押し面(吸引保持面)34aを有している(図3参照)。搬入プレート34によって仮置きテーブル21から板状ワークWを吸引保持して持ち上げ、搬入アーム33によって搬入プレート34を旋回させることで、保持テーブル41に板状ワークWが搬入される。このとき、搬入アーム33の先端部33aの伸縮及び回動軸32の回動量が調整され、板状ワークWが保持テーブル41に設置される治具48に載置されるように位置合わせされる。
【0019】
搬出手段36は、後述するヒータ70、ヒータ電源71及びエアー供給源83が設けられていない点を除いて、搬入手段31と略同一に構成されている。搬出手段36では、搬出プレート38によって保持テーブル41から板状ワークWが吸引保持される。搬出アーム37によって搬出プレート38が旋回させることで、保持テーブル41から板状ワークWが搬出され、洗浄機構26の治具27に載置される。
【0020】
洗浄機構26は、スピンナーテーブル27に向けて洗浄水及び乾燥エアーを噴射する各種ノズル(不図示)を設けて構成される。洗浄機構26では、板状ワークWを保持したスピンナーテーブル27が基台11内に降下され、基台11内で洗浄水が噴射されて板状ワークWがスピンナー洗浄された後、乾燥エアーが吹き付けられて板状ワークWが乾燥される。
【0021】
搬入手段31及び搬出手段36の後方には、搬入手段31および搬出手段36に隣接して、Y軸方向に延在する矩形状の開口部45が形成されている。開口部45は、保持テーブル41とともに移動可能な移動板43および蛇腹状の防水カバー46により被覆されている。防水カバー46の下方には、保持テーブル41を前後方向に移動させる図示しないボールネジ式の移動機構が設けられている。保持テーブル41は、移動機構により、搬入手段31および搬出手段36による板状ワークWの搬送位置と、後述する研削手段51による研削位置との間を前後方向に往復移動可能に構成されている。
【0022】
保持テーブル41は、円板状に形成されている。保持テーブル41の上面は基台11内に配置された図示しない吸引源に接続されている。保持テーブル41の下方には保持テーブル41を回転させる回転手段(不図示)が設けられている。保持テーブル41の上面には長方形の治具48が設置され、治具48に板状ワークWが基板S側を下にして載置される。治具48には複数の貫通孔が形成されており、貫通孔によって治具48の保持面に板状ワークWが吸引保持される。
【0023】
また、開口部45の後方には、コラム12が立設されている。コラム12には、研削手段51をZ軸方向に加工送りする研削送り手段61が設けられている。研削送り手段61は、コラム12の前面に配置されたZ軸方向に平行な一対のガイドレール62と、一対のガイドレール62にスライド可能に設置されたモータ駆動のZ軸テーブル63とを有している。
【0024】
Z軸テーブル63の前面には、ハウジング64を介して研削手段51が支持されている。Z軸テーブル63の背面側にはナット部(不図示)が形成され、このナット部にボールネジ68が螺合されており、ボールネジ68の一端には駆動モータ66が連結されている。駆動モータ66によってボールネジ68が回転駆動され、研削手段51がガイドレール62に沿ってZ軸方向に移動される。
【0025】
研削手段51は、円筒状のスピンドル55の下端にマウント52を設けて構成されている。研削手段51では、保持テーブル41に治具48を介して保持される板状ワークWのモールド樹脂層Rを研削する。研削手段51のマウント52の下面には、複数の研削砥石53が環状に配設された研削ホイール54が回転可能に装着される。研削砥石53は、例えば、ダイヤモンド砥粒をレジンボンドやビトリファイドボンド等の結合剤で固めたダイヤモンド砥石で構成される。
【0026】
研削装置1には、装置各部を統括制御する制御部(不図示)が設けられている。制御部は、各種処理を実行するプロセッサやメモリ等により構成される。メモリは、用途に応じてROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の一つ又は複数の記憶媒体で構成される。
【0027】
このような研削装置1では、カセットロボット16により、カセットC内から仮置きテーブル21に、板状ワークWが基板S側を下にして搬送される。次に、搬入手段31により、保持テーブル41上に設置される治具48に、板状ワークWが基板S側を下にして搬入される。そして、移動機構により、保持テーブル41に治具48を介して保持された板状ワークWが搬送位置から研削位置に位置づけられ、研削位置では板状ワークWのモールド樹脂層Rが研削加工される。板状ワークWは、搬出手段36により洗浄機構26に搬出され、洗浄機構26で板状ワークWが洗浄されて、洗浄機構26からカセットCへ板状ワークWが搬送される。
【0028】
ここで、パッケージ基板としての板状ワークは、複数のデバイスチップが形成されるPCB基板の上面に溶融したモールド樹脂が供給され、冷却されることにより形成される。これにより、PCB基板上にモールド樹脂層が形成され、デバイスチップがモールド樹脂層によって封止される。モールド樹脂は液状から固体状になる際に収縮するため、モールド樹脂層側が凹状に反って板状ワークに反りが生じる。この状態でパッケージ基板が保持テーブルに保持されると、負圧がリークして板状ワークが吸引されない問題がある。これに対し、反りの生じた板状ワークを押圧手段で押圧して平坦化する方法が考えられる。しかしながら、モールド樹脂層は固体状であり板状ワークが変形し難いため、押圧により無理に板状ワークを変形させるとデバイスチップが破損される問題がある。そこで、本実施の形態では、モールド樹脂層を加熱することにより軟化して、板状ワークを平坦化し易くしている。また、平坦化された板状ワークのモールド樹脂層を冷却することにより、板状ワークの平坦化された状態を維持することができる。
【0029】
以下、本実施の形態に係る板状ワークWの反り低減方法について説明する。本実施の形態に係る板状ワークの反り低減方法は、加熱工程、平坦化工程、冷却工程を含んでいる。図2は本実施の形態に係る板状ワーク仮置き工程、図3は加熱工程、図4は平坦化工程、図5は冷却工程、図6は板状ワーク保持工程を示す図である。
【0030】
図2に示すように、まず板状ワーク仮置き工程が実施される。ロボットアーム17のワーク保持部18によりモールド樹脂層R側が凹状に沿っている板状ワークWのモールド樹脂層R側が保持され、仮置きテーブル21の載置面22に板状ワークWが搬送される。板状ワークWは基板S側を下して、仮置きテーブル21に載置される。
【0031】
図3に示すように、板状ワーク仮置き工程の後には、モールド樹脂層Rを加熱する加熱工程が実施される。加熱工程について説明する前に、まず板状ワークの反り低減方法で用いられる反り低減手段について説明する。
【0032】
搬入プレート(搬送パッド)34は長方形に形成され、下面に板状ワークWを押圧する押し面(吸引保持面)34aを有しており、後述する平坦化工程で押圧手段として機能する。押し面34aは板状ワークWのモールド樹脂層R側の面全面に接触可能に形成されており、モールド樹脂層Rの上面と略同等以上の面積を有している。搬入手段31の回動軸32を下方へ移動させ、搬入プレート34を下降させることにより、仮置きテーブル21に載置される板状ワークWが押し面34aで押され、反りの生じている板状ワークWが平坦化される(図4参照)。押し面34aには複数の孔が形成されており、バルブ82、84を介して吸引源81、エアー供給源83に接続されている。エアー供給源83は、後述する冷却工程で冷却手段として機能する。搬入プレート34には加熱手段としてのヒータ70が内蔵されており、ヒータ70はヒータ電源71に接続されている。加熱手段と、押圧手段と、冷却手段とで反り低減手段2を構成している。
【0033】
次に、加熱工程について説明する。仮置きテーブル21の載置面22には、モールド樹脂層Rを上にして板状ワークWが載置されている。回動軸32が回動され、搬入アーム33が旋回して搬入プレート34が板状ワークWの上方に位置付けられる。
【0034】
バルブ82が閉じられ、バルブ84が開かれてエアー供給源83からエアーが押し面34aに供給されるとともに、ヒータ電源71がオンにされてヒータ70が通電される。これにより、押し面34aから温風が噴出され、モールド樹脂層Rに温風が吹き付けられて板状ワークWが加熱される。このとき、回動軸32が下方に移動され、搬入プレート34が下降されて板状ワークWに接近される。温風の温度は、融点170℃のモールド樹脂に対して、例えば140℃以上150℃以下に設定することで、後述する平坦化工程においてモールド樹脂層Rを良好に平坦化することができる。
【0035】
モールド樹脂層R側が凹状に反った板状ワークWにおいて、搬入プレート34を下降させながらモールド樹脂層Rに上方から温風を当てることにより、押し面34aからモールド樹脂層Rの全面に温風が吹き付けられる。これにより、押し面34aから近い板状ワークWの反りの大きい外周部分だけでなく中央部分も加熱して軟化させることができる。このため、モールド樹脂層Rの全面を均一に軟化することができる。
【0036】
図4に示すように、加熱工程の後には、板状ワークWを平坦化させる平坦化工程が実施される。回動軸32がさらに下方に移動され搬入プレート34が下降されて、押し面34aが仮置きテーブル21に載置される板状ワークWのモールド樹脂層Rの上面に接触する。これにより、板状ワークWが押圧されて平坦化される。このとき、バルブ82が閉じられ、バルブ84が閉じられてエアー供給源83からのエアーの供給が停止されるとともに、ヒータ電源71がオフにされてヒータ70の通電が停止される。これにより、押し面34aからの温風の噴出が停止される。
【0037】
加熱工程においてモールド樹脂層Rが軟化されているため、板状ワークWを容易に変形することができる。この状態で、平坦化工程において板状ワークWを押し面34aで押圧することにより、反りの生じている状態から平坦化される際の板状ワークWの変形によって、板状ワークWの表面に形成されるデバイスチップが破損されることを防止できる。また、加熱工程においてモールド樹脂層Rの全面が軟化されるため、板状ワークWを加熱圧縮して板状ワークWの外周部分が集中的に加熱された状態で板状ワークWが無理に変形される場合と比べて、モールド樹脂層Rの全面を均一に平坦化でき、デバイスチップの破損を効果的に防止することができる。
【0038】
図5に示すように、平坦化工程の後には、モールド樹脂層Rを冷却する冷却工程が実施される。押し面34aから冷風が噴出されるように、回動軸32がわずかに上方に移動されて搬入プレート34が上昇される。このとき、ヒータ電源71がオフのまま、バルブ82が閉じられ、バルブ84が開かれてエアー供給源83からエアーが供給される。これにより、押し面34aから冷風(エアー)が噴出され、モールド樹脂層Rに冷風が吹き付けられて板状ワークWが冷却される。平坦化工程後にモールド樹脂層Rを冷却することにより板状ワークWが平坦化された状態を維持できるため、板状ワークWの反りを低減させることができる。
【0039】
冷風を吹き付けて板状ワークWを冷却する時間は、例えば、モールド樹脂層Rの温度が室温にまで低下する時間に設定される。なお、モールド樹脂層Rの温度を認識する認識部としてセンサを設け、モールド樹脂層Rの温度が所定の温度になったら後述する板状ワーク保持工程が実施される構成としてもよい。
【0040】
図6に示すように、冷却工程の後には、板状ワーク保持工程が実施される。図6Aに示すように、回動軸32が下方に移動されて搬入プレート34が下降されて、押し面34aが板状ワークWのモールド樹脂層Rの上面に再び接触する。このとき、ヒータ電源71がオフのまま、バルブ82が開かれ、バルブ84が閉じられてエアー供給源83からのエアーの供給が停止される。これにより、押し面34aに負圧が生じて、板状ワークWが搬入プレート34に吸引保持される。この状態で、搬入手段31の回動軸32が回動され、搬入アーム33が旋回することにより、図6Bに示すように板状ワークWが保持テーブル41に搬入される。
【0041】
図6Bに示すように、回動軸32が下方に移動されて搬入プレート34が下降される。このとき、ヒータ電源71がオフのまま、バルブ82が閉じられ、バルブ84が開かれエアー供給源83からエアーが供給される。これにより、押し面34aからエアーが噴出され、板状ワークWが保持テーブル41に設置される治具48に載置される。なお、保持テーブル41は、治具48を用いないで板状ワークWを保持することも可能である。
【0042】
加熱工程から冷却工程により反りが低減された板状ワークWを、保持テーブル41に吸引保持させることで、板状ワークWの基板S側を略全面で保持することができる。このため、板状ワークWの安定した保持が可能になり、研削加工中に板状ワークWが保持テーブル41から外れることを防止できる。
【0043】
以上のように、本実施の形態に係る反り低減方法は、加熱することにより樹脂層Rを軟化して、板状ワークWにプレート34を押し付けて平坦化する。また、平坦化工程後に樹脂層Rを冷却することにより、板状ワークWが平坦化された状態が維持される。これらにより、樹脂層Rが形成された板状ワークWの反りを低減させることができる。この状態で板状ワークWを保持テーブル41に搬送して吸引保持させることで、板状ワークWの安定した保持が可能になり、加工中に板状ワークWが保持テーブル41から外れることを防止できる。
【0044】
上記実施の形態においては、加熱工程において押し面34aから板状ワークWに温風が吹き付けられる構成としたが、この構成に限定されない。図7は、変形例に係る温風噴出ユニットの斜視図である。加熱工程においては、温風噴出ユニット125を用いて板状ワークWに温風を吹き付ける構成としてもよい。図7に示すように、温風噴出ユニット125は、仮置きテーブル121の周囲に設置されており、基台のX軸方向に延在する直動式の移動機構128に、アーム126がX軸方向にスライド可能に配設されている。アーム126の先端にはノズル127が形成されている。仮置きテーブル121の載置面122に板状ワークWが載置されると、回転手段123により仮置きテーブル121が移動機構128と平行になるように回転され、アーム126が移動機構128により移動されることで板状ワークWに対するノズル127の位置調整がなされる。アーム126にはヒータ170が内蔵されており、ヒータ170はヒータ電源171に接続されている(図8参照)。また、ノズル127はバルブ129を介してエアー供給源130に接続されており、バルブ129を開いて、ヒータ電源171をオンにすることによりノズル127から温風が噴出される。
【0045】
図8から図11を用いて、変形例に係る板状ワークWの反り低減方法について説明する。図8は変形例に係る加熱工程、図9は平坦化工程、図10は冷却工程、図11は板状ワーク保持工程を示す図である。
【0046】
まず板状ワーク仮置き工程が実施される(図2参照)。板状ワークWは基板S側を下にして、仮置きテーブル121に載置される。
【0047】
図8に示すように、板状ワーク仮置き工程の後には、加熱工程が実施される。バルブ129が開かれてエアー供給源130からエアーが供給されるとともに、ヒータ電源171がオンにされてヒータ170が通電される。これにより、ノズル127から温風が噴出され、仮置きテーブル121の載置面122に載置される板状ワークWのモールド樹脂層Rに温風が吹き付けられて加熱される。このとき、移動機構128(図7参照)によりアーム126がX軸方向に移動される。ノズル127により上方からモールド樹脂層Rに温風を当てながら、移動機構128によりノズル127をX軸方向に移動させることにより、板状ワークWの全面に温風が吹き付けられる。
【0048】
図9に示すように、加熱工程の後には、平坦化工程が実施される。変形例に係る搬入プレート134は、ヒータ170及びヒータ電源171が設けられていない点を除いて、図3の搬入プレート34と略同一に構成されている。バルブ129が閉じられ、ヒータ電源171がオフにされて、ノズル127からの温風の噴出が停止される(図8参照)。回動軸132が回動され、搬入アーム133が旋回して搬入プレート134が板状ワークWの上方に位置付けられると、移動機構128によりアーム126が搬入アーム133を避けるように移動される(図7参照)。回動軸132により搬入プレート134が下降されて、押し面134aが仮置きテーブル121に載置される板状ワークWのモールド樹脂層Rの上面に接触する。これにより、板状ワークWが押圧されて平坦化される。このとき、バルブ182が閉じられ、バルブ184が閉じられてエアー供給源183からのエアーの供給が停止されている。
【0049】
図10に示すように、平坦化工程の後には、冷却工程が実施される。回動軸132により搬入プレート134がわずかに上昇される。このとき、バルブ182が閉じられ、バルブ184が開かれてエアー供給源183からエアーが供給される。これにより、押し面134aから噴出される冷風が、モールド樹脂層Rに吹き付けられて冷却される。
【0050】
図11に示すように、冷却工程の後には、板状ワーク保持工程が実施される。回動軸132により搬入プレート134が下降されて、押し面134aが板状ワークWのモールド樹脂層Rの上面に再び接触する。このとき、バルブ182が開かれ、バルブ184が閉じられてエアー供給源183からのエアーの供給が停止される。これにより、板状ワークWが搬入プレート134に吸引保持される。この状態で、回動軸132が回動され、搬入アーム133が旋回することにより、板状ワークWが保持テーブルに搬入される(図6B参照)。冷却工程で平坦化された状態が維持された板状ワークWを保持テーブルに吸引保持させることで、安定した保持が可能になる。
【0051】
また、上記実施の形態においては、冷却工程においてエアー供給源83から供給されるエアーを押し面34aから板状ワークに吹き付けることによって板状ワークWが冷却される構成としたが、板状ワークWの冷却は板状ワークWを水に浸すことにより行われてもよい。例えば、加熱工程においてモールド樹脂層Rが軟化された板状ワークWを搬入プレート34で吸引保持して持ち上げたときに、搬入プレート34が保持する板状ワークWを押し面34aに向かって大気圧で押して板状ワークWを平坦化させ、搬入プレート34が保持する板状ワークWを水に浸すことで、板状ワークWを冷却してもよい。板状ワークWを水に浸す際には、保持テーブル41の上面に水層を形成しておいて、この状態で搬入プレート34を下降させ、搬入プレート34が保持する板状ワークWを水層に浸すことにより、板状ワークWを冷却してもよい。
【0052】
また、上記実施の形態においては、モールド樹脂層R側が凹状に反った板状ワークWが用いられる構成としたが、モールド樹脂層Rが軟化されることにより板状ワークWを平坦化できれば、どのような反りを生じている板状ワークWも用いることができる。例えば、片側が沿っている板状ワークWを用いることもできる。
【0053】
また、上記実施の形態においては、搬入プレート34の押し面34a及び搬出プレート38の板状ワークWの保持面には複数の孔が形成される構成としたが、この構成に限定されない。搬入プレート34の押し面34a及び搬出プレート38の板状ワークWの保持面は、ポーラスセラミック材で形成されていてもよい。
【0054】
また、上記実施の形態においては、仮置きテーブル21の載置面22に、板状ワークWを基板S側を下にして、モールド樹脂層R側を上にして載置して、モールド樹脂層Rに押し面34aから噴出される温風を上方から当てることにより、板状ワークWを加熱する構成としたが、これに限定されない。板状ワークWは基板S側を上にして、モールド樹脂層R側を下にして仮置きテーブル21の載置面22に載置され、仮置きテーブル21の内部或いは仮置きテーブル21の載置面22に備えられるヒータ、または載置面22に形成される噴出孔から噴出される温風により、モールド樹脂層Rが温められて軟らかくされる構成としてもよい。この場合、板状ワークWは基板S側を下にして、モールド樹脂層R側を上にして仮置きテーブル21の載置面22に載置されても、モールド樹脂層Rを加熱して軟化することができる。
【0055】
また、本発明の各実施の形態を説明したが、本発明の他の実施の形態として、上記各実施の形態を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0056】
また、本発明の実施の形態は上記の各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、本発明の技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、本発明の技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【0057】
本実施の形態では、本発明を板状ワークを研削加工する研削装置に適用した構成について説明したが、切削装置及びレーザ装置に適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上説明したように、本発明は、モールド樹脂層が形成された板状ワークの反りを低減させることができるという効果を有し、特にウエーハを研削加工する研削装置に有用である。
【符号の説明】
【0059】
1 研削装置
2 反り低減手段
21 仮置きテーブル(テーブル)
22 (仮置きテーブルの)載置面
34 搬入プレート(押圧手段)
34a 押し面
70 ヒータ(加熱手段)
83 エアー供給源(冷却手段)
R モールド樹脂層(樹脂層)
S 基板
W 板状ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11