(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6934336
(24)【登録日】2021年8月25日
(45)【発行日】2021年9月15日
(54)【発明の名称】バイアス電流生成回路
(51)【国際特許分類】
H03F 3/343 20060101AFI20210906BHJP
【FI】
H03F3/343 210
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-130952(P2017-130952)
(22)【出願日】2017年7月4日
(65)【公開番号】特開2019-16848(P2019-16848A)
(43)【公開日】2019年1月31日
【審査請求日】2020年6月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】新日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099818
【弁理士】
【氏名又は名称】安孫子 勉
(72)【発明者】
【氏名】近野 暢
【審査官】
及川 尚人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−108598(JP,A)
【文献】
特開平08−340246(JP,A)
【文献】
特開平05−218761(JP,A)
【文献】
特開2007−228399(JP,A)
【文献】
特開2001−344028(JP,A)
【文献】
特開平10−074115(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0193544(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 3/343
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電源電圧端子にソースが接続されたゲート幅の異なる2つのトランジスタと、前記2つのトランジスタを駆動する第2の電源電圧端子に接続されたカレントミラー回路と、前記2つのトランジスタと前記カレントミラー回路との間に設けられた抵抗器とを有し、前記2つのトランジスタのゲート電圧の差によって前記抵抗器に生ずる電流を基に、バイアス電流を生成してなるバイアス電流生成回路において、
前記カレントミラー回路と前記抵抗器との接続点と前記第1の電源電圧端子との間にリーク電流経路が形成された場合に、前記リーク電流により不足する前記バイアス電流を補償する回路動作維持回路を設け、
前記カレントミラー回路は、第1及び第2の第1導電型MOS電界効果型トランジスタにより構成され、
前記第1及び第2の第1導電型MOS電界効果型トランジスタは、各々のゲートと前記第1の第1導電型MOS電界効果型トランジスタのドレインが相互に接続されると共に、第2のバイアス端子に接続され、
前記第1及び第2の第1導電型MOS電界効果型トランジスタのソースは、前記第2の電源電圧端子を介して上位電源電圧が印加可能とされ、
前記ゲート幅の異なる2つのトランジスタは、第1及び第2の第2導電型MOS電界効果型トランジスタにより構成され、
前記第1及び第2の第2導電型MOS電界効果型トランジスタのソースは、前記第1の電源電圧端子を介して下位電源電圧が印加可能とされる一方、前記第1の第2導電型MOS電界効果型トランジスタのゲートは、前記第2の第2導電型MOS電界効果型トランジスタのドレインと相互に接続されると共に第1のバイアス端子に接続され、前記第2の第2導電型MOS電界効果型トランジスタのゲートは、前記第2の第1導電型MOS電界効果型トランジスタのドレインと接続され、前記第1の第2導電型MOS電界効果型トランジスタのドレインは、前記第1の第1導電型MOS電界効果型トランジスタのドレインと接続され、前記第2の第2導電型MOS電界効果型トランジスタのドレインは、前記抵抗器を介して前記第2の第1導電型MOS電界効果型トランジスタのドレインと接続され、
前記回路動作維持回路は、第3の第1導電型MOS電界効果型トランジスタと、第3乃至第5の第2導電型MOS電界効果型トランジスタを有し、
前記第3の第1導電型MOS電界効果型トランジスタのドレインは、前記第3の第2導電型MOS電界効果型トランジスタのドレインと、ダイオード接続された前記第4の第2導電型MOS電界効果型トランジスタのゲート及びドレインと、前記第5の第2導電型MOS電界効果型トランジスタのゲートとに接続され、
前記第3の第1導電型MOS電界効果型トランジスタのゲートは、前記第1及び第2の第1導電型MOS電界効果型トランジスタのゲート、及び、前記第5の第2導電型MOS電界効果型トランジスタのドレインと共に前記第2のバイアス端子に接続され、
前記第3の第1導電型MOS電界効果型トランジスタのソースは、前記第2の電源電圧端子に接続され、
前記第3乃至第5の第2導電型MOS電界効果型トランジスタのソースは、前記第1の電源電圧端子に接続され、
前記第3の第2導電型MOS電界効果型トランジスタのゲートは、前記第2の第2導電型MOS電界効果型トランジスタのドレインに接続され、
前記第1及び第2のバイアス端子間に出力される前記バイアス電流を生成すると共に、前記第2の第1導電型MOS電界効果型トランジスタのドレインと前記抵抗器との接続点から前記下位電源電圧側へ寄生ダイオードを介しての前記リーク電流の発生による前記バイアス電流の不足を補償可能としてなることを特徴とするバイアス電流生成回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイアス電流生成回路に係り、特に、出力特性の安定性、信頼性向上等を図ったものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の回路としては、例えば、
図2に示された構成を有するバイアス電流生成回路が良く知られている(例えば、特許文献1等参照)。
以下、
図2を参照しつつ、従来のバイアス電流生成回路について説明する。
この従来のバイアス電流生成回路は、トランジスタMP1,MP2からなる第1のカレントミラー回路51Aと、トランジスタMN1,MN2からなる第2のカレントミラー回路52Aと、バイアス電流設定用抵抗器R1とを具備して構成されたものである。
なお、トランジスタMP1,MP2は、P型MOS電界効果型トランジスタであり、トランジスタMN1,MN2は、N型MOS電界効果型トランジスタである。
【0003】
このバイアス電流生成回路は、第2のカレントミラー回路52Aを構成するトランジスタMN1,MN2は、各々のチャンネル長が同一で、ゲート幅が異なる設定とされており、それによって生ずるゲート電圧の差から、バイアス電流設定用抵抗器R1により基準電流を生成する自己帰還型バイアス回路である。
【0004】
トランジスタMN2に流れる電流をIOUTとすると、この電流IOUTは、トランジスタMN1,MN2のゲート長が同一で、ゲート幅の比がm:1であるとすると下記する式1Aにより求められる。
【0005】
IOUT=[2/{μC0(W/L)}]・(1/R1
2)・(1−1/m
1/2)
2・・・式1A
【0006】
ここで、μはN型MOS電界効果型トランジスタの電子移動度、C0は単位面積当たりのゲート容量、WはトランジスタMN2のゲート幅、LはトランジスタMN2のゲート長である。MP1、MP2はゲート長が同一で、ゲート幅比は1:1とする。
【0007】
この式1Aで表されたように、
図2に示された回路は、理論上は電源電圧に依存しないバイアス電流IOUTが生成可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−218761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、実際には、回路の動作電圧が低電圧化し、低消費電流化すると、回路の各MOSトランジスタは飽和領域での動作が困難となり、サブスレッショールド領域での動作へと移行してゆく。
サブスレッショールド領域での動作は、少しの電流のアンバランスで回路動作が不安定となり、バイアス電流を生成できなくなる場合がある。
【0010】
例えば、バイアス電流設定用抵抗器R1を形成する抵抗素子にダイオードが寄生的に形成されるが、このダイオードとサブストレート(VSS電位)との間にリーク電流が発生することがあり、このような場合、上述したように回路動作が不安定状態となる。
【0011】
ここで、
図3を参照しつつ、上述のリーク電流について説明する。
図3は、バイアス電流設定用抵抗器R1の上位端であるA点において、サブストレートVSS電位との間に寄生的に形成されるダイオードに起因するリーク電流ILEAKが発生した場合の等価回路を表している。なお、同図においてリーク電流は点線により表されている。
従来、飽和領域での動作では、全く問題とならなかった程のリーク電流であってもサブスレッショールド領域での動作では大きな問題となる。
【0012】
仮に、従来、飽和領域の動作で数十μAのバイアス電流を生成していたとすると、数nAのリーク電流は問題とならなかったのが、サブスレッショールド領域で回路が動作するようになるとバイアス電流は数十nA程度となるため、数nAのリーク電流が問題となってくる。
【0013】
寄生的に存在する、いわゆる寄生ダイオードの温度特性は、大凡80℃程度から急激に増加し、100℃を越える付近では数nAに達する。
この電流がA点からサブストレート(VSS)に、寄生ダイオードの逆方向リーク電流として流れることで、トランジスタMN1、MN2には電流が流れなくなり、バイアス電流生成回路としての動作を停止させてしまうという問題があった。
【0014】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、トランジスタの動作領域の如何に関わらず安定したバイアス電流の生成、出力を可能とするバイアス電流生成回路を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記本発明の目的を達成するため、本発明に係るバイアス電流生成回路は、
第1の電源電圧端子にソースが接続されたゲート幅の異なる2つのトランジスタと、前記2つのトランジスタを駆動する第2の電源電圧端子に接続されたカレントミラー回路と、前記2つのトランジスタと前記カレントミラー回路との間に設けられた抵抗器とを有し、前記2つのトランジスタのゲート電圧の差によって前記抵抗器に生ずる電流を基に、バイアス電流を生成してなるバイアス電流生成回路において、
前記カレントミラー回路と前記抵抗器との接続点と前記第1の電源電圧端子との間にリーク電流経路が形成された場合に、前記リーク電流により不足する前記バイアス電流を補償する回路動作維持回路を設
け、
前記カレントミラー回路は、第1及び第2の第1導電型MOS電界効果型トランジスタにより構成され、
前記第1及び第2の第1導電型MOS電界効果型トランジスタは、各々のゲートと前記第1の第1導電型MOS電界効果型トランジスタのドレインが相互に接続されると共に、第2のバイアス端子に接続され、
前記第1及び第2の第1導電型MOS電界効果型トランジスタのソースは、前記第2の電源電圧端子を介して上位電源電圧が印加可能とされ、
前記ゲート幅の異なる2つのトランジスタは、第1及び第2の第2導電型MOS電界効果型トランジスタにより構成され、
前記第1及び第2の第2導電型MOS電界効果型トランジスタのソースは、前記第1の電源電圧端子を介して下位電源電圧が印加可能とされる一方、前記第1の第2導電型MOS電界効果型トランジスタのゲートは、前記第2の第2導電型MOS電界効果型トランジスタのドレインと相互に接続されると共に第1のバイアス端子に接続され、前記第2の第2導電型MOS電界効果型トランジスタのゲートは、前記第2の第1導電型MOS電界効果型トランジスタのドレインと接続され、前記第1の第2導電型MOS電界効果型トランジスタのドレインは、前記第1の第1導電型MOS電界効果型トランジスタのドレインと接続され、前記第2の第2導電型MOS電界効果型トランジスタのドレインは、前記抵抗器を介して前記第2の第1導電型MOS電界効果型トランジスタのドレインと接続され、
前記回路動作維持回路は、第3の第1導電型MOS電界効果型トランジスタと、第3乃至第5の第2導電型MOS電界効果型トランジスタを有し、
前記第3の第1導電型MOS電界効果型トランジスタのドレインは、前記第3の第2導電型MOS電界効果型トランジスタのドレインと、ダイオード接続された前記第4の第2導電型MOS電界効果型トランジスタのゲート及びドレインと、前記第5の第2導電型MOS電界効果型トランジスタのゲートとに接続され、
前記第3の第1導電型MOS電界効果型トランジスタのゲートは、前記第1及び第2の第1導電型MOS電界効果型トランジスタのゲート、及び、前記第5の第2導電型MOS電界効果型トランジスタのドレインと共に前記第2のバイアス端子に接続され、
前記第3の第1導電型MOS電界効果型トランジスタのソースは、前記第2の電源電圧端子に接続され、
前記第3乃至第5の第2導電型MOS電界効果型トランジスタのソースは、前記第1の電源電圧端子に接続され、
前記第3の第2導電型MOS電界効果型トランジスタのゲートは、前記第2の第2導電型MOS電界効果型トランジスタのドレインに接続され、
前記第1及び第2のバイアス端子間に出力される前記バイアス電流を生成すると共に、前記第2の第1導電型MOS電界効果型トランジスタのドレインと前記抵抗器との接続点から前記下位電源電圧側へ寄生ダイオードを介しての前記リーク電流の発生による前記バイアス電流の不足を補償可能としてなるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、リーク電流が発生しても、リーク電流により減少するバイアス電流の減少分が回路動作維持回路により補償されるため、正常時と同様に安定したバイアス電流出力が確保され、回路動作の安定性、信頼性向上を図ることができるという効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態におけるバイアス電流生成回路の回路構成例を示す回路図である。
【
図2】従来のバイアス電流生成回路の回路構成例を示す回路図である。
【
図3】
図2に示された従来回路において生ずるリーク電流を考慮した等価回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、
図1を参照しつつ説明する。
なお、以下に説明する部材、配置等は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
最初に、本発明の実施の形態におけるバイアス電流生成回路の回路構成について説明する。
本発明の実施の形態におけるバイアス電流生成回路は、第1乃至第3のカレントミラー回路51〜53と抵抗器21とを主たる構成要素として構成されたものとなっている。また、このバイアス電流生成回路内には、後述するように第3のカレントミラー回路53を中心に回路動作維持回路61が設けられている。
【0019】
まず、第1のカレントミラー回路51は、第1及び第2のP型MOS電界効果型トランジスタ(
図1においては、それぞれ「MP1」、「MP2」と表記)11,12により、第2のカレントミラー回路52は、第1及び第2のN型MOS電界効果型トランジスタ(
図1においては、それぞれ「MN1」、「MN2」と表記)1,2により、それぞれ構成されたものとなっている。
なお、以後、便宜上、第1導電型MOS電界効果型トランジスタであるP型MOS電界効果型トランジスタを「PMOSトランジスタ」と、第2導電型MOS電界効果型トランジスタであるN型MOS電界効果型トランジスタを「NMOSトランジスタ」と、それぞれ称することとする。
【0020】
第1のカレントミラー回路51において、第1及び第2のPMOSトランジスタ11,12は、各々のゲートと第1のPMOSトランジスタ11のドレインとが相互に接続されると共に、第2のバイアス端子32に接続されている。
【0021】
また、第1及び第2のPMOSトランジスタ11,12のソースには、第2の電源電圧端子42を介して外部から上位電源電圧VDDが印加されるようになっている。
かかる第1のカレントミラー回路51においては、第1のPMOSトランジスタ11が基準側トランジスタ、第2のPMOSトランジスタ12が出力側トランジスタとなっている。
この第1のカレントミラー回路51は、次述する第2のカレントミラー回路52を構成する第1及び第2のNMOSトランジスタ1,2の駆動を担うものとなっている。
【0022】
一方、第2のカレントミラー回路52において、第1及び第2のNMOSトランジスタ1,2は、ソースに第1の電源電圧端子41を介して下位電源電圧VSS(VDD>VSS)が印加されるようになっている一方、出力側トランジスタである第1のNMOSトランジスタ1のゲートと、基準側トランジスタである第2のNMOSトランジスタ2のドレインとが相互に接続されて第1のバイアス端子31に接続されている。
【0023】
また、第1のNMOSトランジスタ1のドレインは、先の第1のカレントミラー回路51の基準側トランジスタである第1のPMOSトランジスタ11のドレインに接続されている。
【0024】
一方、第2のNMOSトランジスタ2は、ゲートとドレインとの間に抵抗器(
図1においては「R1」と表記)21が接続されると共に、第2のNMOSトランジスタ2のゲートと抵抗器21の接続点は、第1のカレントミラー回路51の出力側トランジスタである第2のPMOSトランジスタ12のドレインに接続されている。
【0025】
この実施例においては、第3のカレントミラー回路53は、第3のNMOSトランジスタ(
図1においては「MN3」と表記)3と、第3のPMOSトランジスタ(
図1においては「MP3」と表記)13と共に回路動作維持用回路61を構成するものとなっている。
【0026】
まず、第3のカレントミラー回路53は、第4及び第5のNMOSトランジスタ(
図1においては、それぞれ「MN4」、「MN5」と表記)4,5により構成されている。
すなわち、第4及び第5のNMOSトランジスタ4,5は、ソースが相互に接続されて下位電源電圧VSSが印加されるようになっている一方、第4及び第5のNMOSトランジスタ4,5のゲートと第4のNMOSトランジスタ4のドレインとが相互に接続されて、その接続点は、次述するように第3のPMOSトランジスタ13のドレインに接続されている。ここで、第4のNMOSトランジスタ4は、いわゆるダイオード接続状態となっている。
【0027】
また、第5のNMOSトランジスタ5のドレインは、第2のバイアス端子32に接続されている。
第3のNMOSトランジスタ3は、ソースに下位電源電圧VSSが印加されるようになっている一方、ドレインは第3のPMOSトランジスタ13のドレインに接続され、ゲートは、第2のNMOSトランジスタ2のドレインに接続されている。
【0028】
第3のPMOSトランジスタ13は、ソースに上位電源電圧VDDが印加されるようになっている一方、ドレインには先に述べたように第3のNMOSトランジスタ3のドレインが接続され、ゲートは第1のPMOSトランジスタ11のドレインに接続されている。
【0029】
この第3のPMOSトランジスタ13は、第1のPMOSトランジスタ11とカレントミラー回路を構成しており、第3のPMOSトランジスタ13は、カレントミラー回路における出力側トランジスタとなっている。なお、第1のPMOSトランジスタ11と第3のPMOSトランジスタ13のゲート幅比は1:1に設定されている。
第3のPMOSトランジスタ13には、第1及び第2のバイアス端子31,32間に出力されるバイアス電流IOUTと同じ電流が生成され、第3及び第4のNMOSトランジスタ3,4へ供給されるものとなっている。
【0030】
次に、かかる構成における動作について説明する。
まず、各トランジスタが飽和領域で動作可能な温度環境にあり、回路が正常な場合における基本的な回路動作は、従来回路(
図3参照)と基本的に同様である。
すなわち、第2のカレントミラー回路52を構成する第1及び第2のNMOSトランジスタ1,2の、それぞれのチャンネル長は同一に設定され、ゲート幅は、ゲート幅の比がm:1に設定されていると仮定した場合に、第1及び第2のPMOSトランジスタ11,12に流れるバイアス電流IOUTは、従来回路同様、式1により表される。
【0031】
IOUT=[2/{μC0(W/L)}]・(1/R1
2)・(1−1/m
1/2)
2・・・式1
【0032】
ここで、μはNMOSトランジスタの電子移動度、C0は単位面積当たりのゲート容量、Wは第2のNMOSトランジスタ2のゲート幅、Lは第2のNMOSトランジスタ2のゲート長である。
【0033】
次に、高温の雰囲気温度等の原因により、ノードA点(
図1参照)から下位電源電圧VSS側へリーク電流が生ずる状態となった場合の回路動作について説明する。
雰囲気温度が高温となったこと等により、抵抗器21に寄生的に存在するダイオードを通して、
図1のA点から下位電源電圧VSS側へリーク電流が流れ始め、リーク電流経路が形成されると、第1のNMOSトランジスタ1のゲート電圧が低下し始め、同時に第3のNMOSトランジスタ3のゲート電圧も低下し始める。
【0034】
これによって、第3のPMOSトランジスタ13から第3及び第4のNMOSトランジスタ3,4へそれぞれ供給されていた電流の内、第3のNMOSトランジスタ3へ供給されていた電流の一部が、第4のNMOSトランジスタ4へ余分に流れ込むこととなる。
【0035】
そのため、第4のNMOSトランジスタ4とカレントミラー回路を構成する第5のNMOSトランジスタ5の電流増加が生じ、第1乃至第3のPMOSトランジスタ11〜13のゲート電圧が引き下げられる。
【0036】
これによって、上述の第5のNMOSトランジスタ5の電流増加に伴う第2のPMOSトランジスタ12への供給電流の増加が生じ、下位電源電圧VSS側へ流れ出したリーク電流分の不足電流が補償されることとなる。
したがって、
図1のA点から下位電源電圧VSS側へ寄生ダイオードを介したリーク電流が生じても、結果的には、正常時と同様に第1のPMOSトランジスタ11には安定した所望のバイアス電流が維持されることとなる。
【0037】
なお、本発明に係るバイアス電流生成回路は、
図1に示された回路構成例に限定される必要はなく、
図1における第1導電型MOS電界効果型トランジスタ(P型MOS電界効果型トランジスタ)と第2導電型MOS電界効果型トランジスタ(
N型MOS電界効果型トランジスタ)とを、それぞれ入れ替え、上下に反転させた回路構成としても良いことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
トランジスタの動作領域の如何に関わらず安定したバイアス電流の生成が所望されるバイアス電流生成回路に適用できる。
【符号の説明】
【0039】
51…第1のカレントミラー回路
52…第2のカレントミラー回路
53…第3のカレントミラー回路
61…回路動作維持回路