(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
超臨界状流体を注入した樹脂を射出発泡成形する場合、超臨界状流体の注入時の圧力は、理論上は流体の臨界圧以上とすればよいとされているが、実際は、超臨界状流体の導入量を正確に計量する目的等のため、臨界圧をはるかに超える高圧(例えば10MPaを超える圧力)とされることが通常である。しかしながら、流体の注入時に10MPaを超える高い圧力を加えると、得られる成形品の表面がざらついた外観になったり、加熱処理後に表面にブリスターと呼ばれる微細な気泡状の膨出部が形成されたりして、成形品の外観が悪くなってしまう場合がある。反対に、流体の注入時の圧力が低すぎると、金型内への樹脂の充填が不十分となり、ショートショットあるいは連続成形でのショット間の品質ばらつきが生じ成形が困難となってしまったり、ヒケの発生による外観不良が生じてしまう。
【0005】
本発明は、良外観性を保ちつつバリを抑制することが可能な発泡成形品の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下に関する。
[1]熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物を射出発泡成形する工程を有し、前記樹脂組成物が、無機フィラーを全樹脂組成物中20質量%以上含有し、前記射出発泡成形する工程において、前記樹脂組成物に、圧力が1MPa以上10MPa以下の気体を、前記射出発泡成形する工程で得られる発泡成形品の、金型寸法から算出される基準重量に対する重量減少率が3%以上12%以下となる量で接触させる、発泡成形品の製造方法。
[2]前記樹脂組成物の溶融粘度が100Pa・s以上600Pa・s以下である、[1]に記載の発泡成形品の製造方法。
[3]前記樹脂組成物が、熱可塑性エラストマーを熱可塑性樹脂100質量部に対して1質量部以上50質量部以下含む、[1]又は[2]に記載の発泡成形品の製造方法。
[4]前記熱可塑性樹脂が、ポリアリーレンサルファイド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂から選択される少なくとも一種を含有する、[1]から[3]のいずれかに記載の発泡成形品の製造方法。
[5]重量減少率が0%の基準成形品に対するISO178に準拠して測定した曲げ
強さの保持率が80%以上である発泡成形品を得る、[1]から[4]のいずれかに記載の発泡成形品の製造方法。
[6]前記射出発泡成形する工程で得られた発泡成形品を100〜350℃で1〜120分間加熱処理する工程を有する、[1]から[5]のいずれかに記載の発泡成形品の製造方法。
[7]前記加熱処理する工程後の発泡成形品の表面に膨出部が形成されていない、[6]に記載の発泡成形品の製造方法。
[8]配管部品用の発泡成形品を得る、[1]から[7]のいずれかに記載の発泡成形品の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、良外観性を保ちつつバリを抑制することが可能な発泡成形品の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜変更を加えて実施することができる。
【0009】
[発泡成形品の製造方法]
本実施形態に係る発泡成形品(以下、単に「成形品」ともいう。)の製造方法は、熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物を射出発泡成形する工程(以下、単に「射出発泡成形工程」ともいう。)を有する。なお、発泡成形品とは、射出発泡成形により成形され、内部に気泡構造を有する成形品のことをいう。
【0010】
(樹脂組成物)
樹脂組成物は、熱可塑性樹脂を含有する。熱可塑性樹脂としては、射出成形に用いることができる熱可塑性樹脂であればよく、特に限定されない。熱可塑性樹脂としては、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリル、ポリオレフィン、アラミド、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリーレンサルファイド、ポリアセタール、液晶ポリマー(芳香族ポリエステル、芳香族ポリエステルアミド等)、ポリイミド、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン等が挙げられる。これらは単独又は2種以上組み合わせて使用することが可能である。中でも、機械的特性、耐熱性、耐薬品性に優れる点で、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリーレンサルファイド、ポリアセタール、液晶ポリマー、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、から選ばれる1種又は2種以上の樹脂を含むことが好ましく、更に成形性に優れる点で、ポリアリーレンサルファイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、液晶ポリマーから選ばれる1種又は2種以上の樹脂を含むことがより好ましく、特に外観性に優れる点で、ポリエチレンテレフタレート及び/又はポリアリーレンサルファイドが好ましい。
【0011】
熱可塑性樹脂の含有量は、樹脂の特性を十分発揮する点で、全樹脂組成物中30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましい。
【0012】
樹脂組成物の溶融粘度は、当該樹脂組成物を構成する熱可塑性樹脂のうち、最も添加量が多いものを基準に、当該熱可塑性樹脂が結晶性樹脂であれば融点+30℃、非晶性樹脂であればガラス転移温度+120℃、及びせん断速度1216sec
−1で測定した溶融粘度が、100Pa・s以上600Pa・s以下であることが好ましく、150Pa・s以上500Pa・s以下であることがより好ましく、200Pa・s以上400Pa・s以下であることがさらに好ましい。この範囲にすることで、良好な成形性を確保しつつ、外観が優れ、かつバリを抑制した成形品を得ることができる。樹脂組成物は、上記範囲の溶融粘度を有する樹脂を1種又は2種以上含むことができる。
【0013】
樹脂組成物は、無機フィラーを、樹脂組成物全体に対して20質量%以上、好ましくは25質量%以上含有する。無機フィラーが20質量%未満の場合は、得られる成形品の表面にブツと呼ばれる細かい凹凸やアバタと呼ばれる微細なヒケが形成されたり、バリが形成されてしまったりして、良外観性とバリの抑制とを両立することが困難となる。無機フィラーの含有量の上限値は、樹脂の流動性確保の点で、70質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることがさらに好ましい。
【0014】
無機フィラーとしては、例えば、繊維状、粉粒状又は板状の無機フィラーを用いることができる。繊維状無機フィラーとしては、ガラス繊維、アスベスト繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化珪素繊維、硼素繊維、チタン酸カリウム繊維、さらにステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮等の金属の繊維状物等を例示することができる。また、粉粒状フィラーとしては、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ミルドガラスファイバー、ガラスバルーン、ガラス粉、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、カオリン、タルク、クレー、珪藻土、ウォラストナイト等の珪酸塩、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、アルミナ等の金属の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の金属の炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の金属の硫酸塩、その他フェライト、炭化珪素、窒化珪素、窒化硼素、各種金属粉末等を例示することができる。また、板状フィラーとしては、マイカ、ガラスフレーク、各種の金属箔等を例示することができる。これらの無機フィラーは、単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0015】
無機フィラーの大きさは、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、特に限定されない。例えば、繊維状フィラーの平均径は、1μm〜30μm(好ましくは3μm〜20μm)程度とすることができ、平均長は、例えば、100μm〜5mm(好ましくは300μm〜4mm、さらに好ましくは500μm〜3.5mm)程度とすることができる。また、板状又は粉粒状フィラーの平均一次粒子径は、例えば、1μm〜500μm、好ましくは10μm〜100μm程度とすることができる。なお、繊維状フィラーの平均径と平均長、並びに板状又は粉状フィラーの平均一次粒子径は、樹脂組成物中に配合される前の繊維状フィラー、板状又は粉状フィラーについて、CCDカメラで撮影した画像を解析し、加重平均により算出した値である。
【0016】
樹脂組成物は、発泡成形品の強度(特に耐衝撃性)の低下を抑制するため、エラストマーを含有してもよい。エラストマーの種類は特に制限されず、例えば、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ウレタン系エラストマー及びコアシェル系エラストマー等が挙げられる。
【0017】
オレフィン系エラストマーとして好ましいものは、エチレン及び/又はプロピレンを主成分とする共重合体であり、具体的にはエチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0018】
スチレン系エラストマーとしては、スチレン等のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと未水素化及び/又は水素化した共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックとからなるブロック共重合体が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0019】
ポリエステル系エラストマーの例としては、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートといった芳香族ポリエステルをハードセグメントとし、ポリエチレングリコールやポリテトラメチレングリコールといったポリエーテル、またはポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリカプロラクトンといった脂肪族ポリエステルをソフトセグメントとするブロック共重合体が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0020】
ポリアミド系エラストマーの例としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12などをハードセグメントとし、ポリエーテルまたは脂肪族ポリエステルをソフトセグメントとするブロック共重合体が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0021】
ウレタン系エラストマーの例としては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネートとエチレングリコール、テトラメチレングリコール等のグリコールとを反応させることによって得られるポリウレタンをハードセグメントとし、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルもしくはポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリカプロラクトン等の脂肪族ポリエステルをソフトセグメントとするブロック共重合体が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0022】
コアシェル系エラストマーは、コア層(コア部)と、このコア層(コア部の表面)の一部又は全部を被覆するシェル層とで構成された多層構造を有するポリマーである。コアシェル系エラストマーはコア層がゴム成分(軟質成分)で構成され、特にアクリルゴム成分(アクリル系ゴム)が望ましい。ゴム成分のガラス転移温度は、例えば、0℃未満(例えば、−10℃以下)、好ましくは−20℃以下(例えば、−180〜−25℃程度)、さらに好ましくは−30℃以下(例えば、−150〜−40℃程度)であってもよい。
【0023】
ゴム成分としてのアクリル系ゴムは、アクリル系モノマー[特に、アルキルアクリレート(ブチルアクリレートなどのアクリル酸C1−12アルキルエステル、好ましくはアクリル酸C1−8アルキル、さらに好ましくはアクリル酸C2−6アルキルエステル)などのアクリル酸エステル]を主成分とするポリマーである。アクリル系ゴムは、アクリル系モノマーの単独又は共重合体(アクリル系モノマー同士の共重合体、アクリル系モノマーと他の不飽和結合含有モノマーとの共重合体など)であってもよく、アクリル系モノマー(および他の不飽和結合含有モノマー)と架橋性モノマーとの共重合体であってもよい。
【0024】
エラストマーの含有量は、好ましくは、熱可塑性樹脂100質量部に対して、1質量部以上50質量部以下であり、より好ましくは3質量部以上30質量部以下、さらに好ましくは5質量部以上15質量部以下である。
【0025】
樹脂組成物は、必要に応じて、酸化防止剤、耐候安定剤、分子量調整剤、流動性調整剤、紫外線吸収剤、近赤外線吸収剤、帯電防止剤、染料・顔料等の着色剤、潤滑剤、離型剤、結晶化促進剤、結晶核剤、難燃剤、難燃助剤等を含有することができる。
【0026】
樹脂組成物の形態は、粉粒体混合物であってもよいし、ペレット等の溶融混合物(溶融混練物)であってもよい。樹脂組成物の製造方法は特に限定されるものではなく、当該技術分野で知られている設備及び方法を用いて製造することができる。例えば、必要な成分を混合し、1軸又は2軸の押出機又はその他の溶融混練装置を使用して混練し、成形用ペレットとして調製することができる。押出機又はその他の溶融混練装置は複数使用してもよい。また、全ての成分をホッパから同時に投入してもよいし、一部の成分はサイドフィード口から投入してもよい。
【0027】
(射出発泡成形工程)
射出発泡成形工程では、上記樹脂組成物を射出発泡成形する。射出発泡成形は、上記樹脂組成物に、圧力が1MPa以上10MPa以下、好ましくは3MPa以上8MPa以下の気体を接触させて射出成形することにより行う。圧力が1MPa未満では、金型内への樹脂の充填が不十分となり成形が困難になってしまったり、金型内に樹脂を充填させるために樹脂圧を高くすることによってバリが発生してしまったりすることがある。圧力が10MPaを超えると、得られる成形品の表面がざらついた外観になったり、加熱処理後にブリスターが形成されやすくなったりする。
【0028】
気体は、加圧気体を用いることができ、窒素、二酸化炭素、圧縮空気、フロン、炭化水素等を挙げることができる。これらの気体の種類によっては前述の圧力の範囲において相変化が起こりうるが、本実施形態の説明においては、それらを含めて「気体」と称する。
【0029】
気体の樹脂組成物中への溶解量は、得られる成形品の金型寸法から算出される基準重量に対する重量減少率と相関関係にある。本実施形態における気体の使用量は、射出発泡成形工程で得られる成形品の、金型寸法から算出される基準重量に対する重量減少率が3%以上12%以下、好ましくは、5%以上10%以下となる量である。気体の使用量を上記の範囲とすることで、良外観性とバリの抑制効果とを両立することができる。気体の使用量の調整は、金型内への溶融樹脂の射出量の調整により行うことができる。例えば、金型内への溶融樹脂の射出量を少なくすると、気体の使用量を多くすることができる。
【0030】
なお、「金型寸法から算出される基準重量」は、発泡成形ではない通常の射出成形によって、金型内に樹脂組成物を100%充填して成形して得られる成形品の重量を意味する。ここで、結晶性熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物において、「100%充填」とは、いわゆるゲートシール時間以上の射出時間を確保することで、キャビティ内の樹脂組成物の充填量が安定した状態を意味する。
【0031】
気体を樹脂組成物に接触させる方法は、通常の射出発泡成形と同様にして行うことができる。例えば、熱可塑性樹脂を溶融させる、スクリューが設けられたシリンダと、該シリンダ内に気体を供給する容器とを備える射出成形機を用いて行うことができる。気体の供給方法は、特に限定されず、窒素ボンベ、二酸化炭素ボンベ、圧縮空気ボンベ等のボンベから供給弁を通じて射出発泡成形機に供給してもよく、その際に減圧弁を介して減圧して供給してもよい。また、圧縮空気を用いる場合は、大気中の空気をコンプレッサー等で圧縮して供給してもよい。
【0032】
(加熱処理工程)
本実施形態に係る発泡成形品の製造方法は、上記射出発泡成形工程の後に、射出発泡成形工程で得られた成形品を100〜350℃で1〜120分間加熱処理する工程を有していてもよい。加熱処理することにより、結晶化度を高め、機械的特性や寸法安定性を高めることができる。従来の発泡成形品の製造方法では、射出発泡成形後の成形品の表面の外観が良好であったとしても、加熱処理すると表面に気泡状の微細な膨出部(ブリスター)が形成される場合がある。特に、200〜320℃の高温で1〜10分程度熱処理されるリフローハンダ工程などにおいて、従来の発泡成形品ではブリスターの問題が発生する場合があったが、本実施形態の発泡成形品の製造方法によれば、射出発泡成形工程の後に加熱処理した場合でも、表面にブリスターが形成されることを防ぐことができ、良外観性を保つことができる。
【0033】
(他の工程)
本実施形態に係る発泡成形品の製造方法は、通常の射出発泡成形で行われる、樹脂ペレットと有機発泡剤及び/又は無機発泡剤やマイクロカプセルのドライブレンド工程等を有することができる。
【0034】
[発泡成形品]
本実施形態に係る発泡成形品の製造方法によって得られる発泡成形品は、ISO178に準拠して測定した曲げ強さが、重量減少率0%の基準成形品に対する保持率として、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。「重量減少率が0%の基準成形品」とは、発泡成形ではない通常の射出成形によって、金型内に樹脂組成物を100%充填して(結晶性樹脂においてはゲートシール時間を確保し重量を安定化した状態として)成形して得られる成形品のことを意味している。基準成形品に対する曲げ強さの保持率を80%以上とすることで、製品での使用時における機械的特性を大きく損なわず使用することができる。
【0035】
この発泡成形品は、加熱処理後もブリスターが形成されにくい。よって、加熱処理工程後の発泡成形品の表面に膨出部が形成されていないことが好ましい。なお、「膨出部」とは、発泡成形品の表面から突出する気泡状の微細な膨らみのことをいう。ブリスターと呼ばれる膨出部の場合、通常、最大径が2mm〜5mm程度、高さが0.2mm〜1mm程度である。
【0036】
(用途)
本実施形態に係る発泡成形品の製造方法により得られる発泡成形品は、種々の用途に用いることができる。特に、この発泡成形品は、良外観性に優れ、かつバリが抑制されているので、バリが少ない成形品を用いることが好ましいとされる用途に好適に用いることができる。例えば、配管部品は、接合部分にバリが存在すると液漏れの原因となるため、バリが少ない成形品を用いることが好ましい。よって、本実施形態に係る発泡成形品の製造方法により得られる発泡成形品は、流体配管部品用途(流体配管のジョイント部品用途、流体配管用ポート部品用途)等に好適に用いることができる。流体配管部品用途としては、例えば、冷温水配管部品用途を挙げることができる。
【実施例】
【0037】
以下実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0038】
[材料]
使用した樹脂組成物は以下のとおりである。なお、ポリアリーレンサルファイド樹脂組成物(融点約280℃)の溶融粘度は、310℃及びせん断速度1216sec
−1で測定した値である。
PPS1:ポリプラスチックス株式会社製、ポリアリーレンサルファイド樹脂にガラス繊維(オーウェンス コーニング ジャパン合同会社製、平均長3mm、平均径10μm)を30質量%含有する、溶融粘度220Pa・sのポリアリーレンサルファイド樹脂組成物
PPS2:ポリプラスチックス株式会社製、ポリアリーレンサルファイド樹脂にガラス繊維(オーウェンス コーニング ジャパン合同会社製、平均長3mm、平均径10μm)を40質量%含有する、溶融粘度160Pa・sのポリアリーレンサルファイド樹脂組成物
PPS3:ポリプラスチックス株式会社製、ポリアリーレンサルファイド樹脂にガラス繊維(日本電気硝子株式会社製、平均長3mm、平均径13μm)を40質量%、タルク(松村産業株式会社製、平均径2.3μm)を13質量%、ガラスビーズ(ポッターズ・バロティーニ株式会社製、平均径20μm)を7質量%含有する、溶融粘度200Pa・sのポリアリーレンサルファイド樹脂組成物
PPS4:ポリプラスチックス株式会社製、ポリアリーレンサルファイド樹脂100質量部に対して、オレフィン系エラストマーとして、日油株式会社製「モディパーA4300」及びダウ・ケミカル日本株式会社製「Engage8440」を各5質量部含有し、ガラス繊維(日本電気硝子株式会社製、平均長3mm、平均径13μm)を樹脂組成物全体の30質量%含有する、溶融粘度400Pa・sのポリアリーレンサルファイド樹脂組成物。
PPS5:ポリプラスチックス株式会社製、ポリアリーレンサルファイド樹脂にガラス繊維(日本電気硝子株式会社製、平均長3mm、平均径13μm)を40質量%含有する、溶融粘度300Pa・sのポリアリーレンサルファイド樹脂組成物
なお、PPS1からPPS5の各樹脂組成物は、上記以外にそれぞれ離型剤として約0.2質量%のペンタエリスリトールテトラステアレートを含む。
【0039】
[実施例1〜17、比較例1〜16]
日本製鋼所製射出成形機(型締力40トン)のシリンダ部にガス注入機構(窒素ボンベに接続された発泡剤供給機構と導入速度調整容器を備え、所定の圧力でガスを注入する機構)を設置した射出発泡成形機を用いて、常時一定圧に制御した状態でシリンダの飢餓ゾーンにダイレクトに注入した窒素ガスと、飢餓供給にてホッパより適正量のペレットを供給して計量可塑化した、表1に示す各材料(熱可塑性樹脂組成物)の溶融樹脂とを混練させた後、通常の射出成形と同等の射出保圧工程(ただし保圧力はゼロ設定)にて射出発泡成形を行った。発泡成形品の重量減小率はV−P射出切替え位置の変更により調整した。これにより、60mm×60mm×厚さ2mmの平板状の発泡成形品(一辺の中央部に幅4mm×厚さ2mmのサイドゲート)を得た。
ここで、注入する気体の圧力(ガス圧)や成形時の樹脂温(シリンダ温度)等の各成形条件を、表1に示す通り変化させた成形品も作製した。なお、PPS1からPPS5の射出発泡成形における金型温度は、いずれも140℃とした。
また、「基準成形品(重量減少率0%)」として、通常の射出成形方法(窒素ガスを注入せず、V−P射出切替え後は保圧力により充填する以外は上記と同様)により同様の平板状成形品を作製した。
【0040】
[評価]
(バリ)
得られた発泡成形品の表面のバリの長さを計測し、以下の基準で評価した。結果を表1に示した。なお、バリは、上記で用いた金型の場合、発泡成形品の一端面がいずれか一方の主面側に張り出すように形成される。
4:0.05mm未満
3:0.05mm以上、0.1mm未満
2:0.1mm以上、0.2mm未満
1:0.2mm以上
【0041】
(表面外観)
株式会社ミツトヨ製SURFTEST EXTREME SV−3000を用いて、得られた平板状の発泡成形品の突出しピン跡がない面(固定金型面側)について、ゲート側の辺から10mm内側を、流動直角方向に沿った線上の中央付近12.5mmにおける算術平均粗さRaを、JIS B 0601に準じて測定した。発泡成形品の算術平均粗さRaと基準成形品の算術平均粗さRaの比率(対基準Ra比:発泡成形品のRa÷基準成形品のRa)を求め、以下の基準で評価した。結果を表1に示した。
4:1未満
3:1以上2未満
2:2以上3未満
1:3以上
【0042】
(ブリスター)
得られた発泡成形品を、加熱式熱風恒温槽装置(株式会社いすゞ製作所製VTEC−75)を用いて、150℃で1時間加熱処理した。加熱処理後の発泡成形品の表面を目視で観察し、ブリスターの有無を評価した。結果を表1に示した。
2:ブリスターが全く発生しないか、ほとんど発生しない。
1:著しくブリスターが発生する。
【0043】
(曲げ強さの保持率)
実施例及び比較例の発泡成形品、並びに基準成形品について、60×60×2mmの平板状の成形品から、60×12.6×2mmの試験片を切り出し、エー・アンド・デイ社製万能試験機RTC−1325Aを用いて、ISO178に準拠して、試験速度1mm/min、荷重点R=5mm、支持スパン32mm、支点R=2mmにて3点曲げ中央荷重法にて曲げ強さを測定した。得られた数値から、実施例及び比較例の発泡成形品の、基準成形品に対する曲げ強さの保持率を算出し、以下の基準で判定した。結果を表1に示した。
3:保持率が90%以上
2:保持率が80%以上90%未満
1:保持率が80%未満
【0044】
【表1】