(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
マルチ荷電粒子ビーム全体の2倍を超えないサイズの設定領域を所定の量子化寸法で格子状に分割した領域となる複数の画素領域について、画素領域毎に、描画シーケンスに沿って当該画素領域に照射されるビームの位置ずれによって生じる照射パターンの位置ずれを補正する当該画素領域へのビームの第1のドーズ変調率と当該画素領域の周囲の少なくとも1つの画素領域へとドーズ分配するための第2のドーズ変調率とを算出する変調率データ算出部と、
画素領域毎に、算出された当該画素領域へのビームの前記第1のドーズ変調率を当該画素領域の位置に定義すると共に、当該画素領域の周囲の少なくとも1つの画素領域へとドーズ分配するための前記第2のドーズ変調率を当該画素領域の位置と関連させて当該画素領域の周囲の前記少なくとも1つの画素の位置に定義するように、前記設定領域について画素領域毎にドーズ変調率群が定義された変調率マップを作成する変調率マップ作成部と、
試料における前記設定領域よりも十分に大きい描画領域を前記描画シーケンスに沿って前記マルチ荷電粒子ビームを用いて描画する場合に、前記変調率マップが予め設定された画素領域数毎に分割された複数のブロックのうち同じブロックの複数の画素領域に定義されたドーズ変調率群のデータを他のブロックのドーズ変調率群のデータに切りかえずに連続して繰り返し使用して、前記描画領域内の対象となる各位置へのビームの入射照射量を演算する照射量演算部と、
前記各位置にそれぞれ演算された入射照射量のビームが照射されるように、マルチ荷電粒子ビームを用いて試料にパターンを描画する描画部と、
を備えたことを特徴とするマルチ荷電粒子ビーム描画装置。
前記変調率マップを予め設定された画素領域数毎に前記複数のブロックに分割するブロック分割部をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載のマルチ荷電粒子ビーム描画装置。
マルチ荷電粒子ビーム全体の2倍を超えないサイズの設定領域を所定の量子化寸法で格子状に分割した領域となる複数の画素領域について、画素領域毎に、描画シーケンスに沿って当該画素領域に照射されるビームの位置ずれによって生じる照射パターンの位置ずれを補正する当該画素領域へのビームの第1のドーズ変調率と当該画素領域の周囲の少なくとも1つの画素領域へとドーズ分配するための第2のドーズ変調率とを算出する工程と、
画素領域毎に、算出された当該画素領域へのビームの前記第1のドーズ変調率を当該画素領域の位置に定義すると共に、当該画素領域の周囲の少なくとも1つの画素領域へとドーズ分配するための前記第2のドーズ変調率を当該画素領域の位置と関連させて当該画素領域の周囲の前記少なくとも1つの画素の位置に定義するように、前記設定領域について画素領域毎にドーズ変調率群が定義された変調率マップを作成する工程と、
試料における前記設定領域よりも十分に大きい描画領域を前記描画シーケンスに沿って前記マルチ荷電粒子ビームを用いて描画する場合に、前記変調率マップが予め設定された画素領域数毎に分割された複数のブロックのうち同じブロックの複数の画素領域に定義されたドーズ変調率群のデータを他のブロックのドーズ変調率群のデータに切りかえずに連続して繰り返し使用して、前記描画領域内の対象となる各位置へのビームの入射照射量を演算する工程と、
前記各位置にそれぞれ演算された入射照射量のビームが照射されるように、マルチ荷電粒子ビームを用いて試料にパターンを描画する工程と、
を備えたことを特徴とするマルチ荷電粒子ビーム描画方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施の形態では、荷電粒子ビームの一例として、電子ビームを用いた構成について説明する。但し、荷電粒子ビームは、電子ビームに限るものではなく、イオンビーム等の荷電粒子を用いたビームでも構わない。
【0017】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における描画装置の構成を示す概念図である。
図1において、描画装置100は、描画機構150と制御系回路160を備えている。描画装置100は、マルチ荷電粒子ビーム描画装置の一例である。描画機構150は、電子鏡筒102と描画室103を備えている。電子鏡筒102内には、電子銃201、照明レンズ202、成形アパーチャアレイ基板203、ブランキングアパーチャアレイ機構204、縮小レンズ205、制限アパーチャ基板206、対物レンズ207、主偏向器208、及び副偏向器209が配置されている。描画室103内には、XYステージ105が配置される。XYステージ105上には、描画時には描画対象基板となるマスクブランクス等の試料101が配置される。試料101には、半導体装置を製造する際の露光用マスク、或いは、半導体装置が製造される半導体基板(シリコンウェハ)等が含まれる。XYステージ105上には、さらに、XYステージ105の位置測定用のミラー210が配置される。
【0018】
制御系回路160は、制御計算機110、メモリ112、偏向制御回路130、ステージ位置検出器139及び磁気ディスク装置等の記憶装置140,142,144を有している。制御計算機110、メモリ112、偏向制御回路130、ステージ位置検出器139及び記憶装置140,142,144は、図示しないバスを介して互いに接続されている。記憶装置140(記憶部)には、描画データが外部から入力され、格納されている。
【0019】
制御計算機110内には、位置ずれデータ取得部50、補正データ算出部54、補正マップ作成部55、ショットデータ作成部57、補正部59、描画制御部60、データ処理部61、分割部62、選択部63、変換部64、及びキャッシュメモリ70が配置されている。また、補正部59は、内部構成として、演算処理部67、及び判定部65を有している。位置ずれデータ取得部50、補正データ算出部54、補正マップ作成部55、ショットデータ作成部57、補正部59(演算処理部67、及び判定部65、)、描画制御部60、データ処理部61、分割部62、選択部63、及び変換部64といった各「〜部」は、処理回路を有する。かかる処理回路は、例えば、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置を含む。各「〜部」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いても良いし、或いは異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。位置ずれデータ取得部50、補正データ算出部54、補正マップ作成部55、ショットデータ作成部57、補正部59(演算処理部67、及び判定部65)、描画制御部60、データ処理部61、分割部62、選択部63、及び変換部64に入出力される情報および演算中の情報はメモリ112にその都度格納される。
【0020】
ここで、
図1では、実施の形態1を説明する上で必要な構成を記載している。描画装置100にとって、通常、必要なその他の構成を備えていても構わない。
【0021】
図2は、実施の形態1における成形アパーチャアレイ基板の構成を示す概念図である。
図2(a)において、成形アパーチャアレイ基板203には、縦(y方向)m列×横(x方向)n列(m,n≧2)の穴(開口部)22が所定の配列ピッチでマトリクス状に形成されている。
図2(a)では、例えば、512×8列の穴22が形成される。各穴22は、共に同じ寸法形状の矩形で形成される。或いは、同じ外径の円形であっても構わない。ここでは、y方向の各列について、x方向にAからHまでの8つの穴22がそれぞれ形成される例が示されている。これらの複数の穴22を電子ビーム200の一部がそれぞれ通過することで、マルチビーム20が形成されることになる。ここでは、縦横(x,y方向)が共に2列以上の穴22が配置された例を示したが、これに限るものではない。その他、例えば、縦横(x,y方向)どちらか一方が複数列で他方は1列だけであっても構わない。また、穴22の配列の仕方は、
図2(a)のように、縦横が格子状に配置される場合に限るものではない。
図2(b)に示すように、例えば、縦方向(y方向)1段目の列と、2段目の列の穴同士が、横方向(x方向)に寸法aだけずれて配置されてもよい。同様に、縦方向(y方向)2段目の列と、3段目の列の穴同士が、横方向(x方向)に寸法bだけずれて配置されてもよい。
【0022】
図3は、実施の形態1におけるブランキングアパーチャアレイ機構の構成を示す断面図である。
図4は、実施の形態1におけるブランキングアパーチャアレイ機構のメンブレン領域内の構成の一部を示す上面概念図である。なお、
図3と
図4において、制御電極24と対向電極26と制御回路41,43の位置関係は一致させて記載していない。ブランキングアパーチャアレイ機構204は、
図3に示すように、支持台29上にシリコン等からなる半導体基板(基板27)が配置される。基板27の中央部は、例えば裏面側から薄く削られ、薄い膜厚hのメンブレン領域30(第1の領域)に加工されている。メンブレン領域30を取り囲む周囲は、厚い膜厚Hの外周領域28(第2の領域)となる。メンブレン領域30の上面と外周領域28の上面とは、同じ高さ位置、或いは、実質的に高さ位置になるように形成される。基板27は、外周領域28の裏面で支持台29上に保持される。支持台29の中央部は開口しており、メンブレン領域30の位置は、支持台29の開口した領域に位置している。
【0023】
メンブレン領域30には、
図2に示した成形アパーチャアレイ基板203の各穴22に対応する位置にマルチビームのそれぞれのビームの通過用の通過孔25(開口部)が開口される。そして、メンブレン領域30上には、
図3及び
図4に示すように、各通過孔25の近傍位置に該当する通過孔25を挟んでブランキング偏向用の制御電極24と対向電極26の組(ブランカー:ブランキング偏向器)がそれぞれ配置される。また、メンブレン領域30上の各通過孔25の近傍には、各通過孔25用の制御電極24に偏向電圧を印加する制御回路41(ロジック回路)が配置される。各ビーム用の対向電極26は、グランド接続される。
【0024】
また、
図4に示すように、各制御回路41は、制御信号用のNビット(例えば10ビット)のパラレル配線が接続される。各制御回路41は、制御用のNビットのパラレル配線の他、クロック信号線および電源用の配線が接続される。クロック信号線および電源用の配線はパラレル配線の一部の配線を流用しても構わない。マルチビームを構成するそれぞれのビーム毎に、制御電極24と対向電極26と制御回路41とによる個別ブランキング機構47が構成される。また、
図3の例では、制御電極24と対向電極26と制御回路41とが基板27の膜厚が薄いメンブレン領域30に配置される。但し、これに限るものではない。
【0025】
各通過孔25を通過する電子ビーム20は、それぞれ独立にかかる対となる2つの電極24,26に印加される電圧によって偏向される。かかる偏向によってブランキング制御される。言い換えれば、制御電極24と対向電極26の組は、成形アパーチャアレイ基板203の複数の穴22(開口部)を通過したマルチビームのうちの対応ビームをそれぞれブランキング偏向する。
【0026】
次に描画装置100における描画機構150の動作について説明する。電子銃201(放出部)から放出された電子ビーム200は、照明レンズ202によりほぼ垂直に成形アパーチャアレイ基板203全体を照明する。成形アパーチャアレイ基板203には、矩形の複数の穴(開口部)が形成され、電子ビーム200は、すべての複数の穴22が含まれる領域を照明する。複数の穴の位置に照射された電子ビーム200の各一部が、かかる成形アパーチャアレイ基板203の複数の穴22をそれぞれ通過することによって、例えば矩形形状の複数の電子ビーム(マルチビーム)20a〜eが形成される。かかるマルチビーム20a〜eは、ブランキングアパーチャアレイ機構204のそれぞれ対応するブランカー(第1の偏向器:個別ブランキング機構47)内を通過する。かかるブランカーは、それぞれ、個別に通過する電子ビーム20を偏向する(ブランキング偏向を行う)。
【0027】
ブランキングアパーチャアレイ機構204を通過したマルチビーム20a〜eは、縮小レンズ205によって、縮小され、制限アパーチャ基板206に形成された中心の穴に向かって進む。ここで、ブランキングアパーチャアレイ機構204のブランカーによって偏向された電子ビーム20は、制限アパーチャ基板206の中心の穴から位置がはずれ、制限アパーチャ基板206によって遮蔽される。一方、ブランキングアパーチャアレイ機構204のブランカーによって偏向されなかった電子ビーム20は、
図1に示すように制限アパーチャ基板206の中心の穴を通過する。かかる個別ブランキング機構のON/OFFによって、ブランキング制御が行われ、ビームのON/OFFが制御される。このように、制限アパーチャ基板206は、個別ブランキング機構47によってビームOFFの状態になるように偏向された各ビームを遮蔽する。そして、ビーム毎に、ビームONになってからビームOFFになるまでに形成された、制限アパーチャ基板206を通過したビームにより、1回分のショットのビームが形成される。制限アパーチャ基板206を通過したマルチビーム20は、対物レンズ207により焦点が合わされ、所望の縮小率のパターン像となり、主偏向器208及び副偏向器209によって、制限アパーチャ基板206を通過した各ビーム(マルチビーム20全体)が同方向に一括して偏向され、各ビームの試料101上のそれぞれの照射位置に照射される。また、例えばXYステージ105が連続移動している時、ビームの照射位置がXYステージ105の移動に追従(トラッキング)するように主偏向器208によって制御される。XYステージ105の位置は、ステージ位置検出器139からレーザをXYステージ105上のミラー210に向けて照射し、その反射光を用いて測定される。一度に照射されるマルチビーム20は、理想的には成形アパーチャアレイ基板203の複数の穴の配列ピッチに上述した所望の縮小率を乗じたピッチで並ぶことになる。描画装置100は、各回のトラッキング動作中に主偏向器208によってXYステージ105の移動に追従しながら、ショットビームとなるマルチビーム20を副偏向器209によるビーム偏向位置の移動によって1画素ずつ連続して順に照射していく。所望のパターンを描画する際、パターンに応じて必要なビームがブランキング制御によりビームONに制御される。
【0028】
図5は、実施の形態1における描画順序を説明するための図である。
図5において、試料101の描画領域31(例えば、チップ領域)は、例えばy方向に向かって所定の幅で短冊上の複数のストライプ領域35に分割される。例えば、マルチビーム20全体での1回のショットで照射可能な照射領域34の幅で短冊上の複数のストライプ領域35に分割される。照射領域34は、具体的には、マルチビーム20のx,y方向にそれぞれ隣り合うビーム間のビームピッチPx,Pyに、それぞれx,y方向のビーム数n,mを乗じた(Px・n)×(Py・m)のサイズで設定される。
【0029】
かかる各ストライプ領域35は、描画単位領域となる。まず、XYステージ105を移動させて、第1番目のストライプ領域35の描画開始位置にマルチビーム20の照射領域34が位置するように調整し、描画が開始される。第1番目のストライプ領域35を描画する際には、XYステージ105を例えば−x方向に移動させることにより、相対的にx方向へと描画を進めていく。XYステージ105は所定の速度で例えば連続移動させる。第1番目のストライプ領域35の描画終了後、ステージ位置を−y方向に移動させて、第2番目のストライプ領域35の右端、或いはさらに右側の位置に照射領域34が相対的にy方向に位置するように調整し、今度は、XYステージ105を例えばx方向に移動させることにより、−x方向にむかって同様に描画を行う。第3番目のストライプ領域35では、x方向に向かって描画し、第4番目のストライプ領域35では、−x方向に向かって描画するといったように、交互に向きを変えながら描画することで描画時間を短縮できる。但し、かかる交互に向きを変えながら描画する場合に限らず、各ストライプ領域35を描画する際、同じ方向に向かって描画を進めるようにしても構わない。1回のショットでは、成形アパーチャアレイ基板203の各穴22を通過することによって形成されたマルチビームによって、最大で各穴22と同数の複数のショットパターンが一度に形成される。
【0030】
1つのチップパターンを描画する場合には、かかるチップ領域が描画領域31となる。複数のチップ領域を同じ描画条件(例えば、基準ドーズ量が同じ)で描画する場合には、かかる複数のチップ領域がマージ処理された領域を描画領域31にすればよい。
図5では、1つの描画領域31を示しているが、これに限るものではない。異なる描画条件で複数のチップパターンを描画する場合には、同じ描画条件で描画するチップ領域毎に、複数の描画領域31が設定されることになる。そして、各ストライプ領域35は、複数のメッシュ領域(画素36)に仮想分割される。メッシュ領域(画素36)のサイズは、例えば、ビームサイズ、或いは、それ以下のサイズであると好適である。例えば、10nm程度のサイズにすると好適である。画素36は、マルチビームの1つのビームあたりの照射単位領域となる。
【0031】
図6は、実施の形態1におけるストライプ領域を描画するショット順序の一部を説明するための図である。
図7は、実施の形態1におけるストライプ領域を描画するショット順序の残部を説明するための図である。
図6及び
図7の例では、説明の簡略化のため、例えば、2×2のマルチビームで描画する場合を示している。また、
図6及び
図7の例では、マルチビーム20のx,y方向にそれぞれ隣り合うビーム間のビームピッチPx,Pyがそれぞれ4画素分のサイズに設定されている場合を示している。よって、
図6及び
図7の例では、マルチビーム20全体での1回のショットで照射可能な照射領域34は、8×8画素分の領域として示している。また、
図6及び
図7の例では、7回のトラッキング動作(トラッキングサイクル)で1つのストライプ領域35の描画が完了する場合を示している。
【0032】
図6(a)には、1つのストライプ領域35が示されている。そして、
図6(b)に示すように、例えば、照射領域34のx方向の半分(右半分)がストライプ領域35の左端から重なるようにマルチビーム20の照射領域34を設定する。マルチビーム20で試料101を描画する際、上述したように、トラッキング動作を行うことになるが、かかる位置が1回目のトラッキング動作(1SF目)を行うための位置(描画開始位置)となる。
【0033】
マルチビーム20で試料101を描画する際、上述したように、トラッキング動作として、主偏向器208によりXYステージ105の移動に追従しながら
図6(b)に示す位置に維持する。かかる状態で、副偏向器209によりマルチビーム20全体を一括偏向して、照射領域34のy方向1段目かつx方向1列目の画素領域38にビームb11、照射領域34のy方向1段目かつx方向5列目の画素領域にビームb21、照射領域34のy方向5段目かつx方向1列目の画素領域38にビームb12、及び照射領域34のy方向5段目かつx方向5列目の画素領域38にビームb22が照射されるように調整する。そして、かかる位置で1回目のマルチビーム20のショットが行われる。続いて、照射領域34を
図6(b)の位置に維持した状態(トラッキング動作中)で、副偏向器209によりマルチビーム20全体をy方向に1画素分一括偏向して、かかる位置で2回目のマルチビーム20のショットが行われる。同様の動作で4ショットを行った後、照射領域34のy方向1段目かつx方向2列目の画素領域38にビームb11、照射領域34のy方向1段目かつx方向6列目の画素領域38にビームb21、照射領域34のy方向5段目かつx方向2列目の画素領域38にビームb12、及び照射領域34のy方向5段目かつx方向6列目の画素領域38にビームb22が照射されるように副偏向器209で一括偏向する。そして、同様に、y方向に向かって1画素ずつずれるように5ショット目から8ショットまで行う。
【0034】
次に、
図6(c)に示すように、主偏向器208によりx方向に4画素分ずらした2回目のトラッキング動作(2SF目)を行うための位置に照射領域34を移動させるためにマルチビーム20を一括偏向する。かかる状態で、副偏向器209によりマルチビーム20全体を一括偏向して、照射領域34のy方向1段目かつx方向3列目の画素領域38にビームb11、照射領域34のy方向1段目かつx方向7列目の画素領域38にビームb21、照射領域34のy方向5段目かつx方向3列目の画素領域38にビームb12、及び照射領域34のy方向5段目かつx方向7列目の画素領域38にビームb22が照射されるように調整する。そして、かかる位置で1回目のマルチビーム20のショットが行われる。続いて、照射領域34を
図6(c)の位置に維持した状態(トラッキング動作中)で、副偏向器209によりマルチビーム20全体をy方向に1画素分一括偏向して、かかる位置で2回目のマルチビーム20のショットが行われる。同様の動作で4ショットを行った後、照射領域34のy方向1段目かつx方向4列目の画素領域38にビームb11、照射領域34のy方向1段目かつx方向8列目の画素領域38にビームb21、照射領域34のy方向5段目かつx方向4列目の画素領域38にビームb12、及び照射領域34のy方向5段目かつx方向8列目の画素領域38にビームb22が照射されるように副偏向器209で一括偏向する。そして、同様に、y方向に向かって1画素ずつずれるように5ショット目から8ショットまで行う。
【0035】
次に、
図6(d)に示すように、主偏向器208によりx方向に4画素分ずらした3回目のトラッキング動作(3SF目)を行うための位置に照射領域34を移動させるためにマルチビーム20を一括偏向する。かかる状態で、副偏向器209によりマルチビーム20全体を一括偏向して、照射領域34のy方向1段目かつx方向1列目の画素領域38にビームb11、照射領域34のy方向1段目かつx方向5列目の画素領域38にビームb21、照射領域34のy方向5段目かつx方向1列目の画素領域38にビームb12、及び照射領域34のy方向5段目かつx方向5列目の画素領域38にビームb22が照射されるように調整する。そして、かかる位置で1回目のマルチビーム20のショットが行われる。続いて、照射領域34を
図6(d)の位置に維持した状態(トラッキング動作中)で、副偏向器209によりマルチビーム20全体をy方向に1画素分一括偏向して、かかる位置で2回目のマルチビーム20のショットが行われる。同様の動作で4ショットを行った後、照射領域34のy方向1段目かつx方向2列目の画素にビームb11、照射領域34のy方向1段目かつx方向6列目の画素領域38にビームb21、照射領域34のy方向5段目かつx方向2列目の画素領域38にビームb12、及び照射領域34のy方向5段目かつx方向6列目の画素領域38にビームb22が照射されるように副偏向器209で一括偏向する。そして、同様に、y方向に向かって1画素ずつずれるように5ショット目から8ショットまで行う。
【0036】
次に、
図7(a)に示すように、主偏向器208によりx方向に4画素分ずらした4回目のトラッキング動作(4SF目)を行うための位置に照射領域34を移動させるためにマルチビーム20を一括偏向する。かかる状態で、副偏向器209によりマルチビーム20全体を一括偏向して、照射領域34のy方向1段目かつx方向3列目の画素領域38にビームb11、照射領域34のy方向1段目かつx方向7列目の画素領域38にビームb21、照射領域34のy方向5段目かつx方向3列目の画素領域38にビームb12、及び照射領域34のy方向5段目かつx方向7列目の画素領域38にビームb22が照射されるように調整する。そして、かかる位置で1回目のマルチビーム20のショットが行われる。続いて、照射領域34を
図7(a)の位置に維持した状態(トラッキング動作中)で、副偏向器209によりマルチビーム20全体をy方向に1画素分一括偏向して、かかる位置で2回目のマルチビーム20のショットが行われる。同様の動作で4ショットを行った後、照射領域34のy方向1段目かつx方向4列目の画素領域38にビームb11、照射領域34のy方向1段目かつx方向8列目の画素領域38にビームb21、照射領域34のy方向5段目かつx方向4列目の画素領域38にビームb12、及び照射領域34のy方向5段目かつx方向8列目の画素領域38にビームb22が照射されるように副偏向器209で一括偏向する。そして、同様に、y方向に向かって1画素ずつずれるように5ショット目から8ショットまで行う。
【0037】
次に、
図7(b)に示すように、主偏向器208によりx方向に4画素分ずらした5回目のトラッキング動作(5SF目)を行うための位置に照射領域34を移動させるためにマルチビーム20を一括偏向する。かかる状態で、副偏向器209によりマルチビーム20全体を一括偏向して、照射領域34のy方向1段目かつx方向1列目の画素領域38にビームb11、照射領域34のy方向1段目かつx方向5列目の画素領域38にビームb21、照射領域34のy方向5段目かつx方向1列目の画素領域38にビームb12、及び照射領域34のy方向5段目かつx方向5列目の画素領域38にビームb22が照射されるように調整する。そして、かかる位置で1回目のマルチビーム20のショットが行われる。続いて、照射領域34を
図7(b)の位置に維持した状態(トラッキング動作中)で、副偏向器209によりマルチビーム20全体をy方向に1画素分一括偏向して、かかる位置で2回目のマルチビーム20のショットが行われる。同様の動作で4ショットを行った後、照射領域34のy方向1段目かつx方向2列目の画素領域38にビームb11、照射領域34のy方向1段目かつx方向6列目の画素領域38にビームb21、照射領域34のy方向5段目かつx方向2列目の画素領域38にビームb12、及び照射領域34のy方向5段目かつx方向6列目の画素領域38にビームb22が照射されるように副偏向器209で一括偏向する。そして、同様に、y方向に向かって1画素ずつずれるように5ショット目から8ショットまで行う。
【0038】
次に、
図7(c)に示すように、主偏向器208によりx方向に4画素分ずらした6回目のトラッキング動作(6SF目)を行うための位置に照射領域34を移動させるためにマルチビーム20を一括偏向する。かかる状態で、副偏向器209によりマルチビーム20全体を一括偏向して、照射領域34のy方向1段目かつx方向3列目の画素領域38にビームb11、照射領域34のy方向1段目かつx方向7列目の画素領域38にビームb21、照射領域34のy方向5段目かつx方向3列目の画素領域38にビームb12、及び照射領域34のy方向5段目かつx方向7列目の画素領域38にビームb22が照射されるように調整する。そして、かかる位置で1回目のマルチビーム20のショットが行われる。続いて、照射領域34を
図7(c)の位置に維持した状態(トラッキング動作中)で、副偏向器209によりマルチビーム20全体をy方向に1画素分一括偏向して、かかる位置で2回目のマルチビーム20のショットが行われる。同様の動作で4ショットを行った後、照射領域34のy方向1段目かつx方向4列目の画素領域38にビームb11、照射領域34のy方向1段目かつx方向8列目の画素領域38にビームb21、照射領域34のy方向5段目かつx方向4列目の画素領域38にビームb12、及び照射領域34のy方向5段目かつx方向8列目の画素領域38にビームb22が照射されるように副偏向器209で一括偏向する。そして、同様に、y方向に向かって1画素ずつずれるように5ショット目から8ショットまで行う。
【0039】
次に、
図7(d)に示すように、主偏向器208によりx方向に4画素分ずらした7回目のトラッキング動作(7SF目)を行うための位置に照射領域34を移動させるためにマルチビーム20を一括偏向する。かかる状態で、副偏向器209によりマルチビーム20全体を一括偏向して、照射領域34のy方向1段目かつx方向1列目の画素領域38にビームb11、照射領域34のy方向1段目かつx方向5列目の画素領域38にビームb21、照射領域34のy方向5段目かつx方向1列目の画素領域38にビームb12、及び照射領域34のy方向5段目かつx方向5列目の画素領域38にビームb22が照射されるように調整する。そして、かかる位置で1回目のマルチビーム20のショットが行われる。続いて、照射領域34を
図7(d)の位置に維持した状態(トラッキング動作中)で、副偏向器209によりマルチビーム20全体をy方向に1画素分一括偏向して、かかる位置で2回目のマルチビーム20のショットが行われる。同様の動作で4ショットを行った後、照射領域34のy方向1段目かつx方向2列目の画素領域38にビームb11、照射領域34のy方向1段目かつx方向6列目の画素領域38にビームb21、照射領域34のy方向5段目かつx方向2列目の画素領域38にビームb12、及び照射領域34のy方向5段目かつx方向6列目の画素領域38にビームb22が照射されるように副偏向器209で一括偏向する。そして、同様に、y方向に向かって1画素ずつずれるように5ショット目から8ショットまで行う。
【0040】
以上のようにして、1つのストライプ領域35の描画が終了する。なお、ショット毎に、照射する必要が無い位置が照射位置となるビームが存在する場合には当該ビームについてはビーム0FFにすればよい。ここでは、ショット順序がy方向に連続するように、y方向に偏向する例を示したが、これに限るものではない。その他、例えば、ショット順がx方向に連続するように、x方向に偏向しても構わない。また、ショット順序が連続しないようにランダムに偏向しても構わない。
【0041】
図8は、実施の形態1における描画方法の要部工程を示すフローチャート図である。
図8において、補正対象データ取得工程(S102)と、補正データ算出工程(S106)と、補正マップ作成工程(S108)と、ブロック分割工程(S110)と、データ並び替え工程(S114)と、ショットデータ作成工程(S204)と、補正工程(S210)と、描画工程(S220)と、いう一連の工程を実施する。補正工程(S210)は、内部工程として、ブロック選択工程(S211)と、補正工程(S212)と、判定工程(S214)と、いう一連の工程を実施する。補正対象データ取得工程(S102)からデータ並び替え工程(S114)までの各工程は、描画処理を実施する前処理として実行しておくとよい。或いは、補正対象データ取得工程(S102)から補正マップ作成工程(S108)までの各工程を、描画処理を実施する前処理として実行してもよい。
【0042】
描画処理を実施する前に、予め、試料101面上にマルチビーム20を照射した際の各画素におけるビームの位置ずれ量を測定する。図示しないレジストが塗布された測定用基板をステージ105上に配置して、マルチビーム20を照射して、その照射位置を測定すればよい。例えば、描画シーケンスに沿って、1画素ずつ、或いは、測定上問題とならない程度に互いに離れた複数画素ずつ描画して、測定用基板上の画素のビーム照射位置を例えば位置計測装置を用いて測定すればよい。設計位置と測定位置との差を求めれば、画素毎の位置ずれ量を測定できる。かかる動作を繰り返し、x,y方向のビーム数n,mについて、もしくは、照射領域34内のすべての画素についてビームの位置ずれ量を測定する。得られた位置ずれデータは、外部から入力され、記憶装置144に格納される。実施の形態1では、上述したように、マルチビーム20全体での1回のショットで照射可能な照射領域34を移動させながら描画を進めていく。よって、ストライプ領域35を描画する際、照射領域34内の各画素相当領域(画素領域38)で生じる位置ずれが繰り返される。よって、照射領域34内の各画素領域38で生じる位置ずれ量がわかれば、ストライプ領域35上の各位置の位置ずれ量がわかる。
【0043】
そこで、実施の形態1では、(Px・n)×(Py・m)のサイズ、言い換えれば、マルチビーム20全体のサイズ程度の照射領域34を補正マップ作成用の設定領域33として設定する。但し、設定領域33のサイズはこれに限るものではない。設定領域33は、x,y方向にマルチビーム20全体の2倍を超えないサイズで設定すると良い。言い換えれば、2(Px・n)×2(Py・m)のサイズを超えないサイズで設定すると良い。設定領域33は、例えば1本のビームサイズ(所定の量子化寸法)で格子状に複数の画素に分割される。
【0044】
補正対象データ取得工程(S102)として、位置ずれデータ取得部50は、記憶装置144に格納された位置ずれデータを読み出し、設定領域33内の画素領域38毎に、位置ずれ量を入力(取得)する。
【0045】
補正データ算出工程(S106)として、補正データ算出部54(変調率データ算出部)は、マルチビーム20全体の2倍を超えないサイズの設定領域33を所定の量子化寸法で格子状に分割した領域となる複数の画素領域38について、画素領域38毎に、描画シーケンスに沿って当該画素に照射されるビームの位置ずれによって生じる照射パターンの位置ずれを補正する当該画素へのビームのドーズ変調率(第1のドーズ変調率)と当該画素の周囲の少なくとも1つの画素へとドーズ分配するためのドーズ変調率(第2のドーズ変調率)とを算出する。
【0046】
図9は、実施の形態1における位置ずれ補正方法の一例を説明するための図である。
図9(a)の例では、座標(x,y)の画素に照射されたビームa’が−x,−y側に位置ずれを起こした場合を示している。かかる位置ずれが生じているビームa’によって形成されるパターンの位置ずれを
図9(b)のように座標(x,y)の画素に合う位置に補正するには、ずれた分の照射量を、ずれた周囲の画素の方向とは反対側の画素に分配することで補正できる。
図9の例では、座標(x,y−1)の画素にずれた分の照射量は、座標(x,y+1)の画素に分配されればよい。座標(x−1,y)の画素にずれた分の照射量は、座標(x+1,y)の画素に分配されればよい。座標(x−1,y−1)の画素にずれた分の照射量は、座標(x+1,y+1)の画素に分配されればよい。
【0047】
実施の形態1では、ビームの位置ずれ量に比例して周囲の少なくとも1つの画素用のビームに照射量を分配する分配量(第2のビームの変調率)を演算する。補正データ算出部54は、当該画素へのビームの位置ずれによるずれた面積の比率に応じて、当該画素へのビームの変調率と当該画素の周囲の少なくとも1つの画素へのビームの変調率とを演算する。具体的には、ビームがずれて、ビームの一部が重なった周囲の画素毎に、ずれた分の面積(重なったビーム部分の面積)をビーム面積で割った割合を、重なった画素とは反対側に位置する画素への分配量(ビームの変調率)として演算する。
【0048】
図9(a)の例において、座標(x,y−1)の画素へとずれた面積比は、(x方向ビームサイズ−(−x)方向ずれ量)×y方向ずれ量/(x方向ビームサイズ×y方向ビームサイズ)で演算できる。よって、補正のために座標(x,y+1)の画素へと分配するための分配量(ビームの変調率)Vは、(x方向ビームサイズ−(−x)方向ずれ量)×y方向ずれ量/(x方向ビームサイズ×y方向ビームサイズ)で演算できる。
【0049】
図9(a)の例において、座標(x−1,y−1)の画素へとずれた面積比は、−x方向ずれ量×−y方向ずれ量/(x方向ビームサイズ×y方向ビームサイズ)で演算できる。よって、補正のために座標(x+1,y+1)の画素へと分配するための分配量(ビームの変調率)Wは、−x方向ずれ量×−y方向ずれ量/(x方向ビームサイズ×y方向ビームサイズ)で演算できる。
【0050】
図9(a)の例において、座標(x−1,y)の画素へとずれた面積比は、−x方向ずれ量×(y方向ビームサイズ−(−y)方向ずれ量)/(x方向ビームサイズ×y方向ビームサイズ)で演算できる。よって、補正のために座標(x+1,y)の画素へと分配するための分配量(ビームの変調率)Zは、−x方向ずれ量×(y方向ビームサイズ−(−y)方向ずれ量)/(x方向ビームサイズ×y方向ビームサイズ)で演算できる。
【0051】
その結果、分配されずに残った分となる、座標(x,y)の画素のビームの変調率Uは、1−V−W−Zで演算できる。
【0052】
以上のようにして、画素毎に、当該画素へのビームの変調率と、分配先となる少なくとも1つの周囲の画素へのビームの変調率とを演算する。
【0053】
補正マップ作成工程(S108)として、補正マップ作成部55(変調率マップ作成部)は、画素36毎に、算出された当該画素36へのビームのドーズ変調率U(第1のドーズ変調率)を当該画素36の位置に定義すると共に、当該画素36の周囲の少なくとも1つの画素へとドーズ分配するためのドーズ変調率V(或いは/及びW、或いは/及びZ)(第2のドーズ変調率)を当該画素36の位置と関連させて分配先の画素の位置に定義するように、設定領域33について画素36毎にドーズ変調率群が定義された変調率マップを作成する。
【0054】
図10は、実施の形態1の比較例となる補正無しの場合の設定領域内の各画素の変調率が定義された場合の変調率マップの一例を示す図である。
図10の例では、設定領域33が照射領域34と同サイズの場合を示している。また、
図10の例では、
図6及び
図7の例と同様、説明の簡略化のため、例えば、2×2のマルチビームで描画する場合を示している。そして、マルチビーム20のx,y方向にそれぞれ隣り合うビーム間のビームピッチPx,Pyがそれぞれ4画素分のサイズに設定されている場合を示している。よって、マルチビーム20全体での1回のショットで照射可能な照射領域34(ここでは設定領域33)は、8×8画素分の領域として示している。また、
図10の例では、2×2のマルチビームの例えば1ショット目の画素領域38となる、照射領域34のy方向1段目かつx方向1列目の画素領域38と、照射領域34のy方向5段目かつx方向1列目の画素領域38と、照射領域34のy方向1段目かつx方向5列目の画素領域38と、照射領域34のy方向5段目かつx方向5列目の画素領域38と、に注目している。ビームの位置ずれによる照射量の補正を行わない場合には、
図10に示すように、共に「1」となる。
図10の例では、4つの画素領域38に注目し、その他の画素領域38に「0」を定義しているが、ビームの位置ずれによる照射量の補正を行わない場合には、その他の画素領域38の変調率がいずれも「1」になることは言うまでもない。
【0055】
図11は、実施の形態1におけるマルチビームの1ショット目の画素領域38に注目した補正有の変調率と周囲の画素領域38へと分配する変調率との一例を示す図である。
図11では、2×2のマルチビームの例えば1ショット目の画素領域38となる、照射領域34のy方向1段目かつx方向1列目の画素領域38と、照射領域34のy方向5段目かつx方向1列目の画素領域38と、照射領域34のy方向1段目かつx方向5列目の画素領域38と、照射領域34のy方向5段目かつx方向5列目の画素領域38と、に注目している。
【0056】
照射領域34のy方向1段目かつx方向1列目の注目画素領域38のビームが、例えば、−x,−y方向にビームサイズ以内の範囲で位置ずれした場合、実施の形態1では、
図9(a)での説明と同様、注目画素領域38のビーム照射量は、
図11に示すように、y方向1段目かつx方向2列目の周辺画素領域38と、y方向2段目かつx方向1列目の周辺画素領域38と、y方向2段目かつx方向2列目の周辺画素領域38と、に分配される。
図11の例では、例えば、y方向1段目かつx方向2列目の周辺画素領域38への分配量(分配率)となるビームの変調率が0.15、y方向2段目かつx方向1列目の周辺画素領域38への分配量(分配率)となるビームの変調率が0.14、y方向2段目かつx方向2列目の周辺画素領域38への分配量(分配率)となるビームの変調率が0.07となる。よって、照射領域34のy方向1段目かつx方向1列目の注目画素領域38のビームの変調率が0.64となる。
【0057】
照射領域34のy方向5段目かつx方向1列目の注目画素領域38のビームが、例えば、−x,−y方向にビームサイズ以内の範囲で位置ずれした場合、実施の形態1では、
図9(a)での説明と同様、注目画素領域38のビーム照射量は、
図11に示すように、y方向5段目かつx方向2列目の周辺画素領域38と、y方向6段目かつx方向1列目の周辺画素領域38と、y方向6段目かつx方向2列目の周辺画素領域38と、に分配される。
図11の例では、例えば、y方向5段目かつx方向2列目の周辺画素領域38への分配量(分配率)となるビームの変調率が0.15、y方向6段目かつx方向1列目の周辺画素領域38への分配量(分配率)となるビームの変調率が0.20、y方向6段目かつx方向2列目の周辺画素領域38への分配量(分配率)となるビームの変調率が0.05となる。よって、照射領域34のy方向5段目かつx方向1列目の注目画素領域38のビームの変調率が0.60となる。
【0058】
照射領域34のy方向1段目かつx方向5列目の注目画素領域38のビームが、例えば、−x,−y方向にビームサイズ以内の範囲で位置ずれした場合、実施の形態1では、
図9(a)での説明と同様、注目画素領域38のビーム照射量は、
図11に示すように、y方向1段目かつx方向6列目の周辺画素領域38と、y方向2段目かつx方向5列目の周辺画素領域38と、y方向2段目かつx方向6列目の周辺画素領域38と、に分配される。
図11の例では、例えば、y方向1段目かつx方向6列目の周辺画素領域38への分配量(分配率)となるビームの変調率が0.10、y方向2段目かつx方向5列目の周辺画素領域38への分配量(分配率)となるビームの変調率が0.10、y方向2段目かつx方向6列目の周辺画素領域38への分配量(分配率)となるビームの変調率が0.10となる。よって、照射領域34のy方向1段目かつx方向5列目の注目画素領域38のビームの変調率が0.70となる。
【0059】
照射領域34のy方向5段目かつx方向5列目の注目画素領域38のビームが、例えば、−x,−y方向にビームサイズ以内の範囲で位置ずれした場合、実施の形態1では、
図9(a)での説明と同様、注目画素領域38のビーム照射量は、
図11に示すように、y方向5段目かつx方向6列目の周辺画素領域38と、y方向6段目かつx方向5列目の周辺画素領域38と、y方向6段目かつx方向6列目の周辺画素領域38と、に分配される。
図11の例では、例えば、y方向5段目かつx方向6列目の周辺画素領域38への分配量(分配率)となるビームの変調率が0.10、y方向6段目かつx方向5列目の周辺画素領域38への分配量(分配率)となるビームの変調率が0.20、y方向6段目かつx方向6列目の周辺画素領域38への分配量(分配率)となるビームの変調率が0.05となる。よって、照射領域34のy方向5段目かつx方向5列目の注目画素領域38のビームの変調率が0.65となる。
【0060】
図12は、実施の形態1におけるマルチビームの2ショット目の画素領域38に注目した補正有の変調率と周囲の画素領域38へと分配する変調率との一例を示す図である。
図12では、2×2のマルチビームの例えば2ショット目の画素領域38となる、照射領域34のy方向2段目かつx方向1列目の画素領域38と、照射領域34のy方向6段目かつx方向1列目の画素領域38と、照射領域34のy方向2段目かつx方向5列目の画素領域38と、照射領域34のy方向6段目かつx方向5列目の画素領域38と、に注目している。
【0061】
照射領域34のy方向2段目かつx方向1列目の注目画素領域38のビームが、例えば、−x,−y方向にビームサイズ以内の範囲で位置ずれした場合、実施の形態1では、
図9(a)での説明と同様、注目画素領域38のビーム照射量は、
図12に示すように、y方向2段目かつx方向2列目の周辺画素領域38と、y方向3段目かつx方向1列目の周辺画素領域38と、y方向3段目かつx方向2列目の周辺画素領域38と、に分配される。
図12の例では、例えば、y方向2段目かつx方向2列目の周辺画素領域38への分配量(分配率)となるビームの変調率が0.15、y方向3段目かつx方向1列目の周辺画素領域38への分配量(分配率)となるビームの変調率が0.14、y方向3段目かつx方向2列目の周辺画素領域38への分配量(分配率)となるビームの変調率が0.07となる。よって、照射領域34のy方向2段目かつx方向1列目の注目画素領域38のビームの変調率が0.64となる。
【0062】
照射領域34のy方向6段目かつx方向1列目の注目画素領域38のビームが、例えば、−x,−y方向にビームサイズ以内の範囲で位置ずれした場合、実施の形態1では、
図9(a)での説明と同様、注目画素領域38のビーム照射量は、
図12に示すように、y方向6段目かつx方向2列目の周辺画素領域38と、y方向7段目かつx方向1列目の周辺画素領域38と、y方向7段目かつx方向2列目の周辺画素領域38と、に分配される。
図12の例では、例えば、y方向6段目かつx方向2列目の周辺画素領域38への分配量(分配率)となるビームの変調率が0.15、y方向7段目かつx方向1列目の周辺画素領域38への分配量(分配率)となるビームの変調率が0.20、y方向7段目かつx方向2列目の周辺画素領域38への分配量(分配率)となるビームの変調率が0.05となる。よって、照射領域34のy方向6段目かつx方向1列目の注目画素領域38のビームの変調率が0.60となる。
【0063】
照射領域34のy方向2段目かつx方向5列目の注目画素領域38のビームが、例えば、−x,−y方向にビームサイズ以内の範囲で位置ずれした場合、実施の形態1では、
図9(a)での説明と同様、注目画素領域38のビーム照射量は、
図12に示すように、y方向2段目かつx方向6列目の周辺画素領域38と、y方向3段目かつx方向5列目の周辺画素領域38と、y方向3段目かつx方向6列目の周辺画素領域38と、に分配される。
図12の例では、例えば、y方向2段目かつx方向6列目の周辺画素領域38への分配量(分配率)となるビームの変調率が0.10、y方向3段目かつx方向5列目の周辺画素領域38への分配量(分配率)となるビームの変調率が0.10、y方向3段目かつx方向6列目の周辺画素領域38への分配量(分配率)となるビームの変調率が0.10となる。よって、照射領域34のy方向1段目かつx方向5列目の注目画素領域38のビームの変調率が0.70となる。
【0064】
照射領域34のy方向6段目かつx方向5列目の注目画素領域38のビームが、例えば、−x,−y方向にビームサイズ以内の範囲で位置ずれした場合、実施の形態1では、
図9(a)での説明と同様、注目画素領域38のビーム照射量は、
図12に示すように、y方向6段目かつx方向6列目の周辺画素領域38と、y方向7段目かつx方向5列目の周辺画素領域38と、y方向7段目かつx方向6列目の周辺画素領域38と、に分配される。
図12の例では、例えば、y方向6段目かつx方向6列目の周辺画素領域38への分配量(分配率)となるビームの変調率が0.10、y方向7段目かつx方向5列目の周辺画素領域38への分配量(分配率)となるビームの変調率が0.20、y方向7段目かつx方向6列目の周辺画素領域38への分配量(分配率)となるビームの変調率が0.05となる。よって、照射領域34のy方向5段目かつx方向5列目の注目画素領域38のビームの変調率が0.65となる。
【0065】
図12の例では、副偏向器209による1ショット目から2ショット目へのマルチビーム20の一括偏向の偏向量が小さいため、
図11の例と同様の分配量(ビームの変調率)を示しているが、これに限るものではない。画素領域38毎に、偏向依存等の影響により位置ずれ量及び方向が異なってもよい。かかる場合には、成形アパーチャアレイ基板の同じ穴を通過するビームであっても周囲の画素領域38への分配量(ビームの変調率)が他の画素領域38とは異なることになる。
【0066】
図13は、実施の形態1における補正マップの一例を示す図である。
図13における補正マップ(変調率マップ)37では、設定領域33内の各画素領域38に、それぞれ当該画素領域38の変調率と周囲から分配される変調率とが一連のデータaijとして定義される。iとjは、それぞれ画素領域38の位置を示すインデックスである。座標(i,j)の画素領域38に定義される一連のデータaijは、例えば、ij−1データとして、当該画素領域38の左下(i−1,j−1)の画素領域38からの分配量(変調率)、ij−2データとして、当該画素領域38の左(i−1,j)の画素領域38からの分配量(変調率)、ij−3データとして、当該画素領域38の左上(i−1,j+1)の画素領域38からの分配量(変調率)、ij−4データとして、当該画素領域38の下(i,j−1)の画素領域38からの分配量(変調率)、ij−5データとして、当該画素領域38(i,j)の分配残量(変調率)、ij−6データとして、当該画素領域38の上(i+1,j)の画素領域38からの分配量(変調率)、ij−7データとして、当該画素領域38の右下(i+1,j−1)の画素領域38からの分配量(変調率)、ij−8データとして、当該画素領域38の右(i+1,j)の画素領域38からの分配量(変調率)、及びij−9データとして、当該画素領域38の右上(i+1,j+1)の画素領域38からの分配量(変調率)の順で定義される。
図6(b)から
図7(d)において説明したように、x方向1,2列目の画素36群は、ビームb21とビームb22とによって1SF目に照射される。また、ストライプ領域35を描画する際、x方向1列目から8列目を周期として、同じビームの配置が繰り返される。ここで、ストライプ領域35の下のストライプもストライプ領域35と同じビーム配置だとすると、座標(1,1)の画素領域38に左下からドーズを分配するビームはビームb22、左からドーズを分配するビームはb21、左上からドーズを分配するビームはb21、下からドーズを分配するビームはb22、当該画素のビームはb21、上からドーズを分配するビームはb21、右下からドーズを分配するビームはb22、右からドーズを分配するビームはb21、右上からドーズを分配するビームはb21となる。よって、
図13の例における座標(1,1)の画素領域38に定義される一連のデータa11には、0.05,0.10,0,0.20,0.70,0,0,0,0が定義されることになる。
図13の例における座標(5,1)の画素領域38に定義される一連のデータa51には、0.05,0.15,0,0.2,0.64,0,0,0,0が定義されることになる。以上のように、各画素領域38のデータaijは、自身の画素領域38と自身を取り囲む9つの画素領域38について、変調率を定義する順序を予め決めておく。これにより、データの位置からどの画素領域38からの分配量なのか、或いは自身の画素領域38に残る割合なのかが判定できる。作成された変調率マップ(補正マップ)は、メモリ112に格納される。
【0067】
位置ずれ補正前の入射照射量Dには、ビームの位置ずれが考慮されていない。よって、補正マップ(変調率マップ)37を使って、画素36毎に補正後の入射照射量D’を演算する必要がある。ここで、上述したように、補正マップ(変調率マップ)37には、設定領域33内の各画素領域38にそれぞれ当該画素領域38の変調率と周囲から分配される変調率とが一連のデータaijとして定義されるので、入射照射量データに比べてデータ量が大きい。上述したように、描画装置では、ストライプ領域35と呼ばれる一定領域毎に、データ処理を実行し、処理が完了したストライプ領域35の描画動作を実行するといった、データ処理と実際の描画動作とをリアルタイムに実施していく。そのため、各照射位置のドーズ量を演算する際、演算処理部67がかかる変調率マップのデータをメインメモリ112から読み込むだけで相当な時間が必要となり、ドーズ量の演算速度にメインメモリ112のメモリ帯域が追い付かないといった問題があった。そのため、データ処理速度が低下し、強いては描画処理のスループットが劣化してしまうといった問題があった。実施の形態1では、例えばマルチビーム20の照射領域34等に相当する設定領域33にまで補正マップ(変調率マップ)の範囲を小さくするが、それでも、ドーズ量の演算速度にメインメモリ112のメモリ帯域が追い付かないおそれがある。そこで、実施の形態1では、設定領域33をさらに複数のブロックに分割して、データ量を小さくし、効率よく入射照射量を演算する。
【0068】
ブロック分割工程(S110)として、分割部62(ブロック分割部)は、補正マップ(変調率マップ)を予め設定された画素数毎に複数のブロックに分割する。実施の形態1では、x方向に2画素領域分のy方向列を1つのブロックとして複数のブロックに分割する。実施の形態1では、照射領域34のビームb11とビームb12によって照射されるx方向1,2列目の2画素領域分のy方向列をブロックA、照射領域34のビームb11とビームb12によって照射されるx方向3,4列目の2画素領域分のy方向列をブロックB、照射領域34のビームb21とビームb22によって照射されるx方向5,6列目の2画素領域分のy方向列をブロックC、照射領域34のビームb21とビームb22によって照射されるx方向7,8列目の2画素領域分のy方向列をブロックDとする。上述したように、実際のストライプ領域35を描画する際、x方向1列目から8列目の画素列を周期として、同じビームの配置が繰り返される。そして、x方向1,2列目の画素36群は、ビームb21とビームb22とによって1SF目に照射される。そのため、補正マップ(変調率マップ)は、実際の画素36を照射するビームの配置の繰り返し周期に沿って作成しておくと良い。そのため、
図13の例では、ブロックC,B,A,Dの順で補正マップ(変調率マップ)が作成される場合を示している。具体的には、
図13の例では、ブロックCとして、補正マップ(変調率マップ)37のx方向に1,2列目のy方向に並ぶ画素領域群の部分補正マップ(部分変調率マップ)が作成される。ブロックBとして、補正マップ(変調率マップ)37のx方向に3,4列目のy方向に並ぶ画素領域群の部分補正マップ(部分変調率マップ)が作成される。ブロックAとして、補正マップ(変調率マップ)37のx方向に5,6列目のy方向に並ぶ画素領域群の部分補正マップ(部分変調率マップ)が作成される。ブロックDとして、補正マップ(変調率マップ)37のx方向に7,8列目のy方向に並ぶ画素領域群の部分補正マップ(部分変調率マップ)が作成される。
図13の例では、x方向に2列ずつ分割しているが、これに限るものではない。1列ずつでも良いし、3列以上ずつであってもよい。実施の形態1において、補正マップ(変調率マップ)37は、キャッシュメモリ70に保持可能なデータサイズの画素数で複数のブロックに分割される。
【0069】
図14は、実施の形態1におけるストライプ領域の描画順と対象ブロックと入射照射量の演算処理順との一例を示す図である。ストライプ領域35を複数の画素36に分割した場合、
図6(b)から
図7(d)において説明したように、x方向1,2列目の画素36群は、ビームb21とビームb22とによって1SF目に照射される。よって、x方向1,2列目の画素36群に照射される入射照射量D’を演算するためには、設定領域33内のビームb21とビームb22とによって照射される画素領域38群に対応するブロックの部分補正マップが必要となる。設定領域33が照射領域34と例えば同じサイズに設定された
図13の例では、ブロックCの部分補正マップが該当する。
【0070】
ストライプ領域35のx方向3,4列目の画素36群は、ビームb11とビームb12とによって2SF目に照射される。よって、x方向3,4列目の画素36群に照射される入射照射量D’を演算するためには、設定領域33内のビームb11とビームb12とによって照射される画素領域38群に対応するブロックの部分補正マップが必要となる。
図13の例では、ブロックBの部分補正マップが該当する。
【0071】
ストライプ領域35のx方向5,6列目の画素36群は、ビームb11とビームb12とによって3SF目に照射される。よって、x方向5,6列目の画素36群に照射される入射照射量D’を演算するためには、設定領域33内のビームb11とビームb12とによって照射される画素領域38群に対応するブロックの部分補正マップが必要となる。
図13の例では、ブロックAの部分補正マップが該当する。
【0072】
ストライプ領域35のx方向7,8列目の画素36群は、ビームb21とビームb22とによって2SF目に照射される。よって、x方向7,8列目の画素36群に照射される入射照射量D’を演算するためには、設定領域33内のビームb21とビームb22とによって照射される画素領域38群に対応するブロックの部分補正マップが必要となる。
図13の例では、ブロックDの部分補正マップが該当する。
【0073】
ストライプ領域35のx方向9,10列目の画素36群は、ビームb21とビームb22とによって3SF目に照射される。よって、x方向9,10列目の画素36群に照射される入射照射量D’を演算するためには、設定領域33内のビームb21とビームb22とによって照射される画素領域38群に対応するブロックの部分補正マップが必要となる。
図13の例では、ブロックCの部分補正マップが該当する。
【0074】
ストライプ領域35のx方向11,12列目の画素36群は、ビームb11とビームb12とによって4SF目に照射される。よって、x方向11,12列目の画素36群に照射される入射照射量D’を演算するためには、設定領域33内のビームb11とビームb12とによって照射される画素領域38群に対応するブロックの部分補正マップが必要となる。
図13の例では、ブロックBの部分補正マップが該当する。
【0075】
ストライプ領域35のx方向13,14列目の画素36群は、ビームb11とビームb12とによって5SF目に照射される。よって、x方向13,14列目の画素36群に照射される入射照射量D’を演算するためには、設定領域33内のビームb11とビームb12とによって照射される画素領域38群に対応するブロックの部分補正マップが必要となる。
図13の例では、ブロックAの部分補正マップが該当する。
【0076】
ストライプ領域35のx方向15,16列目の画素36群は、ビームb21とビームb22とによって4SF目に照射される。よって、x方向15,16列目の画素36群に照射される入射照射量D’を演算するためには、設定領域33内のビームb21とビームb22とによって照射される画素領域38群に対応するブロックの部分補正マップが必要となる。
図13の例では、ブロックDの部分補正マップが該当する。
【0077】
ストライプ領域35のx方向17,18列目の画素36群は、ビームb21とビームb22とによって5SF目に照射される。よって、x方向17,18列目の画素36群に照射される入射照射量D’を演算するためには、設定領域33内のビームb21とビームb22とによって照射される画素領域38群に対応するブロックの部分補正マップが必要となる。
図13の例では、ブロックCの部分補正マップが該当する。
【0078】
ストライプ領域35のx方向19,20列目の画素36群は、ビームb11とビームb12とによって6SF目に照射される。よって、x方向11,12列目の画素36群に照射される入射照射量D’を演算するためには、設定領域33内のビームb11とビームb12とによって照射される画素領域38群に対応するブロックの部分補正マップが必要となる。
図13の例では、ブロックBの部分補正マップが該当する。
【0079】
ストライプ領域35のx方向21,22列目の画素36群は、ビームb11とビームb12とによって7SF目に照射される。よって、x方向21,22列目の画素36群に照射される入射照射量D’を演算するためには、設定領域33内のビームb11とビームb12とによって照射される画素領域38群に対応するブロックの部分補正マップが必要となる。
図13の例では、ブロックAの部分補正マップが該当する。
【0080】
以上のように、ストライプ領域35は、
図14の例では、ブロックC,B,A,Dの順で、担当ブロックの画素領域38群の位置ずれが生じる。そして、かかるブロックC,B,A,Dの順の担当ブロックの画素領域38群の位置ずれが繰り返される。
【0081】
そこで、実施の形態1では、複数のブロックのうち、いずれか1つのブロックの部分補正マップのドーズ変調率群のデータを一旦キャッシュメモリ70に保持した場合、同じブロックのドーズ変調率群のデータを他のブロックのドーズ変調率群のデータに切りかえずに連続して繰り返し使用して、ストライプ領域35内の対象となる各画素36へのビームの補正後の入射照射量D’を演算する。そこで、
図14の例では、ストライプ領域35のブロックAの部分補正マップが必要となるx方向5,6列目の画素36群の入射照射量D’の演算を処理順1位に設定する。次に、ブロックAの部分補正マップが必要となるx方向13,14列目の画素36群の入射照射量D’の演算を処理順2位に設定する。次に、ブロックAの部分補正マップが必要となるx方向21,22列目の画素36群の入射照射量D’の演算を処理順3位に設定する。
【0082】
次に、ストライプ領域35のブロックBの部分補正マップが必要となるx方向3,4列目の画素36群の入射照射量D’の演算を処理順4位に設定する。次に、ブロックBの部分補正マップが必要となるx方向11,12列目の画素36群の入射照射量D’の演算を処理順5位に設定する。次に、ブロックBの部分補正マップが必要となるx方向19,20列目の画素36群の入射照射量D’の演算を処理順6位に設定する。
【0083】
次に、ストライプ領域35のブロックCの部分補正マップが必要となるx方向1,2列目の画素36群の入射照射量D’の演算を処理順7位に設定する。次に、ブロックCの部分補正マップが必要となるx方向9,10列目の画素36群の入射照射量D’の演算を処理順8位に設定する。次に、ブロックCの部分補正マップが必要となるx方向17,18列目の画素36群の入射照射量D’の演算を処理順9位に設定する。
【0084】
次に、ストライプ領域35のブロックDの部分補正マップが必要となるx方向7,8列目の画素36群の入射照射量D’の演算を処理順10位に設定する。次に、ブロックDの部分補正マップが必要となるx方向15,16列目の画素36群の入射照射量D’の演算を処理順11位に設定する。以下、かかる順に沿って処理を進めていく。
【0085】
データ並び替え工程(S114)として、変換部64(並び順変更部)は、ブロックの複数の画素領域に定義されたドーズ変調率群のデータを分配方向毎に並び替える。
【0086】
図15は、実施の形態1における部分補正マップのデータ並び替えを説明するための図である。
図15(a)に示すように、データ並び替え前の部分補正マップのドーズ変調率群のデータは、例えば、ブロックCのx方向に1,2列目のy方向に並ぶ画素領域群が、画素領域順に定義される。
図15(a)の例では、ブロックCの部分補正マップのx方向に1列目に、座標(1,1)の画素領域38に定義される一連のデータa11、座標(1,2)の画素領域38に定義される一連のデータa12、・・・、座標(1,8)の画素領域38に定義される一連のデータa18が、かかる順で定義される。ブロックCの部分補正マップのx方向に2列目に、座標(2,1)の画素領域38に定義される一連のデータa21、座標(2,2)の画素領域38に定義される一連のデータa22、・・・、座標(2,8)の画素領域38に定義される一連のデータa28が、かかる順で定義される。そして、一連のデータaijには、上述したように、ij−1データからij−9データまでが順に定義されている。
【0087】
実施の形態1では、かかる部分補正マップについて、ij−kデータ(kは、画素領域自身の位置および分配方向を示す識別子、例えば1〜9の整数)をk毎に並び替える。言い換えれば、x方向の各列について、各画素領域38の例えば左下の画素領域38からの分配量(変調率)だけを順に並べる。次に、各画素領域38の例えば左の画素領域38からの分配量(変調率)だけを順に並べる。次に、各画素領域38の例えば左上の画素領域38からの分配量(変調率)だけを順に並べる。次に、各画素領域38の例えば下の画素領域38からの分配量(変調率)だけを順に並べる。次に、各画素領域38自身の分配残量(変調率)だけを順に並べる。次に、各画素領域38の例えば上の画素領域38からの分配量(変調率)だけを順に並べる。次に、各画素領域38の例えば右下の画素領域38からの分配量(変調率)だけを順に並べる。次に、各画素領域38の例えば右の画素領域38からの分配量(変調率)だけを順に並べる。次に、各画素領域38の例えば右上の画素領域38からの分配量(変調率)だけを順に並べる。
【0088】
図15(b)の例では、データ並び替えによって、ブロックCの部分補正マップのx方向に1列目のデータ群として、座標(1,1)の画素領域38に定義される11−1データ、座標(1,2)の画素領域38に定義される12−1データ、・・・、座標(1,4)の画素領域38に定義される14−1データがかかる順で定義され、次に、座標(1,1)の画素領域38に定義される11−2データ、座標(1,2)の画素領域38に定義される12−2データ、・・・、座標(1,4)の画素領域38に定義される14−2データがかかる順で定義され、・・・、座標(1,1)の画素領域38に定義される11−9データ、座標(1,2)の画素領域38に定義される12−9データ、・・・、座標(1,4)の画素領域38に定義される14−9データがかかる順で定義され、次に、座標(1,5)の画素領域38に定義される15−1データ、座標(1,6)の画素領域38に定義される16−1データ、・・・、座標(1,8)の画素領域38に定義される18−1データがかかる順で定義され、次に、座標(1,5)の画素領域38に定義される15−2データ、座標(1,6)の画素領域38に定義される16−2データ、・・・、座標(1,8)の画素領域38に定義される18−2データがかかる順で定義され、・・・、座標(1,5)の画素領域38に定義される15−9データ、座標(1,6)の画素領域38に定義される16−9データ、・・・、座標(1,8)の画素領域38に定義される18−9データがかかる順で定義される。
【0089】
同様に、データ並び替えによって、ブロックCの部分補正マップのx方向に2列目のデータ群として、座標(2,1)の画素領域38に定義される21−1データ、座標(2,2)の画素領域38に定義される22−1データ、・・・、座標(2,4)の画素領域38に定義される24−1データがかかる順で定義され、次に、座標(2,1)の画素領域38に定義される21−2データ、座標(2,2)の画素領域38に定義される22−2データ、・・・、座標(2,4)の画素領域38に定義される28−2データがかかる順で定義され、・・・、座標(2,1)の画素領域38に定義される21−9データ、座標(2,2)の画素領域38に定義される22−9データ、・・・、座標(2,4)の画素領域38に定義される24−9データがかかる順で定義され、次に、座標(2,5)の画素領域38に定義される25−1データ、座標(2,6)の画素領域38に定義される26−1データ、・・・、座標(2,8)の画素領域38に定義される28−1データがかかる順で定義され、次に、座標(2,5)の画素領域38に定義される25−2データ、座標(2,6)の画素領域38に定義される26−2データ、・・・、座標(2,8)の画素領域38に定義される28−2データがかかる順で定義され、・・・、座標(2,5)の画素領域38に定義される25−9データ、座標(2,6)の画素領域38に定義される26−9データ、・・・、座標(2,8)の画素領域38に定義される28−9データがかかる順で定義される。同様に、ブロックB,A,Dのデータを並び替える。すべてのブロックC,B,A,Dに対してデータが並び替えられた補正マップは、メモリ112に格納される。前処理として補正マップ(変調率マップ)を作成した後、実際の描画処理を開始する。
【0090】
まず、試料101の描画領域、或いは描画されるチップ領域は、ショットデータ作成部57或いはデータ処理部61によって、所定の幅で短冊上のストライプ領域に分割される。そして、各ストライプ領域は、上述した複数の画素(メッシュ領域)に仮想分割される。
【0091】
ショットデータ作成工程(S204)として、ショットデータ作成部57は、記憶装置140から描画データ(図形データ)を読み出し、画素毎或いは複数の画素群毎にその内部に配置されるパターンの面積密度を算出する。例えば、ストライプ領域毎に記憶装置140から対応する描画データを読み出す。例えば、ショットデータ作成部57は、描画データ内に定義された複数の図形パターンを対応する画素に割り当てる。そして、画素毎或いは複数の画素群毎に配置される図形パターンの面積密度を算出すればよい。
【0092】
また、ショットデータ作成部57(照射量演算部)は、当該ストライプ領域35内の画素36毎に、当該画素36へのビームの入射照射量Dを演算する。ここでは、画素36毎に、1ショットあたりの電子ビームの入射照射量(或いは照射時間T:ショット時間、或いは露光時間ともいう。以下、同じ)を算出する。多重描画を行う場合には、各階層における1ショットあたりの電子ビームの入射照射量を算出すればよい。基準となる入射照射量(或いは照射時間T)は、算出されたパターンの面積密度に比例して求めると好適である。また、ショットデータ作成工程(S204)における最終的に算出される照射量は、図示しない近接効果、かぶり効果、ローディング効果等の寸法変動を引き起こす現象に対する寸法変動分を照射量によって補正した補正後の入射照射量にすると好適である。入射照射量を定義する複数の画素とパターンの面積密度を定義した複数のメッシュ領域とは同一サイズであってもよいし、異なるサイズで構成されても構わない。異なるサイズで構成されている場合には、線形補間等によって面積密度を補間した後、各入射照射量を求めればよい。また、照射時間は、入射照射量Dを電流密度Jで割った値で定義できる。もし、各ビームの電流密度Jにばらつきがある場合には、補正マップ(変調率マップ)37に電流密度Jのばらつきに関するドーズ変調率を加味しておくと好適である。演算された各画素36の入射照射量Dは、各画素に対応する照射量マップ(ショットデータ)に定義される。
【0093】
図16は、実施の形態1における照射量マップの一例を示す図である。
図16において照射量マップにはストライプ領域35内の画素36毎に位置ずれ補正前の入射照射量Dが定義される。
図16では、入射照射量Dについて予め設定された基準照射量Dbaseに対する割合で示している。
図16では、試料101の描画領域上に図形パターン10が配置されるレイアウトである場合における各画素36の入射照射量Dが定義される。
図11の例のように、ビームの変調量の分配先が設定領域33から上下左右1画素分はみ出すことを考慮して、
図16では、最も左下の座標を座標(0,0)と定義している。照射量マップを図形パターンが存在しない領域まで拡張する場合は、拡張領域の入射照射量Dには0を定義すれば良い。また、照射量マップの拡張領域は、ビームの変調量の分配先の範囲に応じて適宜設定すれば良い。
【0094】
補正工程(S210)として、補正部59(照射量演算部)は、試料101における設定領域33よりも十分に大きい描画領域31を描画シーケンスに沿ってマルチビーム20を用いて描画する場合に、補正マップ(変調率マップ)37が予め設定された画素領域数毎に分割された複数のブロックのうち同じブロックの複数の画素領域に定義されたドーズ変調率群のデータを他のブロックのドーズ変調率群のデータに切りかえずに連続して繰り返し使用して、描画領域(ここでは例えばストライプ領域35)内の対象となる各位置(画素36)に照射するためのビームの補正後の入射照射量D’を演算する。具体的には以下のように動作する。
【0095】
ブロック選択工程(S112)として、選択部63は、分割された複数のブロックの中から1つのブロックを選択する。例えば、ブロックAを選択する。
【0096】
補正要素演算工程(S212)として、補正部59(照射量演算部)は、並び替えられたデータ順に各位置(画素36)の入射照射量D’を演算する。具体的には、演算処理部67がメモリ112からデータが並び替えられたブロックAの部分補正マップを読み出し、画素36毎に照射するためのビームの補正後の入射照射量D’を順に演算する。1つの画素36の補正後の入射照射量D’(補正照射量)は、当該画素36自身への分配量(要素値)の他、周囲8つの画素からの分配量(要素値)を加算して演算する。
【0097】
例えば、
図14に示すように、処理順1位となるブロックAが担当する当該ストライプ領域35のx方向の5,6列目のうちの5列目の下段側からy方向に向かって順に演算する。データが並び替えられたブロックAの部分補正マップでは、対象画素領域38の例えば左下の画素領域からの分配量から順に定義されている。
【0098】
図17は、実施の形態1における補正後の入射照射量の演算手法を説明するための図である。
図17(a)の例では、対象となるストライプ領域35の座標(5,1)の画素36から座標(5,4)の画素36までの4画素の入射照射量D’を演算する場合を示している。よって
図17の例では、最も左下の座標は(4,0)である。座標(5,1)の画素36から座標(5,4)の画素36までの4画素の入射照射量D’を演算するためには、以下の(1)〜(9)までの演算結果が必要となる。
【0099】
まず、座標(4,0)の画素36から座標(4,3)の画素36までの4画素のそれぞれ右上の画素への分配量(要素値)をy方向に向かって順次演算した結果(1)が必要となる。
図16の例では、座標(4,0)の画素36への入射照射量D(D=0.3)に、座標(5,1)の画素領域に定義される51−1データの変調率を乗じた値を演算する。次に、座標(4,1)の画素36への入射照射量D(D=1.0)に、座標(5,2)の画素領域に定義される52−1データの変調率を乗じた値を演算する。演算処理部67は、同様に、順に、座標(4,3)の画素36まで順に、右上の画素への分配量(要素値)を演算する。ここで、補正マップは処理順にデータが並び替えられているため、ベクトル処理により座標(4,0)の画素から座標(4,3)の画素までの演算は一度に実施することが可能である。
【0100】
次に、座標(4,1)の画素36から座標(4,4)の画素36までの4画素のそれぞれ右の画素への分配量(要素値)をy方向に向かって順次演算した結果(2)が必要となる。座標(4,1)の画素36への入射照射量D(D=1.0)に、座標(5,1)の画素領域に定義される51−2データの変調率を乗じた値を演算する。次に、座標(4,2)の画素36への入射照射量D(D=1.0)に、座標(5,2)の画素領域に定義される52−2データの変調率を乗じた値を演算する。演算処理部67は、同様に、順に、座標(4,4)の画素36まで順に、右の画素への分配量(要素値)を演算する。ここで、補正マップは処理順にデータが並び替えられているため、ベクトル処理により座標(4,1)の画素から座標(4,4)の画素までの演算は一度に実施することが可能である。そして、結果(2)を、結果(1)と加算する。
【0101】
次に、座標(4,2)の画素36から座標(4,5)の画素36までの4画素のそれぞれ右下の画素への分配量(要素値)をy方向に向かって順次演算した結果(3)が必要となる。そして、結果(3)を、結果(1)、(2)の和と加算する。
【0102】
次に、座標(5,0)の画素36から座標(5,3)の画素36までの4画素のそれぞれ上の画素への分配量(要素値)をy方向に向かって順次演算した結果(4)が必要となる。そして、結果(4)を、結果(1)、(2)、(3)の和と加算する。
【0103】
次に、座標(5,1)の画素36から座標(5,4)の画素36までの4画素自身に残る分配量(要素値)をy方向に向かって順次演算した結果(5)が必要となる。そして、結果(5)を、結果(1)、(2)、(3)、(4)の和と加算する。
【0104】
次に、座標(5,2)の画素36から座標(5,5)の画素36までの4画素のそれぞれ下の画素への分配量(要素値)をy方向に向かって順次演算した結果(6)が必要となる。そして、結果(6)を、結果(1)、(2)、(3)、(4)、(5)の和と加算する。
【0105】
次に、座標(6,0)の画素36から座標(6,3)の画素36までの4画素のそれぞれ左上の画素への分配量(要素値)をy方向に向かって順次演算した結果(7)が必要となる。そして、結果(7)を、結果(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)の和と加算する。
【0106】
次に、座標(6,1)の画素36から座標(6,4)の画素36までの4画素のそれぞれ左の画素への分配量(要素値)をy方向に向かって順次演算した結果(8)が必要となる。そして、結果(8)を、結果(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)の和と加算する。
【0107】
次に、座標(6,2)の画素36から座標(6,5)の画素36までの4画素のそれぞれ左下の画素への分配量(要素値)をy方向に向かって順次演算した結果(9)が必要となる。そして、結果(9)を、結果(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)の和と加算する。
【0108】
以上のようにして、画素36毎に、当該画素にそれぞれベクトル処理されて格納された分配量(要素値)を加算することで、座標(5,1)の画素36から座標(5,4)の画素36までの4画素の入射照射量D’を演算できる。
【0109】
図17(b)の例では、対象となるストライプ領域35の座標(5,5)の画素36から座標(5,8)の画素36までの4画素の入射照射量D’を演算する場合を示している。座標(5,5)の画素36から座標(5,8)の画素36までの4画素の入射照射量D’を演算するためには、
図17(a)の例と同様に、自身の画素36と自身を取り囲む9つの画素36について、入射照射量Dとドーズ変調率との演算が必要となる。
【0110】
図17(c)の例では、対象となるストライプ領域35の座標(6,1)の画素36から座標(6,4)の画素36までの4画素の入射照射量D’を演算する場合を示している。座標(6,1)の画素36から座標(6,4)の画素36までの4画素の入射照射量D’を演算するためには、
図17(a)、(b)の例と同様に、自身の画素36と自身を取り囲む9つの画素36について、入射照射量Dとドーズ変調率との演算が必要となる。
【0111】
同様にして、座標(6,5)の画素36から座標(6,8)の画素36までの4画素の入射照射量D’を演算する。
【0112】
次に、演算処理部67は、処理順2位となるブロックAが担当する当該ストライプ領域35のx方向13,14列目の画素36群について、同様に、座標(13,1)の画素36から座標(14,8)の画素36までの16画素の入射照射量D’を演算する。
【0113】
次に、演算処理部67は、処理順3位となるブロックAが担当する当該ストライプ領域35のx方向21,22列目の画素36群について、同様に、座標(21,1)の画素36から座標(22,8)の画素36までの16画素の入射照射量D’を演算する。
【0114】
実施の形態1では、各ブロックの部分補正マップをキャッシュメモリ70で保持可能なサイズに形成するため、処理毎にメインメモリ112から読み出すことなく、同じブロックが担当する領域を異にする複数の画素群の処理について続けて行うことができる。さらに、実施の形態1では、データの並び替えによって、同じ方向への分配量(要素値)を1画素ずつずらしながら順に演算するので、分配方向の判断処理を演算の都度行うこと無く同方向へベクトル処理を行うことができる。よって、y方向に並ぶ1列分の画素の分配量(要素値)を演算する際に、分配方向の判断処理を省いた同じ演算処理を機械的に繰り返すことができ、効率的に演算処理を進めることができる。その結果、演算処理を高速化できる。
【0115】
判定工程(S214)として、判定部65は、すべてのブロックについて演算が終了したかどうかを判定する。すべてのブロックについて演算が終了した場合には描画工程(S220)に進む。すべてのブロックについて演算が終了していない場合には、ブロック選択工程(S211)に戻り、残っているブロックについて、ブロック選択工程(S211)から判定工程(S218)までの各工程を繰り返す。具体的には、ブロックBを選択して、ブロックBが担当する当該ストライプ領域35の画素36群について、処理順4〜6位の早い方から並び替えられたデータ順に補正後の入射照射量D’(補正照射量)を演算する。続いて、ブロックCを選択して、ブロックCが担当する当該ストライプ領域35の画素36群について、処理順7〜9位の早い方から並び替えられたデータ順に補正後の入射照射量D’(補正照射量)を演算する。続いて、ブロックDを選択して、ブロックDが担当する当該ストライプ領域35の画素36群について、処理順10〜11位の早い方から並び替えられたデータ順に補正後の入射照射量D’(補正照射量)を演算する。
【0116】
以上のように、実施の形態1では、同じ方向へ連続してベクトル処理を行うことができるので効率よく演算ができる。
【0117】
画素36毎の入射照射量D’(補正照射量)(或いは照射時間T)は、補正照射量マップ(照射時間マップ)に定義され、補正照射量マップ(照射時間マップ)が例えばメモリ112に格納される。
【0118】
描画工程(S220)として、描画機構150(描画部)は、ストライプ領域35の各位置(画素36)にそれぞれ演算された入射照射量D’のビームが照射されるように、マルチビーム20を用いて試料101にパターンを描画する。具体的には、以下のように動作する。まず、データ処理部61は、入射照射量D’を照射時間Tに変換のうえ、描画シーケンスに沿ったショット順に並び替える。そして、並び替えられた照射時間配列データは、偏向制御回路130に出力される。
【0119】
偏向制御回路130は、ショット毎に、各制御回路41に照射時間配列データを出力する。そして、描画制御部60の制御のもとで、描画機構150は、各ビームのショット毎に、該当する照射時間の描画を実施する。描画機構150の動作は、上述した通りである。
【0120】
図18は、実施の形態1における照射量補正の有無による描画位置の違いを説明するための図である。
図18(a)では、照射領域34内での2×2のマルチビーム(ビームb11,b21,b12,b22)の位置ずれ状態の一例を示している。かかる状態のビームb11,b21,b12,b22を使って、
図6(b)〜
図7(d)に示した描画シーケンスでストライプ領域35を描画した場合、ストライプ領域35内のある領域において、
図18(b)に示すように位置ずれが生じることになる。そこで、実施の形態1における照射量補正を行うことで、
図18(c)に示すように位置ずれを無くす或いは低減できる。
【0121】
図19は、実施の形態1における補正マップの分割の有無およびデータ並び替えの有無によるスループットの違いの一例を説明するための図である。
図19において、縦軸にスループットを示し、横軸にキャッシュメモリを共有する並列演算するためのコア(core)数を示す。例えば、
図14の例では、ブロックAを使用する処理順1〜3位を別のコアによる並列演算を行う場合、コア数は3となる。
図19では、補正マップを複数のブロックに分割する場合(補正データ分割あり)、補正マップを複数のブロックに分割しない場合(補正データ分割なし)、補正マップのデータ並び替えを行ってベクトル処理を行った場合(ベクトル演算あり)、補正マップのデータ並び替えを行わずベクトル処理を行っていない場合(ベクトル演算なし)、レジスタ内でのデータの型変換を行っている場合(レジスタ型変換あり)、及びレジスタ内でのデータの型変換を行っていない場合(レジスタ型変換なし)の組み合わせにより、サンプルを区別している。例えば、補正前の入射照射量Dと補正後の入射照射量D’が2バイトのデータで定義され、補正マップの一連のデータaijの各方向のデータが4バイトのデータで定義される場合、データの型が異なるのでレジスタに格納する前に予め2バイトのデータを4バイトに型変換する。かかる場合を「レジスタ型変換なし」とする。これに対して、レジスタに2バイトのデータのまま入力させ、演算時にレジスタ内での型を合わせる。かかる場合を「レジスタ型変換あり」とする。
図19に示すように、補正マップを複数のブロックに分割しない場合でも、補正マップのデータ並び替えを行ってベクトル処理を行うことで、ある程度スループットを向上できる。しかし、補正マップを複数のブロックに分割することで、飛躍的にスループットを向上できる。レジスタ型変換なしの場合、2バイトのデータを4バイトに型変換すると不要な空き領域ができるので、メモリ帯域に無駄ができる。レジスタ型変換ありをさらに組み合わせて、かかる無駄を省くことで、さらにある程度スループットを向上できる。
図19の結果から、補正マップを複数のブロックに分割することの効果が大きいことがわかる。複数のブロックに分割することで、キャッシュメモリ70に保持される補正マップのデータ量を小さくできるので、演算速度にメモリ帯域が追い付かないといった問題を解消できる。また、キャッシュメモリ70に保持される補正マップのデータを繰り返し使用することで、補正マップのデータ入れ替えの回数を大幅に減らすことができる。
【0122】
以上のように、実施の形態1によれば、位置ずれが生じているビームを含むマルチビーム20が照射されるによって形成されるパターンの位置ずれ、及び/或いは寸法ずれを補正しながら、データ処理の高速化ができる。よって、スループットを向上させることができる。
【0123】
実施の形態2.
実施の形態1では、補正マップをx方向1列分のy方向の最下段から最上段までの画素領域分についてのブロックデータを使って、1列分の補正後の入射照射量D’(補正照射量)の演算を行った後、x方向に次の1列分の補正後の入射照射量D’(補正照射量)の演算を行う場合について説明した。かかる演算処理の場合、最初の1列分の演算時に使用した補正前の照射量マップのデータの一部を、次の1列分の演算時に使用する。このとき処理の無駄を省くためには、一度キャッシュメモリ70に格納した繰り返し使用する補正前の照射量マップのデータは、キャッシュメモリ70に格納した状態にしておくことが望ましい。ところで、キャッシュメモリ70は多段構成を持つものがある。例えば、演算処理部に近い側から数階層に分かれ、演算処理部に一番近いキャッシュメモリ70はコア(core)毎に分かれ、演算処理部から一番遠いキャッシュメモリ70は複数のコア(core)で共有する構成を持つものがある。一般的に、演算処理部に近いキャッシュメモリ70の方が高速だが、容量が小さい。したがって、マルチビームのビーム数が多くなり、設定領域33のy方向の画素領域数が多くなるような場合には、1列分の補正後の入射照射量D’(補正照射量)の演算の途中で、補正前の照射量マップのデータを演算処理部に一番近いキャッシュメモリ70において入れ換える必要が生じる場合がある。そこで、実施の形態2では、補正前の照射量マップのデータをキャッシュメモリ70において入れ換えずに済む構成について説明する。描画装置100の構成は
図1と同様である。また、以下、特に説明する点以外の内容は実施の形態1と同様である。
【0124】
図20は、実施の形態2におけるブロック分割とその効果について説明するための図である。実施の形態2では、
図20に示すように、設定領域33を格子状に複数のブロックA’〜L’に分割する。x方向に含める画素領域を増やし、代わりにy方向の最下段から最上段までの1列分よりも少ない画素領域で各ブロックを構成する。
図20の例では、設定領域33を3×4の12のブロックに分割した場合を示している。また、
図20の例では、例えば、設定領域33(照射領域34)が9×32画素領域分のサイズで構成される場合を示している。そして、ブロック1つあたり、3×8画素領域分のサイズで構成される場合を示している。なお、マルチビーム20の構成が2×2本のビームに限定されないことは言うまでもない。ブロック1つあたりのy方向の画素数が多い場合、補正後の入射照射量D’(補正照射量)の演算をベクトル処理で行っている途中に、キャッシュメモリ70内の繰り返し使用したい照射量マップのデータが入れ替わる場合がある。しかしながら、ブロック1つあたりのy方向の画素数を適度に分割しておけば、補正後の入射照射量D’(補正照射量)の演算をベクトル処理で行う場合に、途中で照射量マップのデータを入れ替える処理を無くすことができる。設定領域33を格子状に複数のブロックに分割する実施の形態2の構成は、マルチビームのビーム数が多くなり、設定領域33のy方向の画素領域数が多くなるほど効果的である。
【0125】
実施の形態3.
描画装置100で複数のチップを描画する場合、例えば、基準照射量といった描画条件が異なるチップ間では、チップ毎に入射照射量D’が演算されるのが一般的である。そのため、描画条件が異なるチップ間では、チップ毎にチップ領域が複数のストライプ領域35に分割され、上述した各実施の形態の通り、描画処理が進められる。言い換えれば、入射照射量D’(補正照射量)の演算は、チップ毎に行われ、描画機構150は、チップ毎に描画処理を行っていく。しかしながら、上述したように、マルチビーム描画では、マルチビーム20の照射領域34を移動させながら描画を進めていく。よって、照射領域34内の各画素領域38で生じる位置ずれが繰り返される。かかる点は、描画条件が異なるチップ間でも同様である。そこで、実施の形態3では、かかる点を考慮して、さらにスループットの向上を図る構成について説明する。描画装置100の構成は
図1と同様である。また、以下、特に説明する点以外の内容は上述した各実施の形態のいずれかと同様である。
【0126】
図21は、実施の形態3における補正照射量の演算手法を説明するための図である。
図21では、試料101上に、描画条件が異なる複数のチップA,B,Cを描画する場合を示している。例えば、複数のチップA,B,Cを個別にそれぞれ複数のストライプ領域35に分割する。そして、チップAのストライプ領域35aでは、処理順1のブロックAの部分補正マップを使った分配量(要素値)の演算処理A1から順に、例えば、処理順最下位のブロックDの部分補正マップを使った分配量(要素値)の演算処理D2を行う。チップBのストライプ領域35bでは、例えば処理順1位のブロックBの部分補正マップを使った分配量(要素値)の演算処理B1と、例えば、処理順2位のブロックCの部分補正マップを使った分配量(要素値)の演算処理C1を行う。チップCのストライプ領域35cでは、例えば処理順1位のブロックCの部分補正マップを使った分配量(要素値)の演算処理C1と、例えば、処理順2位のブロックDの部分補正マップを使った分配量(要素値)の演算処理D1を行う。よって、各チップの演算処理毎にキャッシュメモリ70は、部分補正マップのデータを入れ替えることになる。
【0127】
そこで、補正部59(照射量演算部)は、同じブロックの複数の画素に定義されたドーズ変調率群のデータを連続して繰り返し使用して、複数のチップA,B,Cのうち対象チップの対応位置の入射照射量D’を演算すると共に、異なるチップの対応位置における入射照射量D’を演算する。具体的には以下のように動作する。
図21に示すように、描画条件が異なる複数のチップA,B,Cを跨いだ仮想的なストライプ領域35を設定する。例えば、複数のチップA,B,Cをマージ処理してマージされたチップ領域を複数の仮想的なストライプ領域35に分割すればよい。具体的なストライプ領域35a,35b,35cは、複数のチップA,B,Cにおいて個別にそれぞれ設定すればよい。そして、仮想的なストライプ領域35毎に、ブロックAの部分補正マップを使う領域、ブロックBの部分補正マップを使う領域、・・・を抽出する。そして、仮想的なストライプ領域35毎に、条件が異なる複数のチップA,B,Cを跨いで、処理順1のブロックAの部分補正マップを使った分配量(要素値)の演算処理A1から順に、例えば、処理順最下位のブロックDの部分補正マップを使った分配量(要素値)の演算処理D3を行う。
【0128】
かかる構成により、各チップの演算処理毎にキャッシュメモリ70が部分補正マップのデータを入れ替える必要がなく、一緒に連続して処理できる。よって、スループットを向上できる。
図21に示すチップB,Cのようなx方向のサイズが小さいチップの場合、同じブロックを連続して使用できないので、マージ処理することで同じブロックを連続して使用できるようにするとスループットの向上に特に効果的である。なお、描画条件が異なるため、描画機構150は、複数のチップについてチップ毎に描画処理を実施すればよい。
【0129】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。
【0130】
また、上述した例では、各制御回路41の制御用に10ビットの制御信号が入力される場合を示したが、ビット数は、適宜設定すればよい。例えば、2ビット、或いは3ビット〜9ビットの制御信号を用いてもよい。なお、11ビット以上の制御信号を用いてもよい。
【0131】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。例えば、描画装置100を制御する制御部構成については、記載を省略したが、必要とされる制御部構成を適宜選択して用いることは言うまでもない。
【0132】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全てのマルチ荷電粒子ビーム描画装置及びマルチ荷電粒子ビーム描画方法は、本発明の範囲に包含される。