(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記デジタルフィルタリング処理は、処理に供される前記正値点を中心とした、m行n列のビットの領域について、該m行n列のタップを有する所定のデジタルフィルタを、互いに対応する該ビットと該タップが互いに重なるように位置せしめ、対応する該ビットの値と該タップの係数を各々乗算し、これらの乗算結果を全て加算して、前記処理に供される前記正値点の処理値とするように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のホログラム用記録信号処理装置。
前記デジタルフィルタは、前記mを3、前記nを3とし、このデジタルフィルタの中央のタップの係数を1とし、該中央のタップの上下左右に隣接するタップの係数を、絶対値が1より小さい負の係数とし、その余のタップの係数を0としたことを特徴とする請求項2に記載のホログラム用記録信号処理装置。
前記デジタルフィルタは、前記mを5、前記nを5とし、このデジタルフィルタの中央のタップの係数を1とし、前記中央のタップの上下左右に隣接するタップの係数を、絶対値が1より小さい負の係数とし、これら中央のタップの上下左右に隣接するタップの、さらに外側に隣接するタップの係数を所定の係数とし、その余のタップの係数を0としたことを特徴とする請求項2に記載のホログラム用記録信号処理装置。
前記デジタルフィルタリング処理の前処理として前記ページデータの暗点の輝度を上昇させて前記正値点とする暗点レベル上昇処理手段を備えたことを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項に記載のホログラム用記録信号処理装置。
請求項1〜5のうちいずれかに記載のホログラム用記録信号処理装置と、該ホログラム用記録信号処理装置によりデジタルフィルタリング処理を行って得られたページデータをホログラム記録媒体に記録するホログラム記録再生装置本体とを備えたことを特徴とするホログラム記録装置。
【背景技術】
【0002】
近年、大容量かつ高速の情報記録再生システムとしてホログラム記録が注目されている。ホログラム記録は、参照光・信号光と呼ばれる同一光源からの2つのコヒーレント光を干渉させ、生じた干渉縞を記録媒体に屈折率変化として記録・保持する。信号光は「ページデータ」と呼ばれる2次元データ画像により空間的に変調され、レンズを介して記録媒体へ照射される。参照光の条件(例えば記録媒体への入射角度、波長、あるいは位相等)を変化させながら、媒体の同一箇所に複数のページデータを多重して記録することもできるため高密度化・大容量化が可能である。
【0003】
ところで、ホログラム記録では、記録媒体上における参照光のスポット径がホログラムの径(記録光のスポット径)よりも大きいことから、再生したいホログラムに参照光を照射すると、隣接するホログラムの一部にもこの参照光が照射され、隣接するホログラムからもページデータが再生される。これらのページデータが撮像手段に入射するとクロストークを生じることとなる。
【0004】
そのため
図5に示すように、再生光(物体光)の光路中に空間フィルタ(112)を設け、再生したいホログラムからの再生光と、そのホログラムに隣接するホログラムからの再生光(ノイズ成分)を分離して、再生したいホログラムからの再生光のみを撮像手段に出力するようにしている。
【0005】
空間フィルタの開口径を小さくすれば、当該ホログラムと、それに隣接するホログラムとの間隔をつめてデータを記録、再生できるため、高密度記録が可能であるが、その一方で、空間フィルタはフーリエ面に設けられるため、開口径を小さくするとページデータの多くの高周波成分が遮断されてしまう。
【0006】
そのため、輝点ビット(ビット1とも称する)の信号形状は、矩形形状がなまってガウス分布をなし、単一の輝点ビットが記録されている場合は中央部分の輝度も低下したものとなる。その一方、輝点ビットが連続して記録されている場合は、信号形状が台形状となるため、各輝点ビットの中央部分の大きな低下は生じない。
【0007】
これにより、再生データの単一の輝点ビットの輝度は、連続して並ぶ輝点ビットの輝度に対して低下し、輝点ビットの信号の輝度分布が不均一になり、信号対ノイズ比(SNR)が劣化する。
【0008】
また、再生データを取得するときの撮像素子の画素ピッチは、記録するときにページデータを表示する振幅変調SLMの画素ピッチと異なる。ホログラム記録再生装置において、撮像素子のピッチはSLMの画素ピッチに対して1/2以上であることから、撮像する段
階においても符号間干渉が生じ、再生データのSNRが劣化する。
さらに、記録媒体における散乱ノイズ等の光学系で生じるノイズによってもSNRが劣
化する。
【0009】
このように、例えば、
図9(a)、(b)に示す記録時のページデータに、空間フィルタによる高周波成分の遮断の影響、撮像素子によるサンプリングの影響および重畳する光学的なノイズの影響が付与された場合において、再生されたページデータとヒストグラムは
図10(a)と、
図10(b)に示すように表される。
すなわち、
図10(a)に示すように、輝点ビットの輝度にばらつきが生じ、また、
図10(b)に関するヒストグラム(再生時)を、
図9(b)に関するヒストグラム(記録時)と比較すると、ビットの輝度分布の幅(例えば、半値幅)が大幅に広くなっており、SNRが低下していることが明らかである。
このようなSNRの低下を改善する方策として、下記特許文献1に記載された技術が知られている。この特許文献に開示された技術は、空間フィルタやレンズのMTFによる再生
ページデータの高周波成分の劣化を改善し、再生ページデータのノイズ成分を低減するために、記録用ページデータをフーリエ変換し、高周波成分を増幅する手法を採用している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、上記特許文献1に記載されている手法は、ページデータを逐一フーリエ変換し、高周波成分を増幅し、さらに逆フーリエ変換する必要があるため、高密度記録、高データ転送速度のホログラム記録のためにページデータの画素数が増加すると、フィルタ処理に要する時間が大幅に増加する。
また、上記特許文献1に記載されている手法は、再生時の撮像素子の画素ピッチにより生じる符号間干渉によるノイズの低減については考慮していない。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、ホログラム記録を行う際に、ページデータの画素数が増加しても、ノイズ低減処理に要する時間が大幅に増加することがなく、空間フィルタや撮像素子の画素ピッチにより生じる符号間干渉によるノイズ低減を図ることができる、ホログラム用記録信号処理装置、これを備えたホログラム記録装置およびホログラム用記録信号処理方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち、本発明のホログラム用記録信号処理装置は、
ホログラム記録がなされるページデータに対して、データ記録の前処理としてのデジタルフィルタリング処理を行なうホログラム用記録信号処理装置において、
前記デジタルフィルタリング処理は、前記ページデータ中の、処理に供される、輝点、および正の値とされた暗点の2つの種類の点のうち少なくとも一方の種類の点からなる正値点について、当該正値点に隣接する位置に当該正値点と同種の正値点がある場合と、当該正値点に隣接する位置に当該正値点と同種の正値点がない場合との間で、再生データにおける当該正値点の信号強度が互いに近づくように、予め、該信号強度を調整する処理であることを特徴とするものである。
なお、本願発明において「隣接する」とは、領域同士が一点において接しているような態様(例えば
図2(a)に示すフィルタにおいて、中央のタップと、4隅に配されたタップのように、互いに斜めに配された関係)を含まない趣旨である。
なお、上記「デジタルフィルタリング処理」は、具体的な処理作業においては、輝点と暗点の全てに対して機械的になされることも多いが、0レベルの暗点については、その結
果が、当該正値点の信号強度の決定に寄与しないので、本発明の装置および方法においては、0レベルの暗点については処理の要素として特に規定していない。
【0014】
また、前記デジタルフィルタリング処理は、処理に供される前記正値点を中心とした、m行n列のビットの領域について、該m行n列のタップを有する所定のデジタルフィルタを、互いに対応する該ビットと該タップが互いに重なるように位置せしめ、対応する該ビットの値と該タップの係数を各々乗算し、これらの乗算結果を全て加算して、前記処理に供される前記正値点の処理値とするように構成されていることが好ましい。
前記デジタルフィルタは、前記mを3、前記nを3とし、このデジタルフィルタの中央のタップの係数を1とし、該中央のタップの上下左右に隣接するタップの係数を、絶対値が1より小さい負の係数とし、その余のタップの係数を0とすることが好ましい。
【0015】
また、前記デジタルフィルタは、前記mを5、前記nを5とし、このデジタルフィルタの中央のタップの係数を1とし、前記中央のタップの上下左右に隣接するタップの係数を、絶対値が1より小さい負の係数とし、これら中央のタップの上下左右に隣接するタップの、さらに外側に隣接するタップの係数を所定の係数とし、その余のタップの係数を0とすることが好ましい。
【0016】
また、前記デジタルフィルタリング処理の前処理として前記ページデータの暗点の輝度を上昇させて前記正値点とする暗点レベル上昇処理手段を備えたことが好ましい。
また、本発明のホログラム記録装置は、上記いずれかに記載のホログラム用記録信号処理装置と、該ホログラム用記録信号処理装置によりデジタルフィルタリング処理を行って得られたページデータをホログラム記録媒体に記録するホログラム記録再生装置本体とを備えたことを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明のホログラム用記録信号処理方法は、
ページデータにデジタルフィルタリング処理を施すホログラム用記録信号処理方法において、
該ページデータをホログラムに記録する処理を行なう前に、
前記デジタルフィルタリング処理に供される輝点および正の値とされた暗点の2つの種類の点のうち少なくとも一方の種類の点からなる正値点について、当該正値点に隣接する位置に当該正値点と同種の正値点がある場合と、当該正値点に隣接する位置に当該正値点と同種の正値点がない場合との間で、再生データにおける当該正値点の信号強度が互いに近づくように、予め、該信号強度を調整することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明のホログラム用記録信号処理装置、これを備えたホログラム記録装置およびホログラム用記録信号処理方法においては、ホログラム記録に供されるページデータにデジタルフィルタを用いたデジタルフィルタ処理を施すことで、再生データのSNRを改善することができる。再生データのSNRが改善されるので、記録密度やデータ転送速度を向上させることができる。
また、SNRを改善する際に、ページデータを逐一フーリエ変換し、高周波成分を増幅し、さらに逆フーリエ変換することが必要とされないため、SNRの改善処理に要する時間が大幅に増加することがない。
また、撮像素子の画素ピッチにより生じる符号間干渉によるノイズについても低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1の実施形態>
以下、本発明の実施形態に係るホログラム用記録信号処理装置、これを備えたホログラム記録装置およびホログラム用記録信号処理方法を、図面を参照しながら説明する。
まず、本実施形態に係るホログラム用記録信号処理装置の基本的な概念について説明する。
【0021】
記録用ページデータにおいては、通常、各輝点ビットにおける輝度は同一の強さとなるように設定されているが、再生されたぺージデータにおいては、連続して並ぶ輝点ビットの輝度(
図11(B)を参照)は、大きくは低下しないのに対し、単一の輝点ビットの輝度(
図11(A)を参照)は、大きく低下してしまう。
【0022】
すなわち、
図11(A)に示すように、単一の輝点ビットの輝度は、矩形波の立ち上がりおよび立下りがなまった状態となり、それに引っ張られて、中央部の輝度も低下してしまう。それに対して、連続する輝点ビットの輝度は、矩形波の立上りおよび立下りがなまった状態となっても、立上りと立下りの間隔が大きいため、輝点の中央部が引っ張られて、その強さが大幅に低下することはない。
【0023】
このようなことから、連続する輝点ビットの輝度と単一の輝点ビットの輝度との間で強度が大幅に異なってしまう。
そこで、本実施形態においては、ページデータを記録媒体に記録する前に、予め、単一の輝点ビットの輝度を、連続して並ぶ輝点ビットの輝度より大きくしたページデータの補正処理を行い、記録用ページデータとするようにしている。なお、斜め方向に輝点ビットが連続して並んでも、両者の輝点ビットの輝度は、互いに影響を与えない。
【0024】
このような場合、各輝点ビットの強度を補正する処理は、補正しようとする輝点ビットを中心とする3列、3行のビット領域に、
図2に示すような、3×3タップのデジタルフ
ィルタを概念的に重畳させるようにして、互いに重畳されたビットの値(輝点ビットは1、暗点ビットは0として計算される)とデジタルフィルタの係数値を各々乗算し、その乗算結果を加算して補正しようとする輝点ビットの補正後の値とする。
【0025】
具体的には、例えば
図2(a)に示すように、デジタルフィルタにおいては、その中心のタップの係数値を1とし、上下左右に隣接するタップの係数を負の値にする。また、斜
め方向に隣接するタップの係数は0にする。上下左右の何れにも輝点ビットが存在しなければ、中心の輝点ビットの補正処理後の強度は変わらない。
【0026】
一方、上下左右のいずれかに輝点ビットが存在すれば、中心の輝点ビットの値は、周囲に輝点ビットが存在しない場合と比較して低くなる。
図2(a)に示すデジタルフィルタによりフィルタリング処理(以下、単にデジタルフィルタ処理と称する)を行ったページデータを
図2(b)に示す。このページデータをホログラム記録媒体に記録し、さらに再生した際に、空間フィルタによる高周波成分の遮断、撮像素子によるサンプリングおよび光学的なノイズの重畳等の影響を受けた再生ページデータを
図3(a)に示し、この再生されたページデータの各ビットのヒストグラム(横軸が強度、縦軸が度数を表す)を
図3(b)に示す。
【0027】
比較のために、上記輝点ビットの補正処理を行わないで、ページデータを記録し、再生する従来技術による、再生ページデータを
図10(a)に示し、この再生されたページデータの各ビットのヒストグラム(横軸が強度、縦軸が度数を表す)を
図10(b)に示す。
上記
図3(b)のヒストグラムを、従来技術による
図10(b)のヒストグラムと比較すると、輝点ビット(ビット1)および暗点ビット(ビット0)の各輝度分布の広がり(半値幅)が狭くなっており、デジタルフィルタ処理によりSNRが改善していることが明らかである。
【0028】
本実施形態のホログラム用記録信号処理装置においては、前述した特許文献1に記載の技術のように各ページデータ毎にフーリエ変換処理を行う必要がないため、高速で記録用のページデータを生成することができる。また、ホログラム記録媒体における散乱ノイズ等のように、理論的に求めることが困難な光学系内で生じるノイズに対しても、本実施形態装置では、実験(あるいはシミュレーション)を行って得られた結果から推定した係数値を、デジタルフィルタのm行n列の各タップの係数値として実空間領域で設定するようにしているため、実際に用いるホログラム記録装置に即した条件下でページデータを作成することができる。
【0029】
次に
図1を用いて本実施形態に係るホログラム用記録信号処理装置の構成について説明する。
本実施形態に係るホログラム用記録信号処理装置100は、映像等のページデータに係るデジタルデータを格納するデジタルデータ格納手段10と、デジタルデータ格納手段10から出力されたデジタルデータを周知の手法により符号化変調し、一般的な(従来の)ページデータ(従来のページデータ)15を得る符号化変調手段11と、上述したデジタルフィルタを作成するデジタルフィルタ作成手段14と、上述した一般的なページデータを入力され、この一般的なページデータに対して、デジタルフィルタ作成手段14により作成されたデジタルフィルタによりフィルタ処理を行って、フィルタ処理後のページデータ16を得るデジタルフィルタ処理手段12とを備えており、デジタルフィルタ処理後のページデータ16はホログラム記録再生装置本体13に送出される。
【0030】
なお、デジタルフィルタ作成手段14においては、空間フィルタの開口径やサンプリング周波数等の光学系パラメータを勘案して、各タップの係数値の最適解を見つけてデジタ
ルフィルタを作成する。
【0031】
次に、
図5を用いて、上記ホログラム用記録信号処理装置100を備えた本実施形態に係るホログラム記録装置300について説明する。
図5に示すホログラム記録装置300は、ホログラムの記録機能および再生機能を備えた記録再生装置として構成されている。
なお、ホログラム記録媒体111はフォトポリマーで構成され、位相共役型に対応した構成とされている。
ただし、本発明の装置に係るホログラム記録媒体111の材料としては、フォトポリマーに限られるものではなく、また、光学系としても、必ずしも位相共役型に限られるものではない。
【0032】
図5に示すように、記録時において、レーザ光源101から出射されたコヒーレントなレーザ光束は、図示されないシャッタを通過し、発散レンズ102およびコリメートレンズ104からなる(通常は空間フィルタを含む)ビームエキスパンダ103により光束径を拡大され、半波長板105を通過し、ミラー106により直角に偏向され、偏光ビームスプリッタ(PBS:以下単にPBSと称する)107により2系の光束に分岐される。
【0033】
PBS107から図中左方に向かう光束(信号光:p偏光)は、PBS108を透過して振幅変調SLM(以下単にSLMと称する)109に照射され、該SLM109により空間的に変調されて、デジタル画像からなるページデータ情報を担持した信号光とされる。
このSLM109に入力されるページデータは、上述したホログラム用記録信号処理装置100により処理されたものである。
【0034】
また、SLM109から出射(反射)された信号光は、SLM109に入射した状態とはページデータ情報により一部の偏光状態が変化してs偏光となり、PBS108において図中下方に反射され、レンズ(FTL)110B、110Aによって光学的にフーリエ変換されてホログラム記録媒体111に照射される。なお、フーリエ変換面には空間フィルタ112が配されている。
【0035】
一方、PBS107から図中下方に向かう光束(s偏光)は、参照光とされ、半波長板114(半波長板114の光学軸が入射光の偏光方位に合致するように調整しておく)を通過し、ミラー115により直角に偏向されるが、s偏光状態とされているためPBS116により反射され、PBS116から図中下方に向かうことになる。この光束(記録時参照光)はガルバノメータミラー117により角度制御され、リレーレンズ118を介してホログラム記録媒体111中の信号光が照射される場所へ、信号光とは別角度で照射され、これにより、記録媒体111の記録材料に干渉縞模様の光の強弱に応じた屈折率変化が誘起され、これがホログラム情報として保持される。
【0036】
なお、本実施形態装置においては、角度多重記録が前提とされているので、ページデータを上記SLM109に表示させ、逐次、上記SLM109へのページデータの表示を更新しつつ、この更新毎に、参照光の記録媒体111への入射角θをガルバノメータミラー117によって少しずつ変化させることにより、互いに異なるページデータを記録媒体111中の同一位置へ多重記録することが可能となり、高密度な情報格納が可能となっている。
【0037】
このようにしてホログラム記録媒体111に記録されたページデータ情報を再生する場合には、半波長板114を調整することで、参照光の偏光方向を(s偏光からp偏光に)変換する。この参照光は、ミラー115で反射された後、PBS116に到達するが、半
波長板114によってp偏光とされているので、このPBS116を直進することになる。
【0038】
図5に示すように、PBS116を透過した再生用参照光は、ミラー120で反射され、ガルバノメータミラー122に到達し、このガルバノメータミラー122によって、角度多重記録されたページデータの再生処理を行うための入射角θの制御が行われる。
【0039】
すなわち、ホログラム記録媒体111への再生用参照光の入射角は、ガルバノメータミラー122の回転角度によって制御される。
【0040】
このようにして、リレーレンズ123を介して記録媒体111へ入射した再生用参照光は、記録媒体111中の信号光が照射された場所へ、記録媒体111の裏面側から、記録用参照光の入射方向とは対向するような方向から照射される。
【0041】
このように、再生用参照光の照射によって、ホログラム記録媒体111から所定のページデータの再生光が射出される。
射出された再生光は、レンズ110A、空間フィルタ112、レンズ110Bを介してPBS108に照射される。このPBS108においては、p偏光である再生光は透過されることから、p偏光である再生光に担持されたページデータ情報はカメラ113に入射して撮像される。なお、空間フィルタ112をレンズ110A、110Bのフーリエ変換面に配置することにより、再生したいホログラムからの再生光と、隣接するホログラムからの再生光を分離してクロストークを低減している。
【0042】
次に、上記ホログラム用記録信号処理装置100を用いたホログラム用記録信号処理方法を、上述した
図1を用いて具体的に説明する。
図1に示すように、まず、デジタルデータ格納手段10に格納されていた、映像などのデジタルデータが、符号化変調手段11において周知の手法により符号化変調され、従来の一般的なページデータ15が生成される。この生成されたページデータに、デジタルフィルタ処理手段12においてデジタルフィルタ処理が施され、上述したデジタルフィルタ処理がなされたページデータ16が生成される。デジタルフィルタ処理に供されるデジタルフィルタはデジタルフィルタ作成手段14により作成される。デジタルフィルタ処理がなされたページデータは、この後、ホログラム記録再生装置本体13に送出される。
【0043】
上記デジタルフィルタは、上述したように、予めデジタルフィルタ作成手段14において作成されるものである。まず、本実施形態におけるデジタルフィルタは、前述したように、
図2(a)に示すように3×3タップとされ、中心のタップの係数が1とされ、中心のタップの上下左右に隣接するタップの係数が変数(
図2(a)においては−0.10)とされ、中心のタップおよび中心のタップの上下左右に隣接するタップ以外のタップ、すなわち、中心のタップの斜めに位置するタップの係数が0とされる。
【0044】
この後、上記変数を変更する度に、従来のページデータと同様の符号化変調処理がされたページデータに、デジタルフィルタによるデジタルフィルタ処理を行う。デジタルフィルタ処理がなされたページデータに、空間フィルタの開口径、対物レンズの焦点距離、振幅変調SLMおよびカメラの撮像素子の画素ピッチを光学パラメータとして与え、シミュレ
ーションにより再生データを求める。このようにして得られた複数の再生データのうち、SNRが最大値となったときの係数(変数)値を用いてデジタルフィルタを作成する。
【0045】
一例として、空間フィルタの開口径を0.67 mm、対物レンズの焦点距離を11 mm、振幅変調SLMの画素サイズを8 μm、カメラの撮像素子の画素サイズを5.5 μmとしたときの、デ
ジタルフィルタの中心のタップの上下左右に隣接するタップの係数値に対する、このデジ
タルフィルタで処理したページデータを用いて、シミュレーションにより求めた再生データのSNRの大きさとの関係を表すグラフ(横軸はフィルタ係数、縦軸はSNRを表す)を
図4に示す。
【0046】
図4に示されるように、上記係数値が−0.10(
図4では−0.1と表記)のとき、再生データのSNRが最大になる。これにより、本実施形態においては、デジタルフィルタの中心のタップの上下左右に隣接するタップのフィルタの係数を−0.10に決定する。
また、このデジタルフィルタを用いたデジタルフィルタ処理を、ページデータの輝点毎に行って、ページデータの全面に亘るデジタルフィルタ処理を終了する。このデジタルフィルタ処理は、符号化変調されたページデータ毎に行われ、各ページデータについて、デジタルフィルタ処理ページデータが生成される。
【0047】
これらのデジタルフィルタ処理がなされたページデータは、ホログラム記録再生装置本体13に送られ、振幅変調SLM109(
図5を参照)に表示され、上述した光学系を用い
たホログラム記録処理によって記録媒体111に記録される。ただし、暗点の輝度レベルが0であるときは、輝点のみにデジタルフィルタ処理を施せばよいが、後述する暗点輝度レベル上昇処理を行う場合のように、輝度レベルが0ではないときは、暗点にもデジタルフィルタ処理を施すことが好ましい。
なお、全ての点にデジタルフィルタ処理を施した場合、輝度レベルが負になる場合があるが、その場合には輝度レベルを0に置き換える。
この後、このようにして記録された、デジタルフィルタ処理がなされたページデータが再生されると、ビット1の輝度分布が均一化され、SNRが改善されたページデータが再生される。
【0048】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態に係るホログラム用記録信号処理装置は、基本的には上述した第1の実施形態に係るホログラム用記録信号処理装置と略同様に形成されているが、
図6に示すように、デジタルフィルタ処理手段22によりデジタルフィルタ処理を行う直前の段階で、暗点レベル上昇処理を行う暗点レベル上昇処理手段27を備えている点において相違する。そこで、
図6に記載されている部材の中で、
図1に記載されている部材に対応する部材は、
図1の各部材の符号に10を加えた符号で表し、その詳しい記載は省略する。
【0049】
すなわち、この第2の実施形態に係るホログラム用記録信号処理装置200は、第1の実施形態に係るホログラム用記録信号処理装置100と同様に、デジタルデータ格納手段20と、従来のページデータ25を出力する符号化変調手段21と、デジタルフィルタ処理ページデータ26を出力するデジタルフィルタ処理手段22と、デジタルフィルタを作成し、そのデジタルフィルタをデジタルフィルタ処理手段22に送出するデジタルフィルタ作成手段24とを備えている。
【0050】
一方、第1の実施形態に係るホログラム用記録信号処理装置100が備えていない、暗点レベル上昇処理手段27は、ビット0(暗点ビット)の輝度レベルを上昇させた後(黒レベル上昇ページデータ28)に、デジタルフィルタによりデジタルフィルタ処理を行うことにより、ページデータによる再生データのSNRを改善するものである。
暗点レベル上昇手段27においては、符号化変調された、従来のページデータが入力され、暗点レベル上昇処理により、このページデータのビット0の輝度レベルを大きくする。
輝度レベルが大きくなるにつれSNRは大きくなるので、暗点レベル上昇処理に基づきSNRをより良好なものとすることができる。
【0051】
図7は、シミュレーションにより求めたビット0の輝度レベルに対する、上述した第1の実施形態におけるフィルタ係数(−0.10)を用いてデジタルフィルタ処理したときに得られる再生データのSNRの関係を表すグラフである。
上述したように、輝度レベルが大きくなるにつれSNRが大きくなること、およびレンジの広さを考慮して、暗点の輝度レベルは128(SNR)に設定した。なお、暗点レベル上昇処理が行われていないビット0とビット1の輝度レベルはそれぞれ0と255であり、暗点レベルを上昇させた場合でも輝点レベルが255であることは変わらない。
【0052】
暗点レベル上昇処理によりビット0の輝度レベルを上昇させたページデータ(
図6の黒レベル上昇ページデータ28)に対して、デジタルフィルタ処理手段22においてデジタルフィルタ処理がなされ、これにより作成されたデジタルフィルタ処理ページデータ26はホログラム記録再生装置本体23に送出される。このデジタルフィルタ処理ページデータ26は、上記第1の実施形態の場合と同様に、ホログラム記録再生装置本体23の振幅変調SLM109(
図5を参照)に表示され、上述した光学系を用いたホログラム記録処理
によって記録媒体111に記録される。この後、このようにして記録されたページデータが再生されると、ビット1の輝度分布が均一化され、SNRがより改善されたページデータが再生される。
【0053】
本発明のホログラム用記録信号処理装置、これを備えたホログラム記録装置およびホログラム用記録信号処理方法としては、上記実施形態のものに限られるものではなくその他の種々の態様のものに変更が可能である。
例えば、上記ホログラム記録装置およびホログラム記録方法では再生機能を有するものであることが望ましいが、再生機能を有する装置を別個の装置とする場合を排除するものではない。
また、装置の光学系の構成としても、上記実施形態のものに限られるものではない。
【0054】
上記実施形態においては、振幅変調方式のページデータについて説明されているが、振幅変調と位相変調を合わせた変調方式のページデータにおいても有効である。
また、上記デジタルフィルタは3行3列のタップを有しているが、その他の数のタップを有しているものであっても良い。例えば、
図8(a)に示すように、上記デジタルフィルタとして5行5列のタップを有していても良い。5行5列のタップとした場合、中心のタップの係数を1、中心のタップから上下左右方向に並ぶタップの係数を変数、それ以外
のタップの係数を0とする。中心のタップの上下左右に隣接するタップ(以下、第1隣接
タップと称する)の変数(係数)を-0.10とし、その第1隣接タップの外側に隣接するタ
ップ(第2隣接タップ)の変数(係数)bを変更したとき、この係数bとその時の再生データSNRの値との関係を
図8(b)に示す。
この
図8(b)のグラフから、係数bが0.05のときに再生データSNRの値が最大になる
ことが分かる。
このようにデジタルフィルタとして5行5列のタップとした場合、上述した3行3列のタップとした場合に比べて、計算処理量は増加するものの、さらに再生データのSNRの値
を改善することができる。
また、上記デジタルフィルタにおける行と列の数は必ずしも一致していなくともよい。
【0055】
また、上記デジタルフィルタは、単一の輝点ビットの再生データにおける輝度値と、連続する輝点ビットの再生データにおける輝度値とを一致させるために、連続する輝点ビットの再生データにおける輝度値を、記録時において予め低下させておくようにしているが、これとは逆に、単一の輝点ビットの再生データにおける輝度値を、記録時において予め増加させておいて、再生データにおける両輝度値を一致させるようにしても良い。
【0056】
なお、多重記録の手法としても角度多重に限られるものではなく、角度多重以外の波長多重やペリストロフィック多重等の種々の多重手法を適用することができる。
また、上記SLMとしては反射型液晶(LCOS)が用いられているが、透過型液晶あるいはDMD等の液晶以外の空間変調器を用いることも可能である。