(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
乳化剤の存在下に、メチルメタクリレート40〜98.99質量%、アルキル基の炭素数が1〜8であるアルキルアクリレート1〜60質量%、グラフト化剤0.01〜1質量%、および架橋剤0〜0.5質量%を重合して重合体(a)を含有するラテックス(I)を得;
ラテックス(I)の存在下に、アルキル基の炭素数が1〜8であるアルキルアクリレート70〜99.5質量%、メチルメタクリレート0〜30質量%、グラフト化剤0.5〜5質量%、および架橋剤0〜5質量%を重合して重合体(a)と重合体(b)とを含有するラテックス(II)を得;
ラテックス(II)の存在下に、メチルメタクリレート80〜99質量%、およびアルキル基の炭素数が1〜8であるアルキルアクリレート1〜20質量%を重合して重合体(a)と重合体(b)と重合体(c)とを含有してなるラテックス(III)を得、
該ラテックス(III)を凝固させてスラリーを得、
該スラリーを洗浄および脱水し、
脱水されたスラリーを乾燥させて重合体(a)と重合体(b)と重合体(c)とを含有してなる多層構造アクリル系重合体を得、
アクリル系樹脂0〜35質量%と前記で得られた多層構造アクリル系重合体65〜100質量%との混合物を溶融させ押出成形することを含み、
前記脱水されたスラリーを乾燥させて重合体(a)と重合体(b)と重合体(c)とを含有してなる多層構造アクリル系重合体を得た後、
該多層構造アクリル系重合体を押出機に供給してペレット化し、
該ペレット化した多層構造アクリル系重合体を乾燥して、前記混合物の製造に用い、
スラリーの乾燥またはペレット化した多層構造アクリル系重合体の乾燥は、水分率が0.1質量%未満になるように行い、
スラリーの洗浄および脱水は、アセトン不溶分の酸価が0.008mmol/g以下で且つアセトン可溶分の酸価が0.012mmol/g以下である多層構造アクリル系重合体が得られるように、繰り返し行い、
押出成形は、押出機を用い、且つ押出機での滞留時間を5分間以下および樹脂温度を280℃以下にして行う、
請求項1に記載の樹脂フィルムの製造方法。
他の熱可塑性重合体が、ポリカーボネート系重合体、塩化ビニル系重合体、フッ化ビニリデン系重合体、酢酸ビニル系重合体、マレイン酸系共重合体、メタクリル樹脂、ABS樹脂、AES樹脂およびAS樹脂から選ばれる少なくともひとつである、請求項4に記載の積層体。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の樹脂フィルムは、アセトン不溶分の酸価が、0.018mmol/g以下、好ましくは0.015mmol/g以下、さらに好ましくは0.012mmol/g以下である。本発明のフィルムのアセトン不溶分の酸価の下限は、好ましくは0.001mmol/gである。フィルムのアセトン不溶分の酸価が低いほど、フィルムの耐温水若しくは耐沸水白化性が向上する傾向がある。
【0016】
本発明の樹脂フィルムは、アセトン可溶分の酸価が、0.012mmol/g以下、好ましくは0.009mmol/g以下、さらに好ましくは0.007mmol/g以下である。本発明のフィルムのアセトン可溶分の酸価の下限は、好ましくは0.001mmol/gである。フィルムのアセトン可溶分の酸価が低いほど、フィルムの耐温水若しくは耐沸水白化性が向上する傾向がある。
【0017】
本発明の樹脂フィルムは、ガラス転移温度が、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、さらに好ましくは100℃以上である。フィルムのガラス転移温度が高いほどフィルムの耐温水若しくは耐沸水白化が向上する傾向がある。
【0018】
本発明の樹脂フィルムは、厚さが、好ましくは5〜300μm、より好ましくは10〜200μm、さらに好ましくは15〜100μmである。
【0019】
本発明の好ましい態様の樹脂フィルムは、常温保管状態において、ヘイズ(H
0)が、好ましくは1.5%以下、より好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下である。なお、ヘイズはJIS K 7136に準拠して光路長50μmの試験片で測定する。
本発明の好ましい態様の樹脂フィルムは、80℃の水を用いた耐温水白化試験前後でのヘイズ変化幅(ΔH
80)が、好ましくは10%以下、より好ましくは7%以下、さらに好ましくは5%以下である。本発明の好ましい態様の樹脂フィルムは、100℃の水(沸水)を用いた耐沸水白化試験前後でのヘイズ変化幅(ΔH
100)が、好ましくは10%以下、より好ましくは7%以下、さらに好ましくは5%以下である。
【0020】
本発明の樹脂フィルムは、多層構造アクリル系重合体を含有して成るものである。
【0021】
多層構造アクリル系重合体の層構造としては、例えば、コアシェル多層構造、海島多層構造、モザイク多層構造などを挙げることができる。これらのうちコアシェル多層構造が好ましい。
【0022】
コアシェル多層構造アクリル系重合体は、例えばコアとインナーシェルとアウターシェルとからなる3層粒状体を溶融混練することによって得られる。コアとインナーシェル、およびインナーシェルとアウターシェルとは異なる重合体で構成されている。コアとインナーシェルとの間、およびインナーシェルとアウターシェルとの間は、隙間なく接していることが好ましい。インナーシェルを構成する重合体はコアを構成する重合体およびアウターシェルを構成する重合体よりも軟らかいことが好ましい。インナーシェルを構成する重合体およびコアを構成する重合体はアセトンに不溶なものであることが好ましい。アウターシェルを構成する重合体はアセトンに可溶なものであることが好ましい。アウターシェルを構成する重合体は、3層粒状体の溶融混練によってアウターシェルの全部または一部が融着して、コアとインナーシェルとからなる2層粒状体のマトリックスと成り得る。
【0023】
コアシェル多層構造アクリル系重合体に含まれる3層粒状体は、平均粒子径の下限が、好ましくは0.01μm、より好ましくは0.04μm、さらに好ましくは0.05μm、よりさらに好ましくは0.1μmであり、平均粒子径の上限が、好ましくは0.35μm、より好ましくは0.3μm、さらに好ましくは0.2μm、よりさらに好ましくは0.15μmである。フィルムの耐応力白化性は粒状体の平均粒子径が大きいほど低下する傾向がある。なお、3層粒状体の平均粒子径は、光散乱法により得られる値である。
【0024】
多層構造アクリル系重合体は、重合体(a)、重合体(b)、および重合体(c)を含有し、それらによって層構造を形成しているものが好ましい。コアシェル多層構造アクリル系重合体においては、重合体(a)がコアを構成し、重合体(b)がインナーシェルを構成し、重合体(c)がアウターシェルを構成することがより好ましい。
【0025】
多層構造アクリル系重合体に含有される重合体(a)の量は、多層構造アクリル系重合体の質量に対して、好ましくは5〜30質量%、より好ましくは10〜20質量%である。重合体(a)の量が少ないほど多層構造アクリル系重合体の熱安定性および生産性が低下する傾向がある。重合体(a)の量が多いほどフィルムの耐衝撃性および柔軟性が低下する傾向がある。
多層構造アクリル系重合体に含有される重合体(b)の量は、多層構造アクリル系重合体の質量に対して、好ましくは20〜45質量%、より好ましくは30〜40質量%である。重合体(b)の量が少ないほど多層構造アクリル系重合体の熱安定性および生産性が低下する傾向がある。重合体(b)の量が多いほどフィルムの耐衝撃性および柔軟性が向上する傾向がある。
多層構造アクリル系重合体に含有される重合体(c)の量は、多層構造アクリル系重合体の質量に対して、好ましくは50〜75質量%、より好ましくは50〜60質量%である。重合体(c)の量が少ないほど多層構造アクリル系重合体の流動性およびフィルムの成形性が低下する傾向がある。重合体(c)の量が多いほどフィルムの耐衝撃性および耐応力白化性が低下する傾向がある。
【0026】
重合体(a)は、メチルメタクリレートに由来する構造単位、アルキルアクリレートに由来する構造単位、およびグラフト化剤に由来する構造単位、ならびに必要に応じて架橋剤に由来する構造単位からなる重合体である。
【0027】
重合体(a)におけるメチルメタクリレートに由来する構造単位の量は、重合体(a)の全構造単位に対して、好ましくは40〜98.99質量%、より好ましくは90〜96.9質量%、さらに好ましくは90〜96.5質量%である。メチルメタクリレートに由来する構造単位の量が少ないほどフィルムの耐候性が低下する傾向があり、メチルメタクリレートに由来する構造単位の量が多いほどフィルムの耐衝撃性が低下する傾向がある。
【0028】
重合体(a)におけるアルキルアクリレートに由来する構造単位の量は、重合体(a)の全構造単位に対して、好ましくは1〜59.99質量%、より好ましくは2.6〜9.99質量%、さらに好ましくは3〜9.9質量%である。アルキルアクリレート中のアルキル基は炭素数が1〜8であることが好ましい。アルキルアクリレートに由来する構造単位の量が少ないほど多層構造アクリル系重合体の耐熱分解性が低下する傾向があり、アルキルアクリレートに由来する構造単位の量が多いほどフィルムの耐温水若しくは耐沸水白化性が低下する傾向がある。
【0029】
重合体(a)におけるグラフト化剤に由来する構造単位の量は、重合体(a)の全構造単位に対して、好ましくは0.01〜1質量%、より好ましくは0.1〜0.5質量%である。グラフト化剤に由来する構造単位の量が少ないほど重合体(a)と重合体(b)との結合力が低下する傾向があり、グラフト化剤に由来する構造単位の量が多いほどフィルムの耐衝撃性が低下する傾向がある。
【0030】
重合体(a)における架橋剤に由来する構造単位の量は、重合体(a)の全構造単位に対して、好ましくは0〜0.5質量%、より好ましくは0〜0.2質量%である。架橋剤に由来する構造単位の量が多いほどフィルムの耐衝撃性が低下する傾向がある。
【0031】
重合体(b)は、アルキルアクリレートに由来する構造単位、およびグラフト化剤に由来する構造単位、ならびに必要に応じてメチルメタクリレートに由来する構造単位、および架橋剤に由来する構造単位からなる重合体である。
【0032】
重合体(b)におけるアルキルアクリレートに由来する構造単位の量は、重合体(b)の全構造単位に対して、好ましくは70〜99.5質量%、より好ましくは80〜99質量%である。アルキルアクリレート中のアルキル基は炭素数が1〜8であることが好ましい。アルキルアクリレートに由来する構造単位の量が少ないほどフィルムの耐衝撃性が低下する傾向があり、アルキルアクリレートに由来する構造単位の量が多いほどフィルムの耐応力白化性および透明性が低下する傾向がある。
【0033】
重合体(b)におけるグラフト化剤に由来する構造単位の量は、重合体(b)の全構造単位に対して、好ましくは0.5〜5質量%、より好ましくは1〜3質量%である。グラフト化剤に由来する構造単位の量が少ないほどフィルムの耐応力白化性が低下する傾向があり、グラフト化剤に由来する構造単位の量が多いほどフィルムの耐衝撃性が低下する傾向がある。
【0034】
重合体(b)におけるメチルメタクリレートに由来する構造単位の量は、重合体(b)の全構造単位に対して、好ましくは0〜29.5質量%、さらに好ましくは0〜19質量%である。メチルメタクリレートに由来する構造単位の量が多いほどフィルムの耐衝撃性が低下する傾向がある。
【0035】
重合体(b)における架橋剤に由来する構造単位の量は、重合体(b)の全構造単位に対して、好ましくは0〜5質量%、より好ましくは0〜2質量%である。架橋剤に由来する構造単位の量が多いほどフィルムの耐衝撃性が低下する傾向がある。
【0036】
重合体(c)は、メチルメタクリレートに由来する構造単位、およびアルキルアクリレートに由来する構造単位からなる重合体である。
【0037】
重合体(c)におけるメチルメタクリレートに由来する構造単位の量は、重合体(c)の全構造単位に対して、好ましくは80〜99質量%、より好ましくは95〜98質量%である。メチルメタクリレートに由来する構造単位の量が少ないほどフィルムの耐応力白化性が低下する傾向があり、メチルメタクリレートに由来する構造単位の量が多いほど多層構造アクリル系重合体の耐熱分解性が低下する傾向がある。
【0038】
重合体(c)におけるアルキルアクリレートに由来する構造単位の量は、重合体(c)の全構造単位に対して、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは2〜5質量%である。アルキルアクリレート中のアルキル基は炭素数が1〜8であることが好ましい。アルキルアクリレートに由来する構造単位の量が少ないほど多層構造アクリル系重合体の耐熱分解性が低下する傾向があり、アルキルアクリレートに由来する構造単位の量が多いほどフィルムの耐応力白化性が低下する傾向がある。
【0039】
重合体(c)は、ガラス転移温度が、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、さらに好ましくは100℃以上である。重合体(c)のガラス転移温度が高いほどフィルムの耐温水若しくは耐沸水白化性が向上する傾向がある。
【0040】
重合体(a)、重合体(b)および重合体(c)に用いられるアルキルアクリレートとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、n−ブチルメチルアクリレート、n−ヘプチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレートなどを挙げることができる。これらアルキルアクリレートは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうちでも、メチルアクリレートおよび/またはn−ブチルアクリレートが好ましい。
【0041】
重合体(a)、および重合体(b)に用いられるグラフト化剤は、重合体(a)と重合体(b)および重合体(b)と重合体(c)とを化学的に結合させる役割を主に持ち、さらに重合体(a)または重合体(b)に架橋構造の形成を補助する役割を持つと考えられる単量体である。
本発明におけるグラフト化剤は、異種の重合性基を2個以上有する単量体である。本発明におけるグラフト化剤としては、例えば、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、モノ−またはジ−アリルマレエート、モノ−またはジ−アリルフマレート、クロチルアクリレート、クロチルメタクリレートなどを挙げることができる。これらグラフト化剤は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうちでも、アリルメタクリレートが、重合体(a)と重合体(b)との間、若しくは重合体(b)と重合体(c)との間の結合能を向上させ、フィルムの耐応力白化性および透明性を向上させる作用に優れるので、好ましく用いられる。
【0042】
重合体(a)、および重合体(b)に用いられる架橋剤は、重合体(a)または重合体(b)に架橋構造を形成する役割を主に持つと考えられる単量体である。
本発明における架橋剤は、同種の重合性基を2個以上有する単量体であり、例えば、ジアクリル化合物、ジメタクリル化合物、ジアリル化合物、ジビニル化合物、ジエン化合物、トリビニル化合物などである。本発明における架橋剤としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、エチレングリコールジアリルエーテル、プロピレングリコールジアリルエーテル、ブタジエンなどを挙げることができる。これら架橋剤は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
また、本発明に用いられる多層構造アクリル系重合体は、230℃ 、3.8kg荷重下でのメルトフローレートが、好ましくは0.5〜20g/10分、より好ましくは0.8〜10g/10分である。多層構造アクリル系重合体のメルトフローレートが低いほど多層構造アクリル系重合体の流動性およびフィルムの成形性が低下する傾向がある。多層構造アクリル系重合体のメルトフローレートが高いほどフィルムの力学的特性が低下する傾向がある。
【0044】
本発明に用いられる多層構造アクリル系重合体は、アセトン不溶分の酸価が、好ましくは0.008mmol/g以下、より好ましくは0.006mmol/g以下、さらに好ましくは0.004mmol/g以下である。多層構造アクリル系重合体のアセトン不溶分の酸価の下限は、好ましくは0.001mmol/gである。多層構造アクリル系重合体のアセトン不溶分の酸価が低いほどフィルムの耐温水若しくは耐沸水白化性が向上する傾向がある。
【0045】
本発明に用いられる多層構造アクリル系重合体は、アセトン可溶分の酸価が、好ましくは0.012mmol/g以下、より好ましくは0.009mmol/g以下、さらに好ましくは0.007mmol/g以下である。多層構造アクリル系重合体のアセトン可溶分の酸価の下限は、好ましくは0.001mmol/gである。多層構造アクリル系重合体の酸価が低いほどフィルムの耐温水若しくは耐沸水白化性が向上する傾向がある。
【0046】
なお、重合体(a)、および重合体(b)、ならびに重合体(b)の高分子鎖にグラフト結合している重合体(c)の高分子鎖はアセトン不溶分として検出される。重合体(b)の高分子鎖にグラフト結合していない重合体(c)の高分子鎖はアセトン可溶分として検出される。
【0047】
多層構造アクリル系重合体は、その製造方法によって、特に限定されない。例えば、重合体(a)、重合体(b)、および重合体(c)を順次、シード乳化重合法によって、形成させてコアシェル多層構造のアクリル系重合体を得ることができる。
【0048】
本発明の樹脂フィルムは、多層構造アクリル系重合体以外に他の熱可塑性樹脂を含有してもよい。他の熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート系重合体、塩化ビニル系重合体、フッ化ビニリデン系重合体、酢酸ビニル系重合体、マレイン酸系共重合体、アクリル樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AS樹脂などを挙げることができる。他の熱可塑性樹脂/多層構造アクリル系重合体の質量比は、好ましくは0/100〜35/65、より好ましくは0/100〜20/80である。
【0049】
本発明の樹脂フィルムの好ましい製造方法は、アクリル系単量体の乳化重合を行って多層構造アクリル系重合体を含有するラテックスを得; 多層構造アクリル系重合体を含有するラテックスを凝固させてスラリーを得; 該スラリーを洗浄および脱水し; 脱水されたスラリーを乾燥させて多層構造アクリル系重合体を得; アクリル系樹脂0〜35質量%と多層構造アクリル系重合体65〜100質量%との混合物を溶融させ押出成形することを含むものである。
【0050】
本発明の樹脂フィルムのより好ましい製造方法は、乳化剤の存在下に、メチルメタクリレート40〜98.99質量%、より好ましくは90〜96.9質量%、アルキル基の炭素数が1〜8であるアルキルアクリレート1〜60質量%、より好ましくは3〜10質量%、グラフト化剤0.01〜1質量%、より好ましくは0.1〜0.5質量%および架橋剤0〜0.5質量%、より好ましくは0〜0.2質量%を重合(1st重合)して重合体(a)を含有するラテックス(I)を得; ラテックス(I)の存在下に、アルキル基の炭素数が1〜8であるアルキルアクリレート70〜99.5質量%、より好ましくは80〜99質量%、メチルメタクリレート0〜30質量%、より好ましくは0〜20質量%、グラフト化剤0.5〜5質量%、より好ましくは1〜3質量%および架橋剤0〜5質量%、より好ましくは0〜2質量%を重合(2nd重合)して重合体(a)と重合体(b)とを含有するラテックス(II)を得; ラテックス(II)の存在下に、メチルメタクリレート80〜99質量%、より好ましくは95〜98質量%およびアルキル基の炭素数が1〜8であるアルキルアクリレート1〜20質量%、より好ましくは2〜5質量%を重合(3rd重合)して重合体(a)と重合体(b)と重合体(c)とを含有してなるラテックス(III)を得; ラテックス(III)を凝固させてスラリーを得; 該スラリーを洗浄および脱水し; 脱水されたスラリーを乾燥させて重合体(a)と重合体(b)と重合体(c)とを含有してなる多層構造アクリル系重合体を得; アクリル系樹脂0〜35質量%と多層構造アクリル系重合体65〜100質量%との混合物を溶融させ押出成形することを含むものである。
【0051】
重合は公知の方法で行うことができる。ラテックスの存在下に行う重合のうちシード乳化重合はコアシェル多層構造アクリル系重合体を得るために好ましく用いられる。乳化重合、またはシード重合は、当技術分野においてよく知られた方法であるので、詳細は重合技術に関する文献に譲る。
【0052】
各重合において使用される単量体を、具体的にはメチルメタクリレート、アルキルアクリレート、グラフト化剤および架橋剤を前述した割合で混ぜ合わせたものを、反応系に供給する際の速度は、各重合において使用される単量体の合計量100質量%に対して、好ましくは0.05〜3質量%/分、より好ましくは0.1〜1質量%/分、さらに好ましくは0.2〜0.8質量%/分である。このような速度で供給することによって、望ましくない重合体凝集物の生成や重合体スケールの反応槽への付着を防ぐことができ、重合体凝集物や重合体スケールの混入で生じることがあるフィッシュアイなどの外観不良を樹脂フィルムに生じさせないようにすることができる。
【0053】
各重合において使用される重合開始剤は、特に制限されない。重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの水溶性の無機系開始剤; 無機系開始剤に亜硫酸塩またはチオ硫酸塩などを併用してなるレドックス開始剤; 有機過酸化物に第一鉄塩またはナトリウムスルホキシレートなどを併用してなるレドックス開始剤などを挙げることができる。重合開始剤は重合開始時に一括して反応系に添加してもよいし、反応速度などを勘案して重合開始時と重合途中とに分割して反応系に添加してもよい。重合開始剤の使用量は、例えば、コアシェル多層構造アクリル系重合体に含まれる粒状体の平均粒子径が前述の範囲になるように適宜設定できる。
【0054】
各重合において使用される乳化剤は、特に制限されない。乳化剤としては、例えば、長鎖アルキルスルホン酸塩、スルホコハク酸アルキルエステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩などのアニオン系乳化剤; ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどのノニオン系乳化剤; ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウムなどのアルキルエーテルカルボン酸塩などのノニオン・アニオン系乳化剤を挙げることができる。乳化剤の使用量は、例えば、コアシェル多層構造アクリル系重合体に含まれる粒状体の平均粒子径が前述の範囲になるように適宜設定できる。
【0055】
本発明においては、1st重合、2nd重合および3rd重合を一つの重合槽中で順次行ってもよいし、1st重合、2nd重合および3rd重合の度に重合槽を変えて順次行ってもよい。本発明においては各重合を一つの重合槽中で順次行うことが好ましい。また、重合を行っている間の反応系の温度は、好ましくは30〜120℃、より好ましくは50〜100℃である。
【0056】
また、1st重合、2nd重合および3rd重合のいずれかにおいて、必要に応じて、反応性紫外線吸収剤、例えば2−[2−ヒドロキシ−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−1,2,3−ベンゾトリアゾールなどを添加することができる。反応性紫外線吸収剤が多層構造アクリル系重合体の分子鎖に導入され、多層構造アクリル系重合体の耐紫外線性が向上する。反応性紫外線吸収剤の添加量は、重合に使用される単量体の合計量100質量部に対して、好ましくは0.05〜5質量部である。
【0057】
連鎖移動剤は、分子量の調節のために、各重合において使用することができる。3rd重合において、連鎖移動剤を反応系に添加して重合体(c)の分子量を調節することによって、多層構造アクリル系重合体のメルトフローレートを前述の範囲にすることができる。各重合に使用される連鎖移動剤は、特に限定されない。連鎖移動剤としては、例えば、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタンなどのアルキルメルカプタン類; ジメチルキサントゲンジスルフィド、ジエチルキサントゲンジスルフィドなどのキサントゲンジスルフィド類; テトラチウラムジスルフィドなどのチウラムジスルフィド類; 四塩化炭素、臭化エチレンなどのハロゲン化炭化水素などを挙げることができる。連鎖移動剤の使用量は、各重合において重合体を所定の分子量に調節できる範囲で適宜設定できる。3rd重合において使用される連鎖移動剤の量は、メルトフローレートの値を前述の範囲にすることができる量である。3rd重合において使用される連鎖移動剤の量は、3rd重合に使用される重合開始剤の量などによって変わるが、3rd重合において使用される単量体、具体的にはメチルメタクリレートおよびアルキルアクリレートの合計量100質量部に対して、好ましくは0.05〜2質量部、より好ましくは0.08〜1質量部である。
【0058】
ラテックスの凝固は、公知の方法で行うことができる。凝固法としては、凍結凝固法、塩析凝固法、酸析凝固法などを挙げることができる。これらのうち、多層構造アクリル系重合体にとって不純物となる凝固剤の添加を要しない点から、凍結凝固法が好ましい。
【0059】
凝固によって得られたスラリーの洗浄および脱水は、多層構造アクリル系重合体の酸価が前述の範囲になるように十分に行うことが好ましい。スラリーの洗浄および脱水によって、乳化剤や触媒などの水溶性成分をスラリーから除去できる。スラリーの洗浄および脱水は、例えば、フィルタープレス、ベルトプレス、ギナ型遠心分離機、スクリューデカンタ型遠心分離機などで行うことができる。生産性、洗浄効率の観点からスクリューデカンタ式遠心分離機を用いることが好ましい。スラリーの洗浄および脱水は、少なくとも2回行うことが好ましい。洗浄および脱水の回数が多いほど水溶性成分の残存量が下がる。しかし、生産性の観点から、洗浄および脱水の回数は、3回以下が好ましい。
【0060】
スラリーの乾燥は、水分率が、好ましくは0.2質量%未満、より好ましくは0.1質量%未満になるように行う。水分率が高いほど溶融押出成形の際に多層構造アクリル系重合体にエステル加水分解反応が起き、分子鎖にカルボキシル基が生成する傾向がある。
【0061】
本発明の樹脂フィルムは、例えば、多層構造アクリル系重合体を押出成形することによって得ることができる。多層構造アクリル系重合体とアクリル系樹脂とを混合して、その混合物を押出成形して本発明の樹脂フィルムを得てもよい。アクリル系樹脂/多層構造アクリル系重合体の質量比は、好ましくは0/100〜35/65、より好ましくは0/100〜30/70、さらに好ましくは5/95〜20/80である。この範囲であれば製膜性が良好になる。
【0062】
押出成形において必要に応じて用いることができるアクリル系樹脂は、メチルメタクリレートに由来する構造単位と必要に応じてアクリル酸エステルに由来する構造単位とを有する樹脂である。
アクリル系樹脂におけるメチルメタクリレートに由来する構造単位の量は、アクリル系樹脂の全構造単位の質量に対して、好ましくは85〜100質量%、より好ましくは92〜100質量%である。アクリル系樹脂におけるアクリル酸エステルに由来する構造単位の量は、アクリル系樹脂の全構造単位の質量に対して、好ましくは0〜15質量%、より好ましくは0〜8質量%である。
【0063】
アクリル系樹脂におけるアクリル酸エステルとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、アミルアクリレート、イソアミルアクリレート、n−へキシルアクリレート、2−エチルへキシルアクリレート、ペンタデシルアクリレート、ドデシルアクリレート、シクロへキシルアクリレート、ノルボルネニルアクリレート、イソボニルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、アリルアクリレート、フェニルアクリレートなどを挙げることができる。これらのうち、アルキル基の炭素数が1〜6であるアルキルアクリレートが好ましい。
【0064】
押出成形に必要に応じて用いられるアクリル系樹脂は、ガラス転移温度が、好ましくは95℃以上、より好ましくは100℃以上、さらに好ましくは105℃以上である。該アクリル系樹脂は、230℃、3.8kg荷重下でのメルトフローレートが、好ましくは0.5〜20g/10分、より好ましくは0.8〜10g/10分である。
【0065】
前記アクリル系樹脂は、その製造方法によって特に制限されない。例えば、ラジカル重合法、アニオン重合法などの公知の重合法によって製造することができる。アクリル系樹脂の前述の特性値への調整は、重合条件を調整することによって、具体的には、重合温度、重合時間、連鎖移動剤の種類や量、重合開始剤の種類や量などを調整することによって行うことができる。このような重合条件の調整による樹脂特性の調整は当業者においてよく知られた技術である。
【0066】
多層構造アクリル系重合体およびアクリル系樹脂は、運搬、保管、成形などを容易にするために、ペレット化することが好ましい。多層構造アクリル系重合体をペレット化する際に用いる押出機はベントを備えることが好ましい。ベントは真空ベントまたはオープンベントであることが好ましい。ベントは樹脂溶融開始部より下流側に少なくとも1個設けることが好ましい。なお、真空ベントにおける圧力は、30Torr以下が好ましく、15Torr以下がより好ましく、9Torr以下がさらに好ましく、6Torr以下がもっとも好ましい。該真空ベントにおける圧力が上記範囲内にあれば、脱揮効率がよく、残存水分および単量体を少なくすることができる。
【0067】
ペレット化のために使用する押出機は単軸スクリュー方式であることが好ましい。単軸スクリュー式押出機は、多層構造アクリル系重合体等に与えるせん断エネルギーが小さく、重合体の熱分解を抑えることができる。スクリュー構成はフルフライトであることが好ましい。
【0068】
ペレット化のために使用する押出機のシリンダ加熱温度は、好ましくは210〜270℃、より好ましくは220〜260℃、さらに好ましくは230〜250℃である。押出機での滞留時間は、好ましくは7分間以下、より好ましくは5分間以下、さらに好ましくは3分間以下である。シリンダ加熱温度が高いほどまたは滞留時間が長いほど、多層構造アクリル系重合体等に与えるせん断エネルギーが大きく、重合体の熱分解が進行しやすく、フィルムの耐温水白化性が低下する傾向がある。
【0069】
押出成形に供する前に多層構造アクリル系重合体およびアクリル系樹脂を乾燥させて水分率を減らすことが好ましい。押出成形に供する前における多層構造アクリル系重合体およびアクリル系樹脂の水分率は、好ましくは0.2質量%未満、より好ましくは0.1質量%未満である。水分率が高いほど、シルバーストリークの発生、耐温水白化性の低下を招きやすい。
【0070】
多層構造アクリル系重合体およびアクリル系樹脂には、必要に応じて紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、老化防止剤、可塑剤、高分子加工助剤、滑剤、染料、顔料などの公知の樹脂用添加剤が含まれていてもよい。樹脂用添加剤の総含有量は多層構造アクリル系重合体およびアクリル系樹脂の合計量100質量%に対して20質量%以下であることが好ましい。樹脂用添加剤は、例えば、フィルム成形機内で溶融されている多層構造アクリル系重合体およびアクリル系樹脂に添加してもよいし、ペレット化された多層構造アクリル系重合体またはアクリル系樹脂にドライブレンドしてもよいし、多層構造アクリル系重合体またはアクリル系樹脂をペレット化する際に添加してもよい(マスターバッチ法)。
多層構造アクリル系重合体およびアクリル系樹脂には、紫外線吸収剤を含有させることが好ましい。紫外線吸収剤としては、例えば2−[2−ヒドロキシ−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−1,2,3−ベンゾトリアゾールなどの反応性紫外線吸収剤を挙げることができる。紫外線吸収剤の含有量は、多層構造アクリル系重合体およびアクリル系樹脂の合計量100質量部に対して、好ましくは0.05〜5質量部である。
【0071】
フィルム形成のために使用する押出機はベントを備えることが好ましい。ベントは真空ベントまたはオープンベントであることが好ましい。ベントは樹脂溶融開始部より下流側に少なくとも1個設けることが好ましい。真空ベントにおける圧力は、30Torr以下が好ましく、15Torr以下がより好ましく、9Torr以下がさらに好ましく、6Torr以下がもっとも好ましい。フィルム形成のために使用する押出機は、単軸スクリュー方式または同方向回転二軸スクリュー方式であることが好ましい。
【0072】
フィルム形成のために使用する押出機のシリンダ加熱温度は、好ましくは220〜300℃、より好ましくは230〜290℃、さらに好ましくは240〜280℃である。フィルム形成のために使用する押出機での滞留時間は、好ましくは7分間以下、より好ましくは5分間以下、さらに好ましくは3分間以下である。シリンダ加熱温度が高いほどまたは滞留時間が長いほど、多層構造アクリル系重合体等に与えるせん断エネルギーが大きく、重合体の熱分解が進行しやすく、フィルムの耐温水白化性が低下する傾向がある。よって、フィルム形成のための押出成形は、押出機での滞留時間を5分間以下および樹脂温度を280℃以下にして行うことが好ましい。
【0073】
以上のような製造方法によって本発明の樹脂フィルムを得ることができる。
本発明の樹脂フィルムは、耐衝撃性に優れ、しかも耐応力白化性に優れていて折り曲げても白化が生じず、耐温水白化性および耐沸水白化性に優れていて温水および沸水に曝されても白化が生じない。本発明の樹脂フィルムは、他の重合体、特に熱可塑性重合体との接着性にも優れている。
【0074】
本発明の積層体は、本発明の樹脂フィルムからなる少なくともひとつの層と、他の熱可塑性重合体成形品からなる少なくともひとつの層とを有する。
本発明の積層体に使用される他の熱可可塑性重合体は、特に制限されない。他の熱可可塑性重合体として、ポリカーボネート系重合体、塩化ビニル系重合体、フッ化ビニリデン系重合体、酢酸ビニル系重合体、マレイン酸系共重合体、メタクリル樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、またはAS樹脂は、本発明の樹脂フィルムとの接着性が良好なので好ましい。熱可塑性重合体成形品は、フィルム、シート、板などのような面状成形品であってもよいし、管、棒などの線状成形品であってもよいし、レンズ、プリズム、容器などのような各種形状の成形品であってもよい。
【0075】
本発明の積層体は、その製造法によって特に制限されない。本発明の積層体は、例えば、前述の多層構造アクリル系重合体と他の熱可塑性重合体とを共押出成形することによって、他の熱可塑性重合体成形品の上に前述の多層構造アクリル系樹脂を被覆押出成形することによって、他の熱可塑性重合体成形品を所望の型の中に設置し多層構造アクリル系重合体を溶融させて前記型に射出または注入することによって、本発明の樹脂フィルムを所望の型の中に設置し他の熱可塑性重合体を溶融させて前記型に射出または注入することによって、他の熱可塑性重合体成形品に前述の多層構造アクリル系樹脂を載せてプレス成形することによって、他の熱可塑性重合体成形品に本発明の樹脂フィルムを熱融着または接着することによって得ることができる。
【0076】
以下に製造例、実施例、および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はそれらにより何ら制限されるものではない。なお、「部」は質量部を表す。
【0077】
(多層構造アクリル系重合体のラテックスの平均粒子径)
多層構造アクリル系重合体のラテックスを採取して、堀場製作所社製レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA−910を用い、光散乱法によりその平均粒子径を求めた。
【0078】
(メルトフローレート)
ASTM−D1238に準じて、230℃、3.8kg荷重でのメルトフローレート(以下「MFR」と表記する。)を測定した。
【0079】
(ガラス転移温度)
JIS K7121に準拠して、示差走査熱量測定装置(島津製作所製、DSC−50)を用いて、250℃まで一度昇温し、次いで室温まで冷却し、次いで室温から230℃までを20℃/分で昇温させる条件にてDSC曲線を測定した。このDSC曲線から求められる中間点ガラス転移温度を本発明におけるガラス転移温度(以下、「Tg」と表記する。)とした。
【0080】
(水分率)
被測定物を105℃に設定された熱風乾燥機内で3時間加熱し、加熱前後での重量変化より水分率を求めた。
【0081】
(酸価)
試験試料2gをアセトン50mLに入れ常温にて24時間撹拌した。得られた液全量を、遠心分離機(日立工機(株)製、CR20GIII)を用いて、回転数20000rpm、温度0℃、180分間の条件にて、遠心分離した。上澄み液と沈殿物を分け採り、
それぞれを50℃にて8時間真空下で乾燥させて、アセトン可溶分およびアセトン不溶分を得た。
アセトン可溶分またはアセトン不溶分を1g精秤し、クロロホルム50mLで溶解させた。5分間の窒素置換を行った。その後、ブロモチモールブルーを数滴添加した。N/100 KOHエタノール溶液を用いて中和滴定を行った。
対照試料ブランクとして、5分間の窒素置換を行ったクロロホルム50mLについて上記同様に中和滴定を行った。次式により酸価C(mmol/g)を算出した。
C=(A−B)×0.01×F
A=;試験試料における滴定数量(mL)、B=;対照試料におけるブランクの滴定数量(mL)、F=;N/100 KOHエタノール溶液のファクター
【0082】
(耐温水白化性(80℃))
樹脂フィルムから50mm×50mmの試験片を切り出した。室温下でヘイズ(H
0)をJISK7136に準拠して、ヘイズメータ(村上色彩研究所製、HM−150)を用いて測定した。
次いで、試験片を80℃の水に1時間浸漬した。その後、フィルム表面に付着した水滴を取り除き、フィルムが室温になった状態で、ヘイズを測定した。
室温におけるヘイズから温水浸漬後におけるヘイズへの増加量(ΔH
80)を算出した。
【0083】
(耐沸水白化性)
樹脂フィルムから50mm×50mmの試験片を切り出した。室温下でヘイズ(H
0)をJISK7136に準拠して、ヘイズメータ(村上色彩研究所製、HM−150)を用いて測定した。
次いで、試験片を100℃の水に4時間浸漬した。その後、フィルム表面に付着した水滴を取り除き、100℃に設定された熱風乾燥機内で8時間乾燥させた。フィルムが室温になった状態で、ヘイズを測定した。
室温におけるヘイズから沸水浸漬後におけるヘイズへの増加量(ΔH
100)を算出した。
【0084】
本実施例では、メチルメタクリレートをMMA、n−ブチルアクリレートをnBA、メチルアクリレートをMA、アリルメタクリレートをALMA、n−オクチルメルカプタン(連鎖移動剤)をnOM、とそれぞれ省略して記載する。
【0085】
<製造例1>
攪拌機および採取管付オートクレーブに、精製されたMMA92部、およびMA8部を入れて単量体混合物を調製した。単量体混合物に重合開始剤(2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、水素引抜能:1%、1時間半減期温度:83℃)0.006部およびnOM0.15部を加え、溶解させて原料液を得た。窒素ガスにより製造装置内の酸素ガスを追出した。
前記原料液を、オートクレーブから、温度140℃に制御された連続流通式槽型反応器に、平均滞留時間120分間となるように、一定流量で供給して、重合転化率57%で塊状重合させて、アクリル系樹脂[B1]を得た。
前記の槽型反応器から排出される液を240℃に加温し、250℃に制御されたオープンベントと真空ベントとを具える二軸押出機に一定流量で供給して、押出機供給口で断熱フラッシュ蒸発させた。断熱フラッシュ蒸発で揮発した成分(単量体、二量体、三量体など)をオープンベントから排出した。二軸スクリューによる溶融混練で揮発した成分(単量体など)を押出機供給口よりも下流側に設けられた6Torrに減圧された真空ベントから排出した。揮発成分がほぼ除去された樹脂成分を二軸スクリュで押し出してストランドを得、該ストランドをペレタイザーでカットして、アクリル系樹脂[B1]をペレット化した。アクリル系樹脂[B1]は、Tgが110℃、MFRが2g/10minであった。
【0086】
<製造例2>
攪拌機および採取管付オートクレーブに、精製されたMMA94部、およびMA6部を入れて単量体混合物を調製した。単量体混合物に重合開始剤(2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、水素引抜能:1%、1時間半減期温度:83℃)0.006部およびnOM0.35部を加え、溶解させて原料液を得た。窒素ガスにより製造装置内の酸素ガスを追出した。
前記原料液を、オートクレーブから、温度140℃に制御された連続流通式槽型反応器に、平均滞留時間120分間となるように、一定流量で供給して、重合転化率57%で塊状重合させて、アクリル系樹脂[B2]を得た。
前記の槽型反応器から排出される液を240℃に加温し、250℃に制御されたオープンベントと真空ベントとを具える二軸押出機に一定流量で供給して、押出機供給口で断熱フラッシュ蒸発させた。断熱フラッシュ蒸発で揮発した成分(単量体、二量体、三量体など)をオープンベントから排出した。二軸スクリューによる溶融混練で揮発した成分(単量体など)を押出機供給口よりも下流側に設けられた6Torrに減圧された真空ベントから排出した。揮発成分がほぼ除去された樹脂成分を二軸スクリュで押し出してストランドを得、該ストランドをペレタイザーでカットして、アクリル系樹脂[B2]をペレット化した。アクリル系樹脂[B2]は、Tgが112℃、MFRが10g/10minであった。
【0087】
実施例1
(工程1)
撹拌機、温度計、窒素ガス導入部、単量体導入管および還流冷却器を具える反応容器内に、イオン交換水150部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.3部および炭酸ナトリウム0.05部を仕込み、容器内を窒素ガスで充分に置換して実質的に酸素の影響がない状態とした。その後、反応容器内の温度を80℃にした。反応容器内に過硫酸カリウム0.015部を投入し、5分間撹拌した。次いで、MMA4部、nBA4部およびALMA0.02部からなる単量体混合物を20分間かけて連続的に滴加し、乳化重合を行った。滴加終了後、さらに30分間撹拌し、乳化重合を転化率98%以上となるように行って、重合体(a)を含有するラテックスを得た。
重合体(a)を含有するラテックスの入った反応器内に、過硫酸カリウム0.030部を投入し、5分間撹拌した。次いで、MMA4部、nBA26部およびALMA0.9部からなる単量体混合物を40分間かけて連続的に滴加し、シード乳化重合を行った。滴加終了後、さらに30分間撹拌し、シード乳化重合を転化率98%以上となるように行って、重合体(a)と重合体(b)と含有するラテックスを得た。
重合体(a)と重合体(b)と含有するラテックスの入った反応器内に、過硫酸カリウム0.055部を投入し、5分間撹拌した。その後、MMA56部、nBA6部およびnOM0.2部からなる単量体混合物を100分間かけて連続的に滴加してシード重合を行った。滴加終了後、さらに60分間撹拌し、シード乳化重合を転化率98%以上となるように行って、重合体(a)、重合体(b)および重合体(c)を含有するラテックス(以下、ラテックス[1]と表記する。)を得た。光散乱法により決定されたラテックス[1]の平均粒子径は0.09μmであった。ラテックス[1]の単量体単位組成比および平均粒子径を表1に示す。
【0089】
(工程2)
ラテックス[1]を−20℃の雰囲気に4時間置いて凍結させた。得られた凍結物を3倍量の80℃の水に投入して融解させて、スラリーを得た。スクリューデカンタ式遠心分離機を用いて2100Gの遠心力によりスラリーの洗浄および脱水を行った。続いてスラリー濃度10%になるようにイオン交換水を加え、再度スクリューデカンタ式遠心分離機で洗浄および脱水を行った。
その後、80℃に設定された連続式流動層乾燥機にて脱水されたスラリーを乾燥させて、コアシェル多層構造アクリル系重合体(以下、アクリル系重合体[A1]と表記する。)を得た。アクリル系重合体[A1]をベント付単軸スクリュー式押出機に供給して、ベント真空圧力5Torr、溶融押出温度245℃の条件下にてペレット化した。押出機での滞留時間は2.5分間であった。
ペレット化されたアクリル系重合体[A1]を80℃で乾燥させた。乾燥させたアクリル系重合体[A1]は、水分率が0.06質量%、MFRが2.0g/10分、Tgが93℃、アセトン不溶分の酸価が0.004mmol/g、アセトン可溶分の酸価が0.009mmol/gであった。アクリル系重合体[A1]の特性値等を表2に示す。
【0092】
(工程3)
乾燥させたアクリル系重合体[A1]70部、アクリル系樹脂[B1]30部、および紫外線吸収剤(2,2'-Methylenebis[6-(2H-benzotriazol-2-yl)-4-(1,1,3,3-tetramethylbutyl)phenol]、製品名LA−31、ADEKA社製)2部を混ぜ合わせた。得られた混合物を、ベント付単軸押出機に供給して、滞留時間3.5分、265℃で溶融させ、Tダイから押し出した。押し出されたフィルム状溶融樹脂を鏡面ロールに巻き取って、厚さ50μmの樹脂フィルムを得た。得られた樹脂フィルムは、Tgが100℃、アセトン不溶分の酸価が0.012mmol/g、アセトン可溶分の酸価が0.008mmol/gであった。
該樹脂フィルムは、室温においてヘイズが0.4%、ΔH
80が2.4%、ΔH
100が2.3%であった。耐温水白化性および耐沸水白化性に優れていることがわかる。結果を表3に示す。
【0094】
実施例2
工程3におけるアクリル系重合体[A1]およびアクリル系樹脂[B1]の量をそれぞれ90部および10部に変更し、工程3におけるベント付単軸押出機における滞留時間を3.0分間に変更し、且つフィルム厚さを55μmに変更した以外は実施例1と同じ方法で樹脂フィルムを得た。得られた樹脂フィルムの特性等を表3に示す。
【0095】
実施例3
工程3におけるアクリル系重合体[A1]およびアクリル系樹脂[B1]の量をそれぞれ80部および20部に変更し、且つ工程3におけるベント付単軸押出機における溶融温度を270℃に変更した以外は実施例1と同じ方法で樹脂フィルムを得た。得られた樹脂フィルムの特性等を表3に示す。
【0096】
実施例4
工程3におけるアクリル系樹脂[B1]をアクリル系樹脂[B2]に変え、工程3におけるベント付単軸押出機における溶融温度を260℃に、滞留時間を3.0分間に変更し、且つフィルム厚さを60μmに変更した以外は実施例1と同じ方法で樹脂フィルムを得た。得られた樹脂フィルムの特性等を表3に示す。
【0097】
実施例5
アクリル系重合体[A1]およびアクリル系樹脂[B1]の量をそれぞれ100部および0部に変更し、且つ工程3におけるベント付単軸押出機における溶融温度を270℃に、滞留時間を4.0分間に変更した以外は実施例1と同じ方法で樹脂フィルムを得た。得られた樹脂フィルムの特性等を表3に示す。
【0098】
実施例6
工程1における単量体混合物を表1に示すものに変更した以外は実施例1の工程1と同じ方法でラテックス[2]を得た。光散乱法により決定されたラテックス[2]の平均粒子径は0.09μmであった。
ラテックス[1]の代わりにラテックス[2]を用いた以外は実施例1の工程2と同じ方法でコアシェル多層構造アクリル系重合体(以下、アクリル系重合体[A4]と表記する。)を得た。アクリル系重合体[A4]の特性等を表2に示す。
アクリル系重合体[A1]70部およびアクリル系樹脂[B1]30部をアクリル系重合体[A4]90部およびアクリル系樹脂[B1]10部に変え、工程3におけるベント付単軸押出機における溶融温度を270℃に、滞留時間を5.0分間に変更した以外は実施例1と同じ方法で樹脂フィルムを得た。得られた樹脂フィルムの特性等を表3に示す。
【0099】
実施例7
洗浄および脱水の回数を3回に変更した以外は実施例6の工程2と同じ方法でコアシェル多層構造アクリル系重合体(以下、アクリル系重合体[A5]と表記する。)を得た。アクリル系重合体[A5]の特性等を表2に示す。
アクリル系重合体[A4]90部およびアクリル系樹脂[B1]10部をアクリル系重合体[A5]100部に変え、工程3におけるベント付単軸押出機における滞留時間を4.0分間に変更した以外は実施例6と同じ方法で樹脂フィルムを得た。得られた樹脂フィルムの特性等を表3に示す。
【0100】
実施例8
実施例1の工程1における単量体混合物を表1に示すものに変更した以外は実施例1の工程1と同じ方法でラテックス[3]を得た。光散乱法により決定されたラテックス[3]の平均粒子径は0.09μmであった。
ラテックス[1]の代わりにラテックス[3]を用い、溶融押出温度を250℃に変えた以外は実施例1の工程2と同じ方法でコアシェル多層構造アクリル系重合体(以下、アクリル系重合体[A8]と表記する。)を得た。アクリル系重合体[A8]の特性等を表2に示す。
アクリル系重合体[A1]70部、アクリル系樹脂[B1]30部および紫外線吸収剤2部をアクリル系重合体[A8]100部に変え、工程3におけるベント付単軸押出機における溶融温度を270℃に、滞留時間を3.0分間に変更した以外は実施例1と同じ方法で樹脂フィルムを得た。得られた樹脂フィルムの特性等を表3に示す。
【0101】
実施例9
アクリル系重合体[A8]100部をアクリル系重合体[A8]70部およびアクリル系樹脂[B2]30部に変え、工程3におけるベント付単軸押出機における溶融温度を265℃に、滞留時間を2.5分間に変更した以外は実施例8と同じ方法で樹脂フィルムを得た。得られた樹脂フィルムの特性等を表4に示す。
【0103】
実施例10
工程2における80℃の乾燥を行わなかった以外は実施例1の工程2と同じ方法でコアシェル多層構造アクリル系重合体(以下、アクリル系重合体[A2]と表記する。)を得た。アクリル系重合体[A2]の特性等を表2に示す。
アクリル系重合体[A1]70部およびアクリル系樹脂[B1]30部をアクリル系重合体[A2]100部に変え、工程3におけるベント付単軸押出機における溶融温度を260℃に、滞留時間を2.0分間に変更した以外は実施例1と同じ方法で樹脂フィルムを得た。得られた樹脂フィルムの特性等を表4に示す。
【0104】
実施例11
実施例1の工程1における単量体混合物を表1に示すものに変更した以外は実施例1の工程1と同じ方法でラテックス[4]を得た。光散乱法により決定されたラテックス[4]の平均粒子径は0.09μmであった。
ラテックス[1]の代わりにラテックス[4]を用いた以外は実施例1の工程2と同じ方法でコアシェル多層構造アクリル系重合体(以下、アクリル系重合体[A9]と表記する。)を得た。アクリル系重合体[A9]の特性等を表2に示す。
アクリル系重合体[A2]100部をアクリル系重合体[A9]100部に変え、工程3におけるベント付単軸押出機における溶融温度を270℃に、滞留時間を3.0分間に変更した以外は実施例10と同じ方法で樹脂フィルムを得た。得られた樹脂フィルムの特性等を表4に示す。
【0105】
実施例12
実施例1の工程1における単量体混合物を表1に示すものに変更した以外は実施例1の工程1と同じ方法でラテックス[5]を得た。光散乱法により決定されたラテックス[5]の平均粒子径は0.09μmであった。
ラテックス[1]の代わりにラテックス[5]を用い、溶融押出温度を250℃に変えた以外は実施例1の工程2と同じ方法でコアシェル多層構造アクリル系重合体(以下、アクリル系重合体[A10]と表記する。)を得た。アクリル系重合体[A10]の特性等を表2に示す。
アクリル系重合体[A8]100部をアクリル系重合体[A10]100部に変え、工程3におけるベント付単軸押出機における溶融温度を265℃に、滞留時間を3.5分間に変更した以外は実施例8と同じ方法で樹脂フィルムを得た。得られた樹脂フィルムの特性等を表4に示す。
【0106】
実施例13
アクリル系重合体[A1]90部、アクリル系樹脂[B1]10部および紫外線吸収剤2部を、アクリル系重合体[A10]85部、アクリル系樹脂[B2]15部および紫外線吸収剤3部に変更した以外は実施例2と同じ方法で樹脂フィルムを得た。得られた樹脂フィルムの特性等を表4に示す。
【0107】
実施例14
実施例1の工程1における単量体混合物を表1に示すものに変更した以外は実施例1の工程1と同じ方法でラテックス[6]を得た。光散乱法により決定されたラテックス[6]の平均粒子径は0.09μmであった。
ラテックス[1]の代わりにラテックス[6]を用い、溶融押出温度を250℃に変えた以外は実施例1の工程2と同じ方法でコアシェル多層構造アクリル系重合体(以下、アクリル系重合体[A11]と表記する。)を得た。アクリル系重合体[A11]の特性等を表2に示す。
アクリル系重合体[A1]70部およびアクリル系樹脂[B1]30部をアクリル系重合体[A11]88部およびアクリル系樹脂[B2]12部に変更した以外は実施例1と同じ方法で樹脂フィルムを得た。得られた樹脂フィルムの特性等を表4に示す。
【0108】
実施例15
ラテックス[1]の代わりにラテックス[6]を用い、溶融押出温度を250℃に変え、80℃の乾燥を行わなかった以外は実施例1の工程2と同じ方法でコアシェル多層構造アクリル系重合体(以下、アクリル系重合体[A12]と表記する。)を得た。アクリル系重合体[A12]の特性等を表2に示す。
アクリル系重合体[A2]100部をアクリル系重合体[A12]100部に変更し、滞留時間を2.5分間に変えた以外は実施例10と同じ方法で樹脂フィルムを得た。得られた樹脂フィルムの特性等を表4に示す。
【0109】
比較例1
実施例1の工程3における押出機での滞留時間を18分間に変更した以外は実施例1と同じ方法で樹脂フィルムを得た。樹脂フィルムの特性等を表5に示す。
【0111】
比較例2
工程2における洗浄および脱水の回数を1回に変更した以外は実施例1の工程2と同じ方法でコアシェル多層構造アクリル系重合体(以下、アクリル系重合体[A3]と表記する。)を得た。アクリル系重合体[A3]の特性等を表2に示す。
アクリル系重合体[A1]70部、アクリル系樹脂[B1]30部および紫外線吸収剤2部をアクリル系重合体[A3]100部に変え、工程3におけるベント付単軸押出機における滞留時間を6.0分間に変更した以外は実施例1と同じ方法で樹脂フィルムを得た。得られた樹脂フィルムの特性等を表5に示す。
【0112】
比較例3
アクリル系重合体[A1]70部、アクリル系樹脂[B1]30部および紫外線吸収剤2部をアクリル系重合体[A1]100部に変え、工程3におけるベント付単軸押出機における溶融温度を290℃に、滞留時間を4.0分間に変更した以外は実施例1と同じ方法で樹脂フィルムを得た。得られた樹脂フィルムの特性等を表5に示す。
【0113】
比較例4
工程2における80℃の乾燥を行わなかった以外は実施例6の工程2と同じ方法でコアシェル多層構造アクリル系重合体(以下、アクリル系重合体[A6]と表記する。)を得た。アクリル系重合体[A6]の特性等を表2に示す。
アクリル系重合体[A4]90部をアクリル系重合体[A6]90部に変え、工程3におけるベント付単軸押出機における滞留時間を10.0分間に変更した以外は実施例6と同じ方法で樹脂フィルムを得た。得られた樹脂フィルムの特性等を表5に示す。
【0114】
比較例5
工程2における80℃の乾燥を自然乾燥に変えた以外は実施例6の工程2と同じ方法でコアシェル多層構造アクリル系重合体(以下、アクリル系重合体[A7]と表記する。)を得た。アクリル系重合体[A7]の特性等を表2に示す。
アクリル系重合体[A4]90部をアクリル系重合体[A7]90部に変え、工程3におけるベント付単軸押出機における滞留時間を18.0分間に変更した以外は実施例6と同じ方法で樹脂フィルムを得た。得られた樹脂フィルムの特性等を表5に示す。
【0115】
比較例6
比較例4の工程3におけるアクリル系重合体[A6]およびアクリル系樹脂[B1]の量をそれぞれ80部および20部に変更し、且つ押出機での滞留時間を5分間に変更した以外は比較例4と同じ方法で樹脂フィルムを得た。樹脂フィルムの特性等を表5に示す。