(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
[有機光電変換材料]
本発明の有機光電変換材料はパラジウム(Pd)を含み、該有機光電変換材料からなる薄膜(有機光電変換材料薄膜ということがある)の走査型透過電子顕微鏡画像(STEM画像)におけるPdクラスターの平均数が1500個/μm
3以下である。なお、本明細書において、PdクラスターとはPd原子が複数個集まって形成された集合体(化合物)を示す。1つのPdクラスターには、例えば10〜100個のPd原子が集合している。また、有機光電変換材料が含むパラジウム(Pd)は、Pd原子、PdクラスターにおけるPd原子、パラジウムを含む化合物等におけるPd原子を含む意味である。
【0013】
本発明者は、Pdを含む有機光電変換材料(好ましくは有機変換材料用ポリマー)において、Pdクラスターが所定量以上存在すると、有機光電変換材料を経時的に劣化させ、保管後における有機光電変換材料の溶液粘度を上昇させることを見出した。量子理論計算(実施例4参照)の結果によれば、Pdクラスターが有機光電変換材料に配位すると、有機光電変換材料からPdクラスターに電荷移動が起こり、有機光電変換材料の電荷(プラス電荷)が増加する。特に酸素が存在すると電荷移動が促進される。そのため、長期間保管すると有機光電変換材料同士の凝集が生じやすくなり、有機光電変換材料の溶液粘度が上昇すると推定される。本発明では、有機光電変換材料中のPdクラスター量が所定値以下、すなわち、有機光電変換材料薄膜のSTEM画像におけるPdクラスターの平均数が1500個/μm
3以下であるため、Pdを含む有機光電変換材料を長期間保管しても、有機光電変換材料の電荷増加及び凝集が生じにくく、溶液粘度の上昇を抑制又は防止することができる。なお、本明細書において、有機光電変換材料の劣化は、有機光電変換材料の電荷が増加することや有機光電変換材料同士の凝集が起こりやすくなること等も包含する意味である。
【0014】
(Pdクラスター)
本発明において、有機光電材料中のPdクラスター量は、有機光電変換材料薄膜のSTEM画像におけるPdクラスター(白点)の平均数で評価する。有機光電変換材料薄膜は、有機光電変換材料を溶媒で溶解した溶液を基材上に塗布して製膜することで得られる。
【0015】
有機光電変換材料の溶液は、有機光電変換材料と溶媒とを撹拌混合等することにより調製できる。溶媒としては、有機光電変換材料が塗布可能な溶媒であれば、特に限定されず、例えば[有機光電変換材料用ポリマーの製造方法]の項に記載の溶媒から適宜選択できる。
有機光電変換材料の溶液濃度は、有機光電変換材料の溶媒への溶解性及び膜厚に応じて適宜選択でき、例えば0.01〜10質量%、好ましくは0.01〜5質量%、より好ましくは0.1〜5質量%である。有機光電変換材料の溶液濃度は、該溶液の質量に対する有機光電変換材料の質量を示す。
【0016】
基材としては、特に限定されず、例えば、ガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル樹脂;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、環状ポリオレフィン等のポリオレフィン樹脂;ポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリスチレン樹脂;ポリビニルアルコール樹脂;ポリアクリロニトリル樹脂;アセタール樹脂;ポリイミド樹脂;ポリチオフェン樹脂などが挙げられる。
【0017】
塗布方法としては、例えばスリットコート法、ナイフコート法、スピンコート法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、インクジェット印刷法、ノズルコート法、キャピラリーコート法等が挙げられる。
【0018】
基材に前記溶液を塗布後、乾燥処理を施して薄膜を形成できる。薄膜の厚みは、好ましくは1nm〜100μm、より好ましくは2nm〜1000nmである。
【0019】
有機光電変換材料薄膜のSTEM画像におけるPdクラスターの平均数は、1500個/μm
3以下であり、好ましくは1200個/μm
3以下、より好ましくは1000個/μm
3以下、さらに好ましくは500個/μm
3以下、特に好ましくは300個/μm
3以下、より特に好ましくは150個/μm
3以下、最も好ましくは100個/μm
3以下である。Pdクラスターの平均数が上記の上限以下であると、経時的な有機光電変換材料の劣化を抑制できるため、保管後の溶液粘度の上昇を有効に抑制しやすい。また、有機光電変換材料薄膜のSTEM画像におけるPdクラスターの平均数の下限は、特に限定されないが0個/μm
3以上である。なお、有機光電変換材料薄膜のSTEM画像におけるPdクラスターの平均数は、例えば以下の方法で求めることができる。まず、走査型電子顕微鏡(TEM)を用いて、走査型透過電子顕微鏡(STEM)測定を行い、3視野分のSTEM画像を得る。各視野においてSTEM画像に現れた白点(Pdクラスター)の数を記録する。次いで、STEM画像の1視野に対応する薄膜の面積と膜厚との積を求め、1視野におけるPdクラスターの数を前記積の値で除算した値を1μm
3あたりのPdクラスター数(個/μm
3)とする。Pdクラスター数(個/μm
3)を3視野分算出し、3視野分のPdクラスターの平均数(個/μm
3)を求める。Pdクラスターの平均数(個/μm
3)は、例えば実施例に記載の方法により算出できる。
【0020】
本発明の一実施態様において、Pdクラスターの粒子径は、好ましくは1nm以上、より好ましくは2nm以上であり、好ましくは20nm以下、より好ましくは10nm以下である。Pdクラスターの粒子径が上記範囲であると、Pdクラスターと有機光電変換材料のフロンティア軌道が近づくことでPdクラスターへの電荷移動が生じやすい傾向があり、有機光電変換材料が劣化しやすい傾向にあるため、Pdクラスター量を所定値以下に制御することによる本発明の粘度抑制効果が発現されやすい。なお、Pdクラスターの粒子径は、例えば、上記STEM画像に現れた白点(Pdクラスター)の直径を測定することで得ることができる。
【0021】
(有機光電変換材料用ポリマー)
有機光電変換材料は、好ましくは有機光電変換材料用ポリマーである。有機光電変換材料用ポリマーは、有機光電変換材料として利用し得るポリマーであれば、特に限定されないが、有機光電変換機能に優れることから、π共役系ポリマーが好ましい。
また、有機光電変換材料用ポリマー、特にπ共役系ポリマーは、Pdクラスター(特にPdクラスターと酸素)により電子を奪われやすい傾向にあるため、長期間保管するとポリマーの電荷増加による凝集を生じやすく、保管後の溶液粘度が上昇しやすい。そのため、有機光電変換材料が有機光電変換材料用ポリマー、特にπ共役系ポリマーである場合、Pdクラスター量を所定値以下に制御することによる本発明の粘度抑制効果が発現されやすい。
【0022】
以下、有機光電変換材料用ポリマーについてより具体的に説明するにあたり、共通して用いられる用語について説明する。
【0023】
本明細書中、「構成単位」とは、有機光電変換材料用ポリマー中に1個以上存在する単位構造を意味する。「構成単位」は、「繰返し単位」(有機光電変換材料用ポリマー中に2個以上存在する単位構造)として含まれることが好ましい。
【0024】
「水素原子」は、軽水素原子であっても、重水素原子であってもよい。
【0025】
「ハロゲン原子」には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が含まれる。
【0026】
「置換基を有していてもよい」とは、その化合物又は基を構成するすべての水素原子が無置換の場合、及び1個以上の水素原子の一部又は全部が置換基によって置換されている場合の両方の態様を含む。
【0027】
「アルキル基」は、別に断らない限り、直鎖状、分岐状、及び環状のいずれであってもよい。直鎖状のアルキル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常1〜50であり、好ましくは1〜30であり、より好ましくは1〜20である。分岐状又は環状であるアルキル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3〜50であり、好ましくは3〜30であり、より好ましくは4〜20である。
【0028】
アルキル基は、置換基を有していてもよい。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソアミル基、2−エチルブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、3−n−プロピルヘプチル基、アダマンチル基、n−デシル基、3,7−ジメチルオクチル基、2−エチルオクチル基、2−n−ヘキシル−デシル基、n−ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル墓、オクタデシル基、エイコシル基等のアルキル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基、3−フェニルプロピル基、3−(4−メチルフェニル)プロピル基、3−(3,5−ジ−n−ヘキシルフェニル)プロピル基、6−エチルオキシヘキシル基等の置換基を有するアルキル基が挙げられる。
【0029】
「アリール基」は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素から環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子を1個除いた残りの原子団を意味する。
【0030】
アリール基は、置換基を有していてもよい。アリール基の具体例としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基、2−アントラセニル基、9−アントラセニル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、4−ピレニル基、2−フルオレニル基、3−フルオレニル基、4−フルオレニル基、2−フェニルフェニル基、3−フェニルフェニル基、4−フェニルフェニル基、及びアルキル基、アルコキシ基、アリール基、フッ素原子等の置換基を有する基が挙げられる。
【0031】
「アルコキシ基」は、直鎖状、分岐状、及び環状のいずれであってもよい。直鎖状のアルコキシ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常1〜40であり、好ましくは1〜10である。分岐状又は環状のアルコキシ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3〜40であり、好ましくは4〜10である。
【0032】
アルコキシ基は、置換基を有していてもよい。アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、及びラウリルオキシ基が挙げられる。
【0033】
「アリールオキシ基」の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常6〜60であり、好ましくは6〜48である。
【0034】
アリールオキシ基は、置換基を有していてもよい。アリールオキシ基の具体例としては、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、1−アントラセニルオキシ基、9−アントラセニルオキシ基、1−ピレニルオキシ基、及びアルキル基、アルコキシ基、フッ素原子等の置換基を有する基が挙げられる。
【0035】
「アルキルチオ基」は、直鎖状、分岐状、及び環状のいずれであってもよい。直鎖状のアルキルチオ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常1〜40であり、好ましくは1〜10である。分岐状及び環状のアルキルチオ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3〜40であり、好ましくは4〜10である。
【0036】
アルキルチオ基は、置換基を有していてもよい。アルキルチオ基の具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ブチルチオ基、イソブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、ノニルチオ基、デシルチオ基、3,7−ジメチルオクチルチオ基、ラウリルチオ基、及びトリフルオロメチルチオ基が挙げられる。
【0037】
「アリールチオ基」の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常6〜60であり、好ましくは6〜48である。
【0038】
アリールチオ基は、置換基を有していてもよい。アリールチオ基の例としては、フェニルチオ基、C1〜C12アルキルオキシフェニルチオ基(ここで、「C1〜C12」は、その直後に記載された基の炭素原子数が1〜12であることを示す。以下も同様である。
)、C1〜C12アルキルフェニルチオ基、1−ナフチルチオ基、2−ナフチルチオ基、及びペンタフルオロフェニルチオ基が挙げられる。
【0039】
「p価の複素環基」(pは、1以上の整数を表す。)とは、置換基を有していてもよい複素環式化合物から、環を構成する炭素原子又はヘテロ原子に直接結合している水素原子のうちのp個の水素原子を除いた残りの原子団を意味する。p価の複素環基の中でも、「p価の芳香族複素環基」が好ましい。「p価の芳香族複素環基」は、置換基を有していてもよい芳香族複素環式化合物から、環を構成する炭素原子又はヘテロ原子に直接結合している水素原子のうちp個の水素原子を除いた残りの原子団を意味する。
【0040】
ここで、複素環式化合物が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、1価の複素環基、置換アミノ基、アシル基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、置換オキシカルボニル基、アルケニル基、アルキニル基、シアノ基、及びニトロ基が挙げられる。
【0041】
芳香族複素環式化合物には、複素環自体が芳香族性を示す化合物に加えて、芳香族性を示さない複素環に芳香環が縮環している化合物が包含される。
【0042】
芳香族複素環式化合物のうち、複素環自体が芳香族性を示す化合物の具体例としては、オキサジアゾール、チアジアゾール、チアゾール、オキサゾール、チオフェン、ピロール、ホスホール、フラン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、トリアジン、ピリダジン、キノリン、イソキノリン、カルバゾール、及びジベンゾホスホールが挙げられる。
【0043】
芳香族複素環式化合物のうち、芳香族性を示さない複素環に芳香環が縮環している化合物の具体例としては、フェノキサジン、フェノチアジン、ジベンゾボロール、ジベンゾシロール、及びベンゾピランが挙げられる。
【0044】
1価の複素環基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常、2〜60であり、好ましくは4〜20である。
【0045】
1価の複素環基は、置換基を有していてもよく、1価の複素環基の具体例としては、例えば、チエニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、ピペリジル基、キノリル基、イソキノリル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、及びこれらの基がアルキル基、アルコキシ基等の置換基を有している基が挙げられる。
【0046】
「置換アミノ基」とは、置換基を有するアミノ基を意味する。置換アミノ基が有し得る置換基の例としては、アルキル基、アリール基、及び1価の複素環基が挙げられる。置換基としては、アルキル基、アリール基、又は1価の複素環基が好ましい。置換アミノ基の炭素原子数は、通常2〜30である。
【0047】
置換アミノ基の例としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ビス(4−メチルフェニル)アミノ基、ビス(4−tert−ブチルフェニル)アミノ基、ビス(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)アミノ基等のジアリールアミノ基が挙げられる。
【0048】
「アシル基」は、炭素原子数が通常2〜20であり、好ましくは炭素原子数が2〜18である。アシル基の具体例としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、トリフルオロアセチル基、及びペンタフルオロベンゾイル基が挙げられる。
【0049】
「イミン残基」とは、イミン化合物から、炭素原子−窒素原子二重結合を構成する炭素原子又は窒素原子に直接結合する水素原子を1個除いた残りの原子団を意味する。「イミン化合物」とは、分子内に、炭素原子−窒素原子二重結合を有する有機化合物を意味する。イミン化合物の例として、アルジミン、ケチミン、及びアルジミン中の炭素原子−窒素原子二重結合を構成する窒素原子に結合している水素原子が、アルキル基等で置換された化合物が挙げられる。
【0050】
イミン残基は、通常炭素原子数が2〜20であり、好ましくは炭素原子数が2〜18である。イミン残基の例としては、下記の構造式で表される基が挙げられる。
【0052】
「アミド基」は、アミドから窒素原子に結合した水素原子を1個除いた残りの原子団を意味する。アミド基の炭素原子数は、通常1〜20であり、好ましくは1〜18である。アミド基の具体例としては、ホルムアミド基、アセトアミド基、プロピオアミド基、ブチロアミド基、ベンズアミド基、トリフルオロアセトアミド基、ペンタフルオロベンズアミド基、ジホルムアミド基、ジアセトアミド基、ジプロピオアミド基、ジブチロアミド基、ジベンズアミド基、ジトリフルオロアセトアミド基、及びジペンタフルオロベンズアミド基が挙げられる。
【0053】
「酸イミド基」とは、酸イミドから窒素原子に結合した水素原子を1個除いた残りの原子団を意味する。酸イミド基の炭素原子数は、通常、4〜20である。酸イミド基の具体例としては、下記の構造式で表される基が挙げられる。
【0055】
「置換オキシカルボニル基」とは、R’−O−(C=O)−で表される基を意味する。
ここで、R’は、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、又は1価の複素環基を表す。
【0056】
置換オキシカルボニル基は、炭素原子数が通常2〜60であり、好ましくは炭素原子数が2〜48である。
【0057】
置換オキシカルボニル基の具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基、ノニルオキシカルボニル基、デシルオキシカルボニル基、3,7−ジメチルオクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基、トリフルオロメトキシカルボニル基、ペンタフルオロエトキシカルボニル基、パーフルオロブトキシカルボニル基、パーフルオロヘキシルオキシカルボニル基、パーフルオロオクチルオキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基、及びピリジルオキシカルボニル基が挙げられる。
【0058】
「アルケニル基」は、直鎖状、分岐状、及び環状のいずれであってもよい。直鎖状のアルケニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常2〜30であり、好ましくは3〜20である。分岐状又は環状のアルケニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3〜30であり、好ましくは4〜20である。
【0059】
アルケニル基は、置換基を有していてもよい。アルケニル基の具体例としては、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基、7−オクテニル基、及びこれらの基がアルキル基、アルコキシ基等の置換基を有している基が挙げられる。
【0060】
「アルキニル基」は、直鎖状、分岐状、及び環状のいずれであってもよい。直鎖状のアルキニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常2〜20であり、好ましくは3〜20である。分岐状又は環状のアルキニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常4〜30であり、好ましくは4〜20である。
【0061】
アルキニル基は置換基を有していてもよい。アルキニル基の具体例としては、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、3−ペンチニル基、4−ペンチニル基、1−ヘキシニル基、5−ヘキシニル基、及びこれらの基がアルキル基、アルコキシ基等の置換基を有している基が挙げられる。
【0062】
有機光電変換材料用ポリマーとしては、例えば、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミン構造を含むポリシロキサン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体等が挙げられる。
【0063】
有機光電変換材料用ポリマーは、いかなる種類の共重合体であってもよく、例えば、ブロック共重合体、ランダム共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体等のいずれであってもよい。
【0064】
有機光電変換材料用ポリマーは、光電変換機能に優れ、かつ保管後の粘度上昇を有効に抑制しやすい観点から、下記式(I)で表される構成単位及び/又は下記式(II)で表される構成単位を含むポリマーであることが好ましい。
【0066】
式(I)中、Ar
1及びAr
2は、3価の芳香族複素環基を表し、Zは下記式(Z−1)〜式(Z−7)のいずれか1つで表される基を表す。
【0068】
式(II)中、Ar
3は2価の芳香族複素環基を表す。
【0070】
式(Z−1)〜(Z−7)中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、1価の複素環基、置換アミノ基、アシル基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、置換オキシカルボニル基、アルケニル基、アルキニル基、シアノ基、又はニトロ基を表す。式(Z−1)〜式(Z−7)のそれぞれにおいて、Rが2つ存在する場合、2つのRは互いに同一でも異なっていてもよい。
【0071】
式(I)で表される構成単位は、下記式(I−1)で表される構成単位であることが好ましい。
【0073】
式(I−1)中、Zは前記と同様の意味を表す。
【0074】
式(I−1)で表される構成単位の例としては、下記式(501)〜式(506)で表される構成単位が挙げられる。
【0076】
上記式(501)〜式(506)中、Rは前記と同様の意味を表す。Rが2つ存在する場合、2つのRは互いに同一でも異なっていてもよい。
【0077】
Ar
3で表される2価の芳香族複素環基が有する炭素原子数は、通常2〜60であり、好ましくは4〜60であり、より好ましくは4〜20である。Ar
3で表される2価の芳香族複素環基は置換基を有していてもよい。Ar
3で表される2価の芳香族複素環基が有していてもよい置換基の例としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、1価の複素環基、置換アミノ基、アシル基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、置換オキシカルボニル基、アルケニル基、アルキニル基、シアノ基、及びニトロ基が挙げられる。
【0078】
Ar
3で表される2価の芳香族複素環基の例としては、下記式(101)〜式(185)で表される基が挙げられる。
【0083】
式(101)〜式(185)中、Rは前記と同じ意味を表す。Rが複数存在する場合、複数のRは、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0084】
前記式(II)で表される構成単位としては、下記式(II−1)〜式(II−6)で表される構成単位が好ましい。
【0086】
式(II−1)〜式(II−6)中、X
1及びX
2は、それぞれ独立に、酸素原子又は硫黄原子を表し、Rは上記と同じ意味を表す。Rが複数存在する場合、複数のRは、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0087】
原料化合物の入手がし易いので、式(II−1)〜式(II−6)中のX
1及びX
2は、いずれも硫黄原子であることが好ましい。
【0088】
有機光電変換材料用ポリマーは、2種以上の式(I)の構成単位を含んでいてもよく、2種以上の式(II)の構成単位を含んでいてもよい。
【0089】
溶媒に対する溶解性を向上させるため、有機光電変換材料用ポリマーは、下記式(III)で表される構成単位を含んでいてもよい。
【0091】
式(III)中、Ar
4はアリーレン基を表す。
【0092】
Ar
4で表されるアリーレン基とは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素から、水素原子2つを除いた残りの原子団を意味する。芳香族炭化水素には、縮合環を有する化合物、独立したベンゼン環及び縮合環からなる群から選ばれる2つ以上が、直接又はビニレン等の2価の基を介して結合した化合物も含まれる。
【0093】
芳香族炭化水素が有していてもよい置換基の例としては、複素環式化合物が有していてもよい置換基として挙げた上記例と同様の置換基が挙げられる。
【0094】
アリーレン基における、置換基を除いた部分の炭素原子数は、通常6〜60であり、好ましくは6〜20である。置換基を含めたアリーレン基の炭素原子数は、通常6〜100程度である。
【0095】
アリーレン基の例としては、フェニレン基(例えば、下記式1〜式3)、ナフタレン−ジイル基(例えば、下記式4〜式13)、アントラセン−ジイル基(例えば、下記式14〜式19)、ビフェニル−ジイル基(例えば、下記式20〜式25)、ターフェニル−ジイル基(例えば、下記式26〜式28)、縮合環化合物基(例えば、下記式29〜式35)、フルオレン−ジイル基(例えば、下記式36〜式38)、及びベンゾフルオレン−ジイル基(例えば、下記式39〜式46)が挙げられる。
【0103】
本発明の一実施態様では、有機光電変換材料用ポリマーは、D−A型(ドナー−アクセプター型)π共役系ポリマーであることが好ましい。D−A型π共役系ポリマーは、分子中に電子供与部位と電子受容部位の両方を含むポリマーを意味する。このようなD−A型π共役系ポリマーは、Pdクラスター(特にPdクラスターと酸素)によるポリマーの電荷増加及びこれによる凝集が生じやすいため、Pdクラスター量を所定値以下に制御することによる本発明の粘度抑制効果が発現されやすい。
【0104】
有機光電変換材料用ポリマーが、式(I)で表される構成単位及び/又は式(II)で表される構成単位を含む場合、式(I)で表される構成単位及び式(II)で表される構成単位の合計量は、π共役系ポリマーが含むすべての構成単位の量を100モル%とすると、通常20〜100モル%である。π共役系ポリマーの電荷輸送性を向上させる観点から、好ましくは40〜100モル%、より好ましくは50〜100モル%である。
【0105】
本発明の一実施態様では、有機光電変換材料用ポリマーは、有機光電変換機能に優れ、かつ保管後の溶液粘度の上昇を有効に抑制しやすい観点から、チオフェン環を有することが好ましい。例えば、有機光電変換材料用ポリマーが、式(I)で表される構成単位及び/又は式(II)で表される構成単位を含むポリマーである場合、式(I)中のAr
1及び/又はAr
2がチオフェン環を含む構成単位、及び/又は、式(II)中のAr
3がチオフェン環を含む構成単位であることが好ましい。
【0106】
本発明の一実施態様では、有機光電変換材料用ポリマーは、有機光電変換機能に優れ、かつ保管後の溶液粘度の上昇を有効に抑制しやすい観点から、前記式(501)で表される構成単位(以下、前記式(501)単位等と表記する)、前記式(502)単位、前記式(503)単位、前記式(504)単位、前記式(505)単位、前記式(506)単位、前記式(II−1)単位、前記式(II−2)単位、前記式(II−3)単位、前記式(II−4)単位、前記式(II−5)単位、及び前記式(II−6)からなる群から選択される少なくとも1つの構成単位を含むことが好ましく、前記式(501)単位、前記式(503)単位、前記式(II−1)単位、前記式(II−3)単位、前記式(II−4)単位、前記式(II−5)単位、及び前記式(II−6)からなる群から選択される少なくとも1つの構成単位を含むことがより好ましい。
【0107】
有機光電変換材料用ポリマーの具体例としては、下記式で表されるポリマーが挙げられる。なお、各構造部位の好ましい比率(mol%)を下記に記載したが、当該比率に限定されない。
【0109】
有機光電変換材料用ポリマーの重量平均分子量は、ポリスチレン換算で、通常、1,000〜100,000,000であり、溶媒への溶解性の観点から、好ましくは5,000〜1,000,000、より好ましくは10,000〜500,000、さらに好ましくは30,000〜300,000である。なお、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて測定できる。
【0110】
Pdを含む有機光電変換材料は、特に酸素により劣化されやすく、長期間の保管が困難であった。これは、上記の通り、Pdクラスターに酸素原子が配位することにより、有機光電変換材料の劣化が促進されるためだと考えらえる。本発明の有機光電変換材料では、Pdクラスター量が所定値以下に低減され、これにより酸素により促進される劣化を有効に抑制できるため、例えば大気雰囲気下で有機光電変換材料を封入容器等に入れて保管したとしても、溶液粘度の上昇を有効に抑制できる。
【0111】
本発明の一実施態様において、有機光電変換材料、好ましくは有機光電変換材料用ポリマーは、Pdを含む触媒を利用して製造される。かかる場合、Pdが有機変換材料中に残存する。本発明の有機光電変換材料は、Pd原子が集まって形成された集合体(クラスター)量が低減されていることに特徴があり、本発明の一態様では、有機光電変換材料中の全てのPdの含有量、例えば原子吸光分析で測定された有機光電変換材料中のPd量に依存せず、本発明の効果が発現される。すなわち、本発明の一実施態様では、有機光電変換材料は、該材料中の全Pd量が比較的多くても、Pdクラスター量が所定値以下に低減されていれば、保管後における溶液粘度の上昇を抑制できる。
【0112】
本発明の一実施態様において、本発明の有機光電変換材料の粘度増加度は、好ましくは1.03以下、より好ましくは1.01以下である。粘度増加度は、保管後の有機光電変換材料の溶液粘度(mPa・s)を保管前の有機光電変換材料の溶液粘度(mPa・s)で除算したものである。有機光電変換材料の溶液粘度の測定及び保管は、例えば実施例に記載の方法により行うことができる。
【0113】
以下、有機光電変換材料の製造方法を有機光電変換材料用ポリマー(単にポリマーということがある)の製造方法を例に挙げて説明する。
【0114】
[有機光電変換材料用ポリマーの製造方法]
本発明は、Pdを含む有機光電変換材料用ポリマーの製造方法であって、ポリマー溶液に80℃以上の温度でキレート剤を接触させる工程(工程(A)とする)を含み、該有機光電変換材料用ポリマーからなる薄膜の走査型透過電子顕微鏡画像におけるPdクラスターの平均数が1500個/μm
3以下である方法を包含する。
【0115】
Pdを含む有機光電変換材料用粗ポリマー(単に、粗ポリマーということがある)を溶解させたポリマー溶液を工程(A)に供することにより、STEM画像におけるPdクラスターの平均数が1500個/μm
3以下である有機光電変換材料用ポリマーを製造できる。これは、溶液中で凝集体を形成し得る粗ポリマーを、80℃以上の高温下でキレート剤と接触させることにより、粗ポリマー中に取り込まれているPdクラスターが放出されるためだと推定される。なお、本明細書において、有機光電変換材料用粗ポリマー(粗ポリマー)とは、工程(A)に供する前の有機光電変換材料用ポリマーを示す。また、粗ポリマーの重量平均分子量は有機光電変換材料用ポリマーと同じである。
【0116】
粗ポリマーは、例えば、慣用の方法(例えば国際公開第2013051676号、国際公開第2011052709号、国際公開第2018220785号に記載の方法など)に従って製造してもよく、市販品を使用してもよい。粗ポリマーの製造方法の一例を以下に示す。
<粗ポリマーの製造方法>
本発明の一実施態様では、粗ポリマーは、式(2)で表される化合物及び式(3)で表される化合物を、パラジウム触媒及び塩基を含む反応溶媒中で反応させる工程(反応工程)を含む方法により製造できる。
【0118】
以下に、式(2)で表される化合物を示す。
【化23】
【0119】
式(2)中、
X
1及びX
2は、それぞれ独立して、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を表す。
Ar
Aは、前記式(I)又は式(II)と同じである。
【0120】
粗ポリマーの合成が容易であるため、X
1及びX
2は、それぞれ独立して、好ましくは臭素原子又はヨウ素原子であり、より好ましくは臭素原子である。
【0121】
式(2)で表される化合物の合成が容易であるため、X
1及びX
2は、好ましくは互いに同一であり、より好ましくは両方とも臭素原子である。
【0122】
式(2)で表される化合物には、Ar
Aとしての前記式(I)又は式(II)の例、X
1の例、及びX
2の例のすべての組み合わせが含まれる。
【0123】
本発明の製造方法において、式(2)で表される化合物の使用量は、後述する式(3)で表される化合物1モルに対して、通常0.5〜1.5モルであり、好ましくは0.8〜1.2モルである。
【0124】
式(2)で表される化合物は、公知の方法により製造することができる。例えば、式(2)においてX
1及びX
2が水素原子である化合物を、N−ブロモスクシンイミド等のハロゲン化剤で公知の方法で処理することにより製造することができる。
式(2)で表される化合物は、1種又は2種以上用いることができる。
【0126】
以下に、式(3)で表される化合物を示す。
【0128】
式(3)中、
Y
1及びY
2は、それぞれ独立して、1個のホウ素原子と少なくとも2個の酸素原子を含む1価の基を表す。
Ar
Bは、前記式(I)又は式(II)と同じである。
【0129】
Y
1及びY
2により表される1個のホウ素原子と少なくとも2個の酸素原子を含む1価の基としては、例えば、−B(OH)
2、−B(−O−R
B)
2で表される基が挙げられる。ここで、2つのR
Bは、それぞれ独立して、ヒドロキシ基を有していてもよい1価の炭化水素基を表し、2つのR
Bは、互いに連結して2価の基を形成していてもよい。
【0130】
1個のホウ素原子と少なくとも2個の酸素原子を含む1価の基の具体例としては、下記式(Ba−1)〜式(Ba−12)で表される基が挙げられる。式(Ba−1)〜式(Ba−12)中、Mは1族の元素を表す。Mは、好ましくはリチウム原子、ナトリウム原子、又はカリウム原子である。Meはメチル基を表す。
【0132】
式(3)で表される化合物には、Ar
Bとしての前記式(I)又は式(II)の例、前述したY
1の例、及び前述したY
2の例のすべての組み合わせが含まれる。
【0133】
式(3)中、Y
1及びY
2で表される基は、互いに同一であっても異なっていてもよい。式(3)で表される化合物を容易に合成できるので、好ましくは互いに同一である。
式(3)で表される化合物は、1種又は2種以上用いることができる。また、式(2)中のAr
Aと式(3)中のAr
Bは同一であっても異なっていてもよい。
【0134】
式(3)で表される化合物の具体例としては、下記式(601)〜(616)で表される化合物が挙げられる。式(601)〜(616)中、Rは前述と同義である。
【0137】
式(3)で表される化合物は、公知の方法で製造することができる。
例えば、Y
1及びY
2が−B(−O−R
B)
2で表される基である式(3)で表される化合物は、例えば、ジボロン酸である、(HO)
2B−Ar
B−B(OH)
2(ここで、Ar
Bは前記と同義である。)で表される化合物と、R
B−OHで表されるアルコール、又は、B(−O−R
B)
2で表される基において、2つのR
Bが互いに連結して2価の基を形成している場合は、アルコールとしてHO−R
2B−OH(ここで、R
2Bは、2つのR
Bが互いに連結して形成される2価の基を表す。)で表される化合物とを、脱水反応させることにより製造することができる。
【0138】
(HO)
2B−Ar
B−B(OH)
2(ここで、Ar
Bは前記と同義である。)で表される化合物は、例えば、Hal−Ar
B−Hal(ここで、Halはそれぞれ独立して、水素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。)で表される化合物と、メタル化剤とを反応させて、Mtl−Ar
B−Mtl(ここで、Mtlは金属原子を表す。)で表される化合物を製造し、Mtl−Ar
B−Mtlで表される化合物と、ジヒドロキシホウ素化剤とを反応させることにより製造することができる。
メタル化剤としては、例えば、アルキルリチウム、及びリチウムアミドが挙げられる。
ジヒドロキシホウ素化剤としては、例えば、トリアルキルオキシボランが挙げられる。
【0139】
(反応溶媒)
粗ポリマーの製造に用いられる反応溶媒は、少なくとも1種の炭化水素溶媒である第1の溶媒、少なくとも1個の炭素原子、少なくとも1個の水素原子、及び少なくとも1個の酸素原子のみからなる少なくとも1種の有機溶媒である第2の溶媒、及び水を含む。
【0140】
反応溶媒は、第1の溶媒、第2の溶媒、及び水以外の任意の溶媒を含んでいてもよい。任意の溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンが挙げられる。任意の溶媒の体積比率は、第1の溶媒の体積、第2の溶媒の体積、及び水の体積の合計に対して、好ましくは50体積%以下であり、より好ましくは25体積%以下であり、さらに好ましくは10体積%以下である。反応溶媒は、好ましくは実質的に前記第1の溶媒、前記第2の溶媒、及び水のみからなる。
【0141】
第1の溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素溶媒、脂環式炭化水素溶媒、及び芳香族炭化水素溶媒が挙げられる。
脂肪族炭化水素溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカンが挙げられる。
脂環式炭化水素溶媒としては、例えば、シクロヘキサン、デカリンが挙げられる。
芳香族炭化水素溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン(例、メシチレン)、テトラリン、インダン、ナフタレン、メチルナフタレンが挙げられる。
【0142】
第1の溶媒は、1種単独の炭化水素溶媒であっても、2種以上の炭化水素溶媒の組み合わせであってもよい。
【0143】
第1の溶媒は、好ましくはトルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、デカリン、テトラリン、インダン、ナフタレン、及びメチルナフタレンからなる群から選択される1種以上であり、より好ましくは、トルエン、メシチレン、及びテトラリンからなる群から選択される1種以上であり、さらに好ましくは、トルエン、メシチレン、又はテトラリンである。
【0144】
第2の溶媒としての有機溶媒は、ヒドロキシ基、オキソ基、オキシカルボニル基(−(C=O)−O−で表される基)、エーテル結合(−O−で表される基)等の、酸素原子を含む基を、1つのみ有していてもよいし、2つ以上有していてもよい。
また、第2の溶媒としての有機溶媒は、酸素原子を含む基を、1種のみ有していてもよいし、2種以上有していてもよい。
【0145】
第2の溶媒としては、例えば、アルコール溶媒、エーテル溶媒、ケトン溶媒、フェノール類溶媒、及びカルボン酸エステル溶媒が挙げられる。
【0146】
アルコール溶媒としては、例えば、第1級アルコール(例、メタノール、エタノール、2−フェニルエタノール、n−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、3−メチル−1−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、2−エチル−1−ヘキサノール、1−オクタノール、ベンジルアルコール)、第2級アルコール(例、イソプロピルアルコール、sec−ブチルアルコール、2−オクタノール、3−ペンタノール、シクロヘキサノール)、第3級アルコール(例、tert−ブチルアルコール、1−メチルシクロヘキサノール、1−エチルシクロヘキサノール、1−メチルシクロペンタノール、tert−アミルアルコール、2−フェニル−2−プロパノール、2−メチル−1−フェニル−2−プロパノール、2−メチル−2−ペンタノール、3−エチル−3−ペンタノール)が挙げられる。
【0147】
エーテル溶媒としては、アニソール、シクロペンチルメチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンが挙げられる。
【0148】
ケトン溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンが挙げられる。
【0149】
フェノール類溶媒としては、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾールが挙げられる。
【0150】
カルボン酸エステル溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、γ―ブチルラクトンが挙げられる。
【0151】
第2の溶媒は、1種単独でも、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0152】
第2の溶媒は、好ましくはアルコール溶媒、エーテル溶媒、及びケトン溶媒からなる群から選択される1種以上であり、より好ましくは第3級アルコール溶媒であり、さらに好ましくは1−メチルシクロペンタノール、1−メチルシクロヘキサノール、1−エチルシクロヘキサノール及び2−フェニル−2−プロパノールからなる群から選択される1種以上である。
【0153】
第2の溶媒は、水と混和しない溶媒であってもよい。ある溶媒が「水と混和しない」とは、当該溶媒に対して5質量%以上の水を当該溶媒に添加して得られた液、及び、水に対して5質量%以上の当該溶媒を水に添加して得られた液が、透明な1相の溶液を形成しないことをいう。
【0154】
第2の溶媒として用いられうる、水と混和しない溶媒としては、例えば、2−フェニルエタノール、3−メチル−1−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、2−エチル−1−ヘキサノール、1−オクタノール、ベンジルアルコール、2−オクタノール、シクロヘキサノール、1−メチルシクロヘキサノール、1−エチルシクロヘキサノール、1−メチルシクロペンタノール、2−フェニル−2−プロパノール、2−メチル−1−フェニル−2−プロパノール、2−メチル−2−ペンタノール、3−エチル−3−ペンタノール、アニソール、シクロペンチルメチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルイソブチルケトン、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチルが挙げられ、2−フェニルエタノール、1−ペンタノール、1−メチルシクロヘキサノール、1−エチルシクロヘキサノール、1−メチルシクロペンタノール、2−フェニル−2−プロパノール、2−メチル−1−フェニル−2−プロパノール、3−エチル−3−ペンタノール、アニソールからなる群から選択される1種以上が好ましい。
【0155】
ある溶媒が「水と混和する」とは、当該溶媒に対して5質量%以上の水を当該溶媒に添加して得られた液、及び、水に対して5質量%以上の当該溶媒を水に添加して得られた液が、両方にて透明な1相の溶液を形成することをいう。
【0156】
第2の溶媒は、水と混和する溶媒であってもよい。第2の溶媒として用いられうる、水と混和する溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、sec−ブチルアルコール、3−ペンタノール、tert−ブチルアルコール、tert−アミルアルコール、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、フェノール、酢酸エチル、γ―ブチルラクトンが挙げられ、n−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、tert−アミルアルコール、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンからなる群から選択される1種以上が好ましく、tert−ブチルアルコール、tert−アミルアルコール、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランからなる群から選択される1種以上がより好ましい。
【0157】
第1の溶媒と第2の溶媒との組み合わせとしては、例えば、第1の溶媒として挙げられた上記例と、第2の溶媒として挙げられた上記例とのすべての組み合わせが挙げられる。第1の溶媒と第2の溶媒との組み合わせは、特に限定されないが、例えば、下記表1に示される組み合わせが挙げられる。第2の溶媒が水と混和しない溶媒の場合、好ましくは下記表2に示される組み合わせが挙げられ、さらに好ましくは下記表3に示される組み合わせが挙げられる。第2の溶媒が水と混和する場合、好ましくは下記表4に示される組み合わせが挙げられる。
【0162】
第1の溶媒、第2の溶媒、及び水は、体積比a:b:cで混合される。ここで、a+b+c=100であり、cは10を超え100未満である。すなわち、第1の溶媒の体積、第2の溶媒の体積、及び水の体積の合計に対する水の体積比率c(%)は、10体積%を超え100体積%未満である。
水の体積比率は、反応溶媒を調製するために用いられた第1の溶媒の体積、第2の溶媒の体積、及び水の体積に基づいて決定される。
【0163】
第2の溶媒が水と混和する場合、第1の溶媒の体積、第2の溶媒の体積、及び水の体積の合計に対する水の体積比率c(%)は、10体積%を超え、好ましくは25体積%以上であり、より好ましくは25体積%を超え、さらに好ましくは35体積%以上であり、さらに好ましくは35体積%を超え、さらに好ましくは45体積%以上であり、さらに好ましくは45体積%を超え、さらに好ましくは50体積%以上であり、特に好ましくは50体積%を超える。
【0164】
第2の溶媒は水と混和する場合、第1の溶媒の体積、第2の溶媒の体積、及び水の体積の合計に対する水の体積比率c(%)は、100体積%未満であり、好ましくは90体積%以下であり、より好ましくは90体積%未満であり、さらに好ましくは80体積%以下であり、さらに好ましくは80体積%未満であり、さらに好ましくは70体積%以下であり、さらに好ましくは70体積%未満であり、さらに好ましくは65体積%以下であり、特に好ましくは65体積%未満である。
【0165】
第2の溶媒が水と混和する場合、第1の溶媒の体積、第2の溶媒の体積、及び水の体積の合計に対する水の体積比率c(%)は、10体積%を超え100体積%未満であり、好ましくは25体積%以上90体積%以下であり、より好ましくは25体積%を超え90体積%未満であり、さらに好ましくは35体積%以上80体積%以下であり、さらに好ましくは35体積%を超え80体積%未満であり、さらに好ましくは45体積%以上70体積%以下であり、さらに好ましくは45体積%を超え70体積%未満であり、さらに好ましくは50体積%以上65体積%以下であり、特に好ましくは50体積%を超え65体積%未満である。
【0166】
第2の溶媒が水と混和しない場合、第1の溶媒の体積、第2の溶媒の体積、及び水の体積の合計に対する水の体積比率c(%)は、10体積%を超え、好ましくは20体積%以上であり、より好ましくは20体積%を超え、さらに好ましくは25体積%以上であり、さらに好ましくは25体積%を超え、さらに好ましくは35体積%以上であり、さらに好ましくは35体積%を超え、さらに好ましくは45体積%以上であり、さらに好ましくは45体積%を超え、さらに好ましくは50体積%以上であり、特に好ましくは50体積%を超える。
【0167】
第2の溶媒が水と混和しない場合、第1の溶媒の体積、第2の溶媒の体積、及び水の体積の合計に対する水の体積比率c(%)は、100体積%未満であり、好ましくは90体積%以下であり、より好ましくは90体積%未満であり、さらに好ましくは80体積%以下であり、さらに好ましくは80体積%未満であり、さらに好ましくは70体積%以下であり、さらに好ましくは70体積%未満であり、さらに好ましくは65体積%以下であり、特に好ましくは65体積%未満である。
【0168】
第2の溶媒が水と混和しない場合、第1の溶媒の体積、第2の溶媒の体積、及び水の体積の合計に対する水の体積比率c(%)は、10体積%を超え100体積%未満であり、好ましくは20体積%以上90体積%以下であり、より好ましくは20体積%を超え90体積%未満であり、さらに好ましくは25体積%以上90体積%以下であり、さらに好ましくは25体積%を超え90体積%未満であり、さらに好ましくは35体積%以上80体積%以下であり、さらに好ましくは35体積%を超え80体積%未満であり、さらに好ましくは45体積%以上70体積%以下であり、さらに好ましくは45体積%を超え70体積%未満であり、さらに好ましくは50体積%以上65体積%以下であり、特に好ましくは50体積%を超え65体積%未満である。
【0169】
第1の溶媒と第2の溶媒の混合体積比a:bは1:9〜9:1の範囲が好ましく、3:7〜7:3の範囲がより好ましい。
【0170】
水の体積比率を、上記範囲とすることにより、重量平均分子量の大きい粗ポリマーを製造することができる。かかる粗ポリマーを用いることにより、電子素子の電気的な特性をより向上させることができる。
【0171】
(パラジウム触媒)
粗ポリマーの製造で用いられるパラジウム触媒としては、例えば、Pd(0)触媒、及びPd(II)触媒が挙げられる。パラジウム触媒の具体例としては、パラジウム[テトラキス(トリフェニルホスフィン)]、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、パラジウム(II)アセテート、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、ビス(トリ−tert−ブチルホスフィン)パラジウム(0)、下記式(C)で表されるパラジウム錯体、及び下記式(C’)で表されるパラジウム錯体が挙げられる。本発明の製造方法では、パラジウム触媒を、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0173】
式(C)中、
Xは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。
Aは炭素原子数1〜3のアルキル基を表す。
R
4は炭素原子数1〜20のアルキル基又は炭素原子数5〜10のシクロアルキル基を有してもよい炭素数4〜20のヘテロアリール基を表し、R
5及びR
6はそれぞれ独立して、炭素原子数1〜20のアルキル基又は炭素原子数5〜10のシクロアルキル基を表す。アリール基及びヘテロアリール基の炭素原子数には置換基の炭素原子数は含まれない。アリール基及びヘテロアリール基が有していてもよい置換基は、下記群1から選ばれる。
【0175】
式(C’)中、X、A、R
4、R
5及びR
6は前述と同義である。複数あるX、A、R
4、R
5及びR
6はそれぞれ、同一であっても異なっていてもよい。
【0176】
群1:フッ素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールシクロアルキル基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アルキル基を有していてもよい1価の複素環基、−N(R’)
2で表される基(2つのR’はそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜20の1価の炭化水素基、又は、アルキル基を有していてもよい1価の複素環基を表す。)、−Si(R’)
3で表される基(R’は前述と同義であり、3つのR’はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)、アシル基、炭素原子−窒素原子二重結合を有する基、酸イミド基、アルキルオキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボ二ル基、アリールオキシカルボニル基、カルボキシ基、シアノ基、及びニトロ基。
【0177】
式(C)又は式(C’)で表されるパラジウム錯体の具体例としては、(トリー(tert−ブチル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジ−(tert−ブチル)(4−フルオロフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジ−(tert−ブチル)(3−フルオロフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジ−(tert−ブチル)(4−メチルフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジ−(tert−ブチル)(3−メチルフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジ−(tert−ブチル)(4−エチルフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジ−(tert−ブチル)(3−エチルフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、((ジ−(tert−ブチル)(4−イソプロピルフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジ−(tert−ブチル)(3−イソプロピルフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジ−(tert−ブチル)(4−tert−ブチルフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジ−(tert−ブチル)(3−tert−ブチルフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジ−(tert−ブチル)(4−メトキシフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジ−(tert−ブチル)(3−メトキシフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジ−(tert−ブチル)(4−エトキシフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジ−(tert−ブチル)(3−エトキシフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジ−(tert−ブチル)(4−トリフルオロメトキシフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジ−(tert−ブチル)(3−トリフルオロメトキシフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジ−(tert−ブチル)(4−ペンタフルオロエトキシフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジ−(tert−ブチル)(3−ペンタフルオロエトキシフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジ−(tert−ブチル)([1,1’−ビフェニル]−4−イル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジ−(tert−ブチル)([1,1’−ビフェニル]−3−イル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジ−(tert−ブチル)(2−ナフチル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジ−(tert−ブチル)(3,5−ジフルオロフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジ−(tert−ブチル)(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジ−(tert−ブチル)(3,5−ジエチルフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジ−(tert−ブチル)(3,5−ジイソプロピルフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジ−(tert−ブチル)(3,5−ジ−(tert−ブチル)フェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジ−(tert−ブチル)(3,5−ジメトキシフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジ−(tert−ブチル)(3,5−ジエトキシフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジ−(tert−ブチル)(3,5−ジ−(トリフルオロメトキシ)フェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジ−(tert−ブチル)(3,5−ジ−(トリフルオロエトキシ)フェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジ−(tert−ブチル)(1,1’:3’,1’’−テルフェニル)−5’−イル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジ−(tert−ブチル)(2−メトキシフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジ−(tert−ブチル)(3−メトキシフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジ−(tert−ブチル)(4−メトキシフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジ−(tert−ブチル)(2,3−ジメトキシフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、ジ−(tert−ブチル)(2,4−ジメトキシフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、ジ−(tert−ブチル)(2,5−ジメトキシフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、ジ−(tert−ブチル)(2,6−ジメトキシフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(トリシクロペンチルホスフィン)クロロメチルパラジウム、ジシクロペンチル(4−フルオロフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、ジシクロペンチル(3−フルオロフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、ジシクロペンチル(4−メチルフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、ジシクロペンチル(3−メチルフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、ジシクロペンチル(4−エチルフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、ジシクロペンチル(3−エチルフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、ジシクロペンチル(4−イソプロピルフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、ジシクロペンチル(3−イソプロピルフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、ジシクロペンチル(4−tert−ブチルフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、ジシクロペンチル(3−tert−ブチルフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、ジシクロペンチル(4−メトキシフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、ジシクロペンチル(3−メトキシフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、ジシクロペンチル(4−エトキシフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、ジシクロペンチル(3−エトキシフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、ジシクロペンチル(4−トリフルオロメトキシフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、ジシクロペンチル(3−トリフルオロメトキシフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、ジシクロペンチル(4−ペンタフルオロエトキシフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、ジシクロペンチル(3−ペンタフルオロエトキシフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、ジシクロペンチル([1,1’−ビフェニル]−4−イル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、ジシクロペンチル([1,1’−ビフェニル]−3−イル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジシクロペンチル(2−ナフチル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、ジシクロペンチル(3,5−ジフルオロフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、ジシクロペンチル(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、ジシクロペンチル(3,5−ジエチルフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、ジシクロペンチル(3,5−ジイソプロピルフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、ジシクロペンチル(3,5−ジ−(tert−ブチル)フェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、ジシクロペンチル(3,5−ジメトキシフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、ジシクロペンチル(3,5−ジエトキシフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、ジシクロペンチル(3,5−ジ−(トリフルオロメトキシ)フェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、ジシクロペンチル(3,5−ジ−(トリフルオロエトキシ)フェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、ジシクロペンチル(1,1’:3’,1’’−テルフェニル)−5’−イル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、ジシクロペンチル(2−メトキシフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、ジシクロペンチル(3−メトキシフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、ジシクロペンチル(4−メトキシフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、ジシクロペンチル(2,3−ジメトキシフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、ジシクロペンチル(2,4−ジメトキシフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、ジシクロペンチル(2,5−ジメトキシフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、ジシクロペンチル(2,6−ジメトキシフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(トリシクロヘキシルホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジシクロヘキシル(4−フルオロフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジシクロヘキシル(3−フルオロフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジシクロヘキシル(4−メチルフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジシクロヘキシル(3−メチルフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジシクロヘキシル(4−エチルフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジシクロヘキシル(3−エチルフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジシクロヘキシル(4−イソプロピルフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジシクロヘキシル(3−イソプロピルフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジシクロヘキシル(4−tert−ブチルフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジシクロヘキシル(3−tert−ブチルフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジシクロヘキシル(4−メトキシフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジシクロヘキシル(3−メトキシフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジシクロヘキシル(4−エトキシフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジシクロヘキシル(3−エトキシフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジシクロヘキシル(4−トリフルオロメトキシフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジシクロヘキシル(3−トリフルオロメトキシフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジシクロヘキシル(4−ペンタフルオロエトキシフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジシクロヘキシル(3−ペンタフルオロエトキシフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジシクロヘキシル([1,1’−ビフェニル]−4−イル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジシクロヘキシル([1,1’−ビフェニル]−3−イル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジシクロヘキシル(2−ナフチル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジシクロヘキシル(3,5−ジフルオロフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジシクロヘキシル(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジシクロヘキシル(3,5−ジエチルフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジシクロヘキシル(3,5−ジイソプロピルフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジシクロヘキシル(3,5−ジ−(tert−ブチル)フェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジ−ジシクロヘキシル(3,5−ジメトキシフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジシクロヘキシル)(3,5−ジエトキシフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジシクロヘキシル)(3,5−ジ−(トリフルオロメトキシ)フェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジシクロヘキシル(3,5−ジ−(トリフルオロエトキシ)フェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジシクロヘキシル(1,1’:3’,1’’−テルフェニル)−5’−イル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジシクロヘキシル(2−メトキシフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジシクロヘキシル(3−メトキシフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジシクロヘキシル(4−メトキシフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジシクロヘキシル(2,3−ジメトキシフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジシクロヘキシル(2,4−ジメトキシフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジシクロヘキシル(2,5−ジメトキシフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウム、(ジシクロヘキシル(2,6−ジメトキシフェニル)ホスフィン)クロロメチルパラジウムが挙げられる。
【0178】
式(C)で表されるパラジウム錯体は、Organometallics,2006,25,4588-4595等の公知の方法に準じて合成することができる。
【0179】
パラジウム触媒の添加量は、特に限定されないが、式(3)で表される化合物1モルに対して、通常0.00001〜0.8モルであり、好ましくは0.00005〜0.5モルであり、より好ましくは0.0001〜0.2モルである。
【0180】
粗ポリマーの製造に使用される反応溶媒には、パラジウム触媒に加えて、パラジウム触媒の配位子となる化合物を添加してもよい。パラジウム触媒の配位子となる化合物としては、特に限定されないが、例えば、トリアルキルホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、アルキルジアリールホスフィン、トリアリールホスフィンが挙げられる。さらに、例えば、トリフェニルホスフィン、トリ(o−トリル)ホスフィン、トリ(o−メトキシフェニル)ホスフィン、トリ−tert−ブチルホスフィンが挙げられる。
【0181】
パラジウム触媒の配位子となるリン化合物は、ホスホニウム塩と塩基とを反応させて、得てもよい。ホスホニウム塩としては、例えば、トリ−tert−ブチルホスホニウムテトラフルオロホウ酸塩等のリン化合物が挙げられる。
【0182】
(塩基)
粗ポリマーの製造に使用される塩基は、無機塩基であってもよく有機塩基であってもよい。
【0183】
無機塩基としては、例えば、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属カルボン酸塩、アルカリ土類金属カルボン酸塩、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ土類金属炭酸水素塩、アルカリ金属硫酸塩、アルカリ土類金属硫酸塩、アルカリ金属リン酸塩、及びアルカリ土類金属リン酸塩が挙げられ、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属硫酸塩、アルカリ土類金属硫酸塩、及びアルカリ土類金属リン酸塩からなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
【0184】
なお、本明細書において、無機塩基には、アルカリ金属硫酸塩、アルカリ土類金属硫酸塩が含まれるものとする。
【0185】
無機塩基の具体例としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、ギ酸ナトリウム、ギ酸カリウム、ギ酸カルシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、リン酸ナトリウム、及びリン酸カリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムが挙げられる。無機塩基としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、リン酸ナトリウム又はリン酸カリウムが好ましい。
【0186】
有機塩基としては、例えば、カリウムtert−ブトキシド等のアルカリ金属アルコキシド;ナトリウムtert−ブトキシド等のアルカリ土類金属アルコキシド;アルキルアンモニウム水酸化物;アルキルアンモニウム炭酸塩;アルキルアンモニウム重炭酸塩;アルキルアンモニウムボロン酸塩;1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン(DBN);1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン(DBU);1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO);ジメチルアミノピリジン(DMAP);ピリジン;トリアルキルアミン;テトラアルキルアンモニウムフルオリド等のアルキルアンモニウムフルオリドが挙げられる。有機塩基としては、カリウムtert−ブトキシド、ナトリウムtert−ブトキシド、テトラメチルアンモニウム水酸化物、テトラエチルアンモニウム水酸化物、テトラ−n−プロピルアンモニウム水酸化物等のテトラアルキルアンモニウム水酸化物が好ましい。
【0187】
塩基の使用量は、通常、0.5当量〜20当量であり、好ましくは2当量〜10当量である。
ここで、当量とは、式(2)で表される化合物に含まれるX
1及びX
2の合計物質量に対する、塩基が中和することができる水素イオンの理論物質量の比を表す。
【0188】
塩基は、そのままの形態で用いてもよく、水溶液の形態で用いてもよい。塩基を水溶液の形態で用いる場合、塩基の水溶液を調製するために用いる水の体積は、反応溶媒を調製するために用いる水の体積に含まれる。
【0189】
本発明の製造方法では、2種以上の塩基を組み合わせて用いてもよい。
【0190】
塩基として無機塩基を用いる場合、相間移動触媒を併用してもよい。相間移動触媒としては、例えば、テトラアルキルハロゲン化アンモニウム、テトラアルキル硫酸水素アンモニウム及びテトラアルキル水酸化アンモニウムが挙げられる。無機塩基としては、トリカプリルメチル塩化アンモニウム(Sigma−Aldrich社からAliquat(登録商標)336として入手可能)等のテトラアルキルハロゲン化アンモニウムが好ましい。
【0191】
第1の溶媒、第2の溶媒、触媒と塩基との組み合わせとしては、例えば、第1の溶媒として挙げられた上記例と、第2の溶媒として挙げられた上記例と、触媒として挙げられた上記の例と、塩基として挙げられた上記例とすべての組み合わせが挙げられる。第1の溶媒と第2の溶媒と触媒と塩基の組み合わせは、特に限定されないが、例えば、下記表5及び6に示される組み合わせが挙げられる。
【0192】
表5及び表6に記載の組み合わせの中でも、好ましい組み合わせは3、9、13、31、38,41であり、より好ましい組み合わせは3、31、38である。
【0194】
(製造条件)
粗ポリマーの製造では、通常、式(2)で表される化合物、式(3)で表される化合物、パラジウム触媒、塩基、及び反応溶媒を混合することによって、式(2)で表される化合物と式(3)で表される化合物とを反応させる。
【0195】
これらの混合順序は特に限定されず、例えば、式(2)で表される化合物、式(3)で表される化合物、パラジウム触媒、塩基、及び反応溶媒を同時に混合してもよいし、式(2)で表される化合物、式(3)で表される化合物、塩基、及び一部の反応溶媒を混合した後、得られる混合物と、残りの反応溶媒及びパラジウム触媒とを混合してもよい。また、式(2)で表される化合物、式(3)で表される化合物、パラジウム触媒、及び反応溶媒を混合した後、得られる混合物と、塩基とを混合してもよい。
【0196】
粗ポリマーの製造方法における反応温度は、通常−20℃〜180℃の範囲であり、好ましくは−20℃〜100℃の範囲であり、より好ましくは−20℃〜80℃の範囲である。反応時間は、通常30分間〜96時間の範囲であり、好ましくは30分間〜48時間の範囲である。
【0197】
粗ポリマーの製造方法において、式(2)で表される化合物及び式(3)で表される化合物を反応させる工程以外に、任意の工程を含んでいてもよい。
任意の工程としては、例えば、式(2)で表される化合物及び式(3)で表される化合物を反応させる工程の後、得られた粗ポリマーを反応混合物から分離する工程が挙げられる。
また、式(2)で表される化合物及び式(3)で表される化合物を反応させる工程の後、反応混合物からパラジウム錯体、パラジウム金属等の不純物を取り除くために、塩酸等の酸性溶液で該反応混合物を洗浄する工程を含んでいてもよい。
【0198】
<工程(A)>
工程(A)に供するポリマー溶液は、粗ポリマーを合成した溶液をそのまま使用してもよく、粗ポリマーを溶媒に溶解して調製した溶液を使用してもよい。通常、上記の通り、パラジウム錯体やパラジウム金属等の不純物を取り除く工程がなされることから、不純物を除去する工程を経て得られた粗ポリマーを溶媒に溶解してポリマー溶液を調製することが好ましい。このような不純物を除去する工程を経ても、不純物を全て除去することは難しく、粗ポリマー中にはPd原子、Pdクラスター、Pdを含む化合物等が残存し得る。
【0199】
ポリマー溶液における溶媒は、粗ポリマーが溶解し得る溶媒であれば、特に限定されず、例えば、芳香族系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、脂肪族炭化水素溶媒、脂環式炭化水素溶媒、ニトリル系溶媒、アミド系溶媒、カーボネート系溶媒、硫黄含有溶媒、塩素含有溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの中でも、粗ポリマーの溶解性が良好であり、Pdクラスターを除去しやすい観点から、溶媒は、芳香族系溶媒、アルコール系溶媒及びエーテル系溶媒からなる群から選択される少なくとも1つを含むことが好ましく、芳香族系溶媒を含むことがより好ましい。また、本発明の好適な実施態様では、溶媒は、芳香族系溶媒とアルコール系溶媒との混合溶媒であってもよい。
【0200】
エーテル系化合物としては、例えばアニソール、シクロペンチルメチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどが挙げられる。
【0201】
アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−ブトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、1−メチルシクロヘキサノールなどが挙げられる。
【0202】
芳香族系溶媒は芳香環を含む溶媒を示し、芳香環としては、例えばベンゼン環、ナフタレン環などが挙げられる。芳香族系溶媒としては、例えばトルエン、キシレン(例えばo−キシレン、m−キシレン、p−キシレン等)、トリメチルベンゼン(例えばメシチレン、1,2,4−トリメチルベンゼン(プソイドクメン)等)、ジメチル−エチルベンゼン(例えば1,3−ジメチル−4−エチルベンゼン等)、ブチルベンゼン(例えばn−ブチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン等)、メチルナフタレン(例えば1−メチルナフタレン、2−メチルナフタレン等)、エチルナフタレン(例えば2−エチルナフタレン等)、テトラリン、インダン、ジクロロ−メチルベンゼン(例えば1,2−ジクロロ−4−メチルベンゼン等)、クレゾール、クロロナフタレン(例えば2−クロロナフタレン等)、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン(例えばo−ジクロロベンゼン等)、クロロ−フルオロベンゼン(例えば1−クロロ−2−フルオロベンゼン等)などが挙げられる。
【0203】
芳香族系溶媒の中でも、ポリマーの溶解性が良好であり、Pdクラスターを除去しやすい観点から、式(A)で表される化合物を含むものが特に好ましい。
【化30】
【0204】
式(A)中、R
1は、ハロゲン原子又はアルキル基を表す。2個のR
1は互いに同一であっても異なっていてもよい。二つのR
1が環を結合し、環を形成してもよい。
【0205】
式(A)中、R
2は、水素原子、ハロゲン原子、又はアルキル基を表す。複数のR
2は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0206】
R
1及びR
2におけるハロゲン原子及びアルキル基としてはそれぞれ、「(有機光電変換材料用ポリマー)」の項に記載のハロゲン原子及びアルキル基が挙げられる。
【0207】
式(A)で表される化合物としては、ポリマーの溶解性が良好であり、Pdクラスターを除去しやすい観点から、下記式で表される化合物が好ましい。
【化31】
【0208】
ポリマー溶液を調製する場合、有機光電変換材料用粗ポリマーと溶媒を撹拌混合等して、該ポリマーを溶媒に溶解させてもよい。
【0209】
有機光電変換材料の質量(溶液濃度ともいう)は、有機光電変換材料の溶媒への溶解性等に応じて適宜選択でき、溶液の質量に対して、例えば0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜5質量%である。
【0210】
工程(A)では、前記ポリマー溶液に80℃以上の温度でキレート剤を接触させる。キレート剤とは、溶液中で金属イオンと結合する非金属の配位子で、配位子分子内の複数の配位原子で1つの金属イオンと結合し、その金属イオンの活性を低下させるものである。キレート剤により、粗ポリマー中に取り込まれているPdクラスターを捕捉できる。
【0211】
キレート剤としては、アミノカルボン酸系キレート剤(例えば、チレンジアミン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸)、ホスホン酸系キレート剤(エチドロン酸)エチレンジアミン、ビピリジン、フェナントロリン、チオ尿素、イソシアノ酢酸エチル、チオグリセロール、チオシアヌル酸、ジベンジルジチオカルバミン酸ナトリウム、1−ピロリジンカルボジチオ酸アンモニウム、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、イソプロピルキサントゲン酸カリウムおよびその水和物が挙げられる。これらのキレート剤は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。キレート剤の中でも、Pdクラスターを捕捉及び除去しやすい観点から、アミン系化合物であることが好ましく、ジチオカルバミン酸塩又はその誘導体(水和物を含む)がより好ましい。
【0212】
キレート剤の使用量は、粗ポリマー1質量部に対して、例えば0.1〜500質量部、好ましくは1〜300質量部、より好ましくは5〜100質量部、さらに好ましくは7〜50質量部である。キレート剤の使用量が上記範囲であると、粗ポリマー中のPdクラスターを捕捉しやすいため、得られるポリマーのPdクラスター量を低減しやすい。
【0213】
キレート剤に接触させる温度は80℃以上であればよく、好ましくは85℃以上、より好ましくは90℃以上、さらに好ましくは95℃以上である。接触させる温度が上記の下限以上であると、粗ポリマーの凝集を解きやすいため、Pdクラスターを放出しやすく、これにより得られるポリマーのPdクラスター量を低減しやすい。また、キレート剤に接触させる温度は、ポリマーの分解を抑制する観点から、好ましくは300℃以下、より好ましくは110℃以下である。
【0214】
キレート剤にポリマーを接触させる方法としては、特に限定されないが、例えばポリマー溶液にキレート剤を加えて、80℃以上の高温下で撹拌混合する方法などが挙げられる。接触時間、好ましくは混合時間は、粗ポリマーの種類及び接触温度等に応じて適宜選択でき、例えば1分〜24時間、好ましくは10分〜1時間程度であってもよい。
【0215】
工程(A)において、キレート剤を接触させた後のポリマー溶液から、慣用の方法、例えば、濾過、濃縮、抽出、晶析、再結晶、カラムなど、好ましくは抽出、晶析などの分離手段によりポリマーを単離することで、有機光電変換材料用ポリマーを得ることができる。例えば、キレート剤を接触させた後のポリマー溶液を水と有機溶媒を用いて有機層に抽出後、有機層をポリマーに対する貧溶媒に加えて、有機光電変換材料用ポリマーを析出させてもよい。
【0216】
貧溶媒は、ポリマーの溶解性が低い又はポリマーが溶解しない溶媒を示す。したがって、貧溶媒は、ポリマーの種類に応じて適宜選択でき、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;テトラヒドロフラン及びジメトキシエタン等のエーテル系溶媒;メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−ブトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒;エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素溶媒;アセトニトリル等のニトリル系溶媒;N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒;ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の硫黄含有溶媒;クロロホルム及びクロロベンゼン等の塩素含有溶媒などであってもよい。
なお、本発明の製造方法における有機光電変換材料用ポリマーは、上記[有機光電変換材料用ポリマー]の項に記載の有機光電変換材料用ポリマーと同様である。
【0217】
[有機光電変換素子]
本発明は、陽極及び陰極を含む一対の電極、並びに該一対の電極間に設けられ、前記有機光電変換材料を含む活性層を備える、有機光電変換素子を包含する。
【0218】
本発明の有機光電変換素子は、本発明の有機光電変換材料を活性層に含む。そのため、長期間保管後の有機光電変換材料を使用して形成しても、該材料の劣化が抑制されているため、優れた電気的特性、例えば低い暗電流及び高い外部量子効率(EQE)を示すことができる。したがって、本発明の有機光電変換素子は、光検出素子、有機フォトダイオード、太陽電池などに利用することができる。
【0219】
本発明の一実施態様において、有機光電変換素子は、基板/陽極/正孔輸送層/活性層/電子輸送層/陰極の順に積層された層構成;又は基板/陰極/電子輸送層/活性層/正孔輸送層/陽極の順に積層された層構成を有する。なお、有機光電変換素子は正孔輸送層、電子輸送層を有していなくてもよい。
【0220】
<活性層>
前記活性層は、p型半導体材料(電子供与性化合物)とn型半導体材料(電子受容性化合物)とを含む。p型半導体材料及びn型半導体材料のうちのいずれであるかは、選択された有機半導体材料のHOMO又はLUMOのエネルギーレベルから相対的に決定することができる。
【0221】
本発明の一実施態様では、活性層は、有機光電変換材料をp型半導体材料として含むことが好ましい。本発明の有機光電変換材料は保管後の溶液粘度の上昇が抑制されるため、長期間保管後であっても、該材料を含むインク組成物の粘度を調整しやすい。
【0222】
活性層の厚さは、通常、1nm〜100μmが好ましく、より好ましくは2nm〜2000nm、さらに好ましくは80nm〜1000nmである。
【0223】
活性層は、例えば、活性層形成用のインク組成物(単に、インク組成物又は塗布液ということがある)を用いる塗布法により製造することができる。
【0224】
ここで、有機光電変換素子の主たる構成要素である活性層を塗布法によって形成する例について以下に説明する。かかる活性層の形成工程は、下記の工程(X)及び工程(Y)を含んでいてもよい。
【0225】
(工程(X))
インク組成物を塗布対象に塗布する方法としては、任意好適な塗布法を用いることができる。塗布法としては、スリットコート法、ナイフコート法、スピンコート法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、インクジェット印刷法、ノズルコート法、又はキャピラリーコート法が好ましく、スリットコート法、スピンコート法、キャピラリーコート法、ナイフコート法又はバーコート法がより好ましく、ナイフコート法、スリットコート法、又はスピンコート法がさらに好ましい。
【0226】
インク組成物は、有機光電変換素子及びその製造方法に応じて選択された塗布対象に塗布される。インク組成物は、有機光電変換素子の製造方法において、有機光電変換素子が有する機能層であって、活性層が隣接し得る機能層に塗布される。したがって、インク組成物の塗布対象は、製造される有機光電変換素子の層構成及び層形成の順序によって異なる。例えば、有機光電変換素子が、基板/陽極/正孔輸送層/活性層/電子輸送層/陰極の層構成を有しており、より左側に記載された層が先に形成される場合、インク組成物の塗布対象は、正孔輸送層となる。また、例えば、有機光電変換素子が、基板/陰極/電子輸送層/活性層/正孔輸送層/陽極の層構成を有しており、より左側に記載された層が先に形成される場合、インク組成物の塗布対象は、電子輸送層となる。
【0227】
(工程(Y))
インク組成物の塗布膜から、溶媒を除去する方法、すなわち塗布膜を乾燥処理して溶媒を除去し、硬化させる方法としては、任意好適な方法を用いることができる。溶媒を除去する方法の例としては、ホットプレートを用いて直接的に加熱する方法、熱風乾燥法、赤外線加熱乾燥法、フラッシュランプアニール乾燥法、減圧乾燥法などによる乾燥処理が挙げられる。
【0228】
活性層を形成する工程は、工程(X)及び工程(Y)以外に、本発明の目的及び効果を損なわないことを条件としてその他の工程を含んでいてもよい。
【0229】
本発明の一実施態様における有機光電変換素子は、複数の活性層を含む有機光電変換素子であってもよく、かかる場合、複数の活性層は工程(X)及び工程(Y)を複数回繰り返して製造されてもよい。
【0230】
(活性層形成用のインク組成物)
上記工程(X)に用いられ得るインク組成物は、溶液であってもよく、分散液、エマルション(乳濁液)、サスペンション(懸濁液)等の分散液であってもよい。本発明の一実施態様におけるインク組成物は、活性層形成用のインク組成物であって、p型半導体材料である有機光電変換材料及びn型半導体材料と、溶媒Aとを含み、さらに所望により溶媒Bを含み得る。
【0231】
インク組成物は、p型半導体材料(π共役系ポリマー)を1種のみ含んでいてもよく、2種以上の任意の割合の組み合わせとして含んでいてもよい。
【0232】
(n型半導体材料)
n型半導体材料(電子受容性化合物)は、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。
【0233】
低分子化合物であるn型半導体材料の例としては、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、C
60フラーレン等のフラーレン類及びその誘導体、並びに、バソクプロイン等のフェナントレン誘導体が挙げられる。
【0234】
高分子化合物であるn型半導体材料の例としては、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミン構造を有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、並びに、ポリフルオレン及びその誘導体が挙げられる。
【0235】
n型半導体材料としては、フラーレン及びフラーレン誘導体から選ばれる1種以上が好ましく、フラーレン誘導体がより好ましい。
【0236】
フラーレンの例としては、C
60フラーレン、C
70フラーレン、C
76フラーレン、C
78フラーレン、及びC
84フラーレンが挙げられる。フラーレン誘導体の例としては、これらのフラーレンの誘導体が挙げられる。フラーレン誘導体とは、フラーレンの少なくとも一部が修飾された化合物を意味する。
【0237】
フラーレン誘導体の例としては、下記式(N−1)〜式(N−4)で表される化合物が挙げられる。
【0239】
式(N−1)〜式(N−4)中、R
aは、アルキル基、アリール基、1価の複素環基、又はエステル構造を有する基を表す。複数個あるR
aは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0240】
式(N−1)〜式(N−4)中、R
bは、アルキル基、又はアリール基を表す。複数個あるR
bは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0241】
R
aで表されるエステル構造を有する基の例としては、下記式(19)で表される基が挙げられる。
【0243】
式(19)中、u1は、1〜6の整数を表す。u2は、0〜6の整数を表す。R
cは、アルキル基、アリール基、又は1価の複素環基を表す。
【0244】
C
60フラーレン誘導体の例としては、下記の化合物が挙げられる。
【0246】
C
70フラーレン誘導体の例としては、下記の化合物が挙げられる。
【0248】
フラーレン誘導体の具体例としては、[6,6]−フェニル−C61酪酸メチルエステル(C60PCBM、[6,6]−Phenyl C61 butyric acid methyl ester)、[6,6]−フェニル−C71酪酸メチルエステル(C70PCBM、[6,6]−Phenyl C71 butyric acid methyl ester)、[6,6」−フェニル−C85酪酸メチルエステル(C84PCBM、[6,6]−Phenyl C85 butyric acid methyl ester)、及び[6,6]−チエニル−C61酪酸メチルエステル([6,6]−Thienyl C61 butyric acid methyl ester)が挙げられる。
【0249】
インク組成物は、n型半導体材料を1種のみ含んでいてもよく、2種以上の組み合わせを任意の割合で含んでいてもよい。
【0250】
(溶媒A)
溶媒は、選択されたp型半導体材料及びn型半導体材料に対する溶解性、活性層を形成する際の乾燥条件に対応するための特性(沸点など)を考慮して選択すればよい。
主溶媒である溶媒Aは、置換基(例えば、アルキル基、ハロゲン原子)を有していてもよい芳香族炭化水素(以下、単に芳香族炭化水素という)である。溶媒Aは、選択されたp型半導体材料及びn型半導体材料の溶解性を考慮して選択することが好ましい。
【0251】
このような芳香族炭化水素としては、上記[有機光電変換材料用ポリマーの製造方法]の項に記載の芳香族系溶媒が挙げられる。
【0252】
溶媒Aは1種のみの芳香族炭化水素から構成されていても、2種以上の芳香族炭化水素から構成されていてもよい。溶媒Aは、1種のみの芳香族炭化水素から構成されることが好ましい。
【0253】
溶媒Aは、好ましくは、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、メシチレン、プソイドクメン、n−ブチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン、メチルナフタレン、テトラリン、インダン、クロロベンゼン及びo−ジクロロベンゼンからなる群から選択される1種以上を含み、より好ましくは、o−キシレン、プソイドクメン、テトラリン、クロロベンゼン又はo−ジクロロベンゼンである。
【0254】
(溶媒B)
溶媒Bは、特にn型半導体材料の溶解性を高める観点から選択される溶媒であることが好ましい。溶媒Bとしては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、プロピオフェノン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸フェニル、エチルセルソルブアセテート、安息香酸メチル、安息香酸ブチル、安息香酸ベンジル等のエステル系溶媒が挙げられる。
【0255】
溶媒Bは、暗電流を低減する観点から、アセトフェノン、プロピオフェノン、又は安息香酸ベンジルが好ましい。
【0256】
(溶媒A及び溶媒Bの組み合わせ)
溶媒A及び溶媒Bの組み合わせとしては、例えば、下記表7に示される組み合わせが挙げられる。
【0258】
溶媒A(主溶媒)の溶媒B(添加溶媒)に対する質量比(溶媒A/溶媒B)は、p型半導体材料及びn型半導体材料の溶解性をより向上させる観点から、85/15〜95/5の範囲とすることが好ましい。
【0259】
(インク組成物における溶媒A及び溶媒Bの合計の質量百分率)
インク組成物に含まれる溶媒A及び溶媒Bの総質量は、インク組成物の全質量を100質量%としたときに、p型半導体材料及びn型半導体材料の溶解性をより向上させる観点から、好ましくは90質量%以上、より好ましくは92質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上であり、インク組成物中のp型半導体材料及びn型半導体材料の含有量をより多くしつつ一定の厚さ以上の膜を形成し易くする観点から、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下、さらに好ましくは97.5質量%以下である。
【0260】
(任意の溶媒)
インク組成物は、溶媒A及び溶媒B以外の任意の溶媒を含んでいてもよい。インク組成物に含まれる全溶媒の合計質量を100質量%としたときに、任意の溶媒の含有率は、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下である。任意の溶媒としては、溶媒Bより沸点が高い溶媒が好ましい。
【0261】
(任意の成分)
インク組成物には、溶媒A、溶媒B、p型半導体材料(π共役系ポリマー)、及びn型半導体材料の他に、本発明の目的及び効果を損なわない限度において、紫外線吸収剤、酸化防止剤、吸収した光により電荷を発生させる機能を増感するための増感剤、紫外線に対する安定性を増加させるための光安定剤といった任意の成分が含まれていてもよい。
【0262】
(インク組成物におけるp型半導体材料及びn型半導体材料の濃度)
インク組成物における、p型半導体材料及びn型半導体材料の合計の濃度は、0.01質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上10質量%以下であることがより好ましく、0.01質量%以上5質量%以下であることがさらに好ましく、0.1質量%以上5質量%以下であることが特に好ましい。インク組成物中、p型半導体材料及びn型半導体材料は溶解していても分散していてもよい。p型半導体材料及びn型半導体材料は、好ましくは少なくとも一部が溶解しており、より好ましくは全部が溶解している。
【0263】
(インク組成物の調製)
インク組成物は、公知の方法により調製することができる。例えば、溶媒A及び溶媒Bを混合して混合溶媒を調製し、混合溶媒にp型半導体材料及びn型半導体材料を添加する方法、溶媒Aにp型半導体材料を添加し、溶媒Bにn型半導体材料を添加してから、各材料が添加された溶媒A及び溶媒Bを混合する方法などにより、調製することができる。
【0264】
溶媒A及び溶媒Bとp型半導体材料及びn型半導体材料とを、溶媒の沸点以下の温度で加温して混合してもよい。
【0265】
溶媒A及び溶媒Bとp型半導体材料及びn型半導体材料とを混合した後、得られた混合物をフィルターを用いて濾過し、得られた濾液をインク組成物として用いてもよい。
フィルターとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂で形成されたフィルターを用いることができる。
【0266】
<基板>
有機光電変換素子は、通常、基板に形成される。この基板には、通常、陰極及び陽極を含む電極が形成される。基板の材料は、特に有機化合物を含む層を形成する際に化学的に変化しない材料であれば特に限定されない。基板の材料としては、例えば、ガラス、プラスチック、高分子フィルム、シリコンが挙げられる。基板としては、後述する電極が形成されているか、又はパターニングすることにより電極として機能し得る導電性材料の層が設けられた基板を用意して用いることができる。導電性材料の層が設けられた基板の例としては、インジウムスズオキサイド(ITO)の層が形成されたガラス基板が挙げられる。
【0267】
<電極>
透明又は半透明の電極の材料としては、例えば、導電性の金属酸化物膜、半透明の金属薄膜等が挙げられる。具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及びそれらの複合体であるITO、インジウム亜鉛オキサイド(IZO)、NESA等の導電性材料、金、白金、銀、銅が挙げられる。透明又は半透明の電極の材料としては、ITO、IZO、酸化スズが好ましい。また、電極として、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体等の有機化合物が材料として用いられる透明導電膜を用いてもよい。透明又は半透明の電極は、陽極であっても陰極であってもよい。基板が不透明である場合には、不透明な基板側に設けられる電極とは反対側の電極(すなわち、基板から遠い側の電極)が透明又は半透明の電極とされることが好ましい。
【0268】
1対の電極のうち、一方の電極が透明又は半透明であれば、他方の電極は光透過性の低い電極であってもよい。光透過性の低い電極の材料としては、例えば、金属、及び導電性高分子が挙げられる。光透過性の低い電極の材料の具体例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム等の金属、及びこれらのうちの2種以上の合金、又は、これらのうちの1種以上の金属と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン及び錫からなる群から選ばれる1種以上の金属との合金、グラファイト、グラファイト層間化合物、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体が挙げられる。合金としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、及びカルシウム−アルミニウム合金が挙げられる。
【0269】
電極の形成方法としては、従来公知の任意好適な形成方法を用いることができる。電極の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、及びめっき法が挙げられる。
【0270】
<中間層>
有機光電変換素子は、有機光電変換効率といった特性を向上させるためのさらなる構成要素として、電荷輸送層(例えば電子輸送層、正孔輸送層、電子注入層、正孔注入層等)といった付加的な中間層を備えていてもよい。
【0271】
このような中間層に用いられる材料としては、従来公知の任意好適な材料を用いることができる。中間層の材料としては、例えば、フッ化リチウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属のハロゲン化物、及び酸化物が挙げられる。
【0272】
また、中間層に用いられる材料としては、例えば、酸化チタン等の無機半導体の微粒子、及びPEDOT(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン))とPSS(ポリ(4−スチレンスルホネート))との混合物(PEDOT:PSS)が挙げられる。
【0273】
有機光電変換素子は、陽極と活性層との間に、正孔輸送層を備えていてもよい。正孔輸送層は、活性層から電極へと正孔を輸送する機能を有する。
【0274】
陽極に接して設けられる正孔輸送層を、特に正孔注入層という場合がある。陽極に接して設けられる正孔輸送層(正孔注入層)は、陽極への正孔の注入を促進する機能を有する。正孔輸送層(正孔注入層)は、活性層に接していてもよい。
【0275】
正孔輸送層は、正孔輸送性材料を含む。正孔輸送性材料の例としては、ポリチオフェン及びその誘導体、芳香族アミン化合物、芳香族アミン残基を有する構成単位を含む高分子化合物、CuSCN、CuI、NiO、及び酸化モリブデン(MoO
3)が挙げられる。
【0276】
有機光電変換素子は、陰極と活性層との間に、電子輸送層を備えていてもよい。電子輸送層は、活性層から陰極へと電子を輸送する機能を有する。電子輸送層は、陰極に接していてもよい。電子輸送層は活性層に接していてもよい。
【0277】
電子輸送層は、電子輸送性材料を含む。電子輸送性材料の例としては、酸化亜鉛のナノ粒子、ガリウムドープ酸化亜鉛のナノ粒子、アルミニウムドープ酸化亜鉛のナノ粒子、ポリエチレンイミン、エトキシ化ポリエチレンイミン(ポリエチレンイミンエトキシレート)、及びPFN−P2が挙げられる。
【0278】
中間層は、既に説明した活性層の製造方法と同様の塗布法により形成することができる。
【0279】
<封止層>
有機光電変換素子は、封止層をさらに備えていてもよい。封止層は、例えば、基板から遠い方の電極側に設けたり、有機光電変換素子の周辺部に設けたりすることができる。封止層は、水分を遮断する性質(水蒸気バリア性)又は酸素を遮断する性質(酸素バリア性)を有する材料を用いて、選択された材料に好適な方法により形成することができる。
【0280】
本発明の有機光電変換素子は、電極間に上記に記載の方法で活性層を形成することにより製造できる。また、本発明の一実施態様における基板/陽極/正孔輸送層/活性層/電子輸送層/陰極の順に積層された層構成;又は基板/陰極/電子輸送層/活性層/正孔輸送層/陽極の順に積層された層構成は、例えば基板側から、上記に記載の方法を用いて順に層を形成することにより製造することができる。
【実施例】
【0281】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0282】
測定方法及び評価方法を以下に示す。
【0283】
[溶液の調製及び粘度の測定]
実施例1〜3及び比較例1〜3で得られたポリマーの保管前及び保管処理後の溶液粘度をDV−2 Pro E型粘度計装置(Brookfield社製)を用いて測定した。粘度測定溶液の調製及び測定の詳細を以下に示す。
ポリマーを12.0mg秤量し、溶媒として1,2,3,4−テトラヒドロナフタレンを2.0mL加えた。この溶液を80℃で3時間加熱して粘度測定溶液を調製した。
得られた粘度測定溶液を0.7mL採取し、E型粘度計装置のカップに入れた。カップの温度が30℃、スピンドルの回転数は30rpmの条件で溶液粘度を測定した。
保管前及び保管処理後のポリマーについて、上記操作を行い、溶液粘度を測定した。そして、保管処理後のポリマーの溶液粘度を保管前のポリマーの溶液粘度で除算し、得られた値を粘度増加度とした。
【0284】
[透過型電子顕微鏡の測定]
TEM(JEM2200FS、日本電子社製)を用いた走査型透過電子顕微鏡測定により、実施例1〜3及び比較例1〜3で得られたポリマー薄膜1μm
3あたりのパラジウムクラスター(Pdクラスター)数を測定した。以下に測定方法の詳細を示す。
【0285】
実施例1〜3及び比較例1〜3で得られたポリマー薄膜にナイフで切れ込みを入れ、水に浸すことによって基板から剥がれて水面に浮いた膜を、TEM用グリッドですくって得た。観察は上記TEMを加速電圧200kVのSTEMモードで用い、倍率200000倍で667nm×667nmの範囲の画素数1024×1024のSTEM像を得た。
【0286】
STEM像に現れた白点をパラジウムクラスター(Pdクラスター)としてその数を記録した。STEM像の1視野に対応する薄膜の面積と膜厚との積を求め、Pdクラスターの数を前記の積の値で除算した値を1μm
3あたりのPdクラスター数(個/μm
3)とした。これを3視野分測定し、3視野分の1μm
3あたりのPdクラスターの平均数を算出した。
【0287】
実施例1〜3及び比較例1〜3では下記表8に示される構成単位及び組成を有する有機光電変換材料用ポリマーを有機光電変換材料として使用した。
【0288】
【表8】
【0289】
<実施例1>
(ポリマーの製造)
国際公開第2013051676号に記載の方法を参考に合成した上記粗ポリマー(P−1)(1.13g、Mw:62,200)の1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン(23.8mL)及び1−メチルシクロヘキサノール(23.8mL)の混合溶液に25%ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム三水和物水溶液(56mL)を加えて、100℃で30分攪拌した。水層を除去後、有機層を酢酸水溶液で1回洗浄し、次いで、水で2回洗浄し、得られた溶液をメタノールに注いでポリマーを析出させた。得られたポリマーをポリマー(E−1)とする。なお、キレート剤の使用量は、粗ポリマー1質量部に対して、17質量部であった。
【0290】
(ポリマー薄膜の形成)
ポリマー(E−1)をo−キシレンに溶解して0.66質量%濃度のo−キシレン溶液を得た。このo−キシレン溶液を用いてポリスチレンスルホン酸をポリ陰イオンとして含むポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)上にスピンコート法で製膜し、ポリマー(E−1)からなる薄膜(ポリマー薄膜(E−1))を得た。該薄膜の厚みは0.06μmであった。
【0291】
(ポリマーの保管)
ポリマー(E−1)を100mg用意し、大気雰囲気下、ガラス製である容器A(10mLのスクリュー管バイアルビン)に収容した。その後、容器Aを封入容器であるチャック付きアルミ袋(アルミラミジップ、セイニチ社製、AL−10)に入れ、アルミラミジップの開口部を熱ラミネーションにより封止した。ポリマー(E−1)が入った容器Aが封入されたアルミラミジップを、60℃、75RH%とした恒温槽に入れ、1箇月静置して保管した。このようにして保管後のポリマー(E−1)を得た。
【0292】
<実施例2>
(ポリマーの製造)
国際公開第2011052709号に記載の方法を参考に合成した上記粗ポリマー(P−6)(1.14g、Mw:76,000)の1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン(23.8mL)及び1−メチルシクロヘキサノール(23.8mL)の混合溶液に25%ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム三水和物水溶液(56mL)を加えて、100℃で30分攪拌した。水層を除去後、有機層を酢酸水溶液で1回洗浄し、次いで、水で2回洗浄し、得られた溶液をメタノールに注いでポリマーを析出させた。得られたポリマーをポリマー(E−2)とする。なお、キレート剤の使用量は、粗ポリマー1質量部に対して、14質量部であった。
【0293】
(ポリマー薄膜の形成及びポリマーの保管)
ポリマー(E−1)に代えてポリマー(E−2)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法にて、ポリマー薄膜(E−2)及び保管後のポリマー(E−2)を得た。該ポリマー薄膜(E−2)の厚みは0.06μmであった。
【0294】
<実施例3>
(ポリマーの製造)
国際公開第2018220785号に記載の方法を参考に合成した上記粗ポリマー(P−7)(0.33g)の1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン(6.3mL)及び1−メチルシクロヘキサノール(6.3mL)の混合溶液に25%ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム三水和物水溶液(12mL)を加えて、100℃で30分攪拌した。水層を除去後、有機層を酢酸水溶液で1回洗浄し、次いで、水で2回洗浄し、得られた溶液をメタノールに注いでポリマーを析出させた。得られたポリマーをポリマー(E−3)とする。なお、キレート剤の使用量は、粗ポリマー1質量部に対して、9.4質量部であった。
【0295】
(ポリマー薄膜の形成及びポリマーの保管)
ポリマー(E−1)に代えてポリマー(E−3)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法にて、ポリマー薄膜(E−3)及び保管後のポリマー(E−3)を得た。該ポリマー薄膜(E−3)の厚みは0.06μmであった。
【0296】
<比較例1>
(ポリマーの製造)
国際公開第2013051676号に記載の方法を参考に合成した上記粗ポリマー(P−1(1.13g)の1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン(23.8mL)及び1−メチルシクロヘキサノール(23.8mL)の混合溶液を酢酸水溶液で1回洗浄し、次いで、水で2回洗浄し、得られた溶液をメタノールに注いでポリマーを析出させた。得られたポリマーをポリマー(C−1)とする。
【0297】
(ポリマー薄膜の形成及びポリマーの保管)
ポリマー(E−1)に代えて、ポリマー(C−1)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ポリマー薄膜(C−1)及び保管後のポリマー(C−1)を得た。
【0298】
<比較例2>
(ポリマーの製造)
国際公開第2011052709号に記載の方法を参考に合成した上記粗ポリマー(P−2(1.13g)の1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン(23.8mL)及び1−メチルシクロヘキサノール(23.8mL)の混合溶液を酢酸水溶液で1回洗浄し、次いで、水で2回洗浄し、得られた溶液をメタノールに注いでポリマーを析出させた。得られたポリマーをポリマー(C−2)とする。
【0299】
(ポリマー薄膜の形成及びポリマーの保管)
ポリマー(E−1)に代えて、ポリマー(C−2)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ポリマー薄膜(C−2)及び保管後のポリマー(C−2)を得た。
【0300】
<比較例3>
(ポリマーの製造)
国際公開第2018220785号に記載の方法を参考に合成した上記粗ポリマー(P−3(0.33g)の1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン(6.3mL)及び1−メチルシクロヘキサノール(6.3mL)の混合溶液を酢酸水溶液で1回洗浄し、次いで、水で2回洗浄し、得られた溶液をメタノールに注いでポリマーを析出させた。得られたポリマーをポリマー(C−3)とする。
【0301】
(ポリマー薄膜の形成及びポリマーの保管)
ポリマーE−1に代えて、ポリマー(C−3)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ポリマー薄膜(C−3)及び保管後のポリマー(C−3)を得た。
【0302】
ポリマー(E−1)〜(E−3)及びポリマー(C−1)〜(C−3)の保管前の溶液粘度(mPa・s)及び保管後の溶液粘度(mPa・s)、並びに、ポリマー薄膜(E−1)〜(E−3)及びポリマー薄膜(C−1)〜(C−3)の3視野分(視野1〜3)のPdクラスターの平均数(個/μm
3)を表9に示した。なお、ポリマー薄膜(E−1)の視野1〜3のSTEM画像をそれぞれ
図1〜3、及びポリマー薄膜(C−1)の視野1〜3のSTEM画像をそれぞれ
図4〜6に示し、ポリマー薄膜(E−2)の視野1〜3のSTEM画像をそれぞれ
図7〜9、及びポリマー薄膜(C−2)の視野1〜3のSTEM画像をそれぞれ
図10〜12に示し、ポリマー薄膜(E−3)の視野1〜3のSTEM画像をそれぞれ
図13〜15、及びポリマー薄膜(C−3)の視野1〜3のSTEM画像をそれぞれ
図16〜18に示し、Pdクラスター数(個)及び1μm
3あたりのPdクラスター数(個/μm
3)を表10に示した。なお、STEM画像において、白点がPdクラスターである。実施例1〜3において、STEM画像におけるPdクラスターの粒子径は1〜20nmであった。
【0303】
【表9】
【0304】
【表10】
【0305】
表9に示される通り、実施例1〜3は、比較例1〜3と比べ、ポリマー保管前後の粘度増加度が小さく、長期間保管してもポリマー溶液の粘度上昇が抑制されることが確認された。
【0306】
<実施例4>
(量子理論計算)
Pdクラスターの存在により、溶液粘度が変化するメカニズムを検討するために、量子理論計算を行った。まず、13個のパラジウムから成るパラジウム(Pd)クラスターをポリマー(P−1)に隣接させた状態で構造最適化計算を行った。使用したプログラムはDmol
3バージョン7.0(ダッソー・システムズ社)であり、汎関数はPW91、基底関数系はDNPを用いた。次に、得られた最適化構造を用いて、ポリマー(P−1)とPdクラスターのMulliken電荷を求めた。使用したプログラムはガウシアン09、リビジョン E.01(ガウシアン社)であり、汎関数はM06、基底関数系はPdクラスターに対してはLANL2DZ、それ以外の原子には6−31G(d)を用いた。
ポリマー(P−1)にPdクラスターが配位した場合(a)、及び、さらにPdクラスターに酸素が配位した場合(b)におけるスピン状態及びMulliken電荷を表11に示した。以下、ポリマーを配位子ということがある。
【表11】
【0307】
表11に示される通り、Pdクラスターがポリマーに配位すると、配位子からPdクラスターに電荷移動が生じ、さらに酸素存在下ではその電荷移動が促進されることがわかった。
したがって、量子理論計算の結果から、Pdクラスター量が多い比較例1では、Pdクラスターの影響により、ポリマーの電荷が増加し、ポリマー同士の凝集が促進されるため、保管後の溶液粘度が上昇すると考えられる。一方、Pdクラスター量が少ない実施例1では、ポリマーの電荷が増加しにくく、ポリマーの凝集が抑えられるため、結果として保管後の溶液粘度の上昇が抑制されると考えられる。