特許第6935260号(P6935260)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6935260硬化性組成物、硬化膜、表示パネル又はOLED照明、並びに硬化物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6935260
(24)【登録日】2021年8月27日
(45)【発行日】2021年9月15日
(54)【発明の名称】硬化性組成物、硬化膜、表示パネル又はOLED照明、並びに硬化物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/68 20060101AFI20210906BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20210906BHJP
   H05B 33/04 20060101ALI20210906BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20210906BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20210906BHJP
   H05B 33/22 20060101ALI20210906BHJP
【FI】
   C08G59/68
   H05B33/02
   H05B33/04
   H05B33/10
   H05B33/14 A
   H05B33/22 Z
【請求項の数】10
【全頁数】62
(21)【出願番号】特願2017-148559(P2017-148559)
(22)【出願日】2017年7月31日
(65)【公開番号】特開2019-26760(P2019-26760A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2020年4月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(72)【発明者】
【氏名】染谷 和也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一生
(72)【発明者】
【氏名】三隅 浩一
(72)【発明者】
【氏名】塩田 大
【審査官】 吉田 早希
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−048325(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/129343(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/052212(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C088G 59/00 ー 59/72
H05B 33/00 ー 33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)硬化性化合物と、(B)カチオン重合開始剤とを含み、
前記(A)硬化性化合物が、下記式(a1)で表される化合物を含み、
前記(B)カチオン重合開始剤が、カチオン部とアニオン部とからなり、前記アニオン部が下記式(b1)で表されるアニオンである化合物であり、
前記カチオン部がスルホニウムイオン又はヨードニウムイオンである、硬化性組成物。
【化1】
(式(a1)中、W及びWは、それぞれ独立に、下記式(a2):
【化2】
で表される基であり、
式(a2)中、環Zはナフタレン環を示し、Xは単結合又は−S−で示される基を示し、Rは単結合、炭素原子数が1以上4以下であるアルキレン基、又は炭素原子数が1以上4以下であるアルキレンオキシ基を示し、Rがアルキレンオキシ基である場合、アルキレンオキシ基中の酸素原子が環Zと結合し、Rは1価炭化水素基、水酸基、−OR4aで示される基、−SR4bで示される基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、カルボキシ基、アミノ基、カルバモイル基、−NHR4cで示される基、−N(R4dで示される基、スルホ基、又は1価炭化水素基、−OR4aで示される基、−SR4bで示される基、アシル基、アルコキシカルボニル基、−NHR4cで示される基、もしくは−N(R4dで示される基に含まれる炭素原子に結合した水素原子の少なくとも一部が1価炭化水素基、水酸基、−OR4aで示される基、−SR4bで示される基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、カルボキシ基、アミノ基、カルバモイル基、−NHR4cで示される基、−N(R4dで示される基、メシルオキシ基、もしくはスルホ基で置換された基を示し、R4a〜R4dは独立に1価炭化水素基を示し、mは0以上の整数を示し、Rは、水素原子、ビニル基、又はグリシジル基であり、
とWとの双方がRとして水素原子を有することはなく、
環Y及び環Yは同一の又は異なる芳香族炭化水素環を示し、Rは単結合、置換基を有してもよいメチレン基、置換基を有してもよく、2個の炭素原子間にヘテロ原子を含んでもよいエチレン基、−O−で示される基、−NH−で示される基、又は−S−で示される基を示し、R3a及びR3bは独立にシアノ基、ハロゲン原子、又は1価炭化水素基を示し、n1及びn2は独立に0以上4以下の整数を示す。)
【化3】
(式(b1)中、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭化水素基であり、R、R、R、及びRのうちの少なくとも1つが置換基を有してもよい芳香族炭化水素基である。)
【請求項2】
さらに(C)他のカチオン重合開始剤を含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記(B)カチオン重合開始剤、及び/又は前記(C)他のカチオン重合開始剤が、カチオン部とアニオン部とからなり、且つ前記カチオン部が下記式(c1)で表されるカチオンである、スルホニウム塩を含む、請求項2に記載の硬化性組成物。
【化4】

(式(c1)中、Rc1及びRc2は独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基又は下記式(c2)で表される基を示し、Rc1及びRc2は相互に結合して式中の硫黄原子とともに環を形成してもよく、Rc3は下記式(c3)で表される基又は下記式(c4)で表される基を示し、Ac1はS、O、又はSeを示し、但し、Rc1及びRc2は、同時に、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基ではない。)
【化5】
(式(c2)中、環Zc1は芳香族炭化水素環を示し、Rc4はハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アシロキシ基、アルキルチオ基、チエニル基、チエニルカルボニル基、フラニル基、フラニルカルボニル基、セレノフェニル基、セレノフェニルカルボニル基、複素環式脂肪族炭化水素基、アルキルスルフィニル基、アルキルスルホニル基、ヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基、置換されていてもよいアミノ基、シアノ基、ニトロ基、又はハロゲン原子を示し、m1は0以上の整数を示す。)
【化6】

(式(c3)中、Rc5はヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アリールチオカルボニル基、アシロキシ基、アリールチオ基、アルキルチオ基、アリール基、複素環式炭化水素基、アリールオキシ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基、置換されていてもよいアミノ基、シアノ基、ニトロ基、もしくはハロゲン原子で置換されていてもよいアルキレン基又は下記式(c5)で表される基を示し、Rc6はヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アリールチオカルボニル基、アシロキシ基、アリールチオ基、アルキルチオ基、アリール基、複素環式炭化水素基、アリールオキシ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基、置換されていてもよいアミノ基、シアノ基、ニトロ基、もしくはハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基又は下記式(c6)で表される基を示し、Ac2は単結合、S、O、スルフィニル基、又はカルボニル基を示し、m2は0又は1を示す。)
【化7】
(式(c4)中、Rc7及びRc8は独立に、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アリールチオカルボニル基、アシロキシ基、アリールチオ基、アルキルチオ基、アリール基、複素環式炭化水素基、アリールオキシ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基、置換されていてもよいアミノ基、シアノ基、ニトロ基、もしくはハロゲン原子で置換されていてもよいアルキレン基又は下記式(c5)で表される基を示し、Rc9及びRc10は独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基又は上記式(c2)で表される基を示し、Rc9及びRc10は相互に結合して式中の硫黄原子とともに環を形成してもよく、Ac3は単結合、S、O、スルフィニル基、又はカルボニル基を示し、m3は0又は1を示し、但し、Rc9及びRc10は、同時に、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基ではない。)
【化8】
(式(c5)中、環Zc2は芳香族炭化水素環を示し、Rc11はハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アリールチオカルボニル基、アシロキシ基、アリールチオ基、アルキルチオ基、アリール基、複素環式炭化水素基、アリールオキシ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基、置換されていてもよいアミノ基、シアノ基、ニトロ基、又はハロゲン原子を示し、m4は0以上の整数を示す。)
【化9】
(式(c6)中、環Zc3は芳香族炭化水素環を示し、Rc12はハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アリールチオカルボニル基、アシロキシ基、アリールチオ基、アルキルチオ基、チエニルカルボニル基、フラニルカルボニル基、セレノフェニルカルボニル基、アリール基、複素環式炭化水素基、アリールオキシ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基、置換されていてもよいアミノ基、シアノ基、ニトロ基、又はハロゲン原子を示し、m5は0以上の整数を示す。)
【請求項4】
前記式(c1)中の前記Rc1及び前記Rc2がともにフェニル基である、請求項3に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記式(c1)中の前記Ac1がSである、請求項3又は4に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の硬化性組成物の硬化物からなる硬化膜。
【請求項7】
請求項6に記載の硬化膜を備える、画像表示装置用の表示パネル、又はOLED照明。
【請求項8】
フレキシブルである、請求項7に記載の画像表示装置用の表示パネル、又はOLED照明。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の前記硬化性組成物を所定の形状に成形する工程と、
成形された前記硬化性組成物に対して、加熱、又は露光と加熱とを行う工程と、
を含む硬化物の製造方法。
【請求項10】
前記硬化性組成物の成形が塗布膜の形成であって、前記塗布膜に対して露光及び加熱の少なくとも一方を行う、請求項9に記載の硬化物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物と、当該硬化性組成物の硬化物からなる硬化膜と、当該硬化膜を備える画像表示装置用の表示パネル又はOLED照明と、前述の硬化性組成物を用いる硬化物の製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エポキシ化合物等のカチオン重合性化合物を硬化性成分として含むカチオン重合型の硬化性組成物が種々の用途で使用されている。
【0003】
このような硬化性組成物としては、例えば、芳香環含有脂環式エポキシ化合物と、芳香環含有脂環式エポキシ化合物以外のカチオン重合性化合物と、熱カチオン重合開始剤とを含むカチオン重合性の熱硬化性組成物が知られている(特許文献1を参照。)。かかる硬化性組成物を用いることにより、ガラス転移温度が高く、透明性(耐熱黄変性で着色が少ない)、及び基材密着性に優れた硬化物を形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−156522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の硬化性組成物を用いると、高いガラス転移温度を示す、熱変形の観点からの耐熱性が良好な硬化物を形成することができる。しかしながら、特許文献1に記載の硬化性組成物を用いる場合、耐熱分解性の観点からは耐熱性の良好な硬化物を、必ずしも形成できる訳ではない。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであって、耐熱性(耐熱分解性)と、基材への密着性とが良好である硬化物を形成でき、硬化性が良好である硬化性組成物と、当該硬化性組成物の硬化物からなる硬化膜と、当該硬化膜を備える表示パネル又はOLED照明と、前述の硬化性組成物を用いる硬化物の製造方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、(A)硬化性化合物と、(B)カチオン重合開始剤とを含む硬化性組成物において、(A)硬化性化合物に、芳香環を含む3環以上が縮合した縮合環を主骨格とするカチオン重合性の化合物を含有させ、且つ(B)カチオン重合開始剤として、特定の構造の含ガリウムアニオンをアニオン部として含む塩を用いることにより上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0008】
本発明の第1の態様は、(A)硬化性化合物と、(B)カチオン重合開始剤とを含み、
(A)硬化性化合物が、下記式(a1)で表される化合物を含み、
(B)カチオン重合開始剤が、カチオン部とアニオン部とからなり、アニオン部が下記式(b1)で表されるアニオンである化合物である、硬化性組成物である。
【0009】
【化1】
(式(a1)中、W及びWは、それぞれ独立に、下記式(a2):
【化2】
で表される基であり、
式(a2)中、環Zは芳香族炭化水素環を示し、Xは単結合又は−S−で示される基を示し、Rは単結合、炭素原子数が1以上4以下であるアルキレン基、又は炭素原子数が1以上4以下であるアルキレンオキシ基を示し、Rがアルキレンオキシ基である場合、アルキレンオキシ基中の酸素原子が環Zと結合し、Rは1価炭化水素基、水酸基、−OR4aで示される基、−SR4bで示される基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、カルボキシ基、アミノ基、カルバモイル基、−NHR4cで示される基、−N(R4dで示される基、スルホ基、又は1価炭化水素基、−OR4aで示される基、−SR4bで示される基、アシル基、アルコキシカルボニル基、−NHR4cで示される基、もしくは−N(R4dで示される基に含まれる炭素原子に結合した水素原子の少なくとも一部が1価炭化水素基、水酸基、−OR4aで示される基、−SR4bで示される基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、カルボキシ基、アミノ基、カルバモイル基、−NHR4cで示される基、−N(R4dで示される基、メシルオキシ基、もしくはスルホ基で置換された基を示し、R4a〜R4dは独立に1価炭化水素基を示し、mは0以上の整数を示し、Rは、水素原子、ビニル基、チイラン−2−イルメチル基、又はグリシジル基であり、
とWとの双方がRとして水素原子を有することはなく、
環Y及び環Yは同一の又は異なる芳香族炭化水素環を示し、Rは単結合、置換基を有してもよいメチレン基、置換基を有してもよく、2個の炭素原子間にヘテロ原子を含んでもよいエチレン基、−O−で示される基、−NH−で示される基、又は−S−で示される基を示し、R3a及びR3bは独立にシアノ基、ハロゲン原子、又は1価炭化水素基を示し、n1及びn2は独立に0以上4以下の整数を示す。)
【0010】
【化3】
(式(b1)中、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭化水素基、又は置換基を有してもよい複素環基であり、であり、R、R、R、及びRのうちの少なくとも1つが置換基を有してもよい芳香族炭化水素基である。)
【0011】
本発明の第2の態様は、第1の態様にかかる硬化性組成物の硬化物からなる硬化膜である。
【0012】
本発明の第3の態様は、第2の態様にかかる硬化膜を備える、画像表示装置用の表示パネル、又はOLED照明である。
【0013】
本発明の第4の態様は、
第1の態様にかかる硬化性組成物を所定の形状に成形する工程と、
成形された硬化性組成物に対して露光及び加熱の少なくとも一方を行う工程と、
を含む硬化物の製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、耐熱性(耐熱分解性)と、基材への密着性とが良好である硬化物を形成でき、硬化性が良好である硬化性組成物と、当該硬化性組成物の硬化物からなる硬化膜と、当該硬化膜を備える表示パネル又はOLED照明と、前述の硬化性組成物を用いる硬化物の製造方法とを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
≪硬化性組成物≫
硬化性組成物は、(A)硬化性化合物と、(B)カチオン重合開始剤とを含む。(A)硬化性化合物は、後述する式(a1)で表される化合物であり、芳香環を含む縮合多環式骨格を主骨格として有し、且つ、カチオン重合性基を有する。(B)カチオン重合開始剤は、後述する特定の構造を有する含ガリウムアニオンをアニオン部として含む塩である。
硬化性組成物が、上述する(A)硬化性化合物と、(B)カチオン重合開始剤とを含むことにより、耐熱性(耐熱分解性)と、基材への密着性とが良好である硬化物を形成でき、硬化性組成物の硬化性が良好である。
【0016】
以下、硬化性組成物が含む、必須、又は任意の成分について説明する。
【0017】
<(A)硬化性化合物>
(A)硬化性化合物は、下記式(a1)で表される化合物を含む。下記式(a1)で表される(A)硬化性化合物と、後述する(B)カチオン重合開始剤とを組み合わせて用いることにより、耐熱性(耐熱分解性)と、基材への密着性とが良好である硬化物を形成でき、硬化性組成物の硬化性が良好である。
【化4】
(式(a1)中、W及びWは、それぞれ独立に、下記式(a2):
【化5】
で表される基であり、
式(a2)中、環Zは芳香族炭化水素環を示し、Xは単結合又は−S−で示される基を示し、Rは単結合、炭素原子数が1以上4以下であるアルキレン基、又は炭素原子数が1以上4以下であるアルキレンオキシ基を示し、Rがアルキレンオキシ基である場合、アルキレンオキシ基中の酸素原子が環Zと結合し、Rは1価炭化水素基、水酸基、−OR4aで示される基、−SR4bで示される基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、カルボキシ基、アミノ基、カルバモイル基、−NHR4cで示される基、−N(R4dで示される基、スルホ基、又は1価炭化水素基、−OR4aで示される基、−SR4bで示される基、アシル基、アルコキシカルボニル基、−NHR4cで示される基、もしくは−N(R4dで示される基に含まれる炭素原子に結合した水素原子の少なくとも一部が1価炭化水素基、水酸基、−OR4aで示される基、−SR4bで示される基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、カルボキシ基、アミノ基、カルバモイル基、−NHR4cで示される基、−N(R4dで示される基、メシルオキシ基、もしくはスルホ基で置換された基を示し、R4a〜R4dは独立に1価炭化水素基を示し、mは0以上の整数を示し、Rは、水素原子、ビニル基、チイラン−2−イルメチル基、又はグリシジル基であり、
とWとの双方がRとして水素原子を有することはなく、
環Y及び環Yは同一の又は異なる芳香族炭化水素環を示し、Rは単結合、置換基を有してもよいメチレン基、置換基を有してもよく、2個の炭素原子間にヘテロ原子を含んでもよいエチレン基、−O−で示される基、−NH−で示される基、又は−S−で示される基を示し、R3a及びR3bは独立にシアノ基、ハロゲン原子、又は1価炭化水素基を示し、n1及びn2は独立に0以上4以下の整数を示す。)
【0018】
上記式(a2)において、環Zとしては、例えば、ベンゼン環、縮合多環式芳香族炭化水素環[例えば、縮合二環式炭化水素環(例えば、ナフタレン環等のC8−20縮合二環式炭化水素環、好ましくはC10−16縮合二環式炭化水素環)、縮合三環式芳香族炭化水素環(例えば、アントラセン環、フェナントレン環等)等の縮合2乃至4環式芳香族炭化水素環]等が挙げられる。環Zは、ベンゼン環又はナフタレン環であるのが好ましく、ナフタレン環であるのがより好ましい。なお、式(a1)中のW及びWは、それぞれ独立に、下記式(a2)で表される基であるため、W及びWは、それぞれ環Zを含む。Wに含まれる環ZとWに含まれる環Zとは、同一でも異なっていてもよく、例えば、一方の環がベンゼン環、他方の環がナフタレン環等であってもよいが、いずれの環もナフタレン環であることが特に好ましい。
【0019】
また、W及びWの両方が直結する炭素原子にXを介して結合する環Zの置換位置は、特に限定されない。例えば、環Zがナフタレン環の場合、上記炭素原子に結合する環Zに対応する基は、1−ナフチル基、2−ナフチル基等であってもよい。
【0020】
上記式(a2)において、Xは、独立に単結合又は−S−で示される基を示し、典型的には単結合である。
【0021】
上記式(a2)において、Rとしては、例えば、単結合;メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、ブタン−1,2−ジイル基等の炭素原子数が1以上4以下であるアルキレン基;メチレンオキシ基、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基等の炭素原子数が1以上4以下であるアルキレンオキシ基が挙げられ、単結合;C2−4アルキレン基(特に、エチレン基、プロピレン基等のC2−3アルキレン基);C2−4アルキレンオキシ基(特に、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基等のC2−3アルキレン基)が好ましく、単結合がより好ましい。なお、Rがアルキレンオキシ基である場合、アルキレンオキシ基中の酸素原子が環Zと結合する。また、式(a1)中のW及びWは、それぞれ独立に、下記式(a2)で表される基であるため、W及びWは、それぞれ2価の基であるRを含む。Wに含まれるRとWに含まれるRとは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0022】
上記式(a2)において、Rとしては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等のC1−12アルキル基、好ましくはC1−8アルキル基、より好ましくはC1−6アルキル基等)、シクロアルキル基(シクロヘキシル基等のC5−10シクロアルキル基、好ましくはC5−8シクロアルキル基、より好ましくはC5−6シクロアルキル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のC6−14アリール基、好ましくはC6−10アリール基、より好ましくはC6−8アリール基等)、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基等のC6−10アリール−C1−4アルキル基等)等の1価炭化水素基;水酸基;アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のC1−12アルコキシ基、好ましくはC1−8アルコキシ基、より好ましくはC1−6アルコキシ基等)、シクロアルコキシ基(シクロヘキシルオキシ基等のC5−10シクロアルコキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基等のC6−10アリールオキシ基)、アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基等のC6−10アリール−C1−4アルキルオキシ基)等の−OR4aで示される基[式中、R4aは1価炭化水素基(上記例示の1価炭化水素基等)を示す。];アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基等のC1−12アルキルチオ基、好ましくはC1−8アルキルチオ基、より好ましくはC1−6アルキルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(シクロヘキシルチオ基等のC5−10シクロアルキルチオ基等)、アリールチオ基(フェニルチオ基等のC6−10アリールチオ基)、アラルキルチオ基(例えば、ベンジルチオ基等のC6−10アリール−C1−4アルキルチオ基)等の−SR4bで示される基[式中、R4bは1価炭化水素基(上記例示の1価炭化水素基等)を示す。];アシル基(アセチル基等のC1−6アシル基等);アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基等のC1−4アルコキシ−カルボニル基等);ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等);ニトロ基;シアノ基;メルカプト基;カルボキシ基;アミノ基;カルバモイル基;アルキルアミノ基(メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基等のC1−12アルキルアミノ基、好ましくはC1−8アルキルアミノ基、より好ましくはC1−6アルキルアミノ基等)、シクロアルキルアミノ基(シクロヘキシルアミノ基等のC5−10シクロアルキルアミノ基等)、アリールアミノ基(フェニルアミノ基等のC6−10アリールアミノ基)、アラルキルアミノ基(例えば、ベンジルアミノ基等のC6−10アリール−C1−4アルキルアミノ基)等の−NHR4cで示される基[式中、R4cは1価炭化水素基(上記例示の1価炭化水素基等)を示す。];ジアルキルアミノ基(ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基等のジ(C1−12アルキル)アミノ基、好ましくはジ(C1−8アルキル)アミノ基、より好ましくはジ(C1−6アルキル)アミノ基等)、ジシクロアルキルアミノ基(ジシクロヘキシルアミノ基等のジ(C5−10シクロアルキル)アミノ基等)、ジアリールアミノ基(ジフェニルアミノ基等のジ(C6−10アリール)アミノ基)、ジアラルキルアミノ基(例えば、ジベンジルアミノ基等のジ(C6−10アリール−C1−4アルキル)アミノ基)等の−N(R4dで示される基[式中、R4dは独立に1価炭化水素基(上記例示の1価炭化水素基等)を示す。];(メタ)アクリロイルオキシ基;スルホ基;上記の1価炭化水素基、−OR4aで示される基、−SR4bで示される基、アシル基、アルコキシカルボニル基、−NHR4cで示される基、もしくは−N(R4dで示される基に含まれる炭素原子に結合した水素原子の少なくとも一部が上記の1価炭化水素基、水酸基、−OR4aで示される基、−SR4bで示される基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、カルボキシ基、アミノ基、カルバモイル基、−NHR4cで示される基、−N(R4dで示される基、(メタ)アクリロイルオキシ基、メシルオキシ基、もしくはスルホ基で置換された基[例えば、アルコキシアリール基(例えば、メトキシフェニル基等のC1−4アルコキシC6−10アリール基)、アルコキシカルボニルアリール基(例えば、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシカルボニルフェニル基等のC1−4アルコキシ−カルボニルC6−10アリール基等)]等が挙げられる。
【0023】
これらのうち、代表的には、Rは、1価炭化水素基、−OR4aで示される基、−SR4bで示される基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、−NHR4cで示される基、−N(R4dで示される基等であってもよい。
【0024】
好ましいRとしては、1価炭化水素基[例えば、アルキル基(例えば、C1−6アルキル基)、シクロアルキル基(例えば、C5−8シクロアルキル基)、アリール基(例えば、C6−10アリール基)、アラルキル基(例えば、C6−8アリール−C1−2アルキル基)等]、アルコキシ基(C1−4アルコキシ基等)等が挙げられる。特に、R2a及びR2bは、アルキル基[C1−4アルキル基(特にメチル基)等]、アリール基[例えば、C6−10アリール基(特にフェニル基)等]等の1価炭化水素基(特に、アルキル基)であるのが好ましい。
【0025】
なお、mが2以上の整数である場合、複数のRは互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。また、Wに含まれるRとWに含まれるRとは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0026】
上記式(a2)において、Rの数mは、環Zの種類に応じて選択でき、例えば、0以上4以下、好ましくは0以上3以下、より好ましくは0以上2以下であってもよい。なお、WにおけるmとWにおけるmとは、同一でも異なっていてもよい。
【0027】
上記式(a3)において、Rは、水素原子、ビニル基、チイラン−2−イルメチル基、又はグリシジル基である。なお、WとWとの双方がRとして水素原子を有することはない。
ビニルオキシ基、チイラン−2−イルメチル基、及びグリシジル基は、いずれもカチオン重合性の官能基である。従って、式(a1)で表される化合物は、1又は2のカチオン重合性の官能基を有するカチオン重合性の化合物である。
に含まれるRとWに含まれるRとは、双方が水素原子でない限りにおいて、同一であってもよく、異なっていてもよい。Wに含まれるRとWに含まれるRとは、双方が、ビニル基、チイラン−2−イルメチル基、又はグリシジル基であるのが好ましいく、双方が、ビニル基、チイラン−2−イルメチル基、及びグリシジル基からなる群より選択される同一の基であるのがより好ましい。
としては、式(a1)で表される化合物の合成や入手が容易であることから、ビニル基、又はグリシジル基が好ましい。
【0028】
上記式(a1)において、環Y及び環Yとしては、例えば、ベンゼン環、縮合多環式芳香族炭化水素環[例えば、縮合二環式炭化水素環(例えば、ナフタレン環等のC8−20縮合二環式炭化水素環、好ましくはC10−16縮合二環式炭化水素環)、縮合三環式芳香族炭化水素環(例えば、アントラセン環、フェナントレン環等)等の縮合2乃至4環式芳香族炭化水素環]等が挙げられる。環Y及び環Yは、ベンゼン環又はナフタレン環であるのが好ましく、ベンゼン環であるのがより好ましい。なお、環Y及び環Yは、同一でも異なっていてもよく、例えば、一方の環がベンゼン環、他方の環がナフタレン環等であってもよい。
【0029】
上記式(a1)において、Rは単結合、置換基を有してもよいメチレン基、置換基を有してもよく、2個の炭素原子間にヘテロ原子を含んでもよいエチレン基、−O−で示される基、−NH−で示される基、又は−S−で示される基を示し、典型的には単結合である。ここで、置換基としては、例えば、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、1価炭化水素基[例えば、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基等のC1−6アルキル基)、アリール基(フェニル基等のC6−10アリール基)等]等が挙げられ、ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、イオウ原子、珪素原子等が挙げられる。
【0030】
上記式(a1)において、R3a及びR3bとしては、通常、非反応性置換基、例えば、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、1価炭化水素基[例えば、アルキル基、アリール基(フェニル基等のC6−10アリール基)等]等が挙げられ、シアノ基又はアルキル基であることが好ましく、アルキル基であることが特に好ましい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基等のC1−6アルキル基(例えば、C1−4アルキル基、特にメチル基)等が例示できる。なお、n1が2以上の整数である場合、R3aは互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。また、n2が2以上の整数である場合、R3bは互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。さらに、R3aとR3bとが同一であってもよく、異なっていてもよい。また、環Y及び環Yに対するR3a及びR3bの結合位置(置換位置)は、特に限定されない。好ましい置換数n1及びn2は、0又は1、特に0である。なお、n1及びn2は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0031】
上記式(a1)で表される化合物は、優れた光学的特性及び熱的特性を保持しつつ、カチオン重合性の官能基を有するため、高い反応性を有する。特に、環Y及び環Yがベンゼン環であり、Rが単結合である場合、上記式(a1)で表される化合物は、フルオレン骨格を有し、光学的特性及び熱的特性にさらに優れる。
さらに、上記式(a1)で表される化合物は、高い硬度を有する硬化物を与え、組成物中の基材成分として好ましい。
【0032】
上記式(a1)で表される化合物のうち、特に好ましい具体例としては、9,9−ビス[4−[2−(グリシジルオキシ)エトキシ]フェニル]−9H−フルオレン、9,9−ビス[4−[2−(グリシジルオキシ)エチル]フェニル]−9H−フルオレン、9,9−ビス[4−(グリシジルオキシ)−3−メチルフェニル]−9H−フルオレン、9,9−ビス[4−(グリシジルオキシ)−3,5−ジメチルフェニル]−9H−フルオレン、9,9−ビス(6‐グリシジルオキシナフタレン−1−イル)−9H−フルオレン及び9,9−ビス(5‐グリシジルオキシナフタレン−2−イル)−9H−フルオレン等のエポキシ基含有フルオレン化合物;並びに下記式で表される化合物が挙げられる。
【0033】
【化6】
【0034】
【化7】
【0035】
【化8】
【0036】
【化9】
【0037】
【化10】
【0038】
【化11】
【0039】
【化12】
【0040】
【化13】
【0041】
以上説明した式(a1)で表される化合物の中では、以下の化合物が特に好ましい。
【化14】
【0042】
(A)硬化性化合物は、上記式(a1)で表される化合物以外のカチオン重合性の化合物を含んでいてもよい。(A)硬化性化合物における、上記式(a1)で表される化合物の量は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらにより好ましく、90質量%以上が特に好ましく、100質量%が最も好ましい。
【0043】
式(a1)で表される化合物以外のカチオン重合性の化合物の好ましい例としては、ビニルオキシ基を含むビニルエーテル化合物、エポキシ基を含むエポキシ化合物、及びエピスルフィド基を含むエピスルフィド化合物が挙げられる。以下、ビニルエーテル化合物、エポキシ化合物、及びエピスルフィド化合物について説明する。
【0044】
(ビニルエーテル化合物)
式(a1)で表される化合物とともに用いることができるビニルエーテル化合物は、ビニルオキシ基を有し、カチオン重合可能な化合物であれば特に限定されない。
式(a1)で表される化合物と併用されるビニルエーテル化合物は、芳香族基を含んでいてもよく、芳香族基を含んでいなくてもよい。
硬化物の耐熱分解性が良好である点からは、式(a1)で表される化合物と併用されるビニルエーテル化合物は、芳香族基に結合するビニルオキシ基を有する化合物であるのが好ましい。
【0045】
式(a1)で表される化合物とともに用いることができるビニルエーテル化合物の好適な具体例としては、ビニルフェニルエーテル、4−ビニロキシトルエン、3−ビニロキシトルエン、2−ビニロキシトルエン、1−ビニロキシ−4−クロロベンゼン、1−ビニロキシ−3−クロロベンゼン、1−ビニロキシ−2−クロロベンゼン、1−ビニロキシ−2,3−ジメチルベンゼン、1−ビニロキシ−2,4−ジメチルベンゼン、1−ビニロキシ−2,5−ジメチルベンゼン、1−ビニロキシ−2,6−ジメチルベンゼン、1−ビニロキシ−3,4−ジメチルベンゼン、1−ビニロキシ−3,5−ジメチルベンゼン、1−ビニロキシナフタレン、2−ビニロキシナフタレン、2−ビニロキシフルオレン、3−ビニロキシフルオレン、4−ビニロキシ−1,1’−ビフェニル、3−ビニロキシ−1,1’−ビフェニル、2−ビニロキシ−1,1’−ビフェニル、6−ビニロキシテトラリン、及び5−ビニロキシテトラリン等の芳香族モノビニルエーテル化合物;1,4−ジビニロキシベンゼン、1,3−ジビニロキシベンゼン、1,2−ジビニロキシベンゼン、1,4−ジビニロキシナフタレン、1,3−ジビニロキシナフタレン、1,2−ジビニロキシナフタレン、1,5−ジビニロキシナフタレン、1,6−ジビニロキシナフタレン、1,7−ジビニロキシナフタレン、1,8−ジビニロキシナフタレン、2,3−ジビニロキシナフタレン、2,6−ジビニロキシナフタレン、2,7−ジビニロキシナフタレン、1,2−ジビニロキシフルオレン、3,4−ジビニロキシフルオレン、2,7−ジビニロキシフルオレン、4,4’−ジビニロキシビフェニル、3,3’−ジビニロキシビフェニル、2,2’−ジビニロキシビフェニル、3,4’−ジビニロキシビフェニル、2,3’−ジビニロキシビフェニル、2,4’−ジビニロキシビフェニル、及びビスフェノールAジビニルエーテル等の芳香族ジビニルエーテル化合物が挙げられる。
これらの、ビニルエーテル化合物は、2種以上組み合わせて用いられてもよい。
【0046】
(エポキシ化合物)
式(a1)で表される化合物とともに用いることができるエポキシ化合物の例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、及びビフェニル型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、及びビスフェノールADノボラック型エポキシ樹脂等のノボラックエポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂のエポキシ化物等の環式脂肪族エポキシ樹脂;ナフタレン型フェノール樹脂のエポキシ化物等の芳香族エポキシ樹脂;ダイマー酸グリシジルエステル、及びトリグリシジルエステル等のグリシジルエステル型エポキシ樹脂;テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、トリグリシジル−p−アミノフェノール、テトラグリシジルメタキシリレンジアミン、及びテトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環式エポキシ樹脂;フロログリシノールトリグリシジルエーテル、トリヒドロキシビフェニルトリグリシジルエーテル、トリヒドロキシフェニルメタントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、2−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]−2−[4−[1,1−ビス[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]エチル]フェニル]プロパン、及び1,3−ビス[4−[1−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]−1−[4−[1−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチル]フェノキシ]−2−プロパノール等の3官能型エポキシ樹脂;テトラヒドロキシフェニルエタンテトラグリシジルエーテル、テトラグリシジルベンゾフェノン、ビスレゾルシノールテトラグリシジルエーテル、及びテトラグリシドキシビフェニル等の4官能型エポキシ樹脂;2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物が挙げられる。2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物は、EHPE−3150(ダイセル社製)として市販される。
【0047】
また、オリゴマー又はポリマー型の多官能エポキシ化合物も(A)硬化性化合物として、好ましく用いることができる。
典型的な例としては、フェノールノボラック型エポキシ化合物、臭素化フェノールノボラック型エポキシ化合物、オルソクレゾールノボラック型エポキシ化合物、キシレノールノボラック型エポキシ化合物、ナフトールノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールAノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールADノボラック型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂のエポキシ化物、ナフタレン型フェノール樹脂のエポキシ化物等が挙げられる。
【0048】
式(a1)で表される化合物と併用し得る、好適なエポキシ化合物の他の例として、脂環式エポキシ基を有する多官能の脂環式エポキシ化合物が挙げられる。(A)硬化性化合物が、脂環式エポキシ化合物を含む場合、硬化性組成物を用いて透明性に優れる硬化物を形成しやすい。
【0049】
かかる脂環式エポキシ化合物の具体例としては、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ε−カプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、トリメチルカプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、β−メチル−δ−バレロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、及びトリシクロデセンオキサイド基を有する多官能エポキシ化合物や、下記式(a1−1)〜(a1−5)で表される化合物が挙げられる。
これらの脂環式エポキシ化合物は単独で用いても2種以上混合して用いてもよい。
【0050】
【化15】
(式(a1−1)中、Zは単結合又は連結基(1以上の原子を有する二価の基)を示す。Ra1〜Ra18は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、及び有機基からなる群より選択される基である。)
【0051】
連結基Zとしては、例えば、2価の炭化水素基、−O−、−O−CO−、−S−、−SO−、−SO−、−CBr−、−C(CBr−、−C(CF−、及び−Ra19−O−CO−からなる群より選択される2価の基及びこれらが複数個結合した基等を挙げることができる。
【0052】
連結基Zである二価の炭化水素基としては、例えば、炭素原子数が1以上18以下である直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基、二価の脂環式炭化水素基等を挙げることができる。炭素原子数が1以上18以下である直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、ジメチレン基、トリメチレン基等を挙げることができる。上記二価の脂環式炭化水素基としては、例えば、1,2−シクロペンチレン基、1,3−シクロペンチレン基、シクロペンチリデン基、1,2−シクロヘキシレン基、1,3−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキシレン基、シクロヘキシリデン基等のシクロアルキレン基(シクロアルキリデン基を含む)等を挙げることができる。
【0053】
a19は、炭素原子数が1以上8以下であるアルキレン基であり、メチレン基又はエチレン基であるのが好ましい。
【0054】
【化16】
【0055】
(式(a1−2)中、Ra1〜Ra12は、水素原子、ハロゲン原子、及び有機基からなる群より選択される基である。)
【0056】
【化17】
(式(a1−3)中、Ra1〜Ra10は、水素原子、ハロゲン原子、及び有機基からなる群より選択される基である。Ra2及びRa8は、互いに結合してもよい。)
【0057】
【化18】
(式(a1−4)中、Ra1〜Ra12は、水素原子、ハロゲン原子、及び有機基からなる群より選択される基である。Ra2及びRa10は、互いに結合してもよい。)
【0058】
【化19】
(式(a1−5)中、Ra1〜Ra12は、水素原子、ハロゲン原子、及び有機基からなる群より選択される基である。)
【0059】
式(a1−1)〜(a1−5)中、Ra1〜Ra18が有機基である場合、有機基は本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、炭化水素基であっても、炭素原子とハロゲン原子とからなる基であっても、炭素原子及び水素原子とともにハロゲン原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ケイ素原子のようなヘテロ原子を含むような基であってもよい。ハロゲン原子の例としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、及びフッ素原子等が挙げられる。
【0060】
有機基としては、炭化水素基と、炭素原子、水素原子、及び酸素原子からなる基と、ハロゲン化炭化水素基と、炭素原子、酸素原子、及びハロゲン原子からなる基と、炭素原子、水素原子、酸素原子、及びハロゲン原子からなる基とが好ましい。有機基が炭化水素基である場合、炭化水素基は、芳香族炭化水素基でも、脂肪族炭化水素基でも、芳香族骨格と脂肪族骨格とを含む基でもよい。有機基の炭素原子数は1以上20以下が好ましく、1以上10以下がより好ましく、1以上5以下が特に好ましい。
【0061】
炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、及びn−イコシル基等の鎖状アルキル基;ビニル基、1−プロペニル基、2−n−プロペニル基(アリル基)、1−n−ブテニル基、2−n−ブテニル基、及び3−n−ブテニル基等の鎖状アルケニル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びシクロヘプチル基等のシクロアルキル基;フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基、ビフェニル−4−イル基、ビフェニル−3−イル基、ビフェニル−2−イル基、アントリル基、及びフェナントリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、α−ナフチルメチル基、β−ナフチルメチル基、α−ナフチルエチル基、及びβ−ナフチルエチル基等のアラルキル基が挙げられる。
【0062】
ハロゲン化炭化水素基の具体例は、クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、ブロモメチル基、ジブロモメチル基、トリブロモメチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、及びパーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロヘプチル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロノニル基、及びパーフルオロデシル基等のハロゲン化鎖状アルキル基;2−クロロシクロヘキシル基、3−クロロシクロヘキシル基、4−クロロシクロヘキシル基、2,4−ジクロロシクロヘキシル基、2−ブロモシクロヘキシル基、3−ブロモシクロヘキシル基、及び4−ブロモシクロヘキシル基等のハロゲン化シクロアルキル基;2−クロロフェニル基、3−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基、2,3−ジクロロフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基、2,5−ジクロロフェニル基、2,6−ジクロロフェニル基、3,4−ジクロロフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、2−ブロモフェニル基、3−ブロモフェニル基、4−ブロモフェニル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基等のハロゲン化アリール基;2−クロロフェニルメチル基、3−クロロフェニルメチル基、4−クロロフェニルメチル基、2−ブロモフェニルメチル基、3−ブロモフェニルメチル基、4−ブロモフェニルメチル基、2−フルオロフェニルメチル基、3−フルオロフェニルメチル基、4−フルオロフェニルメチル基等のハロゲン化アラルキル基である。
【0063】
炭素原子、水素原子、及び酸素原子からなる基の具体例は、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシ−n−プロピル基、及び4−ヒドロキシ−n−ブチル基等のヒドロキシ鎖状アルキル基;2−ヒドロキシシクロヘキシル基、3−ヒドロキシシクロヘキシル基、及び4−ヒドロキシシクロヘキシル基等のハロゲン化シクロアルキル基;2−ヒドロキシフェニル基、3−ヒドロキシフェニル基、4−ヒドロキシフェニル基、2,3−ジヒドロキシフェニル基、2,4−ジヒドロキシフェニル基、2,5−ジヒドロキシフェニル基、2,6−ジヒドロキシフェニル基、3,4−ジヒドロキシフェニル基、及び3,5−ジヒドロキシフェニル基等のヒドロキシアリール基;2−ヒドロキシフェニルメチル基、3−ヒドロキシフェニルメチル基、及び4−ヒドロキシフェニルメチル基等のヒドロキシアラルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、n−トリデシルオキシ基、n−テトラデシルオキシ基、n−ペンタデシルオキシ基、n−ヘキサデシルオキシ基、n−ヘプタデシルオキシ基、n−オクタデシルオキシ基、n−ノナデシルオキシ基、及びn−イコシルオキシ基等の鎖状アルコキシ基;ビニルオキシ基、1−プロペニルオキシ基、2−n−プロペニルオキシ基(アリルオキシ基)、1−n−ブテニルオキシ基、2−n−ブテニルオキシ基、及び3−n−ブテニルオキシ基等の鎖状アルケニルオキシ基;フェノキシ基、o−トリルオキシ基、m−トリルオキシ基、p−トリルオキシ基、α−ナフチルオキシ基、β−ナフチルオキシ基、ビフェニル−4−イルオキシ基、ビフェニル−3−イルオキシ基、ビフェニル−2−イルオキシ基、アントリルオキシ基、及びフェナントリルオキシ基等のアリールオキシ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基、α−ナフチルメチルオキシ基、β−ナフチルメチルオキシ基、α−ナフチルエチルオキシ基、及びβ−ナフチルエチルオキシ基等のアラルキルオキシ基;メトキシメチル基、エトキシメチル基、n−プロポキシメチル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基、2−n−プロポキシエチル基、3−メトキシ−n−プロピル基、3−エトキシ−n−プロピル基、3−n−プロポキシ−n−プロピル基、4−メトキシ−n−ブチル基、4−エトキシ−n−ブチル基、及び4−n−プロポキシ−n−ブチル基等のアルコキシアルキル基;メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基、n−プロポキシメトキシ基、2−メトキシエトキシ基、2−エトキシエトキシ基、2−n−プロポキシエトキシ基、3−メトキシ−n−プロポキシ基、3−エトキシ−n−プロポキシ基、3−n−プロポキシ−n−プロポキシ基、4−メトキシ−n−ブチルオキシ基、4−エトキシ−n−ブチルオキシ基、及び4−n−プロポキシ−n−ブチルオキシ基等のアルコキシアルコキシ基;2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、及び4−メトキシフェニル基等のアルコキシアリール基;2−メトキシフェノキシ基、3−メトキシフェノキシ基、及び4−メトキシフェノキシ基等のアルコキシアリールオキシ基;ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、及びデカノイル基等の脂肪族アシル基;ベンゾイル基、α−ナフトイル基、及びβ−ナフトイル基等の芳香族アシル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、n−ブチルオキシカルボニル基、n−ペンチルオキシカルボニル基、n−ヘキシルカルボニル基、n−ヘプチルオキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、n−ノニルオキシカルボニル基、及びn−デシルオキシカルボニル基等の鎖状アルキルオキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基、α−ナフトキシカルボニル基、及びβ−ナフトキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基;ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ブタノイルオキシ基、ペンタノイルオキシ基、ヘキサノイルオキシ基、ヘプタノイルオキシ基、オクタノイルオキシ基、ノナノイルオキシ基、及びデカノイルオキシ基等の脂肪族アシルオキシ基;ベンゾイルオキシ基、α−ナフトイルオキシ基、及びβ−ナフトイルオキシ基等の芳香族アシルオキシ基である。
【0064】
a1〜Ra18は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数が1以上5以下であるアルキル基、及び炭素原子数が1以上5以下であるアルコキシ基からなる群より選択される基が好ましく、特に機械的特性に優れる硬化膜を形成しやすいことから、Ra1〜Ra18が全て水素原子であるのがより好ましい。
【0065】
式(a1−2)〜(a1−5)中、Ra1〜Ra12は、式(a1−1)におけるRa1〜Ra12と同様である。式(a1−2)及び式(a1−4)において、Ra2及びRa10が、互いに結合する場合に形成される2価の基としては、例えば、−CH−、−C(CH−が挙げられる。式(a1−3)において、Ra2及びRa8が、互いに結合する場合に形成される2価の基としては、例えば、−CH−、−C(CH−が挙げられる。
【0066】
式(a1−1)で表される脂環式エポキシ化合物のうち、好適な化合物の具体例としては、下記式(a1−1a)、式(a1−1b)、及び式(a1−1c)で表される脂環式エポキシ化合物や、2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキサン−1−イル)プロパン[=2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロパン]等を挙げることができる。
【化20】
【0067】
式(a1−2)で表される脂環式エポキシ化合物のうち、好適な化合物の具体例としては、下記式(a1−2a)で表されるビシクロノナジエンジエポキシド、又はジシクロノナジエンジエポキシド等が挙げられる。
【化21】
【0068】
式(a1−3)で表される脂環式エポキシ化合物のうち、好適な化合物の具体例としては、Sスピロ[3−オキサトリシクロ[3.2.1.02,4]オクタン−6,2’−オキシラン]等が挙げられる。
【0069】
式(a1−4)で表される脂環式エポキシ化合物のうち、好適な化合物の具体例としては、4−ビニルシクロヘキセンジオキシド、ジペンテンジオキシド、リモネンジオキシド、1−メチル−4−(3−メチルオキシラン−2−イル)−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン等が挙げられる。
【0070】
式(a1−5)で表される脂環式エポキシ化合物のうち、好適な化合物の具体例としては、1,2,5,6−ジエポキシシクロオクタン等が挙げられる。
【0071】
さらに、下記式(a1−I)で表される化合物を(A)硬化性化合物として好適に使用し得る。
【化22】
(式(a1−I)中、Xa1、Xa2、及びXa3は、それぞれ独立に、水素原子、又はエポキシ基を含んでいてもよい有機基であり、Xa1、Xa2、及びXa3が有するエポキシ基の総数が2以上である。)
【0072】
上記式(a1−I)で表される化合物としては、下記式(a1−II)で表される化合物が好ましい。
【化23】
(式(a1−II)中、Ra20〜Ra22は、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキレン基、アリーレン基、−O−、−C(=O)−、−NH−及びこれらの組み合わせからなる基であり、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。E〜Eは、エポキシ基、オキセタニル基、エチレン性不飽和基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、チオール基、カルボキシ基、水酸基及びコハク酸無水物基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基又は水素原子である。ただし、E〜Eのうち少なくとも2つは、エポキシ基及びオキセタニル基からなる群より選択される少なくとも1種である。)
【0073】
式(a1−II)中、Ra20とE、Ra21とE、及びRa22とEで示される基は、例えば、少なくとも2つが、それぞれ、下記式(a1−IIa)で表される基であることが好ましく、いずれもが、それぞれ、下記式(a1−IIa)で表される基であることがより好ましい。1つの化合物に結合する複数の式(a1−IIa)で表される基は、同じ基であることが好ましい。
−L−C (a1−IIa)
(式(a1−IIa)中、Lは直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキレン基、アリーレン基、−O−、−C(=O)−、−NH−及びこれらの組み合わせからなる基であり、Cはエポキシ基である。式(a1−IIa)中、LとCとが結合して環状構造を形成していてもよい。)
【0074】
式(a1−IIa)中、Lとしての直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキレン基としては、炭素原子数1以上10以下であるアルキレン基が好ましく、また、Lとしてのアリーレン基としては、炭素原子数5以上10以下であるアリーレン基が好ましい。式(a1−IIa)中、Lは、直鎖状の炭素原子数が1以上3以下であるアルキレン基、フェニレン基、−O−、−C(=O)−、−NH−及びこれらの組み合わせからなる基であることが好ましく、メチレン基等の直鎖状の炭素原子数が1以上3以下であるアルキレン基及びフェニレン基の少なくとも1種、又は、これらと、−O−、−C(=O)−及びNH−の少なくとも1種との組み合わせからなる基が好ましい。
【0075】
式(a1−IIa)中、LとCとが結合して環状構造を形成している場合としては、例えば、分岐鎖状のアルキレン基とエポキシ基とが結合して環状構造(脂環構造のエポキシ基を有する構造)を形成している場合、下記式(a1−IIb)又は(a1−IIc)で表される有機基が挙げられる。
【化24】
(式(a1−IIb)中、Ra23は、水素原子又はメチル基である。)
【0076】
以下、式(a1−II)で表される化合物の例としてオキシラニル基、又は脂環式エポキシ基を有するエポキシ化合物の例を示すが、これらに限定されるものではない。
【化25】
【0077】
また、式(a1−I)で表される化合物と併用し得るエポキシ化合物として好適に使用し得る化合物としては、分子内に2以上のグリシジル基を有するシロキサン化合物(以下、単に「シロキサン化合物」とも記す。)を挙げることができる。
【0078】
シロキサン化合物は、シロキサン結合(Si−O−Si)により構成されたシロキサン骨格と、2以上のグリシジル基とを分子内に有する化合物である。
シロキサン化合物におけるシロキサン骨格としては、例えば、環状シロキサン骨格やかご型やラダー型のポリシルセスキオキサン骨格を挙げることができる。
【0079】
シロキサン化合物としては、なかでも、下記式(a1−III)で表される環状シロキサン骨格を有する化合物(以下、「環状シロキサン」という場合がある)が好ましい。
【化26】
【0080】
式(a1−III)中、Ra24、及びRa25は、グリシジル基を含有する一価の基又はアルキル基を示す。ただし、式(a1−III)で表される化合物におけるx1個のRa24及びx1個のRa25のうち、少なくとも2個はグリシジル基を含有する一価の基である。また、式(a1−III)中のx1は3以上の整数を示す。尚、式(a1−III)で表される化合物におけるRa24、Ra25は同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、複数のRa24は同一であってもよいし、異なっていてもよい。複数のRa25も同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0081】
上記グリシジル基を含有する一価の基としては、−D−O−Ra26で表されるグリシジルエーテル基[Dはアルキレン基を示し、Ra26はグリシジル基を示す]が好ましい。上記D(アルキレン基)としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、ジメチレン基、トリメチレン基等の炭素原子数が1以上18以下である直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基等を挙げることができる。
【0082】
上記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等の炭素原子数が1以上18以下である(好ましくは炭素原子数1以上6以下、特に好ましくは炭素原子数1以上3以下)直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を挙げることができる。
【0083】
式(a1−III)中のx1は3以上の整数を示し、なかでも、硬化膜を形成する際の架橋反応性に優れる点で3以上6以下の整数が好ましい。
【0084】
シロキサン化合物が分子内に有するグリシジル基の数は2個以上であり、硬化膜を形成する際の架橋反応性に優れる点から2個以上6個以下が好ましく、特に好ましくは2個以上4個以下である。
【0085】
硬化性組成物は、式(a1−III)で表されるシロキサン化合物以外にも、脂環式エポキシ基含有環状シロキサン、特開2008−248169号公報に記載の脂環式エポキシ基含有シリコーン樹脂、及び特開2008−19422号公報に記載の1分子中に少なくとも2個のエポキシ官能性基を有するオルガノポリシルセスキオキサン樹脂等のシロキサン骨格を有する化合物を含有していてもよい。
【0086】
シロキサン化合物としては、より具体的には、下記式で表される、分子内に2以上のグリシジル基を有する環状シロキサン等を挙げることができる。また、シロキサン化合物としては、例えば、商品名「X−40−2670」、「X−40−2701」、「X−40−2728」、「X−40−2738」、「X−40−2740」(以上、信越化学工業社製)等の市販品を用いることができる。
【0087】
【化27】
【0088】
(エピスルフィド化合物)
エピスルフィド化合物の種類は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されない。好ましいエピスルフィド化合物としては、前述のエポキシ化合物について、エポキシ基中の酸素原子を硫黄原子に置換した化合物が挙げられる。
【0089】
硬化性組成物における(A)硬化性化合物の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。硬化性組成物における(A)硬化性化合物の含有量は、硬化性組成物の固形分全体を100質量部としたときに、60質量部以上99.9質量部以下が好ましく、75質量部以上99.5質量部以下がより好ましく、90質量部以上99質量部以下が特に好ましい。
【0090】
<(B)カチオン重合開始剤>
硬化性組成物は、(A)硬化性化合物を硬化させる成分として、(B)カチオン重合開始剤を含む。(B)カチオン重合開始剤は、カチオン部とアニオン部とからなり、アニオン部が下記式(b1)で表されるアニオンである化合物である。
【化28】
(式(b1)中、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭化水素基、又は置換基を有してもよい複素環基であり、R、R、R、及びRのうちの少なくとも1つが置換基を有してもよい芳香族炭化水素基である。)
【0091】
(B)カチオン重合開始剤について、カチオン部である、上記式(b1)で表されるアニオンに対する対カチオンは、硬化性組成物が良好に硬化する限りにおいて特に限定されない。対カチオンとしては、下記式(b2):
(Rt+1−R6+・・・(b2)
(式(b2)中、Rは、1価の有機基である。Rは、原子価tの15族〜17族(IUPAC表記)の元素である。tは1以上3以下の整数である。複数のRは同一でも異なっていてもよく、複数のRが結合してRとともに環を形成してもよい。)
【0092】
式(b1)中のR〜Rとしての炭化水素基又は複素環基の炭素原子数は特に限定されないが、1以上50以下が好ましく、1以上30以下がより好ましく、1以上20以下が特に好まししい。
〜Rとしての炭化水素基の具体例としては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、直鎖状又は分岐鎖状のアルケニル基、直鎖状又は分岐鎖状のアルキニル基、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基、及びアラルキル基等が挙げられる。
前述の通り、R〜Rのうちの少なくとも1つは置換基を有してもよい芳香族基であり、R〜Rの3つ以上が置換基を有してもよい芳香族基であるのがより好ましく、R〜Rの全てが置換基を有してもよい芳香族基であるのが特に好ましい。
【0093】
〜Rとしての炭化水素基、又は複素環基が有していてもよい置換基としては、炭素原子数1以上18以下のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3以上18以下のハロゲン化脂肪族環式基、ニトロ基、水酸基、シアノ基、炭素原子数1以上18以下のアルコキシ基、炭素原子数6以上14以下のアリールオキシ基、炭素原子数2以上19以下の脂肪族アシル基、炭素原子数7以上15以下の芳香族アシル基、炭素原子数2以上19以下の脂肪族アシルオキシ基、炭素原子数7以上15以下の芳香族アシルオキシ基、炭素原子数1以上18以下のアルキルチオ基、炭素原子数6以上14以下のアリールチオ基、窒素原子に結合する1又は2の水素原子が炭素原子数1以上18以下の炭化水素基で置換されていてもよいアミノ基、及びハロゲン原子が挙げられる。
〜Rとしての炭化水素基が芳香族炭化水素基である場合、当該芳香族炭化水素基は、炭素原子数1以上18以下のアルキル基、炭素原子数2以上18以下のアルケニル基、及び炭素原子数2以上18以下のアルキニル基からなる群から選択される1以上の置換基で置換されていてもよい。
【0094】
〜Rとしての炭化水素基が置換基を有する場合、置換基の数は特に限定されず,1であっても2以上の複数であってもよい。置換基の数が複数である場合、当該複数の置換基は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0095】
〜Rがアルキル基である場合の好適な具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、及びn−イコシル基等の直鎖アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、及び1,1,3,3−テトラメチルブチル基等の分岐鎖アルキル基が挙げられる。
【0096】
〜Rがアルケニル基、又はアルキニル基である場合の好適な例としては、アルキル基として好適な上記の基に対応するアルケニル基、及びアルキニル基が挙げられる。
【0097】
〜Rが芳香炭化水素基である場合の好適な例としては、フェニル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基、ビフェニル−4−イル基、ビフェニル−3−イル基、ビフェニル−2−イル基、アントリル基、及びフェナントリル基等が挙げられる。
【0098】
〜Rが脂環式炭化水素基である場合の好適な例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、及びシクロデシル基等のシクロアルキル基;ノルボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基、及びピナニル基等の架橋式脂肪族環式炭化水素基が挙げられる。
【0099】
〜Rがアラルキル基である場合の好適な例としては、ベンジル基、フェネチル基、α−ナフチルメチル基、β−ナフチルメチル基、α−ナフチルエチル基、及びβ−ナフチルエチル基等が挙げられる。
【0100】
〜Rが複素環基である場合の好適な例としては、チエニル基、フラニル基、セレノフェニル基、ピラニル基、ピロリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジニル基、インドリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、アクリジニル基、フェノチアジニル基、フェナジニル基、キサンテニル基、チアントレニル基、フェノキサジニル基、フェノキサチイニル基、クロマニル基、イソクロマニル基、ジベンゾチエニル基、キサントニル基、チオキサントニル基、及びジベンゾフラニル基等が挙げられる。
【0101】
〜Rとしての炭化水素基、又は複素環基が有していてもよい置換基がハロゲン化アルキル基である場合、ハロゲン化アルキル基の好ましい例としては、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、ペンタフルオロエチル基、2,2,2−トリクロロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、1,1−ジフルオロエチル基、ヘプタフルオロ−n−プロピル基、1,1−ジフルオロ−n−プロピル基、3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル基、ノナフルオロ−n−ブチル基、3,3,4,4,4−ペンタフルオロ−n−ブチル基、パーフルオロ−n−ペンチル基、及びパーフルオロ−n−オクチル基等の直鎖ハロゲン化アルキル基;ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘキサクロロイソプロピル基、ヘキサフルオロイソブチル基、及びノナフルオロ−tert−ブチル基等の分岐鎖ハロゲン化アルキル基が挙げられる。
【0102】
〜Rとしての炭化水素基、又は複素環基が有していてもよい置換基がハロゲン化脂肪族環式基である場合、ハロゲン化脂肪族環式基の好ましい例としては、ペンタフルオロシクロプロピル基、ノナフルオロシクロブチル基、パーフルオロシクロペンチル基、パーフルオロシクロヘキシル基、及びパーフルオロアダマンチル基等が挙げられる。
【0103】
〜Rとしての炭化水素基、又は複素環基が有していてもよい置換基がアルコキシ基である場合、アルコキシ基の好ましい例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、n−トリデシルオキシ基、n−テトラデシルオキシ基、n−ペンタデシルオキシ基、n−ヘキサデシルオキシ基、n−ヘプタデシルオキシ基、及びn−オクタデシルオキシ基等の直鎖アルコキシ基;イソプロピルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、tert−ペンチルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、及び1,1,3,3−テトラメチルブチルオキシ基等の分岐鎖アルコキシ基が挙げられる。
【0104】
〜Rとしての炭化水素基、又は複素環基が有していてもよい置換基がアリールオキシ基である場合、アリールオキシ基の好ましい例としては、フェノキシ基、α−ナフチルオキシ基、β−ナフチルオキシ基、ビフェニル−4−イルオキシ基、ビフェニル−3−イルオキシ基、ビフェニル−2−イルオキシ基、アントリルオキシ基、及びフェナントリルオキシ基等が挙げられる。
【0105】
〜Rとしての炭化水素基、又は複素環基が有していてもよい置換基が脂肪族アシル基である場合、脂肪族アシル基の好ましい例としては、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、及びオクタノイル基等が挙げられる。
【0106】
〜Rとしての炭化水素基、又は複素環基が有していてもよい置換基が脂肪族アシル基である場合、脂肪族アシル基の好ましい例としては、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、及びオクタノイル基等が挙げられる。
【0107】
〜Rとしての炭化水素基、又は複素環基が有していてもよい置換基が芳香族アシル基である場合、芳香族アシル基の好ましい例としては、ベンゾイル基、α−ナフトイル基、β−ナフトイル基、ビフェニル−4−イルカルボニル基、ビフェニル−3−イルカルボニル基、ビフェニル−2−イルカルボニル基、アントリルカルボニル基、及びフェナントリルカルボニル基等が挙げられる。
【0108】
〜Rとしての炭化水素基、又は複素環基が有していてもよい置換基が脂肪族アシルオキシ基である場合、脂肪族アシルオキシ基の好ましい例としては、アセチルオキシ基、プロパノイルオキシ基、ブタノイルオキシ基、ペンタノイルオキシ基、ヘキサノイルオキシ基、ヘプタノイルオキシ基、及びオクタノイルオキシ基等が挙げられる。
【0109】
〜Rとしての炭化水素基、又は複素環基が有していてもよい置換基が芳香族アシルオキシ基である場合、芳香族アシルオキシ基の好ましい例としては、ベンゾイルオキシ基、α−ナフトイルオキシ基、β−ナフトイルオキシ基、ビフェニル−4−イルカルボニルオキシ基、ビフェニル−3−イルカルボニルオキシ基、ビフェニル−2−イルカルボニルオキシ基、アントリルカルボニルオキシ基、及びフェナントリルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0110】
〜Rとしての炭化水素基、又は複素環基が有していてもよい置換基がアルキルチオ基、又はアリールチオ基である場合、アルキルチオ基、又はアリールチオ基の好ましい例としては、前述のアルコキシ基、又はアリールオキシ基として好適な基における酸素原子を硫黄原子に置換した基が挙げられる。
【0111】
〜Rとしての炭化水素基、又は複素環基が有していてもよい置換基が炭化水素基で置換されていてもよいアミノ基である場合、炭化水素基で置換されていてもよいアミノ基の好適な例としては、アミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、ジ−n−プロピルアミノ基、及びピペリジノ基等が挙げられる。
【0112】
〜Rとしての炭化水素基、又は複素環基が有していてもよい置換基がハロゲン原子である場合、ハロゲン原子の好適な例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子等が挙げられる。
【0113】
以上説明した、R〜Rとしての炭化水素基、又は複素環基が有していてもよい置換基の中では、(B)カチオン重合開始剤の開始剤としての活性が高い点で、炭素原子数1以上8以下のハロゲン化アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、及びシアノ基が好ましく、炭素原子数1以上8以下のフッ素化アルキル基がより好ましい。
【0114】
式(b2)中のRはRに結合している有機基を表す。同一であっても異なってもよい。Rとしては、炭素原子数6以上14以下の芳香族炭化水素基、炭素原子数1以上18以下のアルキル基、炭素原子数2以上18以下のアルケニル基、及び炭素原子数2以上18以下のアルキニル基が挙げられる。
芳香族炭化水素基は、さらに炭素原子数1以上18以下のアルキル基、炭素原子数2以上18以下のアルケニル基、炭素原子数2以上18以下のアルキニル基、炭素原子数6以上14以下のアリール基、ニトロ基、水酸基、シアノ基、炭素原子数1以上18以下のアルコキシ基、炭素原子数6以上14以下のアリールオキシ基、炭素原子数2以上19以下の脂肪族アシル基、炭素原子数7以上15以下の芳香族アシル基、炭素原子数2以上19以下の脂肪族アシルオキシ基、炭素原子数7以上15以下の芳香族アシルオキシ基、炭素原子数1以上18以下のアルキルチオ基、炭素原子数6以上14以下のアリールチオ基、窒素原子に結合する1又は2の水素原子が炭素原子数1以上18以下の炭化水素基で置換されていてもよいアミノ基、及びハロゲン原子で置換されていてもよい。
これらの置換基の好適な例は、式(b1)中のR〜Rとしての炭化水素基、又は複素環基が有していてもよい置換基の好適な例と同様である。
【0115】
式(b2)において、Rが複数存在する場合、複数のRはRとともに環を形成してもよい。複数のRと、Rとが形成する環は、その間構造中に、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−NH−、−CO−、−COO−、及び−CONH−からなる群より選択される以上の結合を含んでいてもよい。
【0116】
(B)カチオン重合開始剤におけるカチオン部としては、前述の式(b2)で表されるカチオンが好ましい。式(b2)中のRは、原子価tの15族〜17族(IUPAC表記)の元素である。tは1以上3以下の整数である。
は、有機基Rと結合してオニウムイオン[R6+]を形成する。15族〜17族の元素のうち好ましいのは、O(酸素)、N(窒素)、P(リン)、S(硫黄)、又はI(ヨウ素)である。対応するオニウムイオンとしては、オキソニウムイオン、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、スルホニウムイオン、及びヨードニウムイオンである。中でも、安定で取り扱いが容易な、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、スルホニウムイオン、及びヨードニウムイオンが好ましく、カチオン重合性能や架橋反応性能に優れる点で、スルホニウムイオン、及びヨードニウムイオンがより好ましい。
【0117】
オキソニウムイオンの具体例としては、トリメチルオキソニウム、ジエチルメチルオキソニウム、トリエチルオキソニウム、テトラメチレンメチルオキソニウム等のオキソニウム;4−メチルピリリニウム、2,4,6−トリメチルピリリニウム、2,6−ジ−tert−ブチルピリリニウム、2,6−ジフェニルピリリニウム等のピリリニウム;2,4−ジメチルクロメニウム、1,3−ジメチルイソクロメニウム等のクロメニウム、及びイソクロメニウムが挙げられる。
【0118】
アンモニウムイオンの具体例としては、テトラメチルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、ジエチルジメチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、及びテトラエチルアンモニウム等テトラアルキルアンモニウム;N,N−ジメチルピロリジニウム、N−エチル−N−メチルピロリジニウム、及びN,N−ジエチルピロリジニウム等のピロリジニウム;N,N’−ジメチルイミダゾリニウム、N,N’−ジエチルイミダゾリニウム、N−エチル−N’−メチルイミダゾリニウム、1,3,4−トリメチルイミダゾリニウム、及び1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム等のイミダゾリニウム;N,N’−ジメチルテトラヒドロピリミジニウム等のテトラヒドロピリミジニウム;N,N’−ジメチルモルホリニウム等のモルホリニウム;N,N’−ジエチルピペリジニウム等のピペリジニウム;N−メチルピリジニウム、N−ベンジルピリジニウム、及びN−フェナシルピリジウム等のピリジニウム;N,N’−ジメチルイミダゾリウム等のイミダゾリウム;N−メチルキノリウム、N−ベンジルキノリウム、及びN−フェナシルキノリウム等のキノリウム;N−メチルイソキノリウム等のイソキノリウム;ベンジルベンゾチアゾニウム、及びフェナシルベンゾチアゾニウム等のチアゾニウム;ベンジルアクリジウム、及びフェナシルアクリジウム等のアクリジウムが挙げられる。
【0119】
ホスホニウムイオンの具体例としては、テトラフェニルホスホニウム、テトラ−p−トリルホスホニウム、テトラキス(2−メトキシフェニル)ホスホニウム、テトラキス(3−メトキシフェニル)ホスホニウム、及びテトラキス(4−メトキシフェニル)ホスホニウム等のテトラアリールホスホニウム;トリフェニルベンジルホスホニウム、トリフェニルフェナシルホスホニウム、トリフェニルメチルホスホニウム、及びトリフェニルブチルホスホニウム等のトリアリールホスホニウム;トリエチルベンジルホスホニウム、トリブチルベンジルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム、テトラヘキシルホスホニウム、トリエチルフェナシルホスホニウム、及びトリブチルフェナシルホスホニウム等のテトラアルキルホスホニウム等が挙げられる。
【0120】
スルホニウムイオンの具体例としては、トリフェニルスルホニウム、トリ−p−トリルスルホニウム、トリ−o−トリルスルホニウム、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウム、1−ナフチルジフェニルスルホニウム、2−ナフチルジフェニルスルホニウム、トリス(4−フルオロフェニル)スルホニウム、トリ−1−ナフチルスルホニウム、トリ−2−ナフチルスルホニウム、トリス(4−ヒドロキシフェニル)スルホニウム、4−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、4−(p−トリルチオ)フェニルジ−p−トリルスルホニウム、4−(4−メトキシフェニルチオ)フェニルビス(4−メトキシフェニル)スルホニウム、4−(フェニルチオ)フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウム、4−(フェニルチオ)フェニルビス(4−メトキシフェニル)スルホニウム、4−(フェニルチオ)フェニルジ−p−トリルスルホニウム、[4−(4−ビフェニリルチオ)フェニル]−4−ビフェニリルフェニルスルホニウム、[4−(2−チオキサントニルチオ)フェニル]ジフェニルスルホニウム、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド、ビス〔4−{ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホニオ}フェニル〕スルフィド、ビス{4−[ビス(4−フルオロフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド、ビス{4−[ビス(4−メチルフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド、ビス{4−[ビス(4−メトキシフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド、4−(4−ベンゾイル−2−クロロフェニルチオ)フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウム、4−(4−ベンゾイル−2−クロロフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、4−(4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウム、4−(4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、7−イソプロピル−9−オキソ−10−チア−9,10−ジヒドロアントラセン−2−イルジ−p−トリルスルホニウム、7−イソプロピル−9−オキソ−10−チア−9,10−ジヒドロアントラセン−2−イルジフェニルスルホニウム、2−[(ジ−p−トリル)スルホニオ]チオキサントン、2−[(ジフェニル)スルホニオ]チオキサントン、4−(9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イル)チオフェニル−9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イルフェニルスルホニウム、4−[4−(4−tert−ブチルベンゾイル)フェニルチオ]フェニルジ−p−トリルスルホニウム、4−[4−(4−tert−ブチルベンゾイル)フェニルチオ]フェニルジフェニルスルホニウム、4−[4−(ベンゾイルフェニルチオ)]フェニルジ−p−トリルスルホニウム、4−[4−(ベンゾイルフェニルチオ)]フェニルジフェニルスルホニウム、5−(4−メトキシフェニル)チアアンスレニウム、5−フェニルチアアンスレニウム、5−トリルチアアンスレニウム、5−(4−エトキシフェニル)チアアンスレニウム、及び5−(2,4,6−トリメチルフェニル)チアアンスレニウム等のトリアリールスルホニウム;ジフェニルフェナシルスルホニウム、ジフェニル4−ニトロフェナシルスルホニウム、ジフェニルベンジルスルホニウム、及びジフェニルメチルスルホニウム等のジアリールスルホニウム;フェニルメチルベンジルスルホニウム、4−ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウム、4−メトキシフェニルメチルベンジルスルホニウム、4−アセトカルボニルオキシフェニルメチルベンジルスルホニウム、4−ヒドロキシフェニル(2−ナフチルメチル)メチルスルホニウム、2−ナフチルメチルベンジルスルホニウム、2−ナフチルメチル(1−エトキシカルボニル)エチルスルホニウム、フェニルメチルフェナシルスルホニウム、4−ヒドロキシフェニルメチルフェナシルスルホニウム、4−メトキシフェニルメチルフェナシルスルホニウム、4−アセトカルボニルオキシフェニルメチルフェナシルスルホニウム、2−ナフチルメチルフェナシルスルホニウム、2−ナフチルオクタデシルフェナシルスルホニウム、及び9−アントラセニルメチルフェナシルスルホニウム等のモノアリールスルホニウム;ジメチルフェナシルスルホニウム、フェナシルテトラヒドロチオフェニウム、ジメチルベンジルスルホニウム、ベンジルテトラヒドロチオフェニウム、及びオクタデシルメチルフェナシルスルホニウム等のトリアルキルスルホニウム等が挙げられる。
【0121】
また、(B)カチオン重合開始剤は、上記式(b1)で表されるアニオンであるアニオン部と、後述する式(c1)で表されるスルホニウムイオンであるカチオン部とからなるスルホニウム塩を含むのも好ましい。
【0122】
ヨードニウムイオンの具体例としては、ジフェニルヨードニウム、ジ−p−トリルヨードニウム、ビス(4−ドデシルフェニル)ヨードニウム、ビス(4−メトキシフェニル)ヨードニウム、(4−オクチルオキシフェニル)フェニルヨードニウム、ビス(4−デシルオキシ)フェニルヨードニウム、4−(2−ヒドロキシテトラデシルオキシ)フェニルフェニルヨードニウム、4−イソプロピルフェニル(p−トリル)ヨードニウム、及び4−イソブチルフェニル(p−トリル)ヨードニウム等のヨードニウムイオンが挙げられる。
【0123】
以上説明した式(b1)で表されるアニオンの好適な具体例としては、
テトラキス(4−ノナフルオロビフェニル)ガレートアニオン、
テトラキス(1−ヘプタフルオロナフチル)ガレートアニオン、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガレートアニオン、
テトラキス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ガレートアニオン、
テトラキス(2−ノナフェニルビフェニル)ガレートアニオン、
テトラキス(2−ヘプタフルオロナフチル)ガレートアニオン、
テトラキス(7−ノナフルオロアントリル)ガレートアニオン、
テトラキス(4’−(メトキシ)オクタフルオロビフェニル)ガレートアニオン、
テトラキス(2,4,6−トリス(トリフルオロメチル)フェニル)ガレートアニオン、
テトラキス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ガレートアニオン、
テトラキス(2,3−ビス(ペンタフルオロエチル)ナフチル)ガレートアニオン、
テトラキス(2−イソプロポキシ−ヘキサフルオロナフチル)ガレートアニオン、
テトラキス(9,10−ビス(ヘプタフルオロプロピル)ヘプタフルオロアントリル)ガレートアニオン、
テトラキス(9−ノナフルオロフェナントリル)ガレートアニオン、
テトラキス(4−[トリ(イソプロピル)シリル]−テトラフルオロフェニル)ガレートアニオン、
テトラキス(9,10−ビス(p−トリル)−ヘプタフルオロフェナントリル)ガレートアニオン、
テトラキス(4−[ジメチル(t−ブチル)シリル]−テトラフルオロフェニル)ガレートアニオン、
モノフェニルトリス(ペンタフルオロフェニル)ガレートアニオン、及び
モノパーフルオロブチルトリス(ペンタフルオロフェニル)ガレートアニオン等が挙げられ、より好ましくは、以下のアニオンが挙げられる。
【化29】
【0124】
以上説明した式(b2)で表される対カチオンの好適な具体例としては、
4−イソプロピルフェニル(p−トリル)ヨードニウム、
4−イソブチルフェニル(p−トリル)ヨードニウム等のヨードニウムイオン;
[4−(2−チオキサントニルチオ)フェニル]ジフェニルスルホニウム、
2−[(ジ−p−トリル)スルホニオ]チオキサントン、
2−[(ジフェニル)スルホニオ]チオキサントン、
4−(9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イル)チオフェニル−9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イルフェニルスルホニウム等のチオキサントン骨格含有スルホニウムイオン;
後述の式(c1)で表されるカチオンの具体例として挙げたスルホニウムイオン;
後述の式(c1’)で表されるスルホニウム塩のカチオン部の具体例として挙げたスルホニウムイオン;
その他、以下に示すスルホニウムイオン;が挙げられる。
【0125】
【化30】
【0126】
(B)カチオン重合開始剤としては、式(b1)で表されるアニオンの好適な具体例として示された上記のアニオンと、式(b2)で表される対カチオンの好適な具体例として示された上記のカチオンとからなる塩が好ましい。式(b2)で表される対カチオンの好適な具体例は2種以上組み合わせてもよい。
【0127】
硬化性組成物における(B)カチオン重合開始剤の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。硬化性組成物における(B)カチオン重合開始剤の含有量は、(B)カチオン重合開始剤、及び後述する(C)他のカチオン重合開始剤の総量として、(A)硬化性化合物100質量部に対して、0.01質量部以上5質量部以下が好ましく、0.05質量部以上3質量部以下がより好ましく、0.1質量部以上2質量部以下が特に好ましい。
また、(B)カチオン重合開始剤の含有量は、(B)カチオン重合開始剤、及び後述する(C)他のカチオン重合開始剤の総量に対して10質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらにより好ましく、90質量%以上が特に好ましく、100質量%が最も好ましい。
かかる範囲内の量の(B)カチオン重合開始剤を用いることにより、耐熱性(耐熱分解性)と、基材への密着性とが良好である硬化物を形成でき、硬化性が良好である硬化性組成物を得やすい。
【0128】
<(C)他のカチオン重合開始剤>
硬化性組成物は、(B)カチオン重合開始剤とともに、(C)他のカチオン重合開始剤を含むのが好ましい。硬化性組成物は、(B)カチオン重合開始剤とともに、(C)他のカチオン重合開始剤を含むことにより、より、耐熱性(耐熱分解性)と、基材への密着性とが良好である硬化物を形成しやすい。
【0129】
(C)他のカチオン重合開始剤は、(C1)熱カチオン重合開始剤であっても、(C2)光カチオン重合開始剤であってもよく、(C2)光カチオン重合開始剤であるのが好ましい。以下、(C1)熱カチオン重合開始剤、及び(C2)光カチオン重合開始剤について説明する。
【0130】
((C1)熱カチオン重合開始剤)
(C1)熱カチオン重合開始剤としては、例えば、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセナート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスファート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート、トリ−p−トリルスルホニウムヘキサフルオロホスファート、トリ−p−トリルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(tert−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、ジフェニル−4−メチルフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、ジフェニル−2,4,6−トリメチルフェニルスルホニウム−p−トルエンスルホナート、及びジフェニル−p−フェニルチオフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスファート等が挙げられる。これらは2種以上組み合わせて使用されてもよい。
【0131】
市販の熱カチオン重合開始剤としては、例えば、AMERICUREシリーズ(アメリカン・キャン社製)、ULTRASETシリーズ(アデカ社製)、WPAGシリーズ(和光純薬社製)等のジアゾニウム塩型の開始剤;UVEシリーズ(ゼネラル・エレクトリック社製)、FCシリーズ(3M社製)、UV9310C(GE東芝シリコーン社製)、及びWPIシリーズ(和光純薬社製)等のヨードニウム塩型の開始剤;CYRACUREシリーズ(ユニオンカーバイド社製)、UVIシリーズ(ゼネラル・エレクトリック社製)、FCシリーズ(3M社製)、CDシリーズ(サートマー社製)、オプトマーSPシリーズ(アデカ社製)、オプトマーCPシリーズ(アデカ社製)、サンエイドSIシリーズ(三新化学工業社製)、CIシリーズ(日本曹達社製)、WPAGシリーズ(和光純薬社製)、CPIシリーズ(サンアプロ社製)等のスルホニウム塩型の開始剤等が挙げられる。
【0132】
(C1)熱カチオン重合開始剤は、カチオン部とアニオン部とからなり、前記カチオン部が下記式(c−I)で表されるカチオンである化合物を含むのが好ましい。かかる(C1)熱カチオン重合開始剤を用いることにより、前述の(A)硬化性化合物が良好に硬化し耐熱性(耐熱分解性)と、基材への密着性とが良好である硬化物を形成しやすい。
【化31】
(式(c−I)中、Rc01、Rc02、及びRc03は、それぞれ独立に炭素原子数が1以上6以下であるアルキル基である。)
【0133】
式(c−I)において、Rc01、Rc02、及びRc03としてのアルキル基の好適な例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、及びn−ヘキシル基が挙げられる。アルキル基としては、メチル基、又はエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。Rc01、Rc02、及びRc03が全てメチル基であるのが特に好ましい。
【0134】
つまり、式(c−I)で表されるカチオンとしては、下記式(c−II)で表されるカチオンが好ましい。
【化32】
【0135】
式(c−I)で表されるカチオンへの対アニオンとしては、例えば、AsF、SbF、PF、及び((CB)等が挙げられる。これらの中では、((CB)が好ましい。なお、「C」は、ペンタフルオロフェニル基を表す。
【0136】
上記式(c−I)で表されるカチオン部とアニオン部とからなる化合物として、市販品として入手可能な化合物を用いることができる。市販品としては、例えば、CXC−1821(King Industries社製)等が挙げられる。
【0137】
式(c−I)で表されるカチオンからなるカチオン部と、アニオン部とからなる化合物の好適な具体例としては、式(c−II)で表されるカチオンと、AsFとからなる四級アンモニウム塩、式(c−II)で表されるカチオンと、SbFとからなる四級アンモニウム塩、式(c−II)で表されるカチオンと、PFとからなる四級アンモニウム塩、及び式(c−II)で表されるカチオンと、((CB)とからなる四級アンモニウム塩が挙げられる。これらの中では、式(c−II)で表されるカチオンと、((CB)とからなる四級アンモニウム塩がより好ましい。
【0138】
式(c−I)で表されるカチオンからなるカチオン部と、アニオン部とからなる化合物は、1種を単独で使用されてもよく、2種以上を組み合わせて使用されてもよい。
【0139】
((C2)光カチオン重合開始剤)
(C2)光カチオン重合開始剤としては、カチオン重合性の硬化性組成物を光硬化させるために使用されている(B)カチオン重合開始剤以外の重合開始剤を特に制限なく用いることができる。(C2)光カチオン重合開始剤の好適な例としては、ヨードニウム塩と、スルホニウム塩とが挙げられる。
【0140】
ヨードニウム塩の具体例としては、例えばジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジ(4−ノニルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート等が挙げられる。
【0141】
(C2)光カチオン重合開始剤としては、スルホニウム塩が好ましい。スルホニウム塩の中では、下記式(c1)で表されるカチオンからなるカチオン部と、アニオン部とからなるスルホニウム塩(以下、「スルホニウム塩(Q)」とも記す。また、(B)カチオン重合開始剤が下記式(c1)で表されるカチオンからなるカチオン部を有するスルホニウム塩である場合は、当該スルホニウム塩は(B)カチオン重合開始剤として分類する。)が好ましい。
硬化性組成物が、スルホニウム塩(Q)を含む場合、硬化性組成物の硬化を特に良好に進行させやすい。
【0142】
【化33】
(式(c1)中、Rc1及びRc2は独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基又は下記式(c2)で表される基を示し、Rc1及びRc2は相互に結合して式中の硫黄原子とともに環を形成してもよく、Rc3は下記式(c3)で表される基又は下記式(c4)で表される基を示し、Ac1はS、O、又はSeを示し、但し、Rc1及びRc2は、同時に、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基ではない。)
【0143】
【化34】
(式(c2)中、環Zc1は芳香族炭化水素環を示し、Rc4はハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アシロキシ基、アルキルチオ基、チエニル基、チエニルカルボニル基、フラニル基、フラニルカルボニル基、セレノフェニル基、セレノフェニルカルボニル基、脂肪族複素環基、アルキルスルフィニル基、アルキルスルホニル基、ヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基、置換されていてもよいアミノ基、シアノ基、ニトロ基、又はハロゲン原子を示し、m1は0以上の整数を示す。)
【0144】
【化35】
(式(c3)中、Rc5はヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アリールチオカルボニル基、アシロキシ基、アリールチオ基、アルキルチオ基、アリール基、複素環基、アリールオキシ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基、置換されていてもよいアミノ基、シアノ基、ニトロ基、もしくはハロゲン原子で置換されていてもよいアルキレン基又は下記式(c5)で表される基を示し、Rc6はヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アリールチオカルボニル基、アシロキシ基、アリールチオ基、アルキルチオ基、アリール基、複素環基、アリールオキシ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基、置換されていてもよいアミノ基、シアノ基、ニトロ基、もしくはハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基又は下記式(c6)で表される基を示し、Ac2は単結合、S、O、スルフィニル基、又はカルボニル基を示し、m2は0又は1を示す。)
【0145】
【化36】
(式(c4)中、Rc7及びRc8は独立に、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アリールチオカルボニル基、アシロキシ基、アリールチオ基、アルキルチオ基、アリール基、複素環基、アリールオキシ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基、置換されていてもよいアミノ基、シアノ基、ニトロ基、もしくはハロゲン原子で置換されていてもよいアルキレン基又は下記式(c5)で表される基を示し、Rc9及びRc10は独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基又は上記式(c2)で表される基を示し、Rc9及びRc10は相互に結合して式中の硫黄原子とともに環を形成してもよく、Ac3は単結合、S、O、スルフィニル基、又はカルボニル基を示し、m3は0又は1を示し、但し、Rc9及びRc10は、同時に、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基ではない。)
【0146】
【化37】
(式(c5)中、環Zc2は芳香族炭化水素環を示し、Rc11はハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アリールチオカルボニル基、アシロキシ基、アリールチオ基、アルキルチオ基、アリール基、複素環基、アリールオキシ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基、置換されていてもよいアミノ基、シアノ基、ニトロ基、又はハロゲン原子を示し、m4は0以上の整数を示す。)
【化38】
(式(c6)中、環Zc3は芳香族炭化水素環を示し、Rc12はハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アリールチオカルボニル基、アシロキシ基、アリールチオ基、アルキルチオ基、チエニルカルボニル基、フラニルカルボニル基、セレノフェニルカルボニル基、アリール基、複素環基、アリールオキシ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基、置換されていてもよいアミノ基、シアノ基、ニトロ基、又はハロゲン原子を示し、m5は0以上の整数を示す。)
【0147】
(スルホニウム塩(Q))
以下、スルホニウム塩(Q)について説明する。スルホニウム塩(Q)は、上記式(c1)中のベンゼン環において、Ac1が結合する炭素原子に対してオルト位の炭素原子にメチル基が結合していることを特徴とする。スルホニウム塩(Q)は、上記の位置にメチル基を有するため、従来のスルホニウム塩と比較して、プロトンを発生しやすく、紫外線等の活性エネルギー線に対する感度が高い。
【0148】
上記式(c1)において、Rc1及びRc2のいずれもが上記式(c2)で表される基であることが好ましい。Rc1及びRc2は互いに同一でも異なっていてもよい。
上記式(c1)において、Rc1及びRc2が相互に結合して式中の硫黄原子とともに環を形成する場合、形成される環の環構成原子数は、硫黄原子を含めて3以上10以下が好ましく、5以上7以下がより好ましい。形成される環は多環でもよく、5〜7員環が縮合したものであることが好ましい。
上記式(c1)において、Rc1及びRc2が、ともにフェニル基であるのが好ましい。
上記式(c1)において、Rc3は上記式(c3)で表される基であることが好ましい。
上記式(c1)において、Ac1は、S又はOであることが好ましく、Sであることがより好ましい。
【0149】
上記式(c2)において、Rc4は、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、ヒドロキシ基、アルキルカルボニル基、チエニルカルボニル基、フラニルカルボニル基、セレノフェニルカルボニル基、置換されていてもよいアミノ基、又はニトロ基であることが好ましく、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、アルキルカルボニル基、又はチエニルカルボニル基であることがより好ましい。
上記式(c2)において、m1は、環Zc1の種類に応じて選択でき、例えば、0以上4以下の整数、好ましくは0以上3以下の整数、より好ましくは0以上2以下の整数であってもよい。
【0150】
上記式(c3)において、Rc5は、アルキレン基;ヒドロキシ基、置換されていてもよいアミノ基、もしくはニトロ基で置換されたアルキレン基;又は上記式(c5)で表される基であることが好ましく、上記式(c5)で表される基であることがより好ましい。
上記式(c3)において、Rc6は、アルキル基;ヒドロキシ基、置換されていてもよいアミノ基、もしくはニトロ基で置換されたアルキル基;又は上記式(c6)で表される基であることが好ましく、上記式(c6)で表される基であることがより好ましい。
上記式(c3)において、Ac2はS又はOであることが好ましく、Sであることがより好ましい。
上記式(c3)において、m2は0であることが好ましい。
【0151】
上記式(c4)において、Rc7及びRc8は独立に、アルキレン基;ヒドロキシ基、置換されていてもよいアミノ基、もしくはニトロ基で置換されたアルキレン基;又は上記式(a5)で表される基であることが好ましく、上記式(c5)で表される基であることより好ましい。Rc7及びRc8は互いに同一でも異なっていてもよい。
上記式(c4)において、Rc9及びRc10のいずれもが上記式(c2)で表される基であることが好ましい。Rc9及びRc10は互いに同一でも異なっていてもよい。
上記式(c4)において、Rc9及びRc10が相互に結合して式中の硫黄原子とともに環を形成する場合、形成される環の環構成原子数は、硫黄原子を含めて3以上10以下が好ましく、5以上7以下がより好ましい。形成される環は多環でもよく、5〜7員環が縮合したものであることが好ましい。
上記式(c4)において、Ac3は、S又はOであることが好ましく、Sであることがより好ましい。
上記式(c4)において、m3は0であることが好ましい。
【0152】
上記式(c5)において、Rc11は、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、ヒドロキシ基、置換されていてもよいアミノ基、又はニトロ基であることが好ましく、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基であることがより好ましい。
上記式(c5)において、m4は、環Zc2の種類に応じて選択でき、例えば、0以上4以下の整数、好ましくは0以上3以下の整数、より好ましくは0以上2以下の整数であってもよい。
【0153】
上記式(c6)において、Rc12は、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、ヒドロキシ基、アルキルカルボニル基、チエニルカルボニル基、フラニルカルボニル基、セレノフェニルカルボニル基、置換されていてもよいアミノ基、又はニトロ基であることが好ましく、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、アルキルカルボニル基、又はチエニルカルボニル基であることがより好ましい。
上記式(c6)において、m5は、環Zc3の種類に応じて選択でき、例えば、0以上4以下の整数、好ましくは0以上3以下の整数、より好ましくは0以上2以下の整数であってもよい。
【0154】
上記式(c1)で表されるカチオンは、通常、1価のアニオンXとともに塩を形成する。Xは、スルホニウム塩(Q)に活性エネルギー(熱、可視光、紫外線、電子線、及びX線等)を照射することにより発生する酸(HX)に対応する1価のアニオンである。Xとしては、1価の多原子アニオンが好適に挙げられ、MY、(Rf)PF6−b、Rx1BY4−c、Rx2SO、(Rx2SO、又は(Rx2SOで表されるアニオンがより好ましい。また、Xは、ハロゲンアニオンでもよく、例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等が挙げられる。
【0155】
Mは、リン原子、ホウ素原子、又はアンチモン原子を表す。
Yはハロゲン原子(フッ素原子が好ましい。)を表す。
【0156】
Rfは、水素原子の80モル%以上がフッ素原子で置換されたアルキル基(炭素原子数が1以上8以下であるアルキル基が好ましい。)を表す。フッ素置換によりRfとするアルキル基としては、直鎖アルキル基(メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル及びオクチル等)、分岐鎖アルキル基(イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル及びtert−ブチル等)及びシクロアルキル基(シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシル等)等が挙げられる。Rfにおいてこれらのアルキル基の水素原子がフッ素原子に置換されている割合は、もとのアルキル基が有していた水素原子のモル数に基づいて、80モル%以上が好ましく、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは100%である。フッ素原子による置換割合がこれら好ましい範囲にあると、スルホニウム塩(Q)の光感応性がさらに良好となる。特に好ましいRfとしては、CF−、CFCF、(CFCF、CFCFCF、CFCFCFCF、(CFCFCF、CFCF(CF)CF及び(CFが挙げられる。b個のRfは、相互に独立であり、従って、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0157】
Pはリン原子、Fはフッ素原子を表す。
【0158】
x1は、水素原子の一部が少なくとも1個の元素又は電子求引基で置換されたフェニル基を表す。そのような1個の元素の例としては、ハロゲン原子が含まれ、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子等が挙げられる。電子求引基としては、トリフルオロメチル基、ニトロ基及びシアノ基等が挙げられる。これらのうち、少なくとも1個の水素原子がフッ素原子又はトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基が好ましい。c個のRx1は相互に独立であり、従って、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0159】
Bはホウ素原子を表す。
【0160】
x2は、炭素原子数が1以上20以下であるアルキル基、炭素原子数が1以上20以下であるフルオロアルキル基、又は炭素原子数が6以上20以下であるアリール基を表し、アルキル基及びフルオロアルキル基は直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれでもよく、アルキル基、フルオロアルキル基、又はアリール基は無置換であっても、置換基を有していてもよい。上記置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、置換されていてもよいアミノ基(例えば、上記式(c2)〜(c6)に関する後述の説明中で例示するものが挙げられる。)、ニトロ基等が挙げられる。
また、Rx2で表されるアルキル基、フルオロアルキル基又はアリール基における炭素鎖は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を有していてもよい。特に、Rx2で表されるアルキル基又はフルオロアルキル基における炭素鎖は、2価の官能基(例えば、エーテル結合、カルボニル結合、エステル結合、アミノ結合、アミド結合、イミド結合、スルホニル結合、スルホニルアミド結合、スルホニルイミド結合、ウレタン結合等)を有していてもよい。
x2で表されるアルキル基、フルオロアルキル基又はアリール基が上記置換基、ヘテロ原子、又は官能基を有する場合、上記置換基、ヘテロ原子、又は官能基の個数は、1個であっても2個以上であってもよい。
【0161】
Sは硫黄原子、Oは酸素原子、Cは炭素原子、Nは窒素原子を表す。
aは4以上6以下の整数を表す。
bは、1以上5以下の整数が好ましく、さらに好ましくは2以上4以下の整数、特に好ましくは2又は3である。
cは、1以上4以下の整数が好ましく、さらに好ましくは4である。
【0162】
MYで表されるアニオンとしては、SbF、PF又はBFで表されるアニオン等が挙げられる。
【0163】
(Rf)PF6−bで表されるアニオンとしては、(CFCFPF、(CFCFPF、((CFCF)PF、((CFCF)PF、(CFCFCFPF、(CFCFCFPF、((CFCFCFPF、((CFCFCFPF、(CFCFCFCFPF又は(CFCFCFCFPFで表されるアニオン等が挙げられる。これらのうち、(CFCFPF、(CFCFCFPF、((CFCF)PF、((CFCF)PF、((CFCFCFPF又は((CFCFCFPFで表されるアニオンが好ましい。
【0164】
x1BY4−cで表されるアニオンとしては、好ましくは
x1BY4−c
(式中、Rx1は水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子又は電子求引基で置換されたフェニル基を示し、Yはハロゲン原子を示し、cは1以上4以下の整数を示す。)
であり、例えば、((CB)、(((CFB)、((CFB)、((CBF、(CBF又は((CB)で表されるアニオン等が挙げられる。これらのうち、((CB)又は(((CFB)で表されるアニオンが好ましい。
【0165】
x2SOで表されるアニオンとしては、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、ペンタフルオロエタンスルホン酸アニオン、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸アニオン、ノナフルオロブタンスルホン酸アニオン、ペンタフルオロフェニルスルホン酸アニオン、p−トルエンスルホン酸アニオン、ベンゼンスルホン酸アニオン、カンファースルホン酸アニオン、メタンスルホン酸アニオン、エタンスルホン酸アニオン、プロパンスルホン酸アニオン及びブタンスルホン酸アニオン等が挙げられる。これらのうち、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、ノナフルオロブタンスルホン酸アニオン、メタンスルホン酸アニオン、ブタンスルホン酸アニオン、カンファースルホン酸アニオン、ベンゼンスルホン酸アニオン又はp−トルエンスルホン酸アニオンが好ましい。
【0166】
(Rx2SOで表されるアニオンとしては、(CFSO、(CSO、(CSO又は(CSOで表されるアニオン等が挙げられる。
【0167】
(Rx2SOで表されるアニオンとしては、(CFSO、(CSO、(CSO又は(CSOで表されるアニオン等が挙げられる。
【0168】
一価の多原子アニオンとしては、MY、(Rf)PF6−b、Rx1BY4−c、Rx2SO、(Rx2SO又は(Rx2SOで表されるアニオン以外に、過ハロゲン酸イオン(ClO、BrO等)、ハロゲン化スルホン酸イオン(FSO、ClSO等)、硫酸イオン(CHSO、CFSO、HSO等)、炭酸イオン(HCO、CHCO等)、アルミン酸イオン(AlCl、AlF等)、ヘキサフルオロビスマス酸イオン(BiF)、カルボン酸イオン(CHCOO、CFCOO、CCOO、CHCOO、CCOO、CFCOO等)、アリールホウ酸イオン(B(C、CHCHCHCHB(C等)、チオシアン酸イオン(SCN)及び硝酸イオン(NO)等が使用できる。
【0169】
これらのXのうち、カチオン重合性能の点では、MY、(Rf)PF6−b、Rx1BY4−c、及び(Rx2SOで表されるアニオンが好ましく、SbF、PF、(CFCFPF、((CB)、(((CFB)、及び(CFSOがより好ましい。
【0170】
上記式(c2)、(c5)、及び(c6)において、芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、縮合多環式芳香族炭化水素環[例えば、縮合二環式炭化水素環(例えば、ナフタレン環等のC8−20縮合二環式炭化水素環、好ましくはC10−16縮合二環式炭化水素環)、縮合三環式芳香族炭化水素環(例えば、アントラセン環、フェナントレン環等)等の縮合2乃至4環式芳香族炭化水素環]等が挙げられる。芳香族炭化水素環は、ベンゼン環又はナフタレン環であることが好ましく、ベンゼン環であることがより好ましい。
【0171】
上記式(c1)〜(c6)において、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子等が挙げられる。
【0172】
上記式(c1)〜(c6)において、アルキル基としては、炭素原子数が1以上18以下である直鎖アルキル基(メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−オクチル、n−デシル、n−ドデシル、n−テトラデシル、n−ヘキサデシル、及びn−オクタデシル等)、炭素原子数が3以上18以下である分岐鎖アルキル基(イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、イソヘキシル、及びイソオクタデシル等)、並びに炭素原子数が3以上18以下であるシクロアルキル基(シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、及び4−デシルシクロヘキシル等)等が挙げられる。特に、上記式(c1)、(c2)、及び(c4)〜(c6)において、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基とは、アルキル基及びハロゲン原子で置換されたアルキル基を意味する。ハロゲン原子で置換されたアルキル基としては、上記の直鎖アルキル基、分岐鎖アルキル基、又はシクロアルキル基における少なくとも1個の水素原子をハロゲン原子で置換した基(モノフルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル等)等が挙げられる。ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基のうち、Rc1、Rc2、Rc9、又はRc10については、トリフルオロメチル基が特に好ましく、Rc4、Rc6、Rc11、又はRc12については、メチル基が特に好ましい。
【0173】
上記式(c2)〜(c6)において、アルコキシ基としては、炭素原子数が1以上18以下である直鎖又は分岐鎖アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、ヘキシルオキシ、デシルオキシ、ドデシルオキシ、及びオクタデシルオキシ等)等が挙げられる。
【0174】
上記式(c2)〜(c6)において、アルキルカルボニル基におけるアルキル基としては、上述の炭素原子数が1以上18以下である直鎖アルキル基、炭素原子数が3以上18以下である分岐鎖アルキル基、又は炭素原子数が3以上18以下であるシクロアルキル基が挙げられ、アルキルカルボニル基としては、炭素原子数が2以上18以下である直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキルカルボニル基(アセチル、プロピオニル、ブタノイル、2−メチルプロピオニル、ヘプタノイル、2−メチルブタノイル、3−メチルブタノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、オクタデカノイル、シクロペンタノイル基、及びシクロヘキサノイル基等)等が挙げられる。
【0175】
上記式(c3)〜(c6)において、アリールカルボニル基としては、炭素原子数が7以上11以下であるアリールカルボニル基(ベンゾイル及びナフトイル等)等が挙げられる。
【0176】
上記式(a2)〜(a6)において、アルコキシカルボニル基としては、炭素原子数が2以上19以下である直鎖又は分岐鎖アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、sec−ブトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、オクチロキシカルボニル、テトラデシルオキシカルボニル、及びオクタデシロキシカルボニル等)等が挙げられる。
【0177】
上記式(c3)〜(c6)において、アリールオキシカルボニル基としては、炭素原子数が7以上11以下であるアリールオキシカルボニル基(フェノキシカルボニル及びナフトキシカルボニル等)等が挙げられる。
【0178】
上記式(c3)〜(c6)において、アリールチオカルボニル基としては、炭素原子数が7以上11以下であるアリールチオカルボニル基(フェニルチオカルボニル及びナフトキシチオカルボニル等)等が挙げられる。
【0179】
上記式(c2)〜(c6)において、アシロキシ基としては、炭素原子数が2以上19以下である直鎖又は分岐鎖アシロキシ基(アセトキシ、エチルカルボニルオキシ、プロピルカルボニルオキシ、イソプロピルカルボニルオキシ、ブチルカルボニルオキシ、イソブチルカルボニルオキシ、sec−ブチルカルボニルオキシ、tert−ブチルカルボニルオキシ、オクチルカルボニルオキシ、テトラデシルカルボニルオキシ、及びオクタデシルカルボニルオキシ等)等が挙げられる。
【0180】
上記式(c3)〜(c6)において、アリールチオ基としては、炭素原子数が6以上20以下であるアリールチオ基(フェニルチオ、2−メチルフェニルチオ、3−メチルフェニルチオ、4−メチルフェニルチオ、2−クロロフェニルチオ、3−クロロフェニルチオ、4−クロロフェニルチオ、2−ブロモフェニルチオ、3−ブロモフェニルチオ、4−ブロモフェニルチオ、2−フルオロフェニルチオ、3−フルオロフェニルチオ、4−フルオロフェニルチオ、2−ヒドロキシフェニルチオ、4−ヒドロキシフェニルチオ、2−メトキシフェニルチオ、4−メトキシフェニルチオ、1−ナフチルチオ、2−ナフチルチオ、4−[4−(フェニルチオ)ベンゾイル]フェニルチオ、4−[4−(フェニルチオ)フェノキシ]フェニルチオ、4−[4−(フェニルチオ)フェニル]フェニルチオ、4−(フェニルチオ)フェニルチオ、4−ベンゾイルフェニルチオ、4−ベンゾイル−2−クロロフェニルチオ、4−ベンゾイル−3−クロロフェニルチオ、4−ベンゾイル−3−メチルチオフェニルチオ、4−ベンゾイル−2−メチルチオフェニルチオ、4−(4−メチルチオベンゾイル)フェニルチオ、4−(2−メチルチオベンゾイル)フェニルチオ、4−(p−メチルベンゾイル)フェニルチオ、4−(p−エチルベンゾイル)フェニルチオ4−(p−イソプロピルベンゾイル)フェニルチオ、及び4−(p−tert−ブチルベンゾイル)フェニルチオ等)等が挙げられる。
【0181】
上記式(c2)〜(c6)において、アルキルチオ基としては、炭素原子数が1以上18以下である直鎖又は分岐鎖アルキルチオ基(メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、イソブチルチオ、sec−ブチルチオ、tert−ブチルチオ、ペンチルチオ、イソペンチルチオ、ネオペンチルチオ、tert−ペンチルチオ、オクチルチオ、デシルチオ、ドデシルチオ、及びイソオクタデシルチオ等)等が挙げられる。
【0182】
上記式(c3)〜(c6)において、アリール基としては、炭素原子数が6以上10以下であるアリール基(フェニル、トリル、ジメチルフェニル、及びナフチル等)等が挙げられる。
【0183】
上記式(c2)において、脂肪族複素環基としては、炭素原子数が2以上20以下である(好ましくは4以上20以下である)脂肪族複素環基(ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、ピペリジニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、モルホリニル、等)等が挙げられる。
【0184】
上記式(c3)〜(c6)において、複素環基としては、炭素原子数が4以上20以下である複素環基(チエニル、フラニル、セレノフェニル、ピラニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル、インドリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、キノリル、イソキノリル、キノキサリニル、キナゾリニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、キサンテニル、チアントレニル、フェノキサジニル、フェノキサチイニル、クロマニル、イソクロマニル、ジベンゾチエニル、キサントニル、チオキサントニル、及びジベンゾフラニル等)等が挙げられる。
【0185】
上記式(c3)〜(c6)において、アリールオキシ基としては、炭素原子数が6以上10以下であるアリールオキシ基(フェノキシ及びナフチルオキシ等)等が挙げられる。
【0186】
上記式(c2)〜(c6)において、アルキルスルフィニル基としては、炭素原子数が1以上18以下である直鎖又は分岐鎖スルフィニル基(メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、プロピルスルフィニル、イソプロピルスルフィニル、ブチルスルフィニル、イソブチルスルフィニル、sec−ブチルスルフィニル、tert−ブチルスルフィニル、ペンチルスルフィニル、イソペンチルスルフィニル、ネオペンチルスルフィニル、tert−ペンチルスルフィニル、オクチルスルフィニル、及びイソオクタデシルスルフィニル等)等が挙げられる。
【0187】
上記式(c3)〜(c6)において、アリールスルフィニル基としては、炭素原子数が6以上10以下であるアリールスルフィニル基(フェニルスルフィニル、トリルスルフィニル、及びナフチルスルフィニル等)等が挙げられる。
【0188】
上記式(c2)〜(c6)において、アルキルスルホニル基としては、炭素原子数が1以上18以下である直鎖又は分岐鎖アルキルスルホニル基(メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、イソプロピルスルホニル、ブチルスルホニル、イソブチルスルホニル、sec−ブチルスルホニル、tert−ブチルスルホニル、ペンチルスルホニル、イソペンチルスルホニル、ネオペンチルスルホニル、tert−ペンチルスルホニル、オクチルスルホニル、及びオクタデシルスルホニル等)等が挙げられる。
【0189】
上記式(c3)〜(c6)において、アリールスルホニル基としては、炭素原子数が6以上10以下であるアリールスルホニル基(フェニルスルホニル、トリルスルホニル(トシル基)、及びナフチルスルホニル等)等が挙げられる。
【0190】
上記式(c2)〜(c6)において、ヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基としては、HO(AO)−(式中、AOは独立にエチレンオキシ基及び/又はプロピレンオキシ基を表し、qは1以上5以下の整数を表す。)で表されるヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基等が挙げられる。
【0191】
上記式(c2)〜(c6)において、置換されていてもよいアミノ基としては、アミノ基(−NH)及び炭素原子数が1以上15以下である置換アミノ基(メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、メチルエチルアミノ、ジエチルアミノ、n−プロピルアミノ、メチル−n−プロピルアミノ、エチル−n−プロピルアミノ、n−プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、イソプロピルメチルアミノ、イソプロピルエチルアミノ、ジイソプロピルアミノ、フェニルアミノ、ジフェニルアミノ、メチルフェニルアミノ、エチルフェニルアミノ、n−プロピルフェニルアミノ、及びイソプロピルフェニルアミノ等)等が挙げられる。
【0192】
上記式(c3)及び(c4)において、アルキレン基としては、炭素原子数が1以上18以下である直鎖又は分岐鎖アルキレン基(メチレン基、1,2−エチレン基、1,1−エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、プロパン−1,1−ジイル基、プロパン−2,2−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ブタン−1,3−ジイル基、ブタン−1,2−ジイル基、ブタン−1,1−ジイル基、ブタン−2,2−ジイル基、ブタン−2,3−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ペンタン−1,4−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基、ヘプタン−1,7−ジイル基、オクタン−1,8−ジイル基、2−エチルヘキサン−1,6−ジイル基、ノナン−1,9−ジイル基、デカン−1,10−ジイル基、ウンデカン−1,11−ジイル基、ドデカン−1,12−ジイル基、トリデカン−1,13−ジイル基、テトラデカン−1,14−ジイル基、ペンタデカン−1,15−ジイル基、及びヘキサデカン−1,16−ジイル基等)等が挙げられる。
【0193】
スルホニウム塩(Q)は、例えば、下記スキームに従って合成することができる。具体的には、下記式(c1−1)で表される1−フルオロ−2−メチル−4−ニトロベンゼンに、水酸化カリウム等の塩基の存在下で、下記式(c1−2)で表される化合物を反応させて、下記式(c1−3)で表されるニトロ化合物を得、次いで、還元鉄の存在下で還元を行って、下記式(c1−4)で表されるアミン化合物を得る。このアミン化合物とMaNO(式中、Maは金属原子、例えば、ナトリウム原子等のアルカリ金属原子を示す。)で表される亜硝酸塩(例えば、亜硝酸ナトリウム)とを反応させてジアゾ化合物を得、次いで、このジアゾ化合物とCuX’(式中、X’は臭素原子等のハロゲン原子を示す。以下、同じ)で表されるハロゲン化第一銅とHX’で表されるハロゲン化水素とを混合し、反応を進行させて、下記式(c1−5)で表されるハロゲン化物を得る。このハロゲン化物及びマグネシウムからグリニャール試薬を調製し、次いで、クロロトリメチルシランの存在下で、このグリニャール試薬と下記式(c1−6)で表されるスルホキシド化合物とを反応させて、下記式(c1−7)で表されるスルホニウム塩を得ることができる。さらに、このスルホニウム塩をMbX”(式中、Mbは金属カチオン、例えば、カリウムイオン等のアルカリ金属カチオンを示し、X”はXで表される1価のアニオン(但し、ハロゲンアニオンを除く。)を示す。)で表される塩と反応させて塩交換を行うことにより、下記式(c1−8)で表されるスルホニウム塩を得ることができる。なお、下記式(c1−2)〜(c−8)において、Rc1〜Rc3及びAc1は、上記式(c1)と同様である。
【0194】
<スキーム>
【化39】
【0195】
スルホニウム塩(Q)のカチオン部である、式(c1)で表されるカチオンの具体例としては、以下のものが挙げられる。スルホニウム塩(Q)のアニオン部の具体例としては、上記Xの説明で挙げたもの等、従来公知のものを挙げることができる。上記式(c1)で表されるカチオン部を含むスルホニウム塩(Q)は上記スキームに従って合成することができ、必要に応じさらに塩交換することにより、カチオン部を所望のアニオン部と組み合わせることができ、特に、Rx1BY4−c(式中、Rx1は水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子又は電子求引基で置換されたフェニル基を示し、Yはハロゲン原子を示し、cは1以上4以下の整数を示す。)で表されるアニオンとの組み合わせが好ましい。
【0196】
【化40】
【0197】
上記の好ましいカチオン部の群の中では、下記式で表されるカチオン部がより好ましい。
【化41】
【0198】
(C)他のカチオン重合開始剤は、上記のスルホニウム塩(Q)とともに、スルホニウム塩(Q)以外のその他の光カチオン重合開始剤を含んでいてもよい。
(C)他のカチオン重合開始剤におけるスルホニウム塩(Q)の含有量は特に限定されないが、典型的には、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が特に好ましく、100質量%が最も好ましい。
【0199】
(C2)光カチオン重合開始剤は、上記のスルホニウム塩(Q)とともに、前述の(B)カチオン重合開始剤、及びスルホニウム(Q)以外の光カチオン重合開始剤をさらに含んでいてもよい。
前述の(B)カチオン重合開始剤、及びスルホニウム(Q)以外の光カチオン重合開始剤としては、従来からカチオン重合用に使用されている種々のカチオン重合開始剤を特に制限なく使用することができる。
前述の(B)カチオン重合開始剤、及びスルホニウム(Q)以外の光カチオン重合開始剤としては、前述の通り、ヨードニウム塩やスルホニウム塩等のオニウム塩が好ましく、スルホニウム塩(Q)以外のその他のスルホニウム塩がより好ましい。
【0200】
以下、前述の(B)カチオン重合開始剤、及びスルホニウム塩(Q)以外の光カチオン重合開始剤としてのスルホニウム塩について「スルホニウム塩(Q’)」とも記す。
スルホニウム塩(Q’)は、スルホニウム塩(Q)と同じく、1価アニオンXとして上述のRx1BY4−cを含むのが好ましい。
【0201】
x1BY4−cで表される1価のアニオンを有するスルホニウム塩(Q’)としては、例えば下記式(c1’)で表されるスルホニウム塩が挙げられる。
【0202】
【化42】
(式中、Rc1、Rc2、Rc3、Ac1、Rx1、Y及びcは上述の通り。)
【0203】
上記式(c1’)で表されるスルホニウム塩(Q’)のカチオン部の具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0204】
【化43】
【0205】
スルホニウム塩(Q’)のカチオン部の典型的な例としては、また、以下のものが挙げられる。
【化44】
【0206】
硬化性組成物における(C)他のカチオン重合開始剤の含有量は、硬化性組成物の硬化が良好に進行する限り特に限定されない。硬化性組成物を良好に硬化させやすい点から、典型的には、(C)他のカチオン重合開始剤の含有量は、(B)カチオン重合開始剤、及び後述する(C)他のカチオン重合開始剤の総量として、(A)硬化性化合物100質量部に対して、0質量部以上5質量部以下が好ましく、0.01質量部以上3質量部以下がより好ましく、0.03質量部以上2質量部以下が特に好ましい。
また、(C)他のカチオン重合開始剤の含有量は、(B)カチオン重合開始剤、及び後述する(C)他のカチオン重合開始剤の総量に対して90質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、70質量%以下がさらにより好ましく、90質量%以下が特に好ましい。硬化性組成物が、(C)他のカチオン重合開始剤を含まないのも好ましい。
【0207】
<(D)硬化促進剤>
硬化性組成物は、(D)硬化促進剤を含んでいてもよい。硬化性組成物が(D)硬化促進剤を含む場合、硬化性組成物の硬化性が特に良好であり、耐熱性(耐熱分解性)と、基材への密着性とが特に良好である硬化物を形成できる。
【0208】
(D)硬化促進剤としては、例えば、ウレア化合物、第三級アミンとその塩、イミダゾール類とその塩、ホスフィン系化合物とその誘導体、カルボン酸金属塩やルイス酸、ブレンステッド酸類とその塩類、テトラフェニルボロン塩等が挙げられる。
【0209】
(D)硬化促進剤の好ましい具体例としては、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、及びトリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミン類;2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、及び2−ヘプタデシルイミダゾール等のイミダゾール類;トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、及びフェニルホスフィン等のホスフィン系化合物;テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾールテトラフェニルボレート、及びN−メチルモルホリンテトラフェニルボレートのテトラフェニルボロン塩等が挙げられる。
【0210】
以上説明した(D)硬化促進剤の中では、ホスフィン系化合物とその誘導体、及びテトラフェニルボロン塩が好ましい。上記の具体例の中では、トリフェニルホスフィンと、トリフェニルホスフィントリフェニルボランとが好ましい。
【0211】
(D)硬化促進剤の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。(D)硬化促進剤の使用量は、(A)硬化性化合物100質量部に対して、0.01質量部以上5質量部以下が好ましく、0.05質量部以上3質量部以下がより好ましく、0.1質量部以上2質量部以下が特に好ましい。
【0212】
<(E)増感剤>
硬化性組成物は、(E)増感剤を含んでいてもよい。硬化性組成物が、(C)光カチオン重合開始剤を含む場合、又は(B)カチオン重合開始剤が、スルホニウムカチオン及び/又はヨードニウムカチオンを含む場合、硬化性組成物が(E)増感剤を含むのが好ましい。増感剤としては、従来より種々のカチオン重合開始剤と併用されている公知の増感剤を特に制限なく用いることができる。
増感剤の具体例としては、アントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン、9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン、及び9,10−ジプロポキシアントラセン等のアントラセン化合物;ピレン;1,2−ベンズアントラセン;ペリレン;テトラセン;コロネン;チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン及び2,4−ジエチルチオキサントン等のチオキサントン化合物;フェノチアジン、N−メチルフェノチアジン、N−エチルフェノチアジン、及びN−フェニルフェノチアジン等のフェノチアジン化合物;キサントン;1−ナフトール、2−ナフトール、1−メトキシナフタレン、2−メトキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、及び4−メトキシ−1−ナフトール等のナフタレン化合物;ジメトキシアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、4’−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、及び4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド等のケトン;N−フェニルカルバゾール、N−エチルカルバゾール、ポリ−N−ビニルカルバゾール、及びN−グリシジルカルバゾール等のカルバゾール化合物;1,4−ジメトキシクリセン及び1,4−ジ−α−メチルベンジルオキシクリセン等のクリセン化合物;9−ヒドロキシフェナントレン、9−メトキシフェナントレン、9−ヒドロキシ−10−メトキシフェナントレン、及び9−ヒドロキシ−10−エトキシフェナントレン等のフェナントレン化合物が挙げられる。
これらの増感剤は、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0213】
(E)増感剤の使用量は特に限定されないが、(C)光カチオン重合開始剤の質量に対して、1質量%以上300質量%以下が好ましく、5質量%以上200質量%以下がより好ましい。かかる範囲内の量の(E)増感剤を用いることにより、所望する増感作用を得やすい。
【0214】
<その他の成分>
硬化性組成物には、必要に応じて、界面活性剤、熱重合禁止剤、消泡剤、シランカップリング剤、着色剤(顔料、染料)、樹脂(熱可塑性樹脂、アルカリ可溶性樹脂等)、無機フィラー、有機フィラー等の添加剤を含有させることができる。いずれの添加剤も、従来公知のものを用いることができる。界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系等の化合物が挙げられ、熱重合禁止剤としては、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノエチルエーテル等が挙げられ、消泡剤としては、シリコーン系、フッ素系化合物等が挙げられる。
【0215】
以上説明した必須又は任意の成分を含む硬化性組成物は、耐熱性(耐熱分解性)と、基材への密着性とが良好である硬化物を形成でき、硬化性が良好であるため、種々の用途において好適に利用することができる。
硬化性組成物は、タッチパネル等の表示素子における、金属配線等を被覆する透明被膜の形成用に特に好ましく使用される。また、前述の硬化性組成物を用いることにより、水蒸気等の気体を透過させにくく、長時間光にさらされた際の黄変を起こしにくい硬化膜を形成しやすい。このため、前述の硬化性組成物は、OLEDを備える装置、特にOLED照明において、保護、絶縁等の目的で設けられる被膜の形成にも好ましく使用される。
【0216】
<(S)溶剤>
硬化性組成物は、塗布性や粘度の調整の目的で、(S)溶剤を含むのが好ましい。(S)溶剤としては、典型的には有機溶剤が用いられる。有機溶剤の種類は、硬化性組成物に含まれる成分を、均一に溶解又は分散させることができれば特に限定されない。
【0217】
(S)溶剤として使用し得る有機溶剤の好適な例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の他のエーテル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等のケトン類;2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル等の乳酸アルキルエステル類;2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチル部炭酸メチル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、蟻酸n−ペンチル、酢酸イソペンチル、プロピオン酸n−ブチル、酪酸エチル、酪酸n−プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸n−ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n−プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸エチル等の他のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類等が挙げられる。これらの有機溶剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0218】
硬化性組成物における、(S)溶剤の使用量は特に限定されない。硬化性組成物の塗布性の点等から、(S)溶剤の使用量は、硬化性組成物全体に対して、例えば30〜99.9質量%であり、好ましくは50〜98質量%である。
【0219】
<硬化膜>
以上説明した硬化性組成物を硬化してなる硬化物からなる硬化膜は、耐熱性(耐熱分解性)に優れている。該硬化膜は、例えば、OLED表示素子用封止材、OLED照明、ウェハレベルレンズ、上述のハードコート等として好適である。また、フレキシブルデバイス用にも好適である。
また、上記の硬化性組成物の硬化物からなる硬化膜は、(A)硬化性化合物が前述の式(a1)で表される化合物を含むことによって、高い屈折率を示す。硬化性組成物は、硬化膜の屈折率をさらに高める観点で、例えば、金属酸化物粒子を含むのも好ましい。
得られる硬化膜について、例えば、波長550nmでの屈折率として、1.7以上の高屈折率が得られる
【0220】
≪硬化性組成物の製造方法≫
以上説明した各成分を所定の比率で均一に混合することにより、硬化性組成物を製造することができる。硬化性組成物の製造に用いることができる混合装置としては、二本ロールや三本ロール等が挙げられる。硬化性組成物の粘度が十分に低い場合、必要に応じて、不溶性の異物を除去するために、所望のサイズの開口を有するフィルターを用いて硬化性組成物をろ過してもよい。
【0221】
≪硬化物の製造方法≫
硬化物の製造方法は、所望する形状に成形された硬化性組成物を硬化させることができる方法であれば特に限定されない。
硬化方法は、硬化性組成物を硬化させることができる方法であれば特に限定されず、露光及び/又は加熱を含み、露光を含むのが好ましい。
【0222】
成形体の形状は特に限定されないが、熱を成形体に均一に加えやすかったり、露光光を成形体に均一に照射しやすかったりすることから膜(フィルム)であるのが好ましい。
【0223】
硬化物を硬化膜として製造する方法の典型例を以下説明する。
まず、ガラス基板等の基板上に、硬化性組成物を塗布して塗布膜を形成する。塗布方法としては、ロールコータ、リバースコーター、バーコーター等の接触転写型塗布装置や、スピンナー(回転式塗布装置)、スリットコーター、カーテンフローコーター等の非接触型塗布装置を用いる方法が挙げられる。
また、硬化性組成物の粘度を適切な範囲に調整したうえで、インクジェット法、スクリーン印刷法等の印刷法によって硬化性組成物の塗布を行って、所望の形状にパターニングされた塗布膜を形成してもよい。
【0224】
次いで、必要に応じて、(S)溶剤等の揮発成分を除去して塗布膜を乾燥させる。乾燥方法は特に限定されないが、例えば、真空乾燥装置(VCD)を用いて室温にて減圧乾燥し、その後、ホットプレートにて80℃以上120℃以下、好ましくは90℃以上100℃以下の温度にて60秒以上120秒以下の範囲内の時間乾燥する方法が挙げられる。
このようにして塗布膜を形成した後、塗布膜に対して露光及び加熱の少なくとも一方を施す。
露光は、エキシマレーザー光等の活性エネルギー線を照射して行う。照射するエネルギー線量は、硬化性組成物の組成によっても異なるが、例えば30mJ/cm以上2000mJ/cm以下が好ましく、50mJ/cm以上500mJ/cm以下がより好ましい。
加熱を行う際の温度は特に限定されず、180℃以上280℃以下が好ましく、200℃以上260℃以下がより好ましく、220℃以上250℃以下が特に好ましい。加熱時間は、典型的には、1分以上60分以下が好ましく、10分以上50分以下がより好ましく、20分以上40分以下が特に好ましい。
【0225】
以上のように形成される硬化物、特に硬化膜は、画像表示装置用の表示パネルやOLED照明に好適に利用される。また、硬化膜は柔軟性に優れ割れにくいため、フレキシブル表示パネルやフレキシブル照明において好適に用いられる。
また、硬化膜は、タッチパネル等の表示素子において、金属配線等を被覆する透明被膜として特に好ましく使用される。
【実施例】
【0226】
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0227】
〔実施例1〜5、比較例1、及び比較例2〕
実施例及び比較例において(A)硬化性化合物((A)成分)として、下記式で表される化合物であるA1と、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物(エポキシ当量:250g/eq.)であるA2とを用いた。
【化45】
【0228】
実施例及び比較例において、(B)カチオン重合開始剤((B)成分)として、下記式で表される化合物であるB1又はB2を用いた。
【化46】
【0229】
実施例及び比較例において、(C)他のカチオン重合開始剤((C)成分)として、下記式で表される化合物であるC1及びC2を用いた。
【化47】
【0230】
実施例において、(D)硬化促進剤((D)成分)としてトリフェニルホスフィントリフェニルボランを用いた。
【0231】
それぞれ、表1に記載の種類及び量の(A)成分及び(B)成分と、表1に記載の量の(C)成分及び(D)成分とを、固形分濃度が22質量%となるように、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解させて、各実施例、及び比較例の硬化性組成物を得た。
なお、実施例1、実施例3、実施例4、比較例1、及び比較例2では(C)成分を用いなかった。また、実施例1、実施例2、比較例1、及び比較例2では(D)成分を用いなかった。
【0232】
得られた硬化性組成物を用いて、以下の方法に従って、硬化性と、硬化膜の密着性と、硬化膜の耐熱性とを評価した。なお、比較例1の硬化性組成物については、硬化性が不良であったため、硬化膜の密着性と、硬化膜の耐熱性との評価を行わなかった。これらの評価結果を表1に記す。
【0233】
<硬化性の評価>
以下の方法に従った、硬化性組成物を用いて形成される硬化膜の耐薬品性(耐NMP性)の評価に基づいて、硬化性組成物の硬化性を評価した。
まず、硬化性組成物を、基板上に膜厚1μmで塗布した。形成された塗布膜に、Prebake(100℃−2分間)と、露光(100mJ/cm)と、Postbake(230℃−20分間)をこの順で施し、硬化膜を得た。得られた硬化膜をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に、室温にて5分間浸漬させて、耐薬品性試験を行った。NMP浸漬後の硬化膜の膜厚の減少量又は膜厚の増加量が、NMP浸漬前の硬化膜の膜厚の1%以内であれば◎と判定し、1%超3%以内であれば○と判定し、3%超であれば×と判定した。
【0234】
<密着性評価>
硬化性評価と同様の方法で基板上に形成された硬化膜に、クロスカット(幅1mmの格子状の切れ込み)を入れ、JIS Z 1522に規定されたテープテストを行い、硬化膜の剥がれの有無を確認した。剥がれが全くなかった場合を◎と判定し、剥がれたマス目の数が5%以下であった場合を○と判定し、剥がれたマス目の数が5%超であった場合を×と判定した。
【0235】
<耐熱性評価>
硬化性評価と同様の方法で基板上に硬化膜を形成した。形成された硬化膜の一部を基板から剥離させて、試料を得た。得られた試料を用いて大気中での熱重量分析(TGDTA)を行い、耐熱性を評価した。
熱重量分析は、室温(20℃)から、10℃/分の昇温速度で加熱して行った。
分析開始時の重量を基準として、重量が5%減少する温度(Td5%:5%重量減少温度)を測定した。
Td5%が430℃以上である場合を◎と判定し、Td5%が400℃以上430℃未満である場合を○と判定し、Td5%が400℃未満である場合を×と判定した。
【0236】
【表1】
【0237】
実施例1〜5によれば、それぞれ所定の構造の化合物を含む(A)硬化性化合物と、特定の構造の含ガリウムアニオンをアニオン部として含む塩である(B)カチオン重合開始剤とを含む硬化性組成物は、硬化性が良好であり、耐熱性(耐熱分解性)と、基材への密着性とが良好である硬化物を形成可能であることが分かる。
実施例2〜5によれば、硬化性組成物が、(B)カチオン重合開始剤とともに(C)他のカチオン重合開始剤か、(D)硬化促進剤を含む場合、硬化性組成物の硬化性が特に良好であり、耐熱性(耐熱分解性)と、基材への密着性とが特に良好な硬化物を形成可能であることが分かる。
【0238】
他方、比較例1及び2によれば、硬化性組成物が、所定の構造の化合物を含む(A)硬化性化合物と、特定の構造の含ガリウムアニオンをアニオン部として含む塩である(B)カチオン重合開始剤との少なくとも一方を含む場合、良好な硬化性と、硬化物の良好な密着性と、硬化物の良好な耐熱性(耐熱分解性)とのすべてを満たすことができないことが分かる。