(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したスパッタ装置では、処理槽の周方向において、ガスの流量における分布が、導入部材が有する導入口の位置によって固定される。そのため、処理槽の周方向においてガスの流量における分布を変えることができる処理装置が求められている。
【0005】
なお、こうした事項は、スパッタ装置に限らず、他の処理装置であって、処理対象に対する所定の処理を行うときに、処理槽内にガスを供給する処理装置においても共通する。また、こうした事項は、導入部が導入部材を有する構成に限らず、処理槽の周方向における一部にガスを導入する2つ以上の配管を備える構成においても共通する。
本発明は、処理槽の周方向において、ガスの流量における分布を変えることを可能とした処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための処理装置は、処理対象に対する処理が行われる処理空間を区画する処理槽と、前記処理空間に通じる途中に保持空間を含み、前記処理空間における互いに異なる2以上の供給位置に向けてガスを通すガス通路と、前記保持空間に保持され、前記保持空間内での位置が変わることによって、前記保持空間から1つの前記供給位置に向かう部分のコンダクタンスを前記保持空間から他の前記供給位置に向かう部分のコンダクタンスと異ならせるように構成された流量変更部と、前記保持空間内での前記流量変更部の位置を変える位置変更部と、前記位置変更部の駆動を制御する制御部であって、前記制御部は、前記位置変更部に、前記保持空間内において前記流量変更部の位置を変えさせることによって、1つの前記供給位置と他の前記供給位置との間において前記コンダクタンスを異ならせる前記制御部と、を備える。
【0007】
上記構成によれば、位置変更部が流量変更部の位置を変えることによって、1つの供給位置と他の供給位置との間において、保持空間から各供給位置に向かう部分のコンダクタンスを異ならせることができるため、処理槽の周方向において、ガスの流量における分布を変えることが可能である。
【0008】
上記処理装置において、前記処理槽は、筒状を有し、前記ガス通路のなかで、前記保持空間から前記処理空間までの部分は、前記処理槽の周方向に沿う環状を有し、前記保持空間は、前記処理槽の周方向に沿う環状を有し、前記流量変更部は、前記保持空間における周方向の全体に位置してもよい。
【0009】
上記構成によれば、保持空間の周方向における全体に流量変更部が位置し、かつ、ガス通路のなかで、保持空間から処理空間に向かう部分が周方向に沿う環状を有するため、処理槽における周方向の全体で、処理槽に供給されるガスの流量における分布を変えることができる。
【0010】
上記処理装置において、前記流量変更部は、前記保持空間の周方向に沿う環状を有した1つの変更部材から構成されてもよい。
上記構成によれば、流量変更部を構成する部材の点数が増えることを抑えつつ、処理槽の周方向において、処理空間に供給されるガスの流量に分布を形成することができる。
【0011】
上記処理装置において、前記流量変更部は、複数の変更部材から構成され、前記位置変更部は、前記各変更部材における位置を個別に変えるように構成されてもよい。
上記構成によれば、保持空間内において変更部材の位置を個別に変えることによって、処理槽の周方向において、ガスの流量における分布をより複雑にすることができる。
【0012】
上記処理装置において、前記位置変更部は、前記保持空間内での前記流量変更部の位置であって、高さ方向における位置と、径方向における位置とを個別に変えるように構成され、前記制御部は、前記位置変更部に、前記保持空間内において前記流量変更部の前記高さ方向の位置と前記径方向の位置との少なくとも一方を変えさせてもよい。
【0013】
上記構成によれば、高さ方向と径方向とによって規定される二次元方向において流量変更部の位置を変えることが可能であるため、流量変更部が一次元方向に沿ってのみ位置を変える構成と比べて、処理空間の周方向に沿ったコンダクタンスの分布をより細かく設定することが可能である。
【0014】
上記処理装置において、前記ガス通路は、前記ガスが流れる方向において、前記保持空間よりも上流に位置し、かつ、前記保持空間に通じる上流通路を含み、前記保持空間は、前記上流通路が繋がる上流開口と、前記上流開口よりも下流に位置し、かつ、前記処理空間に通じる下流開口を含み、前記ガスが流れる方向と直交する断面において、前記保持空間の断面積は、前記上流開口の断面積および前記下流開口の断面積よりも大きくてもよい。
【0015】
上記構成によれば、各開口の断面積よりも保持空間の断面積が大きいため、変更部材が位置することが可能な断面積が、各開口の断面積よりも大きい。それゆえに、保持空間の断面積が各開口の断面積よりも小さい構成と比べて、各開口の位置に対して変更部材が取り得る相対位置が多様になる。
【0016】
上記処理装置において、前記処理装置は、前記処理空間に露出する被スパッタ面を含むターゲットと、前記ターゲットに電力を供給するターゲット電源と、をさらに備えてもよい。
【0017】
上記構成によれば、スパッタ法を用いた処理を処理対象に行う処理装置において、処理槽内においてガスの流量に分布を形成すること、ひいては、処理槽内において成膜速度に分布を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1実施形態]
図1から
図11を参照して、処理装置をスパッタ装置として具体化した第1実施形態を説明する。以下では、スパッタ装置の構成、変更機構の構成、変更機構の作用、および、試験例を説明する。
【0020】
[スパッタ装置の構成]
図1が示すように、処理装置の一例であるスパッタ装置10は、筒状を有する真空槽11を備え、真空槽11の内部には、成膜対象Sを支持する支持部12が位置している。真空槽11は処理槽の一例であり、処理対象の一例である成膜対象Sに対する処理が行われる処理空間11Sを区画する。支持部12は例えば成膜対象Sを支持するステージである。成膜対象Sには、例えば、シリコン基板、ガラス基板、および、樹脂基板などを用いることができる。
【0021】
真空槽11において、支持部12の上方には、支持部12と対向するようにターゲット13が位置している。ターゲット13は、バッキングプレート14を介して真空槽11に固定されている。なお、
図1では、ターゲット13とバッキングプレート14とが真空槽11内に位置しているが、これらのうち、少なくともターゲット13の被スパッタ面13Sが真空槽11に露出していればよい。バッキングプレート14には、ターゲット電源15が接続され、ターゲット電源15はバッキングプレート14に電力を供給することによって、ターゲット13に電力を供給する。
【0022】
真空槽11の外側には、バッキングプレート14に対してターゲット13とは反対側に、磁気回路16が位置している。磁気回路16は筐体17によって取り囲まれている。筐体17は、真空槽11の周方向において磁気回路16の全体を取り囲む形状を有している。筐体17と磁気回路16との間に、処理空間11Sに供給されるスパッタガスが通るガス通路が位置している。ガス通路には、処理空間11Sに供給されるガスの流量を制御するガス供給部18が接続されている。ガス供給部18は、例えばマスフローコントローラーであり、スパッタ装置10の外部に位置するボンベに接続されている。
【0023】
真空槽11には、処理空間11S内のガスを排気する排気部19が接続されている。排気部19は、処理空間11Sの圧力を所定の圧力まで減圧する。排気部19は、例えば、ポンプとバルブとを含んでいる。
【0024】
スパッタ装置10は、制御部10Cをさらに備えている。制御部10Cは、スパッタ装置10が備える各部の駆動を制御することによって、処理空間11S内において成膜対象Sに対して所定の薄膜を形成する。
【0025】
こうしたスパッタ装置10では、成膜対象Sが支持部12上に配置された後、制御部10Cが、排気部19に処理空間11Sの圧力を所定の圧力まで減圧させる。次いで、制御部10Cが、ガス供給部18に所定の流量でスパッタガスを処理空間11Sに供給させる。そして、制御部10Cは、ターゲット電源15に電力をバッキングプレート14に供給させる。これにより、スパッタガスからプラズマが生成され、プラズマ中のイオンによって、ターゲット13の被スパッタ面13Sがスパッタされる。ターゲット13から放出されたスパッタ粒子が成膜対象Sに付着することによって、成膜対象Sに薄膜が形成される。
【0026】
本実施形態では、処理装置がスパッタ装置10として具体化されているため、真空槽11内においてスパッタガスの流量に分布を形成すること、ひいては、真空槽11内においてスパッタガスの流量に応じた成膜速度に分布を形成することができる。
【0027】
[変更機構の構成]
図2から
図4を参照して、変更機構の構成を説明する。以下では、
図2および
図3を参照して変更機構の第1例を説明し、
図3を参照して変更機構の第2例を説明する。なお、
図2および
図4は、真空槽11の径方向と高さ方向とによって規定される平面に沿う断面構造を示している。こうした断面構造において、真空槽11における径方向の中心を通る軸を対称軸とするとき、変更機構は、対象軸に対する一方と他方とに対称な構成を有している。そのため、
図2および
図4では、変更機構において、対称軸に対する一方のみを示し、他方の図示が省略されている。また、第1例と第2例との間では、位置変更部の構成が異なっているため、第2例の説明では、位置変更部の構成についてのみ詳しく説明する。
【0028】
[第1例]
図2が示すように、筐体17と磁気回路16との間に、ガス通路20が位置している。ガス通路20は、処理空間11Sにおける互いに異なる2以上の供給位置に向けてガスを通す通路であり、本実施形態では、ガス通路20のなかで保持空間20aから処理空間11Sまでの部分が真空槽11の周方向に沿う環状を有することによって、環状を有した供給位置に向けてガスを通す。ガス通路20と処理空間11Sとが繋がる部分が供給位置である。ガス通路20は、処理空間11Sに通じる途中に保持空間20aを含んでいる。保持空間20aは、真空槽11の周方向に沿う環状を有している。筐体17は、筐体17における他の部分に比べて、筐体17の径方向における外側に突き出た部分である突出部17aを含む。突出部17aによって区画される空間が、ガス通路20の一部である保持空間20aである。
【0029】
変更機構30は、流量変更部の一例である変更部材31と、位置変更部32とを備えている。変更部材31は、保持空間20aに保持され、保持空間20a内での位置が変わることによって、ガス通路20における保持空間20aから処理空間11Sにおける1つの供給位置に向かう部分のコンダクタンスを、保持空間20aから処理空間11Sにおける他の供給位置に向かう部分のコンダクタンスと異ならせるように構成されている。位置変更部32は、保持空間20a内での変更部材31の位置を変え、本実施形態では、位置変更部32は、高さ方向D1における位置と、径方向D2における位置とを個別に変えるように構成されている。
【0030】
位置変更部32が変更部材31の位置を変えることによって、1つの供給位置と他の供給位置との間において、保持空間20aから各供給位置に向かう部分のコンダクタンスを異ならせることができるため、真空槽11の周方向において、スパッタガスの流量における分布を変えることが可能である。
【0031】
変更部材31は、保持空間20aにおける周方向の全体に位置している。変更部材31は、保持空間20aの周方向に沿う環状を有した1つの部材である。保持空間20aの周方向における全体に変更部材31が位置し、かつ、ガス通路20のなかで、保持空間20aから処理空間11Sに向かう部分が周方向に沿う環状を有するため、真空槽11における周方向の全体で、真空槽11に供給されるスパッタガスの流量における分布を変えることができる。また、変更部材31が1つの部材から構成されるため、変更部材31を構成する部材の点数が増えることを抑えつつ、真空槽11の周方向において、処理空間11Sに供給されるスパッタガスの流量に分布を形成することができる。
【0032】
位置変更部32は、保持空間20aにおいて、変更部材31の位置を高さ方向D1および径方向D2の少なくとも一方に沿って変える。これにより、磁気回路16と変更部材31との間の距離、突出部17aの内周面のなかで、変更部材31よりも上方に位置する部分と変更部材31との間の距離、および、突出部17aの内周面のなかで、変更部材31よりも下方に位置する部分と変更部材31との間の距離の少なくとも1つが変わる。これにより、ガス通路20において、保持空間20aから処理空間11Sに向かう部分のコンダクタンスが、供給位置間において変わる。なお、コンダクタンスは、スパッタガスが流れる方向と直交する方向に沿うガス通路20の断面を単位時間に通過するスパッタガスの量である。
【0033】
位置変更部32は、駆動部32a、駆動軸32b、および、伸縮部32cを備えている。駆動軸32bは径方向D2に沿って延びる直線状を有し、駆動軸32bにおける一方の端部が先端部であり、他方の端部が基端部である。基端部は駆動部32aに接続され、先端部は変更部材31に接続されている。駆動部32aは、保持空間20aに対する駆動軸32bの位置を変える。駆動部32aは、高さ方向D1および径方向D2の各々に沿って駆動軸32bの位置を変えることが可能に構成されている。駆動軸32bには変更部材31が接続されているため、駆動軸32bの位置を駆動部32aが変えることにより、保持空間20aにおける変更部材31の位置が変わる。
【0034】
伸縮部32cは、径方向D2に沿って駆動軸32bが移動することに伴い、径方向D2に沿う長さが伸びたり縮んだりする。伸縮部32cは、駆動軸32bの周方向における全体を取り囲んでいる。駆動軸32bの先端部と磁気回路16との間の距離が小さくなることによって、伸縮部32cが縮み、先端部と磁気回路16との間の距離が大きくなることによって、伸縮部32cが伸びる。
【0035】
上述した制御部10Cは、位置変更部32の駆動を制御する。より詳しくは、制御部10Cは、位置変更部32の駆動部32aに電気的に接続し、駆動部32aの駆動を制御する。制御部10Cは、位置変更部32に、保持空間20a内において変更部材31の位置を変えさせることによって、1つの供給位置と他の供給位置との間において、保持空間20aから各供給位置に向かう部分のコンダクタンスを異ならせる。本実施形態では、制御部10Cは、位置変更部32に、保持空間20a内において変更部材31における高さ方向D1の位置と径方向D2の位置との少なくとも一方を変えさせることによって、1つの供給位置と他の供給位置との間においてコンダクタンスを異ならせる。
【0036】
真空槽11には防着板11aが位置し、防着板11aは、ターゲット13の被スパッタ面13Sと対向する平面視において、ターゲット13の周方向における全体を取り囲む環状を有している。スパッタ装置10では、ガス通路20を流れるスパッタガスは、ガス通路20における保持空間20aを通って、処理空間11Sに供給される。この際に、保持空間20aにおける変更部材31の位置によって、保持空間20aから処理空間11Sに向かうコンダクタンスが調整される。スパッタガスは、保持空間20aを通った後に、バッキングプレート14およびターゲット13と、防着板11aとによって区画される空間であって、処理空間11Sの一部に含まれる空間を通る。なお、防着板11aは省略されてもよい。
【0037】
図3が示すように、スパッタガスGsの流れる方向Fにおいて、所定の位置よりも前にスパッタガスGsが通る位置が、その位置よりも上流であり、所定の位置よりも後にスパッタガスGsが通る位置が、その位置よりも下流である。ガス通路20は、上流通路20bを含んでいる。上流通路20bは、スパッタガスGsが流れる方向Fにおいて、保持空間20aよりも上流に位置し、かつ、保持空間20aに通じている。保持空間20aは、上流通路20bが繋がる上流開口20a1と、上流開口20a1よりも下流に位置し、かつ、処理空間11Sに通じる下流開口20a2を含んでいる。スパッタガスGsが流れる方向Fと直交する断面において、保持空間20aの断面積は、上流開口20a1の断面積および下流開口20a2の断面積よりも大きい。
【0038】
本実施形態において、上流通路20bおよび下流開口20a2はそれぞれ、真空槽11の周方向に沿う環状を有している。なお、上流通路20bは、周方向の一部において高さ方向D1に沿う形状を有してもよいし、下流開口20a2は、周方向における位置が互いに異なる2以上の供給位置にスパッタガスを供給することが可能なように、周方向における互いに異なる複数の位置に配置された複数の開口によって構成されてもよい。
【0039】
高さ方向D1と径方向D2とによって規定される平面に沿う断面において、上流開口20a1の幅は上流幅W1であり、保持空間20aの幅は保持幅W2であり、下流開口20a2の幅は下流幅W3である。上流幅W1、保持幅W2、および、下流幅W3は、それぞれ真空槽11の周方向に沿って同じ幅に維持されている。保持幅W2は、上流幅W1および下流幅W3の両方よりも大きい。本実施形態では、上流幅W1と保持幅W2とは互いに同じ大きさであるが、上流幅W1と下流幅W3との両方が保持幅W2よりも小さければ、上流幅W1と下流幅W3とは互いに異なる大きさであってもよい。
【0040】
各開口の断面積よりも保持空間20aの断面積が大きいため、変更部材31が位置することが可能な断面積が、各開口の断面積よりも大きい。それゆえに、保持空間20aの断面積が各開口の断面積よりも小さい構成と比べて、各開口の位置に対して変更部材31が取り得る相対位置が多様になる。
【0041】
位置変更部32は、例えば、高さ方向D1における変更部材31の位置を、突出部17aのなかで磁気回路16とともに上流開口20a1を区画する部分と接する位置と、突出部17aのなかで磁気回路16とともに下流開口20a2を区画する部分と接する位置との間で変えることができる。言い換えれば、位置変更部32は、突出部17aの内周面に含まれる面のなかで、高さ方向D1における上面17a1と下面17a2との間において、変更部材31の位置を変えることができる。位置変更部32は、例えば、径方向D2における変更部材31の位置を、磁気回路16に接する位置と突出部17aに接する位置との間で変えることができる。
【0042】
制御部10Cは、位置変更部32のなかで駆動部32aに電気的に接続されている。制御部10Cは、高さ方向D1に沿って変更部材31の位置を変えさせるための制御信号と、径方向D2に沿って変更部材31の位置を変えさせるための制御信号とを駆動部32aに出力する。駆動部32aは、制御部10Cの出力した制御信号に応じて、変更部材31における高さ方向D1での位置と、径方向D2での位置を変える。このように、変更機構の第1例における位置変更部32は、1つの駆動部32aによって変更部材31における高さ方向D1における位置と径方向D2における位置とを変えることが可能に構成されている。
【0043】
[第2例]
図4が示すように、変更機構40が備える位置変更部41は、第1駆動部41a1、第2駆動部41a2、第1駆動軸41b1、第2駆動軸41b2、および、付勢部材41cを備えている。付勢部材41cは、高さ方向D1において、突出部17aの内周面における下面17a2と変更部材31との間に位置している。付勢部材41cは、突出部17aの内周面における下面17a2から上面17a1に向かう方向に沿って変更部材31を付勢している。
【0044】
第1駆動軸41b1は高さ方向D1に沿って伸びる直線状を有し、第1駆動軸41b1における一方の端部が先端部であり、他方の端部が基端部である。基端部は第1駆動部41a1に接続され、先端部は変更部材31に接続されている。第1駆動部41a1は、保持空間20aにおいて、高さ方向D1に沿う変更部材31の位置を変える。
【0045】
第2駆動軸41b2は径方向D2に沿って伸びる直線状を有し、第2駆動軸41b2における一方の端部が先端部であり、他方の端部が基端部である。基端部は第2駆動部41a2に接続され、先端部は変更部材31に接続されている。第2駆動部41a2は、保持空間20aにおいて径方向D2に沿う変更部材31の位置を変える。
【0046】
制御部10Cは、位置変更部41のなかで第1駆動部41a1と第2駆動部41a2との両方に電気的に接続されている。制御部10Cは、高さ方向D1に沿って変更部材31の位置を変えさせるための制御信号を第1駆動部41a1に出力し、径方向D2に沿って変更部材31の位置を変えさせるための制御信号を第2駆動部41a2に出力する。第1駆動部41a1は、制御部10Cの出力した制御信号に応じて、変更部材31における高さ方向D1での位置を変える一方で、第2駆動部41a2は、制御部10Cの出力した制御信号に応じて、変更部材31における径方向D2での位置を変える。
【0047】
[変更機構の作用]
図5から
図8を参照して、変更機構の作用を説明する。
図5が示すように、ターゲット13の被スパッタ面13Sと対向する平面視において、磁気回路16の中心C1と変更部材31の中心C2とがほぼ一致しているとき、磁気回路16と変更部材31との間の隙間Gは、変更部材31の周方向においてほぼ一定である。そのため、保持空間20aから処理空間11Sに向かうコンダクタンスも、変更部材31の周方向においてほぼ一定である。結果として、処理空間11Sに供給される単位時間当たりのスパッタガスGsの流量は、変更部材31の周方向においてほぼ一定である。
【0048】
図6が示すように、ターゲット13の被スパッタ面13Sと対向する平面視において、磁気回路16の中心C1と変更部材31の中心C2とが一致していないとき、磁気回路16と変更部材31の間の隙間Gは、変更部材31の周方向において一定でない。
図6が示す例では、磁気回路16の中心C1に対して、変更部材31の中心C2が、紙面の左右方向において左側にずれている。そのため、紙面の左右方向において、磁気回路16の中心C1よりも右側における隙間Gは、磁気回路16の中心C1よりも左側における隙間Gよりも小さい。それゆえに、保持空間20aから処理空間11Sに向かう部分のコンダクタンスにおいて、磁気回路16の中心C1よりも右側におけるコンダクタンスは、磁気回路16の中心C1よりも左側におけるコンダクタンスよりも小さい。結果として、処理空間11Sに供給される単位時間当たりのスパッタガスGsの流量は、変更部材31の周方向において偏りを有する。より詳しくは、紙面の左右方向において、磁気回路16の中心C1よりも右側における流量は、磁気回路16の中心C1よりも左側における流量よりも小さい。
【0049】
このように、径方向D2に沿って保持空間20aに対する変更部材31の位置を変えることによって、スパッタガスGsの流量において、周方向に沿って偏りを生じさせることができる。
【0050】
また、
図7が示すように、保持空間20aにおいて、変更部材31が、突出部17aの内周面における上面17a1および下面17a2の両方から離れるように位置することができる。このとき、上面17a1と変更部材31との間に形成される通路を通ったスパッタガスGsは、下面17a2と変更部材31との間に形成される通路を通って、下流開口20a2から処理空間11Sに向けて流れる。そのため、下流開口20a2を通じて処理空間11Sに供給されるスパッタガスGsには、磁気回路16と変更部材31との間に形成される通路を通ったスパッタガスGsと、下面17a2と変更部材31との間に形成される通路とを通ったスパッタガスGsとが含まれる。
【0051】
これに対して、
図8が示すように、保持空間20aにおいて、変更部材31は、上面17a1から離れる一方で、下面17a2に接するように位置することができる。このとき、下流開口20a2を通じて処理空間11Sに供給されるスパッタガスGsには、磁気回路16と変更部材31との間に形成される通路を通ったスパッタガスGsが含まれる。これに対して、下面17a2と変更部材31との間には通路が形成されないため、こうした通路を通るスパッタガスGsも下流開口20a2を通じて処理空間11Sに供給されるスパッタガスGsには含まれない。
【0052】
このように、高さ方向D1に沿って保持空間20aに対する変更部材31の位置を変えることによって、下流開口20a2を通じて処理空間11Sに供給されるスパッタガスGsの流量を、真空槽11の周方向における全体において変えることができる。
【0053】
本実施形態のように、高さ方向D1と径方向D2とによって規定される二次元方向において変更部材31の位置を変えることが可能であれば、変更部材31が一次元方向に沿ってのみ位置を変える構成と比べて、処理空間11Sの周方向に沿ったコンダクタンスの分布をより細かく設定することが可能である。
【0054】
[試験例]
図9から
図11を参照して、試験例を説明する。
[試験例1]
図9および
図10を参照して、試験例1を説明する。
図9は、試験例1のスパッタ装置における断面構造であって、高さ方向D1と径方向D2とによって規定される平面に沿う断面構造を示している。
【0055】
図9が示すように、試験例1のスパッタ装置10Tにおいて、保持空間20aにおける高さ方向D1に沿う幅が第1幅Waであり、径方向D2に沿う幅が第2幅Wbである。第1幅Waと第2幅Wbとを等しい値とし、それぞれ20mmに設定した。保持空間20aの下流開口20a2における径方向D2に沿う幅が第3幅Wcであり、第3幅Wcを2mmに設定した。変更部材31における高さ方向D1に沿う幅が第4幅Wdであり、径方向D2に沿う幅が第5幅Weである。第4幅Wdと第5幅Weとを等しい値とし、それぞれ10mmに設定した。
【0056】
高さ方向D1と径方向D2とによって規定される平面に沿う断面において、変更部材31のうち、紙面の中央よりも右側に位置する部分を第1部分31aに設定し、紙面の中央よりも左側に位置する部分を第2部分31bに設定した。第1部分31aと磁気回路16との間におけるスパッタガスの流量を第1流量Q1に設定し、第2部分31bと磁気回路16との間における流量を第2流量Q2に設定した。そして、第1部分31aと第2部分31bとの両方において、各部分と突出部17aの内周面における下面との間における流量を第3流量Q3に設定した。すなわち、ガス通路20のなかで第1部分31aの周りを通って処理空間11Sに供給されるスパッタガスの総流量である第1総流量Qaと、ガス通路20のなかで第2部分31bの周りを通って処理空間11Sに供給されるスパッタガスの総流量である第2総流量Qbとは、それぞれ以下の式によって表すことができる。
【0058】
また、ガス通路20のなかでスパッタガスが第1流量Q1で流れる部分、すなわち、第1部分31aと磁気回路16との間の距離を第1距離d1に設定した。さらに、ガス通路20のなかでスパッタガスが第3流量Q3で流れる部分、すなわち、第1部分31aと突出部17aの内周面における下面との間の距離を第3距離d3に設定した。
【0059】
第1距離d1に対する第3距離d3の比と、第1総流量Qaと第2総流量Qbとの流量差の最大値との関係は、
図10に示す通りである。
図10が示すように、変更部材31が高さ方向D1における位置と径方向D2における位置との両方を変えることが可能な構成によれば、第3距離d3が第1距離d1以上であるときには、径方向D2に沿って変更部材31の位置を変えることによって、第1総流量と第2総流量との差を最大で4%とすることができることが認められた。これに対して、第3距離d3が第1距離d1よりも小さいときには、径方向D2に沿って変更部材31の位置を変えることによって、第1総流量Qaと第2総流量Qbとの差を最大で100%とすることができることが認められた。すなわち、第1総流量Qaを所定の流量に設定する一方で、第2総流量Qbを0に設定すること、あるいは、第1総流量Qaを0に設定する一方で、第2総流量Qbを所定の流量に設定することが可能であることが認められた。
【0060】
このように、第3距離d3が第1距離d1以上であるときには、径方向D2に沿う変更部材31の位置における変化量に対して、第1総流量Qaと第2総流量Qbとの差における変化量を、第3距離d3が第1距離d1よりも小さいときと比べて小さくすることができることが認められた。言い換えれば、第3距離d3が第1距離d1以上であるときには、変更部材31の移動によって、第1総流量Qaと第2総流量Qbとの差を微量ずつ変化させることができることが認められた。
【0061】
これに対して、第3距離d3が第1距離d1よりも小さいときには、径方向D2に沿う変更部材31の位置における変化量に対して、第1総流量Qaと第2総流量Qbとの差における変化量を、第3距離d3が第1距離d1以上であるときと比べて大きくすることができることが認められた。言い換えれば、第3距離d3が第1距離d1よりも小さいときには、変更部材31の移動によって、第1総流量Qaと第2総流量Qbとの差を急峻に変化させることができることが認められた。こうした効果は、第1距離d1に対する第3距離の比が0.5以下であるときに顕著であることが認められた。
【0062】
[試験例2]
半径が150mmであるシリコン基板を準備し、試験例1で説明したスパッタ装置10Tを用いてシリコン基板にタングステン膜を形成したときの膜厚を測定した。膜厚の測定結果は、
図11に示すとおりであった。なお、
図11では、スパッタガスの流量が、変更部材31の周方向においてほぼ一定である条件でタングステン膜を形成したときの膜厚を破線で示し、スパッタガスの流量が、変更部材31の周方向において偏りを有する状態でタングステン膜を形成したときの膜厚を実線で示している。
【0063】
図11は、シリコン基板における位置と、膜厚との関係を示すグラフである。
図11の横軸において、シリコン基板の中心を0mmに設定し、例えば、半径が正の値であるとき、シリコン基板の中心よりも右側の位置であり、半径が負の値であるとき、シリコン基板の中心よりも左側の位置であると設定する。また、
図11の縦軸は、シリコン基板の中心における膜厚によって、シリコン基板の各位置における膜厚を正規化したときの膜厚を示している。
【0064】
図11が示すように、スパッタガスの流量が、変更部材31の周方向においてほぼ一定である条件で成膜したときには、シリコン基板の中心から右側の縁に向けて膜厚が小さくなり、かつ、シリコン基板の中心から左側に向けて膜厚が大きくなることが認められた。言い換えれば、シリコン基板の中心から右側の縁に向かう方向に沿って、成膜速度が低くなり、シリコン基板の中心から左側の縁に向かう方向に沿って、成膜速度が高くなることが認められた。
【0065】
これに対して、スパッタガスの流量が、変更部材31の周方向において偏りを有するように変更部材31の位置を変えたところ、
図11の実線で示すように、シリコン基板の面内において膜厚の均一性が高められることが認められた。より詳しくは、ターゲット13の被スパッタ面13Sと対向する平面視において、変更部材31の中心C2を、磁気回路16の中心C1に対して右側にずらすことによって、スパッタガスの流量が、変更部材31の中心に対する右側において中心に対する左側よりも大きくなるように、変更部材31の位置を変えた。これにより、シリコン基板の中心から右側の縁に向かうほど、スパッタガスの流量が大きくなり、シリコン基板の中心から左側の縁に向かうほど、スパッタガスの流量が小さくなるため、結果として、シリコン基板の面内において成膜速度のばらつきが抑えられることが認められた。
【0066】
以上説明したように、処理装置の第1実施形態によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)位置変更部32が変更部材31の位置を変えることによって、1つの供給位置と他の供給位置との間において、保持空間20aから各供給位置に向かう部分のコンダクタンスを異ならせることができるため、真空槽11の周方向において、スパッタガスの流量における分布を変えることが可能である。
【0067】
(2)保持空間20aの周方向における全体に変更部材31が位置し、かつ、ガス通路20のなかで、保持空間20aから処理空間11Sに向かう部分が周方向に沿う環状を有するため、真空槽11における周方向の全体で、真空槽11に供給されるスパッタガスGsの流量における分布を変えることができる。
【0068】
(3)変更部材31が1つの部材から構成されるため、変更部材31を構成する部材の点数が増えることを抑えつつ、真空槽11の周方向において、処理空間11Sに供給されるスパッタガスGsの流量に分布を形成することができる。
【0069】
(4)変更部材31が一次元方向に沿ってのみ位置を変える構成と比べて、処理空間11Sの周方向に沿ったコンダクタンスの分布をより細かく設定することが可能である。
【0070】
(5)各開口の断面積よりも保持空間20aの断面積が大きいため、変更部材31が位置することが可能な断面積が、各開口の断面積よりも大きい。それゆえに、保持空間20aの断面積が各開口の断面積よりも小さい構成と比べて、各開口の位置に対して変更部材31が取り得る相対位置が多様になる。
【0071】
(6)真空槽11内においてスパッタガスの流量に分布を形成すること、ひいては、真空槽11内において成膜速度に分布を形成することができる。
【0072】
なお、上述した第1実施形態は、以下のように適宜変更して実施することができる。
・位置変更部32および変更部材31は、1次元方向に沿ってのみ変更部材31の位置を変えることが可能に構成されてもよい。こうした構成であっても、変更部材31が、1つの供給位置と他の供給位置との間において、保持空間20aから各供給位置に向かうコンダクタンスを変えることが可能であれば、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
【0073】
・保持空間20aの断面積は、上流開口20a1および下流開口20a2の断面積と等しくてもよいし、各開口の断面積よりも小さくてもよい。こうした構成によっても、変更部材31が、1つの供給位置と他の供給位置との間において、保持空間20aから各供給位置に向かうコンダクタンスを変えることが可能であれば、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
【0074】
・流量変更部は、複数の変更部材から構成されてもよい。こうした構成では、スパッタ装置10が、各変更部材における高さ方向D1の位置および径方向D2における位置を個別に制御することができる位置変更部を備えることによって、以下に記載の効果を得ることができる。なお、スパッタ装置10は、流量変更部が複数の変更部材から構成されるときに、全ての変更部材における位置を、流量変更部が1つの変更部材から構成されるときと同様に制御することができる位置変更部を備えてもよい。
【0075】
(7)保持空間20a内において変更部材の位置を個別に変えることによって、真空槽11の周方向において、スパッタガスの流量における分布をより複雑にすることができる。
【0076】
・スパッタ装置10は、スパッタガスGsが通り、かつ、変更部材31を保持する保持空間20aを含むガス通路20として、磁気回路16と筐体17とが形成するガス通路に限らず、スパッタ装置10を構成する他の部材によって形成されるガス通路を備えてもよい。
【0077】
・処理装置をスパッタ装置として具体化したが、処理装置は、スパッタ装置に限らず、処理空間に対して所定のガスを供給することによって、処理対象に対してスパッタ法による処理以外の所定の処理を行う装置であってもよい。処理装置は、例えば、熱CVD装置、光CVD装置、プラズマCVD装置、プラズマエッチング装置、ALE(Atomic Layer Epitaxy)装置、および、ALD(Atomic Layer Deposition)装置などとして具体化することも可能である。
【0078】
[第2実施形態]
図12を参照して、処理装置をスパッタ装置として具体化した第2実施形態を説明する。第2実施形態は、第1実施形態と比べて、スパッタ装置に対する変更機構の位置が異なる。そのため以下では、こうした相違点を詳しく説明する一方で、第1実施形態と共通する構成には、同じ符号を付すことによってその詳しい説明を省略する。
【0079】
[変更機構の構成]
図12が示すように、スパッタ装置50の真空槽11には、真空槽11の処理空間11Sにスパッタガスを供給する供給配管51が固定されている。供給配管51は、真空槽11の外部に位置する第1部分51aと、真空槽11を貫通するとともに、真空槽11の内部に位置する部分を含む第2部分51bとを含んでいる。第1部分51aと第2部分51bとは、それぞれ真空槽11の周方向に沿う環状を有している。
【0080】
供給配管51がガス通路52を区画し、ガス通路52のなかで、第1部分51aによって区画される部分が保持空間52aであり、第2部分51bによって区画される部分が下流通路52bである。保持空間52aにおいて、下流通路52bが繋がる開口が、下流開口52a1である。供給配管51には、図示されないガス供給部が接続され、処理空間11Sには、供給配管51が区画するガス通路52を通じてスパッタガスが供給される。
【0081】
変更機構60は、第1実施形態の変更機構と同様、変更部材61と位置変更部62とを備えている。変更部材61は、真空槽11の周方向に沿う環状を有し、保持空間52aにおける周方向の全体に位置している。位置変更部62は、第1実施形態の第1例と同様、駆動部62a、駆動軸62b、および、伸縮部62cを備えている。駆動軸62bは径方向D2に沿って延びる直線状を有し、駆動軸62bの基端部は駆動部62aに接続され、先端部は変更部材61に接続されている。駆動部62aは、保持空間52aに対する駆動軸62bの位置を変えることで、変更部材61の位置を変える。制御部10Cは、駆動部62aに電気的に接続され、駆動部62aの駆動を制御する。
【0082】
変更機構60が保持空間52aに対する変更部材61の位置を変えることによって、下流開口52a1に対する変更部材61の位置が変わる。これにより、保持空間52aから処理空間11Sに向かう通路において、1つの供給位置に向かう部分のコンダクタンスと他の供給位置に向かう部分のコンダクタンスとが互いに異なる。こうした変更機構60によれば、スパッタガスが、スパッタ装置50の外部からスパッタ装置50の内部に供給されるときに、真空槽11の周方向における分布が、変更機構60によって形成される。
以上説明した処理装置の第2実施形態によれば、上述した(1)から(6)の効果を得ることができる。
【0083】
なお、上述した第2実施形態は、以下のように適宜変更して実施することができる。
・供給配管51において、第1部分51aおよび第2部分51bの少なくとも一方が、真空槽11の径方向D2に沿って延びる線状を有してもよい。なお、第2部分51bが真空槽11の径方向D2に沿って延びる線状を有する構成では、供給配管51は、2つ以上の第2部分51bを有することによって、処理空間11Sにおける互いに異なる2以上の供給位置に向けてスパッタガスを供給することができる。また、第1部分51aが真空槽11の径方向D2に沿って延びる線状を有する構成では、第1部分51aが区画する保持空間52aに位置する変更部材は、第1部分51aに収容される形状、例えば立方体状や直方体状を有してればよい。
【0084】
・変更機構60が備える位置変更部62は、上述した第1実施形態の位置変更部における第1例と同等の構成に限らず、第1実施形態の位置変更部における第2例と同等の構成であってもよい。