(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記混合液を前記処理槽の中に供給する前に、高吸水性ポリマーの吸水性能を不活化可能な水溶液を用いて前記混合物を処理して、前記混合物中の前記高吸水性ポリマーの吸水性能を不活化する不活化手段と、
前記混合液を前記処理槽の中に供給する前に、不活化された前記高吸水性ポリマーを含む前記繊維を前記水溶液から分離する分離手段と、
を更に備える、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1において、パルプ繊維に残留する高吸水性ポリマーをできるだけ多く除去しようとすれば、オゾン含有水溶液中に水流を発生させて、オゾンに接触するパルプ繊維の面積をできるだけ大きくする必要がある。一方、パルプ繊維の処理の効率を高めようとすれば、できるだけ多くのパルプ繊維をオゾン含有水溶液に投入する必要がある。しかし、多くのパルプ繊維をオゾン含有水溶液に投入すると、オゾン含有水溶液内において、撹拌やオゾンガスによる水流の速度が低下してしまい、場合によっては水流が起こり難くなるおそれがある。そうなると、オゾンに接触するパルプ繊維の面積を大きくし難くなるので、パルプ繊維の処理のムラが生じる、すなわち高吸水性ポリマーの除去が不十分になる。オゾン含有水溶液中のオゾン濃度を高めても、水流の速度が低下又は水流が起こり難ければ、高吸水性ポリマーの除去が不十分となることに変わりはない。そして、その結果、再生されたパルプ繊維、すなわちリサイクルパルプの純度が低下してしまい、再利用の用途が限定されるなど、再利用し難くなってしまう。そうかといって、処理時間を長くして高吸水性ポリマーの除去を十分に行おうとすれば、パルプ繊維の処理の効率が低下して、リサイクルパルプを効率的に製造することが困難となる。そして、このようなことは高吸水性ポリマーを含むパルプ繊維からリサイクルパルプを製造する場合だけでなく、高吸水性ポリマーを含む他の繊維からリサイクル繊維を製造する場合にも起こり得る。
【0005】
本発明の目的は、高吸水性ポリマーを含む繊維から、高吸水性ポリマーを除去して、リサイクル繊維を製造する方法において、繊維から高吸水性ポリマーを適切に除去しつつ、リサイクル繊維を効率よく製造することが可能な方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明における繊維及び高吸水性ポリマーの混合物からリサイクル繊維を製造する方法は次のとおりである。(1)繊維及び高吸水性ポリマーの混合物からリサイクル繊維を製造する方法であって、高吸水性ポリマーを含む繊維と水とを含有する混合液を、高吸水性ポリマーを溶解可能な処理液を有する処理槽の中に、第1の流量で連続的に供給しつつ、前記高吸水性ポリマーが溶解され、除去された前記繊維を含有する前記処理液を、前記処理槽の外に、第2の流量で連続的に排出する連続処理工程、を備える、方法。
本方法は、高吸水性ポリマー及び繊維を含む混合液を、高吸水性ポリマーを溶解可能な処理液を有する処理槽の中に、第1の流量(体積又は質量/時間)で連続的に供給しつつ、高吸水性ポリマーを除去された繊維を含み、かつ、高吸水性ポリマーが酸化分解されて生成した低分子量の有機物を含む処理液を、処理槽の外に、第2の流量(体積又は質量/時間)で連続的に排出する。それゆえ、処理槽における混合液を供給する供給口から混合液又は処理液を排出する排出口へ向かって連続的かつ安定的な流体の流れを強制的に発生させることができる。その流体の流れ、すなわち水流により、繊維の処理量を多くしても、処理液に接触する繊維の面積を多くすることができ、繊維を処理液に満遍なく接触させることが可能となる。したがって、繊維の処理量を多くしても、繊維の処理のムラを抑制して、高吸水性ポリマーを適切に処理液中に溶解させて除去できる。それにより、再生された繊維、すなわちリサイクル繊維の純度を高くすることができ、再利用し易いリサイクル繊維を製造できる。よって、繊維から高吸水性ポリマーを適切に除去できると共に、リサイクル繊維を効率よく製造することが可能となる。
【0007】
本方法は、(2)前記連続処理工程は、前記混合液を、前記処理槽の上部から連続的に供給しつつ、前記処理液を、前記処理槽の下部から連続的に排出する工程、を含む、上記(1)に記載の方法、であってもよい。
混合液の高吸水性ポリマーを含む繊維は、通常比重が処理液よりも大きいため、処理液中では浮力よりも重力が勝って自然に沈降する。したがって、混合液、すなわち繊維を処理槽中で下部から上部へ向かって供給しても、再び下部へ戻ってきてしまうおそれがある。更に、処理槽内に発生させる流体の流れが下部から上部へ向かう流れの場合、流体の中には重力に負けて処理槽の底部の隅などに滞留する部分が生じるおそれがある。それらの場合、繊維から高吸水性ポリマーを除去する処理の効率が低下してしまう。そこで、本方法は、処理液において、高吸水性ポリマーを含む繊維を上部から下部へ移動するように、処理槽の上部から混合液を供給し、処理槽の下部から処理液を排出する。それにより、処理槽において上部から下部に向かって連続的かつ安定的な流体の流れを発生させることができる。その結果、高吸水性ポリマーを含む繊維は重力及びその流体の流れにより、処理槽内の角や端に滞留することなく、処理槽の上部から下部へより円滑に移動しつつ、処理液による処理を受けることができる。したがって、処理液による処理が終了した繊維をそのまま処理槽の下部から外へ排出することができる。すなわち、高吸水性ポリマーを含む繊維に対して効率的に処理を行うことができる。よって、リサイクル繊維を効率よく製造することが可能となる。
【0008】
本方法は、(3)前記高吸水性ポリマーを溶解可能な処理液は、前記高吸水性ポリマーを溶解可能に分解するガス状物質を含有する水溶液であり、前記連続処理工程は、前記ガス状物質の複数の気泡を前記処理液の下部から上部へ向かって連続的に送出する送出工程、を更に含む、上記(2)に記載の方法、であってもよい。
本方法は、処理液において、ガス状物質が下部から上部へ移動し、高吸水性ポリマーを含む繊維が上部から下部へ移動すること、すなわち対向流になっている。それにより、繊維に含まれる高吸水性ポリマーとガス状物質との接触確率を高めることができる。また、高吸水性ポリマーを含む繊維がより深く沈降するほど、より高い濃度のガス状物質と接触することができる。したがって、処理液における浅いところで接触したガス状物質だけでは処理液中に溶解し切れなかった高吸水性ポリマーを、処理液における深いところで高濃度のガス状物質と接触させることができる。それにより、高吸水性ポリマーを確実に処理液に溶解できる。よって、繊維に含まれる高吸水性ポリマーを確実に処理液中に溶解させて、繊維から除去することができる。
【0009】
本方法は、(4)前記送出工程は、前記ガス状物質を、マイクロバブル又はナノバブルの状態で送出する工程を含む、上記(3)に記載の方法、であってもよい。
本方法では、マイクロバブル又はナノバブルのような微細な気泡のガス状物質を処理槽の処理液の下部から上部に向けて送出する。微細な気泡は上昇速度が遅いため、気泡が繊維に接触する確率を高められる。更に、微細な気泡は繊維の表面での占有領域が狭いため、より多くの気泡が繊維の表面に接触できる。それにより、高吸水性ポリマーを含む繊維を微細な気泡で満遍なく包み込むことができ、高吸水性ポリマーを含む繊維とガス状物質との接触面積をより増加させることができる。更に、より多くの気泡が繊維の表面に接触することで、微細な気泡の浮力により、高吸水性ポリマーを含む繊維の沈降速度を低下させ、高吸水性ポリマーを含む繊維とガス状物質との接触時間をより増加させることができる。これらにより、繊維に含まれる高吸水性ポリマーをより確実に処理液中に溶解させて、繊維から除去することができる。
【0010】
本方法は、(5)前記ガス状物質は、オゾンを含む、上記(3)又は(4)に記載の方法、であってもよい。
本方法は、繊維に含まれる高吸水性ポリマーを、オゾン含有水溶液に供給している。その結果、繊維に含まれる高吸水性ポリマーをオゾンにより酸化・分解できるので、その酸化・分解による生成物をその水溶液に確実に溶解できる。すなわち、繊維から高吸水性ポリマーを適切に除去できる。その結果、再生された繊維、すなわちリサイクル繊維の純度をより高くすることができる。更に、オゾン含有水溶液を用いることで、繊維を漂白することができ、リサイクル繊維の色をより白色に近づけることができる。更に、オゾン含有水溶液を用いることで、繊維を殺菌することができ、リサイクル繊維をより清潔にすることができる。したがって、再利用し易いリサイクル繊維を製造できる。よって、繊維から高吸水性ポリマーを適切に除去できると共に、リサイクル繊維を効率よく製造することが可能となる。
【0011】
本方法は、(6)前記繊維はパルプ繊維である、上記(1)乃至(5)のいずれか一項に記載の方法、であってもよい。
本方法では、繊維がパルプ繊維である。したがって、パルプ繊維に含まれる高吸水性ポリマーを処理液に溶解することにより、パルプ繊維から高吸水性ポリマーを適切に除去できる。その結果、再生されたパルプ繊維、すなわちリサイクルパルプの純度を高くすることができる。それにより、再利用し易いリサイクルパルプを製造できる。よって、パルプ繊維から高吸水性ポリマーを適切に除去できると共に、リサイクルパルプを効率よく製造することが可能となる。
【0012】
本方法は、(7)前記処理液は酸性水溶液である、上記(1)乃至(6)のいずれか一項に記載の方法、でもよい。
本方法では、処理液は酸性水溶液(例示:pH5以下)である。繊維に含まれる高吸水性ポリマーに部分的に吸水能力が残存していた場合でも、高吸水性ポリマーの吸水膨張を抑制することができる。それにより、高吸水性ポリマーを処理液により短時間で溶解できて、高吸水性ポリマーを繊維からより確実に除去できる。特に、処理液がオゾン含有水溶液の場合には、オゾン含有水溶液中のオゾンを失活し難くできるので、高吸水性ポリマーを短時間で酸化・分解でき、溶解できて、高吸水性ポリマーを繊維からより確実に除去できる。
【0013】
本方法は、(8)前記連続処理工程の前に、高吸水性ポリマーの吸水性能を不活化可能な水溶液を用いて前記混合物を処理して、前記混合物中の前記高吸水性ポリマーの吸水性能を不活化する不活化工程と、前記連続処理工程の前に、不活化された前記高吸水性ポリマーを含む前記繊維を前記水溶液から分離する分離工程と、を更に備える、上記(1)乃至(7)のいずれか一項に記載の方法、であってもよい。
本方法では、不活化工程において、高吸水性ポリマーの吸水性能を不活化可能な水溶液で、高吸水性ポリマーの吸水性能を抑制するので、後工程の連続処理工程の段階で、より容易に、高吸水性ポリマーを処理液により短時間で溶解できる。すなわち、高吸水性ポリマーを繊維からより確実に除去できる。
【0014】
本方法は、(9)前記不活化工程において、前記高吸水性ポリマーの吸水性能を不活化可能な水溶液は、酸性水溶液である、上記(8)に記載の方法、であってもよい。
本方法では、高吸水性ポリマーの吸水性能を不活化可能な水溶液が酸性水溶液(例示:pH2.5以下)であり、酸性水溶液は高吸水性ポリマーを不活化する効果が高いので、不活化工程の段階で、高吸水性ポリマーの吸水性能をより確実に抑制することができる。それにより、後工程の連続処理工程の段階で、より容易に、高吸水性ポリマーを処理液により短時間溶解できる。すなわち、高吸水性ポリマーを繊維からより確実に除去できる。
【0015】
本方法は、(10)前記処理槽は、少なくとも互いに直列に連結された第1の処理槽と第2の処理槽とを含む、上記(1)乃至(9)のいずれか一項に記載の方法、であってもよい。
本方法では、処理槽が、少なくとも互いに直列に連結された第1の処理槽と第2の処理槽とを含んでいる。その場合、例えば、第1の処理槽は、混合液を供給され、第1の処理済み液(混合液又は第1の処理槽の処理液)を排出し、第2の処理槽は、第1の処理済み液を供給され、第2の処理済み液(第1の処理済み液又は第2の処理槽の処理液)を排出する、というように混合液が多段階に処理される。その場合、容量の大きな処理槽を一個備える場合と比較して、各槽ごとに新しい処理液で処理が行われるので、例えば、第1の処理槽(初段の処理槽)において溶解し切れなかった高吸水性ポリマーを、第2の処理槽(次段の処理槽)において容易に溶解できる、など、高吸水性ポリマーをより確実に溶解できて、繊維から除去できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の方法によれば、高吸水性ポリマーを含む繊維から、高吸水性ポリマーを除去して、リサイクル繊維を製造する方法において、繊維から高吸水性ポリマーを適切に除去しつつ、リサイクル繊維を効率よく製造することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、実施の形態に係る繊維及び高吸水性ポリマーの混合物からリサイクル繊維を製造する方法について説明する。本実施の形態では、繊維がパルプ繊維であり、繊維及び高吸水性ポリマーの混合物が使用済み吸収性物品から得られるパルプ繊維及び高吸水性ポリマーの混合物である一例について説明する。ただし、本発明は本実施の形態に限定されるものでは無く、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、適宜変更等が可能である。例えば繊維はパルプ繊維以外の繊維であってもよく、繊維及び高吸水性ポリマーの混合物が使用済み吸収性物品以外のものから得られてもよい。なお、使用済み吸収性物品とは、使用者によって使用された吸収性物品であって、使用者の液体の排泄物を吸収した状態の吸収性物品を含み、使用されたが排泄物を吸収していないものや未使用のものも更に含む。
【0019】
まず、吸収性物品の構成例について説明する。吸収性物品は、表面シートと、裏面シートと、表面シートと裏面シートとの間に配置された吸収体とを備える。吸収性物品としては、例えば紙おむつ、尿取りパッド、生理用ナプキン、ベッドシート、ペットシートが挙げられる。吸収性物品の大きさの一例としては長さ約15〜100cm、幅5〜100cmが挙げられる。
【0020】
表面シートの構成部材としては、例えば不織布又はフィルムが挙げられ、具体的には液透過性の不織布、液透過孔を有する合成樹脂フィルム、これらの複合シート等が挙げられる。裏面シートの構成部材としては、例えば不織布又はフィルムが挙げられ、具体的には液不透過性の不織布、液不透過性の合成樹脂フィルム、これら不織布と合成樹脂フィルムとの複合シートが挙げられる。ここで、不織布や合成樹脂フィルムの材料としては、吸収性物品として使用可能であれば特に制限はないが、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、6−ナイロン、6,6−ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンタレフタレート(PET)、ポリブチレンテレタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂等が挙げられる。本実施の形態では、裏面シートの構成部材をフィルムとし、表面シートの構成部材を不織布とする吸収性物品を例にして説明する。
【0021】
吸収体の構成部材としては吸収体材料、すなわちパルプ繊維及び高吸水性ポリマーが挙げられる。パルプ繊維としては、吸収性物品として使用可能であれば特に制限はないが、例えば、セルロース系繊維が挙げられる。セルロース系繊維としては、例えば木材パルプ、架橋パルプ、非木材パルプ、再生セルロース、半合成セルロース等が挙げられる。高吸水性ポリマー(SuperAbsorbent Polymer:SAP)としては、吸収性物品として使用可能であれば特に制限はないが、例えばポリアクリル酸塩系、ポリスルホン酸塩系、無水マレイン酸塩系の吸水性ポリマーが挙げられる。
【0022】
吸収体の一方の面及び他方の面は、それぞれ表面シート及び裏面シートに接着剤を介して接合されている。平面視で、表面シートのうちの、吸収体を囲むように、吸収体の外側に延出した部分(周縁部分)は、裏面シートのうちの、吸収体を囲むように、吸収体の外側に延出した部分(周縁部分)と接着剤を介して接合されている。したがって、吸収体は表面シートと裏面シートとの接合体の内部に包み込まれている。接着剤としては、吸収性物品として使用可能であり、後述の温水により軟化等して接合力が低下するものであれば特に制限はないが、例えばホットメルト型接着剤が挙げられる。ホットメルト型接着剤としては、例えばスチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン、スチレン−ブタジエン−スチレン、スチレン−イソプレン−スチレン等のゴム系主体、又はポリエチレン等のオレフィン系主体の感圧型接着剤又は感熱型接着剤が挙げられる。
【0023】
次に、使用済み吸収性物品から得られるパルプ繊維及び高吸水性ポリマーの混合物からリサイクルパルプ繊維を製造する方法について説明する。本実施の形態では、使用済みの吸収性物品を、再利用(リサイクル)のために外部から回収・取得して用いる。個々の使用済みの吸収性物品は、排泄物が表側に露出しないように、かつ、臭気が周囲に拡散しないように、排泄物が排泄される表面シートを内側にして、丸められた状態や折り畳まれた状態で回収等される。なお、使用済みの吸収性物品は丸められた状態等でなくてもよい。
【0024】
使用済み吸収性物品から得られるパルプ繊維及び高吸水性ポリマーの混合物からリサイクルパルプ繊維を製造する方法は、使用済み吸収性物品を構成材料に分離する材料分離方法に含まれている。
図1は、使用済み吸収性物品を構成材料に分離する材料分離方法を示すフローチャートである。この材料分離方法は、使用済み吸収性物品を、フィルムと、不織布と、パルプ繊維と、高吸水性ポリマーとに分離する方法である。この材料分離方法は、前処理工程S11と、分解工程S12と、分離工程S13と、を備える。前処理工程S11は、使用済み吸収性物品を水で膨潤させる。分解工程S12は、膨潤した使用済み吸収性物品に物理的な衝撃を与えて、使用済み吸収性物品を、フィルム及び不織布と、吸収体材料(パルプ繊維及び高吸水性ポリマー)とに分解する。分離工程S13は、フィルムと、不織布と、パルプ繊維と、高吸水性ポリマーとを分離する。パルプ繊維及び高吸水性ポリマーの混合物からリサイクルパルプ繊維を製造する方法は、この材料分離方法のうちの分離工程S13に含まれる。なお、パルプ繊維及び高吸水性ポリマーの混合物を、何らかの方法で予め取得している場合には、前処理工程S11、分解工程S12及び分離工程S13におけるパルプ繊維及び高吸水性ポリマーの混合物からリサイクルパルプ繊維を製造する方法より前の工程は実施不要である。以下、各工程について説明する。
【0025】
前処理工程S11は、複数の使用済みの吸収性物品を、外部から回収等したときの状態のまま、すなわち破壊や切断など行なわず、丸められた状態又は折り畳まれた状態であればその状態のまま、かつ吸収体の高吸水性ポリマーの不活化もせず、水を吸収させて膨潤させる。本実施の形態では、使用済みの吸収性物品に温水を吸収させて膨潤させるか、又は、水を吸収させ膨張させた後に吸収された水を加熱して温水にする。温水とは、常温(20℃±15℃(5〜35℃):JIS Z 8703)よりも高い温度の水をいう。
【0026】
通常、使用済みの吸収性物品に実際に吸収されている液状の排泄物の量は、吸収性物品が吸収可能な最大吸収量と比べて非常に小さい(例示:最大吸収量の約10〜20質量%)。本実施の形態では、前処理工程S11において、使用済み吸収性物品を温水に浸すことで、使用済み吸収性物品の最大吸収量に近い量(例示:最大吸収量の80質量%以上)まで水を吸収させる。又は、使用済み吸収性物品を常温の水に浸し、使用済み吸収性物品の最大吸収量に近い量まで水を吸収させた後、温水の温度まで使用済み吸収性物品全体を加熱する。それにより、使用済み吸収性物品を、温水又は常温の水(以下、単に「温水」ともいう。)で非常に膨張した状態にできる。その結果、使用済み吸収性物品には非常に高い内圧が生じることになる。なお、水を温水にする目的は、主に、後述されるように接着剤の接着力を弱めるためである。
【0027】
ここで、使用済み吸収性物品は、当初裏面シートを外側にして(表面シートを内側に隠して)丸められた状態や折り畳まれた状態にある場合、温水に浸されることで、使用済み吸収性物品の吸収体が温水中で温水を吸収して膨張する。その結果、使用済み吸収性物品の内圧が高まり、使用済み吸収性物品に外側へ向かって開こうとする力が働いて、丸められた状態又は折り畳まれた状態の使用済み吸収性物品が外側へ向かって開いて、概ね平らな状態になる。すなわち、使用済み吸収性物品を温水中において平坦に展開された状態にできる。このとき、使用済み吸収性物品は、吸収体が多量の温水を吸収して非常に膨張しているので、その表面、すなわち吸収体を包み込んでいる表面シート及び裏面シートのいずれかの箇所が容易にはち切れそうな状態になっている。すなわち前処理工程S11により、使用済み吸収性物品を、いずれかの表面が裂けて切れそうな状態できる。なお使用済み吸収性物品が、当初から平坦に展開された状態の場合、その状態のまま表面のいずれかの箇所が容易にはち切れそうな状態になる。この状態は、使用済み吸収性物品が破断等されている場合には生じ得ない。
【0028】
更に、使用済み吸収性物品が温水に浸され、及び/又は温水を吸収することで、各構成部材間の接合に使用されている接着剤(例示:ホットメルト接着剤)を温水の熱により軟化させ、接着剤の接合力を低下できる。例えば、表面シートの周縁部分と裏面シートの周縁部分とを接合する接着剤を、温水の熱で軟化させ、その接着剤の接合力を低下できる。更に、表面シートと吸収体とを接合する接着剤及び裏面シートと吸収体とを接合する接着剤を、温水の熱で軟化させ、それらの接着剤の接合力を低下できる。
【0029】
このように前処理工程S11では、使用済み吸収性物品の吸収体の膨張により、使用済み吸収性物品の表面のいずれかの箇所がはち切れそうな状態、かつ、接着剤の接合力が低下された状態、を生じさせることができる。使用済み吸収性物品がこのような状態になることで、後述の分解工程において、使用済み吸収性物品を確実に分解することができる。
【0030】
前処理工程S11における温水の温度は、使用済み吸収性物品の接着剤が軟化できる限り特に限定されないが、例えば60℃以上が挙げられ、好ましくは70℃以上98℃以下である。温水の温度を70℃以上とすることで、構成部材間を接合する接着剤を温水の熱でより軟化でき、接着剤の接合力をより低下できる。温水の温度を98℃以下とすることで、温水が確実に液体として存在するので、使用済み吸収性物品に温水をより確実に吸収させることができる。吸収体の膨張及び温水の熱により、使用済み吸収性物品の表面がはち切れそうな状態かつ接着剤の接合力が低下された状態をより確実に発生させることができる。温度の測定については、使用済み吸収性物品を浸した状態の温水の温度を測定するか、又は、最大吸収量に近い量まで水を吸収した使用済み吸収性物品の表面から5mm内側の温度(温度センサの先端を挿入)を測定する。
【0031】
また、使用済み吸収性物品の再利用においては、構成材料の殺菌は極めて重要である。温水の温度を70℃以上とすることで、使用済み吸収性物品を殺菌(消毒)する効果を奏することも可能となるので好ましい。
【0032】
前処理工程S11における処理時間、すなわち使用済み吸収性物品を温水に浸している時間は、使用済み吸収性物品の吸収体が膨張できる限り特に限定されないが、例えば2〜60分であり、好ましくは4〜30分である。時間が短すぎると吸収体が十分に膨張できず、長すぎると時間が無駄になり処理コストが不必要に増加する。
【0033】
また、前処理工程S11における吸収体の温水の吸収量は、後述の分解工程にて使用済み吸収性物品を分解できる程度に吸収体が膨張できれば特に制限はないが、例えば使用済み吸収性物品の最大吸収量の80質量%以上が挙げられ、好ましくは90質量%以上である。それにより、使用済み吸収性物品を、水で目一杯に膨張した状態にすることができる。その結果、使用済み吸収性物品の吸収体に極めて高い内圧を生じさせることができる。
【0034】
ただし、最大吸収量は、以下の手順で測定する。
(1)未使用の吸収性物品を100℃以上の雰囲気で乾燥処理し、その吸収性物品の質量を測定する。
(2)水が吸収体に達し難くなるようなポケットを形成しうる伸縮材料(例示:脚周りやウエスト周りの伸縮部材)が吸収性物品に配置されている場合には、その伸縮部材に切り込みを入れることで、吸収性物品を平らにする。
(3)十分な水道水で満たされた水浴に、表面シートを下にして吸収性物品を浸し、30分間放置する。
(4)放置後、吸収性物品を網の上に、表面シートを下にして載置し、20分水切りした後に、吸収性物品の質量を測定する。
そして、水道水に浸す前後の質量差を最大吸収量と定義する。
【0035】
次いで、分解工程S12は、前処理工程S11により展開され膨潤した複数の使用済み吸収性物品に物理的な衝撃を与えて、複数の使用済み吸収性物品を、フィルム(裏面シート)及び不織布(表面シート)と、吸収体材料(吸収体及び高吸水性ポリマー:吸収体)と、に分解する。
【0036】
使用済み吸収性物品は、前処理工程S11により、展開されて平坦で、膨張により表面のいずれかの箇所がはち切れそうになっており、本実施の形態では、特に、温水の熱により、接着剤の接合力が低下された状態になっている。したがって、分解工程S12において、その状態の使用済み吸収性物品に物理的な衝撃を加えることで、表面のいずれかの箇所のうち、特に接合力が低下された表面シート(不織布)と裏面シート(フィルム)との接合部分がはち切れる。それにより、その接合部分を裂く(剥がす)ことができる。物理的な衝撃としては、特に制限はないが、例えば、使用済み吸収性物品よりも硬い素材でできた面に、使用済み吸収性物品を叩きつける方法や、使用済み吸収性物品を互いに対面配置された一対のロールの間に挟んで通過させつつ両側から押圧する方法が挙げられる。
【0037】
本実施の形態では、分解工程S12は、回転軸が水平な回転ドラムの底部に、膨潤した複数の使用済み吸収性物品を投入する投入する工程と、回転ドラムを回転軸周りに回転させて、複数の使用済み吸収性物品を回転ドラムの上部に引き上げては、底部に叩きつける工程と、を含んでいる。それにより、複数の使用済み吸収性物品に物理的な衝撃を、安定的、継続的(連続的)かつ容易に加えることができる。回転ドラムとしては、例えば横型洗濯機の洗濯槽の回転ドラムが挙げられ、よって分解工程S12は既存の横型洗濯機(例示:株式会社稲本製作所製、ECO−22B)を用いて実施できる。回転ドラムの大きさは、上記衝撃が実現可能であれば特に制限はないが、内径及び奥行は、例えば50〜150cm及び30〜120cmが挙げられる。回転ドラムの回転速度は、上記衝撃が実現可能であれば特に制限はないが、例えば、30回/分〜100回/分、が挙げられる。
【0038】
また、使用済み吸収性物品内に吸収された温水により、使用済み吸収性物品の温度は比較的高温に保たれるが、接着剤の温度低下の抑制や、殺菌の効果の維持の観点から、回転ドラム内の雰囲気の温度は70℃以上が好ましく、75℃以上がより好ましい。回転ドラム内の温度は使用済み吸収性物品の取り扱いの観点から、98℃以下が好ましく、90℃以下がより好ましい。回転ドラム内の水はできるだけ少ないことが好ましく、少なくとも底部にて使用済み吸収性物品が水面よりも下にならない程度に少ないことが好ましい。使用済み吸収性物品が水面よりも下になると、使用済み吸収性物品への衝撃が水に吸収され、所望の衝撃を使用済み吸収性物品へ与え難くなる。回転ドラムを回転させている時間は、表面シート及び裏面シートと、吸収体材料とを分解することができる限り特に限定されないが、例えば2〜40分であり、好ましくは4〜20分である。
【0039】
使用済み吸収性物品は、物理的な衝撃により、表面シート(不織布)と裏面シート(フィルム)との接合部分がはち切れて、裂ける。それと同時に、その裂け目を介して、吸収体の内圧によって、使用済み吸収性物品内の吸収体材料(パルプ繊維及び吸水性ポリマー)が外へ噴出してくる(飛び出してくる)。それにより、使用済み吸収性物品を、表面シート(不織布)及び裏面シート(フィルム)と、吸収体材料(パルプ繊維及び吸水性ポリマー)と、により確実に分解することができる。
【0040】
次いで、分離工程S13は、複数のフィルム(裏面シート)及び複数の不織布(表面シート)と、吸収体材料(パルプ繊維及び吸水性ポリマー:吸収体)と、を分離する。ただし、不織布はフィルムに接合したまでもよい。このとき、裏面シート(フィルム)及び表面シート(不織布)は、吸収性物品のときと同様の形状、すなわち元の形状を概ね維持している。そのため、分解前に破片状に破断等される場合と比較して、表面シート(不織布)及び裏面シート(フィルム)の大きさや形状や質量は、吸収体材料の大きさや形状と明らかに相違する。よって、分離工程S13において、表面シート(不織布)及び裏面シート(フィルム)を吸収体(パルプ繊維及び吸水性ポリマー)から容易に分離できる。分離方法としては、特に限定されないが、例えば、表面シート及び裏面シートを通さず、吸収体材料を通すふるいを用いる方法が挙げられる。それにより、フィルムのような構成部材を、破断等せずにそのままの形状を維持したまま、他の構成部材から容易に分離できる。
【0041】
本実施の形態では、分離工程S13は、フィルム及び不織布と吸収体材料とを分離する前に、不活化剤を含む水溶液で高吸水性ポリマーを不活化する不活化工程S31と、フィルム及び不織布と、パルプ繊維、不活化された高吸水性ポリマー及び不活化により高吸水性ポリマーから排出された汚水を含む混合物と、を分離する第1の分離工程S32と、を含んでもよい。
【0042】
不活化工程S31では、第1の分離工程S32の前に、表面シート(不織布)、裏面シート(フィルム)及び吸収体(パルプ繊維及び高吸水性ポリマー)を、高吸水性ポリマーを不活化可能な不活化剤を含む水溶液に浸す。それにより、表面シート、裏面シート及びパルプ繊維に付着していた高吸水性ポリマーを不活化することができる。それにより、不活化の前には粘度の高い状態の高吸水性ポリマーを、不活化による脱水により、粘度の低い状態の高吸水性ポリマーにすることができる。
【0043】
ここで、不活化剤は、特に限定するものではないが、無機酸、有機酸、石灰、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム等が挙げられる。なかでも、無機酸及び有機酸は、パルプ繊維に灰分を残留させないことから、好ましい。不活化剤として無機酸又は有機酸を用いる場合は、無機酸水溶液又は有機酸水溶液のpHは2.5以下であり、好ましくは1.3〜2.4である。したがって、不活化剤を含む水溶液は酸性水溶液ということができる。pHが高すぎると、高吸水性ポリマーの吸水能力を十分に低下させることができない。また、殺菌能力が低下するおそれもある。pHが低すぎると、設備の腐食のおそれがあり、排水処理時の中和処理に多くのアルカリ薬品が必要となる。無機酸としては、例えば硫酸、塩酸、硝酸が挙げられるが、塩素を含まないことやコスト等の観点から硫酸が好ましい。一方、有機酸としては、クエン酸、酒石酸、グリコール酸、リンゴ酸、コハク酸、酢酸、アスコルビン酸、等が挙げられるが、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、等のヒドロキシカーボネート系の有機酸が特に好ましい。クエン酸のキレート効果により、排泄物中の金属イオン等がトラップされ除去可能であり、かつクエン酸の洗浄効果で、高い汚れ成分除去効果が期待できる。pHは水温により変化するため、本発明におけるpHは、水溶液温度20℃で測定したpHをいうものとする。無機酸水溶液の無機酸濃度は、無機酸水溶液のpHが2.5以下である限り限定されないが、無機酸が硫酸の場合は、硫酸の濃度は、好ましくは0.1質量%以上0.5質量%以下である。有機酸水溶液の有機酸濃度は、有機酸水溶液のpHが2.5以下である限り限定されないが、有機酸がクエン酸の場合は、クエン酸の濃度は、好ましくは0.8質量%以上4質量%以下である。
【0044】
不活化工程S31の処理温度、すなわち不活化剤を含む水溶液の温度は、不活化の反応が進む限り、特に限定されない。その処理温度は、室温でもよいし、室温よりも高くしてもよいが、例えば15〜30℃が挙げられる。また、不活化工程S31の処理時間、すなわち不活化剤を含む水溶液に表面シート、裏面シート及び吸収体材料を浸す時間は、高吸水性ポリマーが不活化され、脱水される限り、特に限定されないが、例えば2〜60分が挙げられ、好ましくは5〜30分である。また、不活化工程S31の水溶液の量、すなわち不活化剤を含む水溶液の量は、不活化の反応が進む限り、特に限定されない。水溶液の量は、例えば使用済み吸収性物品100質量部に対し、好ましくは300〜3000質量部であり、より好ましくは500〜2500質量部であり、さらに好ましくは1000〜2000質量部である。
【0045】
第1の分離工程S32では、表面シート(不織布)及び裏面シート(フィルム)と、パルプ繊維、不活化された高吸水性ポリマー及び不活化により高吸水性ポリマーから排出された汚水を含む混合物と、を分離する。ただし、汚水は、不活化工程S31において、不活化剤を含む水溶液による脱水により、高吸水性ポリマーから放出された水分、すなわち排泄物由来の液体及び温水由来の水を含む汚水である。
【0046】
第1の分離工程S32において、表面シート及び裏面シートと、パルプ繊維、高吸水性ポリマー及び汚水と、を分離する方法は、特に限定するものではない。例えば、不活化工程により生成した生成物(表面シート、裏面シート、パルプ繊維、高吸水性ポリマー、汚水等)を、目開き5〜100mm、好ましくは目開き10〜60mmのスクリーンを通しながら排出する。それにより、パルプ繊維、高吸水性ポリマー及び汚水は排水中に、表面シート及び裏面シートはスクリーン上に残ることで、それら生成物を分離することができる。なお、スクリーン上にはその他の不織布やフィルム等の大きな形状物が残存してもよい。特に、不活化の前には、高吸水性ポリマーは粘度の高い状態にあるため、表面シート、裏面シート及びパルプ繊維に付着した高吸水性ポリマーを分離することは容易とまではいえない。しかし、不活化の後には、脱水により、高吸水性ポリマーは粘度の低い状態になるので、表面シート、裏面シート及びパルプ繊維に付着した高吸水性ポリマーを、表面シート、裏面シート及びパルプ繊維から容易に分離することができる。したがって、吸収性物品の構成部材を効率よく分離・回収することができる。
【0047】
本実施の形態では、分離工程S13はフィルムと他の部材との接合部分の接着剤を溶かす溶剤により、接合部分の接着剤を除去する第2の分離工程S33を更に含んでもよい。本実施の形態では、フィルムと不織布と吸収体材料との各接合部分の接着剤を溶解する溶剤により、各接合部分の接着剤を除去する。
【0048】
第2の分離工程S33では、フィルム(裏面シート)と他の部材(表面シートの不織布、表面シートや裏面シートの表面に残存する吸収体の吸収体材料など)との接合部分の接着剤を溶剤により除去する。それにより、フィルムと他の部材とを、破断等せずにそのままの形状を維持したまま、互いに分離することができる。したがって、吸収性物品のフィルムのような構成部材を効率よく回収することができる。また、フィルムに接着剤を残さずに、フィルムと他の部材とを分離することができるので、フィルムを純度の高い樹脂として再利用可能にできる。それにより、フィルムの再利用のときに接着剤が悪影響を及ぼすことを抑制できる。不織布についてもフィルムと同様である。
【0049】
第2の分離工程S33に用いる溶剤としては、接着剤を溶解することが可能であれば特に制限はないが、例えば、テルペン炭化水素、テルペンアルデヒド及びテルペンケトンのうちの少なくとも一つを含むテルペンが挙げられる。この工程では、テンペルを含む水溶液が用いられ、水溶液中のテンペルの濃度は、例えば0.05質量%以上2質量%以下が挙げられる。好ましくは0.075〜1質量%である。テルペンの濃度が低すぎると、接合部分の接着剤を溶解することができないおそれがある。テルペンの濃度が高すぎると、コストが高くなるおそれがある。また、テンペルは、ホットメルト接着剤のような接着剤を溶解するだけでなく、油汚れ洗浄効果も有する。そのため、例えば裏面シート等の吸収性物品の構成部材に印刷がある場合、テンペルはその印刷インクも分解除去できる。
【0050】
テルペン炭化水素としては、例えばミルセン、リモネン、ピネン、カンファー、サピネン、フェランドレン、パラシメン、オシメン、テルピネン、カレン、ジンギベレン、カリオフィレン、ビサボレン、セドレンが挙げられる。中でも、リモネン、ピネン、テルピネン、カレンが好ましい。また、テルペンアルデヒドとしては、例えばシトロネラール、シトラール、シクロシトラール、サフラナール、フェランドラール、ペリルアルデヒド、ゲラニアール、ネラールが挙げられる。テルペンケトンとしては、例えば、ショウノウ、ツヨシが挙げられる。テルペンの中でもテルペン炭化水素が好ましく、リモネンが特に好ましい。リモネンには、d−リモネン、l−リモネン、ジペンテン(dl−リモネン)の3種類があるが、いずれも好ましく用いることができる。テルペンは1種単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0051】
第2の分離工程S33の処理温度、すなわち溶剤を含む水溶液の温度は、接着剤の溶解が進み、使用済み吸収性物品を構成部材に分解する限り、特に限定されない。その処理温度は、室温でもよいし、室温よりも高くしてもよいが、例えば15〜30℃が挙げられる。また、第2の分離工程S33の処理時間、すなわち溶剤を含む水溶液に表面シート、裏面シート及び吸収体材料を浸す時間は、接着剤の溶解が進み、使用済み吸収性物品を構成部材に分解する限り、特に限定されない。その処理時間は、例えば2〜60分が挙げられ、好ましくは5〜30分である。第2の分離工程S33の水溶液の量、すなわち溶剤を含む水溶液の量は、接着剤の溶解が進み、使用済み吸収性物品を構成部材に分解する限り特に限定されない。水溶液の量は、例えば使用済み吸収性物品100質量部に対し、好ましくは300〜3000質量部であり、より好ましくは500〜2500質量部である。第2の分離工程S33により、フィルムや不織布や吸収体材料に残存する接着剤の量を、フィルムや不織布や吸収体材料に対して1質量%以下にできる。
【0052】
なお、本実施の形態では、他の好ましい態様として、上記不活化工程S31において、上記第2の分離工程S33を併せて行ってもよい。すなわち、表面シート、裏面シート及びパルプ繊維に付着した高吸水性ポリマーを不活化させつつ、表面シート、裏面シート及びパルプ繊維に付着した接着剤を溶解させてもよい。この場合、表面シート、裏面シート、パルプ繊維及び高吸水性ポリマーを浸漬させる水溶液としては、不活化剤及び溶剤の両方を含む水溶液を用いる。それにより、上記不活化工程S31において、裏面シート(フィルム)と、表面シート(不織布)と、吸収体(パルプ繊維及び高吸水性ポリマー)と、を水溶液中で概ね分離した状態にできる。そして、その後の第1の分離工程において、裏面シート(フィルム)及び表面シート(不織布)と、吸収体(パルプ繊維及び高吸水性ポリマー)と、を分離でき、第2の分離工程S33を省略できる。この場合、裏面シート(フィルム)と表面シート(不織布)とは、接着剤の除去により、実質的に分離される。
【0053】
本実施の形態では、分離工程S13は、接合部分の接着剤を除去する工程の後に、フィルムを室温よりも高い温度の雰囲気又は熱風により乾燥させ、溶剤を除去する第1の乾燥工程S34を更に含んでもよい。本実施の形態では、本工程にて不織布をも乾燥させる。
【0054】
使用済み吸収性物品の再利用においては、殺菌は極めて重要である。第1の乾燥工程S34では、分離されたフィルム(裏面シート)及び不織布(表面シート)を、高温の雰囲気又は熱風などで乾燥させる工程を行う。乾燥温度は、例えば105〜210℃が挙げられ、好ましくは110〜190℃である。乾燥時間は、乾燥温度にもよるが、例えば10〜120分が挙げられ、好ましくは15〜100分である。それにより、フィルム及び不織布の表面に残存する溶剤を蒸発させて除去するだけでなく、フィルム及び不織布を高温の雰囲気又は熱風などで殺菌することができる。それにより、溶剤を除去しつつ、殺菌(消毒)の効果を奏することも可能となる。
【0055】
一方、本実施の形態では、分離工程S13は、分離された混合物からパルプ繊維を分離する第3の分離工程S35を含んでもよい。第3の分離工程S35では、分離された混合物(パルプ繊維、高吸水性ポリマー及び汚水を含む)からパルプ繊維を分離する方法としては、特に限定されないが、例えば分離された混合物を目開き0.1〜4mm、好ましくは目開き0.15〜2mmのスクリーンを通しながら排出する。それにより、高吸水性ポリマー及び汚水は排水中に、パルプ繊維(主に表面に高吸水性ポリマーが残存)はスクリーン上に残ることで、混合物からパルプ繊維を分離できる。このパルプ繊維は不純物を多く含むが、用途により利用可能である。分離されたパルプ繊維(主に表面に高吸水性ポリマーが残存)は、水と、所定の割合で混合されて、所定のパルプ繊維を有する混合液として、酸化剤処理工程S36へ供給される。
【0056】
本実施の形態では、分離工程S13は、分離されたパルプ繊維を、酸化剤を含む水溶液で処理し、パルプ繊維に残存する高吸水性ポリマーを低分子量化し、可溶化して除去する酸化剤処理工程S36を含んでいる。
【0057】
酸化剤処理工程S36では、分離されたパルプ繊維の主に表面に残存する高吸水性ポリマーを、水溶液中の酸化剤により酸化分解して、水溶液に可溶な低分子量の有機物に変化させることにより、パルプ繊維の表面から除去する。ここで、高吸水性ポリマーが酸化分解し、水溶液に可溶な低分子量の有機物に変化した状態とは、高吸水性ポリマーが2mmのスクリーンを通過する状態をいう。それにより、パルプ繊維に含まれる高吸水性ポリマー等の不純物を除去し、純度の高いパルプ繊維を生成できる。また、酸化剤処理により、パルプ繊維の二次殺菌および漂白、消臭を行うことができる。
【0058】
酸化剤としては、不活化した高吸水性ポリマーを酸化分解し、低分子量化し、可溶化することができる限り、特に限定されないが、例えば二酸化塩素、オゾン、次亜塩素酸ナトリウムが挙げられる。なかでも、分解性能や漂白性能や殺菌性能や消臭性能の高さの観点からオゾンが好ましく、本実施の形態ではオゾンを用いる。酸化剤としてオゾンを用いる場合、パルプ繊維及び高吸水性ポリマーを含む混合物をオゾンと接触させることにより、具体的にはパルプ繊維及び高吸水性ポリマーを含む水溶液にオゾン含有ガスを吹き込むことにより、酸化剤処理を行うことができる。
【0059】
酸化剤処理工程S36について更に説明する。
まず、酸化剤処理工程S36を実行する装置について説明する。
図2は、酸化剤処理工程S36を実行する装置2の構成の一例を示す概略図である。装置2は、水と第3の分離工程S35で分離されたパルプ繊維とを含む混合液51を貯蔵する混合液貯蔵部3と、混合液51中のパルプ繊維に含まれる高吸水性ポリマーを処理液52により酸化分解してパルプ繊維から除去する酸化剤処理部4と、を備えている。
【0060】
混合液貯蔵部3は、混合液タンク12と攪拌機13とを含む。混合液タンク12は、配管61を介して供給された、水中にパルプ繊維を一定の割合で含む混合液51を貯蔵する。攪拌機13は、混合液51中のパルプ繊維が水と分離して混合液51の下方へ沈まないように、混合液タンク12中の混合液51を撹拌する。
【0061】
一方、酸化剤処理部4は、供給ポンプ21と処理槽31とオゾン供給装置41と送出ポンプ22とオゾン分解装置34とを含む。処理槽31は、処理液52として酸性水溶液を有する。供給ポンプ21は、配管62を介して混合液タンク12の混合液を処理槽31の中に第1の流量で連続的に供給する。オゾン供給装置41は処理槽31にガス状物質であるオゾン含有ガス53を供給する。オゾン供給装置41のオゾン発生装置42としては、例えばエコデザイン株式会社製オゾン水曝露試験機ED−OWX−2、三菱電機株式会社製オゾン発生装置OS−25Vなどが挙げられる。オゾン含有ガス53は、オゾンを含んだ他の種類ガスであり、例えばオゾンを含んだ酸素ガスが挙げられる。配管65を介して処理槽31に供給されるオゾン含有ガス53を処理槽31内に送出するノズル43は、処理槽31の下部(好ましくは底部)に配置される。ノズル43は、オゾン含有ガス53を複数の細かい気泡として処理液52中に処理液52(処理槽31)の下部から上部へ向かって連続的に供給する。送出ポンプ22は配管63を介して処理槽31内の処理液52を、処理槽31の外に第2の流量で連続的に排出する。オゾン分解装置34は、処理槽31の上部に蓄積したオゾン含有ガス53を配管64経由で受け取り、オゾンを分解し無害化して外部へ放出する。なお、処理槽31内の処理液52は、酸化剤処理工程S36の開始前には処理液52のみであり、開始後は処理液52と混合液51とが混合された液となるが、本実施の形態では処理液52と混合液51とが混合された液も含めて、処理槽31内の液を処理液52とする。
【0062】
次に、酸化剤処理工程S36の具体的方法について説明する。
第3の分離工程S35にて分離されたパルプ繊維(主に表面に高吸水性ポリマーが残存)は、予め設定された濃度になるように水と混合されて混合液51となる。混合液51のパルプ繊維の濃度は、処理槽31に投入され、処理液52と混合された状態で、予め設定された濃度になるように設定される。混合液51は、配管61を介して混合液タンク12に供給され、貯蔵される。パルプ繊維の比重は1より大きいので、パルプ繊維と水とが分離しないように、混合液51は混合液タンク12内で攪拌機13により撹拌される。
【0063】
そして、混合液タンク12内の混合液51(主に表面に高吸水性ポリマーが残存)は、供給ポンプ21の流量制御により、配管62を介して処理槽31へ第1の流量で連続的に供給される。それにより、パルプ繊維は、処理槽31の上部に設けられた供給口32から処理液52中に供給される。処理液52は酸性水溶液であり、比重としては概ね1である。したがって、パルプ繊維は、処理液52の上部から下部へ向かって沈降してゆく。
【0064】
一方、オゾン発生装置42で生成されたオゾン含有ガス53は、配管65を介して処理槽31に供給され、処理槽31のノズル43から処理液52内に細かい気泡の状態(例示:マイクロバブル又はナノバブル)で放出される。すなわちオゾン含有ガス53は、処理液52の下部から上部へ向かって上昇してゆく。この工程は、オゾン含有ガス53の複数の気泡を処理液52の下部から上部へ向かって連続的に送出する送出工程と見ることができる。
【0065】
そして、処理液52内を、上部から下部へ向かって沈降するパルプ繊維と、下部から上部へ向かって上昇するオゾン含有ガス53とが、対向して進みつつ衝突し合う。そして、オゾン含有ガス53は、パルプ繊維の表面に、パルプ繊維を包み込むように付着する。そのとき、オゾン含有ガス53中のオゾンが、パルプ繊維中の高吸水性ポリマーと反応して、高吸水性ポリマーを酸化分解して、処理液52に溶解させる。それにより、パルプ繊維上の高吸水性ポリマーがパルプ繊維から除去される。そして、パルプ繊維は処理槽31の底部へ沈降し、オゾン含有ガス53は処理槽31の上部の空間へ抜ける。
【0066】
その後、処理槽31の底部の処理液52(パルプ繊維を含む)は、送出ポンプ22の流量制御により、配管63を介して処理槽31の排出口33から処理槽31の外に第2の流量で連続的に排出される。処理槽31の上部に蓄積したオゾン含有ガス53のオゾンはオゾン分解装置34で分解され無害化されて外部へ放出される。
【0067】
このように、混合液51が処理槽31の上部から処理槽31の中に第1の流量で連続的に供給され、処理液52が処理槽31の下部(底部)から処理槽31の外に第2の流量で連続的に排出される。それにより、処理槽31内に上部から下部への連続的かつ安定的な流体(パルプ繊維を含む)の流れを強制的に生じさせることができる。
【0068】
処理槽31から排出される処理液52は、高吸水性ポリマーを除去されたパルプ繊維を含み、かつ、高吸水性ポリマーが酸化分解されて生成した低分子量の有機物を含んでいる。パルプ繊維は、送出ポンプ22より下流側の工程、例えば後述される第4の分離工程S37にて回収される。高吸水性ポリマーを除去されたパルプ繊維は、不純物の極めて少ない上質なパルプ繊維(リサイクルパルプ繊維)ということができる。
【0069】
上記の酸化剤処理工程S36は、高吸水性ポリマーを含むパルプ繊維と水とを含有する混合液51を、高吸水性ポリマーを溶解可能な処理液52を有する処理槽31の中に、第1の流量で連続的に供給しつつ、高吸水性ポリマーが溶解され、除去された繊維を含有する処理液52を、処理槽31の外に、第2の流量で連続的に排出する、連続処理工程を含む、ということができる。すなわち、酸化剤処理工程S36は、パルプ繊維及び高吸水性ポリマーの混合物からリサイクルパルプ繊維を製造する方法を含むということができる。
【0070】
本方法は、少なくとも、高吸水性ポリマー及びパルプ繊維を含む混合液51を、高吸水性ポリマーを溶解可能な処理液52を有する処理槽31の中に、第1の流量で連続的に供給しつつ、高吸水性ポリマーを除去されたパルプ繊維を含み、かつ、高吸水性ポリマーが酸化分解されて生成した低分子量の有機物を含む処理液52を、処理槽31の外に、第2の流量で連続的に排出する。このような構成を有することにより、処理槽31における混合液51を供給する供給口32から処理液52を排出する排出口33へ向かって連続的かつ安定的な流体(パルプ繊維を含む)の流れを強制的に発生させることができる。その流体の流れ、すなわち水流により、パルプ繊維の処理量を多くしても、処理液に接触するパルプ繊維の面積を多くすることができ、パルプ繊維を処理液に満遍なく接触させることが可能となる。したがって、パルプ繊維の処理量を多くしても、パルプ繊維の処理のムラを抑制して、高吸水性ポリマーを適切に処理液中に溶解させて除去できる。それにより、再生されたパルプ繊維、すなわちリサイクルパルプ繊維の純度を高くでき、再利用し易いリサイクルパルプ繊維を製造できる。よって、パルプ繊維から高吸水性ポリマーを適切に除去できると共に、リサイクルパルプ繊維を効率よく製造することが可能となる。
【0071】
ここで、第1の流量と第2の流量は同一であることが好ましい。第1の流量と第2の流量を同一にすることにより、処理槽31内の処理液52の量を一定に保つことができ、安定的に連続的な処理が可能である。ただし、処理槽31内の処理液52の量を略一定に保つことができると、すなわち処理槽31内の処理液52の量が大幅に増加または減少しなければ、第1の流量と第2の流量とは経時的に変動してもよい。すなわち、第1の流量と第2の流量とは、常時、完全に同一である必要はなく、経時的に平均して略同一であればよい。ここで、略同一とは、差が5%以内であることをいう。この場合にも、安定的に連続的な処理が可能である。
【0072】
処理液52にオゾン含有ガス53を供給する場合、処理液52中のオゾン濃度は、高吸水性ポリマーを分解することができる濃度であれば、特に限定されないが、例えば1〜50質量ppmが挙げられ、好ましくは2〜40質量ppmであり、更に好ましくは3〜30質量ppmである。処理液52中のオゾン濃度が低過ぎると、高吸水性ポリマーを完全に可溶化できず、パルプ繊維に高吸水性ポリマーが残存するおそれがある。逆に、処理液52中のオゾン濃度が高過ぎると、酸化力も高まるため、パルプ繊維に損傷を与えるおそれがあるとともに、安全性にも問題を生じる可能性がある。オゾン処理温度は、高吸水性ポリマーを分解できる温度であれば、特に限定されないが、例えば室温のままでもよいし、室温より高くしてもよい。
【0073】
ただし、処理液52(水溶液)中のオゾンの濃度は以下の方法で測定した。
ヨウ化カリウム約0.15gと10%のクエン酸溶液5mLを入れた100mLメスシリンダーに、オゾンが溶解した処理液52を85mL入れて反応させる。反応後、200mLの三角フラスコに移して、そこにデンプン溶液を加え、紫色に着色させた後、0.01mol/Lチオ硫酸ナトリウムで無色になるまで撹拌しながら滴定を行う。そして、滴定値より以下の式を用いて、水溶液中のオゾンの濃度を算出する。
水溶液中のオゾンの濃度(質量ppm)=滴定に要した0.01mol/Lチオ硫酸ナトリウム(mL)×0.24×0.85(mL)
【0074】
オゾン含有ガス53中のオゾン濃度は、好ましくは40〜200g/m
3であり、より好ましくは40〜150g/m
3であり、更に好ましくは40〜100g/m
3である。オゾン含有ガス53中のオゾン濃度が低過ぎると高吸水性ポリマーを完全に可溶化できずパルプ繊維に高吸水性ポリマーが残存するおそれがある。オゾン含有ガス53中の濃度が高過ぎるとパルプ繊維の損傷、安全性の低下、製造原価の増加につながるおそれがある。なお、オゾン含有ガス53中のオゾン濃度は、紫外線吸収式のオゾン濃度計(例示:エコデザイン株式会社製:オゾンモニタOZM−5000G)により行う。
【0075】
処理液52中のパルプ繊維(高分子吸水性ポリマーを含む)の濃度は、処理液52中のオゾンにより高吸水性ポリマーを分解することができる濃度であれば、特に限定されないが、例えば0.1〜20質量%が挙げられ、好ましくは0.2〜10質量%であり、更に好ましくは0.3〜5質量%である。パルプ繊維の濃度が高過ぎると、高吸水性ポリマーを完全に可溶化できず、パルプ繊維に高吸水性ポリマーが残存するおそれがある。逆に、パルプ繊維の濃度が低過ぎると、酸化力も高まるため、パルプ繊維に損傷を与えるおそれがあるとともに、安全性にも問題を生じる可能性がある。混合液51中のパルプ繊維(高分子吸水性ポリマーを含む)の濃度は、上記処理液52中のパルプ繊維の濃度と、処理液52の量とに基づいて適宜設定される。
【0076】
パルプ繊維及び高吸水性ポリマーを含む処理液52にオゾンを供給する場合、処理液52は酸性であることが好ましい。より好ましくは、処理液52のpHは0より大きく5以下であり、更に好ましくは1.5〜2.5である。酸性の状態で処理することで、オゾンの失活が抑制され、オゾンによる高吸水性ポリマーの分解除去効果が向上し、短時間で高吸水性ポリマーを分解できる。処理液のpHを保つためには、混合液51のpHを処理液52のpHと同じにして、混合液51を処理槽31に供給してもよい。あるいは、処理液52のpHをpHセンサで監視し、pHが中性側に変動したときには、所定の酸性溶液を変動幅に応じた量だけ処理液52に付加してもよい。
【0077】
処理槽31中の処理液52(混合液51を含む)の量は、高吸水性ポリマーを分解することができる量であれば、特に限定されないが、処理槽31中の処理液52の体積V(単位:L)とパルプ繊維の質量W(単位:kg)が、30≦V/W≦1000、を満たすことが好ましい。より好ましくは、50≦V/W≦400であり、さらに好ましくは、100≦V/W≦200である。V/Wが小さ過ぎると、パルプ繊維に含まれる高吸水性ポリマーを完全に可溶化できずパルプ繊維に高吸水性ポリマーが残存するおそれがある。V/Wが大き過ぎると、製造原価の増加にするおそれがある。なお、処理槽31の体積Vとしては、特に制限はないが、例えば50〜80Lが挙げられる。
【0078】
オゾン含有ガスの流量R
O(単位:L/分)と処理槽31中の処理液52の体積V(単位:L)は、0.01≦R
O/V≦1.5、を満たすことが好ましい。より好ましくは、0.03≦R
O/V≦1.0であり、さらに好ましくは、0.06≦R
O/V≦0.5である。R
O/Vが小さすぎると高吸水性ポリマーを完全に可溶化できずパルプ繊維に高吸水性ポリマーが残存するおそれがある。R
O/Vが大きすぎるとパルプ繊維の損傷、安全性の低下、製造原価の増加につながるおそれがある。なお、オゾン含有ガスの流量R
Oとしては、特に制限はないが、例えば3〜6L/分が挙げられる。
【0079】
パルプ繊維が処理槽31内に存在する時間、すなわちパルプ繊維が処理液52中で処理される時間(以下、「槽内処理時間」ともいう。)は、高吸水性ポリマーを分解することができる時間であれば、特に限定されない。槽内処理時間は、処理液52のオゾン濃度が高ければ短くてよく、処理液52のオゾン濃度が低ければ長い時間を要する。槽内処理時間としては、例えば、2分〜60分が挙げられ、好ましくは5分〜30分である。処理液52中のオゾンの濃度(質量ppm)と槽内処理時間(分)の積(以下「CT値」ともいう。)は、好ましくは100〜6000ppm・分であり、より好ましくは200〜4000ppm・分であり、さらに好ましくは300〜2000ppm・分である。CT値が小さ過ぎると、高吸水性ポリマーを完全に可溶化することができず、回収したパルプ繊維に高吸水性ポリマーが残存するおそれがある。CT値が大き過ぎると、パルプ繊維の損傷、安全性の低下、製造原価の増加につながるおそれがある。
【0080】
パルプ繊維が処理槽31内に存在する間では、高吸水性ポリマーがオゾンによる酸化分解作用を受ける。それにより、高吸水性ポリマーの三次元網目構造が崩れる。その結果、高吸水性ポリマーは、保水性を失うと共に、低分子量の材料に変化する。そして、その低分子量の材料は、パルプ繊維が存在する処理槽31内に溶け出す。処理液52中に溶け出した低分子量の材料は、処理液52と共に排出されるが、その処理液52には、高吸水性ポリマーの固形粒子は残らない。更に、この工程では、オゾンの殺菌作用により、使用済み衛生用品が一次消毒される。
【0081】
本実施の形態では、好ましい態様として、酸化剤処理工程S36(連続処理工程)が、混合液51を、処理槽31の上部から連続的に供給しつつ、処理液52を、処理槽31の下部から連続的に排出する工程、を含んでいる。このとき、混合液51の高吸水性ポリマーを含むパルプ繊維の比重は、処理液52の比重よりも大きい。そのため、処理液52中では浮力よりも重力が勝るので、高吸水性ポリマーを含むパルプ繊維は自然に沈降する。したがって、混合液51、すなわちパルプ繊維を処理槽31中で下部から上部へ向かって供給しても、再び下部へ戻ってきてしまうおそれがある。更に、処理槽31内に発生させる流体の流れが下部から上部へ向かう流れの場合、流体の中には重力に負けて処理槽31の底部の隅や端などに滞留する部分が生じるおそれがある。それらの場合、パルプ繊維から高吸水性ポリマーを除去する処理の効率が低下してしまう。そこで、本好ましい態様の方法では、処理液52において、高吸水性ポリマーを含むパルプ繊維を上部から下部へ移動するように、処理槽31の上部から混合液51を供給し、処理槽31の下部から処理液52を排出する。それにより、処理槽31において上部から下部に向かって連続的かつ安定的な流体の流れを発生させることができる。その結果、高吸水性ポリマーを含むパルプ繊維は重力及びその流体の流れにより、処理槽31内の隅や端に滞留することなく、処理槽31の上部から下部へより円滑に移動しつつ、処理液52による処理を受けることができる。したがって、処理液52による処理が終了したパルプ繊維をそのまま処理槽31の下部から外へ排出することができる。すなわち、高吸水性ポリマーを含むパルプ繊維に対して効率的に処理を行うことができる。よって、リサイクル繊維を効率よく製造することが可能となる。
【0082】
本実施の形態では、好ましい態様として、高吸水性ポリマーを溶解可能な処理液52が、高吸水性ポリマーを溶解可能に分解するガス状物質を含有する水溶液である。酸化剤処理工程S36(連続処理工程)は、ガス状物質の複数の気泡を処理液52の下部から上部へ向かって連続的に送出する送出工程、を更に含んでいる。このような、本方法の好ましい態様では、処理液52において、ガス状物質が下部から上部へ移動し、高吸水性ポリマーを含むパルプ繊維が上部から下部へ移動する、すなわち対向流になっている。それにより、パルプ繊維に含まれる高吸水性ポリマーとガス状物質との接触確率を高めることができる。また、高吸水性ポリマーを含むパルプ繊維がより深く沈降するほど、より高い濃度のガス状物質と接触することができる。したがって、処理液52における浅いところで接触したガス状物質だけでは処理液52中に溶解し切れなかった高吸水性ポリマーを、処理液52における深いところで高濃度のガス状物質と接触させることができる。それにより、高吸水性ポリマーを確実に処理液52に溶解できる。よって、パルプ繊維に含まれる高吸水性ポリマーを確実に処理液中に溶解させて、繊維から除去することができる。ここで、ガス状物質としてオゾン含有ガスを用いた場合、上記の送出工程を有する実施の形態は、送出工程を有さずガス状物質を予め含ませただけの処理液を使用する場合と比較して、オゾンの消費効率を例えば約1.5〜2倍程度高めること、すなわち消費量を削減することができる。
【0083】
本実施の形態では、好ましい態様として、上述の送出工程が、ガス状物質を、マイクロバブル又はナノバブルの状態で送出する工程を含んでいる。ただし、マイクロバブルとは、直径が1〜1000μm程度、好ましくは10〜500μm程度の気泡であり、ナノバブルとは、直径が100〜1000nm程度、好ましくは100〜500nm程度の気泡をいう。マイクロバブル又はナノバブルは、このように微細な気泡であり、単位体積当たりの表面積が大きく、液中の上昇速度が遅い、という性質を有する。そこで本方法では、好ましい態様として、そのような微細な気泡のガス状物質を処理槽31の処理液52の下部から上部に向けて送出する。一方、高吸水性ポリマーを含むパルプ繊維は、上部から下部へ向かって移動する。このとき、微細な気泡は上昇速度が遅いため、気泡がパルプ繊維に接触する確率を高められる。更に、微細な気泡はパルプ繊維の表面での占有領域が狭いため、より多くの気泡がパルプ繊維の表面に接触できる。それにより、高吸水性ポリマーを含むパルプ繊維を微細な気泡で満遍なく包み込むことができ、高吸水性ポリマーを含むパルプ繊維とガス状物質との接触面積をより増加させることができる。更に、より多くの気泡がパルプ表面に接触することで、気泡の浮力により、高吸水性ポリマーを含むパルプ繊維の沈降速度を低下させ、高吸水性ポリマーを含むパルプ繊維とガス状物質との接触時間をより増加させることができる。これらにより、パルプ繊維に含まれる高吸水性ポリマーをより確実に処理液52中に溶解させて、パルプ繊維から除去することができる。
【0084】
本実施の形態では、好ましい態様として、ガス状物質はオゾンを含んでおり、すなわちオゾン含有ガス53である。したがって、本方法では、好ましい態様として、パルプ繊維に含まれる高吸水性ポリマーが、処理液としてのオゾン含有水溶液に供給される。その結果、パルプ繊維に含まれる高吸水性ポリマーをオゾンにより酸化・分解できるので、その酸化・分解による生成物をその水溶液に確実に溶解できる。すなわち、パルプ繊維から高吸水性ポリマーを適切に除去できる。その結果、再生されたパルプ繊維、すなわちリサイクルパルプ繊維の純度をより高くすることができる。更に、オゾン含有水溶液を用いることで、パルプ繊維を漂白することができ、リサイクルパルプ繊維の色をより白色に近づけることができる。更に、オゾン含有水溶液を用いることで、パルプ繊維を殺菌することができ、リサイクルパルプ繊維をより清潔にすることができる。したがって、再利用し易いリサイクルパルプ繊維を製造できる。よって、パルプ繊維から高吸水性ポリマーを適切に除去できると共に、リサイクルパルプ繊維を効率よく製造することが可能となる。
【0085】
本実施の形態では、好ましい態様として、処理液52は酸性水溶液であり、例えばpH2.5以下の酸性水溶液である。その場合、混合液51中のパルプ繊維に含まれる高吸水性ポリマーに部分的に吸水能力が残存していた場合でも、高吸水性ポリマーの吸水膨張を抑制することができる。それにより、高吸水性ポリマーを処理液52に短時間で溶解できて、高吸水性ポリマーを繊維からより確実に除去できる。特に、処理液52がオゾン含有水溶液の場合には、オゾン含有水溶液中のオゾンを失活し難くできるので、高吸水性ポリマーをより短時間で酸化・分解でき、溶解できて、高吸水性ポリマーを繊維からより確実に除去できる。
【0086】
また、他の好ましい実施の形態として、処理槽31の構成は、
図2以外の他の構成であってもよい。
図3は、
図1の酸化剤処理工程の装置2の他の構成例を示す概略図である。
図3の装置2は、
図2の装置2と比較して、酸化剤処理部4の配管63が、二つのU字管を互いに逆様かつ連続的に接続した連続U字管構造を有し、送出ポンプ22を省略している点で相違する。その場合、配管63が処理液52で満たされ、かつ、処理槽31内の処理液52の液面の高さが配管63で接続された次工程の槽内の液の液面の高さよりも高い場合、サイフォンの原理により処理液52は配管63を介して次工程の槽へ排出される。したがって、処理の開始前に初期的に、処理槽31内の処理液52の液面の高さと次工程の槽内液の液面の高さとを同じにしておくと、処理の開始により、処理槽31内に混合液51を連続的に第1の流量で供給すると、サイフォンの原理で処理液52は第2の流量=第1の流量で配管63を介して次工程の槽へ排出されることになる。ただし、次工程の槽内の液の液面の高さについては、処理中も処理の開始前の高さを維持するようにする。この場合、送出ポンプ22が不要であり、かつ送出ポンプ22の第2の流量の制御が不要となる。
【0087】
本実施の形態では、分離工程S13は、更に、処理槽31から排出された処理液52からパルプ繊維を分離する第4の分離工程S37と、分離されたパルプ繊維を、乾燥する第2の乾燥工程S38と、を含んでいてもよい。
【0088】
第4の分離工程S37では、処理槽31から排出された処理液52からパルプ繊維を分離する方法としては、特に限定されないが、例えばパルプ繊維を含む処理液52を、例えば目開き0.15〜2mmのスクリーンメッシュを通過させる方法が挙げられる。パルプ繊維を含む処理液52を目開き0.15〜2mmのスクリーンメッシュを通過させると、高吸水性ポリマーの酸化分解による生成物を含む排水はスクリーンを通過する。一方、パルプ繊維はスクリーンの上に残り、上質なパルプ繊維(リサイクルパルプ繊維)として取り出される。
【0089】
続く、第2の乾燥工程S38では、分離されたパルプ繊維を、高温の雰囲気又は熱風などで乾燥させる。乾燥温度は、例えば105〜210℃が挙げられ、好ましくは110〜190℃である。乾燥時間は、乾燥温度にもよるが、例えば10〜120分が挙げられ、好ましくは15〜100分である。それにより、パルプ繊維の表面に残存する溶剤が蒸発して除去されて、高吸水性ポリマー混率の極めて低い、純度の高いパルプ繊維を回収できる。したがって、吸収性物品の構成部材を効率よく回収できる。また、パルプ繊維を高温の雰囲気又は熱風などで殺菌(消毒)できる。
【0090】
また、第3の分離工程S35で分離された高吸水性ポリマー及び汚水を含む排水からは、高吸水性ポリマーを回収できる。回収方法としては、特に限定されないが、例えばふるいを用いる方法が挙げられ、回収された高吸水性ポリマーの吸水能力の回復方法としては例えばアルカリ金属塩水溶液で処理する方法が挙げられる。また、第4の分離工程S37で分離された、残余の排水(オゾンが10ppm弱程度溶存)を前処理工程S11へ循環させてもよい。それにより、オゾンを含む排水を無駄にすることなく、前処理工程S11の前処理とオゾンによる殺菌とを同時に行うことができる。
【0091】
なお、繊維及び高吸水性ポリマーの混合物からリサイクル繊維を製造する方法は、酸化剤処理工程S36を備えることに加えて、上記第4の分離工程S37及び第2の乾燥工程S38を更に備えていてもよい。
【0092】
本実施の形態では、好ましい態様として、酸化剤処理工程S36(連続処理工程)の前に、高吸水性ポリマーの吸水性能を不活化可能な水溶液を用いて混合物を処理して、混合物中の高吸水性ポリマーの吸水性能を不活化する不活化工程S31と、酸化剤処理工程S36(連続処理工程)の前に、不活化された高吸水性ポリマーを含むパルプ繊維を水溶液から分離する第1の分離工程S32と、を更に備える。このように、本方法では、好ましい態様として、不活化工程S31において、高吸水性ポリマーの吸水性能を不活化可能な水溶液で、高吸水性ポリマーの吸水性能を抑制するので、後工程の酸化剤処理工程S36(連続処理工程)の段階で、より容易に、高吸水性ポリマーを処理液52により短時間で溶解できる。すなわち、高吸水性ポリマーをパルプ繊維からより確実に除去できる。
【0093】
本実施の形態では、好ましい態様として、不活化工程S31において、高吸水性ポリマーの吸水性能を不活化可能な水溶液は、酸性水溶液であり、例えばpH2.5以下の酸性水溶液である。このように、本方法では、好ましい態様として、高吸水性ポリマーの吸水性能を不活化可能な水溶液が酸性水溶液なので、高吸水性ポリマーがより不活化され易く、それにより不活化工程S31の段階で、高吸水性ポリマーの吸水性能をより確実に抑制することができる。それにより、後工程の酸化剤処理工程S36(連続処理工程)の段階で、より容易に、高吸水性ポリマーを処理液により短時間溶解できる。すなわち、高吸水性ポリマーを繊維からより確実に除去できる。
【0094】
また、他の好ましい実施の形態として、処理槽31は、少なくとも互いに直列に連結された第1の処理槽31−1と第2の処理槽31−2とを含んでもよい。
図4は、
図1の酸化剤処理工程の装置2の他の構成例を示す概略図である。
図4の装置2は、
図2の装置2と比較して、酸化剤処理部4が2個直列に接合されている点、言い換える第1の処理槽31−1と第2の処理槽31−2とが直列に接合されている点で相違する。その場合、例えば、第1の処理槽31−1は混合液51を供給され、第1の処理済み液(第1の処理槽31−1の処理液52−1)を排出し、第2の処理槽31−2は、第1の処理済み液を供給され、第2の処理済み液(第2の処理槽31−2の処理液52−2)を排出する、というように混合液51が多段階に処理される。その場合、容量の大きな処理槽31を一個備える場合と比較して、第1、第2の処理槽31−1、31−2ごとに新しい処理液52−1、52−2で処理が行われるので、例えば、第1の処理槽(初段の処理槽)31−1において溶解し切れなかった高吸水性ポリマーを、第2の処理槽(次段の処理槽)31−2において容易に溶解できる、など、高吸水性ポリマーをより確実に溶解できて、繊維から除去できる。
【0095】
本実施の形態では、好ましい態様として、繊維はパルプ繊維である。そのため、パルプ繊維に含まれる高吸水性ポリマーを処理液52に溶解することにより、パルプ繊維から高吸水性ポリマーを適切に除去できる。その結果、再生されたパルプ繊維、すなわちリサイクルパルプ繊維の純度を高くすることができる。それにより、再利用し易いリサイクルパルプ繊維を製造できる。よって、パルプ繊維から高吸水性ポリマーを適切に除去できると共に、リサイクルパルプ繊維を効率よく製造することが可能となる。ただし、繊維がパルプ繊維以外の繊維であっても、その繊維に交吸収性ポリマーが付着している場合には、上記
図1〜
図4を用いて説明された各実施の形態を適用することにより、再生された繊維、すなわちリサイクル繊維の純度を高くすることができり、再利用し易いリサイクル繊維を製造できる。よって、繊維から高吸水性ポリマーを適切に除去できると共に、リサイクル繊維を効率よく製造することが可能となる。
【0096】
本実施の形態では好ましい形態として、更に材料分離工程S1において、前処理工程S11にて、使用済み吸収性物品を、破断等せずにそのままの形状で、かつ高吸水性ポリマーの不活化もせずに水で非常に膨張した状態にできる。それにより、使用済み吸収性物品内に非常に高い内圧を生じさせ、その表面のいずれかの箇所がはち切れそうな状態にすることができる。そして、分解工程S12にて、このような状態の使用済み吸収性物品に、物理的な衝撃を加えることで、その表面のいずれかの箇所を裂けさせて、内部の吸収体材料を外部へ噴出させることができる。それにより、使用済み吸収性物品を、少なくともフィルム(裏面シート)と吸収体材料とに分解できる。このとき、フィルムは概ね元の形状を維持しているので、その後の分離工程S13において、吸収体材料から容易に分離できる。それにより、フィルムのような構成部材を、破断等せずにそのままの形状を維持したまま、他の構成部材から分離できる。したがって、吸収性物品のフィルムのような構成部材を効率よく回収できる。
【0097】
本実施の形態では好ましい形態として、接着剤の除去にテルペンを用いることで、吸収性物品の構成部材を接着するホットメルト接着剤を常温で溶解可能となる。それにより、吸収性物品を簡単かつ綺麗にばらけ易くでき、吸収性物品から、パルプ繊維及び高吸水性ポリマーを分離し、不織布及びフィルムを、それぞれ別々に部材形態を残したまま分離できる。すなわち、吸収性物品を破砕したり、複雑な分離工程を経由したりしなくても容易にパルプ繊維、フィルム、不織布を別々に回収できる。テルペンとしてリモネンを用いた場合、リモネンの副次効果として、柑橘系の爽やかな臭気があるため、排泄物由来の臭気をある程度覆い隠し、作業者の臭気負担や近隣への臭気影響を低減できる。リモネンは、モノテルペンでスチレンと構造が似ているため、吸収性物品に一般的に使用されているスチレン系のホットメルト接着剤を溶解できる。常温で吸収性物品の洗浄処理が可能なため、エネルギーコストを低減でき、臭気の発生拡散を抑制できる。テルペンは油汚れ洗浄効果が高く、ホットメルト接着剤の溶解効果以外にも、フィルムに印刷がある場合、その印刷インクも分解除去可能であり、印刷されたフィルムも純度の高いプラスチック素材として回収可能である。
【0098】
また、高吸水性ポリマーの不活化にpH2.5以下の有機酸水溶液を用いたときは、パルプ繊維を劣化させ難い。また、有機酸としてクエン酸を用いたときは、クエン酸のキレート効果と洗浄力により、排泄物由来の汚れ成分除去効果が期待できる。また、除菌効果とアルカリ性臭気に対する消臭効果も期待できる。
【0099】
更に、高吸水性ポリマーを酸化剤で分解除去することにより、パルプ繊維へのコンタミや、高吸水性ポリマー吸水による汚水の急激な増加を防止することが可能である。使用する酸化剤の種類と濃度を調整することにより、高吸水性ポリマーの酸化分解と殺菌を同時に行うことが可能である。また、酸化剤処理工程の酸化剤としてオゾンを使用した場合、塩素系薬剤を一切使用しないため、回収されたプラスチックの部材から、燃焼炉を痛め難い高品質のRPFの製造も可能である。処理工程中に塩類を使用していないため、パルプ繊維への残存が無く、低灰分の高品質パルプが回収可能である。
【0100】
上記の実施の形態は、裏面シートの構成部材をフィルムとし、表面シートの構成部材を不織布とする場合について説明している。しかし、裏面シートの構成部材を不織布とし、表面シートの構成部材をフィルムとする場合や、裏面シート及び表面シートの両方の構成部材をフィルムとする場合の実施の形態についても、上記の実施の形態と同様の方法で実現でき、同様の作用効果を奏することができる。
【0101】
本発明の吸収性物品は、上述した各実施の形態に制限されることなく、本発明の目的、趣旨を逸脱しない範囲内において、適宜組合せや変更等が可能である。