(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、次亜塩素酸酸化処理の条件と処理物の免疫調整効果との関係については、これまで明らかにされていなかった。
【0005】
本発明の目的は、上記に鑑みてなされたものであって、良好な免疫調整効果を有する剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の〔1〕〜〔12〕を提供する。
〔1〕カンジダ属に属する酵母、酵母培養物及び酵母残渣からなる群より選ばれる少なくとも1つの有効ハロゲン濃度0.5%未満の酸化剤による酸化処理物及び/又はその抽出物を含む免疫調整剤。
〔2〕カンジダ属に属する酵母が、カンジダ・ユーティリスである、〔1〕に記載の剤。
〔3〕酸化剤は、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸及びこれらの塩から選ばれる少なくとも1つの塩素系酸化剤である、〔1〕又は〔2〕に記載の剤。
〔4〕抽出物は、アルコール抽出により得られる抽出物、又はアルコール抽出後アセトン抽出により得られる抽出物である、〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の剤。
〔5〕酸化処理物及び抽出物は、平均粒径が35μm以上の粒子を含む、〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の剤。
〔6〕酸化処理物及び抽出物は、平均粒径が400μm以下の粒子を含む、〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載の剤。
〔7〕自己免疫疾患の予防、治療、又は症状緩和剤である、〔1〕〜〔6〕のいずれか1項に記載の剤。
〔8〕カンジダ属に属する酵母の過酸化処理物を含む、食品用組成物。
〔9〕カンジダ属に属する酵母、酵母培養物及び酵母残渣からなる群より選ばれる少なくとも1つを有効ハロゲン濃度0.4%以下の酸化剤により酸化処理することを含む、酸化処理物の製造方法。
〔10〕酸化処理物は、35μm以上の粒子を含む範囲である、〔9〕に記載の製造方法。
〔11〕カンジダ属に属する酵母、酵母培養物及び酵母残渣からなる群より選ばれる少なくとも1つを有効ハロゲン濃度0.4%以下の酸化剤により酸化処理すること、及び
酸化処理物をアルコール抽出するか、又はアルコール抽出後アセトン抽出すること
を含む、抽出物の製造方法。
〔12〕抽出物は、35μm以上の粒子を含む、〔11〕に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、免疫細胞におけるサイトカインの分泌量を調整することができ、自己免疫疾患の治療、予防、症状緩和が可能な免疫調整剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の剤は、カンジダ属に属する酵母、酵母培養物及び酵母残渣からなる群より選ばれる少なくとも1つの酸化処理物及び/又はその抽出物を含む。
【0010】
カンジダ(Candida)属に属する酵母は、特に限定されないが、例えば、カンジダ・ユーティリス(Candida utilis)、カンジダ・ケフィル(Candida kefyr)、カンジダ・エチェルシ(Candida etchellsii)、カンジダ・ステラータ(Candida stellata)、カンジダ・バーサティリス(Candida versatilis)等が挙げられる。これらの中でも、カンジダ・ユーティリス(Candida utilis)が好ましい。
【0011】
酸化処理の試料は、酵母、酵母培養物及び酵母残渣からなる群より選ばれる少なくとも1つであればよく、2以上の組み合わせでもよい。酵母は、市販の酵母であってもよいし培養酵母でもよい。酵母培養物は、酵母とその培地及び代謝物なども含んでいてもよく、懸濁液であってもよい。酵母残渣は、酵母培養物から酵母菌体の少なくとも一部を除いたものであればよい。
【0012】
酸化処理に用いる酸化剤は、ハロゲンを含む酸化剤であれば特に限定されないが、例えば、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸、これらの塩等の塩素系酸化剤、次亜ヨウ素酸、亜ヨウ素酸、ヨウ素酸、過ヨウ素酸等のヨウ素系酸化剤、及びこれらの塩が挙げられる。塩としては例えば、リチウム、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属塩が挙げられる。これらのうち塩素系酸化剤が好ましく、次亜塩素酸及びその塩がより好ましく、次亜塩素酸ナトリウムが更に好ましい。
【0013】
酸化処理の際、酸化剤溶液(通常は酸化剤水溶液)を試料に接触させることが好ましい。酸化剤の量は、酸化剤溶液における有効ハロゲン濃度は、0.5%未満が好ましく、0.4%以下がより好ましく、0.35%以下が更に好ましく、0.3%以下が更により好ましい。下限は、0.01%以上が好ましく、0.05%以上がより好ましく、0.1%以上が更に好ましい。酸化剤の試料に対する量は、特に限定されないが、酵母2gに対し50g以上でもよく、通常は50g以下、好ましくは40g以下、より好ましくは30g以下、更に好ましくは20g以下であることが好ましい。
【0014】
酸化処理は、アルカリ性物質の存在下で行うことが好ましく、酸化剤溶液にアルカリ性物質を添加して行うことが好ましい。アルカリ性物質は、アルカリ性を示す物質であればよく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アンモニウム等の水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸グアニジン等の炭酸塩、ホウ酸カリウム、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩、珪酸カリウム、1号珪酸ナトリウム、2号珪酸ナトリウム、3号珪酸ナトリウム、オルト珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム等の珪酸塩、亜硫酸ナトリウム等の亜硫酸塩、リン酸1水素ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム等のピロリン酸塩が挙げられるが、水酸化物が好ましく、水酸化ナトリウムがより好ましい。アルカリ性物質の濃度は特に限定されないが、水溶液において0.01N以上であることが好ましく、0.05N以上であることが好ましく、0.08N以上であることがより好ましい。上限は、2N以下であることが好ましく、1.5N以下であることがより好ましい。
【0015】
酸化処理の処理温度は、通常は常温以下であり、37℃以下が好ましく、10℃以下がより好ましく、5℃以下が更に好ましい。下限は通常0℃以上であり、3℃以上が好ましい。酸化処理の処理時間は、通常は1時間以上であり、3時間以上が好ましく、5時間以上がより好ましい。上限は30時間以下であり、20時間以下が好ましく、15時間以下がより好ましい。
【0016】
酸化処理物の抽出物は、酸化処理物を少なくとも1回の抽出処理に供して得ることができる。抽出処理としては例えば、アルコール抽出、アセトン抽出が挙げられ、少なくともアルコール抽出を行うことが好ましく、両方を行うことが好ましく、これらをこの順に行うことがより好ましい。アルコール抽出で用いるアルコールとしては、アルコール、アルコール水溶液が挙げられる。アルコールとしては例えば、エタノール、メタノール、ブタノール等の低級アルコールが好ましく、エタノール又はメタノールがより好ましい。抽出処理は、アルコール抽出が好ましく、低級アルコールを用いるアルコール抽出が好ましく、エタノール又はメタノールを用いるアルコール抽出がより好ましい。アルコール抽出とアセトン抽出の両方を行う場合、両工程の間に遠心処理を行ってもよい。
【0017】
酸化処理物の抽出の前に、洗浄処理、沈殿処理、遠心処理の少なくとも1つを行ってもよく、すべてを行うことが好ましく、すべてをこの順に少なくとも1サイクル行うことがより好ましく、2回以上繰り返すことが更に好ましい。洗浄処理としては例えば、通常沈殿物として得られる酸化処理物に水を加え除去する操作を行えばよい。洗浄は少なくとも1回行えばよく、2回以上行うことが好ましい。また、沈殿処理としては、例えば、水を加え撹拌して5〜15時間程度静置する処理が挙げられる。
【0018】
酸化処理物及び抽出物は、乾燥処理に供してもよい。乾燥処理としては例えば、熱風乾燥、凍結乾燥、減圧乾燥、スプレイドライが挙げられる。
【0019】
酸化処理物及び抽出物は通常粒子を含む。粒子のサイズは、特に限定されないが、平均粒径は35μm以上が好ましく、40μm以上がより好ましく、45μm以上が更に好ましく、50μm以上が更により好ましい。上限は、400μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましく、200μm以下が更に好ましく、150μm以下が更により好ましい。粒子のサイズは、沈殿処理、遠心処理等の処理により適宜調整してもよい。
【0020】
酸化処理物及び抽出物の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、マスターサイザー3000(マルバーン))により測定して得られる粒度分布グラフにおけるピークから特定することができる。
【0021】
酸化処理物及び抽出物は、免疫調整作用を有する。免疫調整作用とは、免疫促進又は抑制作用であり、詳しくは、生体内の免疫を高めること、生体内での過剰な免疫反応を抑制すること、及び生体内の免疫を適切な状態に制御することから選ばれる少なくとも1つを意味する。免疫調整作用は、サイトカインの生成促進又は抑制により発揮され得る。サイトカインとしては、インターロイキン−10、インターロイキン−6、腫瘍壊死因子αが挙げられる。免疫調整作用の確認は、骨髄樹状細胞への添加後のインターロイキン−10(IL−10)の生成量、インターロイキン−6(IL−6)の生成量に対するIL−10の生成量の比率及び腫瘍壊死因子−α(TNF−α)の生成量に対するIL−10の生成量の比率の少なくともいずれかが、無添加の骨髄樹状細胞におけるそれぞれと比べて変化することの確認によればよい。骨髄樹状細胞2×10
5wellと共に30μg/mlの試料を24時間共培養した際に、IL−10の生成量は、30pg/ml以上が好ましく、100pg/ml以上が好ましく、1000pg/ml以上が更に好ましい。IL−10/IL−6は、0.02以上が好ましく、0.04以上がより好ましく、0.06以上が更に好ましい。IL−10/TNFαは、0.01以上が好ましく、0.03以上がより好ましく、0.1以上が更に好ましい。上限は特に限定されない。
【0022】
酸化処理物及び抽出物は、IL−10の生成を促進し、IL−6及びTNFαの生成を抑制し得る。そのため、生体内における、IL−10濃度の低下、IL−6濃度の上昇、及びTNFαの上昇のうちいずれか1つに起因する疾患の予防、治療、症状抑制効果を発揮し得る。斯かる疾患としては例えば、自己免疫疾患、癌、糖尿病、精神疾患(例えば、鬱)等が挙げられる。自己免疫疾患とは一般に、免疫系の異常により自己の正常な組織に対し免疫反応を生じることにより発症する疾患であり、限定されないが、例えば、潰瘍性大腸炎、クローン病、原発性硬化性胆管炎、自己免疫性膵炎、原発性胆汁性肝硬変、自己免疫性肝炎、慢性胃炎、慢性萎縮性胃炎等の消化管内での自己免疫疾患;ギラン・バレー症候群、重症筋無力症等の神経・筋組織における自己免疫疾患;バセドウ病、橋本病、原発性甲状腺機能低下症、突発性アジソン病、1型糖尿病等の内分泌・代謝における自己免疫疾患;天疱瘡、膿疱性疥癬等の皮膚における自己免疫疾患;突発性血小板減少性紫斑病、自己免疫性溶血性貧血等の循環器における自己免疫疾患;関節リウマチ、全身性エリマトーデス、強皮症、多発性筋炎、シェーグレン症候群、血管性症候群、混合性結合組織病、高リン脂質抗体症候群等の全身性自己免疫疾患が挙げられる。
【0023】
酸化処理物及び抽出物は、通常、糖を含む。糖は1種類でも2種類以上の組み合わせでもよい。糖を構成する炭素数に制限はなく、糖は単糖、少糖、多糖のいずれでもよい。単糖としては以下が例示される:アルドトリオース、ケトトリオースなどの三炭糖;エリトロース、トレオース、エリトルロースなどの四炭糖;キシロース、リボース、アラビノース、リキソース、リブロース、キシルロースなどの五炭糖;マンノース、アロース、アルトロース、グルコース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトース、フコース、フルクトース、ラムノースなどの六炭糖、セドヘプツロースなどの七炭糖など。少糖としては以下が例示される:スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、ツラノース、セロビオースなどの二糖、ラフィノース、メレジトース、マルトトリオースなどの三糖、アカルボース、スタキオースなどの四糖、キシロオリゴ糖、セロオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、マンナンオリゴ糖などのオリゴ糖。多糖としては、グリコーゲン、でんぷん(アミロース、アミロペクチン)、セルロース、ヘミセルロース、デキストリン、グルカン(αグルカン、βグルカン)が例示される。これらのうち、六炭糖及び多糖が好ましく、グルコース、マンノース、グルカン(例えばβグルカン)がより好ましい。
【0024】
酸化処理物及び抽出物に含まれる糖の総量に対する構成糖としてのマンノースの量は1重量%を超えることが好ましく、2重量%以上がより好ましい。マンノースの量の上限は特になく、通常は70重量%以下、好ましくは60重量%以下、より好ましくは50重量%以下である。
【0025】
酸化処理物及び抽出物に含まれる糖の総量に対する構成糖としてのグルコースの量は30重量%を超えることが好ましく、40重量%以上がより好ましく、50重量%以上が更に好ましい。グルコースの量の上限は特になく、通常は100重量%未満、好ましくは99重量%以下、より好ましくは98重量%以下である。
【0026】
構成糖としてのグルコース/マンノースの量比は、1以上が好ましく、1.1以上が好ましく、1.2以上がより好ましい。上限は特にないが、通常は80以下、好ましくは70以下、より好ましくは60以下、更に好ましくは50以下である。
【0027】
酸化処理物及び抽出物は、酵母由来であること及び構成糖としてのグルコースを通常含むことから、β−1,3−グルカン、β−1,6−グルカン等のβ−グルカンを含むことも予測される。β−グルカンは腸における炎症を抑制することが知られていることから、自己免疫疾患の予防、治療、症状抑制効果を発揮し得る。酸化処理物及び抽出物の構造は、マンナン層とグルカン層の二層からなり、マンナン層の下部にグルカン層が位置するものと推測される。
【0028】
酸化処理物及び抽出物は、窒素成分を含むことが好ましく、構成原子全量に占める窒素原子の割合が0.3%を超えることが好ましく、0.4%以上であることがより好ましい。窒素成分の存在形態は特に限定されないが、例えば、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、糖タンパク、糖アミノ酸が挙げられる。
【0029】
酸化処理物及び抽出物の構成原子全量に占める炭素原子の割合は、34%以上であることが好ましい。水素原子の割合は、6.4%以上であることが好ましい。
【0030】
剤の形態は、特に限定されず、例えば、液体(カプセル、ソフトカプセルなど)、スラリー(シロップなど)、半固体(クリーム、ペーストなど)、固体(錠、粉末(顆粒、細粒など))が挙げられ、固体であることが好ましく、粉末であることがより好ましい。本発明の剤の剤形に限定はない。剤形の例として、丸剤、錠剤、顆粒剤、懸濁剤、乳剤、散剤、シロップ剤、トローチ剤が挙げられる。
【0031】
投与形態に特に限定はなく、例えば、経口投与、非経口投与(経肺投与、皮下投与、静脈内投与、髄腔内投与、経鼻投与、経皮投与、経直腸投与など)、舌下投与、吸入投与などが挙げられる。通常は経口投与、経鼻投与、経皮投与、経直腸投与である。
【0032】
剤は、酸化処理物及び抽出物以外の成分を含んでいてもよく、含む場合は組成物と言い換えることもできる。有効成分以外の成分は、薬理学的に許容可能な成分であればよく、例えば以下のものが挙げられる:調味料;酸味料(クエン酸、コハク酸など);保存剤(アスコルビン酸、酢酸塩、ε−ポリリジンなど);pH調整剤;乳化剤(ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、レシチンなど);香料;色素;増粘剤(カラギーナン、キサンタンガムなど);膨張剤;タンパク質(大豆タンパク質、乳タンパク質など);糖類(デンプン、ショ糖、果糖、還元デンプン糖化物、エリスリトール、キシリトールなど);甘味料(スクラロース、ソーマチンなど);ビタミン類(ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンKなど);ミネラル類(鉄、カルシウムなど)。
【0033】
酸化処理物及び抽出物は、食品用組成物、飼料用組成物に含めることができる。食品用組成物の例としては、飲料(清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、粉末飲料、果実飲料、乳飲料、ゼリー飲料、ビール、日本酒、洋酒、中国酒、薬味酒など);米飯類(ご飯、お粥など);パン類;調味料(ソース、味噌、醤油、マヨネーズ、ショートニング、ドレッシング、たれ、香辛料等);大豆食品(納豆、豆腐、油揚げなど);水産加工食品(かまぼこ、はんぺん、ちくわ、練り製品など);食肉加工品(ハム、ソーセージ、ウィンナーなど);農産加工食品(野菜、果物など);漬物類;麺類(うどん、そば、スパゲッティなど);スープ類(粉末スープ、液体スープなど);乳製品(チーズ、ヨーグルト、クリームなど);菓子類(ゼリー、スナック菓子、チューインガム、キャンディー、チョコレート、ケーキなど);健康食品(機能性食品、栄養補助食品(サプリメント)、特定保健用食品);対象者が特定されている食品(医療用食品、病者用食品、乳児用食品、介護用食品、高齢者用食品)等が挙げられる。飼料用組成物は、ヒト以外の動物(例えば、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ等の家畜;ニワトリ、シチメンチョウ、ウズラ等の家禽;マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ等の実験動物;イヌ、ネコ、インコ、オウム等の愛玩動物)を対象とする飼料用組成物として利用してもよい。
【0034】
本発明の剤の投与時期は、特に限定されない。本発明の剤の投与量は、特に限定されず、投与対象の年齢、体重、健康状態などに応じて適宜調整することができる。本発明の剤の一日あたりの投与量も、特に限定されない。
【実施例】
【0035】
以下に、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこの実施例により限定されるものではない。
【0036】
実施例1〜4及び比較例1〜7:NP酵母及びNP残渣の酸化及び抽出
NaOH水溶液(0.1N,200mL)に次亜塩素ナトリウム(各有効塩素濃度は、0.1%(実施例1及び3)、0.3%(実施例2及び4)、0.5%(比較例1及び4)、1.0%(比較例2及び5)又は1.5%(比較例3及び6))を加え、これにCandida utilis(NP酵母(日本製紙株式会社製)の乾燥菌体(実施例1〜2及び比較例1〜3)又は酵母残渣(実施例3〜4及び比較例4〜6)、各2gを加え、一晩、撹拌しながら4℃に保存した。翌日、遠心(5000rpm、20分)後、溶液を捨てた。水を加えて沈殿物を懸濁後、洗浄を3回繰り返した。更に水を加えて懸濁後、一晩、撹拌しながら4℃に保存した。遠心(5000rpm、20分)後、水を捨てエタノールを加えて懸濁し、1日静置した。遠心後、エタノールを捨て、アセトンを加えて懸濁、1日静置した。遠心(5000rpm、20分)後、アセトンを捨て、かき混ぜながらドライヤーにより乾燥させ、NP酵母試料(NP酵母_0.1%(実施例1)、NP酵母_0.3%(実施例2)、NP酵母_0.5%(比較例1)、NP酵母_1.0%(比較例2)、NP酵母_1.5%(比較例3))、及び、NP残渣試料(NP残渣_0.1%(実施例3)、NP残渣_0.3%(実施例4)、NP残渣_0.5%(比較例4)、NP残渣_1.0%(比較例5)、NP残渣_1.5%(比較例6))を得た。
【0037】
なお、NP酵母は、酸化処理前に好気条件下、30℃でグルコース濃度3%のYM(酵母エキス、麦芽エキス、ペプトン)培地を用い、3Lジャーファーメンター(400rpm)の条件で培養し、集菌、洗浄後、常法に従い凍結乾燥により得られる乾燥酵母である。また、NP酵母残渣は、酸化処理前にNP酵母を前記の条件で培養し、酵母菌体が5%となるようにpH7に調整した水を加え、80℃、1時間処理後、遠心分離(5,000rpm)で菌体内容物を除去して調製した。収率は55%であった。
【0038】
実施例5〜7及び比較例7〜9:KR酵母及びNP残渣の酸化及び抽出
KR酵母(興人ライフサイエンス株式会社製)は、Candida utilisを発底とし、酵母エキスを抽出した残渣であり、蛋白質や細胞壁を豊富に含む。これを、実施例(5,6、7)および比較例(7,8,9)に用いた。
【0039】
比較例10〜12
以下の酵母製品を比較試料とした。
比較例10:パン酵母(パン酵母βグルカン、オリエンタル酵母工業株式会社製)
比較例11:実施例1においてカンジダ属酵母としてカンジダ・アルビカンス(東京薬科大学にて精製、塩素濃度0.5%)を用いたほかは同様にして得られた酵母試料
比較例12:黒酵母(クルルのβグルカン、伊藤忠製糖株式会社製)
【0040】
サイトカイン分泌促進効果の検討
BALB/cマウスの大腿骨及び脛骨から骨髄細胞を採取し、後述のとおり薬剤処理し、樹状細胞(BMDC)を誘導した。次に、2x10
5個の細胞の培養細胞に30μg/mlの各試料(表1〜6参照)を加え、37℃、24時間培養し、培養上清中のサイトカインの濃度(pg/mL)をELISAで測定した(表1〜6)。
【0041】
BMDCの誘導は、以下のように行った。BALB/cマウス由来骨髄細胞を溶血処理し、PE標識抗体(anti−IA/IE、anti−CD4及びanti−CD8抗体)と反応させた。反応後、anti−PE抗体修飾磁気ビーズを作用させIA/IE、CD4、CD8a抗体を取り除き、残りの際母を20ng/mlの組換えGM−CSFを含む培地で9日間培養してBMDCを誘導した。
【0042】
ELISAには以下のキットを用い、キットに添付されている説明書に従って行った。
IL−10:BD OptEIA(登録商標) ELISA Sets(BDバイオサイエンス)
IL−6:Duoset(登録商標) ELISA(R&Dシステムズ)
TNF−α:Duoset(登録商標) ELISA(R&Dシステムズ)
のサイトカイン量の単位は、いずれもpg/mlである。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】
【0046】
【表4】
【0047】
【表5】
【0048】
【表6】
【0049】
表1〜6から、実施例のIL−10をはじめとする各サイトカイン濃度及びサイトカイン量比は、比較例1,3と比べて高い値であった。また比較例2の酵母試料は、in vivoで炎症性腸疾患に対する治療、予防、症状改善効果が確認されている(特許文献1など参照)。また、比較例2の酵母試料は、アルビカンスの他の塩素濃度による処理を経た酵母試料群の中で最もIL−10濃度を上昇させることができた酵母試料である。そのような比較例2と比べても、各実施例における数値は同程度かそれ以上であった。中でも実施例の各サイトカイン量比を比較例のそれらと比較すると、実施例の方がより効果的であることが示唆される。これらの結果は、本発明の剤が免疫調整剤として有用であり、自己免疫疾患等の疾患の治療剤として有用であることを示す。
【0050】
20mg程度の実施例1〜5の試料を50mLの遠沈チューブに入れ、測定直前に10mLの水を加えて懸濁し、懸濁した試料を機器に注いだ。更に、遠沈チューブに10mLの水を加えて再度懸濁し、懸濁した試料を機器に注ぎ、マスターサイザー3000(マルバーン)を用いて各試料の粒径を測定した(表6)。各試料の粒径のうち再考頻度を示す粒径と各試料のIL−10濃度をプロットした(
図1)。
【0051】
【表7】
【0052】
表7及び
図1より、最高頻度を示す粒径(粒径のピーク)が50〜150μmの範囲に含まれる試料は、IL−10濃度を効率的に高めることができることが分かった。この結果は、本発明の剤の免疫調整効果は、酵母が特定の粒径の範囲内であることにより、より高められることを示している。
【0053】
更に、NP酵母(実施例1〜2及び比較例1〜3)中に含まれる糖分の構成糖(グルコース、マンノースの比率)を確認した(表8)。
【0054】
【表8】
【0055】
また、実施例1〜2及び同試料中の炭素(C)、水素(H)、窒素(N)を定量した(表9)。
【0056】
【表9】
【0057】
表8より、比較例のNP酵母試料がグルコースが多くマンノースは微量であったのに対し、実施例のNP酵母試料はグルコースが比較的少なく、マンノースの含量が比較的多かった。また、表9より、比較例と比べて実施例のNP酵母試料は、N含量が多かった。これらの結果から、本発明における酵母培養物及び酵母残渣は、βグルカン及びマンナンを含むこと、及びタンパク質も含むことが推測される。さらに、粒径の結果(表7など)も併せて考慮すると、マンナン層の下部にグルカンを含むことも推測される。
【0058】
実施例8〜11、比較例13:KR酵母の乾燥の有無
NaOH水溶液(0.1N,200mL)に次亜塩素酸ナトリウム(各有効塩素濃度は、0.1%(実施例8〜11)、0.5%(比較例13)を加え、これにCandida utilis(KR酵母:興人ライフサイエンス株式会社製)の乾燥菌体、各2gを加え、一晩、撹拌しながら4℃に保存した。翌日、遠心(5000rpm、20分)後、溶液を捨てた。水を加えて沈殿物を懸濁後、洗浄を3回繰り返した。更に水を加えて懸濁後、一晩、撹拌しながら4℃に保存した。遠心(5000rpm、20分)後、水を捨てエタノール(実施例8及び10)またはメタノール(実施例9及び11)を加えて懸濁し、1日静置した。遠心後、エタノールまたはメタノールを捨て、アセトンを加えて懸濁、1日静置した。遠心(5000rpm、20分)後、アセトンを捨て、かき混ぜながらドライヤーにより乾燥させ乾燥粉体(実施例10、11)を得た。アセトンを捨て、水を加えて沈殿物を懸濁後、洗浄を3回繰り返した。更に水を加えて懸濁した(実施例8、9)。各試料のサイトカイン分泌促進効果検討のため、実施例1と同様に培養上清中のサイトカイン濃度を測定した(表10)。
【0059】
【表10】
【0060】
表10から、実施例のIL−10をはじめとする各サイトカイン濃度は、比較例13と比べて高い値であったことが分かる。この結果は、本発明の剤が免疫調整剤として有用であり、自己免疫疾患等の疾患の治療剤として有用であることを示す。また、乾燥処理を行わなかった実施例8、9は、行った実施例10、11のそれぞれよりもサイトカイン濃度が高く、エタノールによる抽出処理を行った実施例8、10は、メタノール処理を行った実施例9、11よりもサイトカイン濃度が高かった。これらの結果は、乾燥処理を行わないほうが好ましく、アルコール抽出の際にはエタノールを用いることが好ましいことを示す。