(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
試料を載置するステージの第1の方向への移動が固定された状態で、レーザビームが前記ステージに照射されるスポット径以下の間隔で前記第1の方向と直交する第2の方向に前記ステージを移動させながら、移動させられた位置毎に、前記レーザビームを用いたレーザ干渉法により、前記ステージの前記第1の方向位置を測定する工程と、
前記ステージの前記第2の方向への移動が固定された状態で、前記スポット径以下の間隔で前記第1の方向に前記ステージを移動させながら、移動させられた位置毎に、前記レーザビームを用いたレーザ干渉法により、前記ステージの前記第2の方向位置を測定する工程と、
前記第2の方向の各位置において測定された前記ステージの前記第1の方向位置に基づいて、前記第2の方向の各位置における前記第1の方向への前記ステージの位置の歪量を演算する工程と、
前記第1の方向の各位置において測定された前記ステージの前記第2の方向位置に基づいて、前記第1の方向の各位置における前記第2の方向への前記ステージの位置の歪量を演算する工程と、
前記第1の方向の各位置における前記第2の方向の各位置での前記第1の方向への前記ステージの位置の歪量として、測定された前記第2の方向の各位置における前記第1の方向への前記ステージの位置の歪量を適用し、前記第2の方向の各位置における前記第1の方向の各位置での前記第2の方向への前記ステージの位置の歪量として、測定された前記第1の方向の各位置における前記第2の方向への前記ステージの位置の歪量を適用する、前記ステージの位置の歪量の2次元マップを作成する工程と、
前記2次元マップに定義された歪量を用いて、前記ステージ上に載置される前記試料上の位置を示す位置データを補正する工程と、
を備え、
前記スポット径は、前記ステージの位置測定面の歪の波長の1/2以下であることを特徴とするステージ機構の位置補正方法。
荷電粒子ビームを用いて前記試料上にパターンを描画するための描画データに定義されるパターンの座標を補正することによって、前記位置データが補正されることを特徴とする請求項1又は2記載のステージ機構の位置補正方法。
試料を載置するステージの位置をレーザ干渉法により測定するためのレーザビームの照射を受ける、第1の方向に延びる前記ステージの第1の面と前記第1の方向と直交する第2の方向に延びる前記ステージの第2の面と、の凹凸波長を測定する工程と、
測定された前記凹凸波長以上の前記レーザビームのスポット径を演算する工程と、
測定された前記凹凸波長以上の前記レーザビームのスポット径になるように、前記レーザビームの光束径を調整する工程と、
前記凹凸波長以上の前記スポット径になるように、前記光束径が調整された前記レーザビームを用いたレーザ干渉法により前記ステージ位置を測定する工程と、
を備えたことを特徴とするステージ機構の位置補正方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のステージ機構では、レーザ照射空間のサイズに現在よりも余裕があったため、ミラーの微小歪の波長と同等以上の大きいスポット径でレーザを照射することができていた。そのため、スポット径内でミラーの微小歪による誤差分が平均化され、従来の補正方法でも許容できる描画位置を確保することが可能となっていた。
【0008】
しかしながら、装置設置面積の関係上、装置構成の小型化が主流となってきた。そのため、ミラーを照射するレーザのスポット径を小さくすることによって、レーザ干渉計のシステム構成を小型化し、装置全体構成の小型化を目指している。これに伴い、従来においては平均化効果で隠れていた微小歪によってレーザ干渉計によって測定されるステージ位置の誤差が顕著に表れるようになってきた。そのため、さらに高精度な補正手法の確立が望まれている。
【0009】
そこで、本発明は、ステージ機構のミラーの微小歪に対するステージ機構の位置補正を行うことが可能な方法及びかかる方法を実行可能な描画装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様のステージ機構の位置補正方法は、
試料を載置するステージの第1の方向への移動が固定された状態で、レーザビームがステージに照射されるスポット径以下の間隔で第1の方向と直交する第2の方向にステージを移動させながら、移動させられた位置毎に、レーザビームを用いたレーザ干渉法により、ステージの第1の方向位置を測定する工程と、
ステージの第2の方向への移動が固定された状態で、スポット径以下の間隔で第1の方向にステージを移動させながら、移動させられた位置毎に、レーザビームを用いたレーザ干渉法により、ステージの第2の方向位置を測定する工程と、
第2の方向の各位置において測定されたステージの第1の方向位置に基づいて、第2の方向の各位置における第1の方向へのステージの位置の歪量を演算する工程と、
第1の方向の各位置において測定されたステージの第2の方向位置に基づいて、第1の方向の各位置における第2の方向へのステージの位置の歪量を演算する工程と、
第1の方向の各位置における第2の方向の各位置での第1の方向へのステージの位置の歪量として、測定された第2の方向の各位置における第1の方向へのステージの位置の歪量を適用し、第2の方向の各位置における第1の方向の各位置での第2の方向へのステージの位置の歪量として、測定された第1の方向の各位置における第2の方向へのステージの位置の歪量を適用する、ステージの位置の歪量の2次元マップを作成する工程と、
2次元マップに定義された歪量を用いて、ステージ上に載置される試料上の位置を示す位置データを補正する工程と、
を備え
、
前記スポット径は、前記ステージの位置測定面の歪の波長の1/2以下であることを特徴とする。
【0011】
また、スポット径以下の間隔として、スポット径よりも小さい値が用いられると好適である。
【0012】
また、荷電粒子ビームを用いて試料上にパターンを描画するための描画データに定義されるパターンの座標を補正することによって、位置データが補正されると好適である。
【0013】
本発明の他の態様のステージ機構の位置補正方法は、
試料を載置するステージの位置をレーザ干渉法により測定するためのレーザビームの照射を受ける、第1の方向に延びるステージの第1の面と第1の方向と直交する第2の方向に延びるステージの第2の面と、の凹凸波長を測定する工程と、
測定された前記凹凸波長以上の前記レーザビームのスポット径を演算する工程と、
測定された凹凸波長以上のレーザビームのスポット径になるように、レーザビームの光束径を調整する工程と、
凹凸波長以上のスポット径になるように、光束径が調整されたレーザビームを用いたレーザ干渉法によりステージ位置を測定する工程と、
を備えたことを特徴とする。
【0014】
本発明の一態様の荷電粒子ビーム描画装置は、
試料を載置する、移動可能なステージと、
ステージの第1の方向への移動が固定された状態で、レーザビームがステージに照射されるスポット径以下の間隔で第1の方向と直交する第2の方向にステージが移動させられながら、移動させられた位置毎に、レーザビームを用いたレーザ干渉法により、ステージの第1の方向位置を測定する第1のレーザ測長装置と、
ステージの第2の方向への移動が固定された状態で、スポット径以下の間隔で第1の方向にステージを移動させながら、移動させられた位置毎に、レーザビームを用いたレーザ干渉法により、ステージの第2の方向位置を測定する第2のレーザ測長装置と、
第2の方向の各位置において測定されたステージの第1の方向位置に基づいて、第2の方向の各位置における第1の方向へのステージの位置の歪量を演算する第1の歪量演算部と、
第1の方向の各位置において測定されたステージの第2の方向位置に基づいて、第1の方向の各位置における第2の方向へのステージの位置の歪量を演算する第2の歪量演算部と、
第1の方向の各位置における第2の方向の各位置での第1の方向へのステージの位置の歪量として、測定された第2の方向の各位置における第1の方向へのステージの位置の歪量を適用し、第2の方向の各位置における第1の方向の各位置での第2の方向へのステージの位置の歪量として、測定された第1の方向の各位置における第2の方向へのステージの位置の歪量を適用する、ステージの位置の歪量の2次元マップを作成する2次元マップ作成部と、
2次元マップに定義された歪量を用いて、ステージ上に載置される試料上の位置を示す位置データを補正する補正部と、
荷電粒子ビームを用いて、補正された位置データに基づいて試料上にパターンを描画する描画機構と、
を備え
、
前記スポット径は、前記ステージの位置測定面の歪の波長の1/2以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様によれば、ステージ機構のミラーの微小歪に対するステージ機構の位置補正を行うことできる。よって、ステージに照射するレーザのスポット径を小さくする場合でも高精度な位置にパターンを描画できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施の形態では、荷電粒子ビームの一例として、電子ビームを用いた構成について説明する。但し、荷電粒子ビームは、電子ビームに限るものではなく、イオンビーム等の他の荷電粒子を用いたビームでも構わない。また、実施の形態では、一例として、シングルビームを用いた描画装置について説明するが、これに限るものではない。マルチビームを用いた描画装置でも構わない。
【0018】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における描画装置の構成を示す概念図である。
図1において、描画装置100は、荷電粒子ビーム描画装置の一例である。描画装置100は、描画機構150と制御系回路160を備えている。描画機構150は、描画室103と描画室103の上部に配置された電子鏡筒(電子ビームカラム)102を備えている。電子鏡筒102内には、電子銃201、照明レンズ202、第1のアパーチャ203、投影レンズ204、偏向器205、第2のアパーチャ206、対物レンズ207、及び偏向器208を有している。そして、描画室103内には、XYステージ105とXYステージ105を駆動するモータ222,224が配置される。XYステージ105上には、描画対象となる試料101とレーザ干渉を利用した測長システムに用いる反射ミラー30,32とが配置される。試料101として、例えば、半導体装置が形成されるウェハやウェハにパターンを転写する露光用のマスクが含まれる。また、このマスクは、例えば、まだ何もパターンが形成されていないマスクブランクスが含まれる。
【0019】
制御系回路160は、制御計算機110、メモリ112、ステージ制御回路122、レーザ測長装置124,126、偏向制御回路130、及びデジタルアナログ変換(DAC)アンプ132を有している。制御計算機110、メモリ112、ステージ制御回路122、レーザ測長装置124,126、及び偏向制御回路130は図示しないバスを介して互いに接続されている。偏向制御回路130には、DACアンプ132が接続されている。モータ222,224は、ステージ制御回路122に接続されている。描画装置100の外部から描画データが入力され、記憶装置140に格納されている。
【0020】
制御計算機110内には、ショットデータ生成部50、y方向位置測定部52、x方向位置測定部54、y方向歪Δy演算部56、x方向歪Δx演算部58、2次元マップ作成部60、補正部62、及び描画制御部64が配置される。ショットデータ生成部50、y方向位置測定部52、x方向位置測定部54、y方向歪Δy演算部56、x方向歪Δx演算部58、2次元マップ作成部60、補正部62、及び描画制御部64といった各「〜部」は、処理回路を含み、その処理回路には、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置等が含まれる。また、各「〜部」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いてもよい。或いは、異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。ショットデータ生成部50、y方向位置測定部52、x方向位置測定部54、y方向歪Δy演算部56、x方向歪Δx演算部58、2次元マップ作成部60、補正部62、及び描画制御部64内に必要な入力データ或いは演算された結果はその都度メモリ112に記憶される。
【0021】
図1では、実施の形態1を説明する上で必要な構成部分以外については記載を省略している。描画装置100にとって、通常、必要なその他の構成が含まれても構わないことは言うまでもない。
【0022】
図2は、実施の形態1における各領域を説明するための概念図である。
図2において、試料101の描画領域10は、偏向器208の例えばy方向偏向可能幅或いはそれよりも若干小さい幅で例えばy方向に向かって短冊状の複数のストライプ領域20に仮想分割される。試料101の描画処理は、例えばx方向に描画処理を進めることによってストライプ領域20単位で実行されることになる。
【0023】
図3は、実施の形態1におけるレーザ測長装置の測定位置を示す概念図である。
図3において、XYステージ105には直交する2辺に沿って反射ミラー30,32が配置されている。ここでは、x方向(第1の方向)に反射面が位置するように反射ミラー30(第1のミラー)が、y方向(第2の方向)に反射面が位置するように反射ミラー32(第2のミラー)が配置される。そして、レーザ測長装置124は、x方向に反射面が位置するように反射ミラー30にレーザを照射するように配置される。レーザ測長装置126は、y方向に反射面が位置するように反射ミラー32にレーザを照射するように配置される。なお、モータ222は、XYステージ105をx方向に移動させ、モータ224は、XYステージ105をy方向に移動させる。
【0024】
図4は、実施の形態1における反射ミラーに曲がり変形が生じている様子の一例とレーザスポット径の関係の一例を示す概念図である。反射ミラー30,32は、その加工技術の向上からその加工精度として反射面に数mmオーダー(例えば、5mm)以上の波長をもつような歪(凹凸)が生じないように製造されるまでになったが、それでも反射面を完全な平面に加工することは困難である。また、加工精度をさらに向上させるとなれば製造コストが大幅に増加してしまう。或いは反射面に数mmオーダー(例えば、5mm)以上の波長をもつような歪(凹凸)が生じる場合には、従来のステージ位置補正の手法を用いて対応すればよい。実施の形態1では、ビームのスポット径dが歪の波長λよりも小さくなる場合に歪(凹凸)によって引き起こされる誤差を補正する。特に、数mmオーダー(例えば、5mm)未満の波長をもつような歪(凹凸)によって引き起こされる誤差を補正する場合に有効である。
【0025】
ここで、反射ミラー30(32)の反射面の歪(凹凸)の波長λに対して、レーザ測長装置124(126)からレーザビーム43が反射ミラー30(32)に照射される際のビームのスポット径d1が、歪の波長λ以上のサイズがあれば、スポット径d1内に歪の振幅Δの最大値と最小値が含まれるので、平均化効果により、かかる歪に起因するXYステージ105の位置の測定誤差は無視できる程度に抑えることができる。従来、スポット径が例えば10mm程度或いはそれより若干小さいサイズが主に用いられていた。スポット径d1が、
図4に示すように、少なくとも歪の波長λの1/2以上のサイズがあれば、スポット径d1内に歪の振幅Δの最大値と最小値が含まれ得るので平均化効果を期待できる。しかしながら、上述したように、描画装置100の設置面積の関係上、装置構成の小型化が主流となってきたため、反射ミラー30(32)を照射するレーザのスポット径を小さくすることによって、レーザ測長装置124(126)のシステム構成を小型化し、装置全体構成の小型化を目指している。これに伴い、
図4に示すように、レーザ測長装置124(126)からレーザビーム42が反射ミラー30(32)に照射される際のビームのスポット径d2が、歪の波長λの1/2よりも小さくなると、それまで平均化効果で隠れていた微小歪によって、レーザ測長装置124(126)によって測定されるXYステージ105の位置の誤差が顕著に表れるようになってきた。そのためビーム偏向位置に誤差が生じてしまうことになる。
【0026】
図5は、実施の形態1における基板上に形成された評価パターンの位置ずれ量の一例を示す図である。
図5では、縦軸に描画された評価パターンのy方向の設計位置からの位置ずれ量、横軸に描画された評価パターンのx方向位置を示す。なお、
図5では、遮光膜上にレジストが塗布された基板上に、評価パターンとしてx方向に直線に延びるラインパターンを描画装置100で描画し、現像、アッシング、及びエッチング処理を経て得られたパターンの一部の位置を位置測定器により測定した結果を示している。
図5に示すように、測定結果にノイズ成分が含まれているが、全体の傾向として、y方向にある振幅を持った歪が生じていることがわかる。評価パターンのy方向位置についても同様に歪が生じ得ることは言うまでもない。
【0027】
そこで、実施の形態1では、レーザ測長装置124(126)から照射されるレーザビームの反射ミラー30(32)上でのスポット径が小さくなった場合に生じるステージ位置の測定誤差を補正する。
【0028】
図6は、実施の形態1における描画方法の要部工程を示すフローチャート図である。
図6において、実施の形態1における描画方法は、x方向可変y方向位置測定工程(S102)と、y方向可変x方向位置測定工程(S104)と、x方向可変y方向歪量Δy演算工程(S106)と、y方向可変x方向歪量Δx演算工程(S108)と、2次元マップ作成工程(S110)と、ショットデータ生成工程(S112)と、パターン座標補正工程(S114)と、描画工程(S116)と、いった一連の工程を実施する。かかる一連の工程のうち、x方向可変y方向位置測定工程(S102)と、y方向可変x方向位置測定工程(S104)と、x方向可変y方向歪量Δy演算工程(S106)と、y方向可変x方向歪量Δx演算工程(S108)と、2次元マップ作成工程(S110)と、パターン座標補正工程(S114)とはステージ機構の位置補正方法に相当する。
【0029】
x方向可変y方向位置測定工程(S102)として、レーザ測長装置126(第1のレーザ測長装置)は、XYステージ105のy方向(第1の方向)への移動が固定された状態で、レーザビームがXYステージ105に照射されるスポット径以下の間隔でx方向(第2の方向)にXYステージ105を移動させながら、移動させられた位置毎に、レーザビームを用いたレーザ干渉法により、XYステージ105のy方向位置を測定する。具体的には、ステージ制御回路122による制御のもと、モータ224の回転軸を固定してXYステージ105をy方向に移動させないようにする。そして、ステージ制御回路122による制御のもと、モータ222の回転軸を所定の回転角ずつ回転させて、XYステージ105をx方向に所定の移動量だけステッピング移動させる。そして、XYステージ105がステッピング移動する毎に、配置位置が固定されているレーザ測長装置126からXYステージ105の反射ミラー32に測定用のレーザを照射し、反射ミラー32からの反射光を受光して、反射光と基準光との間のレーザ干渉原理によりXYステージ105までのy方向距離を測定する。レーザ測長装置126は、y方向距離の各データを用いて、x方向の各位置におけるXYステージ105のy方向位置yjを測定(演算)する。測定されたXYステージ105のy方向位置yjの各測定データは、y方向位置測定部52に出力される。或いは、レーザ測長装置126により各位置のy方向距離を測定し、y方向位置測定部52によりy方向距離の各データを用いて、x方向の各位置におけるXYステージ105のy方向位置yjを測定(演算)してもよい。
【0030】
図7は、実施の形態1における測定間隔の一例を示す図である。XYステージ105のy方向位置yjは、上述したように、スポット径以下の間隔で測定する。これにより、反射ミラー32の反射面についてx方向に隙間なく、距離を測定できる。より望ましくは、
図7に示すように、スポット径以下の間隔として、スポット径40よりも小さい値が用いられると好適である。測定領域の一部が重なった方が、ミラー歪による測定誤差を小さくできる。さらに望ましくは、スポット径40の1/2以下の間隔で測定すると良い。測定領域の重なり割合が大きい方が、ミラー歪による測定誤差をさらに小さくできる。
【0031】
y方向可変x方向位置測定工程(S104)として、レーザ測長装置124(第2のレーザ測長装置)は、XYステージ105のx方向(第2の方向)への移動が固定された状態で、レーザビームがXYステージ105に照射されるスポット径以下の間隔でy方向にXYステージ105を移動させながら、移動させられた位置毎に、レーザビームを用いたレーザ干渉法により、XYステージ105のx方向位置を測定する。具体的には、ステージ制御回路122による制御のもと、モータ222の回転軸を固定してXYステージ105をx方向に移動させないようにする。そして、ステージ制御回路122による制御のもと、モータ224の回転軸を所定の回転角ずつ回転させて、XYステージ105をy方向に所定の移動量だけステッピング移動させる。そして、XYステージ105がステッピング移動する毎に、配置位置が固定されているレーザ測長装置124からXYステージ105の反射ミラー30に測定用のレーザを照射し、反射ミラー30からの反射光を受光して、反射光と基準光との間のレーザ干渉原理によりXYステージ105までのx方向距離を測定する。レーザ測長装置124は、x方向距離の各データを用いて、y方向の各位置におけるXYステージ105のx方向位置xiを測定(演算)する。測定されたXYステージ105のx方向位置xiの各測定データは、x方向位置測定部54に出力される。或いは、レーザ測長装置124により各位置のx方向距離を測定し、x方向位置測定部54によりx方向距離の各データを用いて、y方向の各位置におけるXYステージ105のx方向位置xiを測定(演算)してもよい。
【0032】
x方向位置xiの測定においても、上述したように、スポット径以下の間隔で測定する。より望ましくは、
図7に示すように、スポット径以下の間隔として、スポット径40よりも小さい値が用いられると好適である。さらに望ましくは、スポット径40の1/2以下の間隔で測定すると良い。ここでは、y方向位置yjを測定した間隔と同様の間隔で測定すればよい。
【0033】
なお、x方向位置xiの測定及びy方向位置yjの測定にあたっては、試料101をXYステージ105上に載置した状態で行うと好適である。これにより、試料101の荷重によるたわみ等の影響も含めて測定できる。試料101として、描画対象マスクブランクスの他、レジストが塗布されていないクロム(Cr)膜が形成された状態のマスク基板であってもよい。或いは、レジスト及びクロム(Cr)膜が形成されていないガラス基板であってもよい。
【0034】
また、x方向位置xiの測定及びy方向位置yjの測定は、それぞれ複数回行うと好適である。そして、複数回の測定で得られた測定結果の平均値を用いることで測定誤差を軽減できる。
【0035】
また、x方向位置xi及びy方向位置yjの測定は、電子ビーム200の光軸中心が、XYステージ105上に試料101を載置した場合の試料101の描画領域10内に位置する最大領域のx方向サイズL’xの範囲(
図3)とy方向サイズL’yの範囲(
図3)とについて行えばよい。或いは、偏向器208が試料101の描画領域10内に電子ビーム200を偏向可能な最大領域のx方向サイズL’xの範囲(
図3)とy方向サイズL’yの範囲(
図3)とについて行う場合であっても構わない。測定範囲が反射ミラー30,32全体に及ばないので測定時間の短縮を図ることができる。また、データ量を小さくできる。
【0036】
図8は、実施の形態1における測定結果を説明するための図である。上述した測定によって、
図8(a)に示すように、XYステージ105の反射ミラー30のy方向に並ぶ各反射位置で同じx方向位置を測定した場合の反射位置毎に得られるx方向位置xi(=x1,x2,x3,x4,x5,・・・)がわかる。同様に、
図8(b)に示すように、XYステージ105の反射ミラー32のx方向に並ぶ各反射位置で同じy方向位置を測定した場合の反射位置毎に得られるy方向位置yj(=y1,y2,y3,y4,y5,・・・)がわかる。
【0037】
x方向可変y方向歪量Δy演算工程(S106)として、y方向歪Δy演算部56(第1の歪量演算部)は、x方向の各位置において測定されたXYステージ105のy方向位置yjに基づいて、x方向の各位置におけるy方向へのXYステージ105の位置の歪量Δyjを演算する。具体的には、y方向位置yjからy方向位置yjを測定するにあたって基準としたy方向設計位置を差し引いた差分値を歪量Δyjとして演算すればよい。かかる演算により、反射ミラー32のx方向に並ぶ各反射位置における歪量Δyj(=Δy1,Δy2,Δy3,Δy4,Δy5,・・・)がわかる。
【0038】
y方向可変x方向歪量Δx演算工程(S108)として、x方向歪Δx演算部58(第2の歪量演算部)は、y方向の各位置において測定されたXYステージ105のx方向位置xiに基づいて、y方向の各位置におけるx方向へのXYステージ105の位置の歪量Δxiを演算する。具体的には、x方向位置xiからx方向位置xiを測定するにあたって基準としたx方向設計位置を差し引いた差分値を歪量Δxiとして演算すればよい。かかる演算により、反射ミラー30のy方向に並ぶ各反射位置における歪量Δxi(=Δx1,Δx2,Δx3,Δx4,Δx5,・・・)がわかる。
【0039】
以上のように、実施の形態1では、歪量Δxi及び歪量Δyjについて、それぞれ1次元データを得るだけなので、データ量を低減できる。さらに、試料101の描画領域10内に位置する最大領域のx方向サイズL’xの範囲(
図3)とy方向サイズL’yの範囲(
図3)とについて行えばよいので、その分データ量を低減できる。
【0040】
図9は、実施の形態1におけるミラー歪の一例を示す図である。
図9に示すように、ミラー30,32の微小歪の振幅Δは一様とは限らない。よって、y方向の各位置におけるXYステージ105のx方向位置xiとx方向の各位置におけるXYステージ105のy方向位置yjとを測定することで、正確な歪量を得ることができる。
【0041】
2次元マップ作成工程(S110)として、2次元マップ作成部60は、XYステージ105の位置の歪量の2次元マップ(Δxi,Δyj)を作成する。
【0042】
図10は、実施の形態1における2次元マップの一例を示す図である。
図10の例では、測定点として、x方向位置iを1〜5まで、y方向位置jを1〜5まで測定した場合の2次元マップを示している。
図10に示すように、実施の形態1における2次元マップ(Δxi,Δyj)では、y方向の各位置におけるx方向の各位置でのx方向へのXYステージ105の位置の歪量として、測定されたx方向の各位置におけるy方向へのXYステージ105の位置の歪量Δyjを適用する。x方向の各位置におけるy方向の各位置でのx方向へのXYステージ105の位置の歪量として、測定されたy方向の各位置におけるx方向へのXYステージ105の位置の歪量Δxiを適用する。言い換えれば、
図10に示すように、実施の形態1における2次元マップでは、x軸方向にインデックスjが大きくなっていく。また、y軸方向にインデックスiが大きくなっていく。そして、x軸方向に並ぶ各y方向列には、同じ歪量Δyjが定義される。また、y軸方向に並ぶ各x方向列には、同じ歪量Δxiが定義される。以上のように作成された2次元マップ(Δxi,Δyj)は、記憶装置142に格納される。
【0043】
図11は、実施の形態1における2次元マップを説明するための図である。
図11(a)に示すように、x方向位置xi、及びy方向位置yjを測定することによって、歪量Δxiと歪量Δyjを求めることができる。そして、
図11(b)に示すように、y方向に向かって変化する歪量Δxiの数列を、x軸方向の各位置に並べる。同様に、x方向に向かって変化する歪量Δyjの数列を、y軸方向の各位置に並べる。これにより、各交点での(Δxi,Δyj)がその位置での歪量となる。
【0044】
以上により、電子ビーム200の光軸中心が、XYステージ105上に試料101を載置した場合の試料101の描画領域10内に位置する最大領域内の各位置における歪量の2次元マップ(Δxi,Δyj)を得ることができる。反射ミラー30,32全体について測定する必要がないので、データ量を低減できる。
【0045】
ショットデータ生成工程(S112)として、ショットデータ生成部50は、記憶装置140から描画データを読み出し、複数段のデータ変換処理を行って、装置固有のショットデータを生成する。描画データには、複数の図形パターンが定義される。しかしながら、描画装置100で図形パターンを描画するためには、1回のビームのショットで照射できるサイズに描画データに定義された図形パターンを分割する必要がある。そこで、ショットデータ生成部50は、実際に描画するために、各図形パターンを1回のビームのショットで照射できるサイズに分割してショット図形を生成する。そして、ショット図形毎にショットデータを生成する。ショットデータには、例えば、図形種、図形サイズ、及び描画位置(x,y)(照射位置)といった図形データが定義される。その他、照射量に応じた照射時間が定義される。ショットデータはショット順にソートされて定義される。生成されたショットデータは、記憶装置142に一時的に格納しておけばよい。偏向制御回路130は、生成されたショットデータをショット順に読み出していくことになる。
【0046】
パターン座標補正工程(S114)として、補正部62は、2次元マップに定義された歪量(Δxi,Δyj)を用いて、XYステージ105上に載置される試料101上の位置を示す位置データを補正する。実施の形態1では、電子ビーム200を用いて試料101上にパターンを描画するための描画データに定義されるパターンの座標を補正することによって、かかる位置データを補正する。例えば、記憶装置142に格納されたショットデータに定義されるパターンの座標を補正する。或いは、ショットデータに生成する前の描画データに定義された図形パターンの座標を補正してもよい。
【0047】
図12は、実施の形態1におけるステージ位置と描画位置との関係を示す図である。
図12に示すように、ステージ座標系の原点Oにある装置において、点Pの位置にパターンを描画する場合を考える。ショットデータ(パターンデータ)には描画するべき位置は装置の原点からの位置X
W(ベクトルで示す)が記述されている。実際の描画に際してはステージ移動と偏向の組合せでビームをX
Wの位置へ照射する。そのため最初に計画された位置X
L(ベクトルで示す)の付近にステージを移動させる。かかるステージ位置X
Lはレーザ測長装置124,126にて測定される。そして、偏向制御回路130では、描画位置X
WとX
Lとの差分X
M(ベクトルで示す)を次のように算出する。
X
M=X
W−X
L
そして、差分X
Mを偏向量として算出し、電子ビーム200を照射する。
【0048】
しかし、反射ミラー30,32の歪によって、レーザ測長装置124,126によって測定されるステージ位置X
Lには、歪誤差(Δxi,Δyj)が含まれている。そこで、実施の形態1では、予め、かかる歪誤差(Δxi,Δyj)を補正する補正量(−Δxi,−Δyj)をショットデータ(パターンデータ)に定義されるパターンの原点からの位置X
W(ベクトルで示す)に加算することで補正する。
【0049】
図13は、実施の形態1におけるショットデータのフォーマットの一例を示す図である。
図13(a)では、ミラー歪に起因したステージ位置の歪誤差を補正する前のショットデータのフォーマットを示している。ショットデータには、例えば、図形種(図形コード)k、座標(x,y)(照射位置)、及び図形サイズ(Lx,Ly)、といった図形データが定義される。歪誤差を補正することによって、
図13(b)に示すように、座標(x,y)が座標(x−Δxi,y−Δyj)に補正される。かかる場合のインデックスi,jは、当該ショット図形が描画される場合のXYステージ105の位置を測定する際の反射ミラー30,32におけるレーザのスポット位置を示すことは言うまでもない。描画位置X
Wは、XYステージ105の位置X
Lから偏向器208の偏向可能範囲内に限られるので、試料101の描画領域10分に相当する2次元マップを作成しておけば、各描画位置X
Wについて補正するためのデータを得ることができる。各ショット図形を描画する場合のステージ位置X
Lは、描画制御部64によって予め計画しておけばよい。補正後のショットデータは記憶装置142に格納される。
【0050】
描画工程(S116)として、描画機構150は、電子ビーム200を用いて、補正された位置データに基づいて試料101上にパターンを描画する。まずは、偏向制御回路130は、レーザ測長装置124,126によって測定されたXYステージ105の位置(X’,Y’)を入力し、かかるXYステージ105の位置(X’,Y’)を用いて、ショット図形毎に、描画位置(x−Δxi,y−Δyj)に電子ビームを照射するための偏向量を演算する。
【0051】
描画機構150は、得られた偏向量で電子ビーム200を偏向して、所定のパターンを描画する。具体的には、以下のように動作する。偏向制御回路130では、演算された例えば偏向器208への偏向量を示すデジタル信号を出力する。そして、デジタル信号はDACアンプ132でアナログ変換され、増幅され、偏向電圧となって偏向器208に印加される。描画機構150での動作は以下のようになる。
【0052】
電子銃201から出た電子ビーム200は、照明レンズ202により矩形の穴を持つ第1のアパーチャ203全体を照明する。ここで、電子ビーム200をまず矩形に成形する。そして、第1のアパーチャ203を通過した第1のアパーチャ像の電子ビーム200は、投影レンズ204により第2のアパーチャ206上に投影される。かかる第2のアパーチャ206上での第1のアパーチャ像の位置は、偏向器205によって偏向制御され、ビーム形状と寸法を変化(可変成形)させることができる。通常、ショット毎に、ビーム形状と寸法を変化させることが多い。同じビーム形状と寸法のビームを連続してショットする場合もあることは言うまでもない。そして、第2のアパーチャ206を通過した第2のアパーチャ像の電子ビーム200は、対物レンズ207により焦点を合わせ、偏向制御回路130に制御された偏向器208により偏向され、ステージ制御回路122に制御されたモータ222,224により駆動されて連続移動するXYステージ105上の試料101の所望する位置に照射される。
【0053】
以上のように、実施の形態1によれば、ステージ機構のミラー30,32の微小歪に対するステージ機構の位置補正を行うことできる。よって、レーザ測長装置124,126からXYステージ105に照射するレーザのミラー面上でのスポット径を小さくする場合でも高精度な位置にパターンを描画できる。
【0054】
なお、試料101がXYステージ105上の設定されている設計位置からずれて載置された場合、試料101に予め作成されるアライメントマークをスキャンすることによって、試料101のずれ量を把握できる。試料101のずれ量が把握できれば、描画制御部64は、かかるずれ量を加算した位置にパターンを描画することも可能である。かかる場合、実施の形態1における歪量の2次元マップは、当初の設計位置に配置されることを前提に試料101の描画領域10分のデータが定義される。よって、試料101の載置位置がずれると歪量の2次元マップに定義されていないXYステージ105位置において電子ビーム200を照射することもあり得る。かかる場合には、描画領域10の端部で生じている歪が繰り返し生じると仮定して、描画領域10の端部のデータを流用して補正すればよい。
【0055】
実施の形態2.
実施の形態1では、レーザ測長装置124,126からXYステージ105に照射するレーザのミラー面上でのスポット径が小さくなった場合に生じるステージ位置の測定誤差を補正する場合について説明した。ステージ機構のミラー30,32の微小歪に対するステージ機構の位置補正を行う手法はこれに限るものではない。実施の形態2では、レーザ測長装置124,126からXYステージ105に照射するレーザのミラー面上でのスポット径dを可変に調整することで、位置補正を行う構成について説明する。以下、特に説明する点以外の内容は実施の形態1と同様である。
【0056】
図14は、実施の形態2における描画装置の構成を示す概念図である。
図14において、制御計算機110内に、y方向位置測定部52、x方向位置測定部54、y方向歪Δy演算部56、x方向歪Δx演算部58、2次元マップ作成部60、及び補正部62の代わりに、スポット径演算部66、及びしぼり調整部68が配置された点以外は、
図1と同様である。
【0057】
ショットデータ生成部50、描画制御部64、スポット径演算部66、及びしぼり調整部68といった各「〜部」は、処理回路を含み、その処理回路には、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置等が含まれる。また、各「〜部」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いてもよい。或いは、異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。ショットデータ生成部50、描画制御部64、スポット径演算部66、及びしぼり調整部68内に必要な入力データ或いは演算された結果はその都度メモリ112に記憶される。
【0058】
図15は、実施の形態2における描画方法の要部工程を示すフローチャート図である。
図15において、実施の形態2における描画方法は、凹凸波長測定工程(S202)と、スポット径演算工程(S204)と、しぼり調整工程(S206)と、描画工程(S208)と、いう一連の工程を実施する。
【0059】
凹凸波長測定工程(S202)として、試料101を載置するXYステージ105の位置をレーザ干渉法により測定するためのレーザビームの照射を受ける、y方向(第1の方向)に延びるXYステージ105の反射ミラー30の反射面(第1の面)とy方向と直交するx方向(第2の方向)に延びるXYステージ105の反射ミラー32の反射面(第2の面)と、の凹凸波長を測定する。具体的には、形状測定装置を用いて、反射ミラー30,32についてそれぞれ反射面の凹凸を測定する。形状測定装置として、例えば、レーザ変位計、共焦点式変位計、静電容量式測定装置、及びヘテロダイン干渉計等、適宜用いて測定すればよい。測定された反射ミラー30,32の凹凸データから凹凸歪の波長λを演算する。得られた凹凸歪の波長λデータを含む凹凸データは描画装置100に入力され、記憶装置142に格納される。反射ミラー30,32の反射面の凹凸の測定は、XYステージ105に取り付けた状態で測定されることが望ましいが、外して測定しても構わない。
【0060】
スポット径演算工程(S204)として、スポット径演算部66は、測定された凹凸波長λ以上のレーザビームのスポット径dを演算する。凹凸データに波長データが含まれていない場合には、スポット径演算部66は、凹凸データから凹凸歪の波長λを演算すればよい。波長が位置によって異なる場合には、最大値を演算すればよい。最大値といっても、ここでは、加工技術を超える例えば数mmオーダー未満の微小歪の波長を演算すればよい。
【0061】
しぼり調整工程(S206)として、しぼり調整部68は、測定された凹凸波長以上のレーザビームのスポット径になるように、レーザビームの光束径を調整する。
【0062】
図16は、実施の形態2におけるレーザ測長装置の構成の一例を示す図である。
図16において、実施の形態2におけるレーザ測長装置124,126では、光源70から発生したレーザ光が、レンズ72により平行光(光束径D)に曲げられ、ビームスプリッタ74を照射する。ビームスプリッタ74に照射された光は、一部(例えば1/2)の光42が通過し、XYステージ105の反射ミラー30(32)の反射面に照射される。また、残部(例えば1/2)の光は反射し、基準反射板76の反射面に照射される。反射ミラー30(32)の反射面からの反射光は、ビームスプリッタ74で反射され、センサ78に照射される。基準反射板76の反射面からの反射光は、ビームスプリッタ74を通過し、センサ78に照射される。センサ78では、2つの反射光を用いて干渉原理により反射ミラー30(32)までの距離を測定する。かかる場合に、しぼり調整部68は、レーザビームのスポット径dの制御信号をレーザ測長装置124,126に出力する。レーザ測長装置124,126内では、かかる制御信号に沿って、反射ミラー30(32)の反射面上でのスポット径が演算されたスポット径dになるように、しぼりの開口径を制御して、ビームの光束径を調整する。
図16の例では、レーザ測長装置124,126から平行光が反射ミラー30(32)に照射される場合を示したがこれに限るものではなく、平行光でない場合であっても、反射ミラー30(32)の反射面上でのスポット径が調整されればよい。
【0063】
反射ミラー30(32)の反射面上でのスポット径dが測定された凹凸波長以上に制御されることにより、凹凸誤差分を平均化できる。よって、XYステージ105のミラー30,32の微小歪に対するXYステージ105の位置補正を行うことできる。
【0064】
描画工程(S208)として、凹凸波長以上のスポット径になるように、光束径が調整されたレーザビームを用いたレーザ干渉法によりXYステージ105の位置を測定する。そして、測定されたXYステージ105の位置に基づいて、描画機構150は、電子ビーム200を用いて試料101にパターンを描画する。
【0065】
実施の形態2では、むやみにレーザ測長装置124,126から反射ミラー30(32)の反射面に照射するレーザ光のスポット径を小さく絞ってしまうのではなく、測定された凹凸波長以上のスポット径になるように制御する。これにより、スポット径d内に歪の振幅Δの最大値と最小値が含まれるので、平均化効果により、かかる歪に起因するXYステージ105の位置の測定誤差は無視できる程度に抑えることができる。よって、描画データ(ショットデータ)の座標等を補正する必要を無くすことができる。
【0066】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。上述した例では、シングルビームを用いた描画装置100に適用した場合について説明したが、マルチビームを用いた描画装置に適用する場合でも描画する図形パターンの座表を歪量に応じて補正すればよい。
【0067】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。例えば、描画装置100を制御する制御部構成については、記載を省略したが、必要とされる制御部構成を適宜選択して用いることは言うまでもない。
【0068】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全てのステージ機構の位置補正方法及び荷電粒子ビーム描画装置は、本発明の範囲に包含される。