【実施例1】
【0028】
[化学除染装置]
図4は実施例1に係る化学除染装置を示す模式図である。
図1に示すように、本実施例に係る化学除染装置23aは、除染対象1にポンプ2と配管3を接続して、循環流路を形成している。配管3には、上流から順に、循環流路を流れる水溶液(系統水)の温度を上げるための加熱器4、系統水に紫外線を照射するための紫外線照射装置5、系統水中に溶解した金属イオンや放射性核種を吸着して系統水中から除去するためのイオン交換樹脂を充填したイオン交換樹脂塔6、酸化剤と還元除染剤との化学反応を促進するための触媒を充填した触媒塔7が設けられている。イオン交換樹脂塔6には、H型イオン交換樹脂を用いることが望ましい。紫外線照射装置5の紫外線源は、低圧水銀ランプが望ましい。また、触媒塔7に使用する触媒としては0.5%Ru担持活性炭触媒が望ましい。
【0029】
さらに、紫外線照射装置5、陽イオン交換樹脂塔6及び触媒塔7をバイパスさせる配管10と、イオン交換樹脂塔6と触媒塔7の間において、配管3と配管10を接続する配管11を有する。
【0030】
紫外線照射装置5及びイオン交換樹脂塔6に流れる系統水量を調整するために、配管3と配管10の接続部と紫外線照射装置5の間に流量調整弁15が設けられ、配管3と配管10の接続部と配管10と配管11の接続部の間に流量調整弁14が設けられている。また、触媒塔7に流れる系統水量を調整するために、イオン交換樹脂塔6と触媒塔7を接続する配管3と配管11の接続部の下流に流量調整弁16が設けられ、配管11に流量調整弁17が設けられている。配管10を流れる系統水が触媒塔7に流れ込まないように、配管11の流量調整弁11の下流に逆止弁18が設けられている。
【0031】
循環流路に酸化剤(具体的には過酸化水素水等)を供給するために、配管3及び配管11の接続部と触媒塔7との間に配管12を介して酸化剤供給装置8が設けられている。また、循環流路に除染剤(酸化除染剤及び還元除染剤)を供給するために、配管13を介して除染剤供給装置9が設けられている。
【0032】
循環流路には、系統水を採取するための採水管19,21が設けられている。採水管19は、系統水中の金属イオン濃度及び化学除染剤等の濃度を測定するために、ポンプ2と加熱器4を接続する配管3に設けられている。採水管19には、弁20が設けられている。また、採水管21は、イオン交換樹脂塔6を通過した系統水に含まれる金属イオン濃度及び化学除染剤(酸化剤及び還元剤)等の濃度を測定するための系統水を採取するために、陽イオン交換樹脂塔6と流量調整弁16を接続する配管3に設けられる。採水管21には、弁22が設けられている。
【0033】
図5は
図4の酸化剤供給装置8の詳細を示す模式図である。
図5に示すように、酸化剤供給装置8は、酸化剤を収容するタンク51と、弁52と、ポンプ53とを配管54で接続して構成される。
図5の配管54が、
図4の配管12に接続されている。除染剤供給装置9も、酸化剤供給装置8と同様の構成である。
【0034】
上述した構成の他、
図1には示していないが、化学除染装置23aには、系統水量の変動が大きい場合は、除染対象1と触媒塔7を接続する配管3に水位調整タンクを設置し、更に除染対象1と水位調整タンクの間にポンプを設置する構成を有していてもよい。また、配管3に冷却器を設置して、化学除染後に系統水を強制的に冷却可能な構成としてもよい。除染対象1に脱イオン水を供給したり、化学除染後に系統水を排水させるための配管や弁が無い場合は、配管3に配管を設置し、この配管に系統水の流れを制御する弁を設置してもよい。
【0035】
また、還元除染剤分解後に化学除染装置23aを設置した状態で、除染剤分解後に残留した粒子成分を除去したり、除染剤分解後に残留した微量のイオン成分を除去する場合は、除染剤分解後に残留した粒子成分を除去するためのフィルターや、除染剤分解後に残留した微量のイオン成分を除去するための混合樹脂塔を配管3に設置してもよい。なお、混合樹脂塔は、H型陽イオン交換樹脂とOH型陰イオン交換樹脂を混合したイオン交換樹脂を充填した塔である。
【0036】
[化学除染方法]
次に、化学除染装置23aを用いて除染対象1の化学除染を行う手順を以下に示す。
図8は本発明に係る化学除染方法の一例を示すフローチャートである。
図8に示すように、本発明に係る化学除染方法は、準備工程(S1)、昇温工程(S2)、酸化除染工程(S3)、酸化除染剤分解工程(S4)、還元除染及び浄化工程(S5)、還元除染剤分解及び浄化工程(S6)及び冷却工程(S7)の手順で行なう。
【0037】
除染対象1の放射性核種が取り込まれている表面の酸化物が、Feを主体とした酸化物の場合は、酸化除染工程(S3)及び酸化除染剤分解工程(S4)を省略し、昇温工程(S2)の後に還元除染及び浄化工程(S5)、還元除染剤分解及び浄化工程(S6)及び冷却工程(S7)を行う。また、除染対象1の放射性核種付着量が、還元剤分解及び浄化工程(S6)の後に目標値を下回らなかった場合は、酸化除染工程(S3)〜還元除染剤分解及び浄化工程(S6)を繰り返す(繰り返し工程(S8))ことで放射性核種を目標値まで除去する。以下、各工程について詳述する。
【0038】
(1)準備工程(S1)
除染対象1に化学除染装置23aを接続し、弁20及び弁22は「閉」とし、他の弁及び流量調整弁は「開」として、除染対象1と化学除染装置23aにイオン交換水を充填する。イオン交換水を充填する際に、系統水量V
S(単位:L)を、積算流量計等を使用して把握する。系統水の準備ができたら次のステップに移行する。
【0039】
(2)昇温工程(S2)
ポンプ2を起動させて系統水を循環させながら、加熱器4を起動させて系統水の温度を上げる。系統水の温度を80℃〜95℃となるように制御することが好ましい。所定の温度に達したら次のステップに移行する。
【0040】
(3)酸化除染工程(S3)
除染剤供給装置9に酸化除染剤を充填する。酸化除染剤としては、過マンガン酸カリウム又は過マンガン酸が好適である。系統水中の酸化剤濃度C
SMn(単位:mg/L)が200〜500mg/Lとなるようにタンク51に酸化剤を充填する。タンク51の酸化剤量をV
OMn(単位:L)とすると、タンク51の酸化剤濃度C
OMn(単位:mg/L)は式3で計算される。
【0041】
C
OMn=C
SMn×V
S÷V
OMn…式3
流量調整弁15を「閉」、流量調整弁14を「開」とし、除染剤供給装置9のタンク51に入れた酸化剤を系統に供給する。具体的には、弁52を開いて、ポンプ53を起動する。タンク51に入れた酸化剤の供給が終了したらポンプ53を停止して、弁52を閉じる。酸化除染剤を全量供給後、2〜6h程度系統水を循環させたら次のステップに移行する。
【0042】
(4)酸化除染剤分解工程(S4)
除染剤供給装置9のタンク51にシュウ酸溶液を充填する。酸化除染剤として過マンガン酸カリウムを供給した場合、過マンガン酸カリウムとシュウ酸は以下の式4の通り反応を起こす。
【0043】
2KMnO
4+5(COOH)
2
=2Mn(OH)
2+2KOH+5CO
2+2H
2O…式4
したがって、過マンガン酸カリウムを水酸化マンガンに分解するために必要なシュウ酸濃度C
ROA2(単位:mg/L)は、過マンガン酸カリウム濃度C
OMn(単位:mg/L)、除染剤供給装置9のタンク51に充填するシュウ酸溶液の容量V
ROA2(単位:L)とすると、式5で計算される。
【0044】
C
ROA2=(5/2)×(90/158)×C
OMn×V
S÷V
ROA2…式5
酸化剤として過マンガン酸を供給した場合、過マンガン酸とシュウ酸は以下の式6の通り反応する。
【0045】
2HMnO
4+5(COOH)
2
=2Mn(OH)
2+5CO
2+4H
2O…式6
したがって、過マンガン酸を水酸化マンガンに分解するために必要なシュウ酸濃度C
ROA2(単位:mg/L)は、過マンガン酸濃度C
OMn2(単位:mg/L)とすると、式7で計算される。
【0046】
C
ROA2=(5/2)×(90/120)×C
OMn2×V
S÷V
ROA2…式7
弁52を開いて、ポンプ53を起動してシュウ酸を供給する。タンク51に入れたシュウ酸の供給が終了したらポンプ53を停止して、弁52を閉じる。系統水の色が紫色から薄茶色になることを確認して次のステップに移行する。
【0047】
(5)還元除染、浄化(S5)
流量調整弁16を「閉」、流量調整弁17を「開」とし、流量調整弁15と流量調整弁14の開度を調整して紫外線照射装置5とイオン交換樹脂塔6に通水し、紫外線照射装置5を起動する。紫外線照射装置5とイオン交換樹脂塔6に通水する流量は、1時間あたりイオン交換樹脂塔6に充填したイオン交換樹脂の容量の30〜60倍の容量が望ましい。
【0048】
続いて、還元除染剤を除染剤供給装置9から供給する。還元剤としては、除染対象1がステンレス鋼の場合はシュウ酸、除染対象1が炭素鋼の場合はシュウ酸とマロン酸の混合溶液が好適である。除染対象1がステンレス鋼でシュウ酸を添加する場合は系統水中のシュウ酸濃度C
SOA(単位:mg/L)が2000〜3000mg/Lとなるようにタンク51にシュウ酸溶液を充填する。タンク51のシュウ酸溶液量をV
ROA(単位:L)とするとタンク51のシュウ酸濃度CROA(単位:mg/L)は以下の式8で計算される。
【0049】
C
ROA=C
SOA×V
S÷V
ROA…式8
除染対象1が炭素鋼でシュウ酸とマロン酸の混合溶液を添加する場合は系統水中のシュウ酸濃度C
SOA、マロン酸濃度C
SMAが各々100〜400mg/L、2000〜5400mg/Lとなるようにタンク51にシュウ酸マロン酸混合溶液を充填する。タンク51のシュウ酸濃度は上述した式4で計算される。タンク51のマロン酸濃度C
RMA(単位:mg/L)は以下の式9で計算される。シュウ酸とマロン酸を混合しているのでタンク51のマロン酸の体積はシュウ酸の体積V
ROAと同じである。
【0050】
C
RMA=C
SMA×V
S÷V
ROA…式9
弁52を開いて、ポンプ53を起動する。タンク51に入れた還元剤の供給が終了したらポンプ53を停止して、弁52を閉じる。還元剤の供給が終了してから6〜12h程度系統水を循環させたら次のステップに移行する。
【0051】
除染対象1の表面の金属酸化皮膜が溶解すると、3価のFeイオンの発生源が減少する。紫外線照射装置5で紫外線照射を続けると、3価のFeイオンが2価の鉄イオンに還元されイオン交換樹脂塔6での鉄イオンが除去されるため、イオン交換樹脂塔6の下流の系統水のFeイオン濃度は低下する。
【0052】
ここで、紫外線の照射条件とFeイオンの分解時間の一例を示す。紫外線照射により還元除染剤の単位体積に付与されるエネルギーは紫外線照射量に比例し、紫外線照射装置を流れる還元除染剤流量(F
UV)に反比例する。紫外線照射によって付与されたエネルギー(P
UV)と3価の鉄イオン濃度(C)に比例して鉄イオンが還元すると考えると、鉄イオン還元速度は以下の式A1で表される。kは反応速度係数(単位:LW
−1h
−2)である。式A1を積分すると式A2となる。ここでC
0は初期の3価の鉄イオン濃度である。
【0053】
【数1】
【0054】
【数2】
【0055】
試験条件(F
UV=6L/h、P
UV=6W)と
図3に示すデータより、k=2.2789L/(W・h
2)と計算される。
【0056】
C
0=50mg/L、P
UV=2000W、F
UV=3000L/hと仮定すると、C=1mg/Lに3価のFeイオン濃度を低減するのに1.2h程度かかると計算される。
【0057】
定期的に採水管21から弁22を開いて採水して鉄イオン濃度を原子吸光光度計等で測定し、一定濃度(例えば1mg/L)以下になった時点で次のステップに移行すると、後述する浄化工程(S6)で触媒へのFe酸化物の付着を確実に抑制することができる。
【0058】
(6)還元除染剤分解、浄化工程(S6)
酸化剤供給装置8のタンク51に過酸化水素水を充填する。次に流量調整弁16,17の開度を調整して触媒塔7に系統水を通水する。触媒塔7への通水流量F
CAT(単位:L/h)は、1時間あたり触媒塔7に充填した触媒の容量の20〜30倍の容量が望ましい。
【0059】
次に、酸化剤供給装置8から過酸化水素水を供給する。過酸化水素水は、シュウ酸やマロン酸と過酸化水素の反応等量の1から2倍となるように供給するのが望ましい。シュウ酸は以下の式10、マロン酸は以下の式11で過酸化水素と反応する。
【0060】
(COOH)
2+H
2O
2=2CO+2H
2O…式10
C
3H
4O
4+4H
2O
2=3CO
2+6H
2O…式11
タンク51に充填した過酸化水素水濃度をC
HP、系統水のシュウ酸濃度及びマロン酸濃度を各々C
SOA3(単位:mg/L)及びC
SMA3(単位:mg/L)とすると、酸化剤供給装置8からの過酸化水供給流量F
HP(単位:L/h)は、以下の式12で計算される。
【0061】
F
HP=(1〜2)×{(C
SOA3/90)+4×(C
SMA3/104)}
×F
CAT÷(C
HP/34)…式12
弁52を開いて、ポンプ53を起動する。ポンプ53は流量を適切に調整できるプランジャー式のポンプが望ましい。
【0062】
最初のシュウ酸濃度、マロン酸濃度を元に計算した過酸化水素供給量でシュウ酸、マロン酸の分解を実施してもよい。一方、定期的に弁20を開にして採水管19から系統水を採取してシュウ酸、マロン酸濃度をイオンクロマトグラフにより測定し、測定濃度に基づき式10により過酸化水素水供給速度を変化させても良い。測定濃度に基づき過酸化水素供給量を変化させると、過酸化水素水供給量を減らせる経済的メリットがある。
【0063】
系統水のシュウ酸及びマロン酸が10mg/L以下になるか、系統水の導電率が1mS/m以下になったら次のステップに移行する。
【0064】
(7)冷却工程(S7)
ポンプ2、加熱器4を停止して系統水の温度を室温まで下げる。化学除染装置に冷却器27を設置した場合はポンプ2を運転したまま加熱器4を停止し、冷却器27を起動して系統水の温度が室温に下がるまで冷却を続ける。
【0065】
紫外線照射装置を備える化学除染装置が開示されている従来技術について説明する。以下の参考文献3には、Fe(III)錯体に紫外線を照射して2価の鉄塩とCO
2に分解し、生成した2価の鉄塩とシュウ酸と過酸化水素を反応させ、Fe(III)錯体とH
2Oに分解する構成を有する廃液処理装置が開示されている。参考文献3には、本願発明の触媒塔に相当する構成は開示されていない。また、参考文献3において、酸化剤(過酸化水素)は、Fe
2+をFe
3+に酸化するために用いており、酸化剤を供給する酸化剤用導管7は、カチオン交換器10及び紫外線照射装置5との間に設けられている。すなわち、カチオン交換器10よりも上流において、有機酸(シュウ酸)に酸化剤が添加されている。
【0066】
参考文献3:特開2000‐81498号公報
【0067】
また、以下の参考文献4には、還元除染剤(シュウ酸)にオゾン又はオゾン水溶液を加え、紫外線又は放射線照射あるいは過酸化水素を供給してシュウ酸を分解する化学除染装置が記載されている。
【0068】
参考文献4:特開2000‐81498号公報
参考文献4には、本願発明の触媒塔に相当する構成は開示されていない。参考文献4では、還元除染剤を陰イオン交換樹脂に通す前にシュウ酸を分解するために酸化剤(オゾン又はオゾン水溶液)を用いていることから、イオン交換部27よりも上流において、還元剤にオゾン発生器28によってオゾン又はオゾン水溶液が添加される。
【0069】
一方、本願発明において、酸化剤は還元剤を触媒分解するために用いるものであり、酸化剤供給装置8は、陽イオン交換樹脂塔6と触媒塔7との間に設けられている。つまり、陽イオン交換樹脂塔6よりも下流側に酸化剤供給装置8が設けられるものである点が、参考文献3及び参考文献4の装置と異なっている。
【実施例2】
【0070】
図6は実施例2に係る化学除染装置を示す模式図である。
図6は、シュウ酸及びヒドラジンを含む還元除染剤を使用する場合に好適な化学除染装置の一例である。
図6に示す化学除染装置23bは、流量調整弁15と紫外線照射装置5を接続する配管3に配管3をバイパスする配管32を設置し、配管32にヒドラジン分解装置24を設置する。そして、ヒドラジン分解装置24を挟むように、配管32に弁33,弁34を設置し、配管3と配管32の接続部間を接続する配管3に弁35を設置する。ここで、ヒドラジン分解装置24とは、還元除染剤中に含まれるヒドラジンを窒素と水に分解する装置である。
【0071】
図7は
図6のヒドラジン分解装置24の詳細を示す模式図である。
図7に示すように、ヒドラジン分解装置24は、配管74に触媒塔(ヒドラジン分解用触媒塔)75を設置し、触媒塔75の上流にタンク(ヒドラジン分解用タンク)71、弁72及びポンプ73を設置した構成となっている。触媒塔75に使用する触媒としては、0.5%Ru担持活性炭触媒が望ましい。
図7の配管76は、
図6の配管32に接続されている。その他の構成は、実施例1の化学除染装置23aと同様であるので、説明を省略する。
【0072】
以下に、本実施例に係る化学除染装置23bを用いた場合の化学除染方法について説明する。基本的な流れは
図8に示す実施例1の手順と同様である。また、
図8に示す準備工程(S1)〜酸化剤分解工程(S4)までは実施例1と同じであるので、還元除染及び浄化工程(S5)から説明する。各手順の詳細を次に示す。
【0073】
(5)還元除染、浄化工程(S5´)
弁33、弁34及び流量調整弁16を「閉」とし、流量調整弁17及び弁35を「開」とし、流量調整弁15と流量調整弁14の開度を調整して紫外線照射装置5とイオン交換樹脂塔6に通水する。このとき紫外線照射装置5は起動しない(紫外線照射を行わない)。紫外線照射装置5とイオン交換樹脂塔6に通水する流量は、1時間あたりイオン交換樹脂塔6に充填したイオン交換樹脂の容量の30〜60倍の容量が望ましい。
【0074】
続いて、還元剤供給装置9から還元除染剤としてシュウ酸を供給する。シュウ酸濃度C
SOA(単位:mg/L)が2000−3000mg/Lとなるようにタンク51にシュウ酸溶液を充填する。タンク51のシュウ酸溶液量をV
ROA(単位:L)とすると、タンク51のシュウ酸濃度C
ROA(単位:mg/L)は式8で計算される。
【0075】
C
ROA=C
SOA×V
S÷V
ROA…式8
弁52を開いて、ポンプ53を起動する。タンク51に入れた還元剤の供給が終了したらポンプ53を停止して、弁52を閉じる。
【0076】
続いて、還元剤供給装置9からヒドラジンを供給する。ヒドラジン濃度C
SHyd(単位:mg/L)が400〜600mg/Lとなるようにタンク51にヒドラジン溶液を充填する。ただし、ヒドラジンはイオン交換樹脂塔6で吸着されるため、系統水に残るヒドラジンに加えてイオン交換樹脂に吸着されるヒドラジンを供給する必要がある。
【0077】
ヒドラジンは1価の陽イオンとして吸着するので、イオン交換樹脂塔6に充填のイオン交換樹脂の吸着容量をX(単位:eq/L)、イオン交換樹脂量をV
CEXRとすると、必要なヒドラジン量M
Hyd(単位:mg)は式13で計算される。
【0078】
M
Hyd=32000×X×V
CEXR…式13
タンク51のヒドラジン溶液量をV
RHyd(単位:L)とするとタンク51のヒドラジン濃度CRHyd(単位:mg/L)は式14で計算される。
【0079】
C
RHyd=(C
SHyd×V
S+M
Hyd)÷V
RHyd…式14
弁52を開いて、ポンプ53を起動する。タンク51に入れたヒドラジンの供給が終了したらポンプ53を停止して、弁52を閉じる。
【0080】
還元剤の供給が終わったら、6〜12h程度系統水を循環させたら次のステップに移行する。
【0081】
(6)還元除染剤分解、浄化工程(S6´)
弁33、弁34を開、弁35を閉にしてヒドラジン分解装置24に系統水を通水する。ヒドラジン分解装置24のタンク71に過酸化水素水を入れて、弁72を「開」にし、ポンプ73を起動して過酸化水素水を供給する。ポンプ73は適切に流量調整できるプランジャーポンプが望ましい。ヒドラジンは、以下の式15に示すように過酸化水素と反応して窒素、水となる。
【0082】
N
2H
4+2H
2O
2=N
2+4H
2O…式15
過酸化水素水供給流量F
HP2(単位:L/h)は、ヒドラジン分解装置24の流量F
CAT(単位:L/h)、ヒドラジン分解装置24のタンク41充填した過酸化水素水濃度をC
HP2(単位:mg/L)、系統水のヒドラジン濃度C
RHyd2(単位:mg/L)とすると以下の式16で計算される。
【0083】
F
HP2=2×(C
Hyd2/32)×F
CAT÷(C
HP2/34)…式16
過酸化水素水供給流量はヒドラジンの初期濃度に対して一定でも良いが、定期的に弁20を開けて採水管19から系統水を採取し、ヨウ素滴定により分析した濃度を基に過酸化水素供給流量を変化させたほうが過酸化水素供給量を減らすことが出来てきて経済的に好ましい。
【0084】
ヒドラジン分解装置24を起動してから、紫外線照射装置5を起動する。流量調整弁16と流量調整弁17の開度を調整して触媒塔7に通水する。触媒塔7への通水流量F
CAT(単位:L/h)は1時間あたり触媒塔7に充填した触媒の容量の20〜30倍の容量が望ましい。
【0085】
次に酸化剤供給装置8から過酸化水素水を供給する。過酸化水素水は、シュウ酸と過酸化水素の反応等量の1から2倍となるように供給するのが望ましい。シュウ酸は以下の式10で過酸化水素と反応する。
【0086】
(COOH)
2+H
2O
2=2CO+2H
2O…式10
タンク51に充填した過酸化水素水濃度をCHP、系統のシュウ酸濃度をC
SOA3(単位:mg/L)すると、酸化剤供給装置8からの過酸化水供給流量F
HP(単位:L/h)は式17で計算される。
【0087】
F
HP=(1〜2)×(C
SOA3/90)×F
CAT÷(C
HP/34)…式17
弁52を開いて、ポンプ53を起動する。ポンプ53は流量を適切に調整できるプランジャー式のポンプが望ましい。
【0088】
最初のシュウ酸濃度を元に計算した過酸化水素供給量でシュウ酸の分解を実施してもよい。一方、定期的に弁20を開にして採水管19から系統水を採取してシュウ酸濃度をイオンクロマトグラフにより測定し、測定濃度に基づき式17により過酸化水素水供給速度を変化させても良い。測定濃度に基づき過酸化水素供給量を変化させると、過酸化水素水供給量を減らせる経済的メリットがある。
【0089】
系統水のシュウ酸、ヒドラジンの濃度が10mg/L以下になるか、系統水の導電率が1mS/m以下になったら、次のステップに移行する。なお、次の冷却工程(S7)は実施例1と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0090】
以上説明したように、本発明によれば、Feイオンを含む還元除染剤を触媒塔で分解する前に、紫外線を照射して還元剤中の3価のFeイオンを2価のFeイオンに還元して陽イオン交換樹脂にて除去する。このようにすることで、触媒塔の触媒へのFe酸化膜の析出を抑制し、触媒寿命を長期化すること及び触媒塔での還元剤の分解効率の低下を防止できることが実証された。
【0091】
本発明によれば、触媒塔へのFe酸化物及び放射性核種の付着を抑制することができるため、触媒塔の寿命を延長することができる。触媒塔の利用期間を長くすることで、触媒塔に掛かる費用及び二次廃棄物処理費用を低減できる。
【0092】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。