(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
所定の変調方式で変調された変調波信号が所定の伝送路を通過した後の伝送路通過変調波信号を受信し、該伝送路通過変調波信号を信号解析することにより、該伝送路上の伝送器に含まれる増幅器の特性を推定する増幅器特性推定装置であって、
前記伝送路通過変調波信号を第1適応等化部により等化処理して復調IQ信号を生成する復調部と、
前記復調IQ信号を2進数信号に戻し、該2進数信号を再度変調して再変調IQ信号を生成する復号・再変調部と、
前記増幅器の特性を擬似する擬似増幅器を有し、前記再変調IQ信号が前記伝送器を通過した場合の信号を擬似した擬似伝送路通過変調波信号を生成する擬似伝送器と、
前記擬似増幅器の出力信号、前記擬似伝送路通過変調波信号を第2適応等化部により等化処理した信号、及び前記第1適応等化部の出力信号から、前記増幅器の出力信号を推定した増幅器推定出力信号を生成する増幅器出力信号推定部と、
前記擬似増幅器の入力信号及び前記増幅器推定出力信号から、前記増幅器の入出力特性を導出する増幅器特性導出部と、
前記擬似伝送器、前記増幅器出力信号推定部、及び前記増幅器特性導出部による処理を所定の回数繰り返すように制御するとともに、前記増幅器特性導出部により前記入出力特性が導出されるたびに、前記擬似増幅器の特性を該入出力特性に更新する制御部と、
を備えることを特徴とする増幅器特性推定装置。
前記増幅器特性導出部は、前記増幅器の複数の動作点に対する複数の入出力特性を導出し、該複数の入出力特性を合成することを特徴とする、請求項1又は2に記載の増幅器特性推定装置。
前記増幅器出力信号推定部は、前記第2適応等化部の出力信号のIQベクトルと、前記擬似増幅器の出力信号のIQベクトルとの差分ベクトルの逆ベクトルに、前記第1適応等化部の出力信号のIQベクトルを加算することで、前記増幅器の出力信号のIQベクトルを推定することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の増幅器特性推定装置。
前記擬似伝送器は、前記伝送器の入力フィルタ及び出力フィルタの特性を近似した設定値と、前記増幅器の特性を推定するための初期値とをあらかじめ有することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の増幅器特性推定装置。
【背景技術】
【0002】
現在運用されている各種規格のデジタル放送のうち、衛星放送を例にとれば、放送衛星に備えられた伝送器(衛星中継器)を使って複数の放送事業者が独立したTS(トランスポートストリーム)を伝送できるように、放送波信号は多重伝送される。
【0003】
図9は、従来の衛星デジタル放送伝送システムの構成を示すブロック図である。従来の衛星放送伝送システムは、送信装置1と、衛星中継器2と、複数の受信装置3−1〜3−N(Nは、1以上の自然数)とを備える。送信装置1は、TMCC(Transmission and Multiplexing Configuration Control)信号等の制御情報で指定される所定のデジタル変調方式に基づいて変調波信号を生成し、音声やデータ放送などを多重した主信号を衛星中継器2に送信する。
【0004】
衛星中継器2は、進行波管増幅器(以下、「TWTA」と称する)22と、TWTA22に前置される入力フィルタである入力マルチプレクサフィルタ(以下、「IMUXフィルタ」と称する)21と、TWTA22に後置される出力フィルタである出力マルチプレクサフィルタ(以下、「OMUXフィルタ」と称する)23とを備える。
図9ではIMUXフィルタ21、TWTA22、及びOMUXフィルタ23をそれぞれ1つのみ示したが、実際には増幅するチャンネル数分が実装されている。衛星中継器2は、アンテナ(図示せず)で受信された変調波信号を増幅器及び周波数変換器(図示せず)により増幅及び周波数変換し、IMUXフィルタ21により送信装置1で送信された変調波信号から、1チャンネル分ごとに帯域抽出を行い、TWTA22により電力増幅を行い、OMUXフィルタ23により不要周波数成分を抑圧し、後続の合成器(図示せず)により全チャンネル分の放送波信号を合成し、アンテナ(図示せず)から受信装置3−1〜3−Nに向けて伝送路通過変調波信号を送信する。
【0005】
受信装置3−1〜3−Nは、伝送路通過変調波信号に含まれるTMCC信号等の制御情報を絶えず監視することにより、送信装置1において様々な伝送制御が行われたとしても、それに追従して受信方式などを切り換えることができる。
【0006】
TWTA22は、入力レベルと出力レベルとの間の関係が比例関係となるように電力増幅処理することが望ましい。しかし、TWTA22の入出力特性は、実際には入力レベルが大きくなると利得が低下する非線形性を示し、同時に入力信号に対する出力信号の位相も回転する。したがって、入力レベルを徐々に上げると、あるレベルまでは出力レベルも上がるが、入力レベルが所定のレベルを超えると、出力レベルは逆に低下する現象となる。このような出力レベルの低下が起こる直前の動作点を、一般に、出力飽和点という。また、この出力飽和点から入力レベルをX[dB]下げて運用する場合を「入力バックオフX[dB]」といい、同様に、入力レベルを絞って、出力飽和点から出力レベルをY[dB]下げた状態で運用する場合を「出力バックオフY[dB]」という。
【0007】
TWTA22の飽和点で最も効率の良い伝送が可能であるため、π/2シフトBPSKを含むBPSKやπ/4シフトQPSKを含むQPSK、8PSKといったPSK変調を利用する場合は、TWTA22の入力信号について、入力バックオフが0dBとなるようなレベルで入力されるように、前置減衰器等により自動調整する。一方、16APSKや32APSKといったAPSK変調の場合は、信号点配置において複数の振幅を持つ信号点が存在するため、TWTA22の非線形特性によって所要C/N(Carrier to Noise Ratio)の劣化を起こし易い。このため、これらの変調方式を利用する場合には、TWTA22の入力信号について、入力バックオフが、それぞれの変調方式と誤り訂正符号の組み合わせに対して、出力バックオフによる電力損と非線形による所要C/Nの劣化の和が最も小さくなるようなレベルで入力されるように、前置減衰器等により自動調整する。
【0008】
このように、従来からのデジタル信号の送信装置1に用いられる変調器は、送信するデジタル信号を、変調方式に従って1シンボルで同時に伝送できる情報ビット数ごとに、当該シンボルに対応する1つの信号点に定まるようにマッピングした送信信号点で搬送波を変調している。特に、32APSK等の多値振幅位相変調では信号歪に対してより線形性が要求され、放送衛星では、TWTA22をある程度線形で動作させるために、より大きな出力バックオフをとる必要がある(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
運用中の伝送器(衛星放送の場合、衛星中継器)は、一般的にその特性測定が困難であり、特に増幅器(衛星放送の場合、TWTA)は経年劣化により、運用前の事前測定値と比較して、特性が時間とともに変化する。そのため、伝送路特性を既知として前置補償する補償器の場合、補償に誤差が生じ、所要C/N劣化を引き起こすおそれがある。そこで、特許文献2では、送信装置の変調波信号及び伝送路通過後の伝送路通過変調波信号を受信し、受信した2つの信号を伝送路の入出力信号として信号解析することにより、経年変化する増幅器の特性を推定する技術が提案されている。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明について、図面を参照して詳細に説明する。伝送路上に配置される伝送器は、中継器、電気機器、光学機器、又はこれらの組み合わせを含むものであるが、以下の実施形態では、伝送器が衛星中継器である場合を例に説明する。
【0025】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る増幅器特性推定装置について、以下に説明する。
図1は増幅器特性推定装置4を衛星デジタル放送伝送システムに適用した例を示す図である。衛星デジタル放送で採用されている規格には、ISDB−S3などがある。そこで、増幅器特性推定装置4は、これらの規格に準拠した一般化した変調波信号に対応するものとして説明する。
図1に示す伝送システムは、送信装置1と、衛星中継器2と、複数の受信装置3−1〜3−Nと、増幅器特性推定装置4とを備え、
図9に示した従来の伝送システムに対して、更に増幅器特性推定装置4を備える。
【0026】
送信装置1は、TMCC信号等の制御情報で指定される所定のデジタル変調方式に基づいて変調波信号を生成し、衛星中継器2に出力する。なお、所定のデジタル変調方式は、ASK、π/2シフトBPSKを含むBPSK、π/4シフトQPSKを含むQPSK、8PSK、16APSK又は32APSKなどを含む。
【0027】
衛星中継器2は、IMUXフィルタ21により、送信装置1から入力される変調波信号から1チャンネル分ごとに帯域抽出を行い、TWTA22により電力増幅を行い、OMUXフィルタ23により不要周波数成分を抑圧する。
【0028】
増幅器特性推定装置4は、地球局に設置され、送信装置1により生成された変調波信号が所定の伝送路を通過した後の信号、すなわち衛星中継器2から送信される伝送路通過変調波信号(ダウンリンク信号)を受信する。そして、伝送路通過変調波信号を信号点ごとに信号解析することにより、伝送器(衛星中継器)2に含まれる増幅器(TWTA)22の入出力特性(以下、「TWTA特性」ともいう)を推定する。
【0029】
図4に、TWTA22の入出力特性(AM/AM特性及びAM/PM特性)の一例を示す。また、
図5に、IMUXフィルタ21及びOMUXフィルタ23の周波数対振幅・群遅延特性の一例を示す。
【0030】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る増幅器特性推定装置4の構成を示すブロック図である。増幅器特性推定装置4は、復調部41と、復号・再変調部42と、擬似衛星中継器(擬似伝送器)43と、増幅器出力信号推定部44と、増幅器特性導出部45と、第3遅延部46と、制御部47とを備える。
【0031】
復調部41は、変換処理部411と、第1RRC(ルートロールオフフィルタ、波形整形フィルタ)412と、第1適応等化部413と、ダウンサンプル部414とを備え、伝送路通過変調波信号を第1適応等化部413により等化処理して復調IQ信号を生成する。
【0032】
変換処理部411は、衛星中継器2から受信した伝送路通過変調波信号をベースバンド帯域に周波数変換し、A/D変換を施し、IQデジタル信号に変換する。本実施形態では、A/D変換のクロック周波数をシンボルレート×2とし、送信シンボルに相当する点(サンプル点)と、サンプル点とサンプル点の間の点(非サンプル点)を含むIQデジタル信号を変換処理部411から出力するものとした。
【0033】
変換処理部411により復調されたIQ信号点は、第1RRC412及び第1適応等化部413により所定の信号点配置に近い点(非サンプル点を除く)で復調される。このとき、第1適応等化部413は、信号解析の信号点数を増やすために、シンボル同期のとれたサンプル点と同様に、シンボル間の非サンプル点もIQ信号として変換し、解析するのが好適である。以下、第1適応等化部413の出力信号を第1適応等化部出力信号と称する。第1適応等化部413は、第1適応等化部出力信号を制御部47に記憶させる。第1適応等化部出力信号は2分配され、ダウンサンプル部414及び増幅器出力信号推定部44に出力される。
【0034】
ダウンサンプル部414は、第1適応等化部出力信号をサンプル点のみ(ダウンサンプル)として復調IQ信号を生成し、復号・再変調部42に出力する。
【0035】
復号・再変調部42は、デマッピング部421とパラレル/シリアル(P/S)変換部422と、誤り訂正(FEC:Forward Error Correction)部423と、シリアル/パラレル(S/P)変換部424と、マッピング部425と、アップサンプル部426と、第2RRC427とを備え、復調部41から入力された復調IQ信号を2進数信号に戻し、該2進数信号を再度変調して再変調IQ信号を生成する。
【0036】
復調部41から入力された復調IQ信号は、デマッピング部421及びパラレル/シリアル(P/S)変換部422により2進数信号に変換され、誤り訂正部423により正しい値に訂正される。
【0037】
シリアル/パラレル(S/P)変換部424及びマッピング部425は、誤り訂正部423により訂正された信号を、理想的なIQ信号点にマッピングする。仮に誤り訂正後、伝送条件(アップリンクC/N、ダウンリンクC/N、TWTA動作点)が誤りの発生しない条件であるならば、送信装置1側と同じ理想的なIQ信号点に変換される。
【0038】
なお、復号・再変調部42は、誤りが発生しないのであればIQ信号点上の判定(硬判定)に代用することも可能である。例えば、QPSKのような低階層で耐性の強い変調方式であれば硬判定で処理することも可能である。すなわち、上述したデマッピング部421、パラレル/シリアル変換部422、誤り訂正部423、シリアル/パラレル変換部424、及びマッピング部425の処理に代えて、硬判定処理部を備え、硬判定処理のみを行うようにしてもよい。硬判定処理部で代用する場合には、復号・再変調部42の処理を大幅に簡素化することができる。
【0039】
アップサンプル部426は、復号部から入力されたIQ信号点をアップサンプルする。アップサンプルされたIQ信号点は、第2RRC427を通過して、擬似衛星中継器43に伝送される。
【0040】
擬似衛星中継器43は、擬似IMUXフィルタ431と、擬似TWTA(擬似増幅器)432と、擬似OMUXフィルタ433とを備え、復号・再変調部42から入力された再変調IQ信号が衛星中継器(伝送器)2を通過した場合の信号を擬似した擬似伝送路通過変調波信号を生成する。
【0041】
擬似IMUXフィルタ431は、特性値としてIMUXフィルタ21の特性を近似した設定値をあらかじめ有する。そして、再変調IQ信号から1チャンネル分の帯域抽出を行う。
【0042】
擬似TWTA432は、特性値としてTWTA22の特性を推定するための初期値(以下、「TWTA特性初期値」と称する)をあらかじめ有する。擬似TWTA432の特性値は、後述するように増幅器特性導出部45が導出するTWTA22の特性の推定値に更新され、更新されるごとにTWTA22の実際の特性に近似した特性を有することになる。擬似TWTA432は、この更新されたTWTA特性を用いて電力増幅を行う。以下、擬似TWTA432の入力信号を擬似TWTA入力信号と称し、擬似TWTA432の出力信号を擬似TWTA出力信号と称する。
【0043】
擬似OMUXフィルタ433は、特性値としてOMUXフィルタ23の特性を近似した設定値をあらかじめ有する。そして、不要周波数成分を抑圧して擬似伝送路通過変調波信号を生成する。
【0044】
このようにして、擬似衛星中継器43は、理想IQ信号点(送信するデジタル信号の信号点のマッピング後の理想的な信号点配置)である再変調IQ信号に対して、衛星中継器2によって生じ得る信号点のずれを模擬した信号点をもつIQ信号である擬似伝送路通過変調波信号を出力する。
【0045】
第2RRC427と擬似IMUXフィルタ431は、それぞれ送信装置1のRRC14と衛星中継器2のIMUXフィルタ21と、同じ伝達関数となる。アップリンクノイズが十分小さく無視できるとすると擬似TWTA入力信号とTWTA22の入力信号は同一の信号点となる。このとき、第3遅延部46は、擬似IMUXフィルタ431から入力された擬似TWTA入力信号に対して、擬似TWTA432、擬似OMUXフィルタ433、及び増幅器出力信号推定部44の処理に要する時間分だけ遅延させて、TWTA推定入力信号(増幅器推定入力信号)として増幅器特性導出部45に出力する。これにより、後述するベクトル加算等を行う他の信号と同期をとることが可能となる。
【0046】
増幅器出力信号推定部44は、第3RRC441と、第2適応等化部442と、第1ベクトル加算部443と、第2ベクトル加算部444と、第1遅延部445と、第2遅延部446とを備え、擬似TWTA出力信号、擬似伝送路通過変調波信号を第2適応等化部442により等化処理した信号、及び第1適応等化部出力信号から、TWTA22の出力信号を推定したTWTA推定出力信号(増幅器推定出力信号)を生成する。増幅器出力信号推定部44を含む本発明である増幅器特性推定装置4の動作を、IQ信号点のベクトルを「IQベクトル」と称して説明する。
【0047】
図3は、増幅器特性推定装置4の動作原理を示す図である。第2適応等化部442の出力信号(第2適応等化部出力信号)のIQベクトルS’
eq_outと、擬似TWTA出力信号のIQベクトルS’
twta_outとの差分ベクトルE’
omux_rrc_eqを生成する。つまり、差分ベクトルE’
omux_rrc_eqは、擬似OMUXフィルタ433、第3RRC441、及び第2適応等化部442で生じるIQ歪ベクトルである。
【0048】
続いて、第2ベクトル加算部444は、第1ベクトル加算部443により計算した差分ベクトルE’
omux_rrc_eqの逆ベクトルに、第1適応等化部出力信号のIQベクトルS
eq_outを加算することで、伝送路上のTWTA22の出力信号のIQベクトルR
twta_outを推定したTWTA推定出力信号のIQベクトルS
twta_outを生成する。
【0049】
ここまで、TWTA推定出力信号が通過したブロックで実伝送路と異なる伝達関数となるのはTWTA(TWTA22と擬似TWTA432)と適応等化部(第1適応等化部413と第2適応等化部442)である。
【0050】
TWTA22については推定対象であるので最初は異なってしかるべきであるが、適応等化部については伝達関数が同値である方が好ましい。そこで、最初に第1適応等化部413で安定受信時における伝達関数の重み係数を固定させ、固定した重み係数を第2適応等化部442に出力する。そして、第2適応等化部442は、第1適応等化部413から入力された重み係数により特定される伝達関数を用いて等化処理を行う。このようにして、第1適応等化部413及び第2適応等化部442が同じ伝達関数を用いて等化処理を行うことにより、精度の高い推定が可能となる。
【0051】
また、第1ベクトル加算部443及び第2ベクトル加算部444の各入出力段は、電力正規化部(図示せず)により、各段のIQ信号点の平均電力がすべて同値になるように、全信号点の振幅が定数倍して調整される。
【0052】
また、第1ベクトル加算部443及び第2ベクトル加算部444は、演算対象となる各信号点ベクトルの同期をとる必要がある。そのため、デジタル信号処理によるビット遅延を考慮し、第1遅延部445及び第2遅延部446は信号をビット遅延させる。
【0053】
具体的には、第1遅延部445は、第1適応等化部出力信号に対して、ダウンサンプル部414、復号・再変調部42、擬似衛星中継器43、第3RRC441、第2適応等化部442、及び第1ベクトル加算部443の処理に要する時間分だけ遅延させて、第2ベクトル加算部444に出力する。また、第2遅延部446は、擬似TWTA出力信号に対して、擬似OMUXフィルタ433、第3RRC441、及び第2適応等化部442の処理に要する時間分だけ遅延させて、第1ベクトル加算部443に出力する。
【0054】
実際には、擬似衛星中継器43の擬似TWTA432の特性は推定値であるため衛星中継器2のTWTA22のTWTA特性とは異なり、TWTA22から出力されるTWTA出力信号と第3遅延部46から出力されるTWTA推定出力信号とは一致しないが、上記ベクトル演算及び後述するTWTA22の推定特性値の更新動作を繰り返すことで擬似TWTA432の特性がTWTA22の実特性に漸近し、推定精度を高めることが可能となる。なお、2回目以降の繰り返し計算については、1回目で使用した第1適応等化部出力信号を記憶させておき、使用すると実特性への漸近が可能となる。
【0055】
増幅器特性導出部45は、TWTA推定入力信号(増幅器推定入力信号)及びTWTA推定出力信号(増幅器推定出力信号)から、TWTA22の入出力特性(推定特性値)を導出し、擬似TWTA432及び外部に出力する。ここで、TWTA22の入出力特性とは、AM/AM特性及びAM/PM特性である。TWTA22の特性をより精度良く推定するために、以下に説明するように、AM/AM特性及びAM/PM特性の双方を導出するのが好適である。
【0056】
図6は、増幅器特性導出部45の構成を示すブロック図である。増幅器特性導出部45は、電力位相演算部50と、切換平均部60と、増幅器特性記述部70とを備える。
【0057】
電力位相演算部50は、IQ/入力電力変換部501と、IQ/入力位相変換部502と、IQ/出力位相変換部503と、位相加算部504と、IQ/出力電力変換部505とを有し、TWTA推定入力信号の第1の電力値と、TWTA推定出力信号の第2の電力値と、TWTA推定出力信号の位相値及びTWTA推定入力信号の位相値を減算した位相偏移量とを演算する。
【0058】
IQ/入力電力変換部501は、第3遅延部46から入力されるTWTA推定入力信号から入力電力値[dB]を演算する。
【0059】
IQ/入力位相変換部502は、第3遅延部46から入力されるTWTA推定入力信号から入力位相値(−180〜+180[deg])を演算する。IQ/出力位相変換部503は、増幅器出力信号推定部44から入力されるTWTA推定出力信号から出力位相値(−180〜+180[deg])を演算する。
【0060】
位相加算部504は、IQ/出力位相変換部503から入力される出力位相値から、IQ/入力位相変換部502から入力される入力位相値を減算(−180〜+180[deg])し、位相偏移量を算出する。
【0061】
IQ/出力電力変換部505は、増幅器出力信号推定部44から入力されるTWTA推定出力信号のIQ信号点から出力電力値[dB]を演算する。
【0062】
切換平均部60は、入力電力信号切換部601と、出力電力信号切換部602と、位相偏移信号切換部603と、切換制御部604と、入力電力平均化部605と、出力電力平均化部606と、位相偏移平均化部607とを有し、電力位相演算部50から入力された第1の電力値、第2の電力値、及び位相偏移量をそれぞれ領域ごとに分割し、領域ごとに、第1の電力値、第2の電力値、及び位相偏移量の平均値を算出する。
【0063】
入力電力信号切換部601は、IQ/入力電力変換部501から入力される入力電力信号を時分割で切り換え、各ポートに出力する。出力電力信号切換部602は、IQ/出力電力変換部505から入力される出力電力信号を時分割で切り換え、各ポートに出力する。位相偏移信号切換部603は、位相加算部504から入力される位相偏移信号を時分割で切り換え、各ポートに出力する。
【0064】
切換制御部604は、IQ/入力電力変換部501から入力される入力電力信号(各信号点におけるTWTA入力電力に相当)の瞬時電力に応じて、制御信号を入力電力信号切換部601、出力電力信号切換部602、及び位相偏移信号切換部603に送り、出力電力信号切換部602、位相偏移信号切換部603、及び入力電力信号切換部601が該瞬時電力に対応した同一のポート番号のポートに切換えるよう制御する。
【0065】
例えば、入力電力を−25[dB]から+5[dB]までの特性範囲で1[dB]ごとに区分的に分けたとき、入力電力信号切換部601、出力電力信号切換部602、及び位相偏移信号切換部603は、それぞれ出力ポート1(+4.5[dB]<入力電力<+5.5[dB])、出力ポート2(+3.5[dB]<入力電力<+4.5[dB])、出力ポート3(+2.5[dB]<入力電力<+3.5[dB])、・・・、出力ポート31(−24.5[dB]<入力電力<−25.5[dB])という形で1個の入力ポートに対して31個の出力ポートが用意され、切換制御部604の制御により、入力電力信号切換部601、出力電力信号切換部602、及び位相偏移信号切換部603は、入力電力に対応したポート番号のポートに切り換わる。例えば、IQ/入力電力変換部501から入力される入力電力が+5.1[dB]であるとき、入力電力信号切換部601、出力電力信号切換部602、及び位相偏移信号切換部603の出力ポートは出力ポート1に切り換わり、それぞれ出力ポート1から信号を出力する。
【0066】
入力電力平均化部605は、入力電力信号切換部601からポートごとに入力される擬似TWTA432の入力電力の平均値を、ポートごとに算出する。出力電力平均化部606は、出力電力信号切換部602からポートごとに入力されるTWTA22の推定出力電力の平均値を、ポートごとに算出する。位相偏移平均化部607は、位相偏移信号切換部603からポートごとに入力されるTWTA22の推定位相偏移量の平均値を、ポートごとに算出する。
【0067】
なお、増幅器特性導出部45の各ブロックの各入出力段は、電力正規化部(図示せず)により、各段のIQ信号点の平均電力がすべて同値になるように、全信号点の振幅が定数倍して調整される。
【0068】
増幅器特性記述部70は、入力電力平均化部605から入力される、擬似TWTA432の入力電力のポートごとの平均値と、出力電力平均化部606から入力される、TWTA22の推定出力電力のポートごとの平均値とをテーブルファイル化してAM/AM特性を記述する。また、入力電力平均化部605から入力される、擬似TWTA432の入力電力のポートごとの平均値と、位相偏移平均化部607から入力される、TWTA22の推定位相偏移量のポートごとの平均値とをテーブルファイル化してAM/PM特性を記述する。
【0069】
制御部47は、増幅器特性推定装置4の各ブロックの動作を制御する。なお、
図2では制御部47と各ブロック間の制御線は省略している。また、制御部47は、擬似TWTA432、擬似OMUXフィルタ433、増幅器出力信号推定部44、及び増幅器特性導出部45による処理を所定の回数繰り返すように制御するとともに、増幅器特性導出部45によりTWTA22の入出力特性が導出されるたびに、擬似TWTA432の特性を該入出力特性に更新する。このような繰り返し処理を行うことで、増幅器特性導出部45により導出される推定特性値は、実際のTWTA22の特性に漸近する。なお、TWTA推定入力信号については、2回目以降の繰り返し計算も同値となるため、1回目の推定結果を記憶させておくのが望ましい。
【0070】
図7は、
図2に示した構成の増幅器特性推定装置4で推定したTWTA22の入出力特性(AM/AM特性及びAM/PM特性)のシミュレーション結果の一例を示す図である。ここで、変調方式(符号化率)を32PSK(3/4)とし、シンボルレートを33.7561Mbaud、ロールオフ率を0.03とし、TWTA22の動作点となる出力バックオフ2.2dB(
図4の正規化入力電力で−3.94dB)で設定した。また実伝送を想定し、アップリンクC/N及びダウンリンクC/Nをそれぞれ30dBに設定した。また、擬似TWTA432に設定されるTWTA特性初期値として、AM/AM特性は傾き1の完全線形で、AM/PM特性は入力信号電力によらず位相回転がない理想特性を設定し、推定のための繰り返し回数は10回とした。シミュレーション結果から、入出力特性は更新を繰り返すことで実特性に漸近し、入力電力が−15dB以上の領域では、10回目推定値特性が実特性によく一致している。
【0071】
ただし、入力電力が+5dB(4.5dBから5.5dBの領域)となるサンプル点は今回設定の伝送パラメータと動作点(出力バックオフ2.2dB、TWTA入力で−3.94dB)では出現しなかった。これは設定動作点に対し、+5dB付近が高すぎるためでバックオフを少し小さめにとれば出現する。
【0072】
そこで、異なる動作点(例えば、出力バックオフ2.0dB)でも同様に入力電力が+5dBまでサンプル点がある状態で入出力特性の推定を行い、出力バックオフを2.2dBとした場合の第1の入出力特性と、例えば出力バックオフを2.0dBとした場合の第2の入出力特性とを合成し、とりわけ入力電力が+5dBの点については第2の入出力特性を採用するようにしてもよい。また、同様に3以上の動作点により複数の入出力特性を推定し、合成してもよい。すなわち、増幅器特性導出部45は、TWTA22の複数の動作点に対する複数の入出力特性を導出し、該複数の入出力特性を合成してもよい。これにより、広い範囲で入出力特性を求めることができる。
【0073】
なお、増幅器特性推定装置4として機能させるためにコンピュータを好適に用いることも可能である。そのようなコンピュータは、増幅器特性推定装置4の各機能を実現する処理内容を記述したプログラムを該コンピュータの記憶部に格納しておき、該コンピュータのCPUによってこのプログラムを読み出して実行させることで実現することができる。
【0074】
また、このプログラムは、コンピュータ読取り可能媒体に記録されていてもよい。コンピュータ読取り可能媒体を用いれば、コンピュータにインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記録されたコンピュータ読取り可能媒体は、非一過性の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD−ROMやDVD−ROMなどの記録媒体であってもよい。
【0075】
このように、本発明に係る増幅器特性推定装置4及びそのプログラムによれば、伝送路通過変調波信号の1信号のみを受信し、増幅器特性推定装置4の閉じられたシステム内で伝送路通過変調波信号を解析してTWTA22の特定値を推定する。そのため、増幅器特性推定装置4内で各信号の同期を正確にとることができ、TWTA22の特性が経年変化した場合でも、現状の特性値を高い精度で推定することができるようになる。
【0076】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る補償器及び送信装置について、図面を参照して詳細に説明する。なお、第1の実施形態と同じ構成要素には同一の参照番号を付して説明を省略する。
図8は第2の実施形態に係る特性補正機能付き補償器、及び特性補正機能付き送信装置を適用した衛星デジタル放送伝送システムの構成を示すブロック図である。特性補正機能付き補償器30は、増幅器特性推定装置4と、補償器31とで構成される。
【0077】
補償器31は、伝送路上で生じる歪に対して送信側で予め逆特性の歪を与えておくことにより、伝送路上で生じる歪を打ち消して伝送特性を改善する装置である。このとき、補償器31は、伝送路の特性を想定して、発生すると思われる歪と逆特性の歪を与えるが、実際の伝送路の伝送路特性が既知の場合には、より精度の高い歪み補償が可能となる。しかし、伝送路上の増幅器(TWTA22)が経年変化した場合には、歪補償精度が低下し伝送劣化が生じる。
【0078】
そこで、増幅器特性推定装置4は、推定したTWTA22の特性値を補償器31に転送する。補償器31は、増幅器特性推定装置4から転送されたTWTA22の推定特性値を用いて補償特性を更新し、歪補償を行う。したがって、本発明に係る特性補正機能付き補償器30によれば、現在の増幅器特性に追従した補償が可能となるため、TWTA22の経年変化の影響を排除した補償器を提供することが可能となる。
【0079】
また、特性補正機能付き送信装置40は、送信装置1と、特性補正機能付き補償器30とで構成される。特性補正機能付き補償器30は、送信装置1で発生した変調波信号に対し、TWTA22の経年変化の影響を排除した歪補償を行う。したがって、本発明に係る特性補正機能付き送信装置40によれば、TWTA22の経年変化の影響を排除した送信装置を提供することが可能となる。
【0080】
上述の各実施形態は、代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【0081】
例えば、上述の第2の実施形態の特性補正機能付き送信装置40においては、送信装置1で発生した変調波信号を補償器31に入力する構成としたが、送信装置1に内蔵される直交変調器(図示せず)で変調する前のIQ信号を出力できる場合には、そのIQ信号を補償器31に入力し、補償器31内で直交変調した後に出力する構成とすることも可能である。
【0082】
また、本発明は、実施形態の変調方式(例えば、32APSK(3/4)等)の伝送パラメータ以外であっても推定可能である。さらに、異なる伝送方式(例えばISDB−SやDVB−S2等)であっても適応可能であり、方式等による依存はない。
【0083】
さらに、上述の実施形態では増幅器特性推定装置4を衛星デジタル放送伝送システムに適用した場合を代表的な例として説明したが、同様にそれ以外の伝送路にも適用が可能である。例えば、デジタル変調された信号を更に電気/光変換して光ファイバーで伝送し、光/電気変換してデジタル変調された信号を復元し、デジタル復調するような場合には、電気/光変換器、光/電気変換器の非線形特性が問題になる場合がある。このような場合、実施形態の増幅器特性推定装置4において、擬似衛星中継器43を、擬似IMUXフィルタ、擬似TWTA432、及び擬似OMUXフィルタ433で構成する代わりに、電気/光変換器、光/電気変換器で構成し、その特性を実際に用いられる電気/光変換器、光/電気変換器の非線形特性とすることで、電気/光変換器、光/電気変換器の非線形特性を推定したり、該推定した特性を用いて歪補償したり、該推定した特性を用いて歪補償した後の信号を送信したりすることができる。