【実施例1】
【0012】
<走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)の概略構成例>
図1は、検査システムの概略構成図である。実施例1は、SEMに限らず、荷電粒子顕微鏡を用いても実施可能であるが、ここでは、入射電子線を走査しながら照射する走査型電子顕微鏡を例に挙げて説明する。荷電粒子顕微鏡を用いる場合は、電子を荷電粒子に置き換えればよい。なお、走査型電子顕微鏡(SEM)および荷電粒子顕微鏡を総称して「顕微鏡」とする。入射電子線は、荷電粒子に含まれるビームである。
【0013】
検査システム1は、走査型電子顕微鏡100と、画像処理装置としても機能する制御装置115と、により構成される。走査型電子顕微鏡100の電子銃101から発生した電子線102は、加速電極103によって加速され、コンデンサレンズ104により収束、偏向器105により偏向された後、試料107側に印加された負の電圧(リターディング電圧)により減速され、かつ対物レンズ106で最終的に径数nm(ナノメートル)の電子線102に収束されて、観察対象である試料107の表面に入射する。なお、電子線102の照射方向は、試料ステージ109の表面に対し垂直方向Zとする。
【0014】
電子線102として入射した一次電子の一部は、後方反射して反射電子(後方散乱電子)111となり、また一部は、試料107内を散乱しながら二次電子112を生成する。ここでリターディング電圧とは、試料107上の回路パタンを損傷させることなく電子線102を収束させるために、試料107(試料ホルダー108または試料ステージ109)側に印加される負の電圧である。リターディング電圧によって電子線102の照射エネルギーが制御される。
【0015】
生成した反射電子111および二次電子112は、反射板113と衝突して新たな電子を発生し、当該新たな電子は検出器114にて検出される。検出器114には光電子増倍管(不図示)が内蔵されており、電子の検出量に応じて電圧を発生させる。当該電圧を制御装置115で処理した後、画像表示部116が画像として表示する。制御装置115は、試料107から放出される二次電子112等に基づいて、縦軸を信号量、横軸を電子線の走査位置とするプロファイル波形を形成する。そして当該プロファイル波形のピーク間の距離を求めることによって、パタン寸法を測定するように動作する。
【0016】
つぎに、二次電子112および反射電子111について信号検出を行う際の光学条件について説明する。二次電子112は、約50[eV]未満の低エネルギーの信号電子であり、反射電子111は約50[eV]以上の高エネルギーの信号電子である。したがって、SEM100を構成する各々の電極に与える電圧その他の光学パラメータを制御することによってこれらの信号電子検出を選択、及び両者の切り替えが可能である。上記の条件は、主に(1)電子光学系、または/及び(2)電子検出系において設定される。
【0017】
なお、反射電子111および二次電子112を試料107からの放出電子と称す。また、放出電子のうち検出器114によって信号として検出された電子を、信号電子と称す。
【0018】
(1)では、たとえば、対面電極119や対物レンズ106上方に配置されたブースター電極110に対し、試料107側が持つ電圧よりも大きい負の電圧(ブースター電圧)を印加することで、エネルギーの低い二次電子112を試料107側へ引き戻し、高エネルギーの反射電子111のみを選択的に検出することも可能である。この場合、変換電極117に正の電圧を印加することにより、対物レンズ106よりも電子銃101側へ移動した反射電子111を更に引き上げて検出器114へ導入する。なお、負の電圧を印加する電極は実施例1における例には限られない。
【0019】
上記の方法により反射電子111を信号電子として検出する場合、試料107から浅い角度で発生したローアングル成分と、高い角度で発生したハイアングル成分のいずれをも検出することができるため、全体の収量が高くなる。
【0020】
(2)では、試料107側からの放出電子を、エネルギーの大きさに応じて分離するエネルギーフィルタを用いた方法が適用される。
【0021】
図2は、エネルギーフィルタの基本構造例を示す説明図である。エネルギーフィルタ200は、2枚のシールドメッシュ201aとフィルタメッシュ201bから構成される。また、これらのメッシュには電子線102を通過させるための開口202が設けられている。フィルタメッシュ201bは1枚であっても、複数枚あってもよく、フィルタ電圧を印加するための電源203が接続される。エネルギーの大きさに応じて分離された反射電子111、二次電子112は、反射電子検出器204a、二次電子検出器204bにそれぞれ検出される。
【0022】
上記の方法では、ほぼ光軸方向に向かって試料107から高い角度で反射されるハイアングル成分の反射電子111のみを精度良く検出することができる。上記(1)、(2)の方法を目的や用途に応じて適宜組み合わせることも可能である。
【0023】
また、実施例1は上記(1)、(2)に限られるものではなく、これ以外にも、SEMを構成するその他の電極やコイルに印加または供給する電圧、電流等の光学パラメータを制御して反射電子111、二次電子112の信号検出光学条件を設定することが可能である。なお、SEM100を構成する各々の電極やコイルは、制御装置115によって、電圧または電流が、印加または供給される。
【0024】
<制御装置115のハードウェア構成例>
図3は、制御装置115のハードウェア構成例を示すブロック図である。制御装置115は、プロセッサ301と、記憶デバイス302と、入力デバイス303と、出力デバイス304と、通信インターフェース(IF)305と、を有する。プロセッサ301、記憶デバイス302、入力デバイス303、出力デバイス304、および通信IF305は、バス306により接続される。プロセッサ301は、制御装置115を制御する。記憶デバイス302は、プロセッサ301の作業エリアとなる。また、記憶デバイス302は、各種プログラムやデータを記憶する非一時的なまたは一時的な記録媒体である。記憶デバイス302としては、たとえば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリがある。入力デバイス303は、データを入力する。入力デバイス303としては、たとえば、キーボード、マウス、タッチパネル、テンキー、スキャナがある。出力デバイス304は、データを出力する。出力デバイス304としては、たとえば、ディスプレイ、プリンタがある。通信IF305は、走査型電子顕微鏡100と接続し、データを送受信する。
【0025】
<SEM観察時の電子線と試料の一例>
図4は、SEM観察時の電子線と試料の一例を示す説明図である。走査型電子顕微鏡100が入射電子線102を試料107に照射することで試料107からの放出電子(反射電子111または二次電子112)を検出する。信号電子400の量は試料107の表面の形状に依存する。
【0026】
したがって、走査型電子顕微鏡100は、視野401の範囲内で入射電子線102の照射位置402をスキャンし、照射位置402ごとの信号電子量を輝度として画像表示部116に表示する。これにより、視野401内の試料107の形状を反映したSEM画像600(
図6を参照)が得られる。
【0027】
図4では入射電子線102のスキャン方向Sが1方向(
図4中、右方向への矢印)で,視野401の左端から順に連続的に走査する例を示したが、視野401内をくまなく電子線102が通過するようなスキャン方法であれば、スキャン方向Sを途中で変更したり、視野401内を不連続にスキャンしたりしてもよい。
【0028】
図5は、
図4に示したナノワイヤパタンのSEM観察例の部分拡大図である。試料107には凹部500が形成され、凹部500の対向する両側面にナノワイヤ形状の微細パタン(単に、「パタン」と称する場合もある)501が渡されている。走査型電子顕微鏡100は、微細パタン501を横切るように電子線102をスキャンする。なお、ナノワイヤ形状の微細パタン501に限らず、任意の形状の微細パタン501でもよい。
【0029】
図6は、SEM画像の一例を示す説明図である。
図6に示したSEM画像600は、電子線102の照射方向からみた画像である。SEM画像600は、
図5に示した試料107におけるナノワイヤ形状の微細パタン501に入射電子線102をスキャン照射して得られた画像である。このSEM画像600は、試料107の画像601と微細パタン501の画像602とを含む。wは、微細パタン501の画像602のスキャン方向Sの幅(パタン幅)である。
【0030】
図7は、微細パタン501のSEM観察の他の例の部分拡大図である。
図7は、入射電子線102を斜め上方から照射した例である。
図7に示した試料107は、垂直方向Zに配列された2本以上(
図7では2本)の微細パタン701、501を有する。入射電子線102を垂直方向Zに入射させた場合には,最上段のパタン701しか観察できないが、垂直方向Zに対し入射角θで入射電子線102を試料107に入射させることで下段のパタン501に照射され、下段のパタン501が観察可能となる。
【0031】
<パタンの導通特性算出処理手順例>
図8は、制御装置115によるパタンの導通特性算出処理手順例を示すフローチャートである。
図8のフローチャートに示す処理は、具体的には、たとえば、
図3に示した記憶デバイス302に記憶されたプログラムをプロセッサ301に実行させることにより実現される。
【0032】
制御装置115は、たとえば、操作者の操作により、N個(Nは2以上の整数)の異なる画像取得条件を設定する(ステップS801)。画像取得条件とは、電子線102のスキャン速度(走査速度)およびプローブ電流の組み合わせである。スキャン速度とは、電子線102の照射位置402を移動させる速度である。プローブ電流とは、入射電子線102の電流である。
【0033】
ここでは、N個の画像取得条件は、スキャン速度およびプローブ電流のうち少なくとも一方が異なる条件の組み合わせであればよい。具体的には、たとえば、N個の画像取得条件において、スキャン速度がどの画像取得条件でも同一スキャン速度で、プローブ電流が各画像取得条件で異なるように設定されてもよい。
【0034】
また、N個の画像取得条件において、プローブ電流がどの画像取得条件でも同一プローブ電流で、スキャン速度が各画像取得条件で異なるように設定されてもよい。さらに、N個のどの画像取得条件においても、スキャン速度およびプローブ電流が異なるように設定されてもよい。すなわち、N個の画像取得条件の間において、スキャン速度およびプローブ電流の少なくとも一方が異なるように設定されていればよい。
【0035】
スキャン速度またはプローブ電流を変更することは、単位長さあたりの電荷照射密度を変更することである。視野401の大きさ(倍率)を変えればスキャン速度も変わる。たとえば、視野401を拡大すれば倍率は小さくなり、入射電子線102のスキャン時間が一定であれば、スキャン速度は速くなる。一方、視野401を縮小すれば倍率は大きくなり、入射電子線102のスキャン時間が一定であれば、スキャン速度は遅くなる。したがって、画像取得条件を単位長さあたりの電荷照射密度や倍率という形式で指定することも可能である。
【0036】
設定する画像取得条件については、あらかじめ設定されていた標準の画像取得条件が利用されてもよいし、SEM100の操作者が入力または選択することにより設定されてもよい。設定する画像取得条件は、単位長さあたりの電荷照射密度を広い範囲にわたって変化させるように選択されることが望ましい。
【0037】
制御装置115は、ステップS801で設定したN個の画像取得条件で、走査型電子顕微鏡100から電子線102を試料107に照射させることにより、N枚のSEM画像600を取得する(ステップS802)。ステップS801で指定した以外のSEM画像取得時の画像取得条件は任意であるが、画像輝度が試料107の表面の帯電に敏感に応答するような画像取得条件であることが望ましい。たとえば、
図2に示したエネルギーフィルタ200を用いて、信号電子400のうち閾値電圧より低加速の電子を除去することで、試料107の表面の帯電に対応するコントラスト、いわゆる電位コントラストを強調する方法がある。
【0038】
制御装置115は、ステップS802で得られたN枚のSEM画像600からN個の実測プロファイルを生成する(ステップS803)。実測プロファイルとは、SEM画像600から取得された輝度プロファイルである。具体的には、たとえば、
図6のSEM画像600において、入射電子線102の照射対象パタンの画像602を横切るプロファイル抽出ライン603上の輝度データ列が輝度プロファイルである。プロファイル抽出ライン603はスキャン方向Sに対応する。輝度データ列は、スキャン方向Sに入射電子線102を走査したときの信号電子400の検出量に対応する輝度を示すデータ列である。また、SEM画像600から取得した輝度プロファイルが実測プロファイルである。ここで、実測プロファイルの具体例について説明する。
【0039】
図9は、実測プロファイル例1を示すグラフであり、
図10は、実測プロファイル例2を示すグラフである。
図9は、1枚のSEM画像600から得られた1個の実測プロファイル900の例を示し、
図10は、N枚(
図10では例としてN=3)のSEM画像600から得られたN個の実測プロファイル(900,1001,1002)の例を示す。
図9および
図10において、横軸はプロファイル抽出ライン603上における入射電子線102の照射位置402であり、縦軸は当該照射位置402における照射対象パタンの輝度である。
【0040】
図9は、照射対象パタンが
図5のパタン501のように1次元的な形状である場合の実測プロファイル900である。実測プロファイル900では、照射対象パタンの存在位置で輝度が高くなっている。この場合、
図6のSEM画像600のように照射対象パタンがライン形状として観察される。
【0041】
制御装置115は、操作者の操作により、プロファイル抽出ライン603の抽出範囲となるプロファイル抽出領域604をライン方向Lに拡大設定することができる。プロファイル抽出領域604が拡大すると、プロファイル抽出ライン603をより多く設定することができ、平均的な輝度プロファイルが得られる。したがって、実測プロファイル900のS/N比の向上を図ることができる。
【0042】
また、照射対象パタンが、たとえば、穴であるホールパタンのような2次元形状の場合には、プロファイル抽出領域604内でホールパタンの幅が大きく変わらない程度にプロファイル抽出領域604の大きさを設定することが望ましい。
【0043】
また、プロファイル抽出領域604は、照射対象パタンとの位置関係が計測毎にばらつかないように設定することが望ましい。たとえば、あらかじめプロファイル抽出領域604の大きさを設定しておき、視野401内のパタン位置を画像認識し、画像認識結果によりプロファイル抽出領域604を配置する方法が望ましい。
【0044】
また、S/N比を向上させるために、制御装置115が、輝度プロファイルの抽出位置が大きく変化しない範囲で、プロファイル抽出領域604を自動で、または、SEM100の操作者が手動で拡大するようにしてもよい。さらに、得られた実測プロファイルのS/N比が十分でないと操作者または評価者が判断したときには、制御装置115は、任意のスムージング手法により実測プロファイル900を平滑化してもよい。
【0045】
また、ステップS802ではN枚のSEM画像600が取得されるため、ステップS803では、
図10に示したように、N個の実測プロファイル(900,1001,1002)が得られる。なお、SEM画像600毎に画像輝度調整などが適用されてしまうとN個の実測プロファイルの相対的な比較が困難となる。したがって、制御装置115は、SEM画像600の取得時の輝度調整条件を同一とするか、または、輝度調整を相殺するように、得られた実測プロファイルを補正することが望ましい。
【0046】
図8に戻り、制御装置115は、ステップS803で得られたN個の実測プロファイルからパタンの導通特性を算出し、一連の処理を終了する(ステップS804)。導通特性とは、試料107のコンタクト抵抗R、寄生容量C、および、コンタクト抵抗Rおよび寄生容量Cの少なくとも一方に関連するパラメータ、のうち少なくとも1つである。コンタクト抵抗Rおよび寄生容量Cの少なくとも一方に関連するパラメータは、たとえば、コンタクト抵抗Rおよび寄生容量Cの少なくとも一方の算出元となるパラメータや、コンタクト抵抗Rおよび寄生容量Cの少なくとも一方が内在するパラメータを含む。
【0047】
具体的には、たとえば、パタン501からの電荷リークの緩和時間Tがある。緩和時間Tとは、定常状態となるまでの時間、すなわち、時定数RCであるため、コンタクト抵抗Rおよび寄生容量Cが内在する。たとえば、ステップS804でコンタクト抵抗Rと緩和時間Tが算出された場合、寄生容量Cは、C=T/Rで求められる。また、RおよびCの少なくとも一方に関連するパラメータには、コンタクト抵抗Rや寄生容量Cの算出元となる電圧値や電流値がある。
【0048】
導通特性の算出について具体的に説明する。たとえば、ステップS801においてスキャン速度の異なる5つの画像取得条件(N=5)が設定された場合、制御装置115は、実測プロファイルごとに輝度の最大値を抽出してプロットすることでスキャン速度依存性を生成する。輝度の最大値をプロットしたグラフを
図11に示す。
【0049】
図11は、SEM画像600における輝度のスキャン速度依存性例を示すグラフである。
図11の横軸はスキャン速度であり、縦軸は当該スキャン速度における照射対象パタンの輝度である。プロットされた5つの点p1〜p5は、5つの異なるスキャン速度sr1〜sr5の画像取得条件(プローブ電流は同一とする)での5個の実測プロファイルから抽出された輝度の最大値lmx1〜lmx5を示す。輝度のスキャン速度依存性1100は、点p1〜p5を通る曲線であり、
図11のような単調増加関数または単調減少関数(不図示)となる。
【0050】
輝度のスキャン速度依存性1100では、点p3が変化点となる。変化点は、たとえば、輝度のスキャン速度依存性1100の傾きが最大となる点である。この変化点のスキャン速度を「特定のスキャン速度」と称す。
図11の例では、点p3のスキャン速度sr3が特定のスキャン速度となる。輝度のスキャン速度依存性1100および特定のスキャン速度もまた、コンタクト抵抗Rおよび寄生容量Cの少なくとも一方に関連するパラメータであるため、導通特性である。
【0051】
したがって、上述した緩和時間Tを特定のスキャン速度を用いて定義すると、パタン501からの電荷リークの緩和時間Tは、特定のスキャン速度で入射電子線102がパタン501を通過するために必要な時間、すなわち、パタン幅w(入射電子線102がその走査方向Sでパタン501を通過した距離)を特定のスキャン速度で除した時間である。
【0052】
なお、
図11の縦軸に輝度の最大値を用いたが、その代わりに照射対象パタンの輝度の平均値や照射対象パタン中央の輝度を用いてもよいし、制御装置115が、照射対象パタンの輝度の指標となる他の値を、実測プロファイルの統計処理により求めて用いてもよい。
【0053】
プロットから特定のスキャン速度を求める方法としては、ステップ関数やエラー関数などのフィッティングを利用する方法が効果的であるが、低値から高値へ遷移するスキャン速度における変化点を決定する任意の方法を用いてもよい。この際、画像取得条件数Nが大きいほど変化点の決定精度が向上するため、計測時間が問題とならない範囲でNを大きくすることが望ましい。
【0054】
一方、
図11のような変化点が観察されない場合は、電荷リークの緩和時間Tが極めて長いか極めて短いかのいずれかであり、少なくとも計測可能な範囲に緩和時間Tが無いことが分かる。
【0055】
特定のスキャン速度から電荷リークの緩和時間Tを算出する際に用いるパタン幅wは、ステップS802で得られたN枚のSEM画像600のうち、最も輝度が高いSEM画像600から計測してもよい。また、N枚のすべてのSEM画像600から得られた計測値の平均を用いてもよい。また、ステップS802とは別に寸法計測に適した画像取得条件で取得したSEM画像600から計測してもよい。SEM画像600から寸法を計測する手法は、任意の既存の手法を用いればよい。また、SEM画像600から計測するかわりに、設計値など一定の値をあらかじめ入力しておいて、その値を利用してもよい。
【0056】
また、
図11の横軸にはスキャン速度を用いたが、入射電子線102がパタン501を通過するために必要な時間としてもよい。これにより、その変化点での輝度の最大値が特定のスキャン速度に対応するため、その変化点での時間が、電荷リークの緩和時間Tとなる。
【0057】
試料107である半導体回路での電荷リークの緩和時間Tは、一般的にコンタクト抵抗Rと寄生容量Cの積である。したがって、制御装置115は、コンタクト抵抗Rと寄生容量Cのいずれか一方を仮定するか、別の手法で計測または推定することで、他方を算出することができる。
【0058】
図12は、SEM画像600における輝度のプローブ電流依存性例を示すグラフである。
図12は、横軸を、
図11のスキャン速度からプローブ電流にした例である。プローブ電流は、入射電子線102の電流量である。プロットされた5つの点p11〜p15は、5つの異なるプローブ電流Ip1〜Ip5の画像取得条件(スキャン速度は同一とする)での5個の実測プロファイルから抽出された輝度の最大値lmx11〜lmx15を示す。
【0059】
制御装置115は、実測プロファイルごとに輝度の最大値を抽出して点p11〜p15をプロットすることでプローブ電流依存性1200を生成する。プローブ電流依存性1200も導通特性である。これにより、
図11と同様、点p13を変化点として、特定のスキャン速度と同じように、プローブ電流Ip3が特定のプローブ電流に特定される。輝度のプローブ電流依存性1200は、点p11〜p15を通る曲線であり、
図12のような単調減少関数または単調増加関数(不図示)となる。
【0060】
ここで、特定のプローブ電流からパタン501の導通特性を算出する方法について説明する前に、信号電子400のスペクトルについて説明する。
【0061】
図13は、信号電子400のスペクトル特性例を示すグラフである。
図13の横軸は、信号電子400の加速電圧、すなわち、試料107に入射電子線102を照射した場合に試料107からの放出電子の電圧である。縦軸は検出器114で検出された信号電子数である。
図13のスペクトル特性1300は信号電子数のヒストグラムである。一般に、信号電子400は、
図13に示したようなスペクトル特性1300を持っており、加速電圧が50[V]以下である低加速の電子が多い。試料107の表面が正帯電すると、試料107の電位より加速電圧が小さい電子は試料107から脱出できず、信号電子400として検出器114で検出されない。
【0062】
図14は、信号電子検出率の表面電位依存性例を示すグラフである。
図14の横軸は試料107の表面電位であり、試料107のコンタクト抵抗Rとプローブ電流I
pとの積である。縦軸は信号電子検出率である。信号電子検出率は、理想状態(試料107が帯電していない状態)において試料107からの放出電子(反射電子111(後方散乱電子)および二次電子112)に対して、検出器114で検出された信号電子400の数の割合である。
【0063】
信号電子検出率=検出信号電子数/理想状態における試料107からの放出電子数
【0064】
その結果、
図14の表面電位依存性1400に示したように、試料107の表面電位の上昇とともに信号電子検出率が低下する。
図13のスペクトル特性1300の低加速側のピーク電圧は20[V]程度であるので、
図14では20[V]程度を境に信号電子検出率が急激に低下する。表面電位依存性1400も導通特性である。
【0065】
また、エネルギーフィルタ200などを用いて放出電子のうち閾値電圧より低加速の電子を除去した場合には、信号電子400が検出されるには帯電によって減速した後でも閾値電圧より高加速である必要がある。したがって、この場合、
図14の横軸は、表面電位から表面電位と閾値電圧との和に置き換えられる。すなわち、信号電子検出率の急激な低下は、20[V]からエネルギーフィルタ200の閾値電圧を差し引いた電圧近傍で生じる。
【0066】
一方、スキャン速度が十分遅い場合には、試料107の表面電位はコンタクト抵抗Rと試料107に実効的に流入する電流量I
0の積で近似できる。実効的に流入する電流量I
0とは、試料107からの放出電子の電流量I
eと入射電子の電流量、すなわちプローブ電流I
pとの差である。放出電子の電流量I
eは、試料107の形状や入射電子線102の加速電圧に依存するものの、1[kV]程度の加速電圧であればおおよそプローブ電流I
pの2倍程度である。すなわち、試料107に実効的に流入する電流量I
0はプローブ電流I
pと同程度である。したがって、表面電位はコンタクト抵抗Rとプローブ電流I
pの積で近似できる。
【0067】
図12から求められる特定のプローブ電流I
p(
図12のプローブ電流Ip3)は、信号電子検出率が急激に減少する電圧に対応する。したがって、エネルギーフィルタ200を用いない場合には電圧20[V]を特定のプローブ電流I
pで除した値がおおよそのコンタクト抵抗Rとなる。エネルギーフィルタ200を用いる場合には、20[V]のかわりに、20[V]から閾値電圧を差し引いた電圧を用いて特定のプローブ電流I
pで除算すればよい。すなわち、制御装置115は、特定のプローブ電流I
pまたはコンタクト抵抗Rをパタンの導通特性として算出することができる。
【0068】
信号電子検出率が低下する電圧を20[V]と近似したが制御装置115は、
図13のスペクトル特性1300を実験やシミュレーションを用いてより正確に取得し、そこから信号電子検出率の低下電圧を決定してもよい。また、上記の方法では試料107から実効的に放出される電流量I
eがプローブ電流I
pと同じであると近似したが、実験やシミュレーションを用いてより正確に流量I
eを決定してもよい。
【0069】
また、制御装置115は、ステップS801にてスキャン速度とプローブ電流の両方を変化させるようN個の画像取得条件を設定し、ステップS804で輝度のスキャン速度依存性1100から電荷リークの緩和時間Tすなわちコンタクト抵抗Rと寄生容量Cの積RCを求め、また、輝度のプローブ電流依存性1200からコンタクト抵抗Rを求めることで、コンタクト抵抗Rと寄生容量Cの両方を求めることが可能となる。
【0070】
なお、実施例1では画像取得条件数Nをあらかじめ定めて実施する方法について説明したが、実施方法は上記に限られない。たとえば、制御装置115は、1画像取得条件ごとにステップS802からS804を繰り返すことで
図11または
図12にデータ(スキャン速度およびプローブ電流)を追加する。その後、制御装置115は、ステップS804における導通特性の評価に十分なデータが得られた時点、すなわち、
図11や
図12のプロットで特定のスキャン速度や特定のプローブ電流を確認できた時点で、ステップS802からS804の繰り返しを中止する。これにより、効率的な検査を実行することができる。
【0071】
また、N個の画像取得条件で得られたデータではステップS804における導通特定の評価が十分に達成できない場合には、さらに別の画像取得条件を追加して、制御装置115は、再度ステップS802およびS803を繰り返してもよい。また別の方法として、制御装置115は、まず画像取得条件を粗く変化させてステップS804で特定のスキャン速度や特定のプローブ電流をおおまかに見積もり、その条件に近い範囲で画像取得条件を細かく変化させて実施例1を繰り返し、特定のスキャン速度や特定のプローブ電流を高精度に決定することも有効である。
【0072】
なお、検査対象となる試料107が
図7に示したような試料107である場合、
図8のステップS803において、制御装置115は、下段のパタン501に対応する領域のみの実測プロファイルを抽出すればよい。これにより、
図5に示した試料107と同様に、導通特性を算出することができる。
【0073】
このように、実施例1によれば、パタン501の導通特性として緩和時間Tを算出することができる。したがって、コンタクト抵抗Rと寄生容量Cのいずれか一方を仮定するか、別の手法で計測または推定することで、他方の値を求めることができる。これにより、たとえば、半導体デバイスの導通検査において、単なる良/不良の判定だけでなく、導通は取れているもののコンタクト抵抗Rが大きい場合などを検出することができ、より精度の高い検査が可能となる。また、寄生容量Cの大きさから半導体回路のどの部分で導通不良が発生しているか推定することができる。
【実施例2】
【0074】
実施例2について説明する。実施例1の制御装置115は、パタン501の導通特性として緩和時間Tを求め、コンタクト抵抗Rと寄生容量Cのいずれか一方を仮定するか、別の手法で計測または推定することで、他方の値を求める例について説明した。これに対し、実施例2の制御装置115は、シミュレーションを適用することにより、コンタクト抵抗Rおよび寄生容量Cを算出する。以下、詳細に説明する。なお、ここでは実施例2の内容を中心に説明するため、実施例1と同一内容については、同一符号、同一ステップ番号を付し、その説明を省略する。
【0075】
<パタン501の導通特性算出処理手順例>
図15は、制御装置115によるパタンの導通特性算出処理手順例を示すフローチャートである。
図15のフローチャートに示す処理は、具体的には、たとえば、
図3に示した記憶デバイス302に記憶されたプログラムをプロセッサ301に実行させることにより実現される。制御装置115は、ステップS801、S802を実行した後、ステップS803およびS1504を並列実行する。
【0076】
ステップS1504では、制御装置115は、シミュレーションによりモデルプロファイルを生成する(ステップS1504)。ここで、モデルプロファイルとは、コンタクト抵抗Rと寄生容量Cとをパラメータとして仮定して、ステップS801にて設定したN個の画像取得条件で得られる実測プロファイルを再現するように計算したプロファイルである。制御装置115は、様々なコンタクト抵抗Rや寄生容量Cを仮定した場合について計算を実行することになる。
【0077】
図16は、モデルプロファイル例を示す説明図である。
図9は、取得条件数NがN=3個、コンタクト抵抗Rが4通り(100[GΩ]、200[GΩ]、400[GΩ]、800[GΩ])、寄生容量Cが4通り(1〜4[aF])とした画像のモデルプロファイルである。
【0078】
図15に戻り、制御装置115は、S803で取得した実測プロファイルとステップS1504で計算した複数のモデルプロファイルとを比較し、コンタクト抵抗Rおよび寄生容量Cを算出する。たとえば、制御装置115は、実測プロファイルが
図10のような形状をしていた場合、
図16のモデルプロファイル群の中で、コンタクト抵抗R=200[GΩ]、寄生容量C=2[aF]のモデルプロファイルが最も近い形状をしていると判断する。したがって、制御装置115は、パタン501の導通特性として、コンタクト抵抗R=200[GΩ]、寄生容量C=2[aF]と決定することができる。
【0079】
実測プロファイルと形状が最も良く一致するモデルプロファイルを決定する方法は、
図10および
図16のようにプロット表示して、SEM100の操作者に選択させるようにしてもよい。
【0080】
また、N個の実測プロファイルをN行の行列とし、同様にN個のモデルプロファイルをN行の行列として、制御装置115は、これらの行列間の類似度を評価する指標値を算出し、最も類似しているモデルプロファイルを選ぶ方法でもよい。具体的には、たとえば、制御装置115は、コンタクト抵抗Rおよび寄生容量Cの組み合わせごとに、N個の実測プロファイル(スキャン位置を示す横軸でプロットしたデータ数をMとする)についてN行M列の行列(以下、実測行列)を作成し、同様に、N個のモデルプロファイルについてもN行M列の行列(以下、モデル行列)を作成する。
【0081】
制御装置115は、コンタクト抵抗Rおよび寄生容量Cの組み合わせごとに、実測行列とモデル行列との間の類似度を算出する。具体的には、たとえば、制御装置115は、実測行列とモデル行列との間で、同一要素の差分の二乗和を、そのコンタクト抵抗Rおよび寄生容量Cの組み合わせにおける類似度として算出する。この場合、二乗和が小さいほど、その実測プロファイルとモデルプロファイルとは類似する。制御装置115は、コンタクト抵抗Rおよび寄生容量Cの組み合わせごとに、実測行列とモデル行列との間の類似度を算出した結果、最も類似度(二乗和)が低いコンタクト抵抗Rおよび寄生容量Cの組み合わせを、パタン501の導通特性に決定する。
【0082】
なお、検査対象となる試料107が
図7に示したような試料107である場合、制御装置115は、
図15のステップS803において、下段のパタン501に対応する領域のみの実測プロファイルを抽出し、ステップS1504において、複数のパタンを仮定してシミュレーションを行い、ステップS803でプロファイルを抽出した領域と同一領域のモデルプロファイルを抽出すればよい。これにより、
図5に示した試料107と同様に、導通特性を算出することができる。
【0083】
また、
図15の処理により、
図7の最上段のパタン701のコンタクト抵抗Rと寄生容量Cをあらかじめ制御装置115で求めておき、その後、下段のパタン501に関して
図15の処理を適用する際に、制御装置115は、ステップS1504において、最上段のパタン701のコンタクト抵抗Rと寄生容量Cを固定値とし、下段のパタン501のコンタクト抵抗Rと寄生容量Cをパラメータとして、
図16のような複数のモデルプロファイルを計算してもよい。これにより、下段のパタン501のコンタクト抵抗Rと寄生容量Cを求めることができる。
【0084】
このように、実施例2によれば、コンタクト抵抗Rと寄生容量Cとを推定することができる。したがって、たとえば、半導体デバイスの導通検査において、単なる良/不良の判定だけでなく、導通は取れているもののコンタクト抵抗Rが大きい場合などを検出することができ、より精度の高い検査が可能となる。また、寄生容量Cの大きさから半導体回路のどの部分で導通不良が発生しているか推定することができる。
【実施例3】
【0085】
つぎに、実施例3について説明する。実施例2の制御装置115は、コンタクト抵抗Rおよび寄生容量Cの組み合わせを複数通り設定し、その中から最適なコンタクト抵抗Rおよび寄生容量Cの組み合わせを推定することとした。これに対し、実施例3の制御装置115は、実施例2の
図15のステップS1504において、電子線散乱のモンテカルロシミュレーションを実行してモデルプロファイルを生成する。
【0086】
<モデルプロファイル算出処理手順例>
図17は、制御装置115によるモデルプロファイル算出処理手順例を示すフローチャートである。
図17のフローチャートに示す処理は、具体的には、たとえば、
図3に示した記憶デバイス302に記憶されたプログラムをプロセッサ301に実行させることにより実現される。
【0087】
まず、制御装置115は、パタン501の構造情報の入力を受け付ける(ステップS1701)。パタン501の構造情報は、パタン501の3次元形状、寸法、および材料となる原子の識別情報を含む。ここで、形状は、設計値などのあらかじめ設定した固定値でもよい。また、定性的な形状のみ設定しておき、詳細な寸法は実際の計測値を入力してもよい。
【0088】
制御装置115は、パタン501の寸法を、ステップS802で得られたN枚のSEM画像600のうち、最もパタン501の輝度が高いSEM画像600から計測してもよいし、N枚のSEM画像600から得られた計測値の平均を用いて計測してもよいし、ステップS802とは別に寸法計測に適した画像取得条件で取得したSEM画像600から計測してもよい。制御装置115は、原子ごとに、原子量やその原子に存在する電子の数など、電子線散乱のモンテカルロシミュレーションに必要な原子に関する情報を記憶しており、原子の識別情報が入力されると、その原子に関する情報を特定することができる。
【0089】
つぎに、制御装置115は、試料107に実効的に流入する電流量I
0を算出する(ステップS1702)。具体的には、たとえば、制御装置115は、ステップS1701で設定したパタン501の構造情報を用いて、電子線散乱のモンテカルロシミュレーションを行い、試料107からの放出電子の電流量I
eのスキャン位置依存性を求める。試料107に実効的に流入する電流量I
0は、試料107からの放出電子の電流量I
eと入射電子線102の電流量すなわちプローブ電流(量)I
pとの差として求められる。
【0090】
図18は、試料107に実効的に流入する電流量I
0のスキャン位置依存性を示すグラフである。
図18において、横軸が入射電子線102のスキャン位置、縦軸が試料107に実効的に流入する電流量(流入電流量)I
0である。スキャン位置依存性1800によれば、パタン501の存在位置で試料107に実効的に流入する電流量I
0が増加することがわかる。
図18では表現しなかったが、試料107から放出される信号電子400の電流量が小さい場合には実効的に流入する電流量I
0は負になる場合がある。なお、
図7のように入射角θで入射電子線102を入射したり、複数のパタン501が存在する場合には、制御装置115は、それらを考慮してモンテカルロシミュレーションを実行すればよい。
【0091】
図17に戻り、制御装置115は、コンタクト抵抗Rと寄生容量Cをパラメータとし、ステップS1702で求めた流入電流量I
0のスキャン位置依存性1800から、パタン501の表面電位Vの時間的変化を算出する(ステップS1702)。
【0092】
図19は、流入電流量I
0の時間的変化を示すグラフである。
図19において、横軸が入射電子線102のスキャン時間、縦軸が試料107に実効的に流入する電流量(流入電流量)I
0である。流入電流量I
0の時間的変化1900によれば、パタン501をスキャンした時間帯で試料107に実効的に流入する電流量I
0が増加することがわかる。制御装置115は、具体的には、たとえば、流入電流量I
0のスキャン位置依存性1800の横軸を入射電子線102のスキャン速度で除することで、流入電流量I
0の時間的変化1900に変換する。そして、制御装置115は、
図19で求めた流入電流量I
0の時間的変化1900から、パタン501の表面電位Vの時間的変化を算出する。
【0093】
図20は、パタン501の表面電位Vの時間的変化を示すグラフである。
図20において、横軸が入射電子線102のスキャン時間、縦軸がパタン501の表面電位Vである。パタン501の表面電位Vの時間的変化2000によれば、パタン501をスキャンした時間帯で試料107の表面への帯電が増加することがわかる。パタン501の表面電位Vの時間的変化2000は、下記式(1)で求められる。
【0094】
図21は、ナノワイヤ形状の微細パタン501を表現する等価回路の一例を示す回路図である。パタン501において、コンタクト抵抗Rと寄生容量Cとが並列接続されて接地されている。パタン501の表面電位はVであり、流入電流量I
0の電流が流れる。表面電位Vの時間微分dV/dtは下記式(1)で求めることができる。なお、コンタクト抵抗Rと寄生容量Cは、たとえば、
図16に示したような任意の組み合わせが適用される。
【0095】
dV/dt=(I
0R−V)/(CR)・・・(1)
【0096】
上記式(1)を積分することで表面電位Vの時間的変化2000が得られる。具体的には、たとえば、コンタクト抵抗Rと寄生容量Cとの組み合わせごとに、表面電位Vの時間的変化2000が得られる。
【0097】
図17に戻り、制御装置115は、コンタクト抵抗Rと寄生容量Cとの組み合わせごとに、信号電子検出率に基づいてモデルプロファイルを生成して(ステップS1704)、ステップS1505に移行する。具体的には、たとえば、制御装置115は、ステップS1703で求めた表面電位Vの時間的変化2000から、コンタクト抵抗Rと寄生容量Cとの組み合わせごとに、モデルプロファイルを求める。モデルプロファイルを求めるに際し、制御装置115は、
図14の表面電位依存性1400を用いて、信号電子検出率の時間的変化を得ることができる。
【0098】
図22は、信号電子検出率の時間的変化を示すグラフである。
図22において、横軸が入射電子線102のスキャン時間、縦軸が信号電子検出率である。信号電子検出率の時間的変化2200によれば、パタン501をスキャンした時間帯で信号電子検出率が増加することがわかる。
【0099】
制御装置115は、さらに、
図22の横軸の時間にスキャン速度を乗じることで、信号検出率の時間的変化2200を、信号電子検出率のスキャン位置依存性に変換する。
【0100】
図23は、信号電子検出率のスキャン位置依存性を示すグラフである。
図23において、横軸が入射電子線102のスキャン位置、縦軸が信号電子検出率である。信号電子検出率のスキャン位置依存性2300によれば、パタン501をスキャンした位置で信号電子検出率が増加することがわかる。信号電子検出率と輝度は、近似的に比例関係にあるとみなしてよい。したがって、
図23に示した信号電子検出率のスキャン位置依存性2300は輝度プロファイルと見なすことができる。
【0101】
このようにして、制御装置115は、計算により求めた輝度プロファイル、すなわちモデルプロファイルを、コンタクト抵抗Rと寄生容量Cとの組み合わせごとに得ることができる。さらにより高精度に輝度プロファイルを算出するためには、制御装置115は、信号電子検出率と輝度との関係についての較正曲線を別途取得しておき、計算した信号電子数からSEM画像600における輝度を算出することが望ましい。
【0102】
図17で用いる表面電位と信号検出率との関係については、制御装置115がシミュレーションで計算してもよい。また、試料107の電位を変化させる実験を行って実測されてもよい。また、制御装置115が、エネルギーフィルタ200を用いて閾値電圧以下の加速電子をフィルタリングすることで閾値電圧と同じ表面電位となっている状態を模擬し、閾値電圧を変化させたときの輝度の変化を用いて算出してもよい。
【0103】
実施例3は、制御装置115が電子線散乱のモンテカルロシミュレーションを用いてモデルプロファイルを1個ずつ算出する方法を記述したが、パタン501の寸法の変動が小さい場合などには、あらかじめいくつかの代表的な寸法でモンテカルロシミュレーションを行ってモデルプロファイルを求めてライブラリとして保持しておけばよい。この場合、個々のモデルプロファイルを求める際には、制御装置115は、寸法値を元に当該ライブラリのデータを内挿して推定することで、計算時間を短縮させてもよい。
【0104】
このように、実施例3によれば、コンタクト抵抗Rと寄生容量Cとを、実施例2よりも高精度に推定することができる。したがって、たとえば、半導体デバイスの導通検査において、単なる良/不良の判定だけでなく、導通は取れているもののコンタクト抵抗Rが大きい場合などを検出することができ、より精度の高い検査が可能となる。また、寄生容量Cの大きさから半導体回路のどの部分で導通不良が発生しているか推定することができる。