特許第6937376号(P6937376)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6937376
(24)【登録日】2021年9月1日
(45)【発行日】2021年9月22日
(54)【発明の名称】印刷用原版、及び印刷用原版積層体
(51)【国際特許分類】
   B41N 3/00 20060101AFI20210909BHJP
   B41N 1/14 20060101ALI20210909BHJP
   B41C 1/10 20060101ALI20210909BHJP
   G03F 7/00 20060101ALI20210909BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20210909BHJP
   G03F 7/032 20060101ALI20210909BHJP
   G03F 7/095 20060101ALN20210909BHJP
【FI】
   B41N3/00
   B41N1/14
   B41C1/10
   G03F7/00 503
   G03F7/004 505
   G03F7/032
   !G03F7/095
【請求項の数】12
【全頁数】107
(21)【出願番号】特願2019-539693(P2019-539693)
(86)(22)【出願日】2018年8月31日
(86)【国際出願番号】JP2018032508
(87)【国際公開番号】WO2019045084
(87)【国際公開日】20190307
【審査請求日】2019年11月20日
(31)【優先権主張番号】特願2017-167854(P2017-167854)
(32)【優先日】2017年8月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】特許業務法人航栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】嶋中 修知
(72)【発明者】
【氏名】池山 裕介
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 駿平
【審査官】 中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−333704(JP,A)
【文献】 特開2004−017303(JP,A)
【文献】 特開平08−106183(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/002641(WO,A1)
【文献】 米国特許第04272569(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41N 3/00
B41N 1/14
B41C 1/10
G03F 7/00
G03F 7/004
G03F 7/032
G03F 7/095
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム支持体上の印刷面側にポリマーを含有する層(但し、耐水性支持体の一面上に形成され、かつ酸化亜鉛と樹脂を主成分として含む画像受容層を除く)を有し、
前記支持体を挟んで前記ポリマーを含有する層と反対の非印刷面側に平板粒子を含有する層(但し、層状鉱物粒子モンモリロナイトと多孔質アルミノシリケート粒子を含む塗布液によるバックコート層を除く)を有する印刷用原版(但し、ウエブ形支持体又はプレート形支持体と、該支持体の前面上の放射感受性層と、該支持体の背面上の連続層を有するオフセット印刷版の製造のための記録材料であって、背面に配置された層が少なくとも55℃のガラス転移温度Tg及び10Ω又はそれ以下の表面抵抗(23℃及び50%相対湿度でスプリングタング電極を使用してDIN 53422に従って決定された)を有することを特徴とする記録材料を除く)。
【請求項2】
前記平板粒子の厚みが前記平板粒子を含有する層の厚みよりも小さい、請求項1に記載の印刷用原版。
【請求項3】
前記平板粒子がケイ素原子及び酸素原子を含有する平板粒子である、請求項1又は2に記載の印刷用原版。
【請求項4】
前記ケイ素原子及び酸素原子を含有する平板粒子がスメクタイト、ベントナイト、又は雲母である、請求項3に記載の印刷用原版。
【請求項5】
前記平板粒子を含有する層が、ポリマー、又は、有機金属化合物若しくは無機金属化合物を加水分解及び重縮合させて得られる金属酸化物を含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の印刷用原版。
【請求項6】
前記平板粒子を含有する層に、更に前記平板粒子以外の粒子を含有し、前記平板粒子以外の粒子の平均粒子径が0.1μm以上であり、かつ、前記平板粒子を含有する層の厚みよりも大きい、請求項1〜5のいずれか1項に記載の印刷用原版。
【請求項7】
前記平板粒子以外の粒子が有機樹脂粒子、無機粒子、又は有機−無機複合粒子である、請求項6に記載の印刷用原版。
【請求項8】
前記平板粒子を含有する層の算術平均高さSaが0.1〜20μmである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の印刷用原版。
【請求項9】
前記ポリマーを含有する層が、赤外線吸収剤、重合開始剤、重合性化合物、及び、粒子形状を有する高分子化合物を含む画像記録層である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の印刷用原版。
【請求項10】
前記画像記録層に含まれる粒子形状を有する高分子化合物が、疎水性主鎖を有し、i)前記疎水性主鎖に直接的に結合されたペンダントシアノ基を有する構成ユニット、及び、ii)親水性ポリアルキレンオキシドセグメントを含むペンダント基を有する構成ユニットの両方を含む、請求項9に記載の印刷用原版。
【請求項11】
前記ポリマーを含有する層が、赤外線吸収剤、及び、熱可塑性ポリマー粒子を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の印刷用原版。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の印刷用原版を複数枚積層してなり、前記ポリマーを含有する層を有する面における最外層と、前記平板粒子を含有する層を有する面における最外層とを直接接触させて積層させた印刷用原版積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平版印刷版原版及び捨て版原版を含む印刷用原版、及び印刷用原版積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
平版印刷版原版は、しばしば、複数枚重ね合わせた積層体として保管、搬送される。この積層体においては、通常、平版印刷版原版の集積ズレ防止、平版印刷版原版同士の接着防止、平版印刷版原版の記録層側表面の擦れ傷防止などの目的で、平版印刷版原版の間に合紙が挿入される。しかしながら、合紙の使用は、それ自体、コストアップ、廃棄処理などの問題を含んでおり、また、露光工程の前に取り除く必要があるため、製版工程の負荷、合紙剥離不良トラブル発生のリスクともなる。更に、合紙を取り除く際には、平版印刷版原版の記録層側表面が損傷を受けないよう配慮が必要となる。従って、合紙をなしに積層可能な平版印刷版原版の開発が求められている。
【0003】
例えば、支持体上の一方の側にポリマーを含有する層、他方の側に有機金属化合物又は無機金属化合物を加水分解及び重縮合させて得られる金属酸化物及び微粒子を含む層を有する印刷用原版であって、上記微粒子の平均粒子径が0.3μm以上であり、且つ、上記金属酸化物及び微粒子を含む層の厚さより大きい印刷用原版(特許文献1)、ガラス転移温度(Tg)35℃以上の有機重合体物質より成り、顔料着色された粒子を含有するバックコート層が設けられたオフセット平版印刷版(特許文献2)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開2017−002641号
【特許文献2】日本国特開2002−46363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2においても、平版印刷版原版及び捨て版原版を含む印刷用原版を積層する場合、合紙なしでも、印刷用原版の裏面層の傷つき、剥がれについて、更なる改善が求められていた。
【0006】
本発明の目的は、平版印刷版原版及び捨て版原版を含む印刷用原版を積層する場合、合紙なしでも、裏面層の傷つき、剥がれを防止できる印刷用原版を提供することである。また、本発明の目的は、上記印刷用原版の積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記の構成を含む。
(1)
アルミニウム支持体上の印刷面側にポリマーを含有する層(但し、耐水性支持体の一面上に形成され、かつ酸化亜鉛と樹脂を主成分として含む画像受容層を除く)を有し、
上記支持体を挟んで上記ポリマーを含有する層と反対の非印刷面側に平板粒子を含有する層(但し、層状鉱物粒子モンモリロナイトと多孔質アルミノシリケート粒子を含む塗布液によるバックコート層を除く)を有する印刷用原版(但し、ウエブ形支持体又はプレート形支持体と、該支持体の前面上の放射感受性層と、該支持体の背面上の連続層を有するオフセット印刷版の製造のための記録材料であって、背面に配置された層が少なくとも55℃のガラス転移温度Tg及び10Ω又はそれ以下の表面抵抗(23℃及び50%相対湿度でスプリングタング電極を使用してDIN 53422に従って決定された)を有することを特徴とする記録材料を除く)
(2)
上記平板粒子の厚みが上記平板粒子を含有する層の厚みよりも小さい、(1)に記載の印刷用原版。
(3)
上記平板粒子がケイ素原子及び酸素原子を含有する平板粒子である、(1)又は(2)に記載の印刷用原版。
(4)
上記ケイ素原子及び酸素原子を含有する平板粒子がスメクタイト、ベントナイト、又は雲母である、(3)に記載の印刷用原版。
(5)
上記平板粒子を含有する層が、ポリマー、又は、有機金属化合物若しくは無機金属化合物を加水分解及び重縮合させて得られる金属酸化物を含有する、(1)〜(4)のいずれか1項に記載の印刷用原版。
(6)
上記平板粒子を含有する層に、更に上記平板粒子以外の粒子を含有し、上記平板粒子以外の粒子の平均粒子径が0.1μm以上であり、かつ、上記平板粒子を含有する層の厚みよりも大きい、(1)〜(5)のいずれか1項に記載の印刷用原版。
(7)
上記平板粒子以外の粒子が有機樹脂粒子、無機粒子、又は有機−無機複合粒子である、(6)に記載の印刷用原版。
(8)
上記平板粒子を含有する層の算術平均高さSaが0.1〜20μmである、(1)〜(7)のいずれか1項に記載の印刷用原版。
(9)
上記ポリマーを含有する層が、赤外線吸収剤、重合開始剤、重合性化合物、及び、粒子形状を有する高分子化合物を含む画像記録層である、(1)〜(8)のいずれか1項に記載の印刷用原版。
(10)
上記画像記録層に含まれる粒子形状を有する高分子化合物が、疎水性主鎖を有し、i)上記疎水性主鎖に直接的に結合されたペンダントシアノ基を有する構成ユニット、及び、ii)親水性ポリアルキレンオキシドセグメントを含むペンダント基を有する構成ユニットの両方を含む、(9)に記載の印刷用原版。
(11)
上記ポリマーを含有する層が、赤外線吸収剤、及び、熱可塑性ポリマー粒子を含む、(1)〜(8)のいずれか1項に記載の印刷用原版。
(12)
(1)〜(11)のいずれか1項に記載の印刷用原版を複数枚積層してなり、上記ポリマーを含有する層を有する面における最外層と、上記平板粒子を含有する層を有する面における最外層とを直接接触させて積層させた印刷用原版積層体。
本発明は、上記(1)〜(12)に係る発明であるが、以下、それ以外の事項(例えば、下記〔1〕〜〔12〕)についても記載している。
【0008】
〔1〕
支持体上の印刷面側にポリマーを含有する層を有し、
上記支持体を挟んで上記ポリマーを含有する層と反対の非印刷面側に平板粒子を含有する層を有する印刷用原版。
〔2〕
上記平板粒子の厚みが上記平板粒子を含有する層の厚みよりも小さい、〔1〕に記載の印刷用原版。
〔3〕
上記平板粒子がケイ素原子及び酸素原子を含有する平板粒子である、〔1〕又は〔2〕に記載の印刷用原版。
〔4〕
上記ケイ素原子及び酸素原子を含有する平板粒子がスメクタイト、ベントナイト、又は雲母である、〔3〕に記載の印刷用原版。
〔5〕
上記平板粒子を含有する層が、ポリマー、又は、有機金属化合物若しくは無機金属化合物を加水分解及び重縮合させて得られる金属酸化物を含有する、〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の印刷用原版。
〔6〕
上記平板粒子を含有する層に、更に上記平板粒子以外の粒子を含有し、上記平板粒子以外の粒子の平均粒子径が0.1μm以上であり、かつ、上記平板粒子を含有する層の厚みよりも大きい、〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載の印刷用原版。〔7〕
上記平板粒子以外の粒子が有機樹脂粒子、無機粒子、又は有機−無機複合粒子である、〔6〕に記載の印刷用原版。
〔8〕
上記平板粒子を含有する層の算術平均高さSaが0.1〜20μmである、〔1〕〜〔7〕のいずれか1項に記載の印刷用原版。
〔9〕
上記ポリマーを含有する層が、赤外線吸収剤、重合開始剤、重合性化合物、及び、粒子形状を有する高分子化合物を含む画像記録層である、〔1〕〜〔8〕のいずれか1項に記載の印刷用原版。
〔10〕
上記画像記録層に含まれる粒子形状を有する高分子化合物が、疎水性主鎖を有し、i)上記疎水性主鎖に直接的に結合されたペンダントシアノ基を有する構成ユニット、及び、ii)親水性ポリアルキレンオキシドセグメントを含むペンダント基を有する構成ユニットの両方を含む、〔9〕に記載の印刷用原版。
〔11〕
上記ポリマーを含有する層が、赤外線吸収剤、及び、熱可塑性ポリマー粒子を含む、〔1〕〜〔8〕のいずれか1項に記載の印刷用原版。
〔12〕
〔1〕〜〔11〕のいずれか1項に記載の印刷用原版を複数枚積層してなり、上記ポリマーを含有する層を有する面における最外層と、上記平板粒子を含有する層を有する面における最外層とを直接接触させて積層させた印刷用原版積層体。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、平版印刷版原版及び捨て版原版を含む印刷用原版を積層する場合、合紙なしでも、裏面層の傷つき、剥がれを防止できる印刷用原版を提供することができる。また、上記印刷用原版の積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】陽極酸化処理に用いられる陽極酸化処理装置の概略図である。
図2】アルミニウム支持体の作製における機械粗面化処理に用いられるブラシグレイニングの工程の概念を示す側面図である。
図3】アルミニウム支持体の作製における電気化学的粗面化処理に用いられる交番波形電流波形図の一例を示すグラフである。
図4】交流を用いた電気化学的粗面化処理におけるラジアル型セルの一例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本明細書において、「印刷用原版」の用語は、平版印刷版原版及び印刷用捨て版原版を包含する。また、「印刷版」の用語は、印刷用原版を、必要により、露光、現像などの操作を経て作製された平版印刷版及び印刷用捨て版を包含する。印刷用捨て版原版の場合には、必ずしも、露光、現像の操作は必要ない。
【0012】
本発明に係る印刷用原版は、支持体上の印刷面側にポリマーを含有する層を有し、
上記支持体を挟んで上記ポリマーを含有する層と反対の非印刷面側に平板粒子を含有する層を有する印刷用原版である。
本発明に係る印刷用原版の1つの特徴は、支持体を挟んでポリマーを含有する層と反対の非印刷面側に平板粒子を含有する層を有することである。
【0013】
〔平板粒子を含有する層〕
本発明に係る印刷用原版は、支持体を挟んでポリマーを含有する層と反対の非印刷面側(以下、単に「非印刷面側」ともいう)に平板粒子を含有する層(以下、「バックコート層」、「裏面層」ともいう)を有する。
本発明に係る印刷用原版のバックコート層の平板粒子を含有することで、バックコート層の表面が硬くなるため、印刷用原版の製造加工工程やセッター、ベンダー、ストッカー製版工程での搬送、製版した印刷版を印刷機に運搬、取り付ける工程で、裏面層の傷つき、剥がれを防止できると考えられる。
本発明は、バックコート層に平板粒子を含む態様、及びバックコート層に平板粒子及び上記平板粒子以外の粒子を含む態様を包含するが、どちらの態様においてもバックコート層の表面が硬くなるため、上記の通り、裏面層の傷つき、剥がれを防止できると考えられる。
【0014】
(平板粒子)
上記平板粒子は、アスペクト比が5以上のものであれば任意の粒子を用いることができる。
アスペクト比は好ましくは10以上であり、より好ましくは50以上、特に好ましくは100以上である。
ここで、アスペクト比は粒子の厚みに対する長径の比で定義される。アスペクト比が大きい程、得られる効果が大きい。
具体的には、上記アスペクト比(Z)は、Z=L/aなる関係で示される。Lは、粒子の長径である。Lは、溶媒中に分散させながら、動的光散乱式粒径分布測定装置(堀場製作所社製,LB−500型)を用いて動的光散乱法により求めた粒子の数平均粒径を指す。
aは、粒子の単位厚みである。単位厚みaは、粉末X線回折法によって粒子の回折ピークを測定して算出することができる値である。粉末X線回折装置(株式会社リガク製,SmartLab SE)で測定することができる。
【0015】
(平板粒子の厚み)
アスペクト比が5以上を満たす平板粒子の厚みは、上記平板粒子を含有する層の厚みよりも小さいことが好ましい。
平板粒子の厚みが、平板粒子を含有する層の厚みよりも小さいことで平板粒子の脱落が起こり難く、工程を汚染しないことから好ましい。
上記平板粒子の厚みは、特に限定されないが、100nm以下が好ましく、50nm以下がより好ましく、10nm以下が更に好ましい。
なお、上記平板粒子の厚みは、上記平板粒子の単位厚み(a)で表される。
【0016】
(平板粒子の組成)
平板粒子には、グラファイトのようなケイ素原子及び酸素原子を含まない平板粒子や、雲母、モンモリロナイトを主成分とするベントナイト、スメクタイトに分類されているモンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチーブンナイト及び、バーミキュライトグループ、イライトグループなどのようなケイ素原子及び酸素原子を含む平板粒子が挙げられるが、これらに限ったものではない。
上記平板粒子としては、ケイ素原子及び酸素原子を含む平板粒子が好ましく、スメクタイト、ベントナイト、又は雲母が更に好ましい。
【0017】
雲母とは、例えば、一般式:A(B,C)2-5410(OH,F,O)2〔ただし、Aは、K、Na、Caのいずれか、B及びCは、Fe(II)、Fe(III)、Mn、Al、Mg、Vのいずれかであり、Dは、Si又はAlである。〕で表される天然雲母、合成雲母等の雲母群が挙げられる。
【0018】
雲母は、天然雲母としては白雲母、ソーダ雲母、金雲母、黒雲母及び鱗雲母が挙げられる。合成雲母としては、フッ素金雲母KMg3(AlSi310)F2、カリ四ケイ素雲母KMg2.5(Si410)F2等の非膨潤性雲母、及びNaテトラシリリックマイカNaMg2.5(Si410)F2、Na又はLiテニオライト(Na,Li)Mg2Li(Si410)F2等の膨潤性雲母等が挙げられる。
【0019】
本発明においては、雲母の中でも、フッ素系の膨潤性雲母が特に有用である。即ち、この膨潤性合成雲母は、100〜150nm(10〜15Å)程度の厚さの単位結晶格子層からなる積層構造を有し、格子内金属原子置換が他の粘度鉱物より著しく大きい。その結果、格子層は正電荷不足を生じ、それを補償するために層間にNa+、Ca2+、Mg2+等の陽イオンを吸着している。これらの層間に介在している陽イオンは交換性陽イオンと呼ばれ、いろいろな陽イオンと交換する。特に、層間の陽イオンがLi+、Na+の場合、イオン半径が小さいため層状結晶格子間の結合が弱く、水により大きく膨潤する。その状態でシェアーをかけると容易に劈開し、水中で安定したゾルを形成する。膨潤性合成雲母はこの傾向が強く、本発明において有用であり、特に、均一な品質の粒子が入手容易であるという観点からも膨潤性合成雲母が好ましく用いられる。
【0020】
ベントナイトやスメクタイトに含まれているモンモリロナイト:Si(Al3.34Mg0.66)O20(OH)は厚みが1nm程度、幅が50〜1000nm程度の薄い平板の結晶の積層構造体である。層間にはNa、Ca2+、K、Mg2+の陽イオンが介在している。層間イオンにNaイオンを多く含むモンモリロナイトは、Naイオンによる単位層同士の電気的引力が弱いため、水に分散させると、Naイオンと水分子が水和して膨潤、やがて単位層まで分離する。その状態でシェアーをかけると容易に劈開し、水中で安定したゾルを形成する。
【0021】
雲母、ベントナイト、スメクタイトの層間陽イオンは、他の陽イオンと簡単にイオン交換することが可能である。陽イオンを第4級アンモニウムイオンなどの陽イオンを交換することで、水に分散しにくくなる代わりに、有機溶媒と親和性を示して分散する。
【0022】
具体的には、雲母、ベントナイト、スメクタイトとしては、片倉コープアグリ(株)製の雲母のソマシフMEB−3、クニミネ工業(株)製のベントナイトのクニピア−F、クニピア−G、クニピア−G4、クニピア−G10、スメクタイトのスメクトン−SA、スメクトン−ST、スメクトン−SW、スメクトン−SWN、スメクトン−SWF、ベントナイトのモイストナイト−U、モイストナイト−S、モイストナイト−HCなどが挙げられる。
【0023】
上述の通り、雲母、ベントナイト、スメクタイトの層間陽イオンは、他の陽イオンと簡単にイオン交換することが可能である。陽イオンを第4級アンモニウムイオンなどの陽イオンを交換することで、水に分散しにくくなる代わりに、有機溶媒と親和性を示して分散できるようになる。具体的には、片倉コープケミカル(株)製の有機化雲母のソマシフMAE、ソマシフMTE、ソマシフMEE、クニミネ工業(株)製の有機化ベントナイトのクニビス-110、クニビス-127、モイストナイト-WO、有機化スメクタイトのスメクトン-SAN、スメクトン-SAN-P、スメクトン-STN、スメクトン-SENなどが挙げられ、それぞれ分散に適した有機溶媒の種類に違いがある。
【0024】
平板粒子を含有する層における平板粒子の含有量は、1〜1000mg/mが好ましく、5〜800mg/mがより好ましく、10〜600mg/mが更に好ましい。
上記平板粒子は、1種で使用しても良く、また、2種以上組み合わせて使用しても良い。
【0025】
上記平板粒子を含有する層は、ポリマー、又は、有機金属化合物若しくは無機金属化合物を加水分解及び重縮合させて得られる金属酸化物を含有することが好ましい。
【0026】
(ポリマー)
平板粒子を含有する層は、ポリマーを含有することが好ましい。平板粒子を含有する層には、層形成するベースポリマーとしての有機ポリマーを含有することが好ましい。均一な皮膜を形成し、支持体との密着性が高いものが好ましい。
以下、ベースポリマーとして好ましく用いられるポリマーを挙げるが、これに限定されるものではない。
例えば、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリアミド、ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリウレア、ポリイミド、ポリシロキサン、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、塩素化ポリエチレン、アルキルフェノールのアルデヒド縮合樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、アクリル系樹脂及びこれらの共重合樹脂、ヒドロキシセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール樹脂、塩化ビニリデン共重合樹脂、フェノキシ樹脂、セルロースアセテート、カルボキシメチルセルロース、ノボラック樹脂、ピロガロールアセトン樹脂等が適している。
【0027】
平板粒子を含有する層全固形分に対するポリマーの含有量としては、99.99〜50質量%が好ましく、99.9〜60質量%であることがより好ましく、99.5〜70質量%であることが特に好ましい。
【0028】
(有機金属化合物又は無機金属化合物を加水分解及び重縮合させて得られる金属酸化物)
平板粒子を含有する層は、有機金属化合物又は無機金属化合物を加水分解及び重縮合させて得られる金属酸化物を含むことが好ましい。
【0029】
上記有機金属化合物又は無機金属化合物を加水分解及び重縮合させて得られる金属酸化物(以下、単に金属酸化物とも云う)は、有機金属化合物又は無機金属化合物を水及び有機溶媒中で、酸又はアルカリなどの触媒で加水分解及び縮重合させて得られる、いわゆるゾル−ゲル反応液であることが好ましい。
有機金属化合物又は無機金属化合物としては、例えば、金属アルコキシド、金属アセチルアセトネート、金属酢酸塩、金属シュウ酸塩、金属硝酸塩、金属硫酸塩、金属炭酸塩、金属オキシ塩化物、金属塩化物及びこれらを部分加水分解してオリゴマー化した縮合物が挙げられる。
【0030】
金属アルコキシドは、式M(OR)(式中、Mは金属元素、Rはアルキル基、nは金属元素の酸化数を表す)で表される化合物である。具体例としては、Si(OCH、Si(OC、Si(OC、Si(OC、Al(OCH、Al(OC、Al(OC、Al(OC、B(OCH、B(OC、B(OC、B(OC、Ti(OCH、Ti(OC、Ti(OC、Ti(OC、Zr(OCH、Zr(OC、Zr(OC、Zr(OCなどが挙げられ、その他、Ge、Li、Na、Fe、Ga、Mg、P、Sb、Sn、Ta、Vなどの原子のアルコキシドが挙げられる。さらに、CHSi(OCH、CSi(OCH、CHSi(OC、CSi(OCなどのモノ置換珪素アルコキシドも用いられる。
【0031】
有機金属化合物又は無機金属化合物のなかでは、金属アルコキシドが反応性に富み、金属− 酸素の結合からできた重合体を生成しやすく好ましい。それらのうち、Si(OCH、Si(OC、Si(OC、Si(OCなどの珪素のアルコキシド化合物が安価で入手し易く、それから得られる金属酸化物の被覆性が優れており特に好ましい。また、これらの珪素のアルコキシド化合物を部分加水分解して縮合したオリゴマーも好ましい。例えば、約40質量%のSiOを含有する平均5量体のエチルシリケートオリゴマーが挙げられる。
有機金属化合物又は無機金属化合物は、単独、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
さらに、上記珪素のテトラアルコキシ化合物の1個又は2個のアルコキシ基を、アルキル基や反応性を持った基で置換したいわゆるシランカップリング剤を、金属アルコキシドと併用することも好ましい。シランカップリング剤としては、上記珪素のテトラアルコキシ化合物における1個又は2個のアルコキシ基を、炭素数4〜20の長鎖アルキル基、フッ素置換アルキル基などの疎水性の置換基で置換したシランカップリング剤が挙げられ、特にフッ素置換アルキル基を有するシランカップリング剤が好ましい。シランカップリング剤の具体例としては、CFCHCHSi(OCH、CFCFCHCHSi(OCH、CFCHCHSi(OCなどが挙げられ、市販品では、信越化学株式会社製LS−1090等が挙げられる。シランカップリング剤の含有量は好ましくは、バックコート層全固形分の5〜90質量%であり、より好ましく10〜80質量%である。
【0033】
ゾル−ゲル反応液を形成する際に有用な触媒としては、有機、無機の酸及びびアルカリが用いられる。その例としては、塩酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、フッ化水素酸、リン酸、亜リン酸などの無機酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、グリコール酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、フロロ酢酸、ブロモ酢酸、メトキシ酢酸、オキサロ酢酸、クエン酸、シュウ酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸、アスコルビン酸、安息香酸、3,4−ジメトキシ安息香酸のような置換安息香酸、フェノキシ酢酸、フタル酸、ピクリン酸、ニコチン酸、ピコリン酸、ピラジン、ピラゾール、ジピコリン酸、アジピン酸、p−トルイル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキセン−2 ,2−ジカルボン酸、エルカ酸、ラウリン酸、n−ウンデカン酸などの有機酸、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカリが挙げられる。
【0034】
他の好ましい触媒として、スルホン酸類、スルフィン酸類、アルキル硫酸類、ホスホン酸類、およびリン酸エステル類など、具体的には、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルフィン酸、エチル酸、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、リン酸フェニル、リン酸ジフェニルなどの有機酸も使用できる。
【0035】
触媒は単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。触媒量は、原料の金属化合物に対して、好ましくは0.001〜10質量%、より好ましくは0.05〜5質量%である。触媒量がこの範囲であると、ゾル−ゲル反応の開始が良好に行われると共に、急激な反応が抑制され、不均一なゾル−ゲル粒子の発生を防止することができる。
【0036】
ゾル−ゲル反応を開始させるには、適量の水が必要である。水の添加量は原料の金属化合物を完全に加水分解するのに必要な量の0.05〜50倍モルが好ましく、0.5〜30倍モルが好ましい。水の量がこの範囲であると、加水分解が良好に進行する。
【0037】
ゾル−ゲル反応液には溶媒が添加される。溶媒は、原料の金属化合物を溶解し、反応で生じたゾル−ゲル粒子を溶解または分散するものであればよく、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどの低級アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトンなどのケトン類が用いられる。またバックコート層の塗布面質向上等の目的でエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどのグリコール類のモノ又はジアルキルエーテル又は酢酸エステルを用いることができる。溶媒としては、水と混合可能な低級アルコール類が好ましい。ゾル−ゲル反応液は、塗布するのに適した濃度に溶媒で調整されるが、溶媒の全量を最初から反応液に加えると原料が希釈されるためか加水分解反応が進みにくくなる。そこで溶媒の一部をゾル−ゲル反応液に加え、反応が進んだ時点で残りの溶媒を加える方法が好ましい。
【0038】
(他の成分)
平板粒子を含有する層には、可とう性の付与、すべり性の調整や塗布面状を改良する目的で、可塑剤、界面活性剤、その他の添加物を、本発明の効果を損ねない範囲で必要により添加できる。
【0039】
可塑剤としては、例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジオクチルフタレート、オクチルカプリルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジトリデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジアリルフタレートなどのフタル酸エステル類、ジメチルグリコールフタレート、エチルフタリールエチルグリコレート、メチルフタリールエチルグリコレート、ブチルフタリールブチルグリコレート、トリエチレングリコールジカプリル酸エステルなどのグリコールエステル類、トリクレジールホスフェート、トリフェニルホスフェートなどのリン酸エステル類、ジイソブチルアジペート、ジオクチルアジペート、ジメチルセバケート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルマレエートなどの脂肪族二塩基酸エステル類、ポリグリシジルメタクリレート、クエン酸トリエチル、グリセリントリアセチルエステル、ラウリン酸ブチルなどが有効である。
【0040】
可塑剤の平板粒子を含有する層の添加量は、平板粒子を含有する層に用いられるポリマーの種類によって異なるが、ガラス転移温度が60℃以下にならない範囲で加えられることが好ましい。
【0041】
界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系及び両性界面活性剤が挙げられる。具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、しょ糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシドなどの非イオン性界面活性剤、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、
【0042】
ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホ琥珀酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩類、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン/ 無水マレイン酸共重合物の部分鹸化物類、オレフィン/無水マレイン酸共重合物の部分鹸化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類などのアニオン界面活性剤、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体などのカチオン性界面活性剤、カルボキシベタイン類、アミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミタゾリン類などの両性界面活性剤が挙げられる。
以上挙げた界面活性剤の中でポリオキシエチレンとあるものは、ポリオキシメチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレンなどのポリオキシアルキレンに読み替えることもでき、それらの界面活性剤もまた包含される。
【0043】
更に好ましい界面活性剤は、分子内にパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系界面活性剤である。フッ素系界面活性剤の例としては、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステルなどのアニオン型、パーフルオロアルキルベタインなどの両性型、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩などのカチオン型及びパーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基及び親水性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基、親水性基及び親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基含有ウレタンなどの非イオン型が挙げられる。
【0044】
界面活性剤は、単独又は2種以上を組み合わせて使用することができ、平板粒子を含有する層の全固形分に対する界面活性剤の含有量は、中に好ましくは0.001〜10質量%、より好ましくは0.01〜5質量%の範囲で添加できる。
【0045】
平板粒子を含有する層がポリマーを含有する場合には、更に、着色のための染料、アルミニウム支持体との密着向上のためのシランカップリング剤、ジアゾニウム塩からなるジアゾ樹脂、有機ホスホン酸、有機リン酸及びカチオン性ポリマー等、更には滑り剤として通常用いられるワックス、高級脂肪酸、高級脂肪酸アミド、ジメチルシロキサンよりなるシリコーン化合物、変性ジメチルシロキサン、ポリエチレン粉末等を適宜加えることができる。
【0046】
平板粒子を含有する層の塗布量は、好ましくは0.01〜30g/m、より好ましくは0.1〜10g/m、特に好ましくは0.2〜5g/mである。
【0047】
(平板粒子以外の粒子)
平板粒子を含有する層は、さらに上記平板粒子以外の粒子(以下、「非平板粒子」ともいう)を含んでいることが好ましい。
非平板粒子を含んでいることで、さらに裏面層に傷つき、剥がれが生じにくいことから好ましい。
ここで、非平板粒子とは、上記の平板粒子の範囲に属さない粒子であれば、任意の粒子を用いることができる。
すなわち、平板粒子以外の粒子のアスペクト比が5未満のものであり、典型的には、1以上である。上記アスペクト比が1〜3のものが好ましく、1〜2のものがより好ましい。
【0048】
平板粒子以外の粒子として、有機樹脂粒子、無機粒子、又は有機−無機複合粒子等を使用することができる。
【0049】
有機樹脂粒子としては、ポリ(メタ)アクリル酸エステル類、ポリスチレン及びその誘導体、ポリアミド類、ポリイミド類、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、などのポリオレフィン類、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエステル類などの合成樹脂からなる粒子、及び、キチン、キトサン、セルロース、架橋澱粉、架橋セルロース等の天然高分子からなる粒子などが好ましく挙げられる。
なかでも、合成樹脂粒子は、粒子サイズ制御の容易さや、表面改質により所望の表面特性を制御し易いなどの利点がある。
【0050】
このような、有機樹脂粒子の製造方法は、PMMAのような比較的に硬い樹脂では、破砕法による粒子化も可能であるが、乳化・懸濁重合法により粒子を合成する方法が、粒子径制御の容易性、精度から好ましく採用されている。
有機樹脂粒子の製造方法は、「超微粒子と材料」日本材料科学会編、裳華房1993年発刊、「微粒子・粉体の作製と応用」川口春馬監修、シーエムシー出版2005年発刊等に詳細に記載されている。
【0051】
有機樹脂粒子は市販品としても入手可能であり、例えば、根上工業製アクリル粒子アートパールJ−6PF、綜研化学株式会社製、架橋アクリル樹脂MX−300、MX−500、MX−1000、MX−1500H、MR−2HG、MR−7HG,MR−10HG、MR−3GSN、MR−5GSN、MR−7G、MR−10G、MR−5C、MR−7GC、スチリル樹脂系のSX−350H、SX−500H、積水化成品工業製アクリル樹脂、MBX−5、MBX−8、MBX−12MBX−15、MBX−20,MB20X−5、MB30X−5、MB30X−8、MB30X−20、SBX−6、SBX−8、SBX−12、SBX−17三井化学製ポリオレフィン樹脂、ケミパールW100、W200、W300、W308、W310、W400、W401、W405、W410、W500、WF640、W700、W800、W900、W950、WP100、などが挙げられる。
【0052】
無機粒子としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、カーボンブラック、グラファイト、TiO2、BaSO4、ZnS、MgCO3、CaCO3、ZnO、CaO、WS2、MoS2、MgO、SnO2、Al23、α−Fe23、α−FeOOH、SiC、CeO2、BN、SiN、MoC、BC、WC、チタンカーバイド、コランダム、人造ダイアモンド、石榴石、ガーネット、珪石、トリボリ、珪藻土、ドロマイトなどが挙げられる。
【0053】
有機−無機複合粒子は、特に限定されないが、無機表面修飾した有機樹脂粒子、又は有機表面修飾した無機粒子が好ましい。
【0054】
無機表面修飾した有機樹脂粒子について、以下にシリカで被覆された有機樹脂粒子(以下、シリカ被覆有機樹脂粒子とも云う)を例として詳細に説明するが、本発明における無機表面修飾した有機樹脂粒子はこれに限定されるものではない。
【0055】
(シリカ被覆有機樹脂粒子)
シリカ被覆有機樹脂粒子は、有機樹脂からなる粒子をシリカで表面被覆した粒子である。コアを構成する有機樹脂粒子は、空気中の湿分や、温度によって、軟化したり、べとついたりすることがないことが好ましい。
【0056】
シリカ被覆有機樹脂粒子の有機樹脂粒子を構成する有機樹脂としては、例えば、ポリアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポシキ系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。
【0057】
シリカ被覆有機樹脂粒子の表面を被覆するシリカ層を形成する材料としては、アルコキシシロキサン系化合物の縮合物などのアルコキシシリル基を有する化合物、特に、シロキサン系材料、具体的には、シリカゾル、コロイダルシリカ、シリカナノ粒子などのシリカ粒子などが好ましく挙げられる。
シリカ被覆有機樹脂粒子の構成は、有機樹脂粒子表面にシリカ微粒子が固体成分として付着している構成であっても、アルコキシシロキサン系化合物を縮合反応させて有機樹脂粒子表面にシロキサン系化合物層を形成した構成であってもよい。
【0058】
シリカは必ずしも有機樹脂粒子表面全域を被覆している必要はなく、少なくとも有機樹脂粒子の質量に対し、0.5質量%以上の量で表面を被覆していると、本発明の効果を得やすい。即ち、有機樹脂粒子の表面の少なくとも一部にシリカが存在することで、有機粒子表面における、共存する水溶性高分子、例えば、PVAとの親和性の向上が達成され、外部応力を受けた場合でも粒子の脱落が抑制され、優れた耐傷性、耐接着性を維持することができる。このため、本発明における「シリカ被覆」とは、このように有機樹脂粒子の表面の少なくとも一部にシリカが存在する状態をも包含するものである。
シリカの表面被覆状態は、走査型電子顕微鏡(TEM)等による形態観察により確認することができる。また、シリカの被覆量は、蛍光X線分析などの元素分析によりSi原子を検知し、そこに存在するシリカの量を算出することで確認することができる。
【0059】
シリカ被覆有機樹脂粒子の製造方法は特に制限はなく、シリカ粒子あるいはシリカ前駆体化合物を、有機樹脂粒子の原料となるモノマー成分と共存させて有機樹脂粒子形成と同時にシリカ表面被覆層を形成させる方法であってもよく、また、有機樹脂粒子を形成した後、シリカ粒子を物理的に表面に付着させ、その後、固定化する方法であってもよい。
【0060】
以下に、シリカ被覆有機樹脂粒子の製造方法の1例を挙げる。まず、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリアクリル酸などの水溶性高分子やリン酸カルシウム、炭酸カルシウムなどの無機系懸濁剤などから適宜選択される懸濁安定剤を含む水中に、シリカと、原料樹脂(より具体的には、上記有機樹脂を構成する、懸濁重合が可能なモノマー、懸濁架橋が可能なプレポリマー、又は樹脂液などの原料樹脂)とを添加、攪拌、混合して、シリカと原料樹脂とを分散させた懸濁液を調製する。その際、懸濁安定剤の種類、その濃度、攪拌回転数などを調節することにより、目的の粒径を有する懸濁液を形成することができる。次いで、この懸濁液を加温して反応を開始させ、樹脂原料を、懸濁重合または懸濁架橋させることにより樹脂粒子を生成させる。このとき、共存するシリカが重合或いは架橋反応により硬化する樹脂粒子に、特に、その物性に起因して樹脂粒子表面近傍に、固定化される。その後、懸濁液を固液分離し、洗浄により粒子に付着している懸濁安定剤を除去し、乾燥させる。かくして、シリカが固定化された所望粒径の略球状のシリカ被覆有機樹脂粒子が得られる。
【0061】
このように、懸濁重合、或いは懸濁架橋の際に条件を制御して所望の粒径のシリカ被覆有機樹脂粒子を得ることもできるし、このような制御を厳密に行うことなくシリカ被覆有機樹脂粒子を生成した後、メッシュ濾過法などにより所望の大きさのシリカ被覆有機粒子を得ることもできる。
【0062】
上記方法によりシリカ被覆有機粒子を製造する際の混合物における原料の添加量などについては、例えば、原料樹脂とシリカとの総量が100重量部の場合、まず、分散媒である水200〜800重量部に懸濁安定剤0.1〜20重量部を添加し、十分に溶解または分散させ、その液中に、上記100重量部の原料樹脂とシリカとの混合物を投入し、分散粒子が所定の粒度になるように攪拌速度を調整しながら攪拌し、この粒度調整を行った後に液温を30〜90℃に昇温し、1〜8時間反応させる。
【0063】
シリカ被覆有機樹脂粒子の製造方法については、上記した方法はその1例であり、例えば、特開2002−327036号公報、特開2002−173410号公報、特開2004−307837号公報、及び、特開2006−38246号公報などに詳細に記載された方法により得られるシリカ被覆有機樹脂粒子も本発明に好適に使用することができる。
【0064】
また、シリカ被覆有機樹脂粒子は市販品としても入手可能であり、具体的には、シリカ/メラミン複合微粒子としては、日産化学工業(株)オプトビーズ2000M,オプトビーズ3500M、オプトビーズ6500M、オプトビーズ10500M、オプトビーズ3500S、オプトビーズ6500Sが挙げられる。シリカ/アクリル複合粒子としては、根上工業(株)アートパールG−200透明、アートパールG−400透明、アートパールG−800透明、アートパールGR−400透明、アートパールGR−600透明、アートパールGR−800透明、アートパールJ−4P、J−5P、J−7P、J−3PY、J−4PY、J−7PYが挙げられる。シリカ/ウレタン複合粒子としては、根上工業(株)アートパールC−400透明、C−800透明、P−800T、U−600T、U−800T、CF−600T、CF800T、大日精化(株)ダイナミックビーズCN5070D、ダンプラコートTHUが挙げられる。
【0065】
以上、シリカ被覆有機樹脂粒子を例として、本発明に係るバックコート層に用いられる有機樹脂粒子について説明したが、アルミナ、チタニア又はジルコニアで被覆された有機樹脂粒子についても、シリカの代りにアルミナ、チタニア又はジルコニアを用いることにより同様に実施することができる。
【0066】
また、有機表面修飾した無機粒子も使用することができる。市販品としては、メチル基修飾シリカ粒子として、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製のトスパール120、トスパール130、トスパール145、トスパール2000B、トスパール1110、トスパール240が挙げられる。
【0067】
上記非平板粒子の平均粒子径は、上記平板粒子を含有する層(バックコート層)の厚みより大きいことが好ましい。上記非平板粒子の平均粒子径は、バックコート層の厚みより0.1μm以上大きいことが好ましい。
上記非平板粒子の平均粒子径は、好ましくは、0.1μm以上であり、更に好ましくは0.3〜30μm、より好ましくは0.5〜15μm、特に好ましくは1〜10μmである。この範囲において十分なスペーサー機能を発現することができ、バックコート層への固定化が容易で、外部からの接触応力に対しても優れた保持機能を有する。
【0068】
本発明における上記非平板粒子の平均粒子径は、通常用いられる体積平均粒子径を意味し、かかる体積平均粒子径は、レーザー回折・散乱式粒度分布計により測定することができる。測定装置としては、例えば、粒度分布測定装置「マイクロトラックMT−3300II」(日機装(株)製)が挙げられる。
【0069】
上記平板粒子を含有する層が、更に上記平板粒子以外の粒子を含有する場合、上記平板粒子以外の粒子の平均粒子径が0.1μm以上であり、かつ、前記平板粒子を含有する層の厚みよりも大きいことが好ましい。
【0070】
上記平板粒子を含有する層における上記非平板粒子の含有量は、好ましくは5〜1000mg/m、より好ましくは10〜500mg/m、更に好ましくは20〜300mg/mである。
【0071】
上記平板粒子を含有する層の厚みは、0.01〜30μmが好ましく、0.1〜10μmがより好ましく、0.2〜5μmが更に好ましい。但し、バックコート層の厚さは、上記バックコート層に含有され得る上記非平板粒子の平均粒子径より小さいことが好ましい。
バックコート層の厚さの測定は、表面処理を施していない平滑なアルミニウム支持体上に、バックコート層塗布液を塗布して、その断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し粒子の存在しない平滑な領域の膜厚を5箇所測定して、その平均値を求めることにより行うことができる。
【0072】
上記平板粒子を含有する層の算術平均高さSaは、0.1〜20μmが好ましく、0.3〜15μmがより好ましく、0.5〜10μmが更に好ましい。
本発明において、算術平均高さSaの測定は、ISO 25178に記載の方法に準じて行った。すなわち、菱化システム(株)製のマイクロマップMM3200−M100を用いて、同一サンプルから3か所以上選択して測定し、それらの平均値を算術平均高さSaとした。測定範囲に関しては、サンプル表面からランダムに選んだ1cm×1cmの範囲を測定した。
【0073】
バックコート層は、上記金属酸化物及び粒子、必要により、その他の添加剤などを含有するバックコート層塗布液を調整し、バックコート層塗布液を支持体上に塗布、乾燥することにより作製することができる。バックコート層の塗布には、バーコーター塗布など公知の塗布方法が用いられる。乾燥は、50〜200℃、10秒〜5分程度が好ましい。
【0074】
[印刷用原版]
本発明に係る印刷用原版は印刷面側にポリマーを含有する層を有する。
以下に、印刷用原版の1つの好ましい態様である平版印刷版原版について記載する。
【0075】
[平版印刷版原版]
本発明に係る平版印刷版原版は、支持体上に画像記録層を有する。平版印刷版原版における画像記録層は、上記印刷用原版におけるポリマーを含有する層に該当する。画像記録層平版印刷版原版は、必要により、支持体と画像記録層との間に下塗り層、画像記録層の上に保護層を有してもよい。
【0076】
〔画像記録層〕
画像記録層は、その非画像部が、印刷機上で酸性〜アルカリ性の湿し水及び印刷インキの少なくとも1方により除去される画像記録層であることが1つの好ましい態様である。
1つの態様によれば、画像記録層は、赤外線吸収剤、重合開始剤、重合性化合物及びバインダーポリマーを含有する画像記録層(以下、画像記録層Aともいう)である。
もう1つの態様によれば、画像記録層は、赤外線吸収剤、重合開始剤、重合性化合物及び粒子形状の高分子化合物を含有する画像記録層(以下、画像記録層Bともいう)である。
更にもう1つの態様によれば、画像記録層は、赤外線吸収剤及び熱可塑性ポリマー粒子を含有する画像記録層(以下、画像記録層Cともいう)である。
【0077】
(画像記録層A)
画像記録層Aは、赤外線吸収剤、重合開始剤、重合性化合物及びバインダーポリマーを含有する。以下、画像記録層Aの構成成分について説明する。
【0078】
<赤外線吸収剤>
赤外線吸収剤は、吸収した赤外線を熱に変換する機能と赤外線により励起して後述の重合開始剤に電子移動及び/又はエネルギー移動する機能を有する。本発明において使用される赤外線吸収剤は、波長760〜1200nmに吸収極大を有する染料又は顔料が好ましく、染料がより好ましい。
【0079】
染料としては、特開2014−104631号公報の段落番号〔0082〕〜〔0088〕に記載のものを使用できる。
【0080】
顔料の粒径は0.01〜1μmが好ましく、0.01〜0.5μmがより好ましい。顔料を分散するには、インク製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)などに記載されている。
【0081】
赤外線吸収剤は1種のみを用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
赤外線吸収剤の含有量は、画像記録層の全固形分100質量部に対し、好ましくは0.05〜30質量部、より好ましくは0.1〜20質量部、特に好ましくは0.2〜10質量部である。
【0082】
<重合開始剤>
重合開始剤は、重合性化合物の重合を開始、促進する化合物である。重合開始剤としては、公知の熱重合開始剤、結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物、光重合開始剤などを使用することができる。具体的には、特開2014−104631号公報の段落番号〔0092〕〜〔0106〕に記載のラジカル重合開始剤を使用できる。
【0083】
重合開始剤の中で、好ましい化合物として、オニウム塩、なかでもヨードニウム塩及びスルホニウム塩が挙げられる。それぞれの塩の中で好ましい具体的化合物は、特開2014−104631号公報の段落番号〔0104〕〜〔0106〕に記載の化合物と同じである。
【0084】
重合開始剤の含有量は、画像記録層の全固形分に対して0.1〜50質量%が好ましく、0.5〜30質量%がより好ましく、0.8〜20質量%が特に好ましい。この範囲でより良好な感度と印刷時の非画像部のより良好な汚れ難さが得られる。
【0085】
<重合性化合物>
重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。これらは、例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物などの化学的形態を有する。具体的には、特開2014−104631号公報の段落番号〔0109〕〜〔0113〕に記載の重合性化合物を使用できる。
【0086】
上記の中でも、機上現像性に関与する親水性と耐刷性に関与する重合能のバランスに優れる点から、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ビス(アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレートなどのイソシアヌル酸エチレンオキシド変性アクリレート類が特に好ましい。
【0087】
重合性化合物の構造、単独使用か併用か、添加量等の使用方法の詳細は、最終的な平版印刷版原版の性能設計にあわせて任意に設定できる。重合性化合物は、画像記録層の全固形分に対して、好ましくは5〜75質量%、更に好ましくは10〜70質量%、特に好ましくは15〜60質量%の範囲で使用される。
【0088】
<バインダーポリマー>
バインダーポリマーは、主として画像記録層の膜強度を向上させる目的で用いられる。バインダーポリマーは、従来公知のものを使用でき、皮膜性を有するポリマーが好ましい。なかでも、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂などが好ましい。
【0089】
好適なバインダーポリマーとしては、特開2008−195018号公報に記載のような、画像部の皮膜強度を向上するための架橋性官能基を主鎖又は側鎖、好ましくは側鎖に有しているものが挙げられる。架橋性基によってポリマー分子間に架橋が形成され、硬化が促進する。
【0090】
架橋性官能基としては、(メタ)アクリル基、ビニル基、アリル基、スチリル基などのエチレン性不飽和基やエポキシ基等が好ましく、架橋性官能基は高分子反応や共重合によってポリマーに導入することができる。例えば、カルボキシ基を側鎖に有するアクリルポリマーやポリウレタンとグリシジルメタクリレートとの反応、あるいはエポキシ基を有するポリマーとメタクリル酸などのエチレン性不飽和基含有カルボン酸との反応を利用できる。
【0091】
バインダーポリマー中の架橋性基の含有量は、バインダーポリマー1g当たり、好ましくは0.1〜10.0mmol、より好ましくは0.25〜7.0mmol、特に好ましくは0.5〜5.5mmolである。
【0092】
また、バインダーポリマーは親水性基を有することが好ましい。親水性基は画像記録層に機上現像性を付与するのに寄与する。特に、架橋性基と親水性基を共存させることにより、耐刷性と機上現像性の両立が可能になる。
【0093】
親水性基としては、たとえば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルキレンオキシド構造、アミノ基、アンモニウム基、アミド基、スルホ基、リン酸基等などがあり、なかでも、炭素数2または3のアルキレンオキシド単位を1〜9個有するアルキレンオキシド構造が好ましい。バインダーポリマーに親水性基を付与するには、例えば、親水性基を有するモノマーを共重合することにより行うことできる。
【0094】
バインダーポリマーには、着肉性を制御するため、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基などの親油性の基を導入することもできる。例えば、メタクリル酸アルキルエステなどの親油性基含有モノマーを共重合することにより行うことできる。
【0095】
バインダーポリマーは、質量平均分子量(Mw)が2,000以上であることが好ましく、5,000以上であることがより好ましく、10,000〜300,000であることが更に好ましい。
【0096】
バインダーポリマーの含有量は、画像記録層の全固形分に対して、3〜90質量%が適当であり、5〜80質量%が好ましく、10〜70質量%がより好ましい。
【0097】
バインダーポリマーの好ましい例として、ポリオキシアルキレン鎖を側鎖に有する高分子化合物が挙げられる。ポリオキシアルキレン鎖を側鎖に有する高分子化合物(以下、POA鎖含有高分子化合物ともいう)を画像記録層に含有することにより、湿し水の浸透性が促進され、機上現像性が向上する。
【0098】
POA鎖含有高分子化合物の主鎖を構成する樹脂としては、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、メタクリル樹脂、ポリスチレン系樹脂、ノボラック型フェノール系樹脂、ポリエステル樹脂、合成ゴム、天然ゴムが挙げられ、特にアクリル樹脂が好ましい。
【0099】
POA鎖含有高分子化合物は、パーフルオロアルキル基を実質的に含まないものである。「パーフルオロアルキル基を実質的に含まない」とは、高分子化合物中のパーフルオロアルキル基として存在するフッ素原子の質量比が0.5質量%より少ないものであり、含まないものが好ましい。フッ素原子の質量比は元素分析法により測定される。
また、「パーフルオロアルキル基」とは、アルキル基の全ての水素原子がフッ素原子で置換され基である。
【0100】
ポリオキシアルキレン鎖におけるアルキレンオキサイド(オキシアルキレン)としては炭素原子数が2〜6のアルキレンオキサイドが好ましく、エチレンオキサイド(オキシエチレン)又はプロピレンオキサイド(オキシプロピレン)がより好ましく、エチレンオキサイドが更に好ましい。
ポリオキシアルキレン鎖、すなわち、ポリ(アルキレンオキサイド)部位におけるアルキレンオキサイドの繰返し数は2〜50が好ましく、4〜25がより好ましい。
アルキレンオキサイドの繰り返し数が2以上であれば湿し水の浸透性が十分向上し、また、繰り返し数が50以下であれば摩耗による耐刷性が低下することがなく、好ましい。
ポリ(アルキレンオキサイド)部位については、特開2014−104631号公報の段落番号〔0060〕〜〔0062〕に記載の構造が好ましい。
【0101】
POA鎖含有高分子化合物は、画像部の皮膜強度を向上するために、架橋性を有していてもよい。架橋性を有するPOA鎖含有高分子化合物については、特開2014−104631号公報の段落番号〔0063〕〜〔0072〕に記載されている。
【0102】
POA鎖含有高分子化合物を構成する全繰り返し単位に対する、ポリ(アルキレンオキサイド)部位を有する繰り返し単位の比率は、特に限定されないが、好ましくは0.5〜80モル%、より好ましくは0.5〜50モル%である。POA鎖含有高分子化合物の具体例は、特開2014−104631号公報の段落番号〔0075〕〜〔0076〕に記載のものが挙げられる。
【0103】
POA鎖含有高分子化合物は必要に応じて、特開2008−195018号公報に記載のポリアクリル酸、ポリビニルアルコールなどの親水性高分子化合物を併用することができる。また、親油的な高分子化合物と親水的な高分子化合物を併用することもできる。
【0104】
POA鎖含有高分子化合物の画像記録層中での形態は、画像記録層成分のつなぎの機能を果たすバインダーとして存在する以外に、粒子の形状で存在してもよい。粒子形状で存在する場合には、平均粒径は10〜1000nmの範囲であり、好ましくは20〜300nmの範囲であり、特に好ましくは30〜120nmの範囲である。
【0105】
POA鎖含有高分子化合物の含有量は、画像記録層の全固形分に対して、好ましくは3〜90質量%、より好ましくは5〜80質量%である。3〜90質量%の範囲で、湿し水の浸透性と画像形成性をより確実に両立させることができる。
【0106】
バインダーポリマーの他の好ましい例として、6官能以上10官能以下の多官能チオールを核として、この核に対しスルフィド結合により結合したポリマー鎖を有し、当該ポリマー鎖が重合性基を有する高分子化合物(以下、星型高分子化合物ともいう)が挙げられる。星型高分子化合物としては、例えば、特開2012−148555号公報に記載の化合物を好ましく用いることができる。
【0107】
星型高分子化合物は、特開2008−195018号公報に記載のような画像部の皮膜強度を向上するためのエチレン性不飽和結合等の重合性基を、主鎖又は側鎖、好ましくは側鎖に有しているものが挙げられる。重合性基によってポリマー分子間に架橋が形成され、硬化が促進する。
重合性基としては、(メタ)アクリル基、ビニル基、アリル基、スチリル基などのエチレン性不飽和基やエポキシ基等が好ましく、(メタ)アクリル基、ビニル基、スチリル基が重合反応性の観点でより好ましく、(メタ)アクリル基が特に好ましい。これらの基は高分子反応や共重合によってポリマーに導入することができる。例えば、カルボキシ基を側鎖に有するポリマーとグリシジルメタクリレートとの反応、あるいはエポキシ基を有するポリマーとメタクリル酸などのエチレン性不飽和基含有カルボン酸との反応を利用できる。これらの基は併用してもよい。
【0108】
星型高分子化合物中の架橋性基の含有量は、星型高分子化合物1g当たり、好ましくは0.1〜10.0mmol、より好ましくは0.25〜7.0mmol、最も好ましくは0.5〜5.5mmolである。
【0109】
また、星型高分子化合物は、更に親水性基を有することが好ましい。親水性基は画像記録層に機上現像性を付与するのに寄与する。特に、重合性基と親水性基を共存させることにより、耐刷性と現像性の両立が可能になる。
【0110】
親水性基としては、−SO、−OH、−CONR(Mは水素、金属イオン、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、を表し、R、Rは各々独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基を表す。RとRは結合して環を形成してもよい。)、−N+R(R〜Rは、各々独立して炭素数1〜8のアルキル基を表し、Xはカウンターアニオンを表す)、下記一般式(1)で表される基及び一般式(2)で表される基が挙げられる。
【0111】
【化1】
【0112】
上式中、n及びmは、それぞれ独立に、1〜100の整数を表し、Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基を表す。
【0113】
ここで、星型高分子化合物が、ポリオキシアルキレン鎖(例えば、上記一般式(1)又は(2)で表される基)を側差に有している星型高分子化合物である場合、このような星型高分子化合物は、上記ポリオキシアルキレン鎖を側鎖に有する高分子化合物でもある。
【0114】
これら親水性基の中でも、−CONR、一般式(1)で表される基及び一般式(2)で表される基が好ましく、−CONR及び一般式(1)で表される基がより好ましく、一般式(1)で表される基が特に好ましい。更に一般式(1)で表される基の中でも、nは1〜10がより好ましく、1〜4が特に好ましい。また、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基がより好ましく、水素原子又はメチル基が特に好ましい。これら親水性基は2種以上を併用してもよい。
【0115】
また、星型高分子化合物は、カルボン酸基、リン酸基、ホスホン酸基を実質的に持たないことが好ましい。具体的には0.1mmol/gより少ないことが好ましく、0.05mmol/gより少ないことがより好ましく、0.03mmol/g以下であることが特に好ましい。これらの酸基が0.1mmol/gより少ないと現像性がより向上する。
【0116】
また、星型高分子化合物には、着肉性を制御するため、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基などの親油性の基を導入できる。具体的には、メタクリル酸アルキルエステなどの親油性基含有モノマーを共重合すればよい。
【0117】
星型高分子化合物の具体例としては、特開2014−104631号公報の段落番号〔0153〕〜〔0157〕に記載されているものが挙げられる。
【0118】
星型高分子化合物は、上記の多官能チオール化合物の存在下で、ポリマー鎖を構成する上記モノマーをラジカル重合するなど、公知の方法によって合成することができる。
【0119】
星型高分子化合物の質量平均分子量は、5,000〜500,000が好ましく、10,000〜250,000がより好ましく、20,000〜150,000が特に好ましい。この範囲において、機上現像性と耐刷性がより良好になる。
【0120】
星型高分子化合物は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。また、通常の直鎖型バインダーポリマーと併用してもよい。
星型高分子化合物の含有率は、画像記録層の全固形分に対し、5〜95質量%が好ましく、10〜90質量%以下がより好ましく、15〜85質量%以下が特に好ましい。
特に、湿し水の浸透性が促進され、機上現像性が向上することから、特開2012−148555号公報に記載の星型高分子化合物が好ましい。
【0121】
<その他の成分>
画像記録層Aには、必要に応じて、以下に記載するその他の成分を含有させることができる。
【0122】
(1)低分子親水性化合物
画像記録層は、耐刷性を低下させることなく機上現像性を向上させるために、低分子親水性化合物を含有してもよい。
低分子親水性化合物としては、例えば、水溶性有機化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコール類及びそのエーテル又はエステル誘導体類、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等のポリオール類、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン等の有機アミン類及びその塩、アルキルスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の有機スルホン酸類及びその塩、アルキルスルファミン酸等の有機スルファミン酸類及びその塩、アルキル硫酸、アルキルエーテル硫酸等の有機硫酸類及びその塩、フェニルホスホン酸等の有機ホスホン酸類及びその塩、酒石酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸、アミノ酸類等の有機カルボン酸類及びその塩、ベタイン類、等が挙げられる。
【0123】
これらの中でも、ポリオール類、有機硫酸塩類、有機スルホン酸塩類、ベタイン類の群から選ばれる少なくとも一つを含有させることが好ましい。
【0124】
有機スルホン酸塩の具体的な化合物としては、特開2007−276454号公報の段落番号〔0026〕〜〔0031〕、特開2009−154525号公報の段落番号〔0020〕〜〔0047〕に記載の化合物などが挙げられる。塩は、カリウム塩、リチウム塩でもよい。
【0125】
有機硫酸塩としては、特開2007−276454号公報の段落番号〔0034〕〜〔0038〕に記載の化合物が挙げられる。
【0126】
ベタイン類としては、窒素原子への炭化水素置換基の炭素原子数が1〜5である化合物が好ましく、具体例としては、トリメチルアンモニウムアセタート、ジメチルプロピルアンモニウムアセタート、3−ヒドロキシ−4−トリメチルアンモニオブチラート、4−(1−ピリジニオ)ブチラート、1−ヒドロキシエチル−1−イミダゾリオアセタート、トリメチルアンモニウムメタンスルホナート、ジメチルプロピルアンモニウムメタンスルホナート、3−トリメチルアンモニオ−1−プロパンスルホナート、3−(1−ピリジニオ)−1−プロパンスルホナートなどが挙げられる。
【0127】
低分子親水性化合物は、疎水性部分の構造が小さいため、湿し水が画像記録層露光部(画像部)へ浸透して画像部の疎水性や皮膜強度を低下させることがなく、画像記録層のインキ受容性や耐刷性を良好に維持できる。
【0128】
低分子親水性化合物の添加量は、画像記録層全固形分量の0.5〜20質量%が好ましい。1〜15質量%がより好ましく、2〜10質量%が更に好ましい。この範囲で良好な機上現像性と耐刷性が得られる。
化合物は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0129】
(2)感脂化剤
画像記録層には、着肉性を向上させるために、ホスホニウム化合物、含窒素低分子化合物、アンモニウム基含有ポリマーなどの感脂化剤を用いることができる。特に、保護層に無機質層状化合物を含有させる場合には、これらの化合物は、無機質層状化合物の表面被覆剤として機能し、無機質層状化合物による印刷途中の着肉性低下を防止する作用を有する。
【0130】
ホスホニウム化合物、含窒素低分子化合物、アンモニウム基含有ポリマーは、特開2014−104631号公報の段落番号〔0184〕〜〔0190〕に具体的に記載されている。
【0131】
感脂化剤の含有量は、画像記録層の全固形分に対して0.01〜30.0質量%が好ましく、0.1〜15.0質量%がより好ましく、1〜10質量%が更に好ましい。
【0132】
(3)その他
画像記録層は、その他の成分として、更に、界面活性剤、着色剤、焼き出し剤、重合禁止剤、高級脂肪酸誘導体、可塑剤、無機粒子、無機質層状化合物、共増感剤、連鎖移動剤などを含有することができる。具体的には、特開2008−284817号公報の段落番号〔0114〕〜〔0159〕、特開2006−091479号公報の段落番号〔0023〕〜〔0027〕、米国特許公開2008/0311520号明細書の段落番号〔0060〕に記載の化合物及び添加量を好ましく用いることができる。
【0133】
<画像記録層Aの形成>
画像記録層Aは、例えば、特開2008−195018号公報の段落番号〔0142〕〜〔0143〕に記載のように、必要な上記各成分を公知の溶剤に分散又は溶解して塗布液を調製し、この塗布液を支持体上に直接又は下塗り層を介して、バーコーター塗布など公知の方法で塗布し、乾燥することで形成される。塗布、乾燥後に得られる支持体上の画像記録層塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、通常0.3〜3.0g/mが好ましい。この範囲で、良好な感度と画像記録層の良好な皮膜特性が得られる。
【0134】
(画像記録層B)
画像記録層Bは、赤外線吸収剤、重合開始剤、重合性化合物及び粒子形状の高分子化合物を含有する。以下、画像記録層Bの構成成分について説明する。
【0135】
画像記録層Bにおける赤外線吸収剤、重合開始剤及び重合性化合物に関しては、画像記録層Aにおいて記載した赤外線吸収剤、重合開始剤及び重合性化合物を同様に用いることができる。
【0136】
<粒子形状の高分子化合物>
粒子形状の高分子化合物は、熱可塑性ポリマー粒子、熱反応性ポリマー粒子、重合性基を有するポリマー粒子、疎水性化合物を内包しているマイクロカプセル、及びミクロゲル(架橋ポリマー粒子)から選ばれることが好ましい。なかでも、重合性基を有するポリマー粒子及びミクロゲルが好ましい。特に好ましい実施形態では、微粒子形状の高分子化合物は少なくとも1つのエチレン性不飽和重合性基を含む。このような粒子形状の高分子化合物の存在により、露光部の耐刷性及び未露光部の機上現像性を高める効果が得られる。
【0137】
熱可塑性ポリマー粒子としては、1992年1月のResearch Disclosure No.33303、特開平9−123387号公報、同9−131850号公報、同9−171249号公報、同9−171250号公報及び欧州特許第931647号明細書などに記載の熱可塑性ポリマー粒子が好ましい。
熱可塑性ポリマー粒子を構成するポリマーの具体例としては、エチレン、スチレン、塩化ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、ビニルカルバゾール、ポリアルキレン構造を有するアクリレート又はメタクリレートなどのモノマーのホモポリマー若しくはコポリマー又はそれらの混合物を挙げることができる。好ましくは、ポリスチレン、スチレン及びアクリロニトリルを含む共重合体、ポリメタクリル酸メチルを挙げることができる。熱可塑性ポリマー粒子の平均粒径は0.01〜3.0μmが好ましい。平均粒径はレーザー光散乱法により算出される。
【0138】
熱反応性ポリマー粒子としては、熱反応性基を有するポリマー粒子が挙げられる。熱反応性ポリマー粒子は熱反応による架橋及びその際の官能基変化により疎水化領域を形成する。
【0139】
熱反応性基を有するポリマー粒子における熱反応性基としては、化学結合が形成されるならば、どのような反応を行う官能基でもよいが、重合性基であることが好ましく、その例として、ラジカル重合反応を行うエチレン性不飽和基(例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基など)、カチオン重合性基(例えば、ビニル基、ビニルオキシ基、エポキシ基、オキセタニル基など)、付加反応を行うイソシアナート基又はそのブロック体、エポキシ基、ビニルオキシ基及びこれらの反応相手である活性水素原子を有する官能基(例えば、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基など)、縮合反応を行うカルボキシ基及び反応相手であるヒドロキシ基又はアミノ基、開環付加反応を行う酸無水物及び反応相手であるアミノ基又はヒドロキシ基などが好ましく挙げられる。
【0140】
マイクロカプセルとしては、例えば、特開2001−277740号公報、特開2001−277742号公報に記載のごとく、画像記録層の構成成分の少なくとも一部をマイクロカプセルに内包させたものである。画像記録層の構成成分は、マイクロカプセル外にも含有させることもできる。マイクロカプセルを含有する画像記録層は、疎水性の構成成分をマイクロカプセルに内包し、親水性の構成成分をマイクロカプセル外に含有する構成が好ましい態様である。
【0141】
ミクロゲル(架橋ポリマー粒子)は、その表面又は内部の少なくとも一方に、画像記録層の構成成分の一部を含有することができる。特に、ラジカル重合性基をその表面に有する反応性ミクロゲルは、画像形成感度や耐刷性の観点から好ましい。
【0142】
画像記録層の構成成分をマイクロカプセル化又はミクロゲル化するには、公知の方法が適用できる。
【0143】
更に、粒子形状の高分子化合物としては、耐刷性及び耐溶剤性の観点から、疎水性主鎖を有し、i)上記疎水性主鎖に直接的に結合されたペンダントシアノ基を有する構成ユニット、及び、ii)親水性ポリアルキレンオキシドセグメントを含むペンダント基を有する構成ユニットの両方を含むことが好ましい。
上記疎水性主鎖としては、アクリル樹脂鎖が好ましく挙げられる。
上記ペンダントシアノ基の例としては、−[CHCH(C≡N)−]又は−[CHC(CH)(C≡N)−]が好ましく挙げられる。
また、上記ペンダントシアノ基を有する構成ユニットは、エチレン系不飽和型モノマー、例えば、アクリロニトリル又はメタクリロニトリルから、又は、これらの組み合わせから容易に誘導することができる。
また、上記親水性ポリアルキレンオキシドセグメントにおけるアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドが好ましく、エチレンオキシドがより好ましい。
上記親水性ポリアルキレンオキシドセグメントにおけるアルキレンオキシド構造の繰り返し数は、10〜100であることが好ましく、25〜75であることがより好ましく、40〜50であることが更に好ましい。
疎水性主鎖を有し、i)上記疎水性主鎖に直接的に結合されたペンダントシアノ基を有する構成ユニット、及び、ii)親水性ポリアルキレンオキシドセグメントを含むペンダント基を有する構成ユニットの両方を含む樹脂の粒子としては、特表2008−503365号公報の段落0039〜0068に記載のものが好ましく挙げられる。
【0144】
粒子形状の高分子化合物の平均粒径は、0.01〜3.0μmが好ましく、0.03〜2.0μmがより好ましく、0.10〜1.0μmが更に好ましい。この範囲で良好な解像度と経時安定性が得られる。平均粒径はレーザー光散乱法により算出される。
【0145】
粒子形状の高分子化合物の含有量は、画像記録層全固形分の5〜90質量%が好ましい。
【0146】
<その他の成分>
画像記録層Bには、必要に応じて、上記画像記録層Aにおいて記載したその他の成分を含有させることができる。
【0147】
<画像記録層Bの形成>
画像記録層Bの形成に関しては、上記画像記録層Aの形成の記載を適用することができる。
【0148】
(画像記録層C)
画像記録層Cは、赤外線吸収剤及び熱可塑性ポリマー粒子を含有する。以下、画像記録層Cの構成成分について説明する。
【0149】
<赤外線吸収剤>
画像記録層Cに含まれる赤外線吸収剤は、好ましくは760〜1200nm吸収極大を有する染料又は顔料である。染料がより好ましい。
【0150】
染料としては、市販の染料及び文献(例えば「染料便覧」有機合成化学協会編集、昭和45年刊、「化学工業」1986年5月号P.45〜51の「近赤外吸収色素」、「90年代機能性色素の開発と市場動向」第2章2.3項(CMC出版、1990年刊)又は特許に記載されている公知の染料が利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、ポリメチン染料、シアニン染料などの赤外線吸収染料が好ましい。
【0151】
これらの中で、画像記録層に添加するのに特に好ましい染料は水溶性基を有する赤外線吸収染料である。
以下に赤外線吸収染料の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0152】
【化2】
【0153】
【化3】
【0154】
顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。
【0155】
顔料の粒径は0.01〜1μmが好ましく、0.01〜0.5μmがより好ましい。顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0156】
赤外線吸収剤の含有量は、画像記録層固形分の0.1〜30質量%が好ましく、0.25〜25質量%がより好ましく、0.5〜20質量%が特に好ましい。この範囲内で、画像記録層の膜強度を損なうことなく、良好な感度が得られる。
【0157】
<熱可塑性ポリマー粒子>
熱可塑性ポリマー粒子はそのガラス転移温度(Tg)が60℃〜250℃であることが好ましい。熱可塑性ポリマー粒子のTgは、70℃〜140℃がより好ましく、80℃〜120℃が更に好ましい。
Tgが60℃以上の熱可塑性ポリマー粒子としては、例えば、1992年1月のReseach Disclosure No.33303、特開平9−123387号公報、同9−131850号公報、同9−171249号公報、同9−171250号公報及びEP931647号公報などに記載の熱可塑性ポリマー粒子を好適なものとして挙げることができる。
具体的には、エチレン、スチレン、塩化ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、ビニルカルバゾールなどのモノマーから構成されるホモポリマーもしくはコポリマー又はそれらの混合物などを例示することができる。好ましいものとして、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチルなどが挙げられる。
【0158】
熱可塑性ポリマー粒子の平均粒径は、解像度及び経時安定性を考慮すると好ましくは0.005〜2.0μmである。この値は熱可塑性ポリマー粒子を2種以上混ぜた場合の平均粒径としても適用される。平均粒径は、より好ましくは0.01〜1.5μm、特に好ましくは0.05μm〜1.0μmである。熱可塑性ポリマー粒子を2種以上混ぜた場合の多分散性は0.2以上であることが好ましい。平均粒径及び多分散性はレーザー光散乱法により算出される。
【0159】
熱可塑性ポリマー粒子は2種類以上を混合して用いてもよい。具体的には、粒子サイズの異なる少なくとも2種類の使用又はTgの異なる少なくとも2種類の使用が挙げられる。2種類以上を混合使用により、画像部の皮膜硬化性が更に向上し、平版印刷版とした場合に耐刷性が一層向上する。
例えば、熱可塑性ポリマー粒子として粒子サイズが同じものを用いた場合には、熱可塑性ポリマー粒子間にある程度の空隙が存在することになり、画像露光により熱可塑性ポリマー粒子を溶融固化させても皮膜の硬化性が所望のものにならないことがある。これに対して、熱可塑性ポリマー粒子として粒子サイズが異なるものを用いた場合、熱可塑性ポリマー粒子間にある空隙率を低くすることができ、その結果、画像露光後の画像部の皮膜硬化性を向上させることができる。
【0160】
また、熱可塑性ポリマー粒子としてTgが同じものを用いた場合には、画像露光による画像記録層の温度上昇が不十分なとき、熱可塑性ポリマー粒子が十分に溶融固化せず皮膜の硬化性が所望のものにならないことがある。これに対して、熱可塑性ポリマー粒子としてTgが異なるものを用いた場合、画像露光による画像記録層の温度上昇が不十分なときでも画像部の皮膜硬化性を向上させることができる。
【0161】
Tgが異なる熱可塑性ポリマー粒子を2種以上混ぜて用いる場合、熱可塑性ポリマー粒子の少なくとも1種類のTgは60℃以上であることが好ましい。この際、Tgの差が10℃以上あることが好ましく、更に好ましくは20℃以上である。また、Tgが60℃以上の熱可塑性ポリマー粒子を全熱可塑性ポリマー粒子に対して70質量%以上含有することが好ましい。
【0162】
熱可塑性ポリマー粒子は架橋性基を有していてもよい。架橋性基を有する熱可塑性ポリマー粒子を用いることにより、画像露光部に発生する熱によって架橋性基が熱反応してポリマー間に架橋が形成され、画像部の皮膜強度が向上し、耐刷性がより優れたものになる。架橋性基としては化学結合が形成されるならばどのような反応を行う官能基でもよく、例えば、重合反応を行うエチレン性不飽和基(例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基など)、付加反応を行うイソシアナート基あるいはそのブロック体及びその反応相手である活性水素原子を有する基(例えば、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基など)、同じく付加反応を行うエポキシ基及びその反応相手であるアミノ基、カルボキシル基あるいはヒドロキシ基、縮合反応を行うカルボキシル基とヒドロキシ基あるいはアミノ基、開環付加反応を行う酸無水物とアミノ基あるいはヒドロキシ基などを挙げることができる。
【0163】
架橋性基を有する熱可塑性ポリマー粒子としては、具体的には、アクリロイル基、メタクリルロイル基、ビニル基、アリル基、エポキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、イソシアネート基、酸無水物及びそれらを保護した基などの架橋性基を有するものを挙げることができる。これら架橋性基のポリマーへの導入は、ポリマー粒子の重合時に行ってもよいし、ポリマー粒子の重合後に高分子反応を利用して行ってもよい。
【0164】
ポリマー粒子の重合時に架橋性基を導入する場合は、架橋性基を有するモノマーを乳化重合あるいは懸濁重合することが好ましい。架橋性基を有するモノマーの具体例として、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、ビニルメタクリレート、ビニルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、2−イソシアネートエチルメタクリレートあるいはそのアルコールなどによるブロックイソシアナート、2−イソシアネートエチルアクリレートあるいはそのアルコールなどによるブロックイソシアナート、2−アミノエチルメタクリレート、2−アミノエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、2官能アクリレート、2官能メタクリレートなどを挙げることができる。
架橋性基の導入をポリマー粒子の重合後に行う場合に用いる高分子反応としては、例えば、WO96/34316号に記載されている高分子反応を挙げることができる。
熱可塑性ポリマー粒子は、架橋性基を介してポリマー粒子同士が反応してもよいし、画像記録層に添加された高分子化合物あるいは低分子化合物と反応してもよい。
【0165】
熱可塑性ポリマー粒子の含有量は、画像記録層固形分の50〜95質量%が好ましく、60〜90質量%がより好ましく、70〜85質量%が特に好ましい。
【0166】
<その他の成分>
画像記録層Cは、必要に応じて、更にその他の成分を含有してもよい。
【0167】
<ポリオキシアルキレン基又はヒドロキシ基を有する界面活性剤>
ポリオキシアルキレン基(以下、POA基とも記載する)又はヒドロキシ基を有する界面活性剤としては、POA基又はヒドロキシ基を有する界面活性剤を適宜用いることができるが、アニオン界面活性剤又はノニオン界面活性剤が好ましい。POA基又はヒドロキシ基を有するアニオン界面活性剤又はノニオン界面活性剤の中で、POA基を有するアニオン界面活性剤又はノニオン界面活性剤が好ましい。
【0168】
POA基としては、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシブチレン基等が好ましく、ポリオキシエチレン基が特に好ましい。
オキシアルキレン基の平均重合度は通常2〜50が適当であり、好ましくは2〜20である。
ヒドロキシ基の数は通常1〜10が適当であり、好ましくは2〜8である。但し、オキシアルキレン基における末端ヒドロキシ基は、ヒドロキシ基の数には含めない。
【0169】
(POA基又はヒドロキシ基を有するアニオン界面活性剤)
POA基を有するアニオン界面活性剤としては、特に限定されず、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボン酸塩類、ポリオキシアルキレンアルキルスルホコハク酸塩類、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルフェノキシポリオキシアルキレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシアルキレンアルキルスルホフェニルエーテル類、ポリオキシアルキレンアリールエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシアルキレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシアルキレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシアルキレンルキルエーテル燐酸エステル塩類、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル燐酸エステル塩類、ポリオキシアルキレンパーフルオロアルキルエーテル燐酸エステル塩類等が挙げられる。
ヒドロキシ基を有するアニオン界面活性剤としては、特に限定されず、ヒドロキシカルボン酸塩類、ヒドロキシアルキルエーテルカルボン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリドリン酸エステル塩類等が挙げられる。
【0170】
POA基又はヒドロキシ基を有する界面活性剤の含有量は、画像記録層固形分の0.05〜15質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましい。
【0171】
以下に、POA基又はヒドロキシ基を有する界面活性剤の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。下記界面活性剤A−12は、ゾニールFSPの商品名でデュポン社から入手できる。また、下記界面活性剤N−11は、ゾニールFSO 100の商品名でデュポン社から入手できる。
【0172】
【化4】
【0173】
【化5】
【0174】
画像記録層は、画像記録層の塗布の均一性を確保する目的で、ポリオキシアルキレン基及びヒドロキシ基を有さないアニオン界面活性剤を含有してもよい。
当該アニオン界面活性剤は、上記目的を達成する限り、特に制限されない。中でも、アルキルベンゼンスルホン酸又はその塩、アルキルナフタレンスルホン酸又はその塩、(ジ)アルキルジフェニルエーテル(ジ)スルホン酸又はその塩、アルキル硫酸エステル塩が好ましい。
【0175】
ポリオキシアルキレン基及びヒドロキシ基を有さないアニオン界面活性剤の添加量は、ポリオキシアルキレン基又はヒドロキシ基を有する界面活性剤に対して1〜50質量%が好ましく、1〜30質量%がより好ましい。
【0176】
以下に、ポリオキシアルキレン基及びヒドロキシ基を有さないアニオン界面活性剤の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0177】
【化6】
【0178】
また、画像記録層の塗布の均一性を確保する目的で、ポリオキシアルキレン基及びヒドロキシ基を有さないノニオン界面活性剤、あるいはフッ素系界面活性剤を用いてもよい。例えば、特開昭62−170950号に記載のフッ素系界面活性剤が好ましく用いられる。
【0179】
画像記録層は、親水性樹脂を含有することができる。親水性樹脂としては、例えばヒドロキシ基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、アミノ基、アミノエチル基、アミノプロピル基、カルボキシル基、カルボキシラト基、スルホ基、スルホナト基、リン酸基などの親水基を有する樹脂が好ましい。
【0180】
親水性樹脂の具体例として、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、澱粉誘導体、カルボキシメチルセルロースおよびそのナトリウム塩、セルロースアセテート、アルギン酸ナトリウム、酢酸ビニル−マレイン酸コポリマー類、スチレン−マレイン酸コポリマー類、ポリアクリル酸類およびそれらの塩、ポリメタクリル酸類およびそれらの塩、ヒドロキシエチルメタクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシエチルアクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシプロピルメタクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシプロピルアクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシブチルメタクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシブチルアクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ポリエチレングリコール類、ヒドロキシプロピレンポリマー類、ポリビニルアルコール類、加水分解度が少なくとも60%、好ましくは少なくとも80%の加水分解ポリビニルアセテート、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、アクリルアミドのホモポリマーおよびコポリマー、メタクリルアミドのホモポリマーおよびコポリマー、N−メチロールアクリルアミドのホモポリマーおよびコポリマー等を挙げることができる。
【0181】
親水性樹脂の質量平均分子量は、十分な皮膜強度や耐刷性が得らる観点から、2,000以上が好ましい。
【0182】
親水性樹脂の含有量は、画像記録層固形分の0.5〜50質量%が好ましく、1〜30質量%がより好ましい。
【0183】
画像記録層は無機粒子を含有してもよい。無機粒子としては、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、アルギン酸カルシウム又はこれらの混合物などが好適な例として挙げられる。無機粒子は、皮膜の強化などの目的で用いることができる。
【0184】
無機粒子の平均粒径は5nm〜10μmが好ましく、10nm〜1μmがより好ましい。この範囲で、熱可塑性ポリマー粒子とも安定に分散され、画像記録層の膜強度を充分に保持し、印刷汚れを生じにくい親水性に優れた非画像部を形成できる。
【0185】
無機粒子は、コロイダルシリカ分散物などの市販品として容易に入手できる。
無機粒子の含有量は、画像記録層固形分の1.0〜70質量%が好ましく、5.0〜50質量%がより好ましい。
【0186】
画像記録層には、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤を含有させることができる。可塑剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル等が挙げられる。
可塑剤の含有量は、画像記録層固形分の0.1%〜50質量%が好ましく、1〜30質量%がより好ましい。
【0187】
画像記録層において、熱反応性官能基(架橋性基)を有するポリマー粒子を用いる場合は、必要に応じて、熱反応性官能基(架橋性基)の反応を開始又は促進する化合物を添加することができる。熱反応性官能基の反応を開始または促進する化合物としては、熱によりラジカルまたはカチオンを発生するような化合物を挙げることができる。例えば、ロフィンダイマー、トリハロメチル化合物、過酸化物、アゾ化合物、ジアゾニウム塩、ジフェニルヨードニウム塩などを含むオニウム塩、アシルホスフィン、イミドスルホナートなどが挙げられる。このような化合物の添加量は、画像記録層固形分の1〜20質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましい。この範囲で、機上現像性を損なわず、良好な反応開始又は促進効果が得られる。
【0188】
<画像記録層Cの形成>
画像記録層Cは、必要な上記各成分を適当な溶剤に溶解又は分散して塗布液を調製し、この塗布液を支持体上に直接又は下塗り層を介して塗布して形成される。溶剤としては、水又は水と有機溶剤との混合溶剤が用いられるが、水と有機溶剤の混合使用が、塗布後の面状を良好にする点で好ましい。有機溶剤の量は、有機溶剤の種類によって異なるので、一概に特定できないが、通常混合溶剤中5〜50容量%が好ましい。但し、有機溶剤は熱可塑性ポリマー粒子が凝集しない範囲の量で使用する必要がある。画像記録層用塗布液の固形分濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
【0189】
塗布液の溶剤として用いられる有機溶剤は、水に可溶な有機溶剤が好ましい。具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1−メトキシ−2−プロパノールなどのアルコール溶剤、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン溶剤、エチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル溶剤、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。特に、沸点が120℃以下であって、水に対する溶解度(水100gに対する溶解量)が10g以上の有機溶剤が好ましく、20g以上の有機溶剤がよりに好ましい。
【0190】
画像記録層用塗布液の塗布方法としては、種々の方法を用いることができる。例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げられる。塗布、乾燥後に得られる支持体上の画像記録層の塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、通常は0.5〜5.0g/mが好ましく、0.5〜2.0g/mがより好ましい。
【0191】
本発明に係る平版印刷版原版の画像記録層は、その非画像部が、現像液により除去される画像記録層であってもよい。このような画像記録層は、所謂現像処理型平版印刷版原版として知られている多くの平版印刷版原版の画像記録層を含む。
現像液により除去される画像記録層の1つの態様によれば、画像記録層は、増感色素、重合開始剤、重合性化合物及びバインダーポリマーを含有するネガ型の画像記録層である。このような、ネガ型の画像記録層は、例えば、特開2008−15503号公報の段落番号〔0057〕−〔0154〕に<記録層>として記載されている。
現像液により除去される画像記録層の1つの態様によれば、画像記録層は、水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂及び赤外線吸収剤を含有するポジ型の画像記録層である。このような、ポジ型の画像記録層は、例えば、特開2007−148940号公報の段落番号〔0055〕−〔0132〕に〔記録層〕として記載されている。
【0192】
以下に、平版印刷版原版の他の構成要素について記載する。
【0193】
〔下塗り層〕
平版印刷版原版は、画像記録層と支持体との間に、必要により、下塗り層を設けることができる。下塗り層は、露光部においては支持体と画像記録層との密着を強化し、未露光部においては画像記録層の支持体からのはく離を生じやすくさせるため、耐刷性を損なわず機上現像性を向上させるのに寄与する。また、赤外線レーザー露光の場合は、下塗り層が断熱層として機能することにより、露光により発生した熱が支持体に拡散して感度が低下するのを防ぐ作用を有する。
【0194】
下塗り層に用いる化合物としては、具体的には、特開平10−282679号公報に記載されている付加重合可能なエチレン性二重結合反応基を有しているシランカップリング剤、特開平2−304441号公報記載のエチレン性二重結合反応基を有しているリン化合物が挙げられる。好ましいものとして、特開2005−125749号公報及び特開2006−188038号公報に記載のごとき、支持体表面に吸着可能な吸着性基、親水性基、及び架橋性基を有する高分子化合物が挙げられる。このような高分子化合物としては、吸着性基を有するモノマー、親水性基を有するモノマー、及び架橋性基を有するモノマーの共重合体であることが好ましい。より具体的には、フェノール性ヒドロキシ基、カルボキシ基、−PO、−OPO、−CONHSO−、−SONHSO−、−COCHCOCHなどの吸着性基を有するモノマーと、スルホ基などの親水性基を有するモノマーと、更にメタクリル基、アリル基などの重合性の架橋性基を有するモノマーとの共重合体が挙げられる。高分子化合物は、高分子化合物の極性置換基と、対荷電を有する置換基及びエチレン性不飽和結合を有する化合物との塩形成で導入された架橋性基を有してもよい。また、上記以外のモノマー、好ましくは親水性モノマーが更に共重合されていてもよい。
【0195】
下塗り層用高分子化合物中の不飽和二重結合の含有量は、高分子化合物1g当たり、好ましくは0.1〜10.0mmol、より好ましくは2.0〜5.5mmolである。
下塗り層用高分子化合物は、質量平均分子量が5,000以上であるのが好ましく、10,000〜300,000であるのがより好ましい。
【0196】
下塗り層は、上記下塗り層用化合物の他に、経時における汚れ防止のため、キレート剤、第2級又は第3級アミン、重合禁止剤、アミノ基又は重合禁止能を有する官能基とアルミニウム支持体表面と相互作用する基とを有する化合物など(例えば、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)、2,3,5,6−テトラヒドロキシ−p−キノン、クロラニル、スルホフタル酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸など)を含有することができる。
【0197】
下塗り層は、公知の方法で塗布される。下塗り層の塗布量(固形分)は、0.1〜100mg/mが好ましく、1〜30mg/mがより好ましい。
【0198】
〔支持体〕
平版印刷版原版の支持体としては、公知の支持体が用いられる。なかでも、公知の方法で粗面化処理され、陽極酸化処理されたアルミニウム板が好ましい。
アルミニウム板には、必要に応じて、特開2001−253181号公報や特開2001−322365号公報に記載されている陽極酸化皮膜のマイクロポアの拡大処理や封孔処理、及び米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、同第3,280,734号及び同第3,902,734号の各明細書に記載されているようなアルカリ金属シリケートあるいは米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号及び同第4,689,272号の各明細書に記載されているようなポリビニルホスホン酸などによる表面親水化処理を適宜選択して行うことができる。
支持体は、中心線平均粗さが0.10〜1.2μmであることが好ましい。
【0199】
支持体には必要に応じて、裏面に、特開平5−45885号公報に記載されている有機高分子化合物、特開平6−35174号公報に記載されているケイ素のアルコキシ化合物を含むバックコート層を設けることができる。
【0200】
〔保護層〕
平版印刷版原版は、画像記録層の上に、必要により、保護層を設けることができる。保護層は酸素遮断によって画像形成阻害反応を抑制する機能の他、画像記録層における傷の発生防止、及び高照度レーザー露光時のアブレーション防止の機能を有する。
【0201】
このような機能を有する保護層については、特開2014−104631号公報の段落番号〔0202〕〜〔0204〕に記載のものを使用できる。
【0202】
保護層は、公知の方法で塗布される。保護層の塗布量は、乾燥後の塗布量で、0.01〜10g/mが好ましく、0.02〜3g/mがより好ましく、0.02〜1g/mが特に好ましい。
【0203】
平版印刷版原版は、各構成層の塗布液を通常の方法に従って塗布、乾燥して各構成層を形成することにより製造することができる。塗布には、ダイコート法、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、スライドコート法など用いられる。
【0204】
以下に、印刷用原版の他の1つの好ましい態様である印刷用捨て版原版について記載する。
印刷用捨て版原版は、平版印刷版原版と同様の製版工程(但し、画像露光は行わない)を経て印刷用捨て版を作製するための原版であり、基本的に感光性を有さない。印刷用捨て版は、印刷業界においてよく知られるように、例えば、カラーの新聞印刷(多色印刷)において一部の紙面を2色又は1色で印刷を行う必要がある場合に、版胴に取り付けて用いられる。
【0205】
[印刷用捨て版原版]
本発明に係る印刷用捨て版原版は、支持体上の印刷中にインキと湿し水が供給される側に(本願明細書において、「印刷面側」とする)に非感光性層を有する。印刷用捨て版原版における非感光性層は、上記印刷用原版におけるポリマーを含有する層に該当する。印刷用捨て版原版は、必要により、支持体と非感光性層との間に下塗り層、非感光性層の上に親水性層を有してもよい。
【0206】
印刷用捨て版原版における非感光性層は、水溶性バインダーポリマー又は水不溶性且つアルカリ可溶性のバインダーポリマー(以下、「バインダーポリマー」ともいう。)を含むことが好ましい。また、非感光性層は、350〜550nmに吸収極大を有する着色剤、及び、低分子酸性化合物を含有することができる。
印刷用捨て版原版における非感光性層に含有されるバインダーは、例えば、特開2012−218778号公報の段落番号〔0069〕−〔0074〕に記載されている。
印刷用捨て版原版における非感光性層及びその形成方法は、例えば、特開2012−218778号公報の段落番号〔0021〕−〔0054〕に記載されている。
【0207】
印刷用捨て版原版における親水性層は、バインダーを含有する。
親水性層の形成は、バインダー、及び、目的に応じて添加される着色剤、水溶性可塑剤、界面活性剤など種々の添加剤を撹拌、混合して調製される親水性層塗布液を、例えば、米国特許第3,458,311号明細書又は特開昭55−49729号公報に記載されている方法を適用して、非感光性層上に塗布することにより形成することができる。親水性層の塗布量は、0.2〜5.0g/m2が好ましく、0.3〜3.0g/m2がより好ましい。
印刷用捨て版原版における親水性層に含有されるバインダーは、例えば、特開2012−218778号公報の段落番号〔0069〕−〔0074〕に記載されている。
【0208】
本発明に係る印刷用原版の製版について以下に記載する。本発明に係る印刷用原版の製版は、基本的に画像露光工程及び現像処理工程を含む。なお、本発明に係る印刷用原版の中で、印刷用捨て版原版は、画像露光工程を経ずに現像処理工程が行われる。
【0209】
〔画像露光工程〕
平版印刷版原版の画像露光は、通常の平版印刷版原版の画像露光操作に準じて行うことができる。
【0210】
画像露光は、線画像、網点画像等を有する透明原画を通してレーザー露光するかデジタルデータによるレーザー光走査等で行われる。光源の波長は700〜1400nmが好ましく用いられる。700〜1400nmの光源としては、赤外線を放射する固体レーザー及び半導体レーザーが好適である。赤外線レーザーに関しては、出力は100mW以上であることが好ましく、1画素当たりの露光時間は20マイクロ秒以内であるのが好ましく、照射エネルギー量は10〜300mJ/cmであることが好ましい。露光時間を短縮するためマルチビームレーザーデバイスを用いることが好ましい。露光機構は、内面ドラム方式、外面ドラム方式、フラットベッド方式等の何れでもよい。画像露光は、プレートセッターなどを用いて常法により行うことができる。
【0211】
〔現像処理工程〕
現像処理は、通常の方法により行うことができる。機上現像の場合、画像露光された平版印刷版原版に、印刷機上で、湿し水と印刷インキとを供給すると、画像記録層の露光部においては、露光により硬化した画像記録層が、親油性表面を有する印刷インキ受容部を形成する。一方、未露光部においては、供給された湿し水及び/又は印刷インキによって、未硬化の画像記録層が溶解又は分散して除去され、その部分に親水性の表面が露出する。その結果、湿し水は露出した親水性の表面に付着し、印刷インキは露光領域の画像記録層に着肉して印刷が開始される。
ここで、最初に平版印刷版原版の表面に供給されるのは、湿し水でもよく印刷インキでもよいが、湿し水を浸透させ機上現像性を促進するために、最初に湿し水を供給することが好ましい。
【0212】
現像液を用いる現像処理は、常法により行うことができる。現像処理型ネガ型平版印刷版原版の現像処理は、例えば、特開2008−15503号公報の段落番号〔0197〕−〔0220〕に記載されている。現像処理型ポジ型平版印刷版原版の現像処理は、例えば、特開2007−148040号公報の段落番号〔0157〕−〔0160〕に記載されている。
【0213】
〔印刷用原版積層体、印刷版積層体〕
本発明に係る印刷用原版積層体は、本発明に係る印刷用原版を積層してなる積層体であり、本発明に係る印刷用原版を複数枚積層してなり、上記ポリマーを含有する層を有する面における最外層と、上記平板粒子を含有する層を有する面における最外層とを直接接触させて積層させた積層体であることが好ましい。
本発明に係る印刷用原版積層体は、本発明の係る印刷用原版を合紙を介さずに直接複数(通常、2〜500枚)重ねてなる積層体である。
本発明に係る印刷用原版積層体は、本発明の係る印刷用原版が有するバックコート層の平板粒子の効果により、バックコート層の傷つき、剥がれを防止性が優れている。
本発明に係る印刷版積層体は、平版印刷版あるいは印刷用捨て版を、各々、合紙を介さずに直接複数枚程度重ねてなる積層体である。この様な積層体は、製版後、印刷開始までに数時間〜数日程度間が空く場合、平版印刷版あるいは印刷用捨て版を、各々、複数枚程度重ねて適当な場所に静置する場合形成される。
【実施例】
【0214】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、高分子化合物において、特別に規定したもの以外は、分子量は質量平均分子量(Mw)であり、繰り返し単位の比率はモル百分率である。また、質量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によるポリスチレン換算値として測定した値である。
【0215】
<支持体1の作製>
粗面化処理として、下記(a)〜(e)の処理を施した。なお、全ての処理工程の間には水洗処理を施した。
【0216】
(a)アルカリエッチング処理
厚み0.3mmのアルミニウム板(材質JIS 1052)に、カセイソーダ濃度25質量%、アルミニウムイオン濃度100g/L、温度60℃の水溶液をスプレー管から吹き付けて、エッチング処理を行った。アルミニウム板の後に電気化学的粗面化処理を施す面のエッチング量は、3g/mであった。
【0217】
(b)デスマット処理
次いで、温度35℃の硫酸水溶液(濃度300g/L)をスプレー管から5秒間吹き付けて、デスマット処理を行った。
【0218】
(c)電解粗面化処理
その後、1質量%塩酸水溶液に塩化アルミニウムを溶解させてアルミニウムイオン濃度を4.5g/Lとした電解液(液温35℃)を用い、60Hzの交流電源を用いて、フラットセル型の電解槽を用いて連続的に電気化学的粗面化処理を行った。交流電源の波形は、正弦波を用いた。電気化学的粗面化処理において、交流のピーク時におけるアルミニウム板のアノード反応時の電流密度は、30A/dmであった。アルミニウム板のアノード反応時の電気量総和とカソード反応時の電気量総和との比は0.95であった。電気量はアルミニウム板のアノード時の電気量総和で480C/dmとした。電解液はポンプを用いて液を循環させることで、電解槽内の撹拌を行った。
【0219】
(d)アルカリエッチング処理
アルミニウム板に、カセイソーダ濃度5質量%、アルミニウムイオン濃度5g/L、温度35℃の水溶液をスプレー管から吹き付けて、エッチング処理を行った。アルミニウム板の電解粗面化処理を施した面のエッチング量は、0.05g/mであった。
【0220】
(e)デスマット処理
硫酸濃度300g/L、アルミニウムイオン濃度5g/L、液温35℃の水溶液をスプレー管から5秒間吹き付けて、デスマット処理を行った。
【0221】
上記粗面化処理を行ったアルミニウム板に対し、22質量%リン酸水溶液を電解液として、処理温度38℃、電流密度15A/dmにて陽極酸化処理を実施した。
その後、スプレーによる水洗を行った。最終的な酸化皮膜量は1.5g/mであった。この基板の表面を、電子顕微鏡を用い15万倍撮影して、n=90の平均ポア径を実測すると30nmであった。
【0222】
<支持体2の作製>
厚さ0.19mmのアルミニウム板を40g/Lの水酸化ナトリウム水溶液中に60℃で8秒間浸漬することにより脱脂し、脱塩水により2秒間洗浄した。次に、アルミニウム板を、15秒間交流を用いて12g/Lの塩酸及び38g/Lの硫酸アルミニウム(18水和物)を含有する水溶液中で、33℃の温度及び130A/dmの電流密度で電気化学的粗面化処理を行った。脱塩水により2秒間洗浄した後、アルミニウム板を155g/Lの硫酸水溶液により70℃で4秒間エッチングすることによりデスマット処理し、脱塩水により25℃で2秒間洗浄した。アルミニウム板を13秒間155g/Lの硫酸水溶液中で、45℃の温度及び22A/dmの電流密度で陽極酸化処理し、脱塩水で2秒間洗浄した。更に、4g/Lのポリビニルホスホン酸水溶液を用いて40℃で10秒間処理し、脱塩水により20℃で2秒間洗浄し、乾燥して支持体を作製した。得られた支持体は、表面粗さRaが0.21μmで、陽極酸化皮膜量は4g/mであった。
【0223】
<支持体3の作製>
厚さ0.3mmの表Aに示す組成のアルミニウム合金板に対し、下記(a)〜(m)の処理を施し、支持体3を作製した。なお、全ての処理工程の間には水洗処理を施し、水洗処理の後にはニップローラで液切りを行った。
【0224】
【表1】
【0225】
(a)機械的粗面化処理(ブラシグレイン法)
パミスの懸濁液(比重1.1g/cm)を研磨スラリー液としてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転する束植ブラシにより機械的粗面化処理を行った。
【0226】
機械的粗面化処理は、研磨材パミスのメジアン径を30μm、束植ブラシの数を4、束植ブラシの回転数を250rpmとして行った。束植ブラシの材質は6・10ナイロンで、ブラシ毛の直径0.3mm、毛長50mmであった。束植ブラシはφ300mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛したものである。束植ブラシ下部の2本の支持ローラ(φ200mm)の距離は300mmであった。束植ブラシはブラシを回転させる駆動モータの負荷が、束植ブラシをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して10kWプラスになるまで押さえつけた。束植ブラシの回転方向はアルミニウム板の移動方向と同じであった。
【0227】
(b)アルカリエッチング処理
アルミニウム板に、カセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度70℃でスプレー管により吹き付けてエッチング処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。アルミニウム溶解量は、10g/mであった。
【0228】
(c)酸性水溶液中でのデスマット処理
次に、硝酸水溶液中でデスマット処理を行った。デスマット処理に用いた硝酸水溶液は、次工程の電気化学的粗面化に用いた硝酸電解液を用いた。液温は35℃であった。デスマット液をスプレーにて吹き付けて3秒間デスマット処理を行った。
【0229】
(d)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。電解液は、温度35℃、硝酸10.4g/Lの水溶液に硝酸アルミニウムを添加してアルミニウムイオン濃度を4.5g/Lに調整した電解液を用いた。交流電源波形は電流値がゼロからピークに達するまでの時間tpが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電流密度は電流のピーク値で30A/dm、補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で185C/dmであった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0230】
(e)アルカリエッチング処理
アルミニウム板に、カセイソーダ濃度5質量%、アルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度50℃でスプレー管により吹き付けてエッチング処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。アルミニウム溶解量は、0.5g/mであった。
【0231】
(f)酸性水溶液中でのデスマット処理
次に、硫酸水溶液中でデスマット処理を行った。デスマット処理には、硫酸濃度170g/L、アルミニウムイオン濃度5g/Lの硫酸水溶液を用いた。液温は60℃であった。デスマット液をスプレーにて吹き付けて3秒間デスマット処理を行った。
【0232】
(g)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。電解液は、液温35℃、塩酸6.2g/Lの水溶液に塩化アルミニウムを添加してアルミニウムイオン濃度を4.5g/Lに調整した電解液を用いた。交流電源波形は電流値がゼロからピークに達するまでの時間tpが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電流密度は電流のピーク値で25A/dmであり、塩酸電解における電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で63C/dmであった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0233】
(h)アルカリエッチング処理
アルミニウム板に、カセイソーダ濃度5質量%、アルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度50℃でスプレー管により吹き付けてエッチング処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。アルミニウム溶解量は、0.1g/mであった。
【0234】
(i)酸性水溶液中でのデスマット処理
次に、硫酸水溶液中でデスマット処理を行った。陽極酸化処理工程で使用する硫酸水溶液(硫酸170g/L水溶液中にアルミニウムイオン5g/Lを含有)を用い、液温35℃で4秒間デスマット処理を行った。デスマット液はスプレーにて吹き付けて3秒間デスマット処理を行った。
【0235】
(j)第1陽極酸化処理
直流電解による陽極酸化装置を用いて第1段階の陽極酸化処理を行った。表Bに示す条件にて陽極酸化処理を行い、所定の皮膜厚の陽極酸化皮膜を形成した。電解液には、表Bに示す成分を含む水溶液を用いた。表B〜Dにおいて、「成分濃度」は、「液成分」欄に記載の各成分の含有濃度(g/L)を表す。
【0236】
【表2】
【0237】
(k)第2陽極酸化処理
直流電解による陽極酸化装置を用いて第2段階の陽極酸化処理を行った。表Cに示す条件にて陽極酸化処理を行い、所定の皮膜厚の陽極酸化皮膜を形成した。電解液には、表Cに示す成分を含む水溶液を用いた。
【0238】
【表3】
【0239】
(l)第3陽極酸化処理
直流電解による陽極酸化装置を用いて第3段階の陽極酸化処理を行った。表Dに示す条件にて陽極酸化処理を行い、所定の皮膜厚の陽極酸化皮膜を形成した。電解液には、表Dに示す成分を含む水溶液を用いた。
【0240】
【表4】
【0241】
(m)親水化処理
非画像部の親水性を確保するため、2.5質量%3号ケイ酸ソーダ水溶液を用いて50℃で7秒間ディップしてシリケート処理を施した。Siの付着量は8.5mg/mであった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0242】
上記で得られたマイクロポアを有する陽極酸化皮膜中の大径孔部の陽極酸化皮膜表面における平均径(表層平均径)、大径孔部の連通位置における平均径(底部平均径)、小径孔部の連通位置における平均径(小径孔部径)、大径孔部および小径孔部の平均深さ、小径孔部の底部からアルミニウム板表面までの陽極酸化皮膜の厚み(バリア層厚)、小径孔部の密度など表Eに示す。上記小径孔部は、深さが異なる第1の小径孔部及び第2の小径孔部を含み、深い方を第1の小径孔部と称する。
【0243】
【表5】
【0244】
【表6】
【0245】
表Eにおいて、バリア層厚として、平均値と最小値とを示す。平均値は、第1の小径孔部の底部からアルミニウム板表面までの陽極酸化皮膜の厚みを50箇所測定し、それらを算術平均したものである。
【0246】
マイクロポアの平均径(大径孔部および小径孔部の平均径)は、大径孔部表面および小径孔部表面を倍率15万倍のFE−SEMでN=4枚観察し、得られた4枚の画像において、400×600nmの範囲に存在するマイクロポア(大径孔部および小径孔部)の径を測定し、平均した値である。なお、大径孔部の深さが深く、小径孔部の径が測定しづらい場合は、陽極酸化皮膜上部を切削し、その後各種径を求めた。
大径孔部の平均深さは、支持体(陽極酸化皮膜)の断面を倍率50万倍のFE−TEMで観察し、得られた画像において、任意のマイクロポアの表面から連通位置までの距離を60個(N=60)測定し、それらを平均した値である。また、小径孔部の平均深さは、支持体(陽極酸化皮膜)の断面をFE−SEMで観察し(5万倍)、得られた画像において、任意のマイクロポア25個の深さを測定し、平均した値である。
【0247】
「連通部密度」は、連通位置における陽極酸化皮膜断面の小径孔部の密度を意味する。「表面積増加倍率」は、下記式(A)に基づいて計算した値を意味する。
式(A)
表面積増加倍率 = 1+ポア密度×((π×(表層平均径/2+底部平均径/2)×((底部平均径/2−表層平均径/2)+深さA1/2+π×(底部平均径/2)−π×(表層平均径/2)))
小径孔部の「平均深さ(nm)」欄において、第2の小径孔部の平均深さを左側に、第1の小径孔部の平均深さを右側に示す。表E中の小径孔部の「連通部密度」欄において、小径孔部の連通部密度と共に、第1の小径孔部の密度をカッコ書き中に示す。
また、第2の小径孔部の底部から第1の小径孔部の底部までに位置する第1の小径孔部の平均径は、12nm程度であった。
【0248】
〔実施例1〕
<バックコート層の形成>
(バックコート層塗布液(1)の調製)
・ポリビニルアルコール((株)クラレ製、PVA−405、
212.03g
けん化度81.5モル%、重合度500)6質量%水溶液
・片倉コープアグリ(株)製、ソマシフMEB−3 8質量%水溶液
11.61g
上記成分を混合、撹拌して、バックコート層塗布液(1)を調製した。
【0249】
支持体1のバックコート層側(非印刷面側)の表面に、上記組成のバックコート層塗布液(1)をバー塗布し、100℃で120秒間乾燥し、厚さ1.2μmのバックコート層を形成した。
【0250】
<下塗り層の形成>
支持体1の他方(印刷面側)の表面に、下記組成の下塗り層塗布液(1)を乾燥塗布量が20mg/mになるよう塗布して、下塗り層を形成した。
(下塗り層塗布液(1))
・下塗り層用化合物(UC−1)(下記構造) 0.18g
・ヒドロキシエチルイミノ二酢酸 0.05g
・界面活性剤(エマレックス710、日本エマルジョン(株)製)
0.03g
・水 28.0g
【0251】
【化7】
【0252】
<画像記録層の形成>
バックコート層及び下塗り層を有する上記支持体の下塗り層上に、下記組成の画像記録層塗布液(2)をバー塗布した後、70℃で60秒オーブン乾燥し、乾燥塗布量0.6g/mの画像記録層(ポリマー含有層1)を形成して、平版印刷用原版を作成した。
【0253】
(画像記録層塗布液(2))
・熱可塑性ポリマー粒子水分散液(下記) 20.0g
・赤外線吸収剤(2)(下記構造) 0.2g
・重合開始剤(Irgacure250、チバスペシャリティケミカルズ社製)
0.4g
・重合開始剤(2)(下記構造) 0.15g
・重合性化合物 SR−399(サートマー社製) 1.50g
・メルカプト−3−トリアゾール 0.2g
・Byk336(Byk Chemie社製) 0.4g
・Klucel M(Hercules社製) 4.8g
・ELVACITE 4026(Ineos Acrylics社製)
2.5g
・アニオン性界面活性剤1(下記構造) 0.15g
・n−プロパノール 55.0g
・2−ブタノン 17.0g
【0254】
上記組成中の商品名で記載の化合物は下記の通りである。
・IRGACURE 250:(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]ヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート(75質量%プロピレンカーボナート溶液)
・SR−399:ジペンタエリスリトールペンタアクリレート
・Byk 336:変性ジメチルポリシロキサン共重合体(25質量%キシレン/メトキシプロピルアセテート溶液)
・Klucel M:ヒドロキシプロピルセルロース(2質量%水溶液)
・ELVACITE 4026:高分岐ポリメチルメタクリレート(10質量%2−ブタノン溶液)
【0255】
【化8】
【0256】
【化9】

【0257】
【化10】
【0258】
(熱可塑性ポリマー粒子水分散液の作製)
1000mlの4つ口フラスコに撹拌機、温度計、滴下ロート、窒素導入管、還流冷却器を施し、窒素ガスを導入して脱酸素を行いつつ、ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(PEGMA、エチレングリコールの平均の繰返し単位数:20)10g、蒸留水200g及びn−プロパノール200gを加えて内温が70℃となるまで加熱した。次に予め混合されたスチレン(St)10g、アクリロニトリル(AN)80g及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.8gの混合物を1時間かけて滴下した。滴下終了後5時間そのまま反応を続けた後、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.4gを添加し、内温を80℃まで上昇させた。続いて、0.5gの2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを6時間かけて添加した。合計で20時間反応させた段階でポリマー化は98%以上進行しており、質量比でPEGMA/St/AN=10/10/80の熱可塑性ポリマー粒子水分散液が得られた。この熱可塑性ポリマー粒子の粒径分布は、体積平均粒子径150nmに極大値を有していた。
【0259】
ここで、粒径分布は、ポリマー粒子の電子顕微鏡写真を撮影し、写真上で粒子の粒径を総計で5000個測定し、得られた粒径測定値の最大値から0の間を対数目盛で50分割して各粒径の出現頻度をプロットして求めた。なお非球形粒子については写真上の粒子面積と同一の粒子面積を持つ球形粒子の粒径値を粒径とした。
【0260】
〔実施例2〕
実施例1のバックコート層塗布液(1)をバックコート層塗布液(2)に変更した以外は実施例1と同様にしてバックコート層、下塗り層、及び画像記録層を形成して、平版印刷版原版を作製した。
(バックコート層塗布液(2)の調製)
・ポリビニルアルコール((株)クラレ製、PVA−405、
212.03g
けん化度81.5モル%、重合度500)6質量%水溶液
・クニミネ工業(株)製、スメクトン−SWF 0.93g
上記成分を混合、撹拌して、バックコート層塗布液(2)を調製した。
【0261】
〔実施例3〜9〕
実施例2のバックコート層塗布液(2)中の平板粒子を表1の平板粒子に変更した以外は、実施例2と同様にしてバックコート層、下塗り層、及び画像記録層を形成して、平版印刷版原版を作製した。
【0262】
〔実施例10〕
実施例1のバックコート層塗布液(1)をバックコート層塗布液(10)に変更した以外は、実施例1と同様にしてバックコート層、下塗り層、及び画像記録層を形成して、平版印刷版原版を作製した。
(バックコート層塗布液(10)の調製)
・ポリスチレン(和光純薬(株)製、重合度2000) 12.71g
・クニミネ工業(株)製、スメクトン−SAN 0.93g
・酢酸エチル 85.43g
上記成分を混合、撹拌して、バックコート層塗布液(10)を調製した。
【0263】
〔実施例11〕
実施例10のバックコート層塗布液(10)中の平板粒子を表1の平板粒子に変更した以外は実施例10と同様にしてバックコート層、下塗り層、及び画像記録層を形成して、平版印刷版原版を作製した。
【0264】
〔実施例12〕
実施例1のバックコート層塗布液(1)をバックコート層塗布液(12)に変更した以外は、実施例1と同様にしてバックコート層、下塗り層及び画像記録層を作製した。
(バックコート層塗布液(12)の調製)
・ポリビニルアルコール
(クラレ(株)製クラレポバールLM−20(下記化学式) 12.71g
・クニミネ工業(株)製、スメクトン−SEN 0.93g
・メタノール 85.43g
上記成分を混合、撹拌して、バックコート層塗布液(12)を調製した。
【0265】
【化11】
【0266】
〔実施例13〕
実施例1のバックコート層塗布液(1)をバックコート層塗布液(13)に変更した以外は、実施例1と同様にしてバックコート層、下塗り層及び画像記録層を形成して、平版印刷版原版を作製した。
(バックコート層塗布液(13)の調製)
・メタクリル酸メチル/メタクリル酸共重合体,Mw=4万(下記構造)
12.71g
(MMA/MAA共重合体)
・片倉コープアグリ(株)製、ソマシフMEE 0.93g
・2−ブタノン 76.89g
・1−メトキシ−2−プロパノール 8.54g
上記成分を混合、撹拌して、バックコート層塗布液(13)を調製した。
【0267】
【化12】
【0268】
〔実施例14〜20〕
実施例13のバックコート層の厚み、バックコート層塗布液(1)中の平板粒子の種類と添加量を表1のように変更した以外は実施例13と同様にしてバックコート層、下塗り層及び画像記録層を形成して、平版印刷版原版を作製した。
【0269】
〔実施例21〕
実施例1のバックコート層塗布液(1)をバックコート層塗布液(21)に変更した以外は、実施例1と同様にしてバックコート層、下塗り層及び画像記録層を形成して、平板印刷版原版を作製した。
(バックコート層塗布液(21)の調製)
・テトラエチルシリケート(金属酸化物) 50質量部
・水 20質量部
・メタノール 15質量部
・リン酸 0.05質量部
【0270】
上記成分を混合、撹拌すると約5分で発熱が開始した。60分間反応させた後、以下に示す液を加えることによりバックコート塗布液(21)を調製した。
【0271】
・ピロガロールホルムアルデヒド縮合樹脂(Mw:2000) 4質量部
・ジメチルフタレート 5質量部
・フッ素系界面活性剤(N−ブチルペルフルオロオクタン
スルホンアミドエチルアクリレート/ポリオキシエチレンアクリレート共重合体(Mw:20000) 0.7質量部
・クニミネ工業(株)製、スメクトン−STN 80質量部
・メタノール 800質量部
【0272】
〔実施例22〜25〕
実施例21のバックコート層の厚み、バックコート層塗布液(21)中の平板粒子の添加量を表1のように変更した以外は実施例21と同様にしてバックコート層、下塗り層及び画像記録層を形成して、平版印刷版原版を作製した。
【0273】
〔実施例26の作製〕
実施例1のバックコート層塗布液(1)をバックコート層塗布液(26)に変更した以外は、実施例1と同様にしてバックコート層、下塗り層及び画像記録層を形成して、平版印刷版原版を作製した。
(バックコート層塗布液(26)の調製)
・テトラエチルシリケート 50質量部
・水 20質量部
・メタノール 15質量部
・リン酸 0.05質量部
【0274】
上記成分を混合、撹拌すると約5分で発熱が開始した。60分間反応させた後、以下に示す液を加えることによりバックコート塗布液(26)を調製した。
【0275】
・ピロガロールホルムアルデヒド縮合樹脂(Mw:2000) 4質量部
・ジメチルフタレート 5質量部
・フッ素系界面活性剤(N−ブチルペルフルオロオクタンスルホンアミドエチルアクリレート/ポリオキシエチレンアクリレート共重合体(Mw:20000)
0.7質量部
・根上工業(株)製シリカ被覆アクリル樹脂粒子 アートパールJ−7P
(平板粒子以外の粒子) 25質量部
・クニミネ工業(株)製、スメクトン−STN 50質量部
・メタノール 800質量部
【0276】
〔実施例27の作製〕
実施例26のバックコート層塗布液(26)の平板粒子以外の粒子の種類を表1のように変更した以外は、実施例26と同様にしてバックコート層、下塗り層及び画像記録層を形成して、平版印刷版原版を作製した。
平板粒子以外の粒子としては、サイシリア440(富士シリシア化学(株)製)を使用した。
【0277】
〔実施例28〕
実施例1のバックコート層塗布液(1)をバックコート層塗布液(28)に変更した以外は、実施例1と同様にしてバックコート層、下塗り層及び画像記録層を形成して、平版印刷版原版を作製した。
(バックコート層塗布液(28)の調製)
・メタクリル酸メチル/メタクリル酸共重合体,Mw=4万(下記構造)
12.71g
・クニミネ工業(株)製、スメクトン−STN 0.93g
・日産化学工業(株)製、シリカ被覆メラミン樹脂粒子オプトビーズ3500M
0.47g
(平板粒子以外の粒子)
・2−ブタノン 76.89g
・1−メトキシ−2−プロパノール 8.54g
上記成分を混合、撹拌して、バックコート層塗布液(28)を調製した。
【0278】
【化13】
【0279】
〔実施例29〜36〕
実施例28のバックコート層の厚み、バックコート層塗布液(28)中の平板粒子の添加量、平版粒子以外の粒子の種類、及び添加量を表1のように変更した以外は実施例28と同様にしてバックコート層、下塗り層及び画像記録層を形成して、平版印刷版原版を作製した。
平板粒子以外の粒子について、以下に記載する。
トスパール145(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)
アートパールJ−6PF(根上工業(株)製)
オプトビーズ6500M(日産化学工業(株)製)
【0280】
〔実施例37〕
支持体2のバックコート層側(非印刷面側)の表面に、実施例17のバックコート層塗布液をバー塗布し、100℃で120秒間乾燥し、厚さ1.2μmのバックコート層を形成した。
【0281】
<画像記録層の形成>
下記熱可塑性ポリマー粒子、赤外線吸収剤及びポリアクリル酸を含有する画像記録層水系塗布液を調製し、pHを3.6に調整した後、支持体2の印刷面側の表面上に塗布し、50℃で1分間乾燥して画像記録層を形成して作製した。各成分の乾燥後の塗布量を以下に示す。
【0282】
熱可塑性ポリマー粒子: 0.7g/m
赤外線吸収剤 IR−01: 1.20×10−4g/m
ポリアクリル酸: 0.09g/m
【0283】
画像記録層塗布液に用いた熱可塑性ポリマー粒子、赤外線吸収剤IR−01、ポリアクリル酸は以下に示す通りである。
【0284】
熱可塑性ポリマー粒子:スチレン/アクリロニトリル共重合体(モル比50/50)、Tg:99℃、体積平均粒子径:60nm
赤外線吸収剤IR−01:下記構造の赤外線吸収剤
【0285】
【化14】
【0286】
ポリアクリル酸 Mw:250,000
【0287】
〔実施例38〕
支持体3のバックコート層側(非印刷面側)の表面に、実施例17のバックコート層塗布液をバー塗布し、100℃で120秒間乾燥し、厚さ1.2μmのバックコート層を形成した。
【0288】
<下塗り層の形成>
支持体3の印刷面側の表面に、下塗り層塗布液(1)を乾燥塗布量が20mg/mになるよう塗布して、下塗り層を形成した。
【0289】
下塗り層上に、下記組成の画像記録層塗布液(3)をバー塗布した後、100℃で60秒オーブン乾燥し、乾燥塗布量1.0g/mの画像記録層を形成した。
画像記録層塗布液(3)は下記感光液(1)及びミクロゲル液(1)を塗布直前に混合し撹拌することにより得た。
(画像記録層塗布液(3))
(感光液(1))
・バインダーポリマー(1)(下記構造、Mw:55,000、n(エチレンオキサイド(EO)繰り返し単位数):2):0.240部
・赤外線吸収剤(1)(下記構造):0.020部
・ボレート化合物(1)(テトラフェニルホウ酸ナトリウム):0.010部
・重合開始剤(1)(下記構造):0.162部
・重合性化合物(トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、NKエステルA−9300、新中村化学工業(株)製):0.192部
・アニオン性界面活性剤1(上記構造):0.050部
・フッ素系界面活性剤(1)(下記構造):0.008部
・2−ブタノン:1.091部
・1−メトキシ−2−プロパノール:8.609部
【0290】
(ミクロゲル液(1))
・ミクロゲル(1):2.640部
・蒸留水:2.425部
【0291】
【化15】
【0292】
【化16】

【0293】
(ミクロゲル(1)の作製)
上記ミクロゲル液に用いたミクロゲル(1)の調製法を以下に示す。
【0294】
<多価イソシアネート化合物(1)の調製>
イソホロンジイソシアネート17.78部(80モル当量)と下記多価フェノール化合物(1)7.35部(20モル当量)との酢酸エチル(25.31部)懸濁溶液に、ビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)(ネオスタン U−600、日東化成(株)製)0.043部を加えて撹拌した。発熱が収まった時点で反応温度を50℃に設定し、3時間撹拌して多価イソシアネート化合物(1)の酢酸エチル溶液(50質量%)を得た。
【0295】
【化17】
【0296】
<ミクロゲル(1)の調製>
下記油相成分及び水相成分を混合し、ホモジナイザーを用いて12,000rpmで10分間乳化した。得られた乳化物を45℃で4時間撹拌後、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン−オクチル酸塩(U−CAT SA102、サンアプロ(株)製)の10質量%水溶液5.20部を加え、室温で30分撹拌し、45℃で24時間静置した。蒸留水で、固形分濃度を20質量%になるように調整し、ミクロゲル(1)の水分散液を得た。動的光散乱式粒径分布測定装置LB−500((株)堀場製作所製)を用いて、光散乱法により体積平均粒径を測定したところ、0.28μmであった。
【0297】
(油相成分)
(成分1)酢酸エチル:12.0部
(成分2)トリメチロールプロパン(6モル)とキシレンジイソシアネート(18モル)を付加させ、これにメチル片末端ポリオキシエチレン(1モル、オキシエチレン単位の繰返し数:90)を付加させた付加体(50質量%酢酸エチル溶液、三井化学(株)製):3.76部
(成分3)多価イソシアネート化合物(1)(50質量%酢酸エチル溶液として):15.0部
(成分4)ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(SR−399、サートマー社製)の65質量%酢酸エチル溶液:11.54部
(成分5)スルホン酸塩型界面活性剤(パイオニンA−41−C、竹本油脂(株)製)の10%酢酸エチル溶液:4.42部
【0298】
(水相成分)
蒸留水:46.87部
【0299】
<保護層の形成>
画像記録層上に、下記組成の保護層塗布液(1)をバー塗布した後、120℃で60秒オーブン乾燥し、乾燥塗布量0.15g/mの保護層を形成して平版印刷版原版を作製した。
【0300】
(保護層用塗布液(1))
・無機層状化合物分散液(1)(下記) 1.5g
・親水性ポリマー(1)(下記構造、Mw:30,000)(固形分)
0.03g
・ポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)製、CKS50、
0.10g
スルホン酸変性、けん化度99モル%以上、重合度300)6質量%水溶液
・ポリビニルアルコール((株)クラレ製、PVA−405、 0.03g
けん化度81.5モル%、重合度500)6質量%水溶液
・界面活性剤(エマレックス710、日本エマルジョン(株)製)
(下記構造)1質量%水溶液 0.86g
・イオン交換水 6.0g
【0301】
【化18】
【0302】
(無機層状化合物分散液(1)の調製)
イオン交換水193.6gに合成雲母ソマシフME−100(コープケミカル(株)製)6.4gを添加し、ホモジナイザーを用いて体積平均粒子径(レーザー散乱法)が3μmになるまで分散した。得られた分散粒子のアスペクト比は100以上であった。
【0303】
〔実施例39〕
<下塗り層の形成>
実施例38の作製に用いたバックコート層を有する支持体3の印刷面側の表面に、下記組成の下塗り層塗布液(2)をワイヤーバーにて塗布し、90℃で30秒間乾燥した。塗布量は10mg/mであった。
【0304】
(下塗り層塗布液(2))
・高分子化合物A(下記構造)(質量平均分子量:3万) 0.05g
・メタノール 27g
・イオン交換水 3g
【0305】
【化19】
【0306】
<画像記録層の形成>
下記組成の画像記録層塗布液(4)を、下塗り層上にワイヤーバーを用いて塗布した。乾燥は、温風式乾燥装置にて115℃で34秒間行った。乾燥後の被覆量は1.4g/mであった。
【0307】
(画像記録層塗布液(4))
・赤外線吸収剤(IR−1)(下記構造) 0.074g
・重合開始剤(OS−12)(下記構造) 0.280g
・添加剤(PM−1)(下記構造) 0.151g
・重合性化合物(AM−1)(下記構造) 1.00g
・バインダーポリマー(BT−1)(下記構造) 1.00g
・エチルバイオレット(C−1)(下記構造) 0.04g
・フッ素系界面活性剤 0.015g
(メガファックF−780−F DIC(株)製、
メチルイソブチルケトン(MIBK)30質量%溶液)
・メチルエチルケトン 10.4g
・メタノール 4.83g
・1−メトキシ−2−プロパノール 10.4g
【0308】
【化20】
【0309】
【化21】
【0310】
<保護層の形成>
画像記録層上に、下記組成の保護層塗布液(2)をワイヤーバーで塗布し、温風式乾燥装置にて125℃で75秒間乾燥させたて保護層を形成した。乾燥後の塗布量は1.6g/mであった。かくして実施例39のネガ型の平版印刷版原版を作製した。
【0311】
<保護層塗布液(2)>
・合成雲母(ソマシフME−100、8%水分散液、コープケミカル(株)製)
94g
・ポリビニルアルコール(CKS−50:ケン化度99モル%、重合度300、日本合成化学工業(株)製) 58g
・カルボキシメチルセルロース(セロゲンPR、第一工業製薬(株)製)
24g
・界面活性剤−1(プルロニックP−84、BASF社製) 2.5g
・界面活性剤−2(エマレックス710、日本エマルジョン(株)製)
5g
・純水 1364g
【0312】
〔実施例40〕
<下塗り層の形成>
実施例38の作製に用いたバックコート層を有する支持体3の印刷面側の表面に、下記組成の下塗り層塗布液(3)をバーコーターで塗布し、80℃で15秒間乾燥し、乾燥後の塗布量が18mg/mの下塗り層を形成した。
【0313】
(下塗り層塗布液(3))
・高分子化合物(下記構造) 0.3g
・メタノール 100g
【0314】
【化22】
【0315】
<画像記録層の形成>
下塗り層上に、下記組成の下層塗布液を乾燥後の塗布量が0.85g/mになるようバーコーターで塗布し、160℃で44秒間乾燥し、直ちに17〜20℃の冷風で支持体の温度が35℃になるまで冷却して下層を形成した。その後、下記組成の上層塗布液を乾燥後の塗布量が0.22g/mになるようにバーコーターで塗布し、148℃で25秒間乾燥し、更に20〜26℃の風で徐冷して上層を形成した。かくして実施例40のポジ型の平版印刷版原版を作製した。
【0316】
(下層塗布液)
・N−(4−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド/アクリロニトリル/
メタクリル酸メチル 2.1g
(36/34/30質量%:質量平均分子量50000、
酸価2.65)
・m,p−クレゾールノボラック 0.1g
(m/p比=6/4、質量平均分子量4500、
未反応クレゾール0.8質量%含有、Tg:75℃)
・シアニン染料A(下記構造) 0.13g
・4,4’−ビスヒドロキシフェニルスルホン 0.13g
・無水テトラヒドロフタル酸 0.19g
・p−トルエンスルホン酸 0.008g
・3−メトキシ−4−ジアゾジフェニルアミン
ヘキサフルオロホスフェート 0.032g
・エチルバイオレットの対イオンを6−ヒドロキシ−2−ナフタレンスルホン酸
に変えた染料 0.078g
・フッ素系界面活性剤B(下記構造) 0.007g
・メチルエチルケトン 25.0g
・1−メトキシ−2−プロパノール 13.0g
・γ−ブチロラクトン 13.0g
【0317】
【化23】
【0318】
【化24】
【0319】
(上層塗布液)
・フェノール/m−クレゾール/p−クレゾールノボラック 0.35g
(モル比=5/3/2、質量平均分子量:5000、
未反応クレゾール:1.2質量%含有、Tg:70℃)
・アクリル系樹脂C(下記構造) 0.042g
・シアニン染料A(上記構造) 0.019g
・アンモニウム化合物D(下記構造) 0.004g
・スルホニウム化合物G(下記構造) 0.032g
・フッ素系界面活性剤B(上記構造) 0.0045g
・フッ素系界面活性剤E(下記構造) 0.0033g
・フッ素系ポリマーF(下記構造) 0.018g
・メチルエチルケトン 10.0g
・1−メトキシ−2−プロパノール 20.0g
【0320】
【化25】
【0321】
〔実施例41〕
<下塗り層の形成>
実施例38の作製に用いたバックコート層を有する支持体3の印刷面側の表面に、下記組成の下塗り層塗布液(4)をバーコーターで塗布し、80℃で15秒間乾燥し、乾燥後の塗布量が18mg/mの下塗り層を形成した。
【0322】
<下塗り層用塗布液(4)>
・ポリマー(下記構造) 0.3質量部
・純水 60.0質量部
・メタノール 939.7質量部
【0323】
【化26】
【0324】
<非感光性層の形成>
下塗り層の上に、下記組成の非感光性層塗布液(1)をバー塗布し、100℃で60秒間乾燥し、乾燥後の塗布量が1.0mg/mの非感光性層を形成した。
(非感光性層塗布液(1)>
・バインダーポリマーA(下記) 2.465質量部
・リン酸(85質量%水溶液) 0.08質量部
・スルホフタル酸(50質量%水溶液) 0.017質量部
・トリカルバリル酸 0.017質量部
・着色剤(VPB−Naps(ビクトリアピュアブルーの
ナフタレンスルホン酸塩、保土ヶ谷化学(株)製) 0.0014質量部
・フッ素系界面活性剤(メガファックF−780−F、
DIC(株)製、MEKの30質量%溶液) 0.009質量部
・メチルエチルケトン(MEK) 7.93質量部
・メタノール 6.28質量部
・1−メトキシ−2−プロパノール(MFG) 2.01質量部
【0325】
上記バインダーポリマーAは、下記(1)〜(4)の4種類のモノマーの縮合反応物(質量平均分子量:85,000、酸含有量:1.64meq/g)のMFG/MEK=1/1の16質量%溶液である。
(1)4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート 37.5モル%
(2)ヘキサメチレンジイソシアネート 12.5モル%
(3)2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸 32.5モル%
(4)テトラエチレングリコール 17.5モル%
【0326】
<親水性層の形成>
非感光性層の上に、下記組成の親水性層塗布液(1)をバー塗布し、125℃で75秒間乾燥し、乾燥後の塗布量が1.6mg/mの非感光性層を形成した。かくして実施例41の印刷用捨て版原版を作製した。
【0327】
(親水性層塗布液(1)
・合成雲母(ソマシフME−100、8%水分散液、
コープケミカル(株)製) 94質量部
・ポリビニルアルコール(CKS−50:ケン化度:99モル%、
重合度:300、日本合成化学工業(株)製) 58質量部
・カルボキシメチルセルロース(セロゲンPR、第一工業製薬(株)製)
24質量部
・界面活性剤−1(プルロニックP−84、BASF社製)
2.5質量部
・界面活性剤−2(エマレックス710、日本エマルジョン(株)製)
5質量部
・純水 1364質量部
【0328】
上記プルロニックP−84は、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド ブロック共重合体であり、エマレックス710は、ポリオキシエチレンラウリルエーテルである。
【0329】
〔実施例42〕
<下塗り層の形成>
実施例38の作製において、画像記録層塗布液(3)から赤外線吸収剤(1)と重合開始剤(1)を除く以外は同様にして、実施例42の印刷用捨て版原版を作製した。
【0330】
〔実施例43〜48〕
実施例37〜42の各バックコート層に表1のように平板粒子以外の粒子のアートパールJ−6PFを添加したものにすることで、実施例43〜46の平版印刷用原版、並びに実施例47及び48の印刷用捨て版原版を作製した。
【0331】
〔比較例1〜6〕
比較例1は実施例1、比較例2は実施例10、比較例3は実施例12、比較例4は実施例13、比較例5は実施例22、比較例5は実施例26からバックコート層の平板粒子を除いたバックコート層塗布液を塗布することで、それぞれ平版印刷版原版を作製した。
【0332】
〔比較例7〕
実施例1のバックコート層のバックコート層塗布液をバックコート層塗布液(107)に変更した以外は実施例1と同様にしてバックコート層を形成して、作製した。
(バックコート層塗布液(107)の調製)
・スチレン−メタクリル酸メチル共重合体 12.71g
・富士シリシア化学(株)製、サイリシア436 0.93g
・2−ブタノン 85.43g
【0333】
〔比較例8〜14〕
比較例8〜14は、それぞれ実施例37〜42の各バックコート層から平板粒子を除いた以外は同様にして、比較例8〜12の平版印刷用原版、並びに比較例13〜14の印刷用捨て版原版を作製した。
【0334】
〔印刷用原版の評価〕
各実施例、比較例で得た印刷用原版(平版印刷版原版、印刷用捨て版原版)について以下の評価を行った。
<耐引っ掻き傷性>
耐引っ掻き傷性の評価は、印刷用原版のバック親水層側版面コート層の引っ掻き試験により行った。即ち、印刷用原版のバックコート層に対して、連続加重式引っ掻き強度試験器(SB−53、新東科学(株)製)を用いて、サファイヤ針0.1mmφ、針の移動速度10cm/秒の条件下、加重10〜100gで10g刻みで引っ掻き試験行った後、傷が発生する荷重を目視で観察し、下記の基準で評価した。3が実用下限レベル、2以下は実用上不可レベルである。
5: 100gでも傷がつかない。
4: 80〜100gで傷が発生する。
3: 50〜70gで傷が発生する。
2: 20〜40gで傷が発生する。
1: 10gで傷が発生する。
【0335】
<耐擦り剥がれ性>
印刷用原版を25度60%RHの環境下で2時間調湿後、2.5cm×2.5cmに打ち抜き、新東科学(株)製の連続加重式引掻強度試験機 TYPE:18に取り付け、打ち抜いていない印刷用原版のバックコート層の面の上に、打ち抜いた印刷用原版の印刷面側が接触するようにセットし、0〜1000gfの加重で印刷用原版の数箇所に擦れ傷をつけた。バックコート層のキズの程度を目視で観察した。評価は下記の基準で行い、3が実用下限レベル、2以下は実用上不可レベルである。
5:剥がれなし。
4:視認では確認はできないが、50倍率のルーペで確認可能な剥がれが1か所あり。
3:視認では確認はできないが、50倍率のルーペで確認可能な剥がれが数か所あり。
2:複数個所に視認で確認可能な剥がれがあり。
1:全面に剥がれが多数あり。
【0336】
<平板粒子を含有する層の算術平均高さSaの測定>
平板粒子を含有する層の算術平均高さSaの測定は、ISO 25178に記載の方法に準じて行った。すなわち、菱化システム(株)製のマイクロマップMM3200−M100を用いて、同一サンプルから3か所以上選択して測定し、それらの平均値を算術平均高さSaとした。測定範囲に関しては、サンプル表面からランダムに選んだ1cm×1cmの範囲を測定した。
評価結果を下記表1に示す。
【0337】
【表7】
【0338】
【表8】
【0339】
【表9】
【0340】
【表10】
【0341】
<支持体4〜12の製造>
厚さ0.3mmの材質1Sのアルミニウム板(アルミニウム合金板)に対し、下記のいずれかの処理を施し、支持体4〜12を製造した。なお、全ての処理工程の間には水洗処理を施し、水洗処理の後にはニップローラで液切りを行った。
【0342】
<処理A:支持体4〜6の作製>
(A−a)アルカリエッチング処理
アルミニウム板に、カセイソーダ濃度26質量%及びアルミニウムイオン濃度6.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度70℃でスプレーにより吹き付けてエッチング処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。後に電気化学的粗面化処理を施す面のアルミニウム溶解量は、5g/mであった。
【0343】
(A−b)酸性水溶液を用いたデスマット処理
次に、酸性水溶液を用いてデスマット処理を行った。具体的には、酸性水溶液をアルミニウム板にスプレーにて3秒間吹き付けて、デスマット処理を行った。デスマット処理に用いる酸性水溶液は、硫酸濃度150g/Lの水溶液を用いた。その液温は30℃であった。
【0344】
(A−c)塩酸水溶液を用いた電気化学的粗面化処理
次に、塩酸濃度14g/L、アルミニウムイオン濃度13g/L、及び、硫酸濃度3g/Lの電解液を用い、交流電流を用いて電気化学的粗面化処理を行った。電解液の液温は30℃であった。アルミニウムイオン濃度は塩化アルミニウムを添加して調整した。
交流電流の波形は正と負の波形が対称な正弦波であり、周波数は50Hz、交流電流1周期におけるアノード反応時間とカソード反応時間は1:1、電流密度は交流電流波形のピーク電流値で75A/dmであった。また、電気量はアルミニウム板がアノード反応に預かる電気量の総和で450C/dmであり、電解処理は112.5C/dmずつ4秒間の通電間隔を開けて4回に分けて行った。アルミニウム板の対極にはカーボン電極を用いた。その後、水洗処理を行った。
【0345】
(A−d)アルカリエッチング処理
電気化学的粗面化処理後のアルミニウム板を、カセイソーダ濃度5質量%及びアルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度45℃でスプレーにより吹き付けてエッチング処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。電気化学的粗面化処理が施された面のアルミニウムの溶解量は、0.2g/mであった。
【0346】
(A−e)酸性水溶液を用いたデスマット処理
次に、酸性水溶液を用いてデスマット処理を行った。具体的には、酸性水溶液をアルミニウム板にスプレーにて3秒間吹き付けて、デスマット処理を行った。デスマット処理に用いた酸性水溶液としては、陽極酸化処理工程で発生した廃液(硫酸濃度170g/L及びアルミニウムイオン濃度5g/Lの水溶液)を用いた。その液温は、30℃であった。
【0347】
(A−f)陽極酸化処理
図1に示す構造の直流電解による陽極酸化装置を用いて陽極酸化処理を行った。表Fに示す「第1陽極酸化処理」欄の条件にて陽極酸化処理を行い、所定の皮膜量の陽極酸化皮膜を形成した。
なお、図1に示す陽極酸化処理装置410において、アルミニウム板416は、図1中矢印で示すように搬送される。電解液418が貯溜された給電槽412にてアルミニウム板416は給電電極420によって(+)に荷電される。そして、アルミニウム板416は、給電槽412においてローラ422によって上方に搬送され、ニップローラ424によって下方に方向変換された後、電解液426が貯溜された電解処理槽414に向けて搬送され、ローラ428によって水平方向に方向転換される。ついで、アルミニウム板416は、電解電極430によって(−)に荷電されることにより、その表面に陽極酸化皮膜が形成され、電解処理槽414を出たアルミニウム板416は後工程に搬送される。上記陽極酸化処理装置410において、ローラ422、ニップローラ424及びローラ428によって方向転換手段が構成され、アルミニウム板416は、給電槽412と電解処理槽414との槽間部において、上記ローラ422、424及び428により、山型及び逆U字型に搬送される。給電電極420と電解電極430とは、直流電源434に接続されている。
【0348】
【表11】
【0349】
(A−g)ポアワイド処理
上記陽極酸化処理したアルミニウム板を、表Gに示す温度で、カセイソーダ濃度5質量%及びアルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液に表Gに示す時間条件にて浸漬し、ポアワイド処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0350】
【表12】
【0351】
<処理(B):支持体7の作製>
(B−a)アルカリエッチング処理
アルミニウム板に、カセイソーダ濃度26質量%及びアルミニウムイオン濃度6.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度70℃でスプレーにより吹き付けてエッチング処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。後に電気化学的粗面化処理を施す面のアルミニウム溶解量は、5g/mであった。
【0352】
(B−b)酸性水溶液を用いたデスマット処理
次に、酸性水溶液を用いてデスマット処理を行った。具体的には、酸性水溶液をアルミニウム板にスプレーにて3秒間吹き付けて、デスマット処理を行った。デスマット処理に用いる酸性水溶液は、硫酸濃度150g/Lの水溶液を用いた。その液温は30℃であった。
【0353】
(B−c)塩酸水溶液を用いた電気化学的粗面化処理
次に、塩酸濃度14g/L、アルミニウムイオン濃度13g/L、及び、硫酸濃度3g/Lの電解液を用い、交流電流を用いて電気化学的粗面化処理を行った。電解液の液温は30℃であった。アルミニウムイオン濃度は塩化アルミニウムを添加して調整した。
交流電流の波形は正と負の波形が対称な正弦波であり、周波数は50Hz、交流電流1周期におけるアノード反応時間とカソード反応時間は1:1、電流密度は交流電流波形のピーク電流値で75A/dmであった。また、電気量はアルミニウム板がアノード反応に預かる電気量の総和で450C/dmであり、電解処理は112.5C/dmずつ4秒間の通電間隔を開けて4回に分けて行った。アルミニウム板の対極にはカーボン電極を用いた。その後、水洗処理を行った。
【0354】
(B−d)アルカリエッチング処理
電気化学的粗面化処理後のアルミニウム板を、カセイソーダ濃度5質量%及びアルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度45℃でスプレーにより吹き付けてエッチング処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。電気化学的粗面化処理が施された面のアルミニウムの溶解量は、0.2g/mであった。
【0355】
(B−e)酸性水溶液を用いたデスマット処理
次に、酸性水溶液を用いてデスマット処理を行った。具体的には、酸性水溶液をアルミニウム板にスプレーにて3秒間吹き付けて、デスマット処理を行った。デスマット処理に用いた酸性水溶液としては、陽極酸化処理工程で発生した廃液(硫酸濃度170g/L及びアルミニウムイオン濃度5g/Lの水溶液)を用いた。その液温は、30℃であった。
【0356】
(B−f)第1段階の陽極酸化処理
図1に示す構造の直流電解による陽極酸化装置を用いて第1段階の陽極酸化処理を行った。表Hに示す「第1陽極酸化処理」欄の条件にて陽極酸化処理を行い、所定の皮膜量の陽極酸化皮膜を形成した。
【0357】
【表13】
【0358】
(B−g)ポアワイド処理
上記陽極酸化処理したアルミニウム板を、温度40℃、カセイソーダ濃度5質量%及びアルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液に表Iに示す時間条件にて浸漬し、ポアワイド処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0359】
【表14】
【0360】
(B−h)第2段階の陽極酸化処理
図1に示す構造の直流電解による陽極酸化装置を用いて第2段階の陽極酸化処理を行った。表Jに示す「第2陽極酸化処理」欄の条件にて陽極酸化処理を行い、所定の皮膜量の陽極酸化皮膜を形成した。
【0361】
【表15】
【0362】
<処理D:支持体8の作製>
(D−a)機械的粗面化処理(ブラシグレイン法)
図2に示したような装置を使って、パミスの懸濁液(比重1.1g/cm)を研磨スラリー液としてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転する束植ブラシにより機械的粗面化処理を行った。図2において、1はアルミニウム板、2及び4はローラ状ブラシ(本実施例において、束植ブラシ)、3は研磨スラリー液、5、6、7及び8は支持ローラである。
機械的粗面化処理では、研磨材のメジアン径(μm)を30μm、ブラシ本数を4本、ブラシの回転数(rpm)を250rpmとした。束植ブラシの材質は6・10ナイロンで、ブラシ毛の直径0.3mm、毛長50mmであった。ブラシは、φ300mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛した。束植ブラシ下部の2本の支持ローラ(φ200mm)の距離は、300mmであった。束植ブラシはブラシを回転させる駆動モータの負荷が、束植ブラシをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して10kWプラスになるまで押さえつけた。ブラシの回転方向はアルミニウム板の移動方向と同じであった。
【0363】
(D−b)アルカリエッチング処理
アルミニウム板に、カセイソーダ濃度26質量%及びアルミニウムイオン濃度6.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度70℃でスプレーにより吹き付けてエッチング処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。後に電気化学的粗面化処理を施す面のアルミニウム溶解量は、10g/mであった。
【0364】
(D−c)酸性水溶液を用いたデスマット処理
次に、酸性水溶液を用いてデスマット処理を行った。具体的には、酸性水溶液をアルミニウム板にスプレーにて3秒間吹き付けて、デスマット処理を行った。デスマット処理に用いる酸性水溶液は、次工程の電気化学的粗面化処理に用いた硝酸の廃液を用いた。その液温は35℃であった。
【0365】
(D−d)硝酸水溶液を用いた電気化学的粗面化処理
硝酸電解60Hzの交流電圧を用いて、連続的に電気化学的粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸10.4g/Lの水溶液に硝酸アルミニウムを添加してアルミニウムイオン濃度を4.5g/Lに調整した、液温35℃の電解液を用いた。交流電源波形は図3に示した波形であり、電流値がゼロからピークに達するまでの時間tpが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。図3において、taはアノード反応時間、tcはカソード反応時間、tpは電流が0からピークに達するまでの時間、Iaはアノードサイクル側のピーク時の電流、Icはカソードサイクル側のピーク時の電流である。電解槽は図4に示すものを使用した。
図4において、50は主電解槽、51は交流電源、52はラジアルドラムローラ、53a及び53bは主極、54は電解液供給口、55は電解液、56はスリット、57は電解液通路、58は補助陽極、60は補助陽極槽、Wはアルミニウム板である。
電流密度は電流のピーク値で30A/dm、補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。電気量(C/dm)はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で185C/dmであった。
【0366】
(D−e)アルカリエッチング処理
上記で得られたアルミニウム板に、カセイソーダ濃度27質量%及びアルミニウムイオン濃度2.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度50℃でスプレーにより吹き付けてエッチング処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。なお、アルミニウム溶解量は、0.5g/mであった。
【0367】
(D−f)酸性水溶液を用いたデスマット処理
次に、硫酸水溶液を用いてデスマット処理を行った。具体的には、硫酸水溶液をアルミニウム板にスプレーにて3秒間吹き付けて、デスマット処理を行った。デスマット処理に用いる硫酸水溶液は、硫酸濃度170g/L及びアルミニウムイオン濃度5g/Lの水溶液を用いた。その液温は、30℃であった。
【0368】
(D−g)塩酸水溶液を用いた電気化学的粗面化処理
塩酸電解60Hzの交流電圧を用いて、連続的に電気化学的粗面化処理を行った。電解液は、塩酸6.2g/Lの水溶液に塩化アルミニウムを添加してアルミニウムイオン濃度を4.5g/Lに調整した、液温35℃の電解液を用いた。交流電源波形は図3に示した波形であり、電流値がゼロからピークに達するまでの時間tpが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電解槽は図4に示すものを使用した。電流密度は電流のピーク値で25A/dmであり、塩酸電解における電気量(C/dm)はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で63C/dmであった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0369】
(D−h)アルカリエッチング処理
上記で得られたアルミニウム板に、カセイソーダ濃度5質量%及びアルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度60℃でスプレーにより吹き付けてエッチング処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。アルミニウム溶解量は、0.1g/mであった。
【0370】
(D−i)酸性水溶液を用いたデスマット処理
次に、硫酸水溶液を用いてデスマット処理を行った。具体的には、硫酸水溶液をアルミニウム板にスプレーにて4秒間吹き付けて、デスマット処理を行った。デスマット処理に用いる硫酸水溶液は、具体的には、陽極酸化処理工程で発生した廃液(硫酸濃度170g/L及びアルミニウムイオン濃度5g/Lの水溶液)を用いた。その液温は、35℃であった。
【0371】
(D−j)陽極酸化処理
図1に示す構造の直流電解による陽極酸化装置を用いて陽極酸化処理を行った。表Kに示す「第1陽極酸化処理」欄の条件にて陽極酸化処理を行い、所定の皮膜量の陽極酸化皮膜を形成した。
【0372】
【表16】
【0373】
(D−k)ポアワイド処理
上記陽極酸化処理したアルミニウム板を、温度40℃、カセイソーダ濃度5質量%及びアルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液に3秒間浸漬し、ポアワイド処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0374】
(D−l)親水化処理
非画像部の親水性を確保するため、2.5質量%3号ケイ酸ソーダ水溶液を用いて50℃で7秒間にわたって得られたアルミニウム板をディップしてシリケート処理を施した。Siの付着量は8.5mg/mであった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0375】
<処理(F):支持体9の作製>
(F−a)アルカリエッチング処理
アルミニウム板に、カセイソーダ濃度26質量%及びアルミニウムイオン濃度6.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度70℃でスプレーにより吹き付けてエッチング処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。後に電気化学的粗面化処理を施す面のアルミニウム溶解量は、5g/mであった。
【0376】
(F−b)酸性水溶液を用いたデスマット処理
次に、酸性水溶液を用いてデスマット処理を行った。具体的には、酸性水溶液をアルミニウム板にスプレーにて吹き付けて、3秒間デスマット処理を行った。デスマット処理に用いる酸性水溶液は、硫酸150g/Lの水溶液を用いた。その液温は30℃であった。
【0377】
(F−c)電気化学的粗面化処理
次に、塩酸濃度14g/L、アルミニウムイオン濃度13g/L、及び、硫酸濃度3g/Lの電解液を用い、交流電流を用いて電気化学的粗面化処理を行った。電解液の液温は30℃であった。アルミニウムイオン濃度は塩化アルミニウムを添加して調整した。
交流電流の波形は正と負の波形が対称な正弦波であり、周波数は50Hz、交流電流1周期におけるアノード反応時間とカソード反応時間は1:1、電流密度は交流電流波形のピーク電流値で75A/dmであった。また、電気量はアルミニウム板がアノード反応に預かる電気量の総和で450C/dmであり、電解処理は112.5C/dmずつ4秒間の通電間隔を開けて4回に分けて行った。アルミニウム板の対極にはカーボン電極を用いた。その後、水洗処理を行った。
【0378】
(F−d)アルカリエッチング処理
電気化学的粗面化処理後のアルミニウム板を、カセイソーダ濃度5質量%及びアルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度45℃でスプレーにより吹き付けてエッチング処理を行った。電気化学的粗面化処理が施された面のアルミニウムの溶解量は0.2g/mであった。その後、水洗処理を行った。
【0379】
(F−e)酸性水溶液を用いたデスマット処理
次に、酸性水溶液を用いてデスマット処理を行った。具体的には、酸性水溶液をアルミニウム板にスプレーにて吹き付けて、3秒間デスマット処理を行った。デスマット処理に用いる酸性水溶液としては、硫酸濃度170g/L及びアルミニウムイオン濃度5g/Lの水溶液を用いた。その液温は、35℃であった。
【0380】
(F−f)第1段階の陽極酸化処理
図1に示す構造の直流電解による陽極酸化装置を用いて第1段階の陽極酸化処理を行った。表Lに示す「第1陽極酸化処理」欄の条件にて陽極酸化処理を行い、所定の皮膜量の陽極酸化皮膜を形成した。
【0381】
【表17】
【0382】
(F−g)第2段階の陽極酸化処理
図1に示す構造の直流電解による陽極酸化装置を用いて第2段階の陽極酸化処理を行った。表Mに示す「第2陽極酸化処理」欄の条件にて陽極酸化処理を行い、所定の皮膜量の陽極酸化皮膜を形成した。
【0383】
【表18】
【0384】
<処理(G):支持体10の作製>
(G−a)アルカリエッチング処理
アルミニウム板に、カセイソーダ濃度26質量%及びアルミニウムイオン濃度6.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度70℃でスプレーにより吹き付けてエッチング処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。後に電気化学的粗面化処理を施す面のアルミニウム溶解量は、5g/mであった。
【0385】
(G−b)酸性水溶液を用いたデスマット処理
次に、酸性水溶液を用いてデスマット処理を行った。具体的には、酸性水溶液をアルミニウム板にスプレーにて吹き付けて、3秒間デスマット処理を行った。デスマット処理に用いる酸性水溶液は、硫酸150g/Lの水溶液を用いた。その液温は30℃であった。
【0386】
(G−c)電気化学的粗面化処理
次に、塩酸濃度14g/L、アルミニウムイオン濃度13g/L、及び、硫酸濃度3g/Lの電解液を用い、交流電流を用いて電気化学的粗面化処理を行った。電解液の液温は30℃であった。アルミニウムイオン濃度は塩化アルミニウムを添加して調整した。
交流電流の波形は正と負の波形が対称な正弦波であり、周波数は50Hz、交流電流1周期におけるアノード反応時間とカソード反応時間は1:1、電流密度は交流電流波形のピーク電流値で75A/dmであった。また、電気量はアルミニウム板がアノード反応に預かる電気量の総和で450C/dmであり、電解処理は112.5C/dmずつ4秒間の通電間隔を開けて4回に分けて行った。アルミニウム板の対極にはカーボン電極を用いた。その後、水洗処理を行った。
【0387】
(G−d)アルカリエッチング処理
電気化学的粗面化処理後のアルミニウム板を、カセイソーダ濃度5質量%及びアルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度45℃でスプレーにより吹き付けてエッチング処理を行った。電気化学的粗面化処理が施された面のアルミニウムの溶解量は0.2g/mであった。その後、水洗処理を行った。
【0388】
(G−e)酸性水溶液を用いたデスマット処理
次に、酸性水溶液を用いてデスマット処理を行った。具体的には、酸性水溶液をアルミニウム板にスプレーにて吹き付けて、3秒間デスマット処理を行った。デスマット処理に用いる酸性水溶液としては、硫酸濃度170g/L及びアルミニウムイオン濃度5g/Lの水溶液を用いた。その液温は、35℃であった。
【0389】
(G−f)第1段階の陽極酸化処理
図1に示す構造の直流電解による陽極酸化装置を用いて第1段階の陽極酸化処理を行った。表Nに示す「第1陽極酸化処理」欄の条件にて陽極酸化処理を行い、所定の皮膜量の陽極酸化皮膜を形成した。
【0390】
【表19】
【0391】
(G−g)ポアワイド処理
上記陽極酸化処理したアルミニウム板を、温度40℃、カセイソーダ濃度5質量%及びアルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液に表Oに示す時間条件にて浸漬し、ポアワイド処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0392】
【表20】
【0393】
(G−h)第2段階の陽極酸化処理
図1に示す構造の直流電解による陽極酸化装置を用いて第2段階の陽極酸化処理を行った。表Pに示す「第2陽極酸化処理」欄の条件にて陽極酸化処理を行い、所定の皮膜量の陽極酸化皮膜を形成した。
【0394】
【表21】
【0395】
<処理(H):支持体11の作製>
(H−a)アルカリエッチング処理
アルミニウム板に、カセイソーダ濃度26質量%及びアルミニウムイオン濃度6.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度70℃でスプレーにより吹き付けてエッチング処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。後に電気化学的粗面化処理を施す面のアルミニウム溶解量は、5g/mであった。
【0396】
(H−b)酸性水溶液を用いたデスマット処理
次に、酸性水溶液を用いてデスマット処理を行った。具体的には、酸性水溶液をアルミニウム板にスプレーにて吹き付けて、3秒間デスマット処理を行った。デスマット処理に用いる酸性水溶液は、硫酸150g/Lの水溶液を用いた。その液温は30℃であった。
【0397】
(H−c)電気化学的粗面化処理
次に、塩酸濃度14g/L、アルミニウムイオン濃度13g/L、及び、硫酸濃度3g/Lの電解液を用い、交流電流を用いて電気化学的粗面化処理を行った。電解液の液温は30℃であった。アルミニウムイオン濃度は塩化アルミニウムを添加して調整した。
交流電流の波形は正と負の波形が対称な正弦波であり、周波数は50Hz、交流電流1周期におけるアノード反応時間とカソード反応時間は1:1、電流密度は交流電流波形のピーク電流値で75A/dmであった。また、電気量はアルミニウム板がアノード反応に預かる電気量の総和で450C/dmであり、電解処理は112.5C/dmずつ4秒間の通電間隔を開けて4回に分けて行った。アルミニウム板の対極にはカーボン電極を用いた。その後、水洗処理を行った。
【0398】
(H−d)アルカリエッチング処理
電気化学的粗面化処理後のアルミニウム板を、カセイソーダ濃度5質量%及びアルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度45℃でスプレーにより吹き付けてエッチング処理を行った。電気化学的粗面化処理が施された面のアルミニウムの溶解量は0.2g/mであった。その後、水洗処理を行った。
【0399】
(H−e)酸性水溶液を用いたデスマット処理
次に、酸性水溶液を用いてデスマット処理を行った。具体的には、酸性水溶液をアルミニウム板にスプレーにて吹き付けて、3秒間デスマット処理を行った。デスマット処理に用いる酸性水溶液としては、硫酸濃度170g/L及びアルミニウムイオン濃度5g/Lの水溶液を用いた。その液温は、35℃であった。
【0400】
(H−f)第1段階の陽極酸化処理
図1に示す構造の直流電解による陽極酸化装置を用いて第1段階の陽極酸化処理を行った。表Qに示す「第1陽極酸化処理」欄の条件にて陽極酸化処理を行い、所定の皮膜量の陽極酸化皮膜を形成した。
【0401】
【表22】
【0402】
(H−g)第2段階の陽極酸化処理
図1に示す構造の直流電解による陽極酸化装置を用いて第2段階の陽極酸化処理を行った。表Rに示す「第2陽極酸化処理」欄の条件にて陽極酸化処理を行い、所定の皮膜量の陽極酸化皮膜を形成した。
【0403】
【表23】
【0404】
<処理(I):支持体12の作製>
(I−a)アルカリエッチング処理
アルミニウム板に、カセイソーダ濃度26質量%及びアルミニウムイオン濃度6.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度70℃でスプレーにより吹き付けてエッチング処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。後に電気化学的粗面化処理を施す面のアルミニウム溶解量は、5g/mであった。
【0405】
(I−b)酸性水溶液を用いたデスマット処理
次に、酸性水溶液を用いてデスマット処理を行った。具体的には、酸性水溶液をアルミニウム板にスプレーにて吹き付けて、3秒間デスマット処理を行った。デスマット処理に用いる酸性水溶液は、硫酸150g/Lの水溶液を用いた。その液温は30℃であった。
【0406】
(I−c)電気化学的粗面化処理
次に、塩酸濃度14g/L、アルミニウムイオン濃度13g/L、及び、硫酸濃度3g/Lの電解液を用い、交流電流を用いて電気化学的粗面化処理を行った。電解液の液温は30℃であった。アルミニウムイオン濃度は塩化アルミニウムを添加して調整した。
交流電流の波形は正と負の波形が対称な正弦波であり、周波数は50Hz、交流電流1周期におけるアノード反応時間とカソード反応時間は1:1、電流密度は交流電流波形のピーク電流値で75A/dmであった。また、電気量はアルミニウム板がアノード反応に預かる電気量の総和で450C/dmであり、電解処理は112.5C/dmずつ4秒間の通電間隔を開けて4回に分けて行った。アルミニウム板の対極にはカーボン電極を用いた。その後、水洗処理を行った。
【0407】
(I−d)アルカリエッチング処理
電気化学的粗面化処理後のアルミニウム板を、カセイソーダ濃度5質量%及びアルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度45℃でスプレーにより吹き付けてエッチング処理を行った。電気化学的粗面化処理が施された面のアルミニウムの溶解量は0.2g/mであった。その後、水洗処理を行った。
【0408】
(I−e)酸性水溶液を用いたデスマット処理
次に、酸性水溶液を用いてデスマット処理を行った。具体的には、酸性水溶液をアルミニウム板にスプレーにて吹き付けて、3秒間デスマット処理を行った。デスマット処理に用いる酸性水溶液としては、硫酸濃度170g/L及びアルミニウムイオン濃度5g/Lの水溶液を用いた。その液温は、35℃であった。
【0409】
(I−f)第1段階の陽極酸化処理
図1に示す構造の直流電解による陽極酸化装置を用いて第1段階の陽極酸化処理を行った。表Sに示す「第1陽極酸化処理」欄の条件にて陽極酸化処理を行い、所定の皮膜量の陽極酸化皮膜を形成した。
【0410】
【表24】
【0411】
(I−g)ポアワイド処理
上記陽極酸化処理したアルミニウム板を、温度40℃、カセイソーダ濃度5質量%及びアルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液に表Tに示す時間条件にて浸漬し、ポアワイド処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0412】
【表25】
【0413】
(I−h)第2段階の陽極酸化処理
図1に示す構造の直流電解による陽極酸化装置を用いて第2段階の陽極酸化処理を行った。表Uに示す「第2陽極酸化処理」欄の条件にて陽極酸化処理を行い、所定の皮膜量の陽極酸化皮膜を形成した。
【0414】
【表26】
【0415】
<支持体13の作製>
−アルミニウム板−
Si:0.06質量%、Fe:0.30質量%、Cu:0.005質量%、Mn:0.001質量%、Mg:0.001質量%、Zn:0.001質量%、Ti:0.03質量%を含有し、残部はアルミニウムと不可避不純物のアルミニウム合金を用いて溶湯を調製し、溶湯処理及びろ過を行った上で、厚さ500mm、幅1,200mmの鋳塊をDC鋳造法で作製した。表面を平均10mmの厚さで面削機により削り取った後、550℃で、約5時間均熱保持し、温度400℃に下がったところで、熱間圧延機を用いて厚さ2.7mmの圧延板とした。更に、連続焼鈍機を用いて熱処理を500℃で行った後、冷間圧延で、厚さ0.24mmに仕上げ、JIS 1050材のアルミニウム板を得た。このアルミニウム板を幅1,030mmにした後、以下に示す表面処理に供した。
【0416】
−表面処理−
表面処理は、以下の(b)〜(j)の各種処理を連続的に行うことにより行った。
なお、各処理及び水洗の後にはニップローラで液切りを行った。
【0417】
(b)アルカリエッチング処理
上記で得られたアルミニウム板をカセイソーダ濃度2.6質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%、温度70℃の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を行い、アルミニウム板を6g/m溶解した。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0418】
(c)デスマット処理
温度30℃の硝酸濃度1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーで水洗した。デスマット処理に用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的粗面化処理を行う工程の廃液を用いた。
【0419】
(d)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸10.5g/L水溶液(アルミニウムイオンを5g/L、アンモニウムイオンを0.007質量%含む。)、液温50℃であった。交流電源波形は図3に示した波形であり、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。使用した電解槽は図4に示すものを使用した。電流密度は電流のピーク値で30A/dm、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で220C/dmであった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0420】
(e)アルカリエッチング処理
アルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.25g/m溶解し、前段の交流を用いて電気化学的粗面化処理を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0421】
(f)デスマット処理
温度30℃の硫酸濃度15質量%水溶液(アルミニウムイオンを4.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーで水洗した。デスマット処理に用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的粗面化処理を行う工程の廃液を用いた。
【0422】
(g)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、塩酸2.5g/L水溶液(アルミニウムイオンを5g/L含む。)、温度35℃であった。交流電源波形は図3に示した波形であり、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。使用した電解槽は図4に示すものを使用した。電流密度は電流のピーク値で25A/dm、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で50C/dmであった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0423】
(h)アルカリエッチング処理
アルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.1g/m溶解し、前段の交流を用いて電気化学的粗面化処理を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0424】
(i)デスマット処理
温度60℃の硫酸濃度25質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーによる水洗を行った。
【0425】
(j)陽極酸化処理
図1に示す構造の陽極酸化装置を用いて陽極酸化処理を行い、支持体13を得た。第一及び第二電解部に供給した電解液としては、硫酸を用いた。電解液は、いずれも、硫酸濃度170g/L(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)、温度38℃であった。その後、スプレーによる水洗を行った。最終的な酸化皮膜量は2.7g/mであった。
【0426】
<支持体14の作製>
厚さ0.3mmのアルミニウム板(材質JIS A 1050)の表面の圧延油を除去するため、10質量%アルミン酸ソーダ水溶液を用いて50℃で30秒間脱脂処理を施した後、毛径0.3mmの束植ナイロンブラシ3本とメジアン径25μmのパミス−水懸濁液(比重1.1g/cm)を用いアルミニウム板表面を砂目立てして、水でよく洗浄した。アルミニウム板を45℃の25質量%水酸化ナトリウム水溶液に9秒間浸漬してエッチングを行い、水洗後、更に60℃で20質量%硝酸水溶液に20秒間浸漬し、水洗した。砂目立て表面のエッチング量は約3g/mであった。
【0427】
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。電解液は硝酸1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温は50℃であった。交流電源波形は、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電流密度は電流のピーク値で30A/dm、補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。硝酸電解における電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量175C/dmであった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0428】
続いて、塩酸0.5質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温50℃の電解液にて、アルミニウム板が陽極時の電気量50C/dmの条件で、硝酸電解と同様の方法で、電気化学的な粗面化処理を行い、その後、スプレーによる水洗を行った。
アルミニウム板に、15質量%硫酸水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)を電解液として電流密度15A/dmで2.5g/mの直流陽極酸化皮膜を設けた後、水洗、乾燥した。
次に、100℃の水蒸気を1.033×10Paの圧力で上記陽極酸化皮膜に8秒間吹き付けて、封孔処理を行った。更に、アルミニウム支持体を、純水にポリビニルホスホン酸(PCAS社製)を0.4質量%溶解させた53℃の処理液に10秒浸漬し、ニップロールにて余剰の処理液を完全に除去し、支持体14を作製した。
【0429】
<支持体15の製造>
厚さ0.3mmの材質1Sのアルミニウム板(アルミニウム合金板)に対し、下記の処理を施し、支持体15を製造した。なお、全ての処理工程の間には水洗処理を施し、水洗処理の後にはニップローラで液切りを行った。
<処理J:支持体15の作製>
(J−a)機械的粗面化処理(ブラシグレイン法)
図2に示したような装置を使って、パミスの懸濁液(比重1.1g/cm)を研磨スラリー液としてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転する束植ブラシにより機械的粗面化処理を行った。図2において、1はアルミニウム板、2及び4はローラ状ブラシ(本実施例において、束植ブラシ)、3は研磨スラリー液、5、6、7及び8は支持ローラである。
機械的粗面化処理では、研磨材のメジアン径(μm)を30μm、ブラシ本数を4本、ブラシの回転数(rpm)を250rpmとした。束植ブラシの材質は6・10ナイロンで、ブラシ毛の直径0.3mm、毛長50mmであった。ブラシは、φ300mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛した。束植ブラシ下部の2本の支持ローラ(φ200mm)の距離は、300mmであった。束植ブラシはブラシを回転させる駆動モータの負荷が、束植ブラシをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して10kWプラスになるまで押さえつけた。ブラシの回転方向はアルミニウム板の移動方向と同じであった。
【0430】
(J−b)アルカリエッチング処理
アルミニウム板に、カセイソーダ濃度26質量%及びアルミニウムイオン濃度6.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度70℃でスプレーにより吹き付けてエッチング処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。後に電気化学的粗面化処理を施す面のアルミニウム溶解量は、10g/mであった。
【0431】
(J−c)酸性水溶液を用いたデスマット処理
次に、酸性水溶液を用いてデスマット処理を行った。具体的には、酸性水溶液をアルミニウム板にスプレーにて3秒間吹き付けて、デスマット処理を行った。デスマット処理に用いる酸性水溶液は、次工程の電気化学的粗面化処理に用いた硝酸の廃液を用いた。その液温は35℃であった。
【0432】
(J−d)硝酸水溶液を用いた電気化学的粗面化処理
硝酸電解60Hzの交流電圧を用いて、連続的に電気化学的粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸10.4g/Lの水溶液に硝酸アルミニウムを添加してアルミニウムイオン濃度を4.5g/Lに調整した、液温35℃の電解液を用いた。交流電源波形は図3に示した波形であり、電流値がゼロからピークに達するまでの時間tpが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電解槽は図4に示すものを使用した。電流密度は電流のピーク値で30A/dm、補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。電気量(C/dm)はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で185C/dmであった。
【0433】
(J−e)アルカリエッチング処理
上記で得られたアルミニウム板に、カセイソーダ濃度27質量%及びアルミニウムイオン濃度2.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度50℃でスプレーにより吹き付けてエッチング処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。なお、アルミニウム溶解量は、3.5g/mであった。
【0434】
(J−f)酸性水溶液を用いたデスマット処理
次に、硫酸水溶液を用いてデスマット処理を行った。具体的には、硫酸水溶液をアルミニウム板にスプレーにて3秒間吹き付けて、デスマット処理を行った。デスマット処理に用いる硫酸水溶液は、硫酸濃度170g/L及びアルミニウムイオン濃度5g/Lの水溶液を用いた。その液温は、30℃であった。
【0435】
(J−g)塩酸水溶液を用いた電気化学的粗面化処理
塩酸電解60Hzの交流電圧を用いて、連続的に電気化学的粗面化処理を行った。電解液は、塩酸6.2g/Lの水溶液に塩化アルミニウムを添加してアルミニウムイオン濃度を4.5g/Lに調整した、液温35℃の電解液を用いた。交流電源波形は図3に示した波形であり、電流値がゼロからピークに達するまでの時間tpが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電解槽は図4に示すものを使用した。電流密度は電流のピーク値で25A/dmであり、塩酸電解における電気量(C/dm)はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で63C/dmであった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0436】
(J−h)アルカリエッチング処理
上記で得られたアルミニウム板に、カセイソーダ濃度5質量%及びアルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度60℃でスプレーにより吹き付けてエッチング処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。アルミニウム溶解量は、0.2g/mであった。
【0437】
(J−i)酸性水溶液を用いたデスマット処理
次に、硫酸水溶液を用いてデスマット処理を行った。具体的には、硫酸水溶液をアルミニウム板にスプレーにて4秒間吹き付けて、デスマット処理を行った。デスマット処理に用いる硫酸水溶液は、具体的には、陽極酸化処理工程で発生した廃液(硫酸濃度170g/L及びアルミニウムイオン濃度5g/Lの水溶液)を用いた。その液温は、35℃であった。
【0438】
(J−j)第1段階の陽極酸化処理
図1に示す構造の直流電解による陽極酸化装置を用いて第1段階の陽極酸化処理を行った。表Vに示す「第1陽極酸化処理」欄の条件にて陽極酸化処理を行い、所定の皮膜量の陽極酸化皮膜を形成した。
【0439】
【表27】
【0440】
(J−k)ポアワイド処理
上記陽極酸化処理したアルミニウム板を、温度40℃、カセイソーダ濃度5質量%及びアルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液に表Wに示す時間条件にて浸漬し、ポアワイド処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0441】
【表28】
【0442】
(J−l)第2段階の陽極酸化処理
図1に示す構造の直流電解による陽極酸化装置を用いて第2段階の陽極酸化処理を行った。表Xに示す「第2陽極酸化処理」欄の条件にて陽極酸化処理を行い、所定の皮膜量の陽極酸化皮膜を形成した。
【0443】
【表29】
【0444】
(J−m)親水化処理
非画像部の親水性を確保するため、2.5質量%3号ケイ酸ソーダ水溶液を用いて50℃で7秒間にわたって得られたアルミニウム板をディップしてシリケート処理を施した。Siの付着量は8.5mg/mであった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0445】
支持体4〜15について、上記で得られた陽極酸化皮膜のアルミニウム板側とは反対側の表面におけるマイクロポアの平均径を表Yにまとめて示す。
【0446】
なお、マイクロポアの平均径は、表面を倍率15万倍のFE−SEMでN=4枚観察し、得られた4枚の画像において、400×600nmの範囲に存在するマイクロポアの径(直径)を測定し、平均した値である。
なお、マイクロポアの形状が円状でない場合は、円相当径を用いる。「円相当径」とは、開口部の形状を、開口部の投影面積と同じ投影面積をもつ円と想定したときの円の直径である。
【0447】
【表30】
【0448】
〔実施例49〕
<バックコート層の形成>
(バックコート層塗布液(49)の調製)
・三菱ケミカル製、BR-605(アクリル樹脂) 11.072g
・クニミネ工業(株)製、スメクトン−SEN(平板粒子) 0.500g
・根上工業製、アクリル粒子 アートパールJ−6PF 0.975g
・花王(株)製、レオドールTW-S106V(ポリオキシエチレン(6)ソルビタンモノステアレート) 0.250g
・2−ブタノン 74.123g
・1−メトキシ−2−プロパノール 8.720g
・メタノール 4.360g
上記成分を混合、撹拌して、バックコート層塗布液(49)を調製した。
【0449】
支持体1のバックコート層側(非印刷面側)の表面に、上記組成のバックコート層塗布液(49)をバー塗布し、100℃で120秒間乾燥し、厚さ1.2μmのバックコート層を形成した。
【0450】
<下塗り層の形成>
支持体1の他方(印刷面側)の表面に、上記組成の下塗り層塗布液(1)を乾燥塗布量が20mg/mになるよう塗布して、下塗り層を形成した。
【0451】
<画像記録層の形成>
バックコート層及び下塗り層を有する上記支持体の下塗り層上に、上記組成の画像記録層塗布液(2)をバー塗布した後、70℃で60秒オーブン乾燥し、乾燥塗布量0.6g/mの画像記録層(ポリマー含有層1)を形成して、平版印刷用原版を作成した。
【0452】
〔実施例50〜58〕
実施例49の支持体を表2のように変更した以外は実施例49と同様にしてバックコート層、下塗り層及び画像記録層を形成して、平版印刷版原版を作製した。
【0453】
〔実施例59〕
<バックコート層の形成>
支持体2のバックコート層側(非印刷面側)の表面に、実施例49のバックコート層塗布液(49)をバー塗布し、100℃で120秒間乾燥し、厚さ1.2μmのバックコート層を形成した。
【0454】
<画像記録層の形成>
下記熱可塑性ポリマー粒子、赤外線吸収剤及びポリアクリル酸を含有する画像記録層水系塗布液を調製し、pHを3.6に調整した後、支持体2の印刷面側の表面上に塗布し、50℃で1分間乾燥して画像記録層を形成して作製した。各成分の乾燥後の塗布量を以下に示す。
【0455】
熱可塑性ポリマー粒子: 0.7g/m
赤外線吸収剤 IR−01: 1.20×10−4g/m
ポリアクリル酸: 0.09g/m
【0456】
画像記録層塗布液に用いた熱可塑性ポリマー粒子、赤外線吸収剤IR−01、ポリアクリル酸は上記に示す通りである。
【0457】
〔実施例60〕
<バックコート層の形成>
支持体3のバックコート層側(非印刷面側)の表面に、実施例49のバックコート層塗布液(49)をバー塗布し、100℃で120秒間乾燥し、厚さ1.2μmのバックコート層を形成した。
【0458】
<下塗り層の形成>
支持体3の印刷面側の表面に、下塗り層塗布液(1)を乾燥塗布量が20mg/mになるよう塗布して、下塗り層を形成した。
【0459】
下塗り層上に、上記組成の画像記録層塗布液(3)をバー塗布した後、100℃で60秒オーブン乾燥し、乾燥塗布量1.0g/mの画像記録層を形成した。
【0460】
<保護層の形成>
画像記録層上に、上記組成の保護層塗布液(1)をバー塗布した後、120℃で60秒オーブン乾燥し、乾燥塗布量0.15g/mの保護層を形成して平版印刷版原版を作製した。
【0461】
〔実施例61〕
<バックコート層の形成>
支持体3のバックコート層側(非印刷面側)の表面に、実施例49のバックコート層塗布液(49)をバー塗布し、100℃で120秒間乾燥し、厚さ1.2μmのバックコート層を形成した。
<下塗り層の形成>
実施例61の作製に用いたバックコート層を有する支持体3の印刷面側の表面に、上記組成の下塗り層塗布液(2)をワイヤーバーにて塗布し、90℃で30秒間乾燥した。塗布量は10mg/mであった。
【0462】
<画像記録層の形成>
上記組成の画像記録層塗布液(4)を、下塗り層上にワイヤーバーを用いて塗布した。乾燥は、温風式乾燥装置にて115℃で34秒間行った。乾燥後の被覆量は1.4g/mであった。
【0463】
<保護層の形成>
画像記録層上に、上記組成の保護層塗布液(2)をワイヤーバーで塗布し、温風式乾燥装置にて125℃で75秒間乾燥させたて保護層を形成した。乾燥後の塗布量は1.6g/mであった。かくして実施例61の平版印刷版原版を作製した。
【0464】
〔実施例62〕
<バックコート層の形成>
支持体3のバックコート層側(非印刷面側)の表面に、実施例49のバックコート層塗布液(49)をバー塗布し、100℃で120秒間乾燥し、厚さ1.2μmのバックコート層を形成した。
<下塗り層の形成>
実施例62の作製に用いたバックコート層を有する支持体3の印刷面側の表面に、上記組成の下塗り層塗布液(3)をバーコーターで塗布し、80℃で15秒間乾燥し、乾燥後の塗布量が18mg/mの下塗り層を形成した。
【0465】
<画像記録層の形成>
下塗り層上に、下記組成の下層塗布液を乾燥後の塗布量が0.85g/mになるようバーコーターで塗布し、160℃で44秒間乾燥し、直ちに17〜20℃の冷風で支持体の温度が35℃になるまで冷却して下層を形成した。その後、下記組成の上層塗布液を乾燥後の塗布量が0.22g/mになるようにバーコーターで塗布し、148℃で25秒間乾燥し、更に20〜26℃の風で徐冷して上層を形成した。かくして実施例62の平版印刷版原版を作製した。
【0466】
(下層塗布液)
・N−(4−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド/アクリロニトリル/メタクリル酸メチル 2.1g
(36/34/30質量%:質量平均分子量50000、
酸価2.65)
・m,p−クレゾールノボラック 0.1g
(m/p比=6/4、質量平均分子量4500、
未反応クレゾール0.8質量%含有、Tg:75℃)
・シアニン染料A(下記構造) 0.13g
・4,4’−ビスヒドロキシフェニルスルホン 0.13g
・無水テトラヒドロフタル酸 0.19g
・p−トルエンスルホン酸 0.008g
・3−メトキシ−4−ジアゾジフェニルアミン
ヘキサフルオロホスフェート 0.032g
・エチルバイオレットの対イオンを6−ヒドロキシ−2−ナフタレンスルホン酸
に変えた染料 0.078g
・フッ素系界面活性剤B(下記構造) 0.007g
・メチルエチルケトン 25.0g
・1−メトキシ−2−プロパノール 13.0g
・γ−ブチロラクトン 13.0g
【0467】
【化27】
【0468】
【化28】
【0469】
(上層塗布液)
・フェノール/m−クレゾール/p−クレゾールノボラック 0.35g
(モル比=5/3/2、質量平均分子量:5000、
未反応クレゾール:1.2質量%含有、Tg:70℃)
・アクリル系樹脂C(下記構造) 0.042g
・シアニン染料A(上記構造) 0.019g
・アンモニウム化合物D(下記構造) 0.004g
・スルホニウム化合物G(下記構造) 0.032g
・フッ素系界面活性剤B(上記構造) 0.0045g
・フッ素系界面活性剤E(下記構造) 0.0033g
・フッ素系ポリマーF(下記構造) 0.018g
・メチルエチルケトン 10.0g
・1−メトキシ−2−プロパノール 20.0g
【0470】
【化29】

【0471】
〔実施例63〕
<バックコート層の形成>
支持体3のバックコート層側(非印刷面側)の表面に、実施例49のバックコート層塗布液(49)をバー塗布し、100℃で120秒間乾燥し、厚さ1.2μmのバックコート層を形成した。
【0472】
<下塗り層の形成>
実施例63の作製に用いたバックコート層を有する支持体3の印刷面側の表面に、上記組成の下塗り層塗布液(4)をバーコーターで塗布し、80℃で15秒間乾燥し、乾燥後の塗布量が18mg/mの下塗り層を形成した。
【0473】
<非感光性層の形成>
下塗り層の上に、上記組成の非感光性層塗布液(1)をバー塗布し、100℃で60秒間乾燥し、乾燥後の塗布量が1.0mg/mの非感光性層を形成した。
<親水性層の形成>
非感光性層の上に、上記組成の親水性層塗布液(1)をバー塗布し、125℃で75秒間乾燥し、乾燥後の塗布量が1.6mg/mの非感光性層を形成した。かくして実施例63の印刷用捨て版原版を作製した。
【0474】
〔実施例64〕
実施例60の作製において、画像記録層塗布液(3)から赤外線吸収剤(1)と重合開始剤(1)を除く以外は同様にして、実施例64の印刷用捨て版原版を作製した。
【0475】
〔実施例65〕
<バックコート層の形成>
支持体13のバックコート層側(非印刷面側)の表面に、実施例49のバックコート層塗布液(49)をバー塗布し、100℃で120秒間乾燥し、厚さ1.2μmのバックコート層を形成した。
<下塗り層の形成>
実施例65の作製に用いたバックコート層を有する支持体13の印刷面側の表面に、下記組成の下塗り層塗布液(65)を乾燥塗布量が20mg/mになるよう塗布して、下塗り層を形成した。
【0476】
(下塗り層塗布液(65))
・下塗り層用化合物(2)(下記構造):0.18部
・エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム:0.10部
・ポリオキシエチレンラウリルエーテル:0.03部
・水:61.39部
【0477】
【化30】
【0478】
上記下塗り層用化合物(2)における各構成単位の括弧の右下の数値は、質量比を表し、エチレンオキシ単位の括弧の右下の数値は、繰り返し数を表す。
【0479】
<画像記録層の形成>
下塗り層上に、下記組成の画像記録層塗布液(65)をバー塗布し、100℃で60秒間オーブン乾燥し、厚さ1μmの画像記録層3を形成した。
画像記録層塗布液(65)は、下記感光液(2)及びミクロゲル液(2)を塗布直前に混合し撹拌することにより得た。
【0480】
<感光液(2)>
・バインダーポリマー(2)(下記構造、Mw:50,000、n(エチレンオキサイド(EO)繰り返し単位数):4):0.480部
・赤外線吸収剤(1)(上記):0.030部
・ボレート化合物(テトラフェニルホウ酸ナトリウム):0.014部
・重合開始剤(1)(上記):0.234部
・重合性化合物(トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、NKエステルA−9300、新中村化学工業(株)製):0.192部
・低分子親水性化合物(1)(トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート):0.052部
・アニオン界面活性剤1(上記):0.099部
・感脂化剤 ホスホニウム化合物(1)(下記構造):0.12部
・感脂化剤 アンモニウム基含有ポリマー(下記構造、還元比粘度44ml/g):0.035部
・感脂化剤 ベンジルジメチルオクチルアンモニウム・PF塩:0.032部
・着色剤 エチルバイオレット(下記構造):0.030部
・フッ素系界面活性剤(1)(上記):0.02部
・2−ブタノン:1.091部
・1−メトキシ−2−プロパノール:8.609部
【0481】
【化31】
【0482】
上記バインダーポリマー(2)及びアンモニウム基含有ポリマーの各構成単位の括弧の右下の数字は、モル比を表す。Meはメチル基を表す。
【0483】
【化32】
【0484】
【化33】

【0485】
<ミクロゲル液(2)>
・ミクロゲル(2):1.580部
・蒸留水:1.455部
【0486】
(ミクロゲル(2)の調製)
上記ミクロゲル液(2)に用いたミクロゲル(2)の調製法を以下に示す。
【0487】
油相成分として、トリメチロールプロパンとキシレンジイソシアナートとの付加体(三井化学ポリウレタン(株)製、タケネートD−110N)10部、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(サートマー・ジャパン(株)製、SR399)5.54部及びパイオニンA−41C(竹本油脂(株)製)0.1部を酢酸エチル17部に溶解した。水相成分としてPVA−205の4質量%水溶液40部を調製した。油相成分及び水相成分を混合し、ホモジナイザーを用いて12,000rpmで10分間乳化した。得られた乳化物を、蒸留水25部に添加し、室温(25℃、以下同様)で30分撹拌後、50℃で3時間撹拌した。このようにして得られたミクロゲル液の固形分濃度を、15質量%になるように蒸留水を用いて希釈し、上記ミクロゲル(2)を調製した。ミクロゲルの平均粒径を光散乱法により測定したところ、平均粒径は0.2μmであった。
【0488】
<保護層の形成>
上記画像記録層上に、更に下記組成の保護層塗布液(65)をバー塗布した後、120℃、60秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量0.15g/mの保護層を形成して平版印刷版原版を得た。
【0489】
<保護層用塗布液(65)>
・無機質層状化合物分散液(1)(上記で得たもの):1.5部
・親水性ポリマー(1)(固形分)〔下記構造、Mw:3万〕:0.55部
・ポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)製CKS50、スルホン酸変性、けん化度99モル%以上、重合度300)6質量%水溶液:0.10部
・ポリビニルアルコール((株)クラレ製PVA−405、けん化度81.5モル%、重合度500)6質量%水溶液:0.03部
・界面活性剤(ラピゾールA−80、商品名:日油(株)製)80質量%水溶液:0.011部
・イオン交換水:6.0部
【0490】
【化34】
【0491】
なお、上記親水性ポリマー(1)の各構成単位の括弧の右下の数字はモル比を表す。
【0492】
〔実施例66〕
<バックコート層の形成>
支持体14のバックコート層側(非印刷面側)の表面に、実施例49のバックコート層塗布液(49)をバー塗布し、100℃で120秒間乾燥し、厚さ1.2μmのバックコート層を形成した。
【0493】
<画像記録層の形成>
実施例66の作製に用いたバックコート層を有する支持体14の印刷面側の表面に、下記組成の画像記録層塗布液(66)をバー塗布し、120℃で40秒間オーブン乾燥し、乾燥塗布量1.0g/mの画像記録層を形成した。
【0494】
<画像記録層塗布液(66)>
・バインダーポリマー(4)(下記構造):4.09質量部
・SR399:2.66質量部
・NK−Ester A−DPH:2.66質量部
・CD9053:0.53質量部
・ビス−t−ブチルフェニルヨードニウム テトラフェニルボレート:0.96質量部
・Fluor N2900:0.11質量部
・Pigment 1(下記構造):0.73質量部
・赤外線吸収剤(4)(下記構造):0.27質量部
・ホスマーPE(ユニケミカル(株)社製):0.55質量部
・イオン交換水:13.77質量部
・1−メトキシ−2−プロパノール:48.18質量部
・2−ブチロラクトン:13.77質量部
・2−ブタノン:61.94質量部
【0495】
【化35】
【0496】
【化36】
【0497】
【化37】

【0498】
Pigment 1は上記成分(顔料、ポリマー及び分散剤)からなる混合物である。Disperbyk 167はByk Chemie社より入手可能な分散剤である。
【0499】
SR−399:ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(Sartomer社製)
NK−Ester A−DPH:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学(株)製)
CD9053:酸変性アクリレート(三官能)(Sartomer社製)
Fluor N2900:界面活性剤 Cytnoix社より入手可能)
ホスマーPE(ユニケミカル(株)社製):下記構造
【0500】
【化38】

【0501】
<保護層の形成>
画像記録層上に、下記組成の保護層塗布液(66)をバー塗布し、120℃で60秒間オーブン乾燥し、乾燥塗布量0.5g/mの保護層を形成して、平版印刷版原版を得た。
【0502】
(保護層塗布液(66))
・ポリビニルアルコール((株)クラレ製、PVA−405、ケン化度81.5モル%、重合度500)6質量%水溶液:66.33質量部
・界面活性剤(Masurf 1520、Pilot Chemical社製):0.02質量部
・イオン交換水:8.65質量部
【0503】
〔実施例67〕
<バックコート層の形成>
支持体2のバックコート層側(非印刷面側)の表面に、実施例49のバックコート層塗布液(49)をバー塗布し、100℃で120秒間乾燥し、厚さ1.2μmのバックコート層を形成した。
【0504】
<画像記録層の形成>
実施例67の作製に用いたバックコート層を有する支持体2の印刷面側の表面に、下記組成の画像記録層塗布液(67)をバー塗布し、90℃で60秒間オーブン乾燥し、乾燥塗布量1.3g/mの画像記録層を形成した。
【0505】
<画像記録層塗布液(67)>
・バインダーポリマー(4)(上記):0.23質量部
・ウレタンメタクリレートオリゴマー(グリセロールジメチルアクリレート、グリセロールモノメチルアクリレート、プロピレングリコールメタクリレート、及び、ヘキサメチレンジイソシアネートの反応により形成):0.38質量部
・エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート(新中村化学工業(株)製:NKエステルBPE500):0.06質量部
・重合開始剤(5)(下記構造):0.07質量部
・増感色素(5)(下記構造):0.04質量部
・連鎖移動剤(メルカプトベンゾチアゾール):0.005質量部
・顔料(へリオゲンブルー7565のポリマー分散物):0.038質量部
・界面活性剤(BYK社製:BYK307):0.002質量部
・フェノキシエタノール:10.35質量部
・アセトン:1.15質量部
【0506】
【化39】
【0507】
【化40】
【0508】
<保護層の形成>
画像記録層上に、下記組成の保護層塗布液(67)をバー塗布し、125℃で70秒間オーブン乾燥し、乾燥塗布量1.8g/mの保護層を形成した。
【0509】
(保護層塗布液(67))
・PVA−1(ゴーセランL−3266、日本合成化学(株)製):0.61質量部
・PVA−2(ニチゴー G−ポリマー AZF8035、日本合成化学(株)製):0.32質量部
・界面活性剤(エマレックス710、日本エマルジョン(株)製):0.002質量部
・水:13質量部
【0510】
〔実施例68〕
<バックコート層の形成>
支持体15のバックコート層側(非印刷面側)の表面に、実施例49のバックコート層塗布液(49)をバー塗布し、100℃で120秒間乾燥し、厚さ1.2μmのバックコート層を形成した。
<下塗り層の形成>
実施例68の作製に用いたバックコート層を有する支持体15の印刷面側の表面に、下記組成の下塗り層塗布液(68)を乾燥塗布量が26mg/mになるよう塗布して、下塗り層を形成した。
【0511】
(下塗り層塗布液(68))
・下塗り層用化合物(2)(下記構造):0.13質量部
・ヒドロキシエチルイミノ二酢酸:0.05質量部
・エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム:0.05質量部
・ポリオキシエチレンラウリルエーテル:0.03質量部
・水:61.39質量部
【0512】
【化41】
【0513】
上記下塗り層用化合物(2)における各構成単位の括弧の右下の数値は、質量比を表し、エチレンオキシ単位の括弧の右下の数値は、繰り返し数を表す。
【0514】
<画像記録層の形成>
下塗り層上に、下記組成の画像記録層塗布液(68)をバー塗布した後、100℃で60秒オーブン乾燥し、乾燥塗布量1.2g/mの画像記録層を形成した。
画像記録層塗布液(68)は下記感光液(3)及びミクロゲル液(4)を塗布直前に混合し撹拌することにより得た。
(画像記録層塗布液(68))
(感光液(3))
・バインダーポリマー(6) 23質量% 1−メトキシ−2−プロパノール溶液(下記構造、Mw:35,000、n(エチレンオキサイド(EO)繰り返し単位数):0.3755部
・バインダーポリマー(7) 23質量% 1−メトキシ−2−プロパノール溶液(下記構造、Mw:35,000、n(エチレンオキサイド(EO)繰り返し単位数):0.3755部
・赤外線吸収剤(1)(下記構造):0.0278部
・ボレート化合物(1)(テトラフェニルホウ酸ナトリウム):0.015部
・重合開始剤(1)(下記構造):0.2348部
・重合性化合物(1)(トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、NKエステルA−9300 40% 2−ブタノン溶液、新中村化学工業(株))製):0.2875部
・低分子親水性化合物(1)
(トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート):0.0287部
・低分子親水性化合物(2)(トリメチルグリシン):0.0147部
・アニオン性界面活性剤1 30質量%水溶液(下記構造):0.25部
・紫外線吸収剤(1)(TINUVIN405、BASF(株)社製)(下記構造):0.04部
・フッ素系界面活性剤(1)(下記構造):0.004部
・ホスホニウム化合物(1)(下記構造):0.020部
・2−ブタノン:5.346部
・1−メトキシ−2−プロパノール:3.128部
・メタノール:0.964部
・純水:0.036部
【0515】
(ミクロゲル液(4))
・ミクロゲル(4)(固形分濃度21.8質量%):2.243部
・1−メトキシ−2−プロパノール:0.600部
【0516】
(ミクロゲル(4)の作製)
上記ミクロゲル液に用いたミクロゲル(1)の調製法を以下に示す。
【0517】
<多価イソシアネート化合物(1)の調製>
イソホロンジイソシアネート17.78部(80モル当量)と下記多価フェノール化合物(1)7.35部(20モル当量)との酢酸エチル(25.31部)懸濁溶液に、ビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)(ネオスタン U−600、日東化成(株)製)0.043部を加えて撹拌した。発熱が収まった時点で反応温度を50℃に設定し、3時間撹拌して多価イソシアネート化合物(1)の酢酸エチル溶液(50質量%)を得た。
【0518】
【化42】

【0519】
<ミクロゲル(4)の調製>
下記油相成分及び水相成分を混合し、ホモジナイザーを用いて12,000rpmで10分間乳化した。得られた乳化物を45℃で4時間撹拌後、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン−オクチル酸塩(U−CAT SA102、サンアプロ(株)製)の10質量%水溶液5.20部を加え、室温で30分撹拌し、45℃で24時間静置した。蒸留水で、固形分濃度を21.8質量%になるように調整し、ミクロゲル(4)の水分散液を得た。動的光散乱式粒径分布測定装置LB−500((株)堀場製作所製)を用いて、光散乱法により体積平均粒径を測定したところ、0.28μmであった。
【0520】
(油相成分)
(成分1)酢酸エチル:12.0部
(成分2)トリメチロールプロパン(6モル)とキシレンジイソシアネート(18モル)を付加させ、これにメチル片末端ポリオキシエチレン(1モル、オキシエチレン単位の繰返し数:90)を付加させた付加体(50質量%酢酸エチル溶液、三井化学(株)製):3.76部
(成分3)多価イソシアネート化合物(1)(50質量%酢酸エチル溶液として):15.0部
(成分4)ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(SR−399、サートマー社製)の65質量%酢酸エチル溶液:11.54部
(成分5)スルホン酸塩型界面活性剤(パイオニンA−41−C、竹本油脂(株)製)の10%酢酸エチル溶液:4.42部
【0521】
(水相成分)
蒸留水:46.87部
【0522】
<バインダーポリマー(6)の合成>
三口フラスコに、1−メトキシ−2−プロパノール:78.0gを秤取り、窒素気流下、70℃に加熱した。この反応容器に、ブレンマーPME−100(メトキシジエチレングリコールモノメタクリレート、日本油脂(株)製):52.1g、メチルメタクリレート:21.8g、メタクリル酸:14.2g、ヘキサキス(3−メルカプトプロピオン酸)ジペンタエリスリトール:2.15g、V−601(2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、和光純薬工業(株)製):0.38g、1−メトキシ−2−プロパノール:54gからなる混合溶液を2時間30分かけて滴下した。滴下終了後、80℃に昇温し、更に2時間反応を続けた。V−601:0.04g、1−メトキシ−2−プロパノール:4gから成る混合溶液を加え、90℃に昇温して2.5時間反応を続けた。反応終了後、室温まで反応液を冷却した。
上記の反応溶液に1−メトキシ−2−プロパノール:137.2g、4−ヒドロキシテトラメチルピペリジン−N−オキシド:0.24g、グリシジルメタクリレート:26.0g、テトラエチルアンモニウムブロミド:3.0gを加えてよく撹拌した後、90℃にて加熱した。
18時間後、室温(25℃)まで反応溶液を冷却した後、1−メトキシ−2−プロパノール:99.4gを加えて希釈した。
こうして得られたバインダーポリマー(6)は、固形分濃度:23質量%、GPCで測定したポリスチレン換算重量平均分子量は3.5万であった。
【0523】
【化43】
【0524】
<バインダーポリマー(7)の合成>
三口フラスコに、1−メトキシ−2−プロパノール:78.00gを秤取り、窒素気流下、70℃に加熱した。この反応容器に、ブレンマーPME−100(メトキシジエチレングリコールモノメタクリレート、日本油脂(株)製):52.8g、メチルメタクリレート:2.8g、メタクリル酸:25.0g、ヘキサキス(3−メルカプトプロピオン酸)ジペンタエリスリトール:6.4g、V−601(2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、和光純薬工業(株)製):1.1g、1−メトキシ−2−プロパノール:55gからなる混合溶液を2時間30分かけて滴下した。滴下終了後、80℃に昇温し、更に2時間反応を続けた。2時間後、V−601:0.11g、1−メトキシ−2−プロパノール:1gから成る混合溶液を加え、90℃に昇温して2.5時間反応を続けた。反応終了後、室温まで反応液を冷却した。
上記の反応溶液に1−メトキシ−2−プロパノール:177.2g、4−ヒドロキシテトラメチルピペリジン−N−オキシド:0.28g、グリシジルメタクリレート:46.0g、テトラブチルアンモニウムブロミド:3.4gを加えてよく撹拌した後、90℃にて加熱した。
18時間後、室温(25℃)まで反応溶液を冷却した後、4−メトキシフェノールを0.06g、1−メトキシ−2−プロパノール:114.5gを加えて希釈した。
こうして得られたバインダーポリマー(7)は、固形分濃度:23質量%、GPCで測定したポリスチレン換算重量平均分子量は1.5万であった。
【0525】
【化44】
【0526】
【化45】
【0527】
【化46】
【0528】
<保護層の形成>
画像記録層上に、下記組成の保護層用塗布液(68)をバー塗布した後、120℃で60秒オーブン乾燥し、乾燥塗布量0.18g/mの保護層を形成して平版印刷版原版を作製した。
【0529】
(保護層用塗布液(68))
・無機層状化合物分散液(1) 2.290部
・ポリビニルアルコール(CKS50、日本合成化学工業(株)製、スルホン酸変性、けん化度99モル%以上、重合度300)6質量%水溶液
1.083部
・界面活性剤(ラピゾールA−80(下記構造)、日油(株)製、80質量%水溶液) 0.015部
・リン酸(85質量%水溶液) 0.032部
・リン酸水素二アンモニウム 0.044部
・純水 4.517部
【0530】
【化47】
【0531】
〔実施例69〕
<バックコート層の形成>
支持体15のバックコート層側(非印刷面側)の表面に、実施例49のバックコート層塗布液(49)をバー塗布し、100℃で120秒間乾燥し、厚さ1.2μmのバックコート層を形成した。
【0532】
<下塗り層の形成>
実施例69の作製に用いたバックコート層を有する支持体15の印刷面側の表面に、上記組成の下塗り層塗布液(68)を乾燥塗布量が26mg/mになるよう塗布して、下塗り層を形成した。
【0533】
<画像記録層の形成>
実施例68の画像記録層塗布液(68)のバインダーポリマー(6)とバインダーポリマー(7)の量をそれぞれ0.2891部、0.4574部に変えた以外は、実施例68と同様にして、画像記録層を形成した。
【0534】
<保護層の形成>
画像記録層上に、下記組成の保護層用塗布液(69)をバー塗布した後、120℃で60秒オーブン乾燥し、乾燥塗布量0.18g/mの保護層を形成して平版印刷版原版を作製した。
【0535】
(保護層用塗布液(69))
・無機層状化合物分散液(1) 2.212部
・ポリビニルアルコール(ゴーセランL−3266、日本合成化学工業(株)製、
スルホン酸変性、けん化度85モル%)6質量%水溶液 1.440部
・界面活性剤(パイオニンA−32−B(下記構造)、竹本油脂(株)製、
40質量%水溶液) 0.014部
・界面活性剤(サーフィノール465(下記構造)、日信化学(株)製)
0.006部
・リン酸(85質量%水溶液) 0.023部
・リン酸水素二アンモニウム 0.032部
・純水 3.983部
【0536】
【化48】
【0537】
〔実施例70〕
<バックコート層の形成>
バックコート層塗布液(49)中の平板粒子の添加量を表2のように変更した以外は実施例49と同様にしてバックコート層を形成した。
【0538】
<下塗り層の形成>
実施例70の作製に用いたバックコート層を有する支持体15の印刷面側の表面に、上記組成の下塗り層塗布液(68)を乾燥塗布量が26mg/mになるよう塗布して、下塗り層を形成した。
【0539】
<画像記録層の形成>
実施例68の画像記録層塗布液(68)のバインダーポリマー(6)とバインダーポリマー(7)の量をそれぞれ0.2891部、0.4574部に変えた以外は、実施例68と同様にして、画像記録層を形成した。
【0540】
<保護層の形成>
画像記録層上に、上記組成の保護層用塗布液(69)をバー塗布した後、120℃で60秒オーブン乾燥し、乾燥塗布量0.18g/mの保護層を形成して平版印刷版原版を作製した。
【0541】
〔実施例71〕
<バックコート層の形成>
バックコート層塗布液(49)中の平板粒子の添加量を表2のように変更した以外は実施例49と同様にしてバックコート層を形成した。
【0542】
<下塗り層の形成>
実施例71の作製に用いたバックコート層を有する支持体15の印刷面側の表面に、上記組成の下塗り層塗布液(68)を乾燥塗布量が26mg/mになるよう塗布して、下塗り層を形成した。
【0543】
<画像記録層の形成>
実施例68の画像記録層塗布液(68)のバインダーポリマー(6)とバインダーポリマー(7)の量をそれぞれ0.2891部、0.4574部に変えた以外は、実施例68と同様にして、画像記録層を形成した。
【0544】
<保護層の形成>
画像記録層上に、上記組成の保護層用塗布液(69)をバー塗布した後、120℃で60秒オーブン乾燥し、乾燥塗布量0.18g/mの保護層を形成して平版印刷版原版を作製した。
【0545】
〔実施例72〕
<バックコート層の形成>
バックコート層塗布液(49)中の平板粒子の添加量を表2のように変更した以外は実施例49と同様にしてバックコート層を形成した。
【0546】
<下塗り層の形成>
実施例72の作製に用いたバックコート層を有する支持体15の印刷面側の表面に、上記組成の下塗り層塗布液(68)を乾燥塗布量が26mg/mになるよう塗布して、下塗り層を形成した。
【0547】
<画像記録層の形成>
実施例68の画像記録層塗布液(68)のバインダーポリマー(6)とバインダーポリマー(7)の量をそれぞれ0.2891部、0.4574部に変えた以外は、実施例68と同様にして、画像記録層を形成した。
【0548】
<保護層の形成>
画像記録層上に、上記組成の保護層用塗布液(69)をバー塗布した後、120℃で60秒オーブン乾燥し、乾燥塗布量0.18g/mの保護層を形成して平版印刷版原版を作製した。
【0549】
〔印刷用原版の評価〕
各実施例、比較例で得た印刷用原版(平版印刷版原版、印刷用捨て版原版)について、同様に、耐引っ掻き傷性、耐擦り剥がれ性、及び、平板粒子を含有する層の算術平均高さSaの測定について評価を行った。
評価結果を下記表2に示す。
【0550】
【表31】
【0551】
【表32】



【産業上の利用可能性】
【0552】
本発明によれば、平版印刷版原版及び捨て版原版を含む印刷用原版を積層する場合、合紙なしでも、裏面層の傷つき、剥がれを防止できる印刷用原版を提供することができる。また、上記印刷用原版の積層体を提供することができる。
【0553】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本出願は、2017年8月31日出願の日本特許出願(特願2017−167854)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【符号の説明】
【0554】
1 アルミニウム板
2、4 ローラ状ブラシ
3 研磨スラリー液
5、6、7、8 支持ローラ
50 主電解槽
51 交流電源
52 ラジアルドラムローラ
53a,53b 主極
54 電解液供給口
55 電解液
56 スリット
57 電解液通路
58 補助陽極
60 補助陽極槽
W アルミニウム板
410 陽極酸化処理装置
412 給電槽
414 電解処理槽
416 アルミニウム板
418、426 電解液
420 給電電極
422,428 ローラ
424 ニップローラ
430 電解電極
432 槽壁
434 直流電源

図1
図2
図3
図4