(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記表示工程は、前記ひび割れのひび幅に応じて、少なくとも補修対象のひび割れと補修対象外のひび割れとを識別可能に表示方法を変更して表示する請求項1に記載の補修長の決定方法。
前記ポインティング工程は、前記検出工程で検出された前記ひび割れの結果に基づいて、ポインティングした点をポインティングした位置の近傍の前記ひび割れの位置に修正する請求項1から4のいずれか1項に記載の補修長の決定方法。
前記ポインティング工程は、前記ひび割れの両端の2点がポインティングされると、前記両端の2点の間の1点または複数点の位置を、前記検出工程で検出したひび割れの結果に基づいて、自動的にポインティングする請求項1から4のいずれか1項に記載の補修長の決定方法。
出力部が、前記ひび割れのひび幅と、前記ひび幅に対する前記補間曲線の長さの情報を出力する出力工程を有する請求項1から7のいずれか1項に記載の補修長の決定方法。
前記表示制御部は、前記ひび割れのひび幅に応じて、少なくとも補修対象のひび割れと補修対象外のひび割れとを識別可能に表示方法を変更して表示する請求項12に記載の補修長の決定装置。
前記補間曲線作成部は、前記ひび割れ検出部が検出した前記ひび割れの結果に基づいて、前記操作部がポインティングした点を、ポインティングした位置の近傍の前記ひび割れの位置に修正する請求項12から15のいずれか1項に記載の補修長の決定装置。
前記補間曲線作成部は、前記ひび割れの両端の2点がポインティングされると、前記両端の2点の間の1点または複数点の位置を、前記ひび割れ検出部が検出したひび割れの結果に基づいて、自動的にポインティングする請求項12から15のいずれか1項に記載の補修長の決定装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
構造物のひび割れを補修する作業は、構造物のひびを補修材により埋めることにより行う。そのため、必要な補修材の量を求めるため、補修すべき補修領域(補修長)を算出する必要がある。構造物のひび割れを補修する場合、特許文献1及び特許文献2に記載されているように、画像から補修領域を決定する。しかしながら、構造物には、補修すべきひび割れと、補修の必要がないひび割れとが混在するため、算出すべき補修長(実際に補修を行う長さ)と、ひび割れの検出結果と、が異なる値となっていた。
【0006】
また、ひび割れの補修は、補修材を塗布、注入又は充填する(以下、「塗布等する」ともいう)ことで行われるが、ひび割れに対して正確に補修材を塗布等する必要はなく、塗布等する補修材の範囲にひび割れが含まれていればよい。したがって、補修材の塗布等は、実際のひび割れをなまらせた曲線で行われる。したがって、実際のひび割れの長さと補修に用いられる長さとが異なる場合がある。
【0007】
また、補修材を塗布等する際、実際のひび割れが連続していなくても、複数のひび割れを連続して行う場合がある。しかしながら、自動検出では、複数のひび割れと認識されるため、補修されるひび割れの数(補修回数)が異なり、算出される補修長と、実際に補修する補修長とが異なる値となる場合がある。
【0008】
このように、ひび割れ検出の結果をそのまま用いて補修領域を決定すると、算出した補修長と、実際に補修する補修長とで違いが生じていた。そのため、使用する補修材が余る、又は、足りない等の問題が生じており、より正確な補修材の量を知ることが求められていた。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、補修対象となる構造物の補修すべき領域(補修長)を正確に算出する補修長の決定方法及び補修長の決定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的を達成するために、本発明に係る補修長の決定方法は、画像取得部が、構造物に対するひび割れの補修対象領域を撮像した画像を取得する画像取得工程と、ひび割れ検出部が、取得した画像からひび割れを検出する検出工程と、表示制御部が、検出工程で検出されたひび割れを表示する表示工程と、操作部からの指示によりひび割れの両端の2点を含む複数点をポインティングするポインティング工程と、補間曲線作成部が、ポインティング工程でポインティングされた点を用いて補間曲線を作成する補間曲線作成工程と、補修長決定部が、補間曲線の長さを検出し、補修長を決定する補修長決定工程と、を有する。
【0011】
本発明によれば、画像を取得し、ひび割れを検出した後、このひび割れの2点を含む複数点をポインティングし、この複数点を用いて補間曲線を作成することで、ひび割れに対応した曲線を作成することができる。そして、この補間曲線を補修するひび割れの補修領域(補修長)とすることで、補修する補修長さを算出することができ、正確な補修材の量を算出することができる。
【0012】
本発明の一態様は、表示工程は、ひび割れのひび幅に応じて、少なくとも補修対象のひび割れと補修対象外のひび割れとを識別可能に表示方法を変更して表示することが好ましい。
【0013】
この態様によれば、補修対象のひび割れと補修対象外のひび割れと、を画像上で認識することができる。
【0014】
本発明の一態様は、表示方法が、ひび割れに対応する線の色、線の種類、及び、線の点滅の速度から選ばれることが好ましい。
【0015】
この態様は、補修対象のひび割れと補修対象外のひび割れの表示方法を限定したものであり、ひび割れに対応する線の色、線の種類、及び、線の点滅の速度で表示することで、補修対象のひび割れと補修対象外のひび割れとを識別することができる。
【0016】
本発明の一態様は、表示制御部が、補修対象のひび割れのみを表示するフィルタリング工程を有することが好ましい。
【0017】
この態様によれば、フィルタリング工程により補修対象のひび割れのみを表示することで、以後の工程の作業をし易くすることができる。
【0018】
本発明の一態様は、ポインティング工程は、検出工程で検出されたひび割れの結果に基づいて、ポインティングした点をポインティングした位置の近傍のひび割れの位置に修正することが好ましい。
【0019】
この態様によれば、ひび割れの位置とポインティングした位置とが異なる場合に、ひび割れの位置に修正することで、ひび割れに対応したより正確な補間曲線を作成することができる。
【0020】
本発明の一態様は、ポインティング工程は、ひび割れの両端の2点がポインティングされると、両端の2点の間の1点または複数点の位置を、検出工程で検出したひび割れの結果に基づいて、自動的にポインティングすることが好ましい。
【0021】
この態様によれば、ひび割れの両端の2点をポインティングし、その間のひび割れの
1又は複数点の位置をポインティングすることで、操作を簡略化することができる。また、自動的にポインティングすることで、同じ条件でポインティングすることができ、安定して補間曲線を作成することができる。
【0022】
本発明の一態様は、出力部が、補間曲線の図面情報を出力する出力工程を有することが好ましい。
【0023】
この態様によれば、補間曲線の図面情報を出力することで、目視により補間曲線を確認することができる。これにより、作成した補間曲線が、補修するひび割れの実際の補修領域に対応するか確認することができる。
【0024】
本発明の一態様は、出力部が、ひび割れのひび幅と、ひび幅に対する補間曲線の長さの情報を出力する出力工程を有することが好ましい。
【0025】
この態様によれば、ひび幅とひび幅に対応する補間曲線の長さの情報を出力することで、ひび幅に対応する補修長を確認することができる。
【0026】
本発明の一態様は、出力部が、ひび幅に対応する補修方法を出力することが好ましい。
【0027】
ひび割れの補修方法は、ひび幅の大きさにより異なってくる。この態様によれば、ひび幅に対応する補修方法を出力することで、補修方法に対応した補修材の準備を行うことができる。
【0028】
本発明の一態様は、出力工程は、あおり補正後のデータを出力することが好ましい。
【0029】
この態様によれば、あおり補正後のデータを出力することで、より正確なひび割れの幅、及び、補修長を決定することができる。また、出力した画像により、補修位置を確認することができる。
【0030】
本発明の一態様は、補間曲線は、スプライン曲線又はベジェ曲線であることが好ましい。
【0031】
この態様は、補間曲線の例を示したものであり、スプライン曲線又はベジェ曲線により補間曲線を作成することで、ひび割れに対応した実際に補修が行われる曲線を作成することができる。
【0032】
本発明の目的を達成するために、本発明に係る補修長の決定装置は、構造物に対するひび割れの補修対象領域を撮像した画像を取得する画像取得部と、画像取得部が取得した画像からひび割れを検出するひび割れ検出部と、ひび割れ検出部が検出したひび割れを表示する表示制御部と、ひび割れの両端の2点を含む複数点をポインティングする操作部と、操作部によりポインティングした点を用いて補間曲線を作成する補間曲線作成部と、補間曲線の長さを検出し、補修長を決定する補修長決定部と、を備える。
【0033】
本発明の一態様は、表示制御部は、ひび割れのひび幅に応じて、少なくとも補修対象のひび割れと補修対象外のひび割れとを識別可能に表示方法を変更して表示することが好ましい。
【0034】
本発明の一態様は、表示方法が、ひび割れに対応する線の色、線の種類、及び、線の点滅の速度から選ばれる少なくともいずれか1つであることが好ましい。
【0035】
本発明の一態様は、表示制御部が、補修対象のひび割れのみを表示することが好ましい。
【0036】
本発明の一態様は、補間曲線作成部は、ひび割れ検出部が検出したひび割れの結果に基づいて、操作部がポインティングした点を、ポインティングした位置の近傍のひび割れの位置に修正することが好ましい。
【0037】
本発明の一態様は、補間曲線作成部は、ひび割れの両端の2点がポインティングされると、両端の2点の間の1点または複数点の位置を、ひび割れ検出部が検出したひび割れの結果に基づいて、自動的にポインティングすることが好ましい。
【0038】
本発明の一態様は、補間曲線の図面情報を出力する出力部を有することが好ましい。
【0039】
本発明の一態様は、ひび割れのひび幅と、ひび幅に対する補間曲線の長さの情報を出力する出力部を有することが好ましい。
【0040】
本発明の一態様は、ひび幅に対応する補修方法を出力することが好ましい。
【0041】
本発明の一態様は、出力部は、あおり補正後のデータを出力することが好ましい。
【0042】
上記記載の補修長の決定装置は、補修長の決定方法を補修長の決定装置として展開したものである。補修長の決定装置においても、補修長の決定方法と同様の効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0043】
本発明の補修長の決定方法及び補修長の決定装置によれば、ひび割れの両端を含む複数点をポインティングし、このポインティングした点を用いて補間曲線を作成している。そして、この補間曲線の長さを検出することで、補修すべき領域(補修長)を正しく算出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、添付図面に従って、本発明に係る補修長の決定方法及び補修長の決定装置について説明する。
【0046】
<橋梁の構造>
図1は、建造物の一つである橋梁1を下から見た状態を示す斜視図である。
図1に示す橋梁1は、主桁2と、横桁3と、対傾構4と、横構5と、床版6と、による立体的構造を有し、これらの部材がボルト、リベット、溶接等により連結されて構成されている。主桁2等の上部には、車輌等が走行するための床版6が打設されている。床版6は、鉄筋コンクリート製のものが一般的である。主桁2は橋台又は橋脚の間に渡されて床版6上の車輌等の荷重を支える部材であり、また床版6の面(水平面)と直交する面(鉛直方向の面)を有する。横桁3は、荷重を複数の主桁2で支持するため、主桁2を連結する部材である。対傾構4及び横構5は、それぞれ風及び地震の横荷重に抵抗するため、主桁2を相互に連結する部材である。なお、本実施形態では橋梁1を対象(構造物)とする場合について説明するが、対象とする構造物は橋梁に限らずトンネル、ビル等、道路等でもよい。
【0047】
<画像処理システムの構成>
図2は、画像処理システム10の概略構成を示すブロック図である。画像処理システム10は、デジタルカメラ100(撮像装置)及びシステム本体200(補修長の決定装置)を備える。画像処理システム10は、被写体を撮影して取得した画像から、補修を行う必要があるひび割れの補修長を算出するシステムであり(詳細は後述する)、デジタルカメラ、スマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピュータ等に適用することができる。なお、デジタルカメラ100はシステム本体200と別々の筺体に組み込んでもよいし、一体化してもよい。また、デジタルカメラ100をシステム本体200の一部として組み込み、デジタルカメラ100とシステム本体200とで本発明に係る補修長の決定装置を構成してもよい。
【0048】
<デジタルカメラの構成>
デジタルカメラ100は、図示せぬ撮影レンズ及び撮像素子を備える撮像光学系110により画像を取得する。撮像素子の例としてはCCD(Charge Coupled Device)型の撮像素子及びCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)型の撮像素子を挙げることができる。撮像素子の受光面上にはR(赤),G(緑),又はB(青)のカラーフィルタが設けられており、各色の信号に基づいて被写体のカラー画像を取得することができる。デジタルカメラ100は、無線通信部130及びアンテナ132を介してシステム本体200との無線通信を行い、撮影された画像が画像取得部210に入力されて後述する処理が行われる。
【0049】
撮影された画像は、後述する複数の分割画像を合成して生成された画像でもよい。また、例えば、格間のサイズが小さく、デジタルカメラ100による1回の撮影で1つの格間を含む床版6の画像(全体画像)を適当な解像度で撮影することができる場合には、1回の撮影により取得した画像でもよい。
【0050】
デジタルカメラ100は、例えば、5000×4000画素程度の画素数を有する汎用のコンパクトデジタルカメラでよい。
【0051】
<システム本体の構成>
システム本体200は、主として画像取得部210、ひび割れ検出部220、表示制御部230、操作部240、補間曲線作成部250、補修長決定部260、出力部270から構成されている。これらは、互いに接続されて必要な情報が送受信される。また、システム本体200はアンテナ212を介してデジタルカメラ100との間で無線通信を行い、デジタルカメラ100で撮影された撮影画像を取得する。
【0052】
≪画像取得部210≫
画像取得部210は、デジタルカメラ100(又は記録媒体、ネットワーク等)から橋梁1の撮影画像を取得する。画像は橋梁1を分割撮影した複数の画像でもよく、1回撮影により取得した画像でもよい。複数の画像から1枚の画像を合成する場合は、画像同士の対応点を検出し、また画像同士の対応点に基づいて撮影画像を合成する。
【0053】
≪ひび割れ検出部220≫
ひび割れ検出部220は、撮影画像におけるひび割れを抽出及び計測する。
【0054】
≪表示制御部230≫
表示制御部230は、モニタ表示部232を備えており、入力した画像、検出したひび割れ及びひび割れの情報、及び、作成した補間曲線等の情報を表示させる表示画面全般を制御する。
【0055】
≪操作部240≫
操作部240は、入力デバイス及びポインティングデバイスとしてのキーボード242及びマウス244を含む。また、モニタ表示部232がタッチパネルを有する場合には、そのタッチパネル等も含む。ユーザーはこれらのデバイス及びモニタ表示部232の画面を介して、本実施形態の補修長の決定方法の実行に必要な操作を行うことができる(後述)。この操作には、ひび割れのポインティング位置の指定、ひび割れ情報の入力等が含まれる。
【0056】
≪補間曲線作成部250≫
補間曲線作成部250は、操作部240を介してポインティングされた位置から補間曲線を作成する。
【0057】
≪補修長決定部260≫
補修長決定部260は、補間曲線作成部250が作成した補間曲線の長さを計測する。
【0058】
≪出力部270≫
出力部270は、補間曲線作成部250が作成した補間曲線を図面のデータとして出力する。また、補修長決定部260が測定した補間曲線(補修長)の長さ及び補間曲線の情報、ひび割れ検出部220で検出したひび割れの情報を文字、又は、表のデータとして出力する。なお、これらの情報は、図面のデータとして出力してもよい。
【0059】
システム本体200の各部の機能は、各種のプロセッサ(processor)を用いて実現できる。各種のプロセッサには、例えばソフトウェア(プログラム)を実行して各種の機能を実現する汎用的なプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)が含まれる。また、上述した各種のプロセッサには、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)も含まれる。さらに、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路なども上述した各種のプロセッサに含まれる。
【0060】
各部の機能は1つのプロセッサにより実現されてもよいし、複数のプロセッサを組み合わせて実現されてもよい。また、複数の機能を1つのプロセッサで実現してもよい。複数の機能を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアント、サーバなどのコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組合せで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の機能として実現する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)などに代表されるように、システム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の機能は、ハードウェア的な構造として、上述した各種のプロセッサを1つ以上用いて構成される。さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)である。
【0061】
上述したプロセッサあるいは電気回路がソフトウェア(プログラム)を実行する際は、実行するソフトウェアのプロセッサ(コンピュータ)読み取り可能なコードをROM等の非一時的記録媒体に記憶しておき、プロセッサがそのソフトウェアを参照する。ROMではなく各種光磁気記録装置、半導体メモリ等の非一時的記録媒体にコードを記録してもよい。ソフトウェアを用いた処理の際には例えばRAM(Random Access Memory)が一時的記憶領域として用いられ、また例えばEEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)に記憶されたデータが参照される。
【0062】
<画像処理の手順>
画像処理システム10による画像処理について説明する。
図3は、画像処理(本発明に係る補修長の決定方法の各処理を含む)の手順を示すフローチャートである。
【0063】
<画像取得工程>
まず、デジタルカメラ100により橋梁1(構造物)の異なる部分が分割して撮影された複数の撮影画像を取得する(ステップS100;画像取得工程)。撮影画像は、ひび割れの補修対象領域を撮像した画像である。システム本体200は、デジタルカメラ100(撮像光学系110、無線通信部130、アンテナ132、アンテナ212)及び画像取得部210を介して、それらの複数の撮影画像を取得する。
【0064】
画像の撮影が行われたら、画像取得部210は、複数の撮影画像を1つの画像に合成する。撮影画像の合成は、合成情報の算出、例えば、撮影画像同士の対応点、及び、対応点に基づい
て射影変換行列等を算出し、対応点に基づいて画像を合成する。なお、1枚の画像で、全領域を撮影することができれば、画像を合成する工程は省略することができる。取得した画像は、表示制御部230の制御によりモニタ表示部232に表示してもよい。
図4は、橋梁1を撮影した画像を示す図である。
図4では、合成後の全体画像20を示す。全体画像20内にひび割れ22が確認できる。
【0065】
<検出工程>
画像取得工程で取得した画像からひび割れを検出する(ステップS102;検出工程)。ひび割れの検出を行うために計測する項目としては、位置、大きさ、方向、範囲、形状等があるが、構造物の種類、特徴、検査の目的等の条件に応じて設定することができる。ひび割れの検出においては、ひび割れ検出部220が、検出結果をベクトル化し、始点及び終点を有する線分又はその集合で表す。
【0066】
ひび割れの検出は、種々の手法により行うことができるが、例えば特許4006007号公報に記載されたひび割れ検出方法を用いることができる。この方法は、ウェーブレット画像を作成する工程と、ウェーブレット画像に基づいてひび割れ領域を判定する工程と、を有するひび割れ検出方法である。ウェーブレット画像を作成する工程では、対比される2つの濃度に対応したウェーブレット係数を算定するとともに、その2つの濃度をそれぞれ変化させた場合のそれぞれのウェーブレット係数を算定してウェーブレット係数テーブルを作成し、ひび割れ検出対象であるコンクリート表面を撮影した入力画像をウェーブレット変換する。ひび割れ領域を判定する工程では、ウェーブレット係数テーブル内において、局所領域内の近傍画素の平均濃度と注目画素の濃度に対応するウェーブレット係数を閾値として、注目画素のウェーブレット係数と閾値とを比較することによりひび割れ領域とひび割れでない領域とを判定する。
【0067】
また、ひび割れの幅は、撮像した画像の短辺と長辺の長さをあらかじめ入力しておき、撮影対象となる構造物と、デジタルカメラ100との撮影距離、及び、デジタルカメラ100の画素数から、検出することができる。また、ひび割れの幅の検出は、あおり補正後の画像を用いて行うことが好ましい。あおり補正をすることで、建物の歪みを補正して、真っ直ぐ正面から見たような写真とすることができる。また、補正後の画像を用いることで、ひび割れの長さ及びひび割れの幅の計測精度を高めることができる。
【0068】
<表示工程>
検出工程で検出したひび割れを、画像取得工程で取得した画像に、マッピングし、画像を表示する(ステップS104;表示工程)。計測結果がマッピングされた画像は、
図5に示すように、表示制御部230の制御によりモニタ表示部232に表示される。マッピングは、ひび割れの位置を示すとともに、ひび割れの幅を表示することができる。また、計測結果と関連付けられた文字、図形、記号等を画面に表示することにより行うことができる。表示した文字、図形、記号等は操作部240(キーボード242及び/又はマウス244)を介した操作により選択することができ、選択に応じて、表示制御部230のモニタ表示部232に検出結果及び計測結果を表示させる。文字、図形、記号等は実際のひび割れを簡略化あるいは強調したものでもよいし、ひび割れの大きさ(幅)等に応じて異なる態様で表示してもよい。
図5は、補修が必要な補修対象のひび割れ22A(幅が0.2mm以上のひび割れ)を太線で、補修が必要のない補修対象外のひび割れ22B(0.2mm未満のひび割れ)を細線で表示している。
図5においては、ひび割れの幅に応じて二種類の太さの線で表示しているが、ひび割れの幅に応じて、3種類以上の太さの線を用いてもよい。また、ひび割れの幅に応じたひび割れの表示方法としては、線の種類(直線、破線、一点鎖線等)、線の色、線の点滅の速度、又は、これらを組み合わせて表示することができる。また、補修対象外のひび割れを透明で表示するように設定することで、次のフィルタリング工程を行わなくとも、補修対象のひび割れのみを表示させることができる。このように、表示することで、補修対象のひび割れと補修対象外のひび割れとを識別可能に表示することができる。
【0069】
<フィルタリング工程>
表示制御部230により、表示工程で、モニタ表示部232に表示した画像から、補修対象外のひび割れの表示を削除するフィルタリングを行ってもよい(ステップS106;フィルタリング工程)。フィルタリング工程は必要に応じて行えばよく、補修対象外のひび割れを表示していても、以降の操作の邪魔にならなければ行わなくてもよい。フィルタリングは、
図6に示す「フィルタリング」ボタン24を押下することで、実行される。フィルタリング工程を行うことで、
図6に示すように、補修対象外のひび割れの表示を消すことができる。
【0070】
<ポインティング工程>
次に操作部240(キーボード242及びマウス244)を介したユーザーからの指示により、モニタ表示部232に表示された、補修対象のひび割れ22Aの複数点をポインティングする(ステップS108;ポインティング工程)。
【0071】
ポインティング工程では、操作部240を介してユーザーが複数点をポインティングすることで、次の補間曲線作成工程で作成される補間曲線を制御する制御点を選択する。ポインティングは、
図7に示すように、モニタ表示部232に表示されるポインタ30を、操作部240を介してユーザーが選択することにより行うことができる。
【0072】
図4及び
図5に示すように、ひび割れ22は、幅の異なる略直線状のひび割れが、複数接続されて連続して形成される。
図4においては、ひび割れ22がジグザグ形状で形成されている。ひび割れの補修は、この複数のひび割れを連続した滑らかな曲線となるように、補修を行う。ひび割れの検出を行ったのみでは、
図5に示すように、実際のひび割れの形状を表示しているので、補修を行う領域と、表示されるひび割れとが異なっている。したがって、ポインティング工程で、操作部240を介してポインティングを行い、このポインティングした点を用いることで、ユーザーの想定する補修領域に対応する補間曲線を作成する。
【0073】
ポインティングする複数点は、補修対象のひび割れ22Aの両端の2点(すなわち、始点及び終点)を含む複数の点が選択される。ポインティングする位置は、次工程で作成される補間曲線が、実際のひび割れの近傍に形成されるように、ポインティングを行う。例えば、
図7に示すように、ひび割れの方向が変わる位置をポインティングすることができる。また、始点から終点までを、同じ間隔でポインティングすることもできる。
【0074】
また、補修材をひび割れに充填又は注入することにより補修を行う場合は、この補修材の充填又は注入する位置にポインティングすることができる。補修材の充填又は注入を行う位置をポインティングすることで、その位置で確実にひび割れの補修を行うことができる。補修材の充填又は注入は、例えば、50cm間隔で行うことができるので、ポインティングも50cm間隔で行うことができる。
【0075】
ポインティングする数は、特に限定されず、ひび割れの形状と作成する補間曲線により、適宜設定することができる。ただし、ポインティングする位置が多くなると、表示された実際のひび割れの長さと補間曲線の長さとに差が出なくなり、また、少なくても、補間曲線が、実際のひび割れの位置と対応せず、補修されない部分がでる場合がある。
【0076】
また、ひび割れの中には、
図5に符号23で示すように、連続したひび割れの中に、補修対象外のひび割れ(幅が0.17mm)が存在する場合がある。このようなひび割れを自動検出すると、
図6に示すように、ひび割れ23Cとひび割れ23Cの2本のひび割れとして検出され、それぞれ異なるひび割れとして認識される。このような場合は、一方のひび割れの端部を始点とし、他方のひび割れの端部を終点としてポインティングを行い、その間の複数点をポインティングすることで、2つのひび割れを1本の補間曲線で補間してもよい。また、2本以上のひび割れを連続して補修を行った方が良い場合も、一方のひび割れの端部を始点とし、他方のひび割れの端部を終点とし、その間の複数点をポインティングすることで、1本の補間曲線で補間してもよい。
【0077】
なお、ひび割れの途中で、分岐しているひび割れに対しては、1本のひび割れと、分岐している部分を始点としたもう1本のひび割れと、の2本のひび割れとして補間曲線を作成する。
【0078】
ひび割れの両端の2点以外の中間の点は、全てを操作部240を介してユーザーにより行ってもよいし、両端の2点をポインティングした後、この両端の2点の間の1点または複数点の位置を、自動的にポインティングさせてもよい。自動的にポインティングさせる方法としては、両端のうち、一方の端部から等間隔でポイントする、又は、複数のひび割れの接続部分(ひび割れの幅が異なる部分)等を自動でポインティングすることにより行うことができる。また、自動によるポインティングと、操作部240を介したポインティングを組み合わせてもよい。自動でポインティングした後、例えば、ひび割れの一部がポインティングした位置から離れており、その後作成する補間曲線ともひび割れが離れている場合は、操作部240の操作により、ポインティングした位置を増やす、又は、変更することで、補間曲線をひび割れに近似してもよい。
【0079】
また、操作部240は、ユーザーがポインティングした位置を、そのポインティングした位置の近傍のひび割れの位置に、修正してもよい。ひび割れの位置とポインティングした位置とで、誤差がある場合に、ポインティングする位置を修正することで、実際のひび割れに近似した
補間曲線を作成することができる。
【0080】
<補間曲線作成工程>
モニタ表示部232に表示されたひび割れに対してポインティングを行った後
、このポインティングを行った点を用いて、補間曲線を作成する(ステップS110;補間曲線作成工程)。作成した補間曲線が、実際に補修材を塗布し、補修する領域となる。
図8は、全体画像20に補間曲線32、33を表示した図である。補間曲線は、「スプライン化」ボタン26を押下することで、
作成される。
【0081】
補間曲線としては、スプライン曲線又はベジェ曲線を用いることができる。スプライン曲線とは、ポインティングした複数の点(制御点)により、その曲線の通過点が制御される滑らかな曲線のことである。ポインティングした点はスプライン曲線上を通っても、通らなくてもよい。スプライン曲線のうち、2次スプライン曲線は、2つの制御点とその手前の制御点の座標により定義される。両端以外は、指定した制御点を通過しないが、制御点の中点を通過する。また、3次スプライン曲線は、2つの制御点とその前後の制御点の座標を使って定義される。3次スプライン曲線についても両端以外は、指定した制御点は通過しない。
【0082】
ベジェ曲線とは、N個の制御点から得られる(N−1)次曲線である。ベジェ曲線は、始点と第1制御点を結ぶ線分が始点における曲線の接線になり、第2制御点と終点を結ぶ線分が終点における曲線の接線になる。ベジェ曲線は、指定した制御点を通過する曲線となる。
【0083】
なお、
図3に示すフローチャートでは、ポインティング工程と補間曲線作成工程を、別の工程として記載しているが、ポインティング工程において、補間曲線作成工程を同時に行ってもよい。ポインティング工程において、ポインティングする際に、今までのポインティングした点との間で補間曲線を作成することができれば、補間曲線を作成しながらポインティングを行うことができる。
【0084】
<補修長決定工程>
補間曲線を作成した後、この補間曲線の長さを測定する(ステップS112;補修長決定工程)。補間曲線を作成することで、この補間曲線を、実際に補修を行うひび割れの位置とみなすことができる。そして、補間曲線の長さを測定することで、この補間曲線の長さを補修長として決定することができる。補修
長についても、撮像した画像の短辺と長辺の長さから、求めることができる。
【0085】
<出力工程>
必要に応じて、補間曲線を図面情報として出力することができる。また、ひび割れの情報、例えば、ひび割れのひび幅と、ひび幅に対応する補間曲線の長さを出力してもよい。また、ひび割れのひび幅に対応する補修方法を出力するようにしてもよい(ステップS114;出力工程)。本実施形態においては、補間曲線の長さを補修長として算出することができればよいため、上記の情報を出力することは必須の構成ではない。
【0086】
補間曲線の図面情報を出力する方法としては、CAD(computer-aided design)図として、
図8に示す補間曲線をdxfファイルとして出力することができる。図面情報には、ひび割れの幅、補間曲線の長さ(補修長)の情報等も出力することができる。図面
情報の出力は、
図8に示す「dxf出力」ボタン28を押下することで、実行することができる。
【0087】
また、ひび割れのひび幅、補間曲線の長さ、補修方法を出力する場合は、表情報として、CSVファイルとして出力することができる。CSVファイルで出力する場合は、
図9に示すように、検出したひび割れに対して、番号(No.)を付けて、その番号に対応するひび割れの幅、及び、補間曲線の長さを出力するようにしてもよい。ひび割れの幅は、そのひび割れの最大値、又は、平均値とすることができる。必要な情報により適宜決定される。
【0088】
また、補修対象のひび割れのうち、ひび割れの幅により補間曲線を分類し、ひび割れの幅に対応した補間曲線群を出力するようにしてもよい(
図10)。
図10では、ひび割れの幅が0.2mm以上0.3mm未満を第I群、0.3mm以上0.5
mm未満を第II群、0.5mm以上を第III群としている。なお、0.2mm未満の
幅のひび割れは補修対象外である。そして、補間曲線の情報として、各補間曲線群の総延長を出力する。補間曲線群の総延長を出力することで、補修に必要な材料などを確認することができる。
【0089】
さらに、ひび割れの幅に対応した補修方法を表示させることもできる。ひび割れの補修は、ひび割れの幅により異なる。ひび割れの幅が狭い場合は、表面塗布工法、すなわち、ひび割れの部分のみを被覆材で被覆することにより行われる。また、ひび割れの幅が広い場合は、ひび割れの内部に補修材を注入する方法により行われる。このように、ひび割れの幅により、補修方法が異なるため、補修方法の情報を出力することで、幅の異なるひび割れがあっても補修材の準備を容易に行うことができる。
【0090】
出力工程により出力されるデータについても、あおり補正後のデータを出力することが好ましい。あおり補正を行った画像に、ひび割れ、及び、補間曲線を表示することで、実際の建造物に近い画像に対して、補間曲線を表示し、確認することができるので、補修前に、補修材の量等を確認することができる。
【0091】
以上説明したとおり、本実施形態によれば、構造物を撮像した画像からひび割れを検出し、この検出したひび割れの、端部の2点を含む複数点をプロットすることで、補間曲線を作成する。この補間曲線の長さを決定することで、補修すべき補修領域(補修長)を正しく算出することができる。