(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
半導体デバイスの製造工程では、半導体ウェハ(以下、「ウェハ」という。)にエッチング等のプラズマ処理が行われる。プラズマ処理では、処理ガスを励起させることによりプラズマを生成し、当該プラズマによってウェハを処理する。
【0009】
プラズマ処理は、プラズマ処理装置で行われる。プラズマ処理装置は、一般的に、チャンバ、ステージ、高周波(Radio Frequency:RF)電源を備える。一例では、高周波電源は、第1の高周波電源、及び第2の高周波電源を備える。第1の高周波電源は、チャンバ内のガスのプラズマを生成するために、第1の高周波電力を供給する。第2の高周波電源は、ウェハにイオンを引き込むために、バイアス用の第2の高周波電力を下部電極に供給する。チャンバはその内部空間を、プラズマが生成される処理空間として画成する。ステージは、チャンバ内に設けられている。ステージは、下部電極及び静電チャックを有する。静電チャックは下部電極上に設けられている。一例では、静電チャック上には、当該静電チャック上に載置されたウェハを囲むようにエッジリングが配置される。エッジリングは、ウェハに対するプラズマ処理の均一性を向上させるために設けられる。
【0010】
エッジリングは、プラズマ処理が実施される時間の経過に伴い、消耗する。エッジリングが消耗すると、エッジリングの厚みが減少する。エッジリングの厚みが減少すると、エッジリング及びウェハのエッジ領域の上方においてシースの形状が変化する。このようにシースの形状が変化すると、ウェハのエッジ領域におけるイオンの入射方向が鉛直方向に対して傾斜する。その結果、ウェハのエッジ領域に形成される開口が、ウェハの厚み方向に対して傾斜する。
【0011】
ウェハのエッジ領域においてウェハの厚み方向に平行に延びる開口を形成するためには、エッジリング及びウェハのエッジ領域の上方におけるシースの形状を制御して、ウェハのエッジ領域へのイオンの入射方向の傾き(以下、「チルト角度」という場合がある。)を調整する必要がある。そこで、エッジリング及びウェハのエッジ領域の上方におけるシースの形状を制御するために、例えば特許文献1では、直流電源からエッジリングに負の直流電圧を印加するように構成されたプラズマ処理装置が提案されている。
【0012】
ところで、エッジリングに印加される直流電圧によっては、ウェハとエッジリングとの間で放電が生じるなどの影響があるため、印加できる直流電圧には制約がある。このため、直流電圧の調整だけでチルト角度を制御しようとしても、そのチルト角度の調整範囲には限界がある。また、消耗に伴うエッジリングの交換頻度を抑えることが望まれるが、上述したように直流電圧の調整だけではチルト角度を十分に制御できない場合があり、かかる場合、エッジリングの交換間隔を改善しきれない。
【0013】
本開示にかかる技術は、エッチングにおいて基板のエッジ領域でのチルト角度を適切に制御する。以下、本実施形態にかかるエッチング装置及びエッチング方法について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0014】
<エッチング装置>
先ず、本実施形態にかかるエッチング装置について説明する。
図1は、エッチング装置1の構成の概略を示す縦断面図である。
図2は、エッチング装置1の電源系の説明図である。エッチング装置1は、容量結合型のエッチング装置である。エッチング装置1では、基板としてのウェハWに対してエッチングを行う。
【0015】
図1に示すようにエッチング装置1は、略円筒形状のチャンバ10を有している。チャンバ10は、その内部においてプラズマが生成される処理空間Sを画成する。チャンバ10は、例えばアルミニウムから構成されている。チャンバ10は接地電位に接続されている。
【0016】
チャンバ10の内部には、ウェハWを載置する基板支持体としてのステージ11が収容されている。ステージ11は、下部電極12、静電チャック13、及びエッジリング14を有している。なお、下部電極12の下面側には、例えばアルミニウムから構成される電極プレート(図示せず)が設けられていてもよい。
【0017】
下部電極12は、導電性の金属、例えばアルミニウム等で構成されており、略円板形状を有している。
【0018】
下部電極12の内部には、冷媒流路15aが形成されている。冷媒流路15aには、チャンバ10の外部に設けられたチラーユニット(図示せず)から冷媒入口配管15bを介して冷媒が供給される。冷媒流路15aに供給された冷媒は、冷媒出口流路15cを介してチラーユニットに戻るようになっている。冷媒流路15aの中に冷媒、例えば冷却水等を循環させることにより、静電チャック13、エッジリング14、及びウェハWを所望の温度に冷却することができる。
【0019】
静電チャック13は、下部電極12上に設けられている。一例では、静電チャック13は、ウェハWとエッジリング14の両方を静電力により吸着保持可能に構成された部材である。静電チャック13は、周縁部の上面に比べて中央部の上面が高く形成されている。静電チャック13の中央部の上面は、ウェハWが載置されるウェハ載置面となり、一例では、静電チャック13の周縁部の上面は、エッジリング14が載置されるエッジリング載置面となる。
【0020】
一例では、静電チャック13の内部において中央部には、ウェハWを吸着保持するための第1の電極16aが設けられている。静電チャック13の内部において周縁部には、エッジリング14を吸着保持するための第2の電極16bが設けられている。静電チャック13は、絶縁材料からなる絶縁材の間に電極16a、16bを挟んだ構成を有する。
【0021】
第1の電極16aには、直流電源(図示せず)からの直流電圧が印加される。これにより生じる静電力により、静電チャック13の中央部の上面にウェハWが吸着保持される。同様に、第2の電極16bには、直流電源(図示せず)からの直流電圧が印加される。一例では、これにより生じる静電力により、静電チャック13の周縁部の上面にエッジリング14が吸着保持される。
【0022】
なお、本実施形態において、第1の電極16aが設けられる静電チャック13の中央部と、第2の電極16bが設けられる周縁部とは一体となっているが、これら中央部と周縁部とは別体であってもよい。また、本実施形態では、エッジリング14を保持する静電チャック13の周縁部が、本開示におけるエッジリング支持体に相当する。また、第1の電極16a及び第2の電極16bは、いずれも単極であってもよく、双極であってもよい。
【0023】
また、本実施形態においてエッジリング14は、第2の電極16bに直流電圧を印加することで静電チャック13に静電吸着されるが、エッジリング14の保持方法はこれに限定されない。例えば、吸着シートを用いてエッジリング14を吸着保持してもよいし、エッジリング14をクランプして保持してもよい。あるいは、エッジリング14の自重によりエッジリング14が保持されてもよい。
【0024】
エッジリング14は、静電チャック13の中央部の上面に載置されたウェハWを囲むように配置される、環状部材である。エッジリング14は、エッチングの均一性を向上させるために設けられる。このため、エッジリング14は、エッチングに応じて適宜選択される材料から構成されており、例えばSiやSiCから構成され得る。
【0025】
以上のように構成されたステージ11は、チャンバ10の底部に設けられた略円筒形状の支持部材17に締結される。支持部材17は、例えばセラミックや石英等の絶縁体により構成される。
【0026】
なお、図示は省略するが、ステージ11は、静電チャック13、エッジリング14、及びウェハWのうち少なくとも1つを所望の温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、流路、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。流路には、冷媒、伝熱ガスのような温調流体が流れる。
【0027】
ステージ11の上方には、ステージ11と対向するように、シャワーヘッド20が設けられている。シャワーヘッド20は、処理空間Sに面して配置される電極板21、及び電極板21の上方に設けられる電極支持体22を有している。電極板21は、下部電極12と一対の上部電極として機能する。後述するように第1の高周波電源50が下部電極12に電気的に接続されている場合には、シャワーヘッド20は、接地電位に接続される。なお、シャワーヘッド20は、絶縁性遮蔽部材23を介して、チャンバ10の上部(天井面)に支持されている。
【0028】
電極板21には、後述のガス拡散室22aから送られる処理ガスを処理空間Sに供給するための複数のガス噴出口21aが形成されている。電極板21は、例えば、発生するジュール熱の少ない低い電気抵抗率を有する導電体又は半導体から構成される。
【0029】
電極支持体22は、電極板21を着脱自在に支持するものである。電極支持体22は、例えばアルミニウム等の導電性材料の表面に耐プラズマ性を有する膜が形成された構成を有している。この膜は、陽極酸化処理によって形成された膜、又は、酸化イットリウムから形成された膜といったセラミック製の膜であり得る。電極支持体22の内部には、ガス拡散室22aが形成されている。ガス拡散室22aからは、ガス噴出口21aに連通する複数のガス流通孔22bが形成されている。また、ガス拡散室22aには、後述するガス供給管33に接続されるガス導入孔22cが形成されている。
【0030】
また、電極支持体22には、ガス拡散室22aに処理ガスを供給するガス供給源群30が、流量制御機器群31、バルブ群32、ガス供給管33、ガス導入孔22cを介して接続されている。
【0031】
ガス供給源群30は、エッチングに必要な複数種のガス供給源を有している。流量制御機器群31は複数の流量制御器を含み、バルブ群32は複数のバルブを含んでいる。流量制御機器群31の複数の流量制御器の各々は、マスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器である。エッチング装置1においては、ガス供給源群30から選択された一以上のガス供給源からの処理ガスが、流量制御機器群31、バルブ群32、ガス供給管33、ガス導入孔22cを介してガス拡散室22aに供給される。そして、ガス拡散室22aに供給された処理ガスは、ガス流通孔22b、ガス噴出口21aを介して、処理空間S内にシャワー状に分散されて供給される。
【0032】
チャンバ10の底部であって、チャンバ10の内壁と支持部材17との間には、バッフルプレート40が設けられている。バッフルプレート40は、例えばアルミニウム材に酸化イットリウム等のセラミックスを被覆することにより構成される。バッフルプレート40には、複数の貫通孔が形成されている。処理空間Sは当該バッフルプレート40を介して排気口41に連通されている。排気口41には例えば真空ポンプ等の排気装置42が接続され、当該排気装置42により処理空間S内を減圧可能に構成されている。
【0033】
また、チャンバ10の側壁にはウェハWの搬入出口43が形成され、当該搬入出口43はゲートバルブ44により開閉可能となっている。
【0034】
図1及び
図2に示すように、エッチング装置1は、第1の高周波電源50、第2の高周波電源51、及び整合器52を更に有している。第1の高周波電源50と第2の高周波電源51は、整合器52を介して下部電極12に接続されている。
【0035】
第1の高周波電源50は、プラズマ発生用の高周波電力を発生する電源である。第1の高周波電源50からは27MHz〜100MHzの周波数であってよく、一例においては40MHzの高周波電力HFが下部電極12に供給される。第1の高周波電源50は、整合器52の第1の整合回路53を介して、下部電極12に接続されている。第1の整合回路53は、第1の高周波電源50の出力インピーダンスと負荷側(下部電極12側)の入力インピーダンスを整合させるための回路である。なお、第1の高周波電源50は、下部電極12に電気的に接続されていなくてもよく、第1の整合回路53を介して上部電極であるシャワーヘッド20に接続されていてもよい。
【0036】
第2の高周波電源51は、ウェハWにイオンを引き込むための高周波電力(高周波バイアス電力)LFを発生して、当該高周波電力LFを下部電極12に供給する。高周波電力LFの周波数は、400kHz〜13.56MHzの範囲内の周波数であってよく、一例においては400kHzである。第2の高周波電源51は、整合器52の第2の整合回路54を介して、下部電極12に接続されている。第2の整合回路54は、第2の高周波電源51の出力インピーダンスと負荷側(下部電極12側)の入力インピーダンスを整合させるための回路である。なお、第2の高周波電源51に代えて、DC(Direct Current)パルス生成部を用いてもよい。
【0037】
エッチング装置1は、直流(DC:Direct Current)電源60、切替ユニット61、第1のRFフィルタ62、及び第2のRFフィルタ63を更に有している。直流電源60は、切替ユニット61、第2のRFフィルタ63、及び第1のRFフィルタ62を介して、エッジリング14に電気的に接続されている。
【0038】
直流電源60は、エッジリング14に印加される負極性の直流電圧を発生する電源である。また、直流電源60は、可変直流電源であり、直流電圧の高低を調整可能である。
【0039】
切替ユニット61は、エッジリング14に対する直流電源60からの直流電圧の印加を停止可能に構成されている。なお、切替ユニット61の回路構成は、当業者が適宜設計することができる。
【0040】
第1のRFフィルタ62と第2のRFフィルタ63はそれぞれ、高周波を低減又は遮断するフィルタであり、直流電源60を保護するために設けられる。第1のRFフィルタ62は、例えば第1の高周波電源50からの40MHzの高周波を低減又は遮断する。第2のRFフィルタ63は、例えば第2の高周波電源51からの400kHzの高周波を低減又は遮断する。
【0041】
一例においては、第2のRFフィルタ63は、インピーダンスが可変に構成されている。すなわち、第2のRFフィルタ63の一部の素子を可変素子とすることで、インピーダンスが可変になっている。可変素子は、例えばコイル(インダクタ)又はコンデンサ(キャパシタ)のいずれかであってもよい。また、コイル、コンデンサに限らず、ダイオード等の素子など可変インピーダンス素子であればどのようなものであっても同様の機能を達成できる。可変素子の数や位置も、当業者が適宜設計することができる。さらに、素子自体が可変である必要はなく、切替回路を用いて固定値の素子の組み合わせを切り替えることでインピーダンスを可変してもよい。なお、この第2のRFフィルタ63及び上記第1のRFフィルタ62の回路構成はそれぞれ、当業者が適宜設計することができる。
【0042】
エッチング装置1は、エッジリング14の自己バイアス電圧(又は、下部電極12もしくはウェハWの自己バイアス電圧)を測定する測定器(図示せず)を更に有している。なお、測定器の構成は、当業者が適宜設計することができる。
【0043】
以上のエッチング装置1には、制御部100が設けられている。制御部100は、例えばCPUやメモリ等を備えたコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、エッチング装置1におけるエッチングを制御するプログラムが格納されている。なお、上記プログラムは、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、当該記憶媒体から制御部100にインストールされたものであってもよい。
【0044】
<エッチング方法>
次に、以上のように構成されたエッチング装置1を用いて行われるエッチングについて説明する。
【0045】
先ず、チャンバ10の内部にウェハWを搬入し、静電チャック13上にウェハWを載置する。その後、静電チャック13の第1の電極16aに直流電圧を印加することにより、ウェハWはクーロン力によって静電チャック13に静電吸着され、保持される。また、ウェハWの搬入後、排気装置42によってチャンバ10の内部を所望の真空度まで減圧する。
【0046】
次に、ガス供給源群30からシャワーヘッド20を介して処理空間Sに処理ガスを供給する。また、第1の高周波電源50によりプラズマ生成用の高周波電力HFを下部電極12に供給し、処理ガスを励起させて、プラズマを生成する。この際、第2の高周波電源51によりイオン引き込み用の高周波電力LFを供給してもよい。そして、生成されたプラズマの作用によって、ウェハWにエッチングが施される。
【0047】
エッチングを終了する際には、先ず、第1の高周波電源50からの高周波電力HFの供給及びガス供給源群30による処理ガスの供給を停止する。また、エッチング中に高周波電力LFを供給していた場合には、当該高周波電力LFの供給も停止する。次いで、ウェハWの裏面への伝熱ガスの供給を停止し、静電チャック13によるウェハWの吸着保持を停止する。
【0048】
その後、チャンバ10からウェハWを搬出して、ウェハWに対する一連のエッチングが終了する。
【0049】
なお、エッチングにおいては、第1の高周波電源50からの高周波電力HFを使用せず、第2の高周波電源51からの高周波電力LFのみを用いて、プラズマを生成する場合もある。
【0050】
<チルト角度制御方法>
次に、上述したエッチングにおいて、チルト角度を制御する方法について説明する。チルト角度は、ウェハWのエッジ領域へのイオンの入射方向の鉛直方向に対する傾き(角度)である。
【0051】
図3は、エッジリングの消耗によるシースの形状の変化及びイオンの入射方向の傾きの発生を示す説明図である。
図3において実線で示されるエッジリング14は、その消耗がない状態のエッジリング14を示している。点線で示されるエッジリング14は、その消耗が生じて厚みが減少したエッジリング14を示している。また、
図3において実線で示されるシースSHは、エッジリング14が消耗していない状態にあるときの、シースSHの形状を表している。点線で示されるシースSHは、エッジリング14が消耗した状態にあるときの、シースSHの形状を表している。さらに、
図3において矢印は、エッジリング14が消耗した状態にあるときの、イオンの入射方向を示している。
【0052】
図3に示すように一例においては、エッジリング14が消耗していない状態にある場合、シースSHの形状は、ウェハW及びエッジリング14の上方においてフラットに保たれている。したがって、ウェハWの全面に略垂直な方向(鉛直方向)にイオンが入射する。すなわち、チルト角度は0(ゼロ)である。
【0053】
一方、エッジリング14が消耗し、その厚みが減少すると、ウェハWのエッジ領域及びエッジリング14の上方において、シースSHの厚みが小さくなり、当該シースSHの形状が下方凸形状に変化する。その結果、ウェハWのエッジ領域に対するイオンの入射方向が鉛直方向に対して傾斜する。以下の説明では、このようにイオンの入射方向がウェハWに対して内側に傾斜する際のチルト角度を、インナーチルト(Inner Tilt)という。そしてこのようにチルト角度がインナーチルトになると、ウェハWのエッジ領域には、その厚み方向に対して傾斜した開口が形成される。
【0054】
なお、
図4に示すように、ウェハWの中央領域に対し、ウェハWのエッジ領域及びエッジリング14の上方において、シースSHの厚みが大きくなり、当該シースSHの形状が上方凸形状になる場合もあり得る。例えば、エッジリング14に発生するバイアス電圧が高い場合、シースSHの形状が上方凸形状になり得る。
図4において矢印は、イオンの入射方向を示している。以下の説明においては、このようにイオンの入射方向がウェハWに対して外側に傾斜する際のチルト角度を、アウターチルト(Outer Tilt)という。
【0055】
本実施形態のエッチング装置1では、チルト角度を制御する。具体的に、チルト角度の制御は、直流電源60からの直流電圧と、第2のRFフィルタ63のインピーダンスとを調整して、チルト角度を制御する。
【0056】
[直流電圧の調整]
先ず、直流電源60からの直流電圧の調整について説明する。直流電源60では、エッジリング14に印加する直流電圧が、自己バイアス電圧Vdcの絶対値と設定値ΔVの和をその絶対値として有する負極性の電圧、すなわち、−(|Vdc|+ΔV)に設定される。自己バイアス電圧Vdcは、ウェハWの自己バイアス電圧であり、一方又は双方の高周波電力が供給されており、且つ、直流電源60からの直流電圧が下部電極12に印加されていないときの下部電極12の自己バイアス電圧である。設定値ΔVは、制御部100によって与えられる。
【0057】
制御部100は、予め定められた関数又はテーブルを用いて、エッジリング14の消耗量(エッジリング14の厚みの初期値からの減少量)とエッチングのプロセス条件(例えば処理時間)から推定されるエッジリング14の消耗量から、設定値ΔVを特定する。すなわち、制御部100は、エッジリング14の消耗量と自己バイアス電圧を上記関数に入力するか、エッジリング14の消耗量と自己バイアス電圧を用いて上記テーブルを参照することにより、設定値ΔVを決定する。
【0058】
制御部100は、設定値ΔVの決定において、エッジリング14の初期の厚みと、例えばレーザ測定器やカメラなどの測定器を用いて実測されたエッジリング14の厚みとの差を、エッジリング14の消耗量として用いてもよい。或いは、制御部100は、設定値ΔVの決定のために、予め定められた別の関数又はテーブルを用いて、特定のパラメータから、エッジリング14の消耗量を決定してもよい。この特定のパラメータは、自己バイアス電圧Vdc、高周波電力HF又は高周波電力LFの波高値Vpp、負荷インピーダンス、エッジリング14又はエッジリング14の周辺の電気的特性等のうちのいずれかであり得る。エッジリング14又はエッジリング14の周辺の電気特性は、エッジリング14又はエッジリング14の周辺の任意の箇所の電圧、電流値、エッジリング14を含む抵抗値等のうちいずれかであり得る。別の関数又はテーブルは、特定のパラメータとエッジリング14の消耗量の関係を定めるように予め定められている。エッジリング14の消耗量を決定するために、実際のエッチングの実行前又はエッチング装置1のメンテナンス時に、消耗量を決定するための測定条件、すなわち、高周波電力HF、高周波電力LF、処理空間S内の圧力、及び、処理空間Sに供給される処理ガスの流量等の設定の下で、エッチング装置1が動作される。そして、上記特定のパラメータが取得され、この当該特定のパラメータを上記別の関数に入力することにより、或いは、当該特定のパラメータを用いて上記テーブルを参照することにより、エッジリング14の消耗量が特定される。
【0059】
エッチング装置1では、エッチング中、すなわち、高周波電力HF及び高周波電力LFのうち一方又は双方の高周波電力が供給される期間において、直流電源60からエッジリング14に直流電圧が印加される。これにより、エッジリング14及びウェハWのエッジ領域の上方におけるシースの形状が制御されて、ウェハWのエッジ領域へのイオンの入射方向の傾きが低減され、チルト角度が制御される。その結果、ウェハWの全領域にわたって、当該ウェハWの厚み方向に略平行な開口が形成される。
【0060】
より詳細には、エッチング中、測定器(図示せず)によって自己バイアス電圧Vdcが測定される。また、直流電源60からエッジリング14に直流電圧が印加される。エッジリング14に印加される直流電圧の値は、上述したように−(|Vdc|+ΔV)である。|Vdc|は、直前に測定器によって取得された自己バイアス電圧Vdcの測定値の絶対値であり、ΔVは制御部100によって決定された設定値である。このようにエッチング中に測定された自己バイアス電圧Vdcからエッジリング14に印加される直流電圧が決定される。そうすると、自己バイアス電圧Vdcに変化が生じても、直流電源60によって発生される直流電圧が補正され、チルト角度が適切に補正される。
【0061】
[インピーダンスの調整]
次に、第2のRFフィルタ63のインピーダンスの調整について説明する。
【0062】
図5は、直流電源60からの直流電圧、第2のRFフィルタ63のインピーダンス、及びチルト角度の関係を示す説明図である。
図5の縦軸はチルト角度を示し、横軸は直流電源60からの直流電圧を示している。
図5に示すように、直流電源60からの直流電圧の絶対値を高くすると、チルト角度は大きくなる。また、第2のRFフィルタ63のインピーダンスを調整することでも、チルト角度は大きくなる。すなわち、このようにインピーダンスを調整することにより、直流電圧とチルト角度との相関を、チルト角度が大きくなる側にオフセットすることができる。
【0063】
図3に示したようにエッジリング14が消耗すると、チルト角度がインナーチルトになる。そこで、
図5に示したように直流電源60からの直流電圧の絶対値を高くすると、チルト角度が大きくなり、すなわちアウター側になり、当該チルト角度を補正することができる。しかしながら、直流電圧の絶対値を高くし過ぎると、ウェハWとエッジリング14との間で放電が生じる。したがって、エッジリング14に印加できる直流電圧には制限があり、直流電圧の調整だけでチルト角度を制御しようとしても、そのチルト角度の制御範囲には限界がある。
【0064】
そこで、
図5に示したように、第2のRFフィルタ63のインピーダンスを調整して、直流電圧とチルト角度との相関を、チルト角度が大きくなる側にオフセットする。かかる場合、再度、直流電源60からの直流電圧の絶対値を高くして、チルト角度をアウター側に補正することができる。したがって、本実施形態によれば、インピーダンスを調整することで、直流電圧の調整範囲を変更することなく、チルト角度の制御範囲を大きくすることができる。
【0065】
[チルト角度の制御]
以上のように本実施形態では、チルト角度の制御は、直流電源60からの直流電圧と、第2のRFフィルタ63のインピーダンスとを調整して、チルト角度を制御する。以下、この具体的なチルト角度の制御方法について説明する。
【0066】
先ず、エッジリング14を静電チャック13上に設置する。そして例えば、ウェハWのエッジ領域及びエッジリング14の上方において、シース形状がフラット又は下方凸形状になり、チルト角度が(ゼロ)又はインナーチルトになる。そしてかかる場合、後述するように直流電源60からの直流電圧を調整して、チルト角度をアウター側に変化させる際に、当該直流電圧の調整範囲を大きくすることができる。
【0067】
次に、ウェハWに対してエッチングを行う。エッチングが実施される時間の経過に伴い、エッジリング14が消耗し、その厚みが減少する。そうすると、ウェハWのエッジ領域及びエッジリング14の上方において、シースSHの厚みが小さくなり、チルト角度がインナー側に変化する。
【0068】
そこで、直流電源60からエッジリング14に印加する直流電圧を調整する。具体的には、エッジリング14の消耗量に応じて、直流電圧の絶対値を高くする。エッジリング14の消耗量は、ウェハWのエッチング時間、ウェハWの処理枚数、測定器によって測定されたエッジリング14の厚み、測定器によって測定されたエッジリング14の周辺の電気的特性(例えばエッジリング14の周辺の任意の点の電圧、電流値)の変化、又は測定器によって測定されたエッジリング14の電気的特性(例えばエッジリング14の抵抗値)の変化等に基づいて、決定される。また、エッジリング14の消耗量とは関係なく、ウェハWのエッチング時間やウェハWの処理枚数に応じて、直流電圧の絶対値を高くしてもよい。さらに、高周波電力によって重みづけしたウェハWのエッチング時間やウェハW処理枚数に応じて、直流電圧の絶対値を高くしてもよい。そして、上述したように直流電圧を、自己バイアス電圧Vdcの絶対値と設定値ΔVの和、すなわち、−(|Vdc|+ΔV)に調整する。そうすると、
図5に示したようにチルト角度が大きくなり、アウター側に変化する。その結果、ウェハWのエッジ領域及びエッジリング14の上方において、チルト角度を所望の値に補正して、イオンの入射方向を補正することができる。
【0069】
一方、エッジリング14の消耗が進むにつれ、直流電圧の絶対値が高くなっていく。そして、直流電圧の絶対値が高くなり過ぎると、ウェハWとエッジリング14との間で放電が生じる場合がある。例えば、直流電圧の絶対値が、ウェハWとエッジリング14との間の電位差に達すると、放電が生じ得る。
【0070】
そこで、直流電圧の絶対値が予め定められた値に達すると、第2のRFフィルタ63のインピーダンスを調整して、直流電圧とチルト角度との相関を、チルト角度が大きくなる側にオフセットする。このようにチルト角度がオフセットされると、エッジリング14の消耗が更に進んでも、直流電圧を調整して、チルト角度を所望の値(アウター側)に補正することができる。なお、インピーダンスを調整するタイミングは、エッジリング14の消耗量が予め定められた値になった際であってもよい。エッジリング14の消耗量は、ウェハWの処理時間や測定器によって測定された厚みに基づいて、決定される。
【0071】
以上のように本実施形態によれば、直流電源60からの直流電圧の調整と第2のRFフィルタ63のインピーダンスの調整を繰り返し行うことで、チルト角度の調整範囲を大きくすることができる。したがって、チルト角度を適切に制御することができ、すなわち、イオンの入射方向を適切に調整することができるので、エッチングを均一に行うことができる。
【0072】
また、従来、例えば直流電源60からの直流電圧のみでチルト角度を制御しようとすると、直流電圧の絶対値が上限に達すると、エッジリング14を交換する必要があった。この点、本実施形態では、第2のRFフィルタ63のインピーダンスの調整を行うことで、エッジリング14を交換することなく、チルト角度の調整範囲を大きくすることができる。したがって、エッジリング14の交換間隔を長くして、その交換頻度を抑えることができる。
【0073】
<他の実施形態>
以上の実施形態では、直流電源60は、切替ユニット61、第1のRFフィルタ62、及び第2のRFフィルタ63を介して、エッジリング14に接続されていたが、エッジリング14に直流電圧を印加する電源系はこれに限定されない。例えば、直流電源60は、切替ユニット61、第2のRFフィルタ63、第1のRFフィルタ62、及び下部電極12を介して、エッジリング14に電気的に接続されていてもよい。かかる場合、下部電極12とエッジリング14は直接電気的に結合し、エッジリング14の自己バイアス電圧は下部電極12の自己バイアス電圧と同じになる。
【0074】
ここで、下部電極12とエッジリング14が直接電気的に結合している場合、例えばハード構造で決定されるエッジリング14下の容量等により、エッジリング14上のシース厚みを調整できず、直流電圧を印加していないにも関わらずアウターチルトの状態が起こり得る。この点、本開示では、直流電源60からの直流電圧と、第2のRFフィルタ63のインピーダンスとを調整して、チルト角度を制御することができるので、当該チルト角度をインナー側に調整することができる。
【0075】
<他の実施形態>
以上の実施形態では、エッジリング14の消耗量に応じて、直流電源60からの直流電圧の調整を行ったが、直流電圧の調整タイミングはこれに限定されない。例えばウェハWの処理時間に応じて、直流電圧の調整を行ってもよい。或いは、例えばウェハWの処理時間と、例えば高周波電力等の予め定められたパラメータとを組み合わせて、直流電圧の調整タイミングを判断してもよい、
【0076】
<他の実施形態>
以上の実施形態では、直流電源60からの直流電圧の調整を行った後、第2のRFフィルタ63のインピーダンスの調整を行ったが、この順序は反対でもよい。すなわち、インピーダンスの調整を行った後、直流電圧の調整を行ってもよい。更に、直流電圧の調整とインピーダンスの調整を同時に行ってもよい。或いは、直流電圧の調整のみを行ってチルト角度を制御してもよいし、インピーダンスの調整のみを行ってチルト角度を制御してもよい。
【0077】
例えば、
図6に示すようにエッジリング14には、上記直流電源60及び切替ユニット61が接続されていない場合もある。かかる場合であっても、
図7に示すように第2のRFフィルタ63のインピーダンスを調整するだけで、チルト角度を制御することができる。なお、
図7の縦軸はチルト角度を示し、横軸はインピーダンスを示している。
図7に示す例では、インピーダンスとチルト角度は比例関係にある。また、
図7に示す例では、インピーダンスを大きくすることにより、チルト角度を大きくしているが、第2のRFフィルタ63の構成によっては、インピーダンスを大きくすることにより、チルト角度を小さくすることも可能である。インピーダンスとチルト角度の関係性は、第2のRFフィルタ63の設計に依存するため、限定されるものではない。
【0078】
また、第2のRFフィルタ63のインピーダンスのみの調整を行う場合、上記実施形態と同様に、エッジリング14の消耗量に応じてインピーダンスの調整を行ってもよいし、或いはウェハWの処理時間等に応じてインピーダンスの調整を行ってもよい。そして本実施形態でも、上記実施形態と同様の効果を享受することができ、すなわちチルト角度を適切に制御することができる。しかも、直流電源60及び切替ユニット61を省略することができるので、エッチング装置1の省エネルギー化や省スペース化を実現することができる。
【0079】
ここで上述したように、第2の高周波電源51から供給される高周波電力(高周波バイアス電力)LFの周波数は400kHz〜13.56MHzであるが、5MHz以下がより好ましい。エッチング処理を行う際、ウェハWに対して高アスペクト比のエッチングを行う場合、エッチング後のパターンの垂直形状を実現するためには、高いイオンエネルギーが必要となる。そこで、本発明者らが鋭意検討した結果、高周波電力LFの周波数を5MHz以下にすることで、高周波電界の変化に対するイオンの追従性が上がり、イオンエネルギーの制御性が向上することが分かった。
【0080】
一方、高周波電力LFの周波数を5MHz以下の低周波とすると、第2のRFフィルタ63のインピーダンスを可変とした効果が低下する場合がある。すなわち、第2のRFフィルタ63のインピーダンスの調整によるチルト角度の制御性が低下する場合がある。例えば
図6において、エッジリング14と第2のRFフィルタ63との電気的な接続が非接触又は容量結合である場合、第2のRFフィルタ63のインピーダンスを調整しても、チルト角度を適切に制御できない。そこで本実施形態では、エッジリング14と第2のRFフィルタ63を電気的に直接接続する。
【0081】
エッジリング14と第2のRFフィルタ63は、接続部を介して電気的に直接接続される。エッジリング14と接続部は接触し、当該接続部を直流電流が導通する。以下、接続部の構造(以下、「接触構造」という場合がある。)の一例について説明する。
【0082】
図8に示すように接続部200は、導体構造201と導体部材202を有している。導体構造201は、導体部材202を介してエッジリング14と第2のRFフィルタ63を接続する。具体的に導体構造201は、その一端が第2のRFフィルタ63に接続され、他端が下部電極12の上面にて露出し、導体部材202に接触する。
【0083】
導体部材202は、例えば静電チャック13の側方において下部電極12とエッジリング14の間に形成された空間に設けられる。導体部材202は、導体構造201とエッジリング14の下面のそれぞれに接触する。また導体部材202は、例えば金属等の導体からなる。導体部材202の構成は特に限定されないが、
図9A〜
図9Fのそれぞれに一例を示す。
【0084】
図9Aに示すように導体部材202には、らせん状に巻かれつつ水平方向に延伸するコイルスプリングが用いられてもよい。
図9Bに示すように導体部材202には、鉛直方向に付勢された板バネが用いられてもよい。
図9Cに示すように導体部材202には、らせん状に巻かれつつ鉛直方向に延伸するバネが用いられてもよい。そして、エッジリング14の自重によって、導体部材202は導体構造201とエッジリング14の下面のそれぞれに密着し、導体構造201とエッジリング14が電気的に接続される。また、上記導体部材202は弾性体であり、鉛直方向に弾性力が作用する。この弾性力によっても、導体部材202は導体構造201とエッジリング14の下面のそれぞれに密着する。
【0085】
なお、上述したようにエッジリング14は、第2の電極16bにより生じる静電力により、静電チャック13の周縁部の上面に吸着保持される。そうすると、
図9A〜
図9Cに示した導体部材202を用いた場合、この静電力によっても、導体部材202は導体構造201とエッジリング14の下面のそれぞれに密着し、導体構造201とエッジリング14が電気的に接続される。そして、エッジリング14の自重、導体部材202の弾性力、及びエッジリング14に作用する静電力のバランスを調整することで、導体部材202は導体構造201とエッジリング14の下面のそれぞれに、所望の接触圧力で密着する。
【0086】
図9Dに示すように導体部材202には、昇降機構(図示せず)によって昇降するピンが用いられてもよい。かかる場合、導体部材202が上昇することによって、導体部材202は導体構造201とエッジリング14の下面のそれぞれに密着する。そして、エッジリング14の自重、導体部材202の昇降時に作用する圧力、及びエッジリング14に作用する静電力のバランスを調整することで、導体部材202は導体構造201とエッジリング14の下面のそれぞれに、所望の接触圧力で密着する。
【0087】
図9Eに示すように導体部材202には、導体構造201とエッジリング14を接続するワイヤが用いられてもよい。ワイヤは、その一端が導体構造201に接合され、他端がエッジリング14の下面に接合される。このワイヤの接合は、導体構造201又はエッジリング14の下面とオーミック接触となればよく、一例として、ワイヤは溶接又は圧着される。
図9Fに示すように導体部材202には、静電チャック13に対してエッジリング14を固定するための固定ネジが用いられてもよい。固定ネジは、エッジリング14を挿通し、導体構造201に接触する。このように導体部材202にワイヤや固定ネジを用いた場合、導体部材202は導体構造201とエッジリング14の下面のそれぞれに確実に接触し、導体構造201とエッジリング14が電気的に接続される。なお、かかる場合、ワイヤや固定ネジによってエッジリング14が静電チャック13に固定されるので、エッジリング14を静電吸着するための第2の電極16bを省略することができる。
【0088】
以上、
図9A〜
図9Fに示したいずれの導体部材202を用いた場合でも、
図8に示したように接続部200を介してエッジリング14と第2のRFフィルタ63を電気的に直接接続することができる。したがって、高周波電力LFの周波数を5MHz以下の低周波とすることができ、イオンエネルギーの制御性を向上させることができる。また、上述したように、第2のRFフィルタ63のインピーダンスを調整することで、チルト角度の調整範囲を大きくして、チルト角度を所望の値に制御することができる。
【0089】
なお、以上の実施形態では、導体部材202として、
図9Aに示したコイルスプリング、
図9Bに示した板バネ、
図9Cに示したバネ、
図9Dに示したピン、
図9Eに示したワイヤ、
図9Fに示した固定ネジを例示したが、これらを組み合わせて用いてもよい。
【0090】
次に、導体部材202の平面視における配置について説明する。
図10A〜
図10Cはそれぞれ、導体部材202の平面配置の一例を示す。
図10A及び
図10Bに示すように、接続部200は導体部材202を複数備え、複数の導体部材202はエッジリング14と同心円上に等間隔に設けられていてもよい。
図10Aの例において導体部材202は8箇所に設けられ、
図10Bにおいて導体部材202は24箇所に設けられている。また、
図10Cに示すように導体部材202は、エッジリング14と同心円上に環状に設けられていてもよい。
【0091】
エッチングを均一に行い、シースの形状を均一にする観点(プロセス均一化の観点)からは、
図10Cに示したようにエッジリング14に対して導体部材202を環状に設け、エッジリング14に対する接触を円周上で均一に行うのが好ましい。また、同じくプロセス均一化の観点から、
図10A及び
図10Bに示すように複数の導体部材202を設ける場合でも、これら複数の導体部材202をエッジリング14の周方向に等間隔に配置し、エッジリング14に対する接触点を点対称に設けるのが好ましい。更に言えば、
図10Aの例に比べて
図10Bの例のように導体部材202の数を多くして、
図10Cに示したように環状に近づける方が良い。なお、導体部材202の数は特に限定されないが、対称性を確保するためには、3個以以上が好ましく、例えば3個〜36個が例示される。
【0092】
但し、装置構成上、他の部材との干渉を回避するため、導体部材202を環状にしたり、導体部材202の数を多くするのは難しい場合がある。したがって、導体部材202の平面配置は、プロセス均一化の条件や装置構成上の制約条件などを鑑みて、適宜設定することができる。
【0093】
なお、エッジリング14に対する接触構造は、上記
図8、
図9A〜
図9Fに示した例に限定されない。
図11A〜
図11Gは、接続部200の構成の他の例を示す。
【0094】
図11Aに示すように接続部200は、導体部材202を省略し、導体構造201のみを有していてもよい。導体構造201は、エッジリング14の下面に直接接触する。この際、エッジリング14の自重や、エッジリング14が静電チャック13に吸着保持される際の静電力により、導体構造201はエッジリング14の下面に所望の接触圧力で密着する。かかる場合でも、接続部200(導体構造201)を介してエッジリング14と第2のRFフィルタ63を電気的に直接接続することができる。
【0095】
図11Bに示すように接続部200は、エッジリング14の下面に接触する導体部材202に代えて、クランプ部材210を有していてもよい。クランプ部材210は、導体構造201とエッジリング14のそれぞれに接触する。また導体部材202は、例えば金属等の導体からなる。
【0096】
クランプ部材210は、側面視において径方向内側が開口した略U字形状を有している。クランプ部材210は、エッジリング14の径方向外側において、エッジリング14の上面と外側面に接触し、当該エッジリング14を挟み込むように設けられる。そして、クランプ部材210がエッジリング14を導体構造201側に挟み込むことで、導体構造201と密着し、エッジリング14と第2のRFフィルタ63が電気的に直接接続される。また、エッジリング14が静電チャック13に吸着保持される際の静電力によっても、クランプ部材210が導体構造と所望の接触圧力で密着し、エッジリング14と第2のRFフィルタ63が電気的に直接接続される。
【0097】
図11Cに示すように接続部200は、エッジリング14の下面に接触する導体部材202に代えて、エッジリング14の外側面に接触する導体部材220を有していてもよい。かかる場合、導体構造201は、静電チャック13及びエッジリング14の径方向外側に設けられる。導体部材220は、導体構造201とエッジリング14の外側面に接触する。図示の例では導体部材220には、
図9Aに示したコイルスプリングを用いたが、
図9Bに示した板バネ、
図9Cに示したバネ、
図9Dに示したピン、
図9Eに示したワイヤ、
図9Fに示した固定ネジ等が用いられてもよい。いずれの場合でも、導体部材220は導体構造201とエッジリング14の外側面に密着し、エッジリング14と第2のRFフィルタ63が電気的に直接接続される。
【0098】
図11Dに示すように接続部200は、エッジリング14の下面に接触する導体部材202に代えて、エッジリング14の内側面に接触する導体部材230を有していてもよい。かかる場合、エッジリング14の外周部には下方に突起した突起部14aが形成される。導体部材230は、導体構造201と、エッジリング14の突起部14aの内側面に接触する。図示の例では導体部材230には、
図9Aに示したコイルスプリングを用いたが、
図9Bに示した板バネ、
図9Cに示したバネ、
図9Dに示したピン、
図9Eに示したワイヤ、
図9Fに示した固定ネジ等が用いられてもよい。いずれの場合でも、導体部材220は導体構造201とエッジリング14の内側面に密着し、エッジリング14と第2のRFフィルタ63が電気的に直接接続される。
【0099】
なお、
図11Bに示したクランプ部材210、
図11Cに示した導体部材220、
図11Dに示した導体部材230のいずれの平面配置も、
図10A〜
図10Cに示した導体部材202の平面配置と同様であってもよい。すなわち、クランプ部材210、導体部材220、230はそれぞれ、エッジリング14と同心円上に等間隔に設けられていてもよいし、エッジリング14と同心円上に環状に設けられていてもよい。
【0100】
図11E及び
図11Fに示すように、接続部200の導体部材202とエッジリングの間には、導体240が設けられていてもよい。導体240は、例えば金属等からなる。
図11Eに示す導体240は、導体部材202とエッジリング14の下面のそれぞれに接触する。
図11Fに示す導体240は、例えば、エッジリング14の下面に蒸着して形成され、導体部材202に接触する。いずれの場合でも、エッジリング14と第2のRFフィルタ63が電気的に直接接続される。なお、導体240の数は特に限定されるものではない。例えば、導体240を複数設け、複数の導体240全体で環状に近い形状にしてもよい。
【0101】
図11Gに示すように接続部200は、エッジリング14の下面に接触する導体部材202に代えて、導体部材250、251を有していてもよい。図示の例では導体部材230には、導体部材250に
図9Aに示したコイルスプリングを用い、導体部材251に
図9Bに示した板バネを用いたが、これら導体部材250、251にはそれぞれ、
図9Cに示したバネ、
図9Dに示したピン、
図9Eに示したワイヤ、
図9Fに示した固定ネジ等が用いられてもよい。
【0102】
導体部材250は、導体構造201aと導体構造201bの間に設けられ、当該導体構造201aと導体構造201bのそれぞれに接触する。導体部材251は、導体構造201bとエッジリング14の下面の間に設けられ、当該導体構造201bとエッジリング14の下面のそれぞれに接触する。なお、接続部200の周囲及びエッジリング14の径方向外側には絶縁部材260が設けられている。
【0103】
図11Gに示した導体部材250、251の平面配置は、
図10A〜
図10Cに示した導体部材202の平面配置と同様であってもよい。すなわち、クランプ部材210、導体部材220、230はそれぞれ、エッジリング14と同心円上に等間隔に設けられていてもよいし、エッジリング14と同心円上に環状に設けられていてもよい。
【0104】
次に、接続部200と、第1のRFフィルタ62及び第2のRFフィルタ63との関係について説明する。
図12A〜
図12Cはそれぞれ、接続部200、第1のRFフィルタ62及び第2のRFフィルタ63の構成の一例を模式的に示す。
【0105】
図12Aに示すように、例えば8個の導体部材202に対して第1のRFフィルタ62と第2のRFフィルタ63がそれぞれ1個設けられている場合、接続部200は中継部材270を更に有していてもよい。なお、
図12Aでは、
図10Aに示した接続部200において中継部材270を設けた場合について図示するが、
図10B又は
図10Cのいずれに示した接続部200においても中継部材270を設けることができる。また、中継部材270は複数設けられていてもよい。
【0106】
中継部材270は、導体部材202と第2のRFフィルタ63の間の導体構造201において、エッジリング14と同心円上に環状に設けられている。中継部材270は、導体部材202と導体構造201aで接続されている。すなわち、中継部材270から8本の導体構造201aが平面視において放射状に延伸し、8個の導体部材202のそれぞれに接続される。また中継部材270は、第1のRFフィルタ62を介して第2のRFフィルタ63と導体構造201bで接続されている。
【0107】
かかる場合、例えば第2のRFフィルタ63がエッジリング14の中心に配置されていない場合であっても、中継部材270における電気的特性(任意の電圧、電流値)を円周上で均一に行うことができ、更に8個の導体部材202のそれぞれに対する電気的特性を均一にすることができる。その結果、エッチングを均一に行い、シースの形状を均一にすることができる。
【0108】
図12Bに示すように、例えば8個の導体部材202に対して、第1のRFフィルタ62が複数、例えば8個設けられ、第2のRFフィルタ63が1個設けられていてもよい。このように導体部材202の数に対して、第1のRFフィルタ62の個数は適宜設定することができる。なお、
図12Bの例においても、中継部材270が設けられていてもよい。
【0109】
図12Cに示すように、例えば8個の導体部材202に対して、第1のRFフィルタ62が複数、例えば8個設けられ、第2のRFフィルタ63が複数、例えば8個設けられていてもよい。このように導体部材202の数に対して、インピーダンスが可変の第2のRFフィルタ63の個数は適宜設定することができる。
図12Cの例においても、中継部材270が設けられていてもよい。
【0110】
なお、インピーダンスが可変の第2のRFフィルタ63を複数設けることで、複数の導体部材202に対して個別に独立して電気的特性を制御することが可能となる。その結果、複数の導体部材202のそれぞれに対する電気的特性を均一にすることができ、プロセスの均一性を向上させることができる。
【0111】
<他の実施形態>
次に、エッジリング14が静電チャック13に静電吸着される際のシーケンスについて説明する。このシーケンスでは、
図13に示すようにエッチング装置1に設けられた、給気部300と排気部301が用いられる。給気部300は、配管310を介してエッジリング14面にガス、例えばヘリウムガスを供給する。排気部301は、配管310を介してエッジリング14の下面を真空引きする。配管310には、当該配管310の内部の圧力を測定する圧力センサ(図示せず)が設けられている。なお、図示の例では、接続部200は導体部材202を備えているが、接続部200は上述した他の接触構造を有していてもよい。
【0112】
静電チャック13に対するエッジリング14の静電吸着のシーケンスは、仮吸着のシーケンスと本吸着のシーケンスに分けられる。すなわち、仮吸着では、静電チャック13に対してエッジリング14が位置決めされて保持される。その後、本吸着では、静電チャック13に対してエッジリング14が静電吸着保持され、ウェハWに対してエッチング可能な状態(アイドリング状態)になる。なお、仮吸着と本吸着は、連続して行われてもよいし、断続的に行われてもよい。
【0113】
[仮吸着シーケンス]
図14は、エッジリング14の仮吸着シーケンスのフローの一例を示す説明図である。なお、エッジリング14の仮吸着は、チャンバ10の内部が大気解放された状態で行われる。
【0114】
先ず、静電チャック13の上面にエッジリング14を設置する(
図14のステップA1)。そうすると、エッジリング14の下面と導体部材202が接触する(
図14のステップA2)。ステップA2では、エッジリング14は静電チャック13に吸着保持されておらず、且つ、導体部材202の弾性力(反力)を受けているので、当該エッジリング14は予め定められた設置位置より上方に位置している。
【0115】
次に、エッジリング14と静電チャック13の間の隙間を調整する(
図14のステップA3)。ここで、ステップA1においてエッジリング14を設置する際、静電チャック13との間に空気が存在すると、エッジリング14が横滑りして設置される。そこで、ステップA3において、エッジリング14と静電チャック13の隙間を調整して、当該隙間を周方向に均一にする。またこの際、エッジリング14は、導体部材202の弾性力によって予め定められた設置位置より上方に位置しており、静電チャック13との接触面積が最小限に抑えられている。このようにエッジリング14が静電チャック13から僅かに離間しているので、隙間調整がしやすい。また接触面積が最小限に抑えられるので、接触によるゴミの発生を抑制することができる。
【0116】
その後、排気部301によってエッジリング14の下面を真空引きした状態で保持する(
図14のステップA4)。なお、仮吸着においては、エッジリング14は静電吸着されていない。こうして、エッジリング14は位置決めされた状態で保持される。
【0117】
[本吸着シーケンス]
図15は、エッジリング14の本吸着シーケンスのフローの一例を示す説明図である。なお、エッジリング14の本吸着は、仮吸着後、チャンバ10の内部が所望の真空度まで減圧された状態で行われる。
【0118】
先ず、排気装置42によりチャンバ10の内部を真空引きする(
図15のステップB1)。この際、排気部301によってエッジリング14の下面を真空引きしている。
【0119】
次に、第2の電極16bに直流電圧を印加し、静電チャック13に対してエッジリング14を静電吸着する(
図15のステップB2)。この際、排気装置42によるチャンバ10の内部の真空引きを継続して行う(
図15のステップB3)。また、排気部301によるエッジリング14の下面の真空引きも継続して行う。
【0120】
次に、チャンバ10の内部の圧力(以下、「チャンバ圧力」という。)が規定値に達したか否かを確認する(
図15のステップB4)。そして、チャンバ圧力が規定値に達していない場合、排気部301によるエッジリング14の下面の真空引きと排気装置42によるチャンバ10の内部の真空引きを継続して行い(
図15のステップB5)、処理を終了する(
図15のステップB6)。
【0121】
一方、ステップB4において、チャンバ圧力が規定値に達している場合、排気部301によるエッジリング14の下面の真空引きを停止する(
図15のステップB7)。その後、エッジリング14の下面に給気部300からガスを供給し、配管310の内部の圧力が安定すると、当該給気部300からのガスの供給を停止する(
図15のステップB8)。
【0122】
次に、配管310に設けられた圧力センサを用いて、エッジリング14の下面に作用する圧力(以下、「下面圧力」という。)を確認する(
図15のステップB9)。さらに排気部301によってエッジリング14の下面を真空引きする(
図15のステップB10)。
【0123】
ここで、配管310の内部にガスが満たされた状態において、エッジリング14が適切に吸着保持されていると、配管310から漏れるガスの量は少量である。一方、エッジリング14が適切に吸着保持されていないと、配管310から多量のガスが漏れる。そこで、エッジリング14の下面圧力を確認する(
図15のステップB11)。すなわち、ステップB11では、配管310からのガスの漏洩(リーク)を確認する。そして、エッジリング14の下面圧力が規定値に達していない場合、排気部301によるエッジリング14の下面の真空引きと排気装置42によるチャンバ10の内部の真空引きを継続して行い(
図15のステップB5)、処理を終了する(
図15のステップB6)。
【0124】
一方、ステップB11において、エッジリング14の下面圧力が規定値に達している場合、処理は正常終了する(
図15のステップB12)。そして、ウェハWに対してエッチング可能な状態(アイドリング状態)に維持される。このアイドリング状態では、排気部301によるエッジリング14の下面の真空引きを継続して行い、また第2の電極16bによるエッジリング14の静電吸着も継続して行う。
【0125】
以上の実施形態のように、エッジリング14が本吸着されると、エッジリング14と静電チャック13の間に静電力が作用する。そして、エッジリング14の自重、導体部材202の弾性力、及びエッジリング14に作用する静電力のバランスを調整することで、導体部材202は導体構造201とエッジリング14の下面のそれぞれに、所望の接触圧力で密着する。
【0126】
なお、エッジリング14の交換は、エッチング装置1の外部に設けられた搬送装置(図示せず)を用いて自動で行われる場合もある。このエッジリング14の交換は、チャンバ10の内部を大気解放せずに行うことができる。そして、かかるエッジリング14の交換の際にも、本実施形態の仮吸着シーケンスと本吸着シーケンスを適用することができ、本実施形態と同様の効果を享受することができる。
【0127】
<他の実施形態>
以上の実施形態では、第2のRFフィルタ63のインピーダンスを可変にしたが、第1のRFフィルタ62のインピーダンスを可変にしてもよいし、RFフィルタ62、63の両方のインピーダンスを可変にしてもよい。また、以上の実施形態では、直流電源60に対して2つのRFフィルタ62、63を設けたが、RFフィルタの数はこれに限定されず、例えば1つであってもよい。
【0128】
<他の実施形態>
以上の実施形態のエッチング装置1は容量結合型のエッチング装置であったが、本開示が適用されるエッチング装置はこれに限定されない。例えばエッチング装置は、誘導結合型のエッチング装置であってもよい。
【0129】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【解決手段】基板にエッチングを行うエッチング装置1であって、チャンバ10と、チャンバ10の内部に設けられた基板支持体であり、電極12と、電極12上に設けられた静電チャック13と、静電チャック13上に載置された基板Wを囲むように配置されるエッジリング14とを有するステージ11と、チャンバ10の内部のガスからプラズマを生成するための高周波電力を供給する第1の高周波電源50と、インピーダンスを変更可能な第2のRFフィルタ63と、を備える。エッジリング14とRFフィルタ63は、接続部を介して電気的に直接接続されている。