特許第6938837号(P6938837)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6938837フレキシブルディスプレイ素子基板用ポリイミドフィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6938837
(24)【登録日】2021年9月6日
(45)【発行日】2021年9月22日
(54)【発明の名称】フレキシブルディスプレイ素子基板用ポリイミドフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20210909BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20210909BHJP
【FI】
   C08J5/18CFG
   C08G73/10
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-546832(P2019-546832)
(86)(22)【出願日】2018年8月27日
(65)【公表番号】特表2020-509127(P2020-509127A)
(43)【公表日】2020年3月26日
(86)【国際出願番号】KR2018009818
(87)【国際公開番号】WO2019045376
(87)【国際公開日】20190307
【審査請求日】2019年8月30日
(31)【優先権主張番号】10-2017-0112323
(32)【優先日】2017年9月4日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2017-0172005
(32)【優先日】2017年12月14日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ヘ ウォン
(72)【発明者】
【氏名】パク、チャン ヒョ
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジンホ
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジンヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム、キュンファン
(72)【発明者】
【氏名】ホン、イエ ジ
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、ダンビ
【審査官】 河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−224824(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/084777(WO,A3)
【文献】 特開2016−188367(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第103374130(CN,A)
【文献】 国際公開第2011/062271(WO,A3)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00− 5/02
5/12− 5/22
C08G73/00−73/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミドフィルムであって、
100〜350℃区間の熱膨張係数(A)と
350〜450℃区間の熱膨張係数(B)が、
0<B/A<2を満足し、
4,4'−パラフェニレンジアミン(pPDA)1molに対して、
3,3',4,4'−ビフェニルカルボン酸二無水物(s−BPDA)1mol未満のmol比で重合され、
無水フタル酸(PA)を添加して末端が封止されたポリイミドで製造され
前記ポリイミドフィルムは、ポリイミド前駆体溶液を最終硬化温度450℃以上で硬化させて製膜され、
前記3,3',4,4'−ビフェニルカルボン酸二無水物(s−BPDA)及び4,4'−パラフェニレンジアミン(pPDA)のmol比が、0.98:1〜0.99:1であり、
前記無水フタル酸(PA)を含む末端封止剤が、4,4'−パラフェニレンジアミン(pPDA)1molに対して0.02〜0.025mol比で重合される、
ポリイミドフィルム。
【請求項2】
100〜350℃区間の熱膨張係数(A)と
350〜450℃区間の熱膨張係数(B)が、
0<B−A<1を満足する
請求項1に記載のポリイミドフィルム。
【請求項3】
前記ポリイミドフィルムは、
350℃以上の温度で熱膨張係数(CTE)が正(+)の値を有する
請求項1または2に記載のポリイミドフィルム。
【請求項4】
前記ポリイミドフィルムの透過度が、70%以上である
請求項1からのいずれか1項に記載のポリイミドフィルム。
【請求項5】
1次昇温後、冷却されたポリイミドフィルムを50℃から450℃に2次昇温時に測定された熱膨張係数(CTE)は、
0以上7ppm/℃以下の値を有する
請求項1からのいずれか1項に記載のポリイミドフィルム。
【請求項6】
ポリイミドフィルムであって、
100〜350℃区間の熱膨張係数(A)と
350〜450℃区間の熱膨張係数(B)が、
0<B/A<2を満足し、
1次昇温後、冷却されたポリイミドフィルムを50℃から450℃に2次昇温時に測定された熱膨張係数(CTE)は、
0以上7ppm/℃以下の値を有し、
前記ポリイミドフィルムは、ポリイミド前駆体溶液を最終硬化温度450℃以上で硬化させて製膜され、
3,3',4,4'−ビフェニルカルボン酸二無水物(s−BPDA)及び4,4'−パラフェニレンジアミン(pPDA)のmol比が、0.98:1〜0.99:1であり、
無水フタル酸(PA)を含む末端封止剤が、4,4'−パラフェニレンジアミン(pPDA)1molに対して0.02〜0.025mol比で重合される、
ポリイミドフィルム。
【請求項7】
請求項1からのいずれか1項に記載のポリイミドフィルムを製造するための方法であって、
重合溶媒に4,4'−パラフェニレンジアミン(pPDA)1molに対して、3,3',4,4'−ビフェニルカルボン酸二無水物(s−BPDA)を1mol未満に含む重合成分及び末端封止剤として無水フタル酸(PA)を添加してポリイミド前駆体を製造する段階と、
前記ポリイミド前駆体及び有機溶媒を含むポリイミド前駆体溶液を製造する段階と、
前記ポリイミド前駆体溶液を基板上に塗布する段階と、
前記塗布されたポリイミド前駆体溶液を乾燥及び加熱する段階と、
を含む
ポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項8】
ポリイミドフィルムを製造するための方法であって、
重合溶媒に4,4'−パラフェニレンジアミン(pPDA)1molに対して、3,3',4,4'−ビフェニルカルボン酸二無水物(s−BPDA)を1mol未満に含む重合成分及び末端封止剤として無水フタル酸(PA)を添加してポリイミド前駆体を製造する段階と、
前記ポリイミド前駆体及び有機溶媒を含むポリイミド前駆体溶液を製造する段階と、
前記ポリイミド前駆体溶液を基板上に塗布する段階と、
前記塗布されたポリイミド前駆体溶液を乾燥及び加熱する段階と、
を含み、
前記ポリイミドフィルムは、
100〜350℃区間の熱膨張係数(A)と
350〜450℃区間の熱膨張係数(B)が、
0<B/A<2を満足し、
前記ポリイミドフィルムは、ポリイミド前駆体溶液を最終硬化温度450℃以上で硬化させて製膜され、
前記3,3',4,4'−ビフェニルカルボン酸二無水物(s−BPDA)及び4,4'−パラフェニレンジアミン(pPDA)のmol比が、0.98:1〜0.99:1であり、
前記無水フタル酸(PA)を含む末端封止剤が、4,4'−パラフェニレンジアミン(pPDA)1molに対して0.02〜0.025mol比で重合される、
ポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項9】
請求項1から請求項のうち何れか一項に記載のポリイミドフィルムを基板として含む
フレキシブルディスプレイ素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2017年9月4日付の韓国特許出願10−2017−0112323号及び2017年12月14日付の韓国特許出願10−2017−0172005号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたあらゆる内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、残留応力が低く、透過度が改善されたフレキシブルディスプレイ素子基板用ポリイミドフィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリイミド(polyimide、PI)は、比較的結晶化度が低いか、ほぼ非晶質構造を有する高分子であって、合成が容易であり、薄膜フィルムを作ることができ、硬化のための架橋基が不要であるという長所だけではなく、透明性、剛直な鎖構造によって優れた耐熱性と耐化学性、優れた機械的物性、電気的特性及び寸法安定性を有している高分子材料であって、現在、自動車、航空宇宙分野、柔軟性回路基板、LCD用液晶配向膜、接着及びコーティング剤などの電気、電子材料として広く使われている。
【0004】
特に、ポリイミドは、高い熱安定性、機械的物性、耐化学性、そして、電気的特性を有している高性能高分子材料であって、フレキシブルディスプレイ用基板素材として関心が増大しているが、ディスプレイ用途に使用するためには、透明ではなければならず、ディスプレイ製造のための熱処理工程で基板の残留応力による不良率を低減するためには、350℃以上の温度で熱膨張係数が負数であってはならない問題がある。したがって、現在、ポリイミドの基本的な特性を保持しながら、光学的特性と熱履歴変化とを最小化するための研究が多く進められている。
【0005】
フレキシブルディスプレイは、自在なフォームファクタ(form factor)、軽くて薄い特性及び割れない特性のために、市場の需要が増加している。このようなフレキシブルディスプレイを具現するに当って、耐熱性に優れたポリイミドであるBPDA(3,3',4,4'−Biphenyltetracarboxylic dianhydride)−PDA(phenylene diamine)で構成されるポリイミドが用いられる。
【0006】
基板用ポリイミド重合時に、単量体であるジアミンと二無水物とのうち、ジアミンをさらに過量で重合させる場合、粘度及び分子量安定性の側面で有利であると知られている。しかし、ジアミン過量で重合したポリイミドを利用した基板は、350℃以上の高温で熱膨張係数(CTE)が負数であって、高温で収縮する挙動を示すだけではなく、450℃以上の温度で硬化時に、アミン末端基によって透過度が低下するという問題点がある。CTEが負数である場合には、TFT工程の熱処理過程で残留応力を誘発して、無機膜のクラック、フィルムの浮き上がりのような各種の不良を引き起こす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これにより、本発明は、前記のような問題を解決するために、高温の工程でも収縮が起こらず、透過度も向上したポリイミドフィルムを提供することである。
【0008】
また、本発明は、前記ポリイミドフィルムを製造する方法を提供することである。
【0009】
また、本発明は、前記ポリイミドフィルムを基板として含むフレキシブルディスプレイ素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前述した課題を解決するために、100〜350℃区間の熱膨張係数(A)と350〜450℃区間の熱膨張係数(B)が、0<B/A<2を満足するものであるポリイミドフィルムを提供する。
【0011】
一実施例によれば、前記ポリイミドフィルムは、100〜350℃区間の熱膨張係数(A)と350〜450℃区間の熱膨張係数(B)が、0<B−A<1を満足するものである。
【0012】
一実施例によれば、前記ポリイミドフィルムは、ポリイミド前駆体溶液を最終硬化温度450℃以上で硬化させて製膜されたものである。
【0013】
一実施例によれば、前記ポリイミドフィルムは、4,4'−パラフェニレンジアミン(pPDA)1molに対して、3,3',4,4'−ビフェニルカルボン酸二無水物(s−BPDA)1mol未満のmol比で重合され、無水フタル酸(PA)を添加して末端が封止されたポリイミドから製造され、350℃以上の温度で熱膨張係数(CTE)が正数の値を有するものである。
【0014】
一実施例によれば、前記3,3',4,4'−ビフェニルカルボン酸二無水物(s−BPDA)及び4,4'−パラフェニレンジアミン(pPDA)が、0.98:1〜0.99:1のmol比で重合されるものである。
【0015】
一実施例によれば、前記ポリイミドフィルムは、透過度が70%以上であり得る。
【0016】
一実施例によれば、前記PAを含む末端封止剤が、pPDA 1molに対して0.02〜0.025mol比で添加される。
【0017】
一実施例によれば、1次昇温後、冷却されたポリイミドフィルムを50℃から450℃に2次昇温時に測定されたCTEは、0以上7ppm/℃以下の値を有するものである。
【0018】
本発明の他の課題を解決するために、重合溶媒に4,4'−パラフェニレンジアミン(pPDA)1molに対して、3,3',4,4'−ビフェニルカルボン酸二無水物(s−BPDA)を1mol未満に含む重合成分及び無水フタル酸(PA)を添加してポリイミド前駆体を製造する段階;前記ポリイミド前駆体及び有機溶媒を含むポリイミド前駆体溶液を製造する段階;前記ポリイミド前駆体溶液を基板上に塗布する段階;及び前記塗布されたポリイミド前駆体溶液を乾燥及び加熱してポリイミドフィルムを製造する段階;を含むフレキシブルディスプレイ素子基板用ポリイミドフィルムの製造方法を提供する。
【0019】
一実施例によれば、前記ポリイミド前駆体溶液の乾燥及び加熱を通じる硬化工程において、最終硬化温度が450℃以上であり得る。
【0020】
本発明のさらなる課題を解決するために、前記ポリイミドフィルムを含むフレキシブルディスプレイ素子を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によるポリイミドフィルムは、350℃以上の温度でも、耐熱性が低下することなく、正数のCTEを有し、低温熱膨張係数と高温熱膨張係数との差が少なくて、安定した熱膨張特性を有し、また、高い透過度を有して、ディスプレイ素子の基板として使用する時、align keyを通じるTFTデバイスをより容易に製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施例1及び比較例1によるポリイミドフィルムの100〜460℃の範囲での熱膨張変化を示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、多様な変換を加え、さまざまな実施例を有することができるので、特定実施例を図面に例示し、詳細な説明に詳細に説明する。しかし、これは、本発明を特定の実施形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれる、あらゆる変換、均等物または代替物を含むものと理解しなければならない。本発明を説明するに当って、関連した公知技術についての具体的な説明が、本発明の要旨を不明にする恐れがあると判断される場合、その詳細な説明を省略する。
【0024】
本発明は、高温で熱による収縮現象が発生しないポリイミドフィルムに関するものである。
【0025】
本発明によれば、100〜350℃区間の熱膨張係数(A)と350〜450℃区間の熱膨張係数(B)が、0<B/A<2を満足するものであるポリイミドフィルムを提供する。
【0026】
一実施例によれば、前記ポリイミドフィルムは、100〜350℃区間の熱膨張係数(A)と350〜450℃区間の熱膨張係数(B)が、0<B−A<1を満足するものである。
【0027】
B/Aが2以上であるか、B−Aが1以上であることは、高温及び低温熱膨張係数の差が大きいということを意味し、本発明によるポリイミドフィルムは、高温及び低温熱膨張係数がいずれも正数でありながら、その差が大きくないということを1つの特徴とする。すなわち、本発明によるポリイミドフィルムは、高温及び低温熱膨張係数の差が大きくないということは、工程温度の変化にも安定した膨張特性を示すので、工程安定性に優れ、製品不良を減らしうる。
【0028】
望ましい実施例によれば、B/Aは、0.5以上または0.8以上または1以上であり、1.8以下または1.5以下の値を有しうる。また、B−Aは、0.1以上または0.3以上であり、0.9以下または0.8以下であり得る。
【0029】
前記熱膨張係数は、400℃以上の温度で製膜した厚さ10μmのフィルムで測定した値を基準にすることができる。一態様によれば、前記ポリイミドフィルムは、ポリイミド前駆体溶液を最終硬化温度450℃以上で硬化させて製膜されたものである。
【0030】
一態様によれば、本発明によるフィルムは、4,4'−パラフェニレンジアミン(pPDA)1molに対して、3,3',4,4'−ビフェニルカルボン酸二無水物(s−BPDA)1mol未満として反応させて製造され、無水フタル酸(PA)を添加して末端を封止させて製造可能である。
【0031】
特に、本発明によるフィルムは、350℃以上の温度で熱膨張係数(CTE)が正数の値を有するものである。
【0032】
一般的に、ポリイミドを製造する過程でポリイミド前駆体溶液の粘度及び分子量の安定性を重点とするので、ジアミンを過量で反応させてポリイミドフィルムの物性を改善しようとする努力をしたが、単純にジアミンが過量である組成では、ポリイミドフィルムの熱膨張係数が高温で負数を示すなどの熱安定性の問題が発生する。
【0033】
特に、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)溶媒を使用してジアミン過量のポリイミド基板を製造する場合には、高温でのCTEが負数(収縮する挙動)を示し、450℃以上の温度で硬化時に、アミン末端基によって透過度が低下する。また、NMPを使用するポリイミドフィルムでは、TMA測定時に、350℃以上の温度でnegative CTEが発生して、これは、高温の工程温度を加える基板device TFT工程中、熱処理過程で基板に残留応力を誘発させ、無機膜のクラック、フィルムの浮き上がりのような各種の不良の原因になる。
【0034】
これにより、本発明者らは、熱安定性を向上させながらも、より改善された機械的特性を有するポリイミドを提供するために研究した。
【0035】
本発明の一態様によれば、ジアミンを過量で添加するが、無水フタル酸(PA、phthalic anhydride)で主鎖を末端封止(endcapping)させ、400℃、望ましくは、450℃以上の高温で最終硬化させることにより、350℃以上の高温でも熱膨張係数が正数であるポリイミドフィルムを提供することができる。すなわち、高温による収縮現象が起こらないようにした。
【0036】
一実施例によれば、前記3,3',4,4'−ビフェニルカルボン酸二無水物(s−BPDA)及び4,4'−パラフェニレンジアミン(pPDA)を0.98:1〜0.99:1、望ましくは、0.9875:1〜0.9890:1のmol比で重合させることができる。
【0037】
また、s−BPDAとpPDA共に無水フタル酸を追加して反応させることにより、耐熱性及び透過度共に向上させ、前記無水フタル酸は、pPDA 1molに対して0.02〜0.025mol比、望ましくは、0.022〜0.025mol比で添加されて重合させることができる。
【0038】
本発明によるポリイミドフィルムは、350℃以上の温度で熱膨張係数が正の値を有し、より詳細には、TMAを利用したCTE測定方法において、1次昇温以後、冷却されたポリイミドフィルムを100℃から460℃に2次昇温時に測定されたCTE値が350℃以上の温度で正数を示すものであり、望ましくは、0以上7ppm/℃以下の値を有し、望ましくは、0以上6ppm/℃以下の熱膨張係数を有するものである。
【0039】
前記末端封止剤を使用して、前記ジアミンとテトラカルボン酸二無水物から得られるポリイミドの末端を封止する方法としては、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させた後に、前記末端封止剤を添加して反応を続く方法、ジアミンに末端封止剤を加えて反応させた後、テトラカルボン酸二無水物を添加して、反応をさらに続く方法、テトラカルボン酸二無水物、ジアミン及び前記末端封止剤を同時に添加して反応させて製造する方法などがある。
【0040】
前記反応から末端が封止されたポリイミド前駆体を重合することができる。
【0041】
前記ポリイミド前駆体重合反応は、溶液重合など通常のポリイミド前駆体重合方法によって実施される。
【0042】
前記反応は、無水条件で実施され、前記重合反応時に、温度は、−75〜50℃、望ましくは、0〜40℃で実施される。ジアミンが有機溶媒に溶解された状態で酸二無水物を投入する方式で実施され、そのうち、ジアミン及び酸二無水物は、重合溶媒でほぼ10〜30重量%の含量で含まれ、重合時間及び反応温度によって分子量が調節される。
【0043】
また、前記重合反応に使われる有機溶媒としては、具体的に、γ−ブチロラクトン、1,3−ジメチル−イミダゾリジノン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンなどのケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類(セロソルブ);酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、カルビトール、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジエチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチルホルムアミド(DEF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチルピロリドン(NMP)、N−エチルピロリドン(NEP)、N−ビニルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルホスホルアミド、テトラメチルウレア、N−メチルカプロラクタム、テトラヒドロフラン、m−ジオキサン、P−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン、ビス[2−(2−メトキシエトキシ)]エーテル、ジメチルプロピオンアミド、ジエチルプロピオンアミド、及びこれらの混合物からなる群から選択されるものが使われる。
【0044】
望ましくは、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒;N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒;N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒を単独または混合物として用いられる。しかし、これに限定されるものではない。また、キシレン、トルエンのような芳香族炭化水素をさらに含んで使われる。
【0045】
前記製造されたポリイミド前駆体を用いてポリイミドフィルムを製造する方法は、前記ポリイミド前駆体及び有機溶媒を含むポリイミド前駆体組成物を基板の一面に塗布し、イミド化及び硬化工程以後、基板から分離する段階を含む。
【0046】
具体的に、前記ポリイミド前駆体組成物は、有機溶媒中にポリイミド前駆体が溶解された溶液の形態であり、このような形態を有する場合、例えば、ポリイミド前駆体を有機溶媒中で合成した場合には、ポリイミド前駆体組成物は、重合後、得られるポリイミド前駆体溶液のそれ自体または同一溶液をさらに添加したものであっても良く、または、前記重合後、得られたポリイミド前駆体溶液を他の溶媒で希釈したものであっても良い。
【0047】
前記ポリイミド前駆体組成物は、フィルム形成工程時の塗布性などの工程性を考慮して、適切な粘度を有させる量で固形分を含むことが望ましく、前記固形分は、ポリイミド前駆体組成物総重量に対して5〜20重量%に含まれうる。または、前記ポリイミド前駆体組成物が、400〜50,000cPの粘度を有するように調節することが望ましい。ポリイミド前駆体組成物の粘度が400cP未満であり、ポリイミド前駆体組成物の粘度が50,000cPを超過する場合、前記ポリイミド前駆体組成物を利用したディスプレイ基板の製造時に、流動性が低下して、コーティング時に均一に塗布にならないなどの製造工程上の問題点を引き起こし得る。
【0048】
次いで、前記で製造したポリイミド前駆体組成物を基板の一面に塗布し、80〜500℃の温度で熱イミド化及び硬化した後、基板から分離することにより、ポリイミドフィルムが製造可能である。
【0049】
この際、前記基板としては、ガラス、金属基板またはプラスチック基板などが特に制限なしに使われ、そのうちでも、ポリイミド前駆体に対するイミド化及び硬化工程のうち、熱及び化学的安定性に優れ、別途の離型剤処理なしでも、硬化後、形成されたポリイミド系フィルムに対して損傷なしに容易に分離されるガラス基板が望ましい。
【0050】
また、前記塗布工程は、通常の塗布方法によって実施され、具体的には、スピンコーティング法、バーコーティング法、ロールコーティング法、エアナイフ法、グラビア法、リバースロール法、キスロール法、ドクターブレード法、スプレー法、浸漬法またはブラシ法などが用いられうる。そのうちでも、連続工程が可能であり、ポリイミドのイミド化率を増加させることができるキャスティング法によって実施されることがより望ましい。
【0051】
また、前記ポリイミド前駆体組成物は、最終的に製造されるポリイミドフィルムがディスプレイ基板用として適した厚さを有させる厚さの範囲で基板上に塗布されうる。
【0052】
具体的には、10〜30μmの厚さにする量で塗布されうる。前記ポリイミド前駆体組成物塗布後、硬化工程に先立って、ポリイミド前駆体組成物内に存在する溶媒を除去するための乾燥工程が選択的にさらに実施される。
【0053】
前記乾燥工程は、通常の方法によって実施され、具体的に、140℃以下、あるいは80〜140℃の温度で実施される。乾燥工程の実施温度が80℃未満であれば、乾燥工程が長くなり、140℃を超過する場合、イミド化が急激に進行して、均一な厚さのポリイミドフィルムの形成が難しい。
【0054】
引き続き、前記硬化工程は、80〜500℃の温度での熱処理によって進行しうる。前記硬化工程は、前記温度範囲内で多様な温度での多段階加熱処理に進行することもできる。また、前記硬化工程時に、硬化時間は特に限定されず、一例として、3〜60分間実施される。
【0055】
また、前記硬化工程後にポリイミドフィルム内ポリイミドのイミド化率を高めて、前述した物性的特徴を有するポリイミド系フィルムを形成するために、後続の熱処理工程が選択的にさらに実施することもできる。
【0056】
前記後続の熱処理工程は、200℃以上、あるいは200〜500℃で1〜30分間実施されることが望ましい。また、前記後続の熱処理工程は、1回実施することもでき、または、2回以上多段階で実施することもできる。具体的には、200〜220℃での第1熱処理、300〜380℃での第2熱処理及び400〜500℃での第3熱処理を含む3段階で実施され、望ましくは、最終硬化温度が450℃以上である条件で30分以上硬化させて製造可能である。
【0057】
以後、基板上に形成されたポリイミドフィルムを通常の方法によって基板から剥離することにより、ポリイミドフィルムが製造可能である。
【0058】
本発明によるポリイミドは、約360℃以上のガラス転移温度を有するものである。このように優れた耐熱性を有するために、前記ポリイミドを含むフィルムは、素子製造工程中に付加される高温の熱に対しても優れた耐熱性及び機械的特性を保持することができる。
【0059】
本発明によるポリイミドフィルムは、1%の質量減少を示す熱分解温度(Td 1%)が550℃以上であり得る。
【0060】
また、本発明によるポリイミドフィルムは、機械的物性が非常に優れ、例えば、延伸率(Elongation)は、20%以上、望ましくは、25%以上であり、引張強度は、500MPa以上、望ましくは、520MPa以上、より望ましくは、530MPa以上であり、引張モジュラス(Tensile Modulus)は、10GPa以上であり得る。
【0061】
本発明は、無水フタル酸を含む末端封止剤で末端が封止されたポリイミドフィルムを提供することにより、高温でも正数のCTE値を示して、高温工程上でnegative CTE(収縮発生)によって発生しうる問題を解決することだけではなく、高い透過度特性を有するポリイミドフィルム、望ましくは、70%以上の透過度を有するポリイミドフィルムを提供し、前記ポリイミド基板上に素子を製作する場合、align keyを通じるTFTデバイスの製作がより容易になる。
【0062】
本発明によるポリイミドは、素子用基板、ディスプレイ用カバー基板、光学フィルム(optical film)、IC(integrated circuit)パッケージ、粘着フィルム(adhesive film)、多層FPC(flexible printed circuit)、テープ、タッチパネル、光ディスク用保護フィルムのような多様な分野に使われる。
【0063】
本発明は、前記ポリイミドフィルムを含むフレキシブルディスプレイ装置を提供する。例えば、前記ディスプレイ装置は、液晶表示装置(liquid crystal display device、LCD)、有機発光ダイオード(organic light emitting diode、OLED)などが挙げられ、特に、高温工程を必要とするLTPS(low temperature polycrystalline silicon)工程を使用するOLEDデバイスに適するが、これに限定されるものではない。
【0064】
以下、当業者が容易に実施できるように、本発明の実施例について詳しく説明する。しかし、本発明は、さまざまな異なる形態として具現可能であり、ここで説明する実施例に限定されるものではない。
【0065】
<実施例1>BPDA−pPDA/PA(98.9:100:2.2)ポリイミド重合
【0066】
窒素気流が流れる攪拌機内に有機溶媒NMP(N−メチル−2−ピロリドン)100gを満たした後、反応器の温度を25℃に保持した状態でパラフェニレンジアミン(p−PDA)6.192g(57.259mmol)を溶解させた。前記p−PDA溶液に3,3',4,4'−ビフェニルカルボン酸二無水物(s−BPDA)16.661g(56.629mmol)とNMP 56.96gとを同じ温度で添加して、一定時間溶解しながら撹拌した後、ポリアミド酸を重合した。以後、前記ポリアミド酸溶液に無水フタル酸(PA)0.187g(1.260mmol)を投入して、一定時間撹拌してポリイミド前駆体を製造した。
【0067】
前記反応から製造されたポリイミド前駆体溶液の固形分濃度を12.8重量%になるように前記有機溶媒を添加して、ポリイミド前駆体溶液を製造した。
【0068】
前記ポリイミド前駆体溶液をガラス基板にスピンコーティングした。ポリイミド前駆体溶液が塗布されたガラス基板をオーブンに入れ、6℃/minの速度で加熱し、120℃で10分、460℃で55分を保持して硬化工程を進行した。硬化工程完了後に、ガラス基板を水に浸してガラス基板上に形成されたフィルムを取り外して、オーブンで100℃に乾燥して、厚さが10μmであるポリイミドのフィルムを製造した。
【0069】
<比較例1>BPDA−pPDA(98.9:100)ポリイミド重合
【0070】
窒素気流が流れる攪拌機内に有機溶媒NMP(N−メチル−2−ピロリドン)100gを満たした後、反応器の温度を25℃に保持した状態でパラフェニレンジアミン(p−PDA)6.243g(57.726mmol)を溶解させた。前記p−PDA溶液に3,3',4,4'−ビフェニルカルボン酸二無水物(s−BPDA)16.797g(57.091mmol)とNMP 56.96gとを同じ温度で添加して、一定時間溶解しながら撹拌した後、ポリイミド前駆体を製造した。
【0071】
前記反応から製造されたポリイミド前駆体を固形分濃度を12.8重量%になるように前記有機溶媒を添加して、ポリイミド前駆体溶液を製造した。
【0072】
前記ポリイミド前駆体溶液をガラス基板にスピンコーティングした。ポリイミド前駆体溶液が塗布されたガラス基板をオーブンに入れ、6℃/minの速度で加熱し、120℃で10分、460℃で55分を保持して硬化工程を進行した。硬化工程完了後に、ガラス基板を水に浸してガラス基板上に形成されたフィルムを取り外して、オーブンで100℃に乾燥して、厚さが10μmであるポリイミドのフィルムを製造した。
【0073】
<比較例2>BPDA−PMDA−pPDA(88.9:10:100)ポリイミド重合
【0074】
窒素気流が流れる攪拌機内に有機溶媒NMP(N−メチル−2−ピロリドン)100gを満たした後、反応器の温度を25℃に保持した状態でパラフェニレンジアミン(p−PDA)6.364g(58.849mmol)を溶解させた。前記p−PDA溶液に3,3',4,4'−ビフェニルカルボン酸二無水物(s−BPDA)15.393g(52.316mmol)、ピロメリット酸二無水物(PMDA)1.289g(5.885mmol)とNMP 56.96gとを同じ温度で添加して、一定時間溶解しながら撹拌した後、ポリイミド前駆体を製造した。
【0075】
前記反応から製造されたポリイミド前駆体を固形分濃度12.8重量%になるように前記有機溶媒を添加して、ポリイミド前駆体溶液を製造した。
【0076】
前記ポリイミド前駆体溶液をガラス基板にスピンコーティングした。ポリイミド前駆体溶液が塗布されたガラス基板をオーブンに入れ、6℃/minの速度で加熱し、120℃で10分、460℃で55分を保持して硬化工程を進行した。硬化工程完了後に、ガラス基板を水に浸してガラス基板上に形成されたフィルムを取り外して、オーブンで100℃に乾燥して、厚さが10μmであるポリイミドのフィルムを製造した。
【0077】
<比較例3>BPDA−PMDA−pPDA/PA(88.9:10:100:2.2)ポリイミド重合
【0078】
窒素気流が流れる攪拌機内に有機溶媒NMP(N−メチル−2−ピロリドン)100gを満たした後、反応器の温度を25℃に保持した状態でパラフェニレンジアミン(p−PDA)6.311g(58.363mmol)を溶解させた。前記p−PDA溶液に3,3',4,4'−ビフェニルカルボン酸二無水物(s−BPDA)15.265g(51.885mmol)、ピロメリット酸二無水物(PMDA)1.273g(5.836mmol)とNMP 56.96gとを同じ温度で添加して、一定時間溶解しながら撹拌した後、ポリイミド前駆体を製造した。以後、前記ポリアミド酸溶液に無水フタル酸(PA)0.190g(1.284mmol)を投入して、一定時間撹拌して、ポリイミド前駆体を製造した。
【0079】
前記反応から製造されたポリイミド前駆体を固形分濃度を12.8重量%になるように前記有機溶媒を添加して、ポリイミド前駆体溶液を製造した。
【0080】
前記ポリイミド前駆体溶液をガラス基板にスピンコーティングした。ポリイミド前駆体溶液が塗布されたガラス基板をオーブンに入れ、6℃/minの速度で加熱し、120℃で10分、460℃で55分を保持して硬化工程を進行した。硬化工程完了後に、ガラス基板を水に浸してガラス基板上に形成されたフィルムを取り外して、オーブンで100℃に乾燥して、厚さが10μmであるポリイミドのフィルムを製造した。
【0081】
<実験例1>
【0082】
前記製造されたそれぞれのポリイミドフィルムに対して、下記のような方法でCTE、熱分解温度、機械的物性及び透過度などを測定して、表1に示した。
【0083】
<熱膨張係数の測定>
【0084】
前記実施例及び比較例から製造されたそれぞれのポリイミドフィルムに対して、フィルムを5x16mmのサイズに準備した後、アクセサリーを用いてTA社のQ400装備に試料をローディングする。実際に測定されるフィルムの長さは、16mmに同様にした。フィルムを引っ張る力を0.02Nに設定し、常温で450℃の温度範囲で5℃/minの昇温速度で1次昇温工程を進行した後、50℃に5℃/minの冷却速度で冷却(cooling)させた。以後、前記冷却されたそれぞれのサンプルを50℃から450℃まで5℃/minの昇温速度で加熱(heating)させながら、サンプルの熱膨張変化をTMAで測定した。100〜350℃区間及び350〜450℃区間、そして、100〜450℃区間で測定された熱膨張係数を表1に示し、実施例1及び比較例1のフィルムに対して、寸法変化の態様を図1に示した。
【0085】
<熱分解温度の測定>
【0086】
TA instruments社のDiscovery TGAを用いて窒素雰囲気で重合体の重量減少率1%である時の温度を測定した。
【0087】
<機械的物性の測定>
【0088】
ASTM D 412規定によってダンベル形態の試験片3〜4種を製作した後に、Instron社の3342Bモデル装備を用いてgrip間の間隔を30mm、10mm/minの速度で各樹脂フィルムの延伸率(%)、引張強度(MPa)及び引張モジュラス(GPa)を測定した。
【0089】
<透過度>
【0090】
透過度は、JIS K 7105に基づいて透過率計(モデル名8453 UV−visible Spectrophotometer、Agilent Technologies製造)で380〜780nmの波長に対する透過率の平均を測定した。
【0091】
【表1】
【0092】
表1及び図1の結果に示されるように、本発明によるポリイミドフィルムは、高温熱膨張係数(B)と低温熱膨張係数(A)が、0<B/A<2と0<B−A<1との条件をいずれも満足し、機械的物性及び透過性は保持しながら、350℃以上でCTEが正数として表われることが分かる。
【0093】
一方、比較例のフィルムは、いずれも負数として表われており、特に、フタル酸無水物(PA)の添加なしにジアミンを過量で配合して製造されたポリイミドフィルムである比較例1は、350℃以上の温度でCTEが負数として表われ、BPDA−PMDA−pPDA骨格を有する比較例2及び比較例3の場合、PMDAをさらに含むことにより、耐熱性が低下して、350℃以上の温度でCTEが負数として表われることを確認した。特に、比較例3は、PAで封止されているにも拘らず、PMDAが追加されることによって、耐熱性が低下して表われることが分かる。また、比較例2及び比較例3は、透過度も本発明のポリイミドフィルムに比べて、著しく減少すると表われた。
【0094】
以上から、本発明は、ジアミン過量のポリイミドフィルムから誘導される優れた機械的物性はそのまま保持しながら、高温でのCTE収縮特性が抑制されて、耐熱性が著しく改善されたポリイミドフィルムを提供するだけではなく、透過度も向上させることができて、高温工程でもより透明であり、堅固なポリイミドフィルムを提供することができるということが分かる。
【0095】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳しく記述したところ、当業者において、このような具体的な記述は、単に望ましい実施態様であり、これにより、本発明の範囲が制限されるものではないという点は明白である。したがって、本発明の実質的な範囲は、下記の特許請求の範囲とそれらの等価物とによって定義される。
図1