特許第6938861号(P6938861)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ JX日鉱日石エネルギー株式会社の特許一覧 ▶ 栗田工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6938861-ボイラ設備のスケール除去方法 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6938861
(24)【登録日】2021年9月6日
(45)【発行日】2021年9月22日
(54)【発明の名称】ボイラ設備のスケール除去方法
(51)【国際特許分類】
   F22B 37/48 20060101AFI20210909BHJP
   F23J 3/00 20060101ALI20210909BHJP
【FI】
   F22B37/48 A
   F23J3/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-122827(P2016-122827)
(22)【出願日】2016年6月21日
(65)【公開番号】特開2017-227360(P2017-227360A)
(43)【公開日】2017年12月28日
【審査請求日】2019年6月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】山田 勝也
(72)【発明者】
【氏名】石福 直
(72)【発明者】
【氏名】吉川忠芳
【審査官】 礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−037695(JP,A)
【文献】 特開2011−147789(JP,A)
【文献】 特開平07−090651(JP,A)
【文献】 特開昭57−006298(JP,A)
【文献】 実開昭61−048296(JP,U)
【文献】 特開2014−001416(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 37/48
F22B 37/56
F23J 3/00
F28G 9/00
F28G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラ設備に付着した硫黄酸化物スケールと非水溶性のスケールとを除去する方法であって、
該ボイラ設備を水洗して硫黄酸化物スケールを除去する第1工程と、該第1工程で使用した水洗水を循環水洗水として循環洗浄する第2工程とを有し、前記第2工程において、前記第1工程で使用した水洗水をスケール分離装置で固液分離し、分離水を前記循環水洗水とするボイラ設備のスケール除去方法であって、
前記第2工程を、前記循環水洗水のpHが下げ止まった時から1〜2時間行い、
該第2工程の後、該ボイラ設備内を新規の水洗水で一過式に水洗して排水する第3工程を、この排水のpHが中性となるまで行うことを特徴とするボイラ設備のスケール除去方法。
【請求項2】
請求項1において、前記第2工程における前記循環水洗水のpHが4以下であることを特徴とするボイラ設備のスケール除去方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記第工程を、前記排水のpHが5.0〜7.0となるまで行うことを特徴とするボイラ設備のスケール除去方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記循環水洗水の硫酸イオン濃度を測定し、該測定値に基づいて、スケールの除去状況を把握することを特徴とするボイラ設備のスケール除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はボイラ設備のスケール除去方法に関する。詳しくは、本発明は、ボイラ伝熱管外面や燃焼ガスが接触するボイラ設備に付着した燃料由来の硫黄酸化物スケールと、錆などの非水溶性のスケールとを効率的に洗浄、除去する方法と、そのための洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラ設備では、燃焼炉から煙突までの間に配置された装置や配管において、硫黄成分を含む燃料を燃焼させることで排出される燃焼排ガスが接触することで、燃料由来の硫黄酸化物のスケールが付着し、更に、この硫黄酸化物スケールにより管材自体が腐食して錆(酸化鉄)などがスケールとして付着することにより、伝熱阻害による効率低下、ガス流れ阻害による差圧の上昇など、運転に支障を与える。特に、フィンチューブでは、フィン間にスケールが付着することが運転差圧の上昇に繋がっている。
そのため、定検時にこのスケールを除去して、運転に支障のない状態とする必要がある。従来、このスケール除去方法としては、次のような方法が提案されている。
【0003】
特許文献1:フィンを有する伝熱管を水平に併設してなる伝熱管郡の伝熱管外面を洗浄するに当たり、洗浄薬品を含む薬液で伝熱管群を洗浄する薬品洗浄工程と、高圧水を伝熱管郡に向けて噴射する高圧洗浄工程とを行い、薬液洗浄及び高圧水洗浄工程に先立って、伝熱管群の上部より散水し、落下してきた水を伝熱管群の下方で集水する予備水洗工程を行う方法。この方法では、予備水洗工程で、漏水の有無や送水系、集水系の作動状況などを本洗浄工程に先立ってチェック、確認することができる。
【0004】
特許文献2:ボイラの燃焼装置に付着した硫黄化合物を含有する酸性付着物を、アルカリ金属の炭酸液及び/又はアルカリ金属の炭酸水素塩の水溶液と接触させて除去する方法。この方法では、酸性付着物を、装置器材を腐食させることなく、短時間で効率良くかつ簡便、安全に除去することができる。
【0005】
特許文献3:熱交換器の管群に沿って配置されるビームと該ビームに沿って移動可能な台車と台車に支持されたランスとを備え、該ランスの両側に設けられた噴出口から水を噴出させる洗浄装置。この装置によれば、熱交換器の管群を効率良く洗浄することができる。
【0006】
特許文献4:垂直に配列された複数のフィン付伝熱管の排熱回収系において、フィン付伝熱管のフィン間に付着堆積した硫酸塩(特にアンモニウム塩)系化合物及びダストを水洗除去する洗浄方法。垂直に配列されたフィン付伝熱管群の上部に、洗浄水スプレーパイプを水平に配設し、洗浄水がフィン表面を伝ってフィンとフィンの隙間部に向って伝いながら流下する表面流を形成することにより、フィン付伝熱管のフィン間に堆積された堆積物を除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−7360号公報
【特許文献2】特開2001−348689号公報
【特許文献3】特開2001−12894号公報
【特許文献4】特開平7−77304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1〜4の方法では、以下のような問題がある。
【0009】
特許文献1では、薬品洗浄前に散水による水洗を実施しており、水洗水量が多くなる。更に、薬品を用いることで費用が掛るとともに排水処理の問題が生じる。
【0010】
特許文献2のアルカリ金属の炭酸塩もしくは炭酸水素塩を用いた洗浄では、pHを上げることにより腐食を抑制した状態で水洗を実施している。この方法は、水溶性を有するスケールに対しては有効であるが、錆などの非水溶性のスケールに対しては除去効果が期待できない。
【0011】
特許文献3の高圧噴出水でスケールを除去する方法では、装置を設置できる場所の近傍では洗浄効果が期待できるが、それ以外の部分や高圧噴出水の威力が届かない部分には洗浄効果は期待できない。
【0012】
特許文献4の縦型フィン付伝熱管のスケール除去方法では、水溶性の硫酸塩(特にアンモニウム塩)及びそれに包括されているダスト類は洗い流せると考えられるが、管材に付着している非水溶性の錆などの除去には殆んど効果が無い。
【0013】
本発明は、上記従来の問題点を解決し、排熱回収ボイラの伝熱管外面、ボイラ燃焼ガスが接触する水壁管、過熱器管、節炭器管、エアヒーター、電気集塵機等に付着した硫黄酸化物スケールと、錆などの非水溶性のスケールとを効率的に除去することができるボイラ設備のスケール除去方法と、そのための洗浄装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下の知見を得た。
(1) ボイラ設備で付着する硫黄酸化物スケールの主成分は硫酸塩(特にアンモニウム塩)であり、水溶性を示す。従って、硫黄酸化物スケールは水洗により除去することができるが、錆など管材に付着している非水溶性のスケールはこの水洗では除去できない。
(2) しかし、硫黄酸化物スケールを水洗するとこれが溶解して水洗水のpHは酸性となる。
(3) その酸性になった水洗水を用いて循環洗浄処理することにより、錆などの非水溶性スケールを酸性の水洗水で溶解させて、或いは剥離・脱落を促進させて除去することができる。
【0015】
本発明はこのような知見に基づいて達成されたものであり、以下を要旨とする。
【0016】
[1] ボイラ設備に付着した硫黄酸化物スケールと非水溶性のスケールとを除去する方法であって、該ボイラ設備を水洗して硫黄酸化物スケールをする第1工程と、該第1工程で使用した水洗水を循環水洗水として循環洗浄する第2工程とを有することを特徴とするボイラ設備のスケール除去方法。
【0017】
[2] [1]において、前記第2工程における前記循環水洗水のpHが4以下であることを特徴とするボイラ設備のスケール除去方法。
【0018】
[3] [1]又は[2]において、前記第2工程において、前記第1工程で使用した水洗水を固液分離し、分離水を前記循環水洗水とすることを特徴とするボイラ設備のスケール除去方法。
【0019】
[4] [1]ないし[3]のいずれかにおいて、前記第2工程後に、新規の水洗水を用いて一過式で前記ボイラ設備を水洗する第3工程を行うことを特徴とするボイラ設備のスケール除去方法。
【0020】
[5] [1]ないし[4]のいずれかにおいて、前記循環水洗水のpHを測定し、該測定値に基づいて、スケールの除去状況を把握することを特徴とするボイラ設備のスケール除去方法。
【0021】
[6] ボイラ設備に付着した硫黄酸化物スケールと非水溶性のスケールとを除去する洗浄装置であって、該ボイラ設備の上部及び/又は側部に設けられる、該ボイラ設備に水洗水を散布又は噴射する水洗手段と、該ボイラ設備の下部に設けられる、該ボイラ設備から流下ないし落下する水洗水を受ける受槽と、該受槽内の水を循環水洗水として前記水洗手段に循環する循環手段とを有することを特徴とするボイラ設備の洗浄装置。
【0022】
[7] [6]において、前記循環手段は、前記受槽内の水が導入される循環タンクと、該受槽内の水を該循環タンクに導入する第1の循環配管と、該循環タンク内の水を前記水洗手段に送給する循環ポンプを有する第2の循環配管とを備えることを特徴とするボイラ設備の洗浄装置。
【0023】
[8] [7]において、前記第1の循環配管又は第2の循環配管にスケール分離装置が設けられていることを特徴とするボイラ設備の洗浄装置。
【0024】
[9] [6]ないし[8]のいずれかにおいて、前記水洗手段に系外から新規の水洗水を導入する導入手段と、前記受槽内の水を系外へ排水する排出手段とを備えることを特徴とするボイラ設備の洗浄装置。
【0025】
[10] [1]ないし[5]のいずれかにおいて、[6]ないし[9]のいずれかに記載のボイラ設備の洗浄装置をボイラ設備に取り付けて、前記第1工程と第2工程を行うことを特徴とするボイラ設備のスケール除去方法。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、ボイラ設備に付着した硫黄酸化物スケールのみならず、錆等の非水溶性のスケールをも、薬液を用いることなく、複雑な洗浄装置を必要とすることなく、また、洗浄部位に制約を受けることなく、水洗水を循環させるだけで、効率的に除去することができる。
【0027】
本発明によれば、ボイラ設備の排熱回収ボイラの伝熱管外面やボイラ燃焼ガスが接触する水壁管、過熱器管、節炭器管、エアヒーター、電気集塵機等に付着した硫黄酸化物スケールと、錆などの非水溶性のスケールを効率的に除去して、運転差圧、熱効率などを効果的に回復させることができ、ボイラ設備の安定運転を長期に亘って継続することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明のボイラ設備の洗浄装置を取り付けたボイラ設備の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0030】
[ボイラ設備のスケール除去方法]
本発明のボイラ設備のスケール除去方法では、硫黄酸化物スケールと錆等の非水溶性のスケールとが付着したボイラ設備を水洗して硫黄酸化物スケールを除去する第1工程と、この第1工程で使用した水洗水を循環水洗水として循環洗浄する第2工程とを行い、好ましくは、更に、第2工程後に、新規の水洗水を用いて一過式でボイラ設備を水洗する第3工程を行うが、第1工程の初期水洗水はスケール起因の汚れが非常に激しい場合があるので若干量排出してから第2工程の循環洗浄に移行するのが効果的である。
【0031】
前述の通り、硫黄酸化物スケールは硫酸塩(特にアンモニウム塩)を主成分とし、水溶性であり、かつ酸性であるため、水洗により溶解した硫黄酸化物を含む水はpH酸性となる。水洗に用いた水洗水を集水して循環洗浄を行うと、硫黄酸化物スケールが水洗水中に溶出することで、この循環水洗水のpHは、pH1〜4程度となる。このpH4以下、好ましくはpH2〜3のpH酸性の循環水洗水で更に循環洗浄を行うと、錆等の非水溶性のスケールも溶解除去されたり、剥離・脱落が促進されて除去されるようになる。
【0032】
この第1工程及び第2工程においては、酸性の循環水洗水で洗浄が行われることから、洗浄対象の構成材料の腐食を抑制するために、循環水洗水に腐食抑制剤を添加してもよい。
【0033】
本発明において、スケール除去の進捗状況、例えば、硫黄酸化物スケールを除去する第1工程から、その後の循環洗浄で錆等の非水溶性のスケールを除去する第2工程への移行時期は、循環水洗水のpHを測定することにより把握することができる。即ち、循環水洗水のpHが低下しているときは硫黄酸化物スケールが溶解除去される第1工程であり、硫黄酸化物スケールの溶出量に応じてpHが低下する。このpHが下げ止まり、pHが一定又は上昇傾向を示すようになったときは、硫黄酸化物スケールの溶解が終了し、非水溶性のスケールが溶解ないしは剥離・脱落している第2工程である。第2工程は、循環水洗水のpHが下げ止まったときに終了しても良いが、その後、更に1〜2時間程度行うことが好ましい。
【0034】
また、スケール除去の進捗状況は、循環水洗水中の懸濁物質(例えば後述の本発明の洗浄装置における受槽における沈積物)や循環水洗水の硫酸イオン濃度を分析することにより把握することもできる。
【0035】
このようにして、第1工程及び第2工程を行った後は、系内を一過式で水洗して、酸性の循環水洗水で循環洗浄することで酸性となった系内の水を系外へ排出する第3工程を行うことが好ましい。この第3工程では、酸性の循環水洗水により剥離したスケールや浮き上ったスケールを系外に排出すると共に、系内を中性に戻し、洗浄対象の腐食を防止することができる。
【0036】
この第3工程は、排水のpHが中性(例えばpH5.0〜7.0程度)になるまで行うことが好ましい。この第3工程の終了時期は、排水のpHを測定し、その測定値から把握することができる。
【0037】
また、この第3工程において、或いは第3工程後に更に防錆剤や中和剤などを洗浄対象に散布して発錆や腐食等を抑制するようにしてもよい。
また、この防錆ないし腐食抑制のための処理に先立ち、洗浄対象の更なる清浄化を図るために、ブラシ洗浄や高圧水洗浄を実施することも好ましい。
【0038】
本発明において、洗浄対象の水洗は、洗浄対象に水洗水を散布することにより行ってもよく、水洗水を高圧で噴き付けることにより行ってもよい。また、水洗水を循環する際は、剥離された非水溶性のスケール等のSSを沈降分離や、スケール除去装置又はフィルターなどで除去した後循環することが好ましい。
【0039】
本発明のボイラ設備のスケール除去方法は、好ましくは、以下に説明する本発明のボイラ設備の洗浄設備を用いて実施される。
【0040】
本発明で洗浄対象(スケール除去対象)となるボイラ設備としては、硫黄酸化物スケールと錆等の非水溶性のスケールが付着するボイラ設備であればよく、特に制限はなく、排熱回収ボイラの伝熱管外面、ボイラ燃焼ガスが接触する水壁管、過熱器管、節炭器管、エアヒーター、電気集塵機等が挙げられる。
【0041】
水洗水としては、純水、工水、市水等が挙げられるが、通常工水が用いられる。
【0042】
水洗水に腐食抑制剤を添加する場合、腐食抑制剤としては、従来公知のものをいずれも用いることができ、具体的には、朝日化学工業(株)のイビット2Sもしくはイビット30ARなどを適用することができ、洗浄対象の水洗水の性状に合わせて種類を選定する。腐食抑制剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
水洗水中の腐食抑制剤の濃度は、腐食抑制剤による基材の腐食抑制効果を十分に得た上で、発泡による障害や排水処理コストを抑える観点から、0.03〜0.5重量%とすることが好ましい。
【0043】
[ボイラ設備の洗浄装置]
以下に、図1を参照して本発明のボイラ設備の洗浄装置について説明する。図1は、本発明の洗浄装置を取り付けたボイラ設備の模式図である。
【0044】
図1に示すボイラ設備の洗浄装置は、ボイラ設備の伝熱管等の洗浄対象1に水洗水を散布又は噴射するための水洗手段であるスプレーヘッダ2と、スプレーヘッダ2から洗浄対象1に散水され洗浄対象1を水洗して流下ないし落下してくる水洗水を受ける受槽3と、受槽3内の水を循環水洗水としてスプレーヘッダ2に循環するための循環手段を有するものであり、図1に示す洗浄装置の循環手段は、受槽3内の水を送り出すための移送ポンプPと、移送ポンプPからの水を循環タンク4に移送する配管11,12(第1の循環配管)と、循環タンク4内の水をスプレーヘッダ2に循環するための循環ポンプPと、配管13,14,15(第2の循環配管)とからなり、配管13と14との間にスケール分離装置5が設けられている。
配管11と12の接続部には、受槽3内の水を系外へ排出するための配管17が設けられている。
また、配管14と15の接続部には、系外から新水を導入するための配管16が設けられている。
排水排出配管17の代りに或いは配管17と共に循環配管13の循環ポンプPの吐出側に排水排出配管17Aを設けてもよい。また、新水導入配管16の代りに或いは配管16と共に循環配管13の循環ポンプPの吸込側に新水導入配管16Aを設けてもよい。
【0045】
ボイラ設備の洗浄に際しては、ボイラ設備の洗浄対象1の上方に、図1のようにスプレーヘッダ2を設置すると共に下方に受槽3を設置し、これらを循環手段である配管類やタンク、循環ポンプ等で接続して、スプレーヘッダ2から水洗水を洗浄対象1に散水し、後述のように循環洗浄を行う。
【0046】
なお、図1は、本発明のボイラ設備の洗浄装置の実施の形態の一例を示すものであり、本発明の洗浄装置は何ら図1に示すものに限定されない。
例えば、図1では、スプレーヘッダ2が洗浄対象1の上方に設けられているが、スプレーヘッダ2は洗浄対象1の側方に設けて、洗浄対象1の側部に水洗水を散布又は噴出してもよく、スプレーヘッダ2は洗浄対象1の上方と側方の両方に設けてもよい。
また、非水溶性スケールの沈降性が良ければ循環タンク4、受槽3がスケールの分離装置を兼ねるため、スケール分離装置5は必ずしも必要とされない。即ち、受槽3および循環タンク4で十分にスラッジが沈降し、固液分離される場合はスケール分離装置5を省くことができる。
【0047】
図1において、スプレーヘッダ2から洗浄対象1に散水された水洗水は、洗浄対象1を水洗した後受槽3に集水される。受槽3内の水は移送ポンプPにより配管11,12を経て循環タンク4に移送された後、循環ポンプPにより配管13から、循環水洗水として、スケール分離装置5でスケールが分離除去された後配管14,15を経てスプレーヘッダ2に循環され、洗浄対象1に対して再び散水される。なお、受槽3内では、滞留中に水洗水中のスケール等SSが沈降分離される。
【0048】
本発明のボイラ設備のスケール除去方法を実施するには、配管16,15もしくは配管16Aから循環ポンプPを経て新規の水洗水を所定量系外から導入し、スプレーヘッダ2から散水した後上述の循環経路で循環洗浄して硫黄酸化物スケールを溶解除去する第1工程を行った後、循環水洗水のpHが4以下、好ましくは3以下になった後も、更に循環洗浄して錆等の非水溶性のスケールを除去する第2の工程を行うことで実施することができる。なお、前述の通り、第1工程の初期水洗水はスケール起因の汚れが非常に激しい場合があるので若干量排出してから第2工程の循環洗浄に移行するのが効果的である。
【0049】
その際、受槽3や循環タンク4に流れ込む水洗水のスラッジ量を目視確認したり、さらに循環タンク4や循環配管12〜14等の循環水洗水のpHを測定することにより、洗浄の進捗状況を把握することができる。
【0050】
第2工程の循環洗浄を終了した後は、好ましくは再び配管16,15もしくは配管16Aから循環ポンプPを経て新規の水洗水を導入してスプレーヘッダ2から洗浄対象1に散水し、受槽3に集水した水をポンプPにより配管11,17又は17Aを経て系外へ排出する一過式洗浄を行う第3工程を行う。
この第2工程から第3工程への移行及び第3工程の終了の際も、受槽3や配管11,17等内の水のpHの測定結果に基づいて移行、終了を判断することができる。
【0051】
洗浄装置付ボイラ設備の系統にpH計を設置すると、新水の導入や、水洗水の循環、排出を、このpH計の測定値に基づいて、配管に設けたバルブの開閉やポンプP,Pの作動を制御する制御手段によって、人手を要することなく自動にて行うこともできる。
【実施例】
【0052】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0053】
[実施例1]
図1の洗浄装置付ボイラ設備で排熱回収ボイラの伝熱管外面のスケールを、本発明に従って洗浄除去した。
具体的には次の(1)〜(3)の手順で洗浄を行った。
(1) 洗浄対象を5分割して、1ヶ所当たり水洗水を110m/hの流量で、スプレーヘッダ2より伝熱管群1の上部から15分散水して硫黄酸化物スケールを水洗により溶解除去し、初期水洗水を連続的に系外に排出後、受槽3、循環タンク4を介して循環ポンプPで循環洗浄した。
(2) 循環洗浄開始後のpHは2.2〜2.5であったが、1.5時間後には循環水のpHは2.7〜3.5まで上昇した。また、循環洗浄開始時の液中のスラッジ量は約5,000mg/Lであったのが終了直前には約2,000mg/Lまで低下したので、非水溶性スケールの除去が進み、終了直前には非水溶性のスケール量が少なくなっていることが確認された。
(3) 循環洗浄終了後、一過式水洗に切り換えて1時間水洗を実施し、排出される水洗水のpHが5以上になるまで水洗することで、一連の洗浄処理を終了した。
【0054】
このようなスケール除去処理を1年に1回の頻度で実施したときの排熱回収ボイラのチューブ差圧(運転差圧)の変化と、排ガス温度(排気温度)の変化を調べ、結果を表1に示した。
【0055】
[比較例1]
実施例1において、洗浄対象を5分割して、1ヶ所当たり水洗水を110m/hの流量で伝熱管群1の上部から散水する洗浄を1.5時間行った。
このようなスケール除去処理を1年に1回の頻度で実施したときの排熱回収ボイラのチューブ差圧(運転差圧)の変化と、排ガス温度(排気温度)の変化を調べ、結果を表1に示した。
【0056】
【表1】
【0057】
表1より明らかなように、従来法(比較例1)ではチューブ差圧は上昇傾向を示していたが、本発明法を採用した実施例1では、チューブ差圧が低下傾向となり、差圧に関しては問題なく運用できる状態となった。なお、実施例1でチューブ差圧がむしろ低下したのは、これまで差圧が年々上昇傾向であったが循環洗浄の工程を入れることで、これまで除去されずに残留して蓄積していたスケールが除去されたため、差圧が減少傾向を示したことによると考えられる。
また、排ガス温度についても、実施例1では、比較例1に比べて上昇度合が少なく、スケールがより効果的に除去されることで、伝熱阻害が低減されて、排熱の回収効率が向上したことが分かる。
【符号の説明】
【0058】
1 洗浄対象部(伝熱管群)
2 スプレーヘッダ
3 受槽
4 循環タンク
図1