(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6939260
(24)【登録日】2021年9月6日
(45)【発行日】2021年9月22日
(54)【発明の名称】無線通信システム、無線通信方法および集中制御局
(51)【国際特許分類】
H04W 16/10 20090101AFI20210909BHJP
H04W 84/12 20090101ALI20210909BHJP
H04W 16/18 20090101ALI20210909BHJP
【FI】
H04W16/10
H04W84/12
H04W16/18
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-163782(P2017-163782)
(22)【出願日】2017年8月28日
(65)【公開番号】特開2019-41338(P2019-41338A)
(43)【公開日】2019年3月14日
【審査請求日】2019年9月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】特許業務法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若尾 佳佑
(72)【発明者】
【氏名】アベセカラ ヒランタ
(72)【発明者】
【氏名】鷹取 泰司
【審査官】
倉本 敦史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−106202(JP,A)
【文献】
特開2013−211609(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ配下の無線端末と無線通信を行う複数の無線基地局と、
前記複数の無線基地局または前記無線端末の周辺の環境情報および能力情報に応じて、各無線基地局の通信制御に用いる制御パラメータを制御する集中制御局と
を備えた無線通信システムであって、
前記複数の無線基地局および前記無線端末は、前記周辺の環境情報を取得して前記集中制御局に通知する環境情報通知手段を備え、
前記集中制御局は、
情報収集部を介して前記複数の無線基地局および前記無線端末から取得した前記環境情報を2分岐し、前記環境情報に応じた前記制御パラメータを生成する制御フローと、前記環境情報に紐付けて最適制御パラメータを管理する制御情報更新フローとにそれぞれ通知する情報処理部と、
前記制御フローは、
前記環境情報に帰属する分類情報を出力する情報分類部と、
前記情報分類部で分類された情報により、分類と最適制御パラメータとを紐付けたデータベースから紐付く前記最適制御パラメータを参照して出力する情報分類−最適制御パラメータ変換部と、
前記情報分類−最適制御パラメータ変換部より出力された前記最適制御パラメータを前記複数の無線基地局に対して割り当てる制御手段と
を備え、
前記制御情報更新フローは、
前記情報収集部で取得した全ての前記環境情報を記憶する情報記憶部と、
前記情報記憶部に記憶された前記環境情報をもとに、前記情報分類部の内部パラメータを調整し更新する情報分類器生成部と、
前記情報分類部の出力候補となる各分類に対して、最適化指標を最大とするような最適制御パラメータを算出し、分類と最適制御パラメータとを紐付けて前記データベースに格納する分類情報毎の最適制御パラメータ算出部と
を備え、
前記制御情報更新フローをバックグランドで動作させながら、前記制御フローが前記最適制御パラメータを前記複数の無線基地局に対して割り当てる
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信システムにおいて、
前記情報分類部は、前記情報処理部よりベクトル化された複数の環境情報と、前記情報分類器生成部で更新された前記内部パラメータに含まれる分類毎に用意されたベクトルとの間の距離を算出し、近い距離の分類を優先的に選出し任意の個数分出力する構成である ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項3】
請求項1に記載の無線通信システムにおいて、
前記情報分類−最適制御パラメータ変換部は、
入力された任意の個数の全ての分類情報に対し、同期した前記データベースを参照して紐付く最適制御パラメータを求め、その中から最も前記情報分類部にて前記環境情報と最近接の分類のものだけを出力する手段1と、
前記複数の最適制御パラメータについてのみ再度最適化指標を再計算し最大化するものを出力する手段2と、
前記手段1および前記手段2で優先度の高いものから順に任意の個数の最適制御パラメータをリスト化し出力する手段3と
を含むことを特徴とする無線通信システム。
【請求項4】
請求項1に記載の無線通信システムにおいて、
前記情報分類器生成部は、
前記情報分類部へ前記情報記憶部に記憶された全環境情報を同期する手段と、
クラスタリング処理により少数のクラスタパラメータを同期する手段と
を含むことを特徴とする無線通信システム。
【請求項5】
請求項1に記載の無線通信システムにおいて、
前記情報処理部は、前記環境情報を次元圧縮した特徴量ベクトルに変換して出力する手段を含む
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項6】
請求項1に記載の無線通信システムにおいて、
前記分類情報毎の最適制御パラメータ算出部は、
入力された前記情報記憶部に記憶される全環境情報に対する前記最適化指標を算出する手段1と、
各クラスタに対してその平均値に対する前記最適化指標を算出する手段2と、
各クラスタより環境情報を生成しそれに対する前記最適化指標を算出する手段3と、
前記各手段1,2,3に対して前記最適化指標を最大化する最適制御パラメータを算出する手段4と
を含むことを特徴とする無線通信システム。
【請求項7】
それぞれ配下の無線端末と無線通信を行う複数の無線基地局に接続される集中制御局が、前記複数の無線基地局または前記無線端末の周辺の環境情報および能力情報に応じて、各無線基地局の通信制御に用いる制御パラメータを制御する無線通信方法であって、
前記複数の無線基地局および前記無線端末は、前記周辺の環境情報を取得して前記集中制御局に通知する処理を行い、
前記集中制御局は、
前記複数の無線基地局および前記無線端末から取得した前記環境情報を2分岐し、前記環境情報に応じた前記制御パラメータを生成する制御フローと、前記環境情報に紐付けて最適制御パラメータを管理する制御情報更新フローとにそれぞれ通知する情報処理ステップと、
前記制御フローでは、
前記環境情報に帰属する分類情報を出力する情報分類ステップと、
前記情報分類ステップで分類された情報により、分類と最適制御パラメータとを紐付けたデータベースから紐付く前記最適制御パラメータを参照して出力する情報分類−最適制御パラメータ変換ステップと、
前記情報分類−最適制御パラメータ変換ステップより出力された前記最適制御パラメータを前記複数の無線基地局に対して割り当てる制御ステップと
を有し、
前記制御情報更新フローでは、
取得した全ての前記環境情報を記憶する情報記憶ステップと、
前記情報記憶ステップで記憶された前記環境情報をもとに、前記情報分類ステップの内部パラメータを調整し更新する情報分類器生成ステップと、
前記情報分類ステップの出力候補となる各分類に対して、最適化指標を最大とするような最適制御パラメータを算出し、分類と最適制御パラメータとを紐付けて前記データベースに格納する分類情報毎の最適制御パラメータ算出ステップと
を有し、
前記制御情報更新フローをバックグランドで動作させながら、前記制御フローで前記最適制御パラメータを前記複数の無線基地局に対して割り当てる
ことを特徴とする無線通信方法。
【請求項8】
それぞれ配下の無線端末と無線通信を行う複数の無線基地局と、
前記複数の無線基地局または前記無線端末の周辺の環境情報および能力情報を取得し、それに応じて各無線基地局の通信制御に用いる制御パラメータを制御する集中制御局と
を備えた無線通信システムの集中制御局であって、
情報収集部を介して前記複数の無線基地局および前記無線端末から取得した前記環境情報を2分岐し、前記環境情報に応じた前記制御パラメータを生成する制御フローと、前記環境情報に紐付けて最適制御パラメータを管理する制御情報更新フローとにそれぞれ通知する情報処理部と、
前記制御フローは、
前記環境情報に帰属する分類情報を出力する情報分類部と、
前記情報分類部で分類された情報により、分類と最適制御パラメータとを紐付けたデータベースから紐付く前記最適制御パラメータを参照して出力する情報分類−最適制御パラメータ変換部と、
前記情報分類−最適制御パラメータ変換部より出力された前記最適制御パラメータを前記複数の無線基地局に対して割り当てる制御手段と
を備え、
前記制御情報更新フローは、
前記情報収集部で取得した全ての前記環境情報を記憶する情報記憶部と、
前記情報記憶部に記憶された前記環境情報をもとに、前記情報分類部の内部パラメータを調整し更新する情報分類器生成部と、
前記情報分類部の出力候補となる各分類に対して、最適化指標を最大とするような最適制御パラメータを算出し、分類と最適制御パラメータとを紐付けて前記データベースに格納する分類情報毎の最適制御パラメータ算出部と
を備え、
前記制御情報更新フローをバックグランドで動作させながら、前記制御フローが前記最適制御パラメータを前記複数の無線基地局に対して割り当てる
ことを特徴とする集中制御局。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線LAN(Local Area Network)の稠密環境において、各無線局のCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)制御に起因するスループットの低下を改善する無線通信システム、無線通信方法および集中制御局に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ノートパソコンやスマートフォン等の持ち運び可能で高性能な無線端末の普及により企業や公共スペースだけではなく、一般家庭でもIEEE802.11標準規格の無線LANが広く使われるようになっている。IEEE802.11標準規格の無線LANには、 2.4GHz帯を用いるIEEE802.11b/g/n 規格の無線LANと、5GHz帯を用いるIEEE802.11a/n/ac規格の無線LANがある。
【0003】
IEEE802.11b規格やIEEE802.11g規格の無線LANでは、2400MHzから2483.5MHz間に5MHz間隔で13チャネルが用意されている。ただし、同一場所で複数のチャネルを使用する際は、干渉を避けるためスペクトルが重ならないようにチャネルを使用すると最大で3チャネル、場合によっては4チャネルまで同時に使用できる。
【0004】
IEEE802.11a規格の無線LANでは、日本の場合は、5170MHzから5330MHz間と、5490MHzから5710MHz間で、それぞれ互いに重ならない8チャネルおよび11チャネルの合計19チャネルが規定されている。なお、IEEE802.11a規格では、チャネル当たりの帯域幅が20MHzに固定されている。
【0005】
無線LANの最大伝送速度は、IEEE802.11b規格の場合は11Mbps であり、IEEE802.11a規格やIEEE802.11g規格の場合は54Mbps である。ただし、ここでの伝送速度は物理レイヤ上での伝送速度である。実際にはMAC(Medium Access Control )レイヤでの伝送効率が50〜70%程度であるため、実際のスループットの上限値はIEEE802.11b規格では5Mbps 程度、IEEE802.11a規格やIEEE802.11g規格では30Mbps 程度である。また、伝送速度は、情報を送信しようとする通信局が増えればさらに低下する。
【0006】
一方で、有線LANでは、Ethernet(登録商標)の100Base-T インタフェースをはじめ、各家庭にも光ファイバを用いたFTTH(Fiber to the home)の普及から、 100Mbps 〜1Gbps 級の高速回線の提供が普及しており、無線LANにおいても更なる伝送速度の高速化が求められている。
【0007】
そのため、2009年に標準化が完了したIEEE802.11n規格では、これまで20MHzと固定されていたチャネル帯域幅が最大で40MHzに拡大され、また、空間多重送信技術(MIMO:Multiple input multiple output)技術の導入が決定された。IEEE802.11n規格で規定されているすべての機能を適用して送受信を行うと、物理レイヤでは最大で 600Mbps の通信速度を実現可能である。
【0008】
さらに、2013年に標準化が完了したIEEE802.11ac規格では、チャネル帯域幅を80MHzや最大で 160MHzまで拡大することや、空間分割多元接続(SDMA:Space Division Multiple Access)を適用したマルチユーザMIMO(MU−MIMO)送信方法の導入が決定している(例えば、非特許文献1参照)。IEEE802.11ac規格で規定されているすべての機能を適用して送受信を行うと、物理レイヤでは最大で約 6.9Gbps の通信速度を実現可能である。
【0009】
ただし、IEEE802.11ac規格においてチャネル帯域幅を40MHz、80MHz、 160MHzと広くする場合、5GHz帯において同一場所で同時に使えるチャネル数は、チャネル帯域幅が20MHzで19チャネルだったものが、9チャネル、4チャネル、2チャネルと少なくなる。すなわち、チャネル帯域幅が増加するにつれて、使えるチャネル数が低減することになる。
【0010】
このように、同一場所で同時に使えるチャネル数は、通信に用いるチャネル帯域幅によって、 2.4GHz帯の無線LANでは3つ、5GHz帯の無線LANでは2つ,4つ,9つ,または19のチャネルになるので、実際に無線LANを導入する際には無線基地局(アクセスポイント:AP)が自セル(BSS:Basic Service Set )内で使用するチャネルを選択する必要がある。
【0011】
ここで、使用可能なチャネル数よりもBSS数が多い無線LANの稠密環境では、複数のBSSが同一チャネルを使うことになる(OBSS:Overlapping BSS )。その場合、同一チャネルを使用するBSS間の干渉の影響により、当該BSSおよびシステム全体のスループットが低下することになる。そのため無線LANでは、CSMA/CAを用いて、キャリアセンスによりチャネルが空いているときにのみデータの送信を行う自律分散的なアクセス制御が使われている。
【0012】
具体的には、送信要求が発生した通信局は、まず所定のセンシング期間(DIFS:Distributed Inter-Frame Space )だけキャリアセンスを行って無線媒体の状態を監視し、この間に他の通信局による送信信号が存在しなければ、ランダム・バックオフを行う。通信局は、引き続きランダム・バックオフ期間中もキャリアセンスを行うが、この間にも他の通信局による送信信号が存在しない場合に、チャネルの利用権(TXOP:Transmission Opportunity)を得る。チャネルの利用権を得た通信局(TXOP Holder )は、同一BSS内の他の通信局にデータを送信し、またそれらの通信局からデータを受信できる。このようなCSMA/CA制御を行う場合、同一チャネルを使用する無線LANの稠密環境では、キャリアセンスによりチャネルがビジーになる頻度が高くなるため、送信機会(チャネルの利用権を得る機会)が低下し、スループットが低下することになる。したがって、周辺環境をモニタリングし、適切なチャネルを選択することが重要になる。
【0013】
無線基地局におけるチャネルの選択方法は、IEEE802.11標準規格で定まっていないため、各ベンダーが独自の方法を採用しているが、最も一般的なチャネル選択方法としては、干渉電力の最も少ないチャネルを自律分散的に選択する方法がある。無線基地局は、一定期間すべてのチャネルについてキャリアセンスして最も干渉電力が小さいチャネルを選択し、選択したチャネル上で配下の端末装置とデータの送受信を行う。なお、干渉電力とは、近隣BSSや他システムから受信する信号のレベルであり、例えば、受信信号強度(RSSI:Received Signal Strength Indicator)により測定することができる。
【0014】
ここで、無線基地局においてキャリアセンスを行うに当たり、受信信号強度(RSSI)を用いてチャネル使用状況を判断するCCA(Clear Channel Assessment)閾値が設定されている。例えばIEEE802.11規格では、2つのCCA閾値が規定されている。1つは、キャリアセンスして受信する無線フレームのプリアンブルを検出できた場合に用いるCCA−SD(Signal Detection)閾値であり、もう1つは、キャリアセンスして受信する受信信号において、無線LAN信号のプリアンブルを検出できなかった場合に用いるCCA−ED(Energy Detection)閾値である。IEEE802.11a規格では、CCA−SD閾値は−82dBmに設定され、CCA−ED閾値は−62dBmに設定される。
【0015】
キャリアセンスにより、RSSIがCCA−SD閾値以上で、かつ無線LAN信号のプリアンブルを検出した場合は、そのチャネルはビジー(通信不可)と判定する。また、キャリアセンスにより無線LAN信号のプリアンブルを検出できない場合でも、RSSIがCCA−ED閾値以上の場合は、近隣BSSや他システムからの干渉波と見なしてそのチャネルはビジー(通信不可)と判定する。それ以外の場合は、チャネルがアイドル(通信可)と判定する。
【0016】
また、IEEE802.11標準規格では、BSS周辺の無線状況が変化した場合におけるチャネルの変更手順が規定されているが、基本的に、レーダ検出などによる強制移行以外は、一度選択したチャネルの再選択を行っていない。すなわち、現状無線LANでは、無線状況の変化に応じたチャネルの最適化は行われていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】IEEE 802.11ac Standard, December 2013.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
近年の、トラヒックの急増や、無線基地局および無線端末の高密度化によりBSS間の干渉が深刻化している。これに対し、集中制御局を用いて周波数チャネルの割当や無線の強度指向性の制御、制御フレームの使用判断を集中制御によって設定することで一定の効果が得られることがわかっており、処理の高速化により制御の幅を拡げてゆくことが期待される。しかし、従来システムでは繰返し計算が必要であるため計算負荷が高く、無線局台数と制御パラメータの増加に伴い上記の傾向がより顕著化してゆくため、速い制御へ追随するのが困難であるという課題があった。
【0019】
本発明は、無線LANの稠密環境において、無線基地局および無線端末のスループットの改善およびシステム全体のスループットの改善ができる無線通信システム、無線通信方法および集中制御局を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
第1の発明は、それぞれ配下の無線端末と無線通信を行う複数の無線基地局と、複数の無線基地局または無線端末の周辺の環境情報および能力情報に応じて、各無線基地局の通信制御に用いる制御パラメータを制御する集中制御局とを備えた無線通信システムであって、複数の無線基地局および無線端末は、周辺の環境情報を取得して集中制御局に通知する環境情報通知手段を備え、集中制御局は、情報収集部を介して複数の無線基地局および無線端末から取得した環境情報を
2分岐し、環境情報に応じた制御パラメータを生成する制御フローと、環境情報に紐付けて最適制御パラメータを管理する制御情報更新フロー
とにそれぞれ通知する情報処理部と、制御フロー
は、環境情報に帰属する分類情報を出力する情報分類部と、情報分類部で分類された情報により、
分類と最適制御パラメータとを紐付けたデータベースから紐付く最適制御パラメータを参照して出力する情報分類−最適制御パラメータ変換部と、情報分類−最適制御パラメータ変換部より出力された最適制御パラメータを複数の無線基地局に対して割り当てる制御手段とを備え
、制御情報更新フローは、情報収集部で取得した全ての環境情報を記憶する情報記憶部と、情報記憶部に記憶された環境情報をもとに、情報分類部の内部パラメータを調整し更新する情報分類器生成部と、情報分類部の出力候補となる各分類に対して、最適化指標を最大とするような最適制御パラメータを算出し、分類と最適制御パラメータとを紐付けてデータベースに格納する分類情報毎の最適制御パラメータ算出部とを備え、制御情報更新フローをバックグランドで動作させながら、制御フローが最適制御パラメータを複数の無線基地局に対して割り当てる。
【0021】
第1の発明の無線通信システムにおいて、情報分類部は、情報処理部よりベクトル化された複数の環境情報と、情報分類器生成部で更新された内部パラメータに含まれる分類毎に用意されたベクトルとの間の距離を算出し、近い距離の分類を優先的に選出し任意の個数分出力する構成である。
【0022】
第1の発明の無線通信システムにおいて、情報分類−最適制御パラメータ変換部は、入力された任意の個数の全ての分類情報に対し、同期したデータベースを参照して紐付く最適制御パラメータを求め、その中から最も情報分類部にて環境情報と最近接の分類のものだけを出力する手段1と、複数の最適制御パラメータについてのみ再度最適化指標を再計算し最大化するものを出力する手段2と、手段1および手段2で優先度の高いものから順に任意の個数の最適制御パラメータをリスト化し出力する手段3とを含む。
【0023】
第1の発明の無線通信システムにおいて、情報分類器生成部は、情報分類部へ情報記憶部に記憶された全環境情報を同期する手段と、クラスタリング処理により少数のクラスタパラメータを同期する手段とを含む。
【0024】
第1の発明の無線通信システムにおいて、情報処理部は、環境情報を次元圧縮した特徴量ベクトルに変換して出力する手段を含む。
【0025】
第1の発明の無線通信システムにおいて、分類情報毎の最適制御パラメータ算出部は、入力された情報記憶部に記憶される全環境情報に対する最適化指標を算出する手段1と、各クラスタに対してその平均値に対する最適化指標を算出する手段2と、各クラスタより環境情報を生成しそれに対する最適化指標を算出する手段3と、各手段1,2,3に対して最適化指標を最大化する最適制御パラメータを算出する手段4とを含む。
【0026】
第2の発明は、それぞれ配下の無線端末と無線通信を行う複数の無線基地局に接続される集中制御局が、複数の無線基地局または無線端末の周辺の環境情報および能力情報に応じて、各無線基地局の通信制御に用いる制御パラメータを制御する無線通信方法であって、複数の無線基地局および無線端末は、周辺の環境情報を取得して集中制御局に通知する処理を行い、集中制御局は、複数の無線基地局および無線端末から取得した環境情報を
2分岐し、環境情報に応じた制御パラメータを生成する制御フローと、環境情報に紐付けて最適制御パラメータを管理する制御情報更新フロー
とにそれぞれ通知する情報処理ステップと、制御フロー
では、環境情報に帰属する分類情報を出力する情報分類ステップと、情報分類ステップで分類された情報により、
分類と最適制御パラメータとを紐付けたデータベースから紐付く最適制御パラメータを参照して出力する情報分類−最適制御パラメータ変換ステップと、情報分類−最適制御パラメータ変換ステップより出力された最適制御パラメータを複数の無線基地局に対して割り当てる制御ステップとを有し、
制御情報更新フローでは、取得した全ての環境情報を記憶する情報記憶ステップと、情報記憶ステップで記憶された環境情報をもとに、情報分類ステップの内部パラメータを調整し更新する情報分類器生成ステップと、情報分類ステップの出力候補となる各分類に対して、最適化指標を最大とするような最適制御パラメータを算出し、分類と最適制御パラメータとを紐付けてデータベースに格納する分類情報毎の最適制御パラメータ算出ステップとを有し、制御情報更新フローをバックグランドで動作させながら、制御フローで最適制御パラメータを複数の無線基地局に対して割り当てる。
【0027】
第3の発明は、それぞれ配下の無線端末と無線通信を行う複数の無線基地局と、複数の無線基地局または無線端末の周辺の環境情報および能力情報を取得し、それに応じて各無線基地局の通信制御に用いる制御パラメータを制御する集中制御局とを備えた無線通信システムの集中制御局であって、情報収集部を介して複数の無線基地局および無線端末から取得した環境情報を
2分岐し、環境情報に応じた制御パラメータを生成する制御フローと、環境情報に紐付けて最適制御パラメータを管理する制御情報更新フロー
とにそれぞれ通知する情報処理部と、制御フロー
は、環境情報に帰属する分類情報を出力する情報分類部と、情報分類部で分類された情報により、
分類と最適制御パラメータとを紐付けたデータベースから紐付く最適制御パラメータを参照して出力する情報分類−最適制御パラメータ変換部と、情報分類−最適制御パラメータ変換部より出力された最適制御パラメータを複数の無線基地局に対して割り当てる制御手段とを備え
、制御情報更新フローは、情報収集部で取得した全ての環境情報を記憶する情報記憶部と、情報記憶部に記憶された環境情報をもとに、情報分類部の内部パラメータを調整し更新する情報分類器生成部と、情報分類部の出力候補となる各分類に対して、最適化指標を最大とするような最適制御パラメータを算出し、分類と最適制御パラメータとを紐付けてデータベースに格納する分類情報毎の最適制御パラメータ算出部とを備え、制御情報更新フローをバックグランドで動作させながら、制御フローが最適制御パラメータを複数の無線基地局に対して割り当てる。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、制御フローにおいて、過去の環境情報−最適制御パラメータが紐付いたデータベースを参照するか、クラスタ分類器で環境情報を該当クラスタに分類し、該当クラスタ最適制御パラメータが紐付くデータベースを参照し、制御情報更新フローにおいて、データベースまたはクラスタ分類器を構成する内部パラメータの調整と該当クラスタ最適制御パラメータが紐付くデータベースを生成し、各々制御フローへ同期する。
【0029】
これにより、環境情報を取得するごとに最適制御パラメータを算出する必要がなくなり、最適制御パラメータの取得時間を短縮できるので、無線LANの稠密環境においても無線基地局および無線端末のスループットの改善およびシステム全体のスループットの改善ができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の無線通信システムの実施例構成を示す図である。
【
図2】本発明の無線通信システムにおける集中制御局1の構成例を示す図である。
【
図3】本発明の無線通信システムにおける無線基地局3の構成例を示す図である。
【
図4】本発明の無線通信システムにおける無線端末5の構成例を示す図である。
【
図5】本発明の無線通信システムにおける集中制御局1の制御例1を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の無線通信システムにおける集中制御局1の制御例2を示すフローチャートである。
【
図7】集中制御局1の制御例2の具体例を示すフローチャートである。
【
図8】本発明の無線通信システムにおける集中制御局1の制御例3を示すフローチャートである。
【
図9】集中制御局1の制御例3の具体例を示すフローチャートである。
【
図10】本発明の無線通信システムにおける集中制御局1の制御例4を示すフローチャートである。
【
図11】本発明の無線通信システムにおける集中制御局1の制御例5を示すフローチャートである。
【
図12】従来の制御例を示すフローチャートである。
【
図13】無線基地局APの送信電力とチャネル同時制御の計算機シミュレーションの諸元を示す図である。
【
図14】計算機シミュレーションの結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、本発明の無線通信システムの実施例構成を示す。
図1において、無線基地局(AP)3〜4は、それぞれ帰属する無線端末(STA)と無線通信を行う。ここでは、無線端末5〜6が無線基地局3に帰属している。無線基地局3〜4は、ネットワーク2を介して集中制御局1(制御エンジン) に接続される。集中制御局1は、無線基地局3〜4または無線端末5〜6から環境情報(無線環境情報,トラヒック情報,現設定情報)および能力情報を収集し、環境情報に基づいて同一周波数で同時送信が可能な複数の無線基地局の各種パラメータ組合せごとの予測性能を算出し、その見込みが最大となる制御パラメータを決定し、無線基地局3〜4および無線端末5〜6を制御する。これにより、従来のCSMA/CAによるアクセス制御と異なり、複数の無線基地局が同一周波数で同時送信する機会が増え、無線基地局および無線端末のスループットの改善およびシステム全体のスループットを改善することができる。ここで能力情報とは、各無線局の対応無線規格や接続可能端末台数を含む仕様に関する情報を含む情報を指す。
【0032】
また、環境情報には、配下の全無線基地局と全無線端末の間の無線信号強度情報、位置座標情報、トラヒック情報を含んでもよい。
【0033】
また、制御パラメータの最適化指標には、配下の全無線基地局と全無線端末の間の上下チャネル容量、上下総スループット、上下総遅延時間、上下総遅延揺らぎ、帰属端末台数を含んでもよい。
【0034】
また、制御パラメータには、配下の全無線基地局と全無線端末の間のチャネル、帯域幅、送信電力、受信電力閾値、送受信ウェイト、送受信アンテナ、RTS/CTSフレームの使用可否、フレームアグリゲーション数を含んでもよい。
【0035】
図2は、本発明の無線通信システムにおける集中制御局1の構成例を示す。
図2において、集中制御局1は、接続部101と、通信部102と、制御部103と、情報収集部104と、情報処理部105と、情報記憶部106と、情報分類部107と、情報分類器生成部108と、分類情報毎の最適制御パラメータ算出部109と、情報分類−最適制御パラメータ変換部110を備える。ここで分類情報とは、無線端末5〜6の配置パターンや使用されているアプリケーションの種類など、現在提供している無線通信システムの環境の特定と分類が可能な情報を指す。
【0036】
通信部102は、接続部101を介して無線基地局3〜4および無線端末5〜6と通信を行う。情報収集部104は、無線通信システム内に存在する制御対象の無線基地局3〜4または無線端末5〜6から、環境情報(無線環境情報,トラヒック情報,現設定情報)を収集する。情報処理部105は、環境情報のベクトル化や特徴量ベクトルへの変換処理、平均化処理、最新化などを行う。情報記憶部106は、情報処理部105が出力した環境情報を保持する。情報分類部107は、情報処理部105が出力した環境情報を参照し、それが帰属する分類情報を出力する。情報分類器生成部108は、情報記憶部106に記憶された環境情報をもとに情報分類部107のクラスタリング処理により少数のクラスタパラメータを調整し同期する。分類情報毎の最適制御パラメータ算出部109は、情報分類部107の出力候補となる各分類に対して、最適化指標を最大とするような最適制御パラメータを算出し、分類と最適制御パラメータを紐付けてデータベースを作成し、情報分類−最適制御パラメータ変換部110へ同期する。情報分類−最適制御パラメータ変換部110は、情報分類部107で分類された情報により、分類情報毎の最適制御パラメータ算出部109で作成されたデータベースから紐付く最適制御パラメータを参照して出力する。制御部103は、無線基地局3〜4および無線端末5〜6の各情報の収集、無線基地局3〜4の設定パラメータ値の算出を含む集中制御局1の動作を統括して制御する。
【0037】
図3は、本発明の無線通信システムにおける無線基地局3の構成例を示す。なお、無線基地局4も同様の構成である。
図3において、無線基地局3は、接続部31と、通信部32と、制御部33と、環境情報保持部34と、パラメータ設定部35と、アクセス権獲得部36と、無線通信部37と、アンテナ部38とを備える。
【0038】
通信部32は、接続部31を介してネットワーク2上の集中制御局1と通信を行う。環境情報保持部34は、定期的に無線基地局周辺をスキャンして取得した環境情報を保持する。ここで環境情報には、利用可能なそれぞれのチャネルにおいて存在する他の無線基地局の数および識別情報、他の無線基地局から受信するビーコンなどの信号のRSSIなどが含まれる。さらに、自セル内の端末装置数や各端末装置から受信する信号のRSSI、SINRなども含まれる。パラメータ設定部35は、集中制御局1より通知されたパラメータを設定する。アクセス権獲得部36は、CSMA/CAによるアクセス権を獲得する。無線通信部37は、パラメータ設定部35より設定されたパラメータを使用し、CSMA/CAによるアクセス権を獲得してアンテナ部38を介して帰属する端末装置と無線通信を行う。また、無線通信部37は、無線通信において利用可能なチャネルそれぞれに対して、予め定められた期間スキャンし、得られた周辺の環境情報を環境情報保持部34に出力する。制御部33は、無線基地局3の動作を統括して制御する。
【0039】
図4は、本発明の無線通信システムにおける無線端末5の構成例を示す。なお、無線端末6も同様の構成である。
図4において、無線端末5は、制御部51と、環境情報保持部52と、アクセス権獲得部53と、無線通信部54と、アンテナ部55とを備える。
【0040】
環境情報保持部52は、定期的に無線端末周辺をスキャンして取得した環境情報を保持する。ここで、環境情報には、利用可能なそれぞれのチャネルにおいて存在する他の無線基地局の数や識別情報、他の無線基地局から受信するビーコンなどの信号のRSSIなどが含まれる。さらに、帰属する無線基地局から受信する信号のRSSI、SINRなども含まれる。アクセス権獲得部53は、CSMA/CAによるアクセス権を獲得する。無線通信部54は、アンテナ部55を介して無線基地局と無線通信を行う。また、無線通信部54は、無線通信において利用可能なチャネルそれぞれに対して、予め定められた期間スキャンし、得られた周辺の環境情報を環境情報保持部52に出力する。制御部51は、無線端末5の動作を統括して制御する。
【0041】
(集中制御局の処理手順)
本発明の無線通信システムにおける集中制御局1の処理手順の概要は、
図1に示すように、集中制御局1は、接続している無線基地局3からの環境情報(無線環境情報,トラヒック情報,現設定情報)を収集し、
図2における構成により制御演算を行ったのち、制御指示を通知する手段を持つ。
【0042】
(集中制御局の処理手順)
図5は、本発明の無線通信システムにおける集中制御局1の制御例1を示す。
全体構成は、制御フローと制御情報更新フローとに2分化される。集中制御局1は環境情報を取得し(S10a)、取得した環境情報をこの2つのフローに入力する。制御情報更新フローは、後に制御フローで参照する、過去に取得した全ての環境情報とそれに紐付く最適制御パラメータの情報の全ての管理と算出を行い、適宜制御フローへ同期する。制御情報更新フローに入力した環境情報は、情報記憶部106へ記録する(S21a)。情報記憶部106には、同様に取得された過去の全ての環境情報が記録されている。次に、過去の全ての環境情報に対し、最適制御パラメータを算出し、対応する環境情報と紐付けてデータベースを作成し(S23a)、制御フローへ同期する。
【0043】
制御フローは、S10aで入力した環境情報と、過去に取得した全ての環境情報の間の距離を計算して最も近い環境情報に紐付けて管理される最適制御パラメータを参照し(S13a)、この最適制御パラメータを配信する(S15a)。
【0044】
図6は、本発明の無線通信システムにおける集中制御局1の制御例2を示す。
図5に示す制御例1からの変更点は、最適制御パラメータと紐付ける対象を環境情報から、同情報をもとに分類されるクラスタ情報としたことである。これにより、制御フローで参照する比較対象数が減るため、同フローでの処理が軽くなる。
【0045】
全体構成は、制御フローと制御情報更新フローとに2分化される。集中制御局1は環境情報を取得し(S10a)、取得した環境情報をこの2つのフローに入力する。制御情報更新フローは、後に制御フローで参照する、過去に取得した全ての環境情報とそれに紐付く最適制御パラメータの情報の全ての管理と算出を行い、適宜制御フローへ同期する。制御情報更新フローに入力した環境情報は、情報記憶部106へ記録する(S21a)。情報記憶部106には、同様に取得された過去の全ての環境情報が記録されている。次に、情報記憶部106の過去の全ての環境情報を用いて、クラスタ分類器を構成する内部パラメータを学習し同期する(S22a)。次に、クラスタ分類器の出力候補となる各クラスタに対し、最適制御パラメータを算出し、対応するクラスタと紐付けてデータベースを作成し(S23b)、制御フローへ同期する。
【0046】
制御フローは、S22aにおけるクラスタ分類器に環境情報を入力して該当クラスタへ帰属させ(S12a)、同クラスタに紐付けて管理される最適制御パラメータを参照し(S13b)、この最適制御パラメータを配信する(S15a)。
【0047】
図7は、集中制御局1の制御例2の具体例を示す。
ここでは、具体的な最適化指標と入出力情報の例として、最適化指標に無線システムのチャネル容量、入力情報に無線端末の位置情報、出力情報に最適チャネル・送信電力組合せ、を適用したものである。
【0048】
全体構成は、制御フローと制御情報更新フローとに2分化される。集中制御局1は無線端末の位置情報を取得し(S10a)、取得した無線端末の位置情報をこの2つのフローに入力する。制御情報更新フローは、後に制御フローで参照する、過去に取得した全ての無線端末の位置情報を用いて学習したクラスタ分類器とそれに紐付く最適チャネル・送信電力組合せの情報の全ての管理と算出を行い、適宜制御フローへ同期する。制御情報更新フローに入力した無線端末の位置情報は、情報記憶部106へ記録する(S21a)。情報記憶部106には、同様に取得された過去の全ての無線端末の位置情報が記録されている。次に、情報記憶部106の過去の全ての無線端末の位置情報を用いて、クラスタ分類器を構成する内部パラメータを学習し同期する(S22a)。次に、クラスタ分類器の出力候補となる各クラスタに対し、システムのチャネル容量を最大とする最適チャネル・送信電力組合せを算出し、対応するクラスタと紐付けてデータベースを作成し(S23b)、制御フローへ同期する。
【0049】
制御フローは、S22aにおけるクラスタ分類器に無線端末の位置情報を入力して該当クラスタへ帰属させ(S12a)、同クラスタに紐付けて管理される最適チャネル・送信電力組合せを参照し(S13b)、この最適チャネル・送信電力組合せを配信する(S15a)。
【0050】
図8は、本発明の無線通信システムにおける集中制御局1の制御例3を示す。
図6に示す制御例2からの変更点は、2つのフローへの入力を、環境情報の生データから特徴量ベクトルへ変換してから行うとしたことである。これにより、データ長の規格化や雑音となる要素の削減が可能となる。
【0051】
全体構成は、制御フローと制御情報更新フローとに2分化される。集中制御局1は環境情報を取得し(S10a)、取得した環境情報を特徴量ベクトルへ変換したのち(S11a)、この2つのフローに入力する。制御情報更新フローは、後に制御フローで参照する、過去に取得した全ての特徴量ベクトルを用いて学習されたクラスタ分類器とそれに紐付く最適制御パラメータの情報の全ての管理と算出を行い、適宜制御フローへ同期する。制御情報更新フローに入力した特徴量ベクトルは、情報記憶部106へ記録する(S21b)。情報記憶部106には、同様に取得された過去の全ての特徴量ベクトルが記録されている。次に、情報記憶部106の過去の全ての特徴量ベクトルを用いて、クラスタ分類器を構成する内部パラメータを学習し同期する(S22b)。次に、クラスタ分類器の出力候補となる各クラスタに対し、最適制御パラメータを算出し、対応するクラスタと紐付けてデータベースを作成し(S23b)、制御フローへ同期する。
【0052】
制御フローは、S22bにおけるクラスタ分類器に特徴量ベクトルを入力して該当クラスタへ帰属させ(S12b)、同クラスタに紐付けて管理される最適制御パラメータを参照し(S13b)、この最適制御パラメータを配信する(S15a)。
【0053】
図9は、集中制御局1の制御例3の具体例を示す。
ここでは、具体的な最適化指標と入出力情報の例として、最適化指標に無線システムのチャネル容量、入力情報に無線端末の位置情報、特徴量ベクトルとして無線端末の空間分布情報、出力情報に最適チャネル・送信電力組合せ、を適用したものである。
【0054】
全体構成は、制御フローと制御情報更新フローとに2分化される。集中制御局1は無線端末の位置情報を取得し(S10a)、取得した無線端末の位置情報を無線端末の空間分布情報へ変換したのち(S11a)、この2つのフローに入力する。制御情報更新フローは、後に制御フローで参照する、過去に取得した全ての無線端末の空間分布情報を用いて学習されたクラスタ分類器とそれに紐付く最適チャネル・送信電力組合せの情報の全ての管理と算出を行い、適宜制御フローへ同期する。制御情報更新フローに入力した無線端末の空間分布情報は、情報記憶部106へ記録する(S21b)。情報記憶部106には、同様に取得された過去の全ての無線端末の空間分布情報が記録されている。次に、情報記憶部106の過去の全ての無線端末の空間分布情報を用いて、クラスタ分類器を構成する内部パラメータを学習し同期する(S22b)。次に、クラスタ分類器の出力候補となる各クラスタに対し、最適チャネル・送信電力組合せを算出し、対応するクラスタと紐付けてデータベースを作成し(S23b)、制御フローへ同期する。
【0055】
制御フローは、S22bにおけるクラスタ分類器に無線端末の空間分布情報を入力して該当クラスタへ帰属させ(S12b)、同クラスタに紐付けて管理される最適チャネル・送信電力組合せを参照し(S13b)、この最適チャネル・送信電力組合せを配信する(S15a)。
【0056】
図10は、本発明の無線通信システムにおける集中制御局1の制御例4を示す。
図6に示す制御例2からの変更点は、クラスタ分類器より出力されるクラスタを任意の数だけ出力し、複数の各クラスタに紐付く最適制御パラメータにおける最適化指標を再度算出して、同指標を最適にするものを真の最適制御パラメータとして選出できるようにしたことである。これにより、環境情報にのる雑音により不適当なクラスタに分類されてしまう場合にも対処が可能となる。
【0057】
全体構成は、制御フローと制御情報更新フローとに2分化される。集中制御局1は環境情報を取得し(S10a)、取得した環境情報をこの2つのフローに入力する。制御情報更新フローは、後に制御フローで参照する、過去に取得した全ての環境情報を用いて学習されたクラスタ分類器とそれに紐付く最適制御パラメータの情報の全ての管理と算出を行い、適宜制御フローへ同期する。制御情報更新フローに入力した環境情報は、情報記憶部106へ記録する(S21a)。情報記憶部106には、同様に取得された過去の全ての環境情報が記録されている。次に、情報記憶部106の過去の全ての環境情報を用いて、クラスタ分類器を構成する内部パラメータを学習し同期する(S22a)。次に、クラスタ分類器の出力候補となる各クラスタに対し、最適制御パラメータを算出し、対応するクラスタと紐付けてデータベースを作成し(S23b)、制御フローへ同期する。
【0058】
制御フローは、S22aにおけるクラスタ分類器に入力する環境情報に近いものからクラスタをN個選択し(S12c)、N個のクラスタについて紐付けて管理される最適制御パラメータを参照する(S13b)。次に、N個のクラスタの最適制御パラメータ入力時の最適化指標を再計算し、最大化させる最適制御パラメータを真の最適制御パラメータとして選出し(S14a)、この最適制御パラメータを配信する(S15a)。
【0059】
図11は、本発明の無線通信システムにおける集中制御局1の制御例5を示す。
図10に示す制御例4からの変更点は、クラスタ分類器より出力されるクラスタを任意の数だけ出力して各クラスタに関する最適制御パラメータを参照した上で、それらをリスト化して配信することである。これにより、集中制御局から一意に設定パラメータを与えるのではなく、制約条件の中で配下の無線基地局と無線端末に裁量を持たせることができる。
【0060】
全体構成は、制御フローと制御情報更新フローとに2分化される。集中制御局1は環境情報を取得し(S10a)、取得した環境情報をこの2つのフローに入力する。制御情報更新フローは、
図11に示す制御例4と同様である。
【0061】
制御フローは、S22aにおけるクラスタ分類器に入力する環境情報に近いものからクラスタをN個選択し(S12c)、N個のクラスタについて紐付けて管理される最適制御パラメータを参照する(S13b)。次に、N個のクラスタの最適制御パラメータを使用可能な選択肢としてリスト化し(S14b)、この最適制御パラメータのリストを配信する(S15b)。
【0062】
図12は、従来の制御例を示す。
ここでは、
図5に示す本発明の無線通信システムにおける集中制御局1の制御例1と、
図12に示す従来の制御例とを対比して説明する。
【0063】
主な違いは、制御演算の中で最も計算負荷の高い最適化計算(S2 ,S21a)が、環境の変化に対して最適制御パラメータを算出し配信する制御フローに組み込まれているか否かである。従来の制御例では、S2 が制御フローに組み込まれていた。したがって、環境が変化するたびに高負荷の計算を実施するものであり、計算時間の短縮にも限界があるため、速い制御に不向きな構造となっている。
【0064】
一方で、本発明の制御例1では、S21aを制御フローから切り離してバックグランドで動作する制御情報更新フローに組み込んである。環境の変化に対し最適化計算を要さなくなるため、制御速度とは無関係になる。代わりに、想定される環境について、S23aにて最適化計算の結果を事前に算出しておき、制御フローでは、この最適化計算の結果の中から類似環境におけるものを分類アルゴリズム(
S13a)を利用して選択できるようにしておく。分類アルゴリズムは最適化計算と比較して軽負荷である。したがって、提案システムは課題であった環境変化への制御の追従に向いた構造となっている。
【0065】
本発明手法による効果の検証に用いた無線LANシステムの無線基地局APの送信電力とチャネル同時制御の計算機シミュレーションについて、
図13および
図14を参照して説明する。
【0066】
図13は、無線基地局APの送信電力とチャネル同時制御の計算機シミュレーションの諸元を示す。
中心座標の異なるガウス分布の端末密度関数を3種類用意し、各端末密度関数から 100パターンの端末配置を生成して、計 300パターンの端末配置を用意した。そのうち、ランダムに選択した 200パターンを用いてクラスタを分類するための分類器を学習させ、残りの 100パターンを性能評価に用いた。各端末配置における環境情報には、関数近似により算出した分布の中心座標と分散を用いた。各環境種別に紐づく制御パラメータは、その環境種別に属する端末密度関数から1パターンの端末配置を生成し、そのチャネル容量を目的関数とした最適化計算により算出した。最適化計算の終了は、最適化アルゴリズムの1つである、遺伝的アルゴリズム(GA)により制御パラメータの探索を実施し、計算が収束するまでとした。
【0067】
図14は、計算機シミュレーションの結果を示す。
図14(1) は、ある1パターンの評価用の端末配置について各手法で制御パラメータを選択し設定した時のチャネル容量の遷移である。横軸は制御パラメータの探索回数、縦軸がチャネル容量でGAの収束値で規格化してある。
【0068】
細実線は、ランダムに制御パラメータを探索させた時の最高値を示す。太実線は、GAで制御パラメータを探索させた時の最高値を示す。太点線は、クラスタ分類器で選択された制御パラメータを割り当てたときの値を示す。細点線は、他のクラスタの制御パラメータを割り当てたときの値を示す。従来手法は、制御パラメータ探索により最適解を求める実線にあたり、本発明手法は太点線にあたる。本発明手法により未知の端末配置に対して、探索をすることなく実線、特にGAと同等の結果が得られることがわかる。
【0069】
図14(2) は、 100パターンの評価用の端末配置について各手法で制御パラメータを選択し設定した時のチャネル容量の累積分布関数である。横軸の値は、各端末配置についてGAにより制御パラメータを算出した時の値で規格化してある。
【0070】
太実線は、環境種別の分類により過去に算出された1組の制御パラメータを選択した時の値を示す。細実線は、GAの収束回数と同じだけランダムに制御パラメータを探索させた時の最高値を示す。細点線は、1組の制御パラメータを選択した時の値を示す。本発明手法を用いれば、GAとおおよそ同等で、ランダムに探索し続けるよりも高品質な制御パラメータを1回の探索で選択できることがわかる。
【符号の説明】
【0071】
1 集中制御局
2 ネットワーク
3〜4 無線基地局
5〜6 無線端末
101 接続部
102 通信部
103 制御部
104 情報収集部
105 情報処理部
106 情報記憶部
107 情報分類部
108 情報分類器生成部
109 分類情報毎の最適制御パラメータ算出部
110 情報分類−最適制御パラメータ変換部
31 接続部
32 通信部
33 制御部
34 環境情報保持部
35 パラメータ設定部
36 アクセス権獲得部
37 無線通信部
38 アンテナ部
51 制御部
52 環境情報保持部
53 アクセス権獲得部
54 無線通信部
55 アンテナ部