特許第6939583号(P6939583)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6939583
(24)【登録日】2021年9月6日
(45)【発行日】2021年9月22日
(54)【発明の名称】樹脂成形体付きケーブルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/00 20060101AFI20210909BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20210909BHJP
   H02G 15/02 20060101ALI20210909BHJP
【FI】
   H01B7/00 306
   B29C45/14
   H02G15/02
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-2713(P2018-2713)
(22)【出願日】2018年1月11日
(65)【公開番号】特開2019-121576(P2019-121576A)
(43)【公開日】2019年7月22日
【審査請求日】2020年7月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】片岡 裕太
(72)【発明者】
【氏名】佐川 正憲
【審査官】 神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−227026(JP,A)
【文献】 特開2002−186129(JP,A)
【文献】 特表2000−508068(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/00
B29C 45/14
H02G 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルと、
ケーブル端部に接続された電子部品と、
前記ケーブル端部および前記電子部品を被覆する樹脂成形体と、を有し、
前記樹脂成形体は、
第1の樹脂材料によって成形され、前記ケーブル端部および前記電子部品が載置されるホルダ部材と、
前記第1の樹脂材料よりも融点が高い第2の樹脂材料によって成形され、前記ケーブル端部および前記電子部品を被覆するカバー部材と、から形成され、
前記カバー部材は、前記ケーブル端部および前記電子部品に加えて、前記ホルダ部材の一部を被覆しており、
前記ホルダ部材と前記カバー部材との界面は、前記カバー部材が成形される際の熱により溶着しており
前記ケーブルは、絶縁電線および前記絶縁電線の周囲に設けられたシースを有し、
前記カバー部材は、前記シース全周と溶着しているとともに、前記ホルダ部材の後端面と溶着している
樹脂成形体付きケーブルの製造方法
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂成形体付きケーブルの製造方法において、
記ホルダ部材は、前記ケーブルの端部が収容されるシース収容部と、前記シースの前記端部から突出している前記絶縁電線の被覆部分が載せられるステージと、前記被覆部分から突出している前記絶縁電線の導体部分が収容される導体収容部と、前記電子部品が収容される電子部品収容部と、を有する、
樹脂成形体付きケーブルの製造方法
【請求項3】
請求項2に記載の樹脂成形体付きケーブルの製造方法において、
前記ケーブルは、一対の前記絶縁電線を有する2心ケーブルであり、
前記ホルダ部材は、それぞれの前記絶縁電線の前記導体部分を収容する2つの前記導体収容部を有する、
樹脂成形体付きケーブルの製造方法
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂成形体付きケーブルの製造方法において、
前記第1の樹脂材料がポリアミドであり、前記第2の樹脂材料がポリフタルアミドである、
樹脂成形体付きケーブルの製造方法
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の樹脂成形体付きケーブルの製造方法において、
前記電子部品がセンサである、
樹脂成形体付きケーブルの製造方法
【請求項6】
請求項5に記載の樹脂成形体付きケーブルの製造方法において、
前記センサが、周囲の磁界変化に応じた信号を出力する磁気センサである、
樹脂成形体付きケーブルの製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端部に樹脂成形体が設けられたケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、電力用ケーブルや通信用ケーブル等の各種ケーブルが様々な分野で使用されている。このようなケーブルの一つに、心線と、当該心線の周囲に設けられたシースと、シースの端部から突出している心線の先端に接続された電子部品と、これらシース端部,心線の露出部分および心線に接続された電子部品が収容されたホルダと、当該ホルダの全周(全体)を被覆する樹脂製のアウターと、を有する樹脂成形体付きケーブルがある。この種のケーブルは、例えば、ABSセンサ,トルクセンサ,インデックスセンサ等の車載センサに用いられる。以下の説明では、シース端部,心線の露出部分および電子部品を「ケーブル端部」と総称する場合がある。つまり、ホルダに収容されている要素を「ケーブル端部」と総称する場合がある。
【0003】
上記のような樹脂成形体付きケーブルは、ケーブル端部を樹脂製のホルダに収容し、ケーブル端部が収容されたホルダを金型内にセットし、ホルダがセットされた金型内に樹脂材料を供給してアウターを成形することによって製造される。また、ホルダは、互いに突き合わされた下側ホルダ部材および上側ホルダ部材から形成されている。ケーブル端部をホルダに収容する際には、下側ホルダ部材の上にケーブル端部を載置し、ケーブル端部が載置された下側ホルダ部材に上側ホルダ部材を重ね合わせる。つまり、ケーブル端部をホルダに収容するためには、下側ホルダ部材と上側ホルダ部材との間にケーブル端部を挟み込む必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−4688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記樹脂成形体付きケーブルを製造するためには、アウターを成形する前に、ケーブル端部を下側ホルダ部材と上側ホルダ部材との間に挟み込んでホルダ内に収容する必要があり、製造工程数が多かった。また、ホルダが2つの半割れ部材から形成されているので部品点数が多かった。さらに、ホルダの全周(全体)を覆うアウターを成形するために多くの樹脂材料が必要であった。総じて、従来の樹脂成形体付きケーブルは製造コストが高かった。
【0006】
本発明の目的は、樹脂成形体付きケーブルの製造コストを低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の樹脂成形体付きケーブルは、ケーブルと、ケーブル端部に接続された電子部品と、前記ケーブル端部および前記電子部品を被覆する樹脂成形体と、を有する。前記樹脂成形体は、第1の樹脂材料によって成形され、前記ケーブル端部および前記電子部品が載置されるホルダ部材と、前記第1の樹脂材料よりも融点が高い第2の樹脂材料によって成形され、前記ケーブル端部および前記電子部品を被覆するカバー部材と、から形成される。そして、前記カバー部材は、前記ケーブル端部および前記電子部品に加えて、前記ホルダ部材の一部を被覆しており、前記ホルダ部材と前記カバー部材との界面は、前記カバー部材が成形される際の熱により溶着している。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、樹脂成形体付きケーブルの低コスト化が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ケーブルの構造を示す図である。
図2】樹脂成形体の外観を示す図である。
図3】ホルダ部材の構造を示す図である。
図4】ホルダ部材の構造を示す他の図である。
図5】樹脂成形体の内部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の樹脂成形体付きケーブルの実施形態の一例について図面を参照しながら詳細に説明する。本実施形態に係る樹脂成形体付きケーブルは、ケーブルと、ケーブル端部に接続された電子部品(本実施形態ではセンサ)と、ケーブル端部および電子部品を被覆する樹脂成形体と、を有する。
【0011】
図1に示されるように、ケーブル1は、一対の絶縁電線3,4と、これら絶縁電線3,4を一括して被覆するシース5と、を有する。言い換えれば、ケーブル1は、一対の絶縁電線3,4を心線とする2心ケーブルである。
【0012】
それぞれの絶縁電線3,4は、導体6と、導体6の周囲に設けられた絶縁層7と、を有する。導体6は複数本の素線が集合撚りされた撚り線であり、絶縁層7はウレタンによって形成されている。導体6を形成する素線の種類は特に限定されないが、例えば、軟銅線,硬銅線,すずめっき軟銅線,すずめっき硬銅線などを用いることができる。素線の撚り方法も集合撚りに限定されるものではなく、例えば、同心撚りや複合撚りであってもよい。また、絶縁層7はウレタン以外の樹脂材料によって形成してもよい。
【0013】
シース5はウレタンによって形成されており、互いに平行に配置された絶縁電線3,4を一括して被覆している。このシース5によって一対の絶縁電線3,4の間隔が保持されている。もっとも、ウレタン以外の樹脂材料によってシース5を形成してもよい。
【0014】
図1に示されるように、ケーブル1の少なくとも一方の端末において絶縁電線3,4が露出している。具体的には、シース5の少なくとも一方の端部5aから絶縁電線3,4がそれぞれ突出している。より具体的には、シース5の少なくとも一方の端面5bから絶縁電線3,4がそれぞれ突出している。
【0015】
図2に示されるように、樹脂成形体8は、第1の樹脂材料によって成形されたホルダ部材10と、第1の樹脂材料とは異なる第2の樹脂材料によって形成され、ホルダ部材10を部分的に覆うカバー部材20と、から形成されている。第1の樹脂材料と第2の樹脂材料とは、少なくとも融点が異なる樹脂材料であって、第2の樹脂材料の融点は第1の樹脂材料の融点よりも高い(第1の樹脂材料の融点は第2の樹脂材料の融点よりも低い。)。つまり、樹脂成形体8は、相対的に融点が低い第1の樹脂材料によって成形されたホルダ部材10と、相対的に融点が高い第2の樹脂材料によって成形されたカバー部材20と、により形成されている。本実施形態における第1の樹脂材料はポリアミド(PA)であり、第2の樹脂材料はポリフタルアミド(PPA)である。尚、ポリフタルアミド(PPA)の融点は約320℃である。
【0016】
図3図4に示されるように、ホルダ部材10は全体として半円柱状の外観を呈し、このホルダ部材10の上にケーブル1の端部およびセンサ30が載置されている。ホルダ部材10には、シース端部5aが収容されるシース収容部11と、絶縁電線3,4の根元部分3a,4aが置かれるステージ12と、それぞれの絶縁電線3,4の導体6が収容される導体収容部13a,13bと、センサ30が収容される電子部品収容部14と、が形成されている。シース収容部11、ステージ12、導体収容部13a,13bおよび電子部品収容部14は、ホルダ部材10の長手方向に沿ってこの順で配置されている。
【0017】
シース収容部11は、シース端部5aの径方向略半分(下半分)を収容可能な半円状の断面形状を有する。一方、それぞれの導体収容部13a,13bは、それぞれの導体6の径方向略全てを収容可能な矩形断面の溝である。また、2つの導体収容部13a,13bは、ホルダ部材10の長手方向に沿って互いに平行に延びている。これら2つの導体収容部13a,13bの間には、それぞれの導体収容部13a,13bに個別に収容されている導体6同士の接触を防止する凸部15が形成されている。凸部15は、導体収容部13a,13bと同一または略同一の長さを有し、導体収容部13a,13bと平行に延びている。
【0018】
ステージ12は、シース収容部11と導体収容部13a,13bとの間に設けられた平坦面であって、このステージ12の上に、シース端部5aから突出している絶縁電線3,4の根元部分3a,4aが置かれている。具体的には、シース端部5aから突出している絶縁電線3,4の露出部分のうち、絶縁層7(図1)によって被覆されている部分の全部または一部がステージ12の上に置かれている。つまり、絶縁電線3,4の露出部分のうち、絶縁層7(図1)に覆われている被覆部分がステージ12の上に置かれている。また、絶縁電線3,4の露出部分のうち、絶縁層7(図1)に覆われていない導体部分が導体収容部13a,13bに収容されている。そして、それぞれの絶縁電線3,4の導体6の先端が、導体収容部13a,13bの前方に設けられている電子部品収容部14に収容されているセンサ30に接続されている。尚、本実施形態におけるセンサ30は、周囲の磁界変化に応じた信号を出力する磁気センサである。また、ホルダ部材10の長手方向略中央には、同方向に対して直交する方向に延びる突出部16が一体成形されている。
【0019】
図2図5に示されるように、カバー部材20は、ケーブル1の端部およびセンサ30に加えて、ホルダ部材10の一部を被覆している。具体的には、カバー部材20は、シース端部5a,絶縁電線3,4の露出部分(被覆部分および導体部分)およびセンサ30を被覆している。また、カバー部材20は、ホルダ部材10の上面17,後端面18および先端面19を被覆している。言い換えれば、ホルダ部材10の外周面は、実質的にカバー部材20によって被覆されておらず、露出している。尚、ステージ12は、ホルダ部材10の上面17の一部である。
【0020】
もっとも、ホルダ部材10の突出部16は、その全周(全体)がカバー部材20によって被覆されている。そして、ホルダ部材10の突出部16を被覆しているカバー部材20の一部により、貫通孔40を備えるフランジ部41が形成されている。つまり、ホルダ部材10の突出部16は、フランジ部41の芯材としての役割を有する。樹脂成形体8(センサ30)を所望の取付け位置に固定する際には、フランジ部41が備える貫通孔40に挿通させたボルトを取付け位置に予め設けられているボルト穴にねじ結合させる。
【0021】
カバー部材20は、ケーブル1の端部およびセンサ30が載置されたホルダ部材10(図4)を金型内にセットし、ホルダ部材10がセットされた金型内に加熱溶融させた第2の樹脂材料(ポリフタルアミド(PPA))を供給することによって成形されたものである。ここで、ホルダ部材10は、第2の樹脂材料(ポリフタルアミド(PPA))よりも融点の低い第1の樹脂材料(ポリアミド(PA))によって成形されていることは既述のとおりである。また、シース5は、第2の樹脂材料(ポリフタルアミド(PPA))よりも融点の低いウレタンによって形成されていることも既述のとおりである。このため、ホルダ部材10がセットされた金型内に加熱溶融させた第2の樹脂材料を供給すると、供給された第2の樹脂材料と接したホルダ部材10およびシース端部5aの表層部が溶解する。この結果、ホルダ部材10とカバー部材20との界面、並びにシース端部5aとカバー部材20との界面が溶着し、気密性や防水性が確保される。つまり、カバー部材20が成形される際の熱により、ホルダ部材10やシース端部5aとカバー部材20との界面が溶着し、気密性や防水性が確保される。
【0022】
本実施形態に係る樹脂成形体付きケーブルが有する樹脂成形体8は、ホルダ部材10と、このホルダ部材10を部分的に被覆するカバー部材20と、から形成されている。よって、2つの半割れ部材から形成されるホルダと、このホルダの全周(全体)を被覆するアウターと、から形成される樹脂成形体を有する従来の樹脂成形体付きケーブルに比べて部品点数が少ない。また、本実施形態における樹脂成形体8は、ケーブル端部等が載置されたホルダ部材10の上にカバー部材20を直接成形することによって形成される。よって、本実施形態に係る樹脂成形体付きケーブルは、アウター成形に先立ってケーブル端部等をホルダ内に収容する必要がある従来の樹脂成形体付きケーブルよりも少ない工程数で製造することができる。さらに、本実施形態における樹脂成形体8を形成するカバー部材20は、ホルダ部材10の一部のみを覆っている。つまり、カバー部材20は、ホルダの全周(全体)を被覆する従来のアウターを成形するために必要な樹脂材料よりも少ない量の樹脂材料によって成形することができる。このように、本実施形態に係る樹脂成形体付きケーブルは、従来の樹脂成形体付きケーブルと比べて、少ない部品,少ない材料,少ない工程で製造することができる。
【0023】
本発明は上記実施形態に限定されるものでなく、その趣旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、ケーブル1は2心ケーブルに限定されるものではなく、単心ケーブルであっても、3心以上のケーブルであってもよい。第1の樹脂材料は、第2の樹脂材料よりも融点が低い樹脂材料であればよく、ポリアミド(PA)に限定されない。また、第2の樹脂材料は、第1の樹脂材料よりも融点が高い樹脂材料であればよく、ポリフタルアミド(PPA)に限定されない。例えば、ポリフェニレンスルファイド(PPS(Polyphenylenesulfide))を第2の樹脂材料として選択することができる。
【0024】
ケーブル1のシース5や絶縁電線3,4の絶縁層7はウレタン以外の絶縁性樹脂、例えばポリブチレンテレフタレート(PBT(Polybutylene terephthalate))によって形成することもできる。また、センサ30は、樹脂成形体付きケーブルの用途に応じて他の電子部品に置換される。
【符号の説明】
【0025】
1 ケーブル
3,4 絶縁電線
3a,4a 根元部分
5 シース
5a シースの端部(シース端部)
5b 端面
6 導体
7 絶縁層
8 樹脂成形体
10 ホルダ部材
11 シース収容部
12 ステージ
13a,13b 導体収容部
14 電子部品収容部
15 凸部
16 突出部
17 上面
18 後端面
19 先端面
20 カバー部材
30 センサ
40 貫通孔
41 フランジ部
図1
図2
図3
図4
図5