特許第6940757号(P6940757)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6940757パターン化基板の製造方法および半導体装置の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6940757
(24)【登録日】2021年9月7日
(45)【発行日】2021年9月29日
(54)【発明の名称】パターン化基板の製造方法および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20210916BHJP
   H01L 33/22 20100101ALI20210916BHJP
   H01L 33/32 20100101ALI20210916BHJP
【FI】
   G03F7/20 501
   H01L33/22
   H01L33/32
   G03F7/20 521
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-129678(P2017-129678)
(22)【出願日】2017年6月30日
(65)【公開番号】特開2019-12224(P2019-12224A)
(43)【公開日】2019年1月24日
【審査請求日】2020年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100180529
【弁理士】
【氏名又は名称】梶谷 美道
(74)【代理人】
【識別番号】100125922
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 章子
(74)【代理人】
【識別番号】100184985
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 悠
(72)【発明者】
【氏名】金川 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】村上 圭
【審査官】 冨士 健太
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−324474(JP,A)
【文献】 特開2012−064902(JP,A)
【文献】 特開2012−133280(JP,A)
【文献】 特開2011−227188(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0059789(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00−1/86
7/20−7/24
9/00−9/02
H01L 33/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターン化基板の製造方法であって、
格子状に配置された複数の内側遮光部と、前記複数の内側遮光部それぞれの周辺領域を一体的に繋ぐ透光部と、前記透光部を囲む外側遮光部とを有する露光マスクを用意する工程と、
前記露光マスクを用いて、基板に形成されたポジ型のフォトレジスト層をステップアンドリピート法により複数回露光する露光工程であって、全体として前記内側遮光部を投影した内側投影部が格子状に配置されるように、前記フォトレジスト層を複数回露光する露光工程と、
前記露光工程後に前記フォトレジスト層を現像する現像工程と、
現像された前記フォトレジスト層をマスクとして、前記基板をエッチングする工程と
を包含し、
前記露光工程において、
所定の露光における複数の内側投影部のうち最も外側に位置する1つの内側投影部と、他の露光における複数の内側投影部のうち前記所定の露光における前記1つの内側投影部の最も近くに配置される1つの内側投影部とを最短距離で結ぶ直線上において、前記所定の露光における前記透光部に対応する領域と前記他の露光における前記透光部に対応する領域とが重ならないようにする一方、その他の領域のうちの少なくとも一部において前記所定の露光における前記透光部に対応する領域と前記他の露光における前記透光部に対応する領域とが重なるようにして、前記フォトレジスト層を複数回露光する、パターン化基板の製造方法。
【請求項2】
前記重なる領域は、前記所定の露光における複数の内側投影部のうち最も外側に位置する1または2つの内側投影部、および、他の露光における複数の内側投影部のうち前記所定の露光における前記1または2つの内側投影部の最も近くに配置される1または2つの内側投影部から選ばれる3または4の内側投影部の重心に位置している請求項1に記載のパターン化基板の製造方法
【請求項3】
前記複数の内側遮光部は、三角格子状に配置されている、請求項1または2に記載のパターン化基板の製造方法。
【請求項4】
前記重なる領域は円形状を有する請求項1から3のいずれかに記載のパターン化基板の製造方法。
【請求項5】
前記重なる領域は、略三角形状を有する、請求項1から3のいずれかに記載のパターン化基板の製造方法。
【請求項6】
前記複数の内側遮光部は円形状を有する、請求項1から5のいずれかに記載のパターン化基板の製造方法。
【請求項7】
前記複数の内側遮光部は、0.3μ以上5μm以下の直径を有する請求項6に記載のパターン化基板の製造方法。
【請求項8】
前記複数の内側遮光部の、隣接する内側遮光部の中心間距離は、0.4μm以上6μm以下である請求項6または7に記載のパターン化基板の製造方法。
【請求項9】
前記基板はサファイア基板である、請求項1から8のいずれかに記載のパターン化基板の製造方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の方法によって、パターン化基板を製造する工程と、
前記パターン化基板上に、発光層を含む半導体積層構造を形成する工程と、
前記半導体積層構造に電気的に接続されたn側電極およびp側電極を形成する工程と
を包含する半導体発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願はパターン化基板の製造方法および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の灯具の光源として半導体発光素子が広く利用されている。半導体発光素子は、基板上にエピタキシャル成長させた半導体層を備え、半導体層で発生した光は、基板側あるいは、基板と反対側の半導体層から出射する。
【0003】
半導体発光素子が、例えば窒化ガリウム系半導体素子である場合、半導体層の屈折率が大きいため、半導体発光素子の周囲の大気等との間の大きな屈折率差により、全反射が生じやすく、半導体発光素子の外部へ光を取り出しにくい。このため、このような半導体発光層を備えた半導体発光素子では、光の取り出し効率を向上させることが課題となる。
【0004】
光取り出し効率を向上させる方法として、半導体層をエピタキシャル成長させる基板の表面に複数の凸部(凹凸と称する文献もある)を形成し、半導体層から出射した光を基板の表面で散乱させることによって、入射角が全反射の臨界角よりも小さい光を外部に出射させる技術が知られている。例えば、このような複数の凸部を設けたサファイア基板は、PSS(Patterned Sapphire Substrate:パターン化サファイア基板)と呼ばれる。特許文献1は、凹凸のパターンの歪みが抑制された半導体基材を製造する方法の一例を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−64902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
複数の凸部が設けられた基板は発光素子の製造に限らず、フォトニックデバイス、反射防止構造、拡散構造として、種々の分野で利用され得る。本開示は、複数の凸部のパターンの歪みが抑制されたパターン化基板の製造方法および半導体装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のパターン化基板の製造方法は、格子状に配置された複数の内側遮光部と、前記複数の内側遮光部それぞれの周辺領域を一体的に繋ぐ透光部と、前記透光部を囲む外側遮光部とを有する露光マスクを用意する工程と、前記露光マスクを用いて、基板に形成されたフォトレジスト層をステップアンドリピート法により複数回露光する露光工程であって、全体として前記内側遮光部を投影した内側投影部が格子状に配置されるように、前記フォトレジスト層を複数回露光する露光工程と、前記露光工程後に前記フォトレジスト層を現像する現像工程と、現像された前記フォトレジスト層をマスクとして、前記基板をエッチングする工程とを包含し、前記露光工程において、所定の露光における複数の内側投影部のうち最も外側に位置する1つの内側投影部と、他の露光における複数の内側投影部のうち前記所定の露光における前記1つの内側投影部の最も近くに配置される1つの内側投影部とを最短距離で結ぶ直線上において、前記所定の露光における前記透光部に対応する領域と前記他の露光における前記透光部に対応する領域とが重ならないようにする一方、その他の領域のうちの少なくとも一部において前記所定の露光における前記透光部に対応する領域と前記他の露光における前記透光部に対応する領域とが重なるようにして、前記フォトレジスト層を複数回露光する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、複数の凸部のパターンの歪みが抑制されたパターン化基板を製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A図1Aは本開示のパターン化基板およびその一部を拡大して示す平面図である。
図1B図1B図1Aに示すパターン化基板の上面の形状を拡大して示す模式図である。
図1C図1Cは本開示のパターン化基板の上面の他の形状を拡大して示す模式図である。
図2A図2Aは本開示のパターン化基板の製造方法における一工程断面図である。
図2B図2Bは本開示のパターン化基板の製造方法における一工程断面図である。
図2C図2Cは本開示のパターン化基板の製造方法における一工程断面図である。
図2D図2Dは本開示のパターン化基板の製造方法における一工程断面図である。
図2E図2Eは本開示のパターン化基板の製造方法における一工程断面図である。
図3A図3Aは本開示のパターン化基板の製造方法で用いる露光マスクのパターンを示す図である。
図3B図3B図3Aに示す露光マスクを透過した露光光の投影領域を示す図である。
図4図4は本開示のパターン化基板の製造方法において、ステップアンドリピートで露光を行う手順を示す図である。
図5A図5Aは露光マスクの位置合わせ誤差により生じる投影領域のずれを説明する図である。
図5B図5Bは露光マスクの位置合わせ誤差により生じる投影領域のずれを説明する図である。
図5C図5Cは露光マスクの位置合わせ誤差により生じる投影領域のずれを説明する図である。
図6A図6A図3Aに示す露光マスクを用いて複数回露光した場合における投影領域を示す図である。
図6B図6B図3Aに示す露光マスクを用いて複数回露光した場合における投影領域を示す他の図である。
図6C図6C図6Bに示す投影領域を説明するための模式図である。
図7A図7Aは本開示のパターン化基板の製造方法で用いる他の露光マスクのパターンを示す図である。
図7B図7B図7Aに示す露光マスクを透過した露光光の投影領域を示す図である。
図8図8は本開示のパターン化基板の製造方法で用いる他の露光マスクを透過した露光光の投影領域を示す図である。
図9図9は本開示のパターン化基板の製造方法で用いる他の露光マスクを透過した露光光の投影領域を示す図である。
図10図10は本開示のパターン化基板の製造方法で用いる他の露光マスクを透過した露光光の投影領域を示す図である。
図11図11は本開示のパターン化基板の製造方法で用いる他の露光マスクを用いて複数回露光した場合における投影領域を示す図である。
図12A図12Aは本開示の半導体発光装置の製造方法における一工程断面図である。
図12B図12Bは本開示の半導体発光装置の製造方法における一工程断面図である。
図12C図12Cは本開示の半導体発光装置の製造方法における一工程断面図である。
図12D図12Dは本開示の半導体発光装置の製造方法における一工程断面図である。
図13A図13A図7Aに示す露光マスクを用いて露光を行い、現像したフォトレジスト層の上面の一例を示す図である。
図13B図13B図3Aに示す露光マスクを用いて露光を行い、現像したフォトレジスト層の上面の一例を示す図である。
図14A図14Aは従来の露光マスクを用い、図5Bに示す投影領域の位置合わせで露光を行い、現像したフォトレジスト層の一例を示す図である。
図14B図14Bは従来の露光マスクを用い、図5Cに示す投影領域の位置合わせで露光を行い、現像したフォトレジスト層の上面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本開示のパターン化基板の製造方法および半導体装置の製造方法の実施形態を説明する。以下に説明するパターン化基板の製造方法および半導体装置の製造方法は、実施形態の一例であって、以下に説明する製造方法において種々の改変が可能である。以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細な説明を適宜省略する。さらに、各構成要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。また、製造方法の工程は、2以上の工程を1つにまとめて行ってもよいし、逆に1つの工程を2以上の工程に分けて行ってもよい。
【0011】
(第1の実施形態)
以下、本開示のパターン化基板の製造方法の実施形態を説明する。本開示のパターン化基板の製造方法は、パターン化基板の複数の凸部を形成するためのフォトレジスト層のパターンにおける歪みを低減することによって、複数の凸部のパターンの歪みが抑制されたパターン化基板を提供し得る。つまり、本開示のパターン化基板の製造方法は、フォトレジスト層の露光に1つの特徴を有する。以下の説明では、まず、パターン化基板の製造方法を概略的に説明し、その後、特徴的な露光方法を説明する。
【0012】
[パターン化基板11の構造]
図1Aは、本開示のパターン化基板11およびその一部を拡大して示す模式的な平面図である。パターン化基板11は上面11aを有し、上面11aに複数の凸部12が設けられている。凸部12の底面は本実施形態では円形である。図1Bは、パターン化基板11の上面11aの一部を拡大して示す斜視図である。凸部12は本実施形態では略円錐形状を有している。凸部12の表面(側面)は、上面11aに対して傾斜していることが好ましい。これにより、半導体素子の発光層からパターン化基板11に向けて出射した光の進行角度を大きく変えることができる。底面の形状は円に限られず、多角形等であってもよい。凸部12は、用途あるいは仕様に応じて、上面11aの一部に配置されていてもよいし、上面11aの全体に配置されていてもよい。
【0013】
図1Cは凸部12の他の形状の一例を示している。図1Cに示す凸部12は、錐台形状を有する。錐台の底面は略三角形形状であって、三角形形状(図の太点線)から各辺が外側に向けて膨らんだ形状を有し、上面は略円形状を有している。
【0014】
後述するように凸部12の形状は、凸部12を形成するためのエッチングマスクの形状、エッチングの種類や条件等に依存する。以下、本実施形態では、凸部12の底面が略円形形状を有するパターン化基板11を参照してパターン化基板の製造方法を説明する。
【0015】
複数の凸部12は、パターン化基板11の上面11aにおいて、2次元に配列されている。凸部12の上面11aにおける配置はランダムであってもよし、規則的でもよい。規則的に複数の凸部12を配置したほうが、凸部12の上面11aにおける密度を高めることが可能であり、発光層からパターン化基板11に入射する光の反射方向をよりランダムに変えることが可能である。
【0016】
規則的に複数の凸部12を配置する場合、凸部12は、格子状に配置される。格子状の配置は、三角格子および四角格子を含む。凸部12の底面が円形状を有する場合、三角格子状に凸部12を配置した方が凸部12の密度をより高めることが可能である。しかし、凸部12は四角格子状に配置されていてもよい。
【0017】
パターン化基板11は、用途に応じた種々の材料の基板であってよい。窒化ガリウム系半導体発光素子の作製に用いる場合には、パターン化基板11は例えば、サファイア基板であってよい。また、パターン化基板11の大きさも任意に選択し得る。凸部12の底面の大きさ、隣接する凸部12との間のピッチおよび凸部12の高さもパターン化基板11の用途および求められる仕様に応じて決定し得る。パターン化基板11が窒化ガリウム系発光ダイオードに用いられる場合には、凸部12の底面は、例えば、0.3μm以上5μm以下の直径を有する円形状を有している。また、隣接する凸部12との間のピッチは、例えば、0.4μm以上6μm以下である。凸部12の高さは、例えば、0.1μm以上3μm以下である。
【0018】
[パターン化基板11の製造方法の概略]
次に図2Aから図2Eを参照しながら、パターン化基板11の製造方法を説明する。図2Aから図2Eは、パターン化基板11の製造方法における工程断面図である。
【0019】
(1)露光マスクを用意する工程
パターン化基板11の上面11aに形成する凸部12に対応するパターンを備えた露光マスクを用意する。この工程は以下において、詳述する。
【0020】
(2)露光工程
図2Aに示すように、まず、基板13を用意する。例えば、パターン化基板11を窒化ガリウム系半導体発光素子の作製に用いる場合にはサファイア基板を用意する。基板13の上面にフォトレジストを塗布し、熱処理(プリベーク)を行うことによって、図2Bに示すように、基板13の上面13aにフォトレジスト層14を形成する。次に、露光マスクを用いてフォトレジスト層14を露光する。露光工程の詳細は以下において説明する。必要に応じて露光後、フォトレジスト層14を熱処理する(ポストベーク)。
【0021】
(3)現像工程
露光済みのフォトレジスト層14を現像液と接触させ、フォトレジスト層14の現像を行う。この工程によって露光部分のフォトレジスト層14が溶出され、図2Cに示すように、現像され、所定のパターンを有するフォトレジスト層15が得られる。
【0022】
(4)エッチング工程
現像されたフォトレジスト層15をマスクとして基板13を上面13aからエッチングする。エッチングにはドライエッチングおよびウエットエッチングを利用することができる。ドライエッチングを用いる場合、使用するガス、バイアス電圧等のエッチング条件を適切に選択することによって、凸部12の外形を調整することができる。これにより図2Dに示すように、現像されたフォトレジスト層15の各パターンの下方に凸部12が位置するパターン化基板11が得られる。
【0023】
(5)除去工程
フォトレジスト層15を除去することによって、図2Eに示すように、上面11aに複数の凸部12が形成されたパターン化基板11が完成する。
【0024】
[露光マスクを用意する工程および露光工程の詳細]
露光マスクを用意する工程および露光工程を詳細に説明する。図3Aは、露光工程で用いる露光マスク101の露光光が照射される部分のパターンを示す。図3Aにおいて、ハッチングされた領域は、遮光領域を示し、白い領域は透光性領域を示す。図3Aでは、露光マスク101は長方形形状を有しているが、露光マスク101は正方形形状を有していてもよい。露光マスク101はレチクルともよばれる。本実施形態のパターン化基板の製造方法において、凸部12を形成するためのフォトリソグラフィ工程はポジ型のフォトレジストを用いる。
【0025】
露光マスク101は、複数の内側遮光部102と、透光部103と、外側遮光部104とを含む。各内側遮光部102は、本実施形態では、パターン化基板11の凸部12の底面の形状に対応している。具体的には内側遮光部102は円形状を有している。例えば、各内側遮光部102は0.3μ以上5μm以下の直径を有する円形状を有している。
【0026】
複数の内側遮光部102はパターン化基板11の上面11aにおける凸部12の配置に対応している。つまり、複数の内側遮光部102は露光マスク101において格子状に配置されている。本実施形態では、内側遮光部102が三角格子状に配置されており、隣接する3つの内側遮光部102の中心は、正三角形の頂点に位置している。内側遮光部102は上述したように露光光を透過しない。
【0027】
透光部103は、露光光に対して透過性を有しており、複数の内側遮光部102のそれぞれの周辺領域を一体的につないでいる。つまり、各内側遮光部102は他の内側遮光部102と接続されておらず、孤立している。
【0028】
外側遮光部104は透光部103を囲んでおり、複数の内側遮光部102のいずれとも接続されていない。外側遮光部104も露光光を透過しない。
【0029】
露光マスク101は露光光を透過するガラスなどの透光板上に、金属膜等の遮光性を有する膜によって内側遮光部102および外側遮光部104を形成することにより作製される。
【0030】
図3Bは、露光マスク101に露光光を照射することによって得られる露光光の投影領域113を示す。投影領域113は露光マスク101の透光部103に対応している。投影領域113は露光マスク101の複数の内側遮光部102に対応する複数の内側投影部112を囲んでいる。内側投影部112は露光光が照射されない領域である。
【0031】
露光工程では、露光マスク101を用いて、露光光を基板13上のフォトレジスト層14に縮小投影し、基板13に形成されたフォトレジスト層14をステップアンドリピート法により複数回露光する。例えば、図4に示すように、基板13に対して、露光光の投影領域113が、図4中、1、2・・・20で示すように、基板13に順次形成されるように、露光マスク101に対してx方向およびy方向に相対的に基板13を移動させる。
【0032】
このようなステップアンドリピート法により複数回露光を行い、投影領域をつなぎ合わせてより大きな投影領域を形成する場合、各投影領域のつなぎ目における位置合わせ精度等が問題となる。図5Aに示すように、内側投影部212が2つの隣接する投影領域213の境界上に位置する場合、位置合わせが不完全であることによって、境界で接合された2つの内側投影部213の形が崩れてしまう。
【0033】
このような形の乱れを避けるためには、投影領域の最外周を露光光が照射される領域で囲むことが考えられる。しかし、この場合、図5Bに示すように、位置合わせ誤差によって、2つの隣接する投影領域213に間隙が生じる可能性がある。間隙は未露光領域となりフォトレジストが2つの隣接する投影領域213の間に残ってしまう。
【0034】
一方、図5Cに示すように、位置合わせ誤差を考慮して2つの隣接する投影領域213が互いに少し重なるように露光を行うことが考えられる。この場合、未露光領域は生じないが、2つの露光領域が重なった部分では、周囲に比べて、露光量が過大となり、近接する内側投影部212のパターンが小さくなってしまう。
【0035】
このような、課題が生じた露光が行われた場合、現像後に得られるフォトレジスト層をマスクとしてエッチングを行うと、形状および/または位置の乱れた凸部がパターン化基板に含まれる。その結果、パターン化基板上に半導体層をエピタキシャル成長させる際、形状および/または位置の乱れた凸部が起点となってピット、ボイド等の欠陥が半導体層中に生じ得る。
【0036】
本開示の露光マスクを用意する工程および露光工程によれば、このような課題を解決するために、隣接する2つの露光光の投影領域113において、境界における重なり合う幅を位置によって異ならせる。図6Aは、隣接する2つの露光光の投影領域113A、113Bの配置を示す。投影領域113Aは、ある露光、例えば、図4に示す2番目の露光によって投影される露光光の領域を示し、投影領域113Bは、ある露光とは別の露光、例えば、図4に示す3番目の露光によって投影される露光光の領域を示す。投影領域113Aおよび投影領域113Bによって、全体としてより大きな投影領域を構成しており、かつ、全体として内側投影部112Aおよび内側投影部112Bが格子状に配置される。図6Aでは2つの投影領域113A、113Bしか示していないが、他の露光において形成される投影領域も投影領域113Aおよび投影領域113Bとともに全体として1つのより大きな投影領域を形成し、基板13のフォトレジスト層14に投影される。また、全体として内側投影部が格子状に配置される。図6Aに示すように、2番目の露光によって投影される複数の内側投影部112Aのうち最も外側に位置する1つの内側投影部112APと、3番目の露光における複数の内側投影部112Bのうち、2番目の露光における内側投影部112APの最も近くに配置される1つの内側投影部112BPとを最短距離で結ぶ直線P上において、2番目の露光における投影領域113Aと3番目の露光における投影領域113Bとは互いに重なっていない。
【0037】
一方、投影領域113Aと投影領域113Bとは上述の直線P上以外の少なくとも一部で互いに重なっている。具体的には、2番目の露光における複数の内側投影部112Aのうち最も外側に位置する1または2つの内側投影部112AP、および、3番目の露光における複数の内側投影部112Bのうち1または2つの内側投影部112BPから選ばれる3または4の内側投影部112AP、112BPの重心112Gに重畳領域114が位置している。重畳領域114は2以上の投影領域が重なった領域である。本実施形態では、内側投影部112AP、112BPは、三角格子状に配置されているため、2つの内側投影部112APと1つの内側投影部112BP、または、1つの内側投影部112APと2つの内側投影部112BPによる3つの内側投影部の重心112Gに重畳領域114が位置している。本実施形態では、重畳領域114は、略三角形形状を有している。
【0038】
この配置によれば、隣接する2つの露光光の投影領域113A、113Bにおいて、互いの距離が短い内側投影部112AP、112BPを結ぶ直線P上では、露光領域を互いに重ね合わせないようにしている。このため、露光量が過大となり内側投影部112AP、112BPに隣接する領域からの露光光が漏れこむことが抑制される。
【0039】
一方、直線P上以外の領域では、投影領域113Aの最も外側に位置する内側投影部112APと投影領域113Bの最も外側に位置する内側投影部112BPとの距離が相対的に長い。このため、位置合わせ誤差が生じて、投影領域113Aと投影領域113Bとが離間した場合でも、未露光部分が生じないように、投影領域113Aと投影領域113Bとを部分的に重ね合わせて、2つの露光光の投影領域113A、113Bを重ね合わせても、最も外側に位置する内側投影部112AP、112BP間の距離が相対的に長いため、露光量の増大の影響を小さくすることができる。
【0040】
つまり、本開示の露光マスクを用意する工程および露光工程によれば、隣接する2つの露光光による投影領域の境界において、重ね合わせの幅が異なる部分がある。2つの投影領域のうちそれぞれ最も外側にする内側投影部を結ぶ最短の直線上では重ね合わせの幅を短く、例えば、重ね合わせが生じないようにする。一方、2つの投影領域のうち最も外側にする内側投影部から選ばれる3または4の内側投影部の重心の位置は、選択した内側投影部からそれぞれ最も離れた位置であるため、この重心の位置で、2つの投影領域が互いに重なり合うようにする。
【0041】
これによって、ステップアンドリピート法により複数回露光を行い、投影領域をつなぎ合わせてより大きな投影領域を形成する場合において、投影領域の境界における露光光の過不足が生じることを抑制し、露光によって形成するフォトレジスト層において、露光の投影領域の境界におけるパターンの歪みを抑制することができる。したがって、パターンの歪みが抑制されたフォトレジスト層を用いて作製されるパターン化基板では、凸部の形状の歪みおよび凸部の位置ずれ等が抑制される。その結果、本開示のパターン化基板を用いて半導体発光装置を作製した場合、半導体層にピット、ボイド等が生じることが抑制され、欠陥が少ない半導体発光装置を高い歩留まりで生産することが可能となる。
【0042】
なお、図6Aでは、2つの露光光による投影領域113A、113Bを示しているが、図6Aにおいて、投影領域113Aの左側、上側および下側に他の投影領域が配置される場合、図6Aにおいて、ハッチングで示す領域135がこれら他の投影領域と重なる。つまり、重畳領域である。重畳領域114および領域135はいずれも設計上は同じ形状を有している。ただし、実際の露光において、隣接する2つの投影領域の重なりは許容誤差を含むため、1つの投影領域の各角に位置する重畳領域114および領域135の形状は完全に一致しない場合もある。 図6Bは露光光による4つの投影領域113A、113B、113C、113Dの角部が配置された領域近傍を拡大して示す図であり、図6Cは、重畳領域114を除いた4つの投影領域113A、113B、113C、113Dの配置を模式的に示す図である。分かりやすさのため、図6Bおよび図6Cにおいて同じ参照符号を付している。
【0043】
本実施形態では内側投影部112は三角格子状に配置されている。このため、4つの投影領域113A、113B、113C、113Dが1つの頂点に集まることはない。この図では、投影領域113Bと投影領域113Cとは接しておらず、また、互いに重ならない。図6Cに示すように投影領域113A、113B、113Dは頂点P1を共有し、投影領域113A、113C、113Dは頂点P2を共有している。このため、図6Bに示すように、頂点P1に対応する三角格子の重心G1に位置する重畳領域114では投影領域113A、113B、113Dが重なっている。また、頂点P2に対応する三角格子の重心G2に位置する重畳領域114では投影領域113A、113C、113Dが重なっている。他の境界では、重なる投影領域の数は2である。このように、4つの投影領域113A、113B、113C、113Dの角部が配置された領域近傍において、3つの投影領域が重なることによって露光が過多になる場合には、2つの投影領域のみが重なるように露光マスクを変形してもよい。図3Aに示す露光マスク101の透光部103において、A1からA3で示す3つの位置のうちのいずれか1つは、図6Aに示す重畳領域114に対応する形状で遮光し、外側遮光部104と接続してもよい。同様に、B1からB3で示す3つの位置のうちのいずれか1つは、図6Aに示す重畳領域114に対応する形状で遮光し、外側遮光部104と接続してもよい。ただし、このように透光部103を改変した場合、逆に4つの投影領域の角部が集まらない部分で透光領域が重ならない位置が生じる。例えば、透光部103のA1の位置を遮光する場合、図4に示す6、11、16番目の露光による投影領域において、図3Aに示すA1の位置において投影領域の重なりが生じない。しかし、この位置は、全露光領域における端であり、基板13上に投影領域が形成されなかったり、基板13の端のほうであるため、半導体発光素子を作製しないことも考えられる。したがって、基板13上に形成する発光装置の配置、基板13に対する投影領域の配置を考慮することによって、投影領域の重なりが生じない位置での影響を回避または低減することが可能である。
【0044】
[露光マスクの他の例]
異なる露光による2以上の投影領域が重なる重畳領域114の形状は略三角形に限られず、他の形状であってもよい。図7Aおよび図7Bは、重畳領域114が略円形状である場合の露光マスク122の平面図および露光マスク122に露光光を透過させることによって得られる投影領域113を示す。露光マスク122の外側遮光部104の内周の頂点に扇形の切り欠き部分が設けられている。投影領域113の外周の各頂点は外側遮光部104の形状に対応して円弧状の領域が形成される。これによって、ステップアンドリピート法により複数回露光を行い、投影領域をつなぎ合わせてより大きな投影領域を形成する場合に、隣接する2つの投影領域113の境界には図7Bに示すように、円形の重畳領域114が形成される。上記実施形態で説明したように、重畳領域114は、2つの投影領域のうち最も外側にする内側投影部から選ばれる3または4の内側投影部の重心に位置する。以下、露光マスクの透過部の形状が投影領域の形状と一致するので、投影領域のみで重畳領域114の説明を行う。図8に示すように、重畳領域114は略五角形の形状を有していてもよい。また、図9に示すように重畳領域114は山の形をしていてもよい。
【0045】
これまでの例では、ある投影領域113が、隣接する他の投影領域113と重なることによって形成される重畳領域114は、各投影領域の角に位置し、同じ形状をしていた。しかし、位置によって重畳領域は異なる形状を有していてもよい。図10に示す例では、投影領域113の角のうち、投影領域113をつなぎ合わせた場合に3つの投影領域が重なる角の重畳領域と、2つの投影領域が重なる角の重畳領域の形状が異なっている。具体的には、投影領域113の周囲の角のうち、図3Aに示すA1からA3およびB1からB3の位置では、重畳領域124は、三角形形状を有し、その他の角の位置では、重畳領域114は五角形形状を有している。また、重畳領域124の面積は重畳領域114の面積よりも小さい。この構成によれば、3つの投影領域が重なる角の重畳領域124では、2つの投影領域が重なる角の重畳領域114に比べて面積が小さいため、露光量が過多になることが抑制される。
【0046】
また、上記実施形態では、パターン化基板11の上面11aに設けられる凸部12は、三角格子状に配置されていたが、四角格子状に凸部12が設けられたパターン化基板11を作製することも可能である。この場合、投影領域の内側投影部112も四角格子状に配置される。図11は、四角格子状に内側投影部が位置している投影領域113A、113B、113C、113Dがつなぎ合わされた1つの角部を示している。
【0047】
露光によって投影される投影領域113Aの複数の内側投影部112Aのうち最も外側に位置する1つの内側投影部112APと、他の露光によって投影される投影領域113Bの内側投影部112Bのうち、内側投影部112APの最も近くに配置される1つの内側投影部112BPとを最短距離で結ぶ直線P上では投影領域113Aと投影領域113Bとは互いに重なっていない。一方、投影領域113Aのうち最も外側に位置する2つの内側投影部112AP、および、投影領域113Bの最も外側に位置する2つの内側投影部112Bの重心112Gに重畳領域114が位置している。投影領域113Aと投影領域113C、投影領域113Bと投影領域113Dとの間でも同様の位置関係で重畳領域114が配置されている。さらに、投影領域113A、113B、113C、113Dの最も角に位置する内側投影部112AP、112BP、112CP、112DPの重心にも重畳領域134が位置している。この重畳領域134では、投影領域113A、113B、113C、113Dの一部が重なっている。このように四角格子状に内側投影部が配置される場合でも、互いの距離が短い内側投影部112AP、112BPを結ぶ直線P上では、露光領域を互いに重ね合わせないようにしている。このため、露光量が過大となり内側投影部112AP、112BPに隣接する領域からの露光光が漏れこむことが抑制される。また、直線P上以外の領域では、重畳領域114が形成されるため、位置合わせ誤差が生じても十分な露光量が確保できる。また、重畳領域114は、最短ではない内側投影部112AP、112BP間に位置しているため、露光量の増大の影響を小さくすることができる。よって、投影領域の内側投影部が四角格子状に配置される場合でも、投影領域の境界における露光光の過不足が生じることを抑制し、露光によって形成するフォトレジスト層において、露光の投影領域の境界におけるパターンの歪みを抑制することができる。
【0048】
(第2の実施形態)
本開示の半導体発光装置の製造方法の実施形態を、図12A〜Dを用いて説明する。
【0049】
[パターン化基板を製造する工程]
まず第1の実施形態に従って、上面11aに凸部12が配置されたパターン化基板11を作製する(図12A)。パターン化基板11は例えばサファイア基板を用いて、第1の実施形態で説明した手順で作製する。
【0050】
[半導体積層構造を形成する工程]
パターン化基板11上に半導体積層構造50を形成する(図12B)。例えば、パターン化基板11上にMOCVD(有機金属気層成長)、MBE(分子線エピタキシー)などのエピタキシャル成長法によって、下地層51、n型半導体層52、発光層53およびp型半導体層54を順に成長させる。下地層51を成長させて、凸部と凸部の間を埋めると共に、上面を平坦化する。
【0051】
[電極を形成する工程]
半導体積層構造50を形成した後、p型半導体層54および発光層53の一部をエッチングによって除去し、n型半導体層52の一部を露出させる(図12C)。その後、露出したn型半導体層52の一部およびp型半導体層54にn側電極55およびp側電極56をそれぞれ形成する(図12D)。
【0052】
その後、パターン化基板11上に形成されたこれらの構造を個片化することによって、半導体発光装置201が完成する。なお、図12A〜Dは、個片化したあとの1つの半導体発光装置について説明している。
【0053】
本開示の半導体発光装置の製造方法によれば、凸部の形状の歪みおよび凸部の位置ずれ等が抑制されたパターン化基板11を用いて半導体発光装置を作製するため、半導体積層構造にピット、ボイド等が生じることが抑制される。このため、欠陥が少ない半導体発光装置を高い歩留まりで生産することが可能となる。
【0054】
(実施例)
第1の実施形態で説明した方法によって露光を行い、現像したフォトレジスト層を観察した結果の一例を説明する。図13Aおよび図13B図7Aおよび図3Aに示す露光マスクを用いて作製したフォトレジスト層の上面の一例をそれぞれ示す。比較のため、従来の露光マスクを用い、図5Bおよび図5Cに示す投影領域の位置合わせで作製したフォトレジスト層の上面の一例を図14Aおよび図14Bにそれぞれ示す。
【0055】
図13Aおよび図13Bに示されるように、凸部を形成するための円形のパターンに歪みが生じている部分はほとんど見られず、また、投影領域のつなぎ目(境界)に対応する位置に特に目立つパターン異常は確認できない。
【0056】
これに対して、図14Aに示されるように、投影パターンのつなぎ目に隙間が生じていると、投影領域のつなぎ目(境界)に対応する位置に黒い影がみられる。これは、露光量が十分ではないため、黒く示される位置において、フォトレジストが残っているからと考えられる。また、図14Bに示されるように、投影パターンのつなぎ目が連続して重なっていると、投影領域のつなぎ目(境界)に対応する位置に白い筋がみられる。これは、白い筋の部分において、露光量が過多であるため、円形のパターンが小さくなっているからと考えられる。
【0057】
このように、本開示のパターン化基板の製造方法によれば、上面全体に均一なパターンを有するフォトレジスト層を形成できることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本開示のパターン化基板の製造方法は、発光装置などの半導体装置、フォトニックデバイス等に好適に用いられる。また、本開示の半導体発光装置の製造方法は、種々の用途の光源に用いられる半導体発光装置に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0059】
11 パターン化基板
11a、13a 上面
12 凸部
13 基板
14、15 フォトレジスト層
50 半導体積層構造
51 下地層
52 n型半導体層
53 発光層
54 p型半導体層
55 n側電極
56 p側電極
101 露光マスク
102 内側遮光部
103 透光部
104 外側遮光部
112、112A、112B、112AP、112BP 内側投影部
112G 重心
113、113A〜113D、213 投影領域
114 重畳領域
115 領域
122 露光マスク
124、134 重畳領域
201 半導体発光装置
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図12D
図13A
図13B
図14A
図14B