(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一本以上の導体の周囲を個別にあるいは一括して覆う絶縁体を有するコア線と、該コア線の周囲を覆うように縦添え巻きされたシールドテープと、を有するシールド付きコア線を複数備え、前記複数のシールド付きコア線を撚り合せた集合体の周囲を覆う金属シールド層と、周方向に隣り合う前記複数のシールド付きコア線と前記金属シールド層との間の隙間を複数有する通信ケーブルであって、
前記複数のシールド付きコア線のそれぞれは、前記シールドテープの幅方向における一方の端部であって、かつ縦添え巻きの外側に位置する巻き終わり側端部が、前記コア線の中心位置よりも前記通信ケーブルの径方向外側となるように配置されており、前記シールドテープの幅方向における他方の端部が縦添え巻きの内側に位置しており、
前記シールドテープの幅方向において、前記シールドテープは、前記他方の端部から前記巻き終わり側端部にかけて、前記複数の隙間のうち一方の隙間に面し、前記金属シールド層と対向した後に、前記シールドテープの巻き終わり側端部が、前記一方の隙間とは異なる隙間に臨むように巻かれている
通信ケーブル。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0012】
図1は、本実施の形態に係る通信ケーブルを示す図であり、(a)は、その長手方向に垂直な断面を示す断面図、(b)は、その端部を示す斜視図である。
【0013】
図1(a),(b)に示すように、通信ケーブル1は、一本以上の導体21、及び導体21の周囲を個別にあるいは一括して覆う絶縁体22を有する複数のコア線2と、コア線2の周囲に縦添え巻きされたシールドテープ3と、コア線2をシールドテープ3で覆った複数のシールド付きコア線4を撚り合わせた集合体5の周囲を一括して覆う金属シールド層6と、金属シールド層6の周囲を覆うシース7と、を備えている。
【0014】
通信ケーブル1は、例えば、鉄道車両用のLANケーブルや、データセンタ等で大容量データを送受信するLANケーブル等として用いられるものである。
【0015】
本実施の形態では、コア線2は、1本の導体(複数本の金属素線21aを撚り合わせた撚線導体)21を絶縁体22で被覆した絶縁電線23を一対有し、これら一対の絶縁電線23を撚り合わせた対撚線からなる。ただし、これに限らずコア線2は、例えば、並行に配置された一対の導体21を絶縁体22で一括被覆した二芯一括被覆構造のものであってもよいし、1本の絶縁電線23のみを有するものであってもよい。
【0016】
導体21は、複数本の金属素線21aを撚り合わせた撚線導体からなる。金属素線21aとしては、純銅からなる軟銅線や、純銅からなる軟銅線に錫又は銀等の金属めっきを施したものを用いることができる。なお、これに限らず、導体21は、単線導体で構成されてもよい。
【0017】
絶縁体22は、導体21の周囲を覆う発泡樹脂からなる発泡層221と、発泡層221の周囲を覆う非発泡樹脂からなる非発泡層222と、を有している。発泡層221を構成する発泡樹脂としては、例えば、発泡ポリエチレンを用いることができる。また、非発泡層222を構成する非発泡樹脂としては、例えば、非発泡のポリエチレンを用いることができる。なお、これに限らず、絶縁体22は、比誘電率が2.5以下の材料、例えばFEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体)等のフッ素樹脂から構成されてもよい。
【0018】
図2に示すように、シールドテープ3は、樹脂層31と、樹脂層31の一方の面に形成された金属層32と、を有している。本実施の形態では、樹脂層31は、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)等のポリエステルからなる。また、金属層32は、軽量で低コストなアルミニウムからなる。シールドテープ3は、金属層32を外側として複数のコア線2それぞれの周囲を個別に覆うように縦添え巻きされている。シールドテープ3の巻き付け方等の詳細については、後述する。
【0019】
シールド付きコア線4は、コア線2の周囲にシールドテープ3を縦添え巻きしたものである。ここでは、4本のシールド付きコア線4を用いる場合を説明するが、シールド付きコア線4の本数についてはこれに限定されるものではない。本実施の形態では、4本のコア線2、すなわち4本の対撚線が用いられているが、これら4本の対撚線の撚りピッチは、互いに異なることが望ましい。これにより、漏話減衰量を抑制することが可能になる。
【0020】
4本のシールド付きコア線4は、互いに撚り合わされて集合体5が形成されている。集合体5は、比較的長い撚りピッチで撚り合わされており、その撚りピッチは、70mm以上140mm以下とされる。集合体5の撚りピッチを70mm以上とすることで、通信ケーブル1の電気長を短くして伝播遅延時間を短くでき、またコア線2が締め付けられ発泡層221が潰れることを抑制して、伝送特性が劣化するのを抑制することができる。さらに、詳細は後述するが、本実施の形態では、各シールド付きコア線4は、集合体5の撚りに合わせてねじられているために、集合体5の撚りピッチが短いと、シールドテープ3に皺がよる等して、伝送特性が劣化してしまうおそれがあるが、集合体5の撚りピッチを70mm以上とすることで、シールドテープ3に皺が生じることを抑制し、伝送特性の劣化を抑制できる。また、集合体5の撚りピッチを140mm以下とすることで、通信ケーブル1を曲げた際等に1つのシールド付きコア線4に負荷が集中することを抑制し、伝送特性の劣化やケーブル寿命の短縮化を抑制できる。さらに、撚りによって各シールド付きコア線4の向きや相対的な位置関係を容易に保持することが可能となり、後述する巻き終わり側端部3a同士の位置関係等を保持することが可能となる。
【0021】
このように、集合体5の撚りピッチを70mm以上140mm以下とすることで、シールド付きコア線4へのストレスを抑制して発泡層221の潰れやシールドテープ3の皺の発生を抑制できると共に、曲げによる伝送特性の劣化を抑制し、シールド付きコア線4のシールドテープ3の巻き終わり側端部3a(後述する)の向きや位置を保持することが可能になる。なお、コア線2として用いる対撚線の撚りピッチは、例えば、14mm以上20mm以下である。集合体5の撚りピッチは、コア線2として用いる対撚線の撚りピッチの4倍以上となっている。
【0022】
金属シールド層6は、集合体5の周囲を覆うように形成されている。金属シールド層6と、各シールド付きコア線4におけるシールドテープ3の金属層32とは、接触し電気的に接続されており、同電位となるように構成されている。
【0023】
本実施の形態では、金属シールド層6は、金属素線を編み組みした編組シールドからなる。金属シールド層6は、例えば金属素線を螺旋状に配置した横巻シールド等と比較して、金属シールド層6よりも径方向内方に位置する部材(ここでは集合体5)を締め付けにくい。本実施の形態では、金属シールド層6の内径を適宜調整することで、集合体5を締め付けないように構成している。これにより、絶縁体22が発泡層221を含む場合であっても、発泡層221に潰れが発生することが抑制され、伝送特性の劣化が抑制される。また、金属シールド層6内でシールド付きコア線4が比較的自由に動けるようになり、通信ケーブル1を曲げやすくなる。さらに、各シールド付きコア線4間に隙間、すなわち比誘電率が低い空気層が保持されるので、減衰量をより抑制することが可能になる。なお、
図1(a)では示されていないが、実際には、シールドテープ3がシールド付きコア線4間の隙間に入り込む等して、シールドテープ3の断面形状は円形状とはならない。
【0024】
本実施の形態では、シース7は、ポリオレフィンからなる。また、シース7として、ポリ塩化ビニル(PVC)やフッ素樹脂からなるものを用いても良い。難燃性が要求される場合、シース7としては、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)からなるものを用いることが有効である。また、シース7には、難燃剤として、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム等の金属水酸化物を、ベース樹脂100質量部に対して100質量部以上250質量部以下添加してもよい。さらに、シース7に、酸変性ポリオレフィン等を添加してもよい。集合体5を締付けないように、シース7は、チューブ押出しにより形成されるとよい。シース7の外径、すなわち通信ケーブル1の外径は、例えば8.8mmである。
【0025】
(シールドテープ3の巻き付け方等の詳細)
本発明者らが検討を行ったところ、コア線2(対撚線)に対し、シールドテープ3を螺旋状に巻き付けた場合、ケーブル長手方向に周期的に樹脂層31が配置されることになるため、高速信号を伝送した際に、樹脂層31から周方向における全方向で漏話が発生する。他方、本実施の形態のように、シールドテープ3を縦添え巻きする場合、
図3に示すように、高速信号を伝送した際に、シールドテープ3の幅方向における一方の端部であって、かつ縦添え巻きの外側に位置する側の端部(以下、巻き終わり側端部3aという)から、漏話が発生することが見出された。よって、各シールド付きコア線4におけるシールドテープ3の巻き終わり側端部3a同士を十分に離間させることで、漏話減衰量を抑制することが可能になる。
【0026】
そこで、本実施の形態では、複数のシールド付きコア線4のそれぞれを、シールドテープ3の巻き終わり側端部3aが、コア線2の中心位置(中心軸)よりも径方向外側となるように配置した。つまり、
図1(a)に示すように、4本のコア線2の中心位置を通る円Aよりも外側に巻き終わり側端部3aが配置されるように、各シールド付きコア線4を配置した。これにより、各シールド付きコア線4において巻き終わり側端部3aがコア線2の中心位置(円A)よりも径方向内側に配置されている場合と比較して、漏話の発生位置である巻き終わり側端部3aを互いに離間させ、漏話減衰量を抑制し、伝送特性の向上を図ることが可能になる。なお、実際に通信ケーブル1を製造すると、各コア線2の位置がずれることも考えられる。この場合、長手方向に垂直な断面視において、通信ケーブル1の中心位置(ケーブル中心)を中心とし、かつ、4本のコア線2のうち最もケーブル中心に近いコア線2の中心位置を通る真円よりも外側に、巻き終わり側端部3aが配置されているとよい。
【0027】
漏話減衰量をより抑制するためには、巻き終わり側端部3aをより径方向外側に配置することがより好ましく、コア線2よりも径方向外側に巻き終わり側端部3aが配置されるように、各シールド付きコア線4を配置することがより望ましい。つまり、シールド付きコア線4のそれぞれは、コア線2よりも径方向外側(通信ケーブル1における径方向外側)に巻き終わり側端部3aが位置するようにシールドテープ3が巻き付けられている。本実施の形態では、各シールド付きコア線4は、それぞれのシールドテープ3の巻き終わり側端部3aが、4本のコア線2に外接する円Bよりも径方向外側となるように配置されている。なお、実際に通信ケーブル1を製造すると、各コア線2の位置がずれることも考えられる。この場合、長手方向に垂直な断面視において、通信ケーブル1の中心位置(ケーブル中心)を中心とし、かつ、4本のコア線2のうち最もケーブル中心に近いコア線2に外接する真円よりも外側に、巻き終わり側端部3aが配置されているとよい。
【0028】
各シールド付きコア線4のシールドテープ3の巻き終わり側端部3a同士は、2.5mm以上離れているとよい。これは、各シールド付きコア線4のシールドテープ3の巻き終わり側端部3a同士の距離(長手方向に垂直な断面視における直線距離)が2.5mm未満であると、漏話減衰量が多くなり、伝送特性が劣化してしまうおそれがあるためである。
【0029】
本実施の形態では、複数のシールド付きコア線4のそれぞれは、そのシールドテープ3の巻き終わり側端部3aが、周方向に隣り合うシールド付きコア線4と金属シールド層6との間に形成される隙間Cに臨むように配置されている。通信ケーブル1では、周方向に4つのシールド付きコア線4が配置されているため、4つの隙間Cを有するが、各シールド付きコア線4のシールドテープ3の巻き終わり側端部3aは、それぞれ異なる隙間Cに臨むように配置されている。
【0030】
なお、これに限らず、各シールド付きコア線4のシールドテープ3の巻き終わり側端部3aが、金属シールド層6に臨んでいてもよい。また、漏話減衰量を低減するという観点から、各シールド付きコア線4のシールドテープ3の巻き終わり側端部3aは、他のシールド付きコア線4のシールドテープ3の巻き終わり側端部3aに臨んでいないこと(巻き終わり側端部3aが他のシールド付きコア線4のシールドテープ3の巻き終わり側端部3a側に向いていないこと)がより望ましい。また、本実施の形態では、各シールド付きコア線4のシールドテープ3の巻き終わり側端部3aが、隣接する各シールド付きコア線4の間に位置する金属シールド層6側に向いている。
【0031】
各シールド付きコア線4のシールドテープ3の巻き終わり側端部3aは、できるだけ離間していることが望ましく、周方向に略等間隔に配置されていることが望ましい。換言すれば、各シールド付きコア線4のシールドテープ3の巻き終わり側端部3aは、ケーブル中心に対して略90度回転対称の位置に配置されることが望ましい。
【0032】
各シールド付きコア線4は、集合体5の撚りに合わせてねじられており、各シールド付きコア線4のシールドテープ3の巻き終わり側端部3aの相対的な位置関係は、長手方向の位置によらず略一定の関係となっている。そのため、シース7と金属シールド層6を除去した状態で集合体5を目視すると、4本のシールド付きコア線4それぞれの巻き終わり側端部3aが外側に露出するようになっている。つまり、各シールド付きコア線4は、その巻き終わり側端部3aが外側から目視可能な位置となるように配置されている。
【0033】
また、複数のシールド付きコア線4のそれぞれは、シールドテープ3の巻き方向が同じ方向であることが望ましい。これは、巻き終わり側端部3aからコア線2へと漏話が侵入するため、シールドテープ3の巻き付け方向が逆方向のシールド付きコア線4が含まれていると、周方向において隣り合うシールド付きコア線4のシールドテープ3の巻き終わり側端部3a同士が周方向に対向し、漏話減衰量が大きくなってしまうおそれがあるためである。なお、ここでいうシールドテープ3の巻き方向とは、シールド付きコア線4の一方の端部から見たときに、シールドテープ3の幅方向において巻き終わり側端部3aとは反対側の端部から巻き終わり側端部3aにかけて、コア線2の周囲に沿ってシールドテープ3が回転している方向である。
【0034】
シールドテープ3は、コア線2の周囲を1.3周以上1.5周以下するように、コア線2の周囲に巻き付けられる。シールドテープ3の巻き付けがコア線2の周囲の1.3周未満であると、オーバーラップ長が短くなり過ぎ、何らかの理由でオーバーラップ部分が開いてしまい、漏話が増加してしまうおそれがある。また、シールドテープ3をコア線2の周囲に1.5周を超えるように縦添え巻きすることは、製造上困難が伴い、コストも高くなり、通信ケーブル1が重くなってしまう。なお、コア線2の周囲にシールドテープ3を1.3周巻き付ける場合、オーバーラップ長は、シールドテープ3の幅の約23%である。また、コア線2の周囲にシールドテープ3を1.5周巻き付ける場合、オーバーラップ長は、シールドテープ3の幅の約33%である。よって、シールドテープ3のオーバーラップ長は、シールドテープ3の幅の23%以上33%以下であるとよい。また、本実施の形態では、複数のシールド付きコア線4のそれぞれは、シールドテープ3がオーバーラップしているオーバーラップ部(シールドテープ3が二重になっている部分)が、金属シールド層6と径方向に対向するように配置されている。すなわち、シールド付きコア線4のシールドテープ3のオーバーラップ部が通信ケーブル1の中心側ではなく金属シールド層6側に位置している。
【0035】
また、シールドテープ3の金属層32の厚さは、30μm以上であるとよい。これは、金属層32の厚さが30μm未満であると、製造時に破断してしまうおそれがあり、また、コア線2を巻いた状態でシールドテープ3の形状を維持できなくなってしまう(巻いた後に巻き終わり側端部3aが開いてしまう)おそれがあるためである。本実施の形態では、金属層32の厚さを38μmとし、樹脂層31の厚さを12μmとした。
【0036】
(通信ケーブル1の製造方法)
通信ケーブル1を製造する際には、まず、導体21の周囲に発泡層221と非発泡層222とを同時に被覆し、絶縁電線23を形成する。その後、
図4(a)に示す撚り合わせ装置40を用いて、集合体5を形成する。具体的には、送出部42に、絶縁電線23を巻き付けたドラム41を一対セットし、一対のドラム41を回転させながら両ドラム41から絶縁電線23をそれぞれ送出することで、対撚線からなるコア線2を形成する。ここでは、4つの送出部42が設けられている。4つの送出部42から送出された4本のコア線2は、テープ巻き部43に導入される。
【0037】
図4(b)に示すように、テープ巻き部43では、ボビン43aから送出されたシールドテープ3が、複数のローラ43bを介して張力を付与されつつ、送出部42から送出されたコア線2と共にダイス44へと送られる。なお、
図4(b)では、コア線2を破線で示している。また、
図4(b)では、1つのボビン43aと1つのシールドテープ3の経路のみを代表して示しているが、実際には、4本のコア線2に対応するように4つのボビン43aが設けられ、各ボビン43aから複数のローラ43bを介して対応するダイス44へとシールドテープ3がそれぞれ送られている。
【0038】
図4(c)に示すように、ダイス44は、円筒状の本体部441と、本体部441の入口側(シールドテープ3とコア線2の導入側)に設けられたテープガイド442と、を有している。テープガイド442は、シールドテープ3の幅方向における両端部をガイドする一対のガイド溝442aを有し、シールドテープ3の幅方向における両端部がガイド溝442aを通過することでシールドテープ3を徐々に筒状に変形させ、コア線2の周囲にシールドテープ3を縦添え巻きするように構成されている。このテープガイド442の取付角度を適宜調整することにより、シールドテープ3の本体部441への進入角度を所望の角度で一定に保ち、シールドテープ3の巻き終わり側端部3aの位置を所望の位置に調整することができる。なお、ここでいうテープガイド442の取付角度とは、本体部441の周方向における取付角度をいう。
【0039】
より具体的には、各ダイス44のテープガイド442の配置は、
図5に示すように、90度回転対称となるように配置される。なお、
図5では、各ダイス44を、
図4(c)におけるC−C線断面で表している。本実施の形態では、コア線2は、シールドテープ3の幅方向中央部と対向した状態で、ダイス44へと導入される。また、本実施の形態では、導入したシールドテープ3の位置に対して、コア線2を挟んで反対側に巻き終わり側端部3aが配置されるため、シールドテープ3が内側、コア線2が外側になるように、テープガイド442の取付角度が調整される。各ダイス44は近接して配置されており、図示しない固定リングにより、テープガイド442の取付角度を適宜調整した状態で固定されている。
【0040】
各ダイス44から導出された4本のシールド付きコア線4は、円筒状の集合ガイド46に導入されて束ねられた状態(集合させた状態)となり、巻き取り部45へと送られる。より詳細には、集合ガイド46を通過した4本のシールド付きコア線4は、巻き取り部45により周方向に回転され撚り合わされた状態とされ集合体5が形成され、形成された集合体5が巻き取り部45へと送られる。なお、集合ガイド46を用いることなく4本のシールド付きコア線4を撚り合わせると、各シールド付きコア線4のシールドテープ3の巻き終わり側端部3aの位置を制御することが困難となるため、本実施の形態では、集合ガイド46によって4本のシールド付きコア線4を集合させた後に、撚り合わせて集合体5を形成している。なお、集合ガイド46は、巻き取り部45による回転の影響をダイス44側へと伝えないようにする役割も果たしている。
【0041】
図4(a)に戻り、巻き取り部45は、集合体5を巻き取るためのドラム45aと、4本のシールド付きコア線4を一括して周方向に回転させつつドラム45aに巻き取らせる回転機構45bと、を有している。テープ巻き部43の集合ガイド46で束ねられた4本のシールド付きコア線4は、回転機構45bにより周方向に回転され(ねじられ)、これにより集合体5が形成される。上述のように、集合ガイド46を用いているため、各シールド付きコア線4のシールドテープ3の巻き終わり側端部3aの相対的な位置関係が維持されたまま撚り合わされる。形成された集合体5は、回転機構45bの回転によりドラム45aに巻き取られる。
【0042】
その後、ドラム45aに巻き取られた集合体5の周囲に編組シールドからなる金属シールド層6を形成し、さらに金属シールド層6の周囲にチューブ押出しによりシース7を形成することで、通信ケーブル1が得られる。
【0043】
(通信ケーブル1の漏話減衰量特性)
実施例として、本実施の形態に係る通信ケーブル1の近端漏話減衰量特性をシミュレーションにより求めた。得られた近端漏話減衰量特性を
図6に示す。
図6では、カテゴリー7のLANケーブルに求められる規格値も併せて示している。
図6に示すように、実施例の通信ケーブル1は、100MHz以上の高速信号に対しても、規格値に対して尤度をもった近端漏話減衰量となっており、優れた漏話減衰量特性が得られていることが分かる。
【0044】
本実施の形態との比較のため、
図7(a)に示すような比較例の通信ケーブル60について、実施例と同様に近端漏話減衰量特性をシミュレーションにより求めた。比較例の通信ケーブル60は、各シールド付きコア線4のシールドテープ3の巻き終わり側端部3aをケーブル中心側(コア線2の中心位置よりも通信ケーブル1の径方向内側)に配置した以外は、実施例の通信ケーブル1と同様の構造とした。得られた近端漏話減衰量特性を
図7(b)に示す。
【0045】
図7(b)と
図6とを比較すれば分かるように、比較例の通信ケーブル60では、実施例の通信ケーブル1と比較して、100MHz以上の高速信号に対して近端漏話減衰量が増加しており、規格値を満足するものの、規格値に対する尤度が低下していることが分かる。
【0046】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係る通信ケーブル1では、複数のシールド付きコア線4のそれぞれは、縦添え巻きされたシールドテープ3の幅方向における一方の端部であって、かつ縦添え巻きの外側に位置する巻き終わり側端部3aが、コア線2の中心位置よりも通信ケーブル1の径方向外側となるように配置されている。
【0047】
これにより、シールドテープ3の巻き終わり側端部3aが、コア線2の中心位置よりも通信ケーブル1の径方向内側に配置されている場合と比較して、各シールド付きコア線4のシールドテープ3の巻き終わり側端部3a同士の距離を大きく確保することができ、100MHz以上といった高速信号を伝送した際の漏話減衰量等の伝送特性を向上させることが可能となる。その結果、通信ケーブル1によれば、カテゴリー7以上(例えば、カテゴリー7Aやカテゴリー8)のLANケーブルが要求される特性を満足することが可能になる。
【0048】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0049】
[1]一本以上の導体(21)の周囲を個別にあるいは一括して覆う絶縁体(22)を有するコア線(2)と、該コア線(2)の周囲を覆うように縦添え巻きされたシールドテープ(3)と、を有するシールド付きコア線(4)を複数備える通信ケーブル(1)において、前記複数のシールド付きコア線(4)のそれぞれは、前記シールドテープ(3)の幅方向における一方の端部であって、かつ縦添え巻きの外側に位置する巻き終わり側端部(3a)が、前記コア線(2)の中心位置よりも前記通信ケーブル(1)の径方向外側となるように配置されている、通信ケーブル(1)。
【0050】
[2]前記複数のシールド付きコア線(4)の前記シールドテープ(3)の巻き終わり側端部(3a)同士が、2.5mm以上離れている、[1]に記載の通信ケーブル(1)。
【0051】
[3]前記複数のシールド付きコア線(4)のそれぞれは、前記シールドテープ(3)の巻き方向が同じ方向である、[1]または[2]に記載の通信ケーブル(1)。
【0052】
[4]前記複数のシールド付きコア線(4)のそれぞれは、前記シールドテープ(3)の巻き終わり側端部(3a)が、前記コア線(2)よりも径方向外側となるように配置されている、[1]乃至[3]の何れか1項に記載の通信ケーブル(1)。
【0053】
[5]前記複数のシールド付きコア線(4)の周囲を一括して覆う金属シールド層(6)を備え、前記複数のシールド付きコア線(4)のそれぞれは、前記シールドテープ(3)の巻き終わり側端部(3a)が、周方向に隣り合う前記複数のシールド付きコア線(4)と前記金属シールド層(6)との間の隙間(C)に臨むように配置されている、[1]乃至[4]の何れか1項に記載の通信ケーブル(1)。
【0054】
[6]集合体(5)の撚りピッチが、70mm以上140mm以下である、[1]乃至[5]の何れか1項に記載の通信ケーブル(1)。
【0055】
[7]前記シールドテープ(3)は、樹脂層(31)、及び該樹脂層(31)の一方の面に形成された金属層(32)を有し、前記シールドテープ(3)の前記金属層(32)がアルミニウムからなり、前記金属層(32)の厚さが、30μm以上である、[1]乃至[6]の何れか1項に記載の通信ケーブル(1)。
【0056】
[8]前記複数のシールド付きコア線(4)の周囲を一括して覆う金属シールド層(6)を備え、前記金属シールド層(6)は、金属素線を編み組みした編組シールドであり、前記コア線(2)の前記絶縁体(22)は、発泡樹脂からなる発泡層(221)を含む、[1]乃至[7]の何れか1項に記載の通信ケーブル(1)。
【0057】
[9]一本以上の導体(21)の周囲を個別にあるいは一括して覆う絶縁体(22)を有するコア線(2)と、該コア線(2)の周囲を覆うように縦添え巻きされたシールドテープ(3)と、を有するシールド付きコア線(4)を複数備える通信ケーブル(1)の製造方法であって、前記シールドテープ(3)の幅方向における両端部をガイドする一対のガイド溝(442a)を有し、前記シールドテープ(3)の幅方向における両端部が前記ガイド溝(442a)を通過することで前記シールドテープ(3)を徐々に筒状に変形させ、前記コア線(2)の周囲に前記シールドテープ(3)を縦添え巻きして前記シールド付きコア線(4)を形成するように構成された複数のダイス(44)を用い、前記複数のダイス(44)から導出された複数の前記シールド付きコア線(4)を一括して周方向に回転させることで、集合体(5)を形成するようにされ、前記複数のダイス(44)の取付角度をそれぞれ調整することにより、前記集合体(5)を形成した際に、前記複数のシールド付きコア線(4)における、前記シールドテープ(3)の幅方向における一方の端部であって、かつ縦添え巻きの外側に位置する巻き終わり側端部(3a)を、前記コア線(2)の中心位置よりも前記通信ケーブル(1)の径方向外側となるように配置する、通信ケーブルの製造方法。
【0058】
[10]前記複数のダイス(44)から導出された複数の前記シールド付きコア線(4)を集合ガイド(46)に導入して集合させ、前記集合ガイド(46)で集合させた複数の前記シールド付きコア線(4)を一括して周方向に回転させることで、前記集合体(5)を形成する、[9]に記載の通信ケーブルの製造方法。
【0059】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0060】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態では言及しなかったが、シールド付きコア線4において、シールドテープ3を縦添え巻きにより複数層巻き付けてもよい。例えば、2層のシールドテープ3を巻き付ける場合、1層目と2層目の巻き方向を逆方向とすることで、漏話減衰量をより抑制することが可能である。この場合、最も外側に巻かれたシールドテープ3の巻き終わり側端部3aが、コア線2の中心位置よりも通信ケーブル1の径方向外側に位置していればよい。