(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記二波長駆動液晶ホスト材料のクロスオーバ周波数は10キロヘルツ未満、好ましくは5kHz未満であり、閾値電圧は約100V未満であり、前記コレステリック液晶混合物(2)は前記高周波数範囲を有し、前記高周波数範囲は高周波数限界(fH)より高い範囲にわたり、前記高周波数限界(fH)は100kHz未満である、請求項1〜3の何れか1項に記載の光学フィルタ。
前記二周波駆動液晶ホスト材料はW−1978C又はW−1831Aを含み、及び/又は前記キラルドーパントは(13bR)−5,6−ジヒドロ−5−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)−4H−ジナフト[2,1−f:1’,2’−h][1,5]ジオキソニンを含む、請求項1〜4の何れか1項に記載の光学フィルタ。
前記液晶セル(1)は、少なくとも第一のブラッグ反射モードにおいて、前記閾値電圧より高く、前記中間周波数範囲に含まれる第一の所定の周波数で変調された印加電圧で動作するように、コントローラ(5)によって制御されるように適合され、前記コレステリック液晶混合物(2)は高周波数モードで水平配向構造を有し、前記印加電圧は前記閾値電圧より高く、印加電圧の前記周波数は前記高周波数範囲内にあり、前記液晶セル(1)は、前記オフモードにおける前記ブラッグ反射波長と等しい前記高周波数モードにおけるブラッグ反射波長を有する、請求項1〜5の何れか1項に記載の光学フィルタ。
請求項1〜6の何れか1項に記載の第一の光学フィルタと第二の光学フィルタとであって、所定の第一のブラッグ反射波長を有する第一の光学フィルタと、所定の第二のブラッグ反射波長を有する第二の光学フィルタと、を含み、前記第一の光学フィルタと前記第二の光学フィルタは光学的に直列に配置される光学フィルタデバイス。
前記第一の光学フィルタと前記第二の光学フィルタは、らせん方向によって、又はそれぞれのブラッグ反射波長の値によっての何れかで異なる、請求項7に記載の光学フィルタデバイス。
請求項1〜8の何れかに記載の光学フィルタと、少なくとも前記第一のブラッグ反射モードと、また、オフモード及び高周波数モードのうちの一方で前記光学フィルタを制御するように構成されるコトンローラ(5)と、を含み、それにしたがって、前記オフモードでは、前記コントローラ(5)は前記電極(13、14)に電圧を印加せず、前記液晶セル(1)は、前記オフモードにおける前記ブラッグ反射波長を有し、また、前記コントローラ(5)は、前記高周波数範囲にある周波数で変調された前記閾値電圧より高い電圧を印加し、前記液晶セル(1)は、前記オフモードにおける前記ブラッグ反射波長と同様の値の前記高周波数モードにおけるブラッグ反射波長を有し、前記第一のブラッグ反射モードでは、前記コントローラ(5)は前記中間周波数範囲に含まれる第一の所定の周波数で変調された、前記閾値電圧より高い電圧を印加し、それによって前記液晶セル(1)は第一の所定のブラッグ反射波長を有する光学デバイス。
前記コントローラ(5)はさらに、前記第一のブラッグ反射モードで前記光学フィルタを制御するように構成され、前記コントローラ(5)は中間周波数範囲にある第二の所定の周波数で変調された、前記閾値電圧より高い電圧を印加し、それによって前記液晶セル(1)は第二の所定のブラッグ反射波長を有し、前記第二の所定の周波数は前記第一の所定の周波数とは異なり、前記第二のブラッグ反射波長は前記第一の所定のブラッグ反射波長とは異なる、請求項9に記載の光学デバイス。
【背景技術】
【0003】
波長選択型光学フィルタ処理は、顕微鏡装置等の計測ツールや眼鏡レンズをはじめとする多くの分野で使用される。
【0004】
多くの文献に、狭いスペクトルバンド幅内の所定の波長を選択的にフィルタ処理するように設計された、ノッチフィルタ等のパッシブ光学フィルタが記載されている。パッシブノッチフィルタは一般に、多層フィルムに基づく。パッシブノッチフィルタは、所定の波長を反射させ、それ以外の波長を透過させる。バンドストップ波長は、入射角を変えることによって数十ナノメートルの狭いスペクトル範囲内で調整されるかもしれない。
【0005】
しかしながら、異なる分野には、より広いスペクトル範囲で調整可能な波長可変バンドストップ光学フィルタが求められる。
【0006】
特に、青及びUVスペクトル範囲内で調整可能なアクティブ治療用フィルタが求められている。
【0007】
380ナノメートル(nm)〜500nm(青色光)の間の高エネルギー可視光は人間の目の網膜に対する累積損傷を誘発するが、これは特に415nm〜455nmの青紫光、すなわち高有害青色範囲(bad blue range)について言える。しかしながら、465nm〜495nmのスペクトル範囲、すなわち低有害青色範囲(good blue range)は人体に対して、睡眠、気分、体温、又は精神運動性に関する幾つかの目に見えない機能を有する。それゆえ、青紫範囲全体にわたるパッシブ光学フィルタは、概日周期に不利な影響を与えるかもしれない。さらに、青色範囲内にわたるフィルタを使用することにより、色認識も影響を受ける。
【0008】
それゆえ、眼科レンズの装用者にとって、UV保護を確実にしながら容認可能な色認識を提供する、UVカット専用モードを有する治療用フィルタを配置する必要がある。概日周期を効率的に同期させるには、低有害青色範囲への暴露を短時間のみ、特定の時間に行えばよい。それゆえ、いわゆる低有害青色範囲への暴露は、日中において有利な効果を与えるが、これらの効果は、夜間は不利となり得る。それゆえ、青色範囲において高有害青から低有害青へと希望に応じてシフトさせることのできる選択的スペクトルバンド幅を有する治療用フィルタが必要とされている。
【0009】
顕微分光測定の分野、特に蛍光顕微鏡装置においては、一般に、異なる染料の検出に異なるパッシブダイクロイックフィルタが必要である。例えば405nm〜488nm、560nm、及び/又は640nmの励起レーザ波長に応じて選択的スペクトルバンドを切り替えるために、1つ又は2つのチューナブルダイクロイックフィルタのみを配置することが望ましい。
【0010】
多くのアクティブ光学フィルタデバイスは、液晶技術に基づく。反射式に動作するバンドストップフィルタを製造するために、異なる種類の液晶が使用される。特に、コレステリック液晶(CLC)は、液晶ホストとキラルドーパントを含み、その結果、らせんピッチ及び軸により画定されるCLC水平配向構造が得られる。コレステリック液晶デバイスは、カラーフィルタに応用するために、特定の波長を反射するように調整できる。
【0011】
CLCデバイスのフォトニックバンドギャップは一般に、液晶ホスト及び/又はキラルパラメータを調整することによって、又は温度(非特許文献1)、圧力、光照射(非特許文献2)、若しくは電界(非特許文献3)等の外的要因を調整することによって制御される。
【0012】
しかしながら、電気駆動式CLCフィルタデバイスは一般に、2つの状態間のみのスイッチとして動作し(又は、切り替えのみ可能なデバイス)、これは、円偏光について、それぞれ透過係数100%と0%のONとOFFの2つの安定状態しかないことを意味する。周波数だけで反射ピークをオフにするには、印加周波数は高周波数範囲(MHz)にある。異なる高印加周波数で対処することにより、ブラッグ反射波長内のシフトも可能とすることができるが、スペクトル反射範囲は非常に限定的である。オン及びオフ状態を切り替える際、CLCデバイスは中間状態を呈する。これらの中間状態では、CLCデバイスはフォーカルコーニック構造を示し、これは望ましくない散乱の原因となる。
【0013】
CLCデバイスはまた、らせんポリマナノ分散液晶又はブルー相液晶(BPLC)等のポリマ安定化形態でも入手可能である。しかしながら、ポリマベースのCLCバージョンには、高い閾値電圧が必要であり、これも望ましくない散乱を示す。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的は、本開示によれば、光学フィルタを提供することによって達成される。
【0016】
本発明によれば、光学フィルタは、相互に対向する2つの電極であって、2つの電極の各々は配向層により覆われ、セルギャップにより分離されている2つの電極と、2つの電極間に挿入されたコレステリック液晶混合物と、を含む液晶セルを含み、液晶セルは電圧(V)を2つの電極間に印加するように構成され、コレステリック液晶混合物は、キラルドーパントと二周波駆動液晶ホスト材料を含み、二周波液晶ホスト材料はクロスオーバ周波数(f
C)を有し、液晶セルは、印加電圧がゼロであるとき、及び印加電圧が高周波数限界より高い周波数で変調されたときに、水平配向構造と300nm〜900nmの間のスペクトル範囲内の参照ブラッグ反射波長の参照ブラッグ反射モードを有し、液晶セルは、印加電圧が閾値電圧より高く、印加電圧がクロスオーバ周波数(f
C)より高く、且つ高周波数限界(f
H)より低い中間周波数範囲内にある他の周波数で変調されたときに、ほどかれた水平配向構造と第一のブラッグ反射波長の第一のブラッグ反射モードを有し、第一のブラッグ反射波長は参照ブラッグ反射波長とは異なる。
【0017】
この光学フィルタは、電気制御式可変波長バンドストップ光学フィルタを提供する。さらに、この光学フィルタは電気的に切り替え可能である。
【0018】
本開示の特定の有利な態様によれば、二波長駆動液晶ホスト材料の屈折率複屈折は可視範囲内で0.2未満である。
【0019】
他の特定の有利な態様によれば、キラルドーパントのらせん誘起力は100μm
−1以上である。
【0020】
有利な態様として、二波長駆動液晶ホスト材料のクロスオーバ周波数は10キロヘルツ(kHz)未満、好ましくは5kHz未満であり、閾値電圧は約10V未満であり、コレステリック液晶混合物は高周波数範囲を有し、高周波数範囲は高周波数限界(f
H)より高い範囲にわたり、高周波数限界(f
H)は100kHz未満である。
【0021】
好ましい実施形態によれば、二周波駆動液晶ホスト材料は、ポーランドのMilitary University of Technologyが販売するW−1978C又はW−1831Aを含み、及び/又はキラルドーパントはR−5011を含み、これはCAS番号944537−61−5の(13bR)−5,6−ジヒドロ−5−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)−4H−ジナフト[2,1−f:1’,2’−h][1,5]ジオキソニンとも呼ばれる。
【0022】
他の実施形態によれば、液晶ホストはポーランド、ワルシャワのMilitary University of Technology、MUTが販売するW−1831Aであり、及び/又はキラルドーパントはR−5011を含む。R−5011の化学式は以下のとおりである:
【化1】
【0023】
本開示の特定の有利な態様によれば、液晶セルは、少なくとも第一のブラッグ反射モードにおいて、閾値電圧より高く、中間周波数範囲に含まれる第一の所定の周波数で変調された印加電圧で動作するように、コントローラによって制御されるように適合され、液晶混合物は高周波数モードで水平配向構造を有し、印加電圧は閾値電圧より高く、印加電圧の周波数は高周波数範囲内にあり、液晶セルは高周波数モードにおいて、参照ブラッグ反射波長と等しいブラッグ反射波長を有する。
【0024】
特定の実施形態において、光学フィルタデバイスは、本明細書で開示される第一の光学フィルタであって、所定の第一のブラッグ反射波長を有する第一の光学フィルタと、本明細書で開示される第二の光学フィルタであって、所定の第二のブラッグ反射波長を有する第二の光学フィルタと、を含み、第一の光学フィルタと第二の光学フィルタは光学的に直列に配置される。
【0025】
この実施形態の変形型によれば、第一の光学フィルタと第二の光学フィルタはらせん方向によって、及び/又はそれぞれのブラッグ反射波長の値によって異なる。
【0026】
本発明はまた、光学デバイスにも関し、これは、本明細書で開示される何れかの実施形態による光学フィルタと、少なくとも第一のブラッグ反射モードと、また、オフモード及び高周波数モードのうちの一方で光学フィルタを制御するように構成されるコトンローラと、を含み、それにしたがって、オフモードでは、コントローラは電極に電圧を印加せず、液晶セルはオフモードでは参照ブラッグ反射波長を有し、また、高周波数モードでは、コントローラは、高周波数範囲にある周波数で変調された、閾値電圧より高い電圧を印加し、液晶セルは高周波数モードでは参照ブラッグ反射波長と同様の値のブラッグ反射波長を有し、第一のブラッグ反射モードでは、コントローラは中間周波数範囲にある第一の所定の周波数で変調された、閾値電圧より高い電圧を印加し、それによって液晶セルは第一の所定のブラッグ反射波長を有する。
【0027】
特定の有利な態様によれば、コントローラはさらに、第一のブラッグ反射モードで光学フィルタを制御するように構成され、コントローラは中間周波数範囲にある第二の所定の周波数で変調された、閾値電圧より高い電圧を印加し、それによって液晶セルは第二の所定のブラッグ反射波長を有し、第二の所定の周波数は第一の所定の周波数とは異なり、第二のブラッグ反射波長は第一の所定のブラッグ反射波長とは異なる。
【0028】
好ましくは、オフモードでは、参照ブラッグ反射波長はUV範囲にあり、また、第一のブラッグ反射モードでは、第一のブラッグ反射波長は380〜780nmの範囲、例えば400〜460nmの範囲にある。
【0029】
特定の有利な実施形態によれば、光学デバイスは、光学フィルタと直列に配置された、光学パワーを有する光学構成部品をさらに含む。
【0030】
好ましくは、眼鏡又はレンズを含む光学デバイス。
【0031】
本開示はまた、光学フィルタの反射波長の調整方法も提供し、これは、
− 2つの電極間に挟まれたコレステリック液晶混合物を提供するステップであって、2つの電極の各々は液晶セル内の配向層で覆われ、コレステリック液晶混合物はキラルドーパントと二周波駆動液晶ホスト材料を含み、二周波駆動液晶ホスト材料は閾値電圧(V
th)とクロスオーバ周波数(f
C)を有し、液晶混合物が周波数と共に変化し、負である誘電異方性を有する、クロスオーバ周波数(f
C)より高い中間周波数範囲と、液晶混合物が周波数に依存せず、負である誘電異方性を有する、中間周波数より高い高周波数範囲を画定し、液晶セルは300〜900nmの範囲の参照ブラッグ反射波長を有するようなステップと、
− オフモードで、電極に電圧を印加しないか、高周波数範囲にある周波数で変調された電圧を印加して、液晶セルが参照ブラッグ反射波長を有し、その一方で、コレステリック液晶混合物は他の波長で透過時に散乱しないようにするステップと、
− 第一の所定のモードで、中間周波数範囲にある第一の周波数で変調された、閾値電圧より高い電圧を印加して、液晶セルが、第一の周波数に応じた第一のブラッグ反射波長を有し、その一方で、コレステリック液晶混合物は他の波長で透過時に散乱しないようにするステップであって、第一のブラッグ反射波長は参照ブラッグ反射波長とは異なるようなステップと、
を含む。
【0032】
特定の態様によれば、方法は、
− 低周波数モードで、クロスオーバ周波数より低い低周波数範囲にある周波数で変調された、閾値電圧より高い電圧を印加して、液晶混合物をブラッグ反射を持たない垂直配向構造に切り替え、その一方で、コレステリック液晶混合物は低周波数モードで透過時に散乱しないようにするステップと、
− 第二の所定のモードで、中間周波数範囲にある第二の周波数で変調された、閾値電圧より高い電圧を印加して、液晶セルが、第二の周波数に応じた第二のブラッグ反射波長を有し、その一方で、コレステリック液晶混合物が他の波長で透過時に散乱しないようにするステップであって、第二のブラッグ反射波長は第一のブラッグ反射波長と参照ブラック反射波長のどちらとも異なるようなステップ
のうちの一方をさらに含む。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本開示は、所定のスペクトル範囲内で選択された波長を調整するように適合された波長選択光学フィルタに関する。光学フィルタは、反射式及び/又は透過式に動作してよい。波長の選択は、反射ピークを初期又は参照波長からより長い波長へとシフトさせることによって行われる。
【0035】
デバイス
より正確には、本開示は液晶に基づくアクティブ光学フィルタに関する。光学フィルタは少なくとも1つの液晶セルを含む。
【0036】
図1は、異なる動作条件での、液晶セル1とコントローラ5に基づく光学フィルタの例示的な断面図を概略的に示す。
【0037】
液晶セル1は、第一の基板11と第二の基板12を含む。第一の基板11と第二の基板12は、可視スペクトル範囲で透過性を有する材料で製作される。液晶セル1は、液晶セル1の第一の基板11の上に配置された第一の電極13と第二の基板12の上に配置された第二の電極14を含む。好ましくは、第一の基板11は第二の基板12に平行である。第一の電極13は液晶セル1の、第二の電極14の反対側に設置される。第一の電極13と第二の電極14は好ましくは、例えばインジウム−錫−酸化物(ITO)層からなる透明導電性電極である。液晶セル1は、第一の電極13の表面上に配置された第一の配向構造と第二の電極14の表面上に配置された第二の配向構造を含み、第一の電極13の付近にある液晶分子と第二の電極14の付近にあるそれらの配向を決定し、したがってセルのバルクを組織化する。
【0038】
コントローラ5は、第一の電極13と第二の電極14に接続されるように適合される。コントローラ5は、第一の電極13と第二の電極14との間への印加電圧を生成するように適合される。印加電圧は、可変振幅を有していてもよい。さらに、コントローラは、選択可能な周波数で印加電圧を変調するように適合される。変調周波数範囲は0Hzから数キロヘルツ又は数十キロヘルツにわたり、任意選択により高周波数MHz範囲にある。
【0039】
液晶混合物2は、液晶セル1の第一の電極13と第二の電極14との間に充填される。マイクロサイズのスペーサがLCセル内に含められてもよく、それによって液晶セル全体のセルギャップが一定となることが確実になる。換言すれば、液晶セル1は厚さdの液晶層を含む。一般に、LC層の厚さは2μ〜10μmに含まれる。
【0040】
好ましくは、配向構造は配向層である。例えば、第一の配向層は第一の電極13の上に形成され、第二の配向層は第二の電極14の上に形成される。これらの配向層は、例えば液晶分子の配向を生じさせるようにラビングされたポリイミド層からなる。第二の配向層は好ましくは、第一の配向層の配向方向に対してアンチパラレルである配向方向を有する。第一の配向層と第二の配向層は、dで示されるセルギャップにより分離される。配向層のアンチパラレル配向は好ましいが、本発明は平行又は垂直配向でも有効であることに留意されたい。
【0041】
より正確には、液晶混合物2は二周波駆動液晶(DFLC)ホスト材料を含む。DFLC材料は、低周波数範囲では第一の符号の誘電異方性を有し、高周波数範囲では反対の符号の誘電異方性を有する。DFLC材料は通常、閾値電圧V
thとクロスオーバ周波数f
Cにより定義される。クロスオーバ周波数f
Cは異方性ゼロであり、低周波数範囲と高周波数範囲を分離する。DFLC材料は通常、2つのモード、すなわち低周波数及び高周波数でのみ動作する。
【0042】
本開示によれば、DFLCホスト材料は、低いクロスオーバ周波数f
C、好ましくは10kHz未満を呈するように選択される。DFLCホスト材料はまた、低い閾値電圧、約50V〜100Vを有するように選択される。
【0043】
液晶混合物2はまた、キラルドーパントも含む。DFLCホスト材料とキラルドーパントの性質と相対量は、用途並びに標的とされる波長範囲及び入射光条件に応じて選択される。
【0044】
キラルドーパントは、高らせん誘起力(HTP)及び低温度依存性を有するように選択される。例えば、キラルドーパントはR−5011であり、これはHTP≒100μm
−1である。
【0045】
それゆえ、DFLC材料は、コレステリック液晶のらせん構造に合わせて調整される。
【0046】
本開示から、液晶混合物2は2つより多いモードで、すなわちオフモード、高周波数モード、低周波数モード、及び/又は中間モードで動作してもよいことがわかる。
【0047】
図1Aに概略的に示されるオフモードについて考える。オフモードでは、コントローラ5は液晶セル1に電圧を印加しないか、ゼロ電圧を液晶セル1に印加する。オフモードでは、液晶混合物2は、らせんピッチP
0、らせん軸が電極13、14の表面に対して横方向であるらせん周期構造を有する。この構造では、液晶分子の長軸は電極13、14に平行であり、LC分子の長軸方向は、第一の電極13から第二の電極14へとらせんに沿って徐々に方向転換する。換言すれば、液晶混合物2は、オフモードで水平配向構造を有する。このような液晶構造によって、ブラッグ反射波長を選択的に反射することができ、これを以下、参照ブラッグ反射波長という。コレステリック液晶では、ブラッグ反射波長はλ=<n>.P
0で与えられ、<n>は液晶混合物2の平均屈折率、P
0はらせんピッチである。平均屈折率<n>はLCホスト材料に依存する。らせんピッチP
0はキラルドーパントに依存する。反射ハンド幅は、Δλ=P
0(n
e−n
o)により定義され、n
eは液晶ホスト材料の異常光光学屈折率、また、n
oは液晶ホスト材料の常光光学屈折率である。それゆえ、反射バンド幅は、ピッチP
0を変化させることによって調整できる。
【0048】
DFLC材料は、低複屈折、例えば0.2未満となるように選択される。例として、液晶ホストはポーランド、ワルシャワのMilitary University of Technology、MUTが販売するW1978Cであり、これは589nmの波長でΔn=0.1233である。
【0049】
他の例として、液晶ホストはポーランド、ワルシャワのMilitary University of Technology、MUTが販売するW−1831Aである。
【0050】
キラルドーパントの量は、印加電圧がない状態で選択されたブラッグ波長を反射させるコレステリックLCのピッチ長さを得るように特定される。
【0051】
オフモードでは、電極13、14は開回路状態である。換言すれば、f
Cより高い周波数では、印加電圧がないか、ゼロ電圧又は閾値電圧より低い電圧がある。液晶セル1の液晶混合物2は、設計されたピッチP
0により特定された参照ブラッグ波長の光を反射する。代替的に、液晶セルは、閾値電圧より低い電圧がf
Cより高い周波数で印加される場合、又は閾値電圧より高い電圧が後で定義されるf
Hより高い周波数で印加された場合に、オフモードの参照ブラッグ波長の光を反射してもよい。
【0052】
ある応用において、光学フィルタデバイスは、電圧が印加されない場合、青から近UV範囲、すなわち400nm〜440nmの参照ブラッグ反射波長を有するように構成される。
【0053】
次に、高周波数モードについて考える。高周波数モードでは、コントローラ5は、高周波数限界f
Hより高い高周波数範囲内の周波数で変調された電圧Vを印加する。高周波数限界f
Hは、クロスオーバ周波数f
Cより高い。好ましくは高周波数限界f
Hは、100kHzより低い。高周波数モードでは、LCセル1のLC分子は水平配向構造のままでいる傾向がある。その結果、ブラッグ反射波長は、電圧が印加されなければ、オフモードと同じ位置にとどまる。それゆえ、液晶セル1は、高周波数モードでは、参照ブラッグ反射波長と同様の値のブラッグ反射波長を有する。
【0054】
次に、
図1Bに概略的に示される第一のブラッグ反射モードを考える。第一のブラッグ反射モードでは、コントローラ5は閾値電圧V
thより高い電圧Vを印加し、印加電圧Vはクロスオーバ周波数f
Cより高く、高周波数限界f
Hより低い中間周波数範囲内の周波数fで変調される。印加周波数fは高周波数範囲と比較して低いため、LC分子は再配置され、コレステリック構造のらせんはほどけ始める。LC分子がほどけると、コレステリックピッチは増大する。したがって、反射光の第一のブラッグ反射波長も、参照ブラッグ反射波長と比べてより増大する。
【0055】
印加電圧がオフに切り替えられると、LCデバイスは水平配向構造のオフモード構成に戻り、参照ブラッグ反射波長で反射する。
【0056】
注目すべき点として、LCセルはオフモードで、高周波数モードで、及び第一のブラッグ反射モードでも散乱がない。
【0057】
第一のブラッグ反射モードは、発明者が知るかぎり、開示されず、追求されていないと理解すべきである。実際に、第一のブラッグ反射モードは、クロスオーバ周波数f
Cと高周波数f
Hの中間である。さらに、クロスオーバ周波数f
Cの付近で、液晶分子はフォーカルコーニック状態にあり、これは光が非常に拡散している状態である。それゆえ、一般に、透過性を有する垂直配向モードとブラッグ反射と透過性を有する高周波数モードとの間の印象が、中間の、制御されない非透過状態を呈する。
【0058】
実際に、液晶混合物が改良されてクロスオーバ周波数f
Cと高周波数f
Hとの間の周波数範囲が広げられないかぎり、前記周波数範囲は、周波数の値と比較して小さいことが大きく、それゆえ、容易に検出できないが、それでも本発明には使用可能である。
【0059】
後述のように、本発明の1つの態様は、上述のいわゆる制御されない状態の特定の部分を使用することであり、本発明の他の態様は、クロスオーバ周波数と高周波数との間の周波数範囲を広くして、液晶混合物の挙動の中間モードでの制御を安定化させ、容易にすることである。
【0060】
次に、
図1Cに概略的に示される低周波数モードを考える。低周波数モードでは、コントローラ5は、低周波数範囲内の、すなわちクロスオーバ周波数f
Cより低い周波数で変調された、閾値電圧V
thより高い電圧Vを印加する。低周波数範囲モードでは、液晶混合物2は垂直配向構造に切り替わり、LC分子は電極13、14の表面に対して垂直に配向される。コレステリック液晶混合物が垂直配向構造を有する場合、ブラッグ反射はなく、すべての波長が透過する。さらに、この構成はまた、低周波数モードで透過中の散乱がない。
【0061】
図2は、本開示によるLCセルの異なる動作モードを概略的に要約する。LC混合物は、オフモードで、すなわち電圧が電極に印加されないとき、印加電圧Vが閾値電圧Vthより低く、クロスオーバ周波数fより高く、且つ高周波数限界f
Cより低い中間周波数範囲内の周波数fで変調されているとき、また、高周波数範囲においては、電圧が高周波数限界f
Hより高い周波数で変調されたときに、水平配向構造を有する。LC混合物は、低周波数モードでは、印加電圧Vが閾値電圧V
thより高く、印加電圧Vが、クロスオーバ周波数f
Cより低い低周波数範囲内の周波数fで変調されているとき、垂直配向構造を有する。LC混合物は、印加電圧Vがゼロではないが閾値電圧Vthより低く、低周波数範囲内の周波数fで変調されているときに、フォーカルコーニック構造を有する。また、LC混合物は、第一のブラッグ反射モードで、印加電圧Vが閾値電圧Vthより高く、印加電圧Vがクロスオーバ周波数f
Cより高く、高周波数限界f
Hより低い中間周波数範囲内の周波数fで変調されているとき、ほどけた水平配向構造を有する。先行技術のコレステリック液晶デバイスとは対照的に、この光学フィルタは、周波数/電圧駆動制御のおかげで、水平配向構造から、又はほどけた水平配向から垂直構造に、及びその逆に移行する際にフォーカルコーニック構造を呈さない。
【0062】
それゆえ、本開示の光学フィルタは、1つのモードからもう1つのモードに移行中であっても、透過及び反射において散乱がない。
【0063】
図3Bは、ある実施形態による光学フィルタデバイス10を示す。LC混合物は、DFLCホスト材料としてのW1978CとキラルドーパントとしてのR−5011を含む。この特定の構成におけるキラルドーパントR−5011の量は、液晶W1978Cの4.0%であり、この例でのセルギャップは3μmである。
【0064】
図3Bのデバイスの反射率R及び/又は透過率Tが、分光光度計を使って波長に関して測定されている。
【0065】
光学フィルタデバイス10は、電圧が印加されていないときに約440nmのブラッグ反射波長の青に近いUVを反射するように設計される。
【0066】
図3Aは、直角入射時の非偏光に関する一定の印加電圧での印加周波数fに応じた最大反射ピーク波長を示す。
図3Aからわかるように、印加電圧を受けたとき、印加周波数が9kHzから2kHzに変化するとブラッグ反射波長はUVの440nmから約550nmの緑波長へと変化する。より正確には、ブラッグ反射波長は、印加周波数が5kHzから9kHzの間で変化するときに440nmとほぼ等しい。また、ブラッグ反射波長は、印加周波数が5kHzから2kHzへと低くなると440nmから550nmに増大する。ブラッグ反射は、印加周波数が2kHz未満であるときには見られない。
【0067】
それゆえ、ブラッグ反射波長は約100nmの範囲で可変的である。
【0068】
図3Cは、2.5kHzの周波数fで変調された、閾値電圧より高い90Vの印加電圧を受けたLCデバイスの、反射光において交差偏光板間に見られるLCデバイス10の顕微鏡画像と、それに対応する透過曲線を示す。このデバイスは、約550nmの光を反射させ、反射光は緑に見える。透過曲線はバンドストップ形状を有し、約550nmブラッグ波長で透過率は最小となる。光は他の波長では透過し、フォーカルコーニック状態が現れない。
【0069】
図3Dは、5kHzの周波数fで変調された印加電圧を受けた、同じLCデバイス10の顕微鏡画像とそれに対応する透過曲線を示す。このデバイスは、約500nmの光を反射させ、反射光は青に見える。同様に、透過曲線はバンドストップ形状を有し、約500nmのブラッグ波長で透過率は最小となる。光は他の波長では透過し、フォーカルコーニック状態が現れない。
【0070】
図3Eは、10kHzの周波数fで変調された印加電圧を受けた、同じLCデバイス10の顕微鏡画像とそれに対応する透過曲線を示す。このデバイスは、約440nmの光を反射させ、反射光は濃い紫に見える。同様に、透過曲線はバンドストップ形状を有し、約440nmのブラッグ波長で透過率は最小となる。光は他の波長では透過し、フォーカルコーニック状態が現れない。
【0071】
光学フィルタデバイスの第二の例は、
図4A〜4Eに示されるように、DFLCホスト材料としてW−1831A、及びキラルドーパントとしてR−5011を使用し、セルギャップは3μmである。この第二の例では、光学フィルタデバイス10は電圧が印加されていないとき、約450〜460nmのブラッグ反射波長で青範囲を反射するように設計される。
【0072】
図4Aは、直角入射時の非偏光に関する一定の印加電圧での印加周波数fに応じた最大反射ピーク波長を示す。
図4Aからわかるように、印加電圧を受けたとき、印加周波数が25kHzから7kHzに変化するとブラッグ反射波長は青範囲の450nmから約520nmの波長へと変化する。より正確には、ブラッグ反射波長は、印加周波数が15kHzから25kHzの間で変化するときに455nmとほぼ等しい。また、ブラッグ反射波長は、印加周波数が15kHzから6kHzへと低くなると455nmから520nmに増大する。ブラッグ反射は、印加周波数が6kHz未満であるときには見られない。それゆえ、この第二の例では、ブラッグ反射波長は約70nmの範囲内で可変的である。
【0073】
図4Bは、6kHzの周波数fで変調された、閾値電圧より高い90Vの印加電圧を受けたLCデバイスの、反射光において交差偏光板間に見られるLCデバイス10の顕微鏡画像と、それに対応する透過曲線を示す。このデバイスは、約520nmの光を反射させ、反射光は緑に見える。
【0074】
図4Cは、8kHzの周波数fで変調された印加電圧を受けた、同じLCデバイス10の顕微鏡画像とそれに対応する透過曲線を示す。このデバイスは、約500nmの光を反射させ、反射光は明るい緑に見える。同様に、透過曲線はバンドストップ形状を有し、約500nmのブラッグ波長で透過率は最小となる。光は他の波長では透過し、フォーカルコーニック状態が現れない。
【0075】
図4Dは、約10kHzの周波数fで変調された印加電圧を受けた、同じLCデバイス10の顕微鏡画像とそれに対応する透過曲線を示す。このデバイスは、約480nmの光を反射させ、反射光は青緑に見える。同様に、透過曲線はバンドストップ形状を有し、約480nmのブラッグ波長で透過率は最小となる。光は他の波長では透過し、フォーカルコーニック状態が現れない。
【0076】
図4Eは、約20kHzの周波数fで変調された、閾値電圧より高い90Vの印加電圧を受けたLCデバイスの、反射光において交差偏光板間に見られるLCデバイス10の顕微鏡画像と、それに対応する透過曲線を示す。このデバイスは、約455nmの光を反射させ、反射光は青に見える。透過曲線はバンドストップ形状を有し、約455nmブラッグ波長で透過率は最小となる。光は他の波長では透過し、フォーカルコーニック状態が現れない。
【0077】
選択されたDFLC材料、キラルドーパント材料、及び相対比率に応じて、参照ブラッグ波長と可変反射波長は用途にしたがって調整されてよい。
【0078】
同様の光学フィルタは、反射波長を青範囲から黄範囲へとシフトさせるために設計できる。
【0079】
それゆえ、電気的に調整可能なブラッグ反射波長を有するアクティブ光学フィルタを得る。反射波長は、印加電圧の周波数に応じて変化する。有利な点として、周波数範囲は0〜約10kHz又は数十kHzの比較的中度の周波数に限定される。光学フィルタは、MHz範囲の変調周波数を必要としない。
【0080】
特定の有利な実施形態によれば、光学フィルタデバイスは、スタックとして配置された2つのLCセルを含み、各LCセルは所定の可変反射範囲を有する。このような配置により、波長調整範囲を拡張できる。第一のLCセルは、より低い波長範囲内での反射率ピークをシフトするように構成され、第二のLCセルは、より高い波長範囲内での反射率ピークをシフトするように構成される。例えば、第一のLCセルは、UV緑範囲内の第一の反射波長に合わせて調整され、第二のLCセルは、青−黄内の第二の反射波長に合わせて調整される。
【0081】
ある変形型では、光学フィルタデバイスは、スタックとして配置された2つのLCセルを含み、第一のLCセルは右巻き、第二のLCセルは左巻きである。第一のLCセルは、所定のスペクトルバンド幅(FWHM)の第一のブラッグ反射波長を有し、第二のLCセルは、第二のブラッグ反射波長を有する。第一のブラッグ反射波長と第二のブラッグ反射波長との間のシフトは、FWHMより小さい。この配置によって、2つのLCセルを含む光学フィルタデバイスのスペクトルバンド幅を1つのLCセルのスペクトルバンド幅より小さくすることができる。
【0082】
他の変形型において、光学フィルタデバイスは、スタックとして配置された2つのLCセルを含み、第一のLCセルは右巻き、第二のLCセルは左巻きである。第一のLCセルと第二のLCセルは、同じ反射率ピークを有するように構成される。各LCセルは非偏光について50%の反射効率を有するため、この配置によって反射効率を高めることができる。
【0083】
ある用途において、このような光学フィルタは直角入射と非偏光による治療用アクティブフィルタとして使用できる。治療用アクティブフィルタは、本明細書で開示されるような可変バンドストップLCフィルタに基づき、LCフィルタは、色認識及び/又はUV保護を可能にするUVカット専用モードを有し、高有害青から低有害青へと希望に応じて青範囲内で電気的にシフトできる可変選択スペクトルバンドを有する。
【0084】
他の用途において、アクティブ光学フィルタは、45度未満の入射角と円偏光で動作する共焦点顕微鏡用のチューナブル反射フィルタとして使用できる。一例として、このようなチューナブル反射フィルタは幾つかの励起レーザ波長、例えば405nm、488nm、560nm、及び/又は640nm間で切り替わるように構成される。1つ又は複数のチューナブルダイクロイックフィルタは、有利な点として、従来の共焦点顕微鏡における異なる染料の蛍光検出に使用される複数のダイクロイックミラーの代わりとなる。
【0085】
図5及び6は、本開示による光学フィルタの透過曲線のシミュレーションを示す。このシミュレーションは、市販のシミュレーションソフトウェア、LCDMaster 1D(シンテック)を使って得られる。LCDマスタ1Dにおいて、二周波駆動コレステリックLCは、ネマティック液晶としてシミュレートされ、これはある程度のねじれが加わった、印加電圧がない場合の二周波駆動LCと同じ特徴を呈する。
【0086】
より正確には、W1978C混合物(Military University of Tehcnology、MUTが販売)は、正の異方性(Δε=1.85、ε
e=7.91、ε
o=6.06)、589nmでの屈折率、n
e=1.6039、n
o=1.4806のLCとしてモデル化される。
【0087】
ねじれは次式となるように選択される:
ねじれ=プレツイスト+(d/p)×360
式中、pはオフモードにおいて405nmでのブラッグ反射を得るために特定されるピッチである。
【0088】
用途に応じて:
治療用フィルタでは、直角入射時に以下となる。
【0090】
共焦点の用途の場合、材料中のθ=27.3度の入射角(AOI)(空気中のAOI、45度に相当)で以下となり、dはセルギャップ値であり、これは治療用フィルタの場合、3.94μm、共焦点用途の場合、4.43μmに対応する15ピッチと等しくなるように選択される。
【0092】
プレツイストの値は、ラビング条件が基板上で完璧であると想定されるため、0と等しいと考えられる。
【0093】
LCデバイスの印加周波数fを低下させる効果は、LCセルの厚さを同じに保ち、ステップごとに、すなわち印加周波数ごとにシステムに対して0.5ピッチ取り除くことによってモデル化される。換言すれば、このシミュレーションでは半ピッチ損失メカニズムだけが考慮される。
【0094】
図5は、直角入射の非偏光に関する、セルギャップ3.94μmのLCセルの波長に応じた、幾つかのピッチの値(15ピッチから11ピッチまで0.5ピッチ刻み)での透過曲線のシミュレーションを示す。
【0095】
図5のシミュレーションは、1つのLCセルに基づくLCデバイスが反射ブラッグ波長をスペクトルバンド幅35nmでの405nmからスペクトルバンド幅40nmでの435nmへ、及びスペクトルバンド幅50nmでの485nmへと切り替えることができることを示している。このようなフィルタは、治療用アクティブフィルタとして使用できる。1つのセルを使用した場合、非偏光の最大反射率は50%、透過率は91%である。このシミュレーションにおける透過率損失は、空気/材料/空気界面におけるフレネル反射係数のみによるもので、これらを軽減できる。
【0096】
図6は、45度の入射角での円偏光に関する、セルギャップ4.43μmのLCセルの波長に応じた、幾つかのピッチの値(15ピッチから11ピッチまで0.5ピッチ刻み)での透過曲線のシミュレーションを示す。
【0097】
図6のシミュレーションは、1つのLCセルに基づくLCデバイスが反射ブラッグ波長を、入射角45度でスペクトルバンド幅40nmでの405nmからスペクトルバンド幅60nmでの488nmへと切り替えることができることを示している。1つのセルを使用した場合、右円偏光の最大反射率は50%、透過率は88.7%である。このシミュレーションにおける透過率損失は、斜めの入射による空気/材料/空気界面におけるフレネル反射係数のみによるもので、これらを軽減できる。
【0098】
図5及び6に示されるシミュレーション結果は、理想的なケースに対応する。現実には、波長をシフトさせる際に実際の測定値において透過率の損失がある。また、実験的に、低周波数範囲内、特に5kHz未満の周波数で、フォーカルコーニック状態によるのではなく、らせんの折れ曲がりによる反射効率の損失がある。効率損失は2kHzで半減する。
図5及び6のシミュレーションは、らせんの折れ曲がりは考慮せず、ねじれがほどけることのみ考慮されている。