特許第6943119号(P6943119)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6943119膜モジュールの評価方法、評価装置および超純水製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6943119
(24)【登録日】2021年9月13日
(45)【発行日】2021年9月29日
(54)【発明の名称】膜モジュールの評価方法、評価装置および超純水製造装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 65/10 20060101AFI20210916BHJP
   C02F 1/44 20060101ALI20210916BHJP
【FI】
   B01D65/10
   C02F1/44 J
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-188395(P2017-188395)
(22)【出願日】2017年9月28日
(65)【公開番号】特開2019-63684(P2019-63684A)
(43)【公開日】2019年4月25日
【審査請求日】2020年3月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】田中 洋一
(72)【発明者】
【氏名】森田 博志
【審査官】 青木 太一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−260497(JP,A)
【文献】 特開2007−075328(JP,A)
【文献】 特開2009−106831(JP,A)
【文献】 特開2014−057926(JP,A)
【文献】 特開2016−083646(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0060887(US,A1)
【文献】 特開2001−343320(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00−71/82
C02F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜モジュールの前段側に設けられたナノバブルのスパイク又は発生手段と、膜モジュールの後段側に設けられたナノバブル検知手段とを有する膜モジュールの評価装置を備えた超純水製造装置であって、
前記膜モジュールは、超純水製造装置のサブシステムの主ラインに設けられた膜モジュールであり、
該主ライン上の、該膜モジュールの前段側に設けられた分岐点から分岐し、該分岐点と膜モジュールとの間の合流点で該ラインに合流する並列ラインが設けられており、
前記ナノバブルのスパイク又は発生手段は、該並列ラインに設置されており、
前記ナノバブル検知手段は、該合流点よりも下流側の該主ラインから分岐したサンプル水分取用配管に設けられていることを特徴とする超純水製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜モジュールの健全性を評価する方法及び装置に関する。詳しくは、本発明は大規模集積回路等を製造する際に用いられる、例えば、水、鉱酸類、有機溶媒等の高純度液体中の微粒子を除去するための膜モジュールの破断や傷を検知することができる評価方法及び装置に関する。また、本発明は、この評価装置を備えた超純水製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LSIの製造時に使用される前記高純度液体は、きわめて高い純度を要求されるが、特にその中に存在する微粒子は製造歩留りに悪影響を及ぼすため、可能なかぎり低減させることが要求される。ITRSによると、2019年には10nmの微粒子を1個/mL以下で計測かつ水質を保証することが要求されている。従って、これまで以上に健全なフィルターを用いて微粒子を除去する技術が求められている。
【0003】
中空糸膜モジュールの樹脂固定部および中空糸膜におけるリークを検査する方法としては、例えば特開2016−36766号公報では、中空糸膜の二次側に加圧気体を導入し、圧力降下の状態により膜の健全性を評価する手法が開示されている。また、中空糸膜の一次側に微粒子や濁質を含有する気体または液体を導入し、中空糸膜の二次側に透過した透過気体または透過液の微粒子数や濁度を、パーティクルカウンタや濁度計を用いて測定することによって、リークの有無を判定する検査方法が、特公平2−14084号公報、特開平3−127614号公報、特許第3184631号公報、特開2001−343320号公報などに提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−36766号公報
【特許文献2】特公平2−14084号公報
【特許文献3】特開平3−127614号公報
【特許文献4】特許第3184631号公報
【特許文献5】特開2001−343320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
加圧保持によるリークチェックでは、バブルポイントの観点からUF膜ファイバーの大きな傷や破断しか検知できず、微小な傷を検知できることが困難であった。また、評価を実施するにあたって、膜を取り外さなければならず、通水しながらの評価ができないことが膜のコンタミを誘発する要因および運用上の煩雑さや迅速性の観点でネックであった。
【0006】
一方、膜上流側に微粒子をスパイクし膜の健全性を評価する方法では、異物を混入することによる膜汚染の影響があり、超純水用途に使用するUF膜の評価手法として望ましくない。
【0007】
本発明は上記のような問題点を解決し、標準微粒子の代わりに気泡であるナノバブルを使用することにより、微小な傷の有無を、膜を汚染させずに評価可能とする膜モジュールの評価方法及び装置と、この評価装置を備えた超純水製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の膜モジュールの評価方法は、膜モジュールの健全性を評価する方法において、膜モジュールの上流側にナノバブルをスパイク、もしくは発生させ、ナノバブルの膜モジュールの透過の有無に基づいて膜モジュールの健全性を評価することを特徴とするものである。
【0009】
本発明の一態様では、膜モジュール後段に設けられた微粒子計によりナノバブルの膜モジュールの透過の有無を評価する。
【0010】
本発明の一態様では、前記ナノバブルは窒素ガスのナノバブルである。
【0011】
本発明の膜モジュールの評価装置は、膜モジュールの前段側に設けられたナノバブルのスパイク又は発生手段と、膜モジュールの後段側に設けられたナノバブル検知手段とを有する。
【0012】
本発明の超純水製造装置は、かかる本発明の膜モジュールの評価装置を備える。
【0013】
本発明の一態様では、前記膜モジュールは、超純水製造装置のサブシステムの主ラインに設けられた膜モジュールであり、該主ライン上の、該膜モジュールの前段側に設けられた分岐点から分岐し、該分岐点と膜モジュールとの間の合流点で該ラインに合流する並列ラインが設けられており、前記ナノバブルのスパイク又は発生手段は、該並列ラインに設置されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の評価方法及び装置によると、標準微粒子の代わりに気泡であるナノバブルを使用することにより、微小な傷の有無を、膜を汚染させずに評価することができる。また、本発明の超純水製造装置によると、水処理膜の健全性を評価し安定的に超純水を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施の形態に係る膜モジュール評価装置を備えた超純水製造装置のブロック図である。
図2】実施の形態に係る膜モジュール評価装置を備えた超純水製造装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明では、ナノバブル含有液を膜モジュールに供給し、ナノバブルの透過の有無に基づいて膜モジュールの健全性を評価する(破断や損傷の有無を判断する)。
【0017】
評価対象とする膜モジュールの膜は、多孔性の水処理膜であり、高分子、無機、金属のいずれでもよい。高分子膜としては、PVA(ポリビニルアルコール)、PSF(ポリスルホン)、PES(ポリエーテルスルホン)、PEI(ポリエーテルイミド)、PI(ポリイミド)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PE(ポリエチレン)、PC(ポリカーボネート)、PA(ポリアミド)、PSU(ポリサルホン)などが例示される。
【0018】
無機膜としては、陽極酸化アルミナ、セラミックフィルターなどが例示される。親水性の高い素材よりなる膜はなお望ましい。
【0019】
膜の形態は、中空糸膜、平膜などのいずれもよい。なお、超純水装置のユニットで微粒子を除去するための末端膜モジュールには、中空糸膜が用いられている。プロセス洗浄機に装着するフィルターには平膜を用いることが多い。
【0020】
膜モジュールの前段側に設置されるナノバブル発生器としては、旋回液流式、加圧溶解式、エゼクタ式、ベンチュリ式、混合容器直接接触凝集式、超音波振動式、超微細孔式などのいずれのものでもよい。
【0021】
ナノバブルの気体種類は、空気、炭酸ガス、窒素、酸素、オゾンなどのいずれでもよい。なお、超純水製造装置では、Nパージを行うところから、気体(バブル)が溶解しにくい窒素がより望ましい。
【0022】
ナノバブルの粒径は、1μ以下であればよい。ナノバブルの最小粒径は小さいほど望ましいが、実際には微粒子計測装置の計測下限以上とされる。
【0023】
膜モジュール前段側におけるナノバブルのスパイク又は発生量は、膜モジュール給水中のナノバブル個数が10個〜10個/mL程度となる量であることが好ましい。
【0024】
膜モジュールの後段側に設置される微粒子計測装置としては、光散乱方式のものや、超音波方式のものが好ましい。光散乱方式のものとしては、例えば、PMS社のUDI20、リオン社のKS19Fなどを用いることができる。
【0025】
超音波方式のものとしては、Uncopier社のPS20などを用いることができる。
【0026】
次に、本発明の膜モジュール評価装置を備えた超純水製造装置の一例について説明する。
【0027】
一般に、超純水製造装置では、原水を、前処理システム、一次純水処理システム及びサブシステムで処理する。
【0028】
前処理システムは、凝集、加圧浮上(沈殿)、濾過(膜濾過)装置等よりなる。この前処理システムにおいて、原水中の懸濁物質やコロイド物質が除去される。また、この前処理システムでは高分子系有機物、疎水性有機物などの除去も可能である。
【0029】
一次純水処理システムは、純水原水タンクと、第1逆浸透(RO)膜分離装置と、第2逆浸透(RO)膜分離装置と、混床式イオン交換装置等を設置したものである。但し、一次純水処理システムを構成する装置はこれに制限されるものではなく、例えば、逆浸透装置、イオン交換処理装置、電気脱イオン交換処理装置、UV酸化処理装置などを組み合わせてもよい。
【0030】
サブシステムは、図1に示すように、サブタンク1と、ポンプ2と、熱交換器3と、低圧紫外線酸化装置4と、混床式イオン交換装置5と、UF膜モジュール6とをこの順に設置した主ラインを備える。一次純水処理システムの処理水(一次純水)は、サブタンク1及び熱交換器3を経て低圧紫外線酸化装置4に導入され、含有されるTOCがイオン化ないし分解され、このうち、イオン化された有機物は、後段の混床式イオン交換装置5で除去される。この混床式イオン交換装置5の処理水は更にUF膜モジュール6で膜分離処理され、超純水が得られる。但し、サブシステムを構成する装置はこれに制限されるものではなく、例えば、脱気処理装置など更に他の装置を組み合わせてもよい。
【0031】
膜モジュール6からの処理水が超純水として配管20からユースポイント21へ送水され、未使用超純水が配管22を介してサブタンク1に返送される。
【0032】
この実施の形態では、UF膜モジュール6の評価を行うために、膜モジュール6の給水用配管7と並列に配管(並列ライン)8を設け、該配管8にナノバブル発生装置10を設けている。配管8は、分岐点7aにおいて配管7から分岐し、該分岐点7aと膜モジュール6との間の合流点7bにおいて配管7に合流する。配管8の該ナノバブル発生装置10の前段側にバルブ9が設けられている。
【0033】
配管20からは、サンプル水分取用の配管11が分岐しており、該配管11を介して微粒子計12にサンプル水が供給される。測定排水は系外に排出されてよく、サブタンク1に返送されてもよい。
【0034】
バルブ9を開とし、ナノバブル発生装置10を作動させることにより、膜モジュール6への給水中にナノバブルが添加される。ナノバブルが膜モジュール6を透過した場合、微粒子計12によってナノバブルが検出される。ナノバブルの検出数から、膜モジュールの健全性評価を行う。
【0035】
図2に、膜モジュール評価装置を備えた超純水製造装置の別例を示す。
【0036】
この超純水製造装置は、主ラインから分岐させた評価ラインに評価対象膜モジュールを設けたものである。
【0037】
分岐点7aと合流点7bとの間の配管8にバルブ31が設けられている。分岐点7aとバルブ31との間から配管32が分岐しており、バルブ33、配管34を介して評価対象膜モジュール40に給水可能とされている。
【0038】
配管8のナノバブル発生装置10前段側のバルブ9の代りに、ナノバブル発生装置10後段側にバルブ35が設けられている。ナノバブル発生装置10とバルブ35との間から配管36が分岐し、バルブ37及び配管38を介して前記配管34に合流している。
【0039】
配管20の途中にバルブ51が設けられている。配管11の分岐部とバルブ51との間に配管49の一端が接続され、該配管49の他端がサブタンク1に接続されている。配管49の途中にバルブ50が設けられている。
【0040】
評価対象膜モジュール40の透過水は、配管41及びバルブ53を介してサブタンク1に返送される。この配管41のうちバルブ53と膜モジュール40との間が、バルブ51とユースポイント21との間の配管20に配管41a及びバルブ52を介して接続されている。
【0041】
バルブ53よりも下流側において、配管41からサンプル水の分取用配管42が分岐しており、該配管42を介して微粒子計43にサンプル水が供給される。測定排水は系外に排出されてもよく、サブタンク1に返送されてもよい。
【0042】
図2のその他の構成は図1と同一であり、同一符号は同一部分を示している。
【0043】
図2でも、バルブ31,35,50を開とし、バルブ51を閉とし、ナノバブル発生装置10を作動させ、ナノバブル含有水を膜モジュール6に通水することにより、該膜モジュール6の評価を行うことができる。
【0044】
バルブ33,37,53を開とし、バルブ52を閉とし、ナノバブル発生装置10を作動させ、ナノバブル含有水を膜モジュール40に通水することにより、該膜モジュール40の評価を行うことができる。
【実施例】
【0045】
[実施例1]
図1のサブシステムの構成を有する評価装置を用いて、下記条件で健全な膜モジュールと不健全な膜モジュールを評価した。その結果、不健全な膜モジュールでは、微粒子計12で微粒子(ナノバブル)が検出された。一方、健全な膜モジュールでは、微粒子(ナノバブル)は検出されなかった。膜表面の観察を実施したが、汚れや微粒子は観察されなかった。
【0046】
<評価条件>
膜モジュール:UF膜 OLT6036HA
通水条件:10m/h/一本
回収率:95%
微粒子計:UDI20(PMS社)
ナノバブル発生装置:Nanox社製 nano Quick(粒径100nmのナノバブルを8億個/mL生成可能。生成方式:加圧+旋回流)
【0047】
[実施例2]
以下の評価条件とした以外は実施例1と同様にして、健全な膜モジュールと不健全な膜モジュールを評価した。その結果、不健全な膜モジュールでは、微粒子計12で微粒子(ナノバブル)が検出された。一方、健全な膜モジュールでは、微粒子(ナノバブル)は検出されなかった。膜表面の観察を実施したが、汚れや微粒子は観察されなかった。
【0048】
<評価条件>
膜モジュール:UF膜 OLT6036HA
通水条件:10m/h/一本
回収率:95%
微粒子計:PS20(Uncopier社)
ナノバブル発生装置:シグマテクノロジー社製 ΣPM−5(粒径7nmのナノバブルを81京個/mL生成可能)
【符号の説明】
【0049】
1 サブタンク
5 イオン交換装置
6,40 膜モジュール
10 ナノバブル発生装置
12,43 微粒子計
図1
図2