(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6943150
(24)【登録日】2021年9月13日
(45)【発行日】2021年9月29日
(54)【発明の名称】半導体光素子
(51)【国際特許分類】
H01S 5/14 20060101AFI20210916BHJP
H01S 5/026 20060101ALI20210916BHJP
【FI】
H01S5/14
H01S5/026 618
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-219002(P2017-219002)
(22)【出願日】2017年11月14日
(65)【公開番号】特開2019-91780(P2019-91780A)
(43)【公開日】2019年6月13日
【審査請求日】2019年12月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 勇三
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】相原 卓磨
(72)【発明者】
【氏名】松尾 慎治
(72)【発明者】
【氏名】硴塚 孝明
(72)【発明者】
【氏名】土澤 泰
(72)【発明者】
【氏名】開 達郎
【審査官】
百瀬 正之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2017−098362(JP,A)
【文献】
特開2017−040841(JP,A)
【文献】
特開2016−212152(JP,A)
【文献】
特開2008−147209(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/001861(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0030047(US,A1)
【文献】
特開2008−066318(JP,A)
【文献】
特開2017−107958(JP,A)
【文献】
国際公開第2016/056498(WO,A1)
【文献】
特開平10−022579(JP,A)
【文献】
特開2016−156933(JP,A)
【文献】
特開2015−109303(JP,A)
【文献】
特開2016−178283(JP,A)
【文献】
特開2016−102926(JP,A)
【文献】
特開2016−213379(JP,A)
【文献】
特開2013−149980(JP,A)
【文献】
特開2010−177539(JP,A)
【文献】
特開2009−238902(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00−5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンからなる基板の上に形成された波長可変レーザを備え、
前記波長可変レーザは、III−V族化合物半導体からなる発光部と光フィルタを備える外部共振器とから構成され、
前記外部共振器は、
前記基板の上に形成された酸化物からなる下部クラッド層と、
前記下部クラッド層の上に形成された半導体からなるコアと、
前記コアを覆って形成された酸化物からなる上部クラッド層と
による光導波路から構成され、
前記発光部は、活性層および前記活性層を挟んで配置された電流注入部を備え、
前記発光部は、前記下部クラッド層の上に形成され、
前記発光部の上には、窒化シリコンからなる中間層を介して前記上部クラッド層が形成されていることを特徴とする半導体光素子。
【請求項2】
請求項1記載の半導体光素子において、
前記光フィルタを構成する光導波路の一部に、導波する光の波長特性を制御するためのヒーターを備える
ことを特徴とする半導体光素子。
【請求項3】
請求項1または2記載の半導体光素子において、
前記光フィルタを構成する光導波路の端部における前記コアに、不純物がドープされた部分を備えることを特徴とする半導体光素子。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体光素子において、
前記コアは、前記発光部と同じ化合物半導体から構成され、
前記コアと前記発光部とは、バットカップリングにより光学的に接続され、
前記コアの幅は、前記コアと前記発光部との接続部分から光の進行方向に沿って細くなるように形成されている
ことを特徴とする半導体光素子。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体光素子において、
光出力端における前記コアは、前記光出力端に近づくほど細くなる先細りの形状とされた先端部を備え、
前記先端部と前記上部クラッド層との間に配置されて前記先端部を覆って形成された第2コアを備え、
前記第2コアは、前記コアより小さく前記上部クラッド層より大きな屈折率の材料から構成されている
ことを特徴とする半導体光素子。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の半導体光素子において、
前記光フィルタは、ラティスフィルタおよびリングフィルタから構成されていることを特徴とする半導体光素子。
【請求項7】
請求項6記載の半導体光素子において、
前記ラティスフィルタは、
光学的に多段に接続された複数の遅延干渉フィルタから構成され、
前記複数の遅延干渉フィルタから構成された各段の遅延長は互いに異なる
ことを特徴とする半導体光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部共振器構造の波長可変レーザを備える半導体光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
インターネットなどにおける通信トラフィックの増加に伴い、光ファイバ伝送の高速・大容量化が求められている。この要求に対し、コヒーレント光通信技術およびデジタル信号処理技術を利用したデジタルコヒーレント通信技術の開発が進展し、100Gシステムが実用化されている。このような通信システムにおいて、波長可変レーザは、送信用および受信用局発光源として、重要な光デバイスの1つである。
【0003】
波長可変レーザは、主に半導体から構成された発光部と外部光フィルタを備える外部共振器とで構成され、この光フィルタの光学的な波長特性を熱あるいはキャリアプラズマ効果などにより制御することにより、レーザの発振波長を制御している。これまでに、超周期構造グレーティングや、多重リングフィルタ、ラダーフィルタを用いた波長可変レーザが報告されている(特許文献1参照)。これらは、直接遷移型のIII−V族化合物半導体を主材料としている。また、III−V族化合物半導体の組成を調整し、コアとクラッドに屈折率差を与えることで、光閉じ込めを実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4402912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した技術では、コアとクラッドの屈折率差が小さいことから、光導波路の急峻な曲げや高集積化、ひいては光送受信デバイスの小型化・低コスト化が制限されていた。
【0006】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、シリコンからなる基板の上により小型な波長可変レーザが形成できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る半導体光素子は、シリコンからなる基板の上に形成された波長可変レーザを備え、波長可変レーザは、III−V族化合物半導体からなる発光部と光フィルタを備える外部共振器とから構成され、外部共振器は、基板の上に形成された酸化物からなる下部クラッド層と、下部クラッド層の上に形成された半導体からなるコアと、コアを覆って形成された酸化物からなる上部クラッド層とによる光導波路から構成されている。
【0008】
上記半導体光素子において、発光部は、活性層および活性層を挟んで配置された電流注入部を備え、発光部は、下部クラッド層の上に形成され、発光部の上には、窒化シリコンからなる中間層を介して上部クラッド層が形成されている。
【0009】
上記半導体光素子において、光フィルタを構成する光導波路の一部に、導波する光の波長特性を制御するためのヒーターを備える。
【0010】
上記半導体光素子において、光フィルタを構成する光導波路の端部におけるコアに、不純物がドープされた部分を備えるようにしてもよい。
【0011】
上記半導体光素子において、コアは、発光部と同じ化合物半導体から構成され、コアと発光部とは、バットカップリングにより光学的に接続され、コアの幅は、コアと発光部との接続部分から光の進行方向に沿って細くなるように形成されている。
【0012】
上記半導体光素子において、光出力端におけるコアは、光出力端に近づくほど細くなる先細りの形状とされた先端部を備え、先端部と上部クラッド層との間に配置されて先端部を覆って形成された第2コアを備え、第2コアは、コアより小さく上部クラッド層より大きな屈折率の材料から構成されている。
【0013】
上記半導体光素子において、光フィルタは、ラティスフィルタおよびリングフィルタから構成されている。ラティスフィルタは、光学的に多段に接続された複数の遅延干渉フィルタから構成され、複数の遅延干渉フィルタから構成された各段の遅延長は互いに異なるものとされていてもよい。
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、外部共振器の光導波路を、酸化物からなる下部クラッド層および上部クラッド層から構成したので、シリコンからなる基板の上により小型な波長可変レーザが形成できるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1A】
図1Aは、本発明の実施の形態における半導体光素子の一部構成を示す断面図である。
【
図1B】
図1Bは、本発明の実施の形態における半導体光素子の一部構成を示す断面図である。
【
図1C】
図1Cは、本発明の実施の形態における半導体光素子の一部構成を示す断面図である。
【
図1D】
図1Dは、本発明の実施の形態における半導体光素子の一部構成を示す断面図である。
【
図1E】
図1Eは、本発明の実施の形態における半導体光素子の構成を示す平面図である。
【
図2A】
図2Aは、ラティスフィルタ131の透過スペクトルの計算結果を示す特性図である。
【
図2B】
図2Bは、ラティスフィルタ131の透過スペクトルの計算結果を示す特性図である。
【
図2C】
図2Cは、リングフィルタ133の透過スペクトルの計算結果を示す特性図である。
【
図2D】
図2Dは、リングフィルタ133の透過スペクトルの計算結果を示す特性図である。
【
図3】
図3は、終端部の一部構成を示す平面図である。
【
図4】
図4は、コア105からなる光導波路と発光部103とがバットカップリングしている状態を示す平面図である。
【
図5A】
図5Aは、外部共振器に設ける光フィルタの一部構成を示す断面図である。
【
図5B】
図5Bは、外部共振器に設ける光フィルタの一部構成を示す断面図である。
【
図6A】
図6Aは、光出力端におけるスポットサイズ変換構造の構成を示す平面図である。
【
図6B】
図6Bは、光出力端におけるスポットサイズ変換構造の構成を示す断面図である。
【
図6C】
図6Cは、光出力端におけるスポットサイズ変換構造の構成を示す断面図である。
【
図6D】
図6Dは、光出力端におけるスポットサイズ変換構造の構成を示す断面図である。
【
図7A】
図7Aは、外部共振器に配置する光フィルタの構成例を示す平面図である。
【
図7B】
図7Bは、外部共振器に配置する光フィルタの構成例を示す平面図である。
【
図7C】
図7Cは、外部共振器に配置する光フィルタの構成例を示す平面図である。
【
図7D】
図7Dは、外部共振器に配置する光フィルタの構成例を示す平面図である。
【
図7E】
図7Eは、外部共振器に配置する光フィルタの構成例を示す平面図である。
【
図7F】
図7Fは、外部共振器に配置する光フィルタの構成例を示す平面図である。
【
図7G】
図7Gは、外部共振器に配置する光フィルタの構成例を示す平面図である。
【
図7H】
図7Hは、外部共振器に配置する光フィルタの構成例を示す平面図である。
【
図7I】
図7Iは、外部共振器に配置する光フィルタの構成例を示す平面図である。
【
図7J】
図7Jは、外部共振器に配置する光フィルタの構成例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態における半導体光素子ついて
図1A〜
図1Eを参照して説明する。なお、
図1Aは、光が導波する方向に平行な断面を示している。また、
図1B〜
図1Dは、光が導波する方向に垂直な断面を示している。この半導体光素子は、単結晶シリコンからなる基板101の上に形成された波長可変レーザ102を備える。波長可変レーザ102は、III−V族化合物半導体からなる発光部103と光フィルタを備える外部共振器103a,103bとから構成されている。
【0017】
外部共振器103a,103bは、基板101の上に形成された酸化物からなる下部クラッド層104と、下部クラッド層104の上に形成された半導体からなるコア105と、コア105を覆って形成された酸化物からなる上部クラッド層106とによる光導波路から構成されている。
【0018】
下部クラッド層104は、例えば、酸化シリコンから構成され、厚さ3μm程度とされている。例えば、シリコンからなる基板101の表面を熱酸化することで、下部クラッド層104を形成すればよい。コア105は、例えば、InPから構成されていればよい。上部クラッド層106は、例えば、酸化シリコンから構成され、厚さ3μm程度とされている。
【0019】
発光部103は、下部クラッド層104の上に形成され、活性層107および活性層107を挟んで配置された電流注入部108,電流注入部109を備える。活性層107および電流注入部108,電流注入部109は、例えば、InPから構成されている。活性層107は、例えば、バルクのInPから構成されている。また、活性層107は、InGaAsPあるいはInGaAlAsからなる厚さ100nm程度の多重量子井戸構造とされていてもよい。
【0020】
電流注入部108は、例えば、p型の不純物が導入されてp型とされ、電流注入部109は、例えば、n型の不純物が導入されてn型とされている。電流注入部108,電流注入部109は、例えば、より高濃度に不純物が導入された化合物半導体からなるコンタクト層113,コンタクト層114を介して電極111,電極112に接続している。なお、
図1Bに示した例では、所謂横方向電流注入型の埋め込み活性層構造としているが、これに限るものではない。基板101の表面の法線方向に、2つの電流注入部で活性層を挟む構成としてもよい。
【0021】
また、外部共振器103bの一部においては、
図1Dに示すように、上部クラッド層106の上に金属層からなるヒーター117が形成され、導波している(透過する)光の波長特性を制御する光フィルタを構成している。なお、発光部103と、外部共振器103a,103bの光導波路とは、バットジョイントにより光学的に接続されている。
【0022】
また、実施の形態では、発光部103,コア105の上には、窒化シリコンからなる中間層115が形成されている。中間層115は、化合物半導体から構成されている発光部103,コア105の上に接して形成され、中間層115を介してこれらの上に上部クラッド層106が形成されている。このように、上部クラッド層106との界面に窒化シリコンからなる中間層115を設けることで、界面リーク電流を抑え、効率的な光増幅が可能となる。
【0023】
例えば、コア105,活性層107,電流注入部108,電流注入部109などの化合物半導体による層のパターニングに用いた窒化シリコンからなるマスク層を、パターニングの後で除去せずに残しておけば、中間層115として用いることができる。
【0024】
実施の形態によれば、光フィルタを備える外部共振器103a,103bにおいて、下部クラッド層104,上部クラッド層106を、酸化シリコンなどの酸化物から構成したので、InPなどの化合物半導体からなるコア105や活性層107との間の屈折率差が大きい。このため、コア105や活性層107に高い光閉じ込めが可能となる。外部共振器103a,103bにおける光導波路の急峻な曲げや高集積化、ひいては光フィルタの小型化が可能となる。また、単位長さあたりの利得が高まり、発光部103の導波方向の長さを、より短くすることが可能となる。
【0025】
ここで、外部共振器103bは、例えば、
図1Eに示すように、ラティスフィルタ131と、多モード干渉計(MMI)132、リングフィルタ133などを備えて構成することができる。これらは、光学的に接続されている。ラティスフィルタ131は、遅延干渉フィルタが多段に接続された構成であり、この遅延長により、自由スペクトル範囲(Free Spectral Range;FSR)が決定できる。なお、共振器の共鳴周波数は、一般に複数存在し、これらの共鳴周波数の間隔が、FSRと呼ばれる。
【0026】
また、ラティスフィルタ131のアームをヒーター117により加熱することにより、透過ピーク波長を変えることができ、大きな波長可変範囲を持つ光フィルタとして用いられる。リングフィルタ133は、一定の周波数間隔で透過率が変化し、波長ロック用の光フィルタとして用いられる。上述した構成の波長可変レーザに光フィルタは、出力させたい発振周波数間隔と一致するFSRを持つ波長ロック用のリングフィルタ133と、大きな波長可変範囲を持つラティスフィルタ131とを組み合わせた構成としている。
【0027】
図2A,
図2Bに、ラティスフィルタ131の透過スペクトル、
図2C,
図2Dに、リングフィルタ133の透過スペクトルの計算結果を示す。リングフィルタ133において、非共振波長の光は、ポート133aに出力される。このような終端とするポート133aを構成する光導波路のコア端面が例えば、垂直に寸断されている場合は、この端面で光が反射して迷光となり、光フィルタの波長特性が劣化する。これは、レーザの発振モードの不安定性の原因となる。ポート133aが先細りとなり、光導波路から光が放射される場合においても、放射した光が光フィルタを構成する外部共振器103bあるいは発光部103に入射するなどのクロストークにより、予期しないレーザの特性劣化が生じる可能性がある。
【0028】
ここで、
図3に示すように、光導波路の端部となる部分のコア105aに、p型不純物をドーピングしておくことで、上述した光の反射が抑制できるようになる。コア105aに導入するp型不純物は、電流注入部108に導入したp型不純物と同じものとすればよい。例えば、p型のInPは、光吸収係数が高いため、コア105aにおいて消光させることが可能となる。コア105aのコア長は、不純物濃度が1×10
18cm
-3で20cm
-1であることを考え、500μm程度とし、また、ドーピング濃度は5×10
18cm
-3程度とすればよい。これにより、20dB程度の消光が可能となる。なお、コア105aは、面積の節約のため、直線ではなく蛇行あるいは渦状に折り返した形状とするとよい。ラティスフィルタ131やMMI132の不要なポートに関しても同様の方策を施すとよい。
【0029】
ラティスフィルタ131の透過スペクトル帯域幅を狭めることにより、実施の形態における波長可変レーザ102を安定に波長可変動作させることができる。透過スペクトル帯域幅を狭めるためには、遅延長を大きく(回折次数を大きく)すればよいが、同時にFSRが小さくなってしまい2つ以上の波長で同時に発振する問題が生じる。従って、1つのモードで安定に発振させるためには、透過帯域幅を広げることなく所望の回折次数以外の透過率を小さくすることが必要となる。遅延干渉計の各段の遅延長、すなわち各段の回折次数を同じではなく、互いに異なる値にすることで、これが可能となる。
【0030】
光フィルタを備える外部共振器103a,103bのコア105を形成するためのInPは、発光部103を形成するために再成長したアンドープのInPを併用すればよい。平面視で幅広のコア105からなる光導波路と発光部103とがバットカップリングし、
図4に示すように、InPからなるコア105の幅は、コア105と発光部103との接続部分から光の進行方向に沿って平面視で細められている。発光部103が薄層のため、シングルモード条件を満たすコア105(層厚200nm程度)を発光部103と同じInPの層で併設できる。幅広にする理由は、発光部103の光モードとコア105との光モード形状を近づけ、両者の光結合効率を上げるためである。
【0031】
また、外部共振器に設ける光フィルタは、シリコンコアによる光導波路から構成してもよい。この場合、
図5A,
図5Bに示すように、下部クラッド層104の中にシリコンコア118を形成し、発光部103と光学的に結合させるようにすればよい。
図5Aに示すように、外部共振器のコアより続く幅を狭くした先端部105bの下方にシリコンコア118を配置したスポットサイズ変換領域において、先端部105bによる光導波路を導波する光が、シリコンコア118による光導波路に光学的に結合する。また、
図5Bに示すように、光フィルタとなる領域では、上部クラッド層106の上にヒーター117を配置する。
【0032】
また、チップ端(光出力端)におけるコア105は、
図6Aに示すように、スポットサイズ変換領域において、光出力端に近づくほど細くなる先細りの形状とされた先端部105bを備えるようにしてもよい。スポットサイズ変換領域では、先端部105bと上部クラッド層106との間に配置されて先端部105bを覆って形成された第2コア119を備える。スポットサイズ変換領域において、コア105による光導波路を導波する光が、第2コア119による光導波路に光学的に結合する。第2コア119は、コア105より小さく上部クラッド層106より大きな屈折率の材料から構成されている。第2コア119による光導波路が、光ファイバなどに光接続される。このスポットサイズ変換構造を用いることで、レーザ光を高い外部量子効率で光ファイバなどに取り出すことができる。
【0033】
また、上述した実施の形態では、外部共振器に配置する光フィルタとして、
図1Eを用いて説明したように、ラティスフィルタ131とリングフィルタ133と用いるようにしたが、これに限るものではない。
図7Aに示すように、リングフィルタ133を直列に接続し、光出力端に端面ミラー134を設ける構成としてもよい。この場合、リングフィルタ133にヒーター117を装荷する。また、
図7Bに示すように、ラティスフィルタ131とリングフィルタ133とを方向性結合器132aで接続する構成としてもよい。
【0034】
また、
図7Cに示すように、ラティスフィルタ131とリングフィルタ133とを直列に接続し、光出力端に端面ミラー134を設ける構成としてもよい。また、
図7Dに示すように、2つのリングフィルタ133をMMI132で接続する構成としてもよい。この場合も、リングフィルタ133にヒーター117を装荷する。
【0035】
また、
図7Eに示すように、外部共振器103aにラティスフィルタ131を配置し、外部共振器103bにMMI132でリングフィルタ133を接続してもよい。また、
図7Fに示すように、発光部103の側にリングフィルタ133を接続し、この先にラティスフィルタ131を接続し、この光出力端に端面ミラー134を設けてもよい。
【0036】
また、
図7Gに示すように、外部共振器103aにリングフィルタ133を配置し、外部共振器103bにラティスフィルタ131を配置し、この光出力端にループミラー135を設けてもよい。また、
図7Hに示すように、外部共振器103aにリングフィルタ133を配置し、外部共振器103bにラティスフィルタ131を配置し、この光出力端に端面ミラー134を設けてもよい。
【0037】
また、
図7Iに示すように、発光部103の側にN次リングフィルタ136を接続し、この先に、リングフィルタ133をMMI132で接続する構成としてもよい。この場合、N次リングフィルタ136にヒーター117を装荷する。また、
図7Jに示すように、発光部103の側にAWG(Arrayed-Waveguide-Grating)137を接続し、この先に、リングフィルタ133をMMI132で接続する構成としてもよい。この場合、AWG137にヒーター117を装荷する。
【0038】
また、上述した実施の形態では、ヒーターの熱により波長変化を生じさせる構成としたが、これに限るものではない。例えば、InPなどの化合物半導体からなる光導波路におけるキャリアプラズマ効果を利用して波長変化を生じさせるようにしてもよい。
【0039】
また、上述した実施の形態では、波長可変のためのヒーターをラティスフィルタのみに装荷する構造で説明したが、これに限るものではない。例えば、ラティスフィルタに加えてリングフィルタにもヒーターを装荷し、細かな波長の調整が実施できる構成としてもよい。
【0040】
また、上述した実施の形態では、終端処理の方法として、化合物半導体のコアにp型の不純物を導入するようにしたが、これに限るものではない。終端部となるポートの部分のコアを、コンタクト層などに用いられる高濃度に不純物を導入したInGaAsから構成してもよい。また、終端部となるポートの部分のコアを、発光部と同様の多重量子井戸構造としてもよい。また、これらを全て用い、
図8A、
図8Bに示すように、終端部となるコア105cを、p型のInP層151,多重量子井戸層152,p型のInP層153,InGaAs層154の積層構造としてもよい。なお、終端部となるコア105cは、コア105とバットカップリングされる。
【0041】
また、上述した実施の形態では、シリコンからなる基板上の波長可変光源について述べたが、これに、ブースター光増幅器を集積してもよい。この場合、同一のシリコン基板上にモノリシック集積する構成としてもよく、また、シリコン基板外にハイブリッド集積する構成としてもよい。
【0042】
以上に説明したように、本発明によれば、外部共振器の光導波路を、酸化物からなる下部クラッド層および上部クラッド層から構成したので、シリコンからなる基板の上により小型な波長可変レーザが形成できるようになる。
【0043】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。
【符号の説明】
【0044】
101…基板、102…波長可変レーザ、103…発光部、103a…外部共振器、103b…外部共振器、104…下部クラッド層、105…コア、106…上部クラッド層、107…活性層、108…電流注入部、109…電流注入部、111…電極、112…電極、113…コンタクト層、114…コンタクト層、115…中間層、117…ヒーター。