特許第6943280号(P6943280)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6943280
(24)【登録日】2021年9月13日
(45)【発行日】2021年9月29日
(54)【発明の名称】二液硬化型ウレタン系組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/10 20060101AFI20210916BHJP
   C08L 75/08 20060101ALI20210916BHJP
   C08K 5/548 20060101ALI20210916BHJP
   C08K 5/3477 20060101ALI20210916BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20210916BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20210916BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20210916BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20210916BHJP
   C08G 18/76 20060101ALI20210916BHJP
   C08G 18/79 20060101ALI20210916BHJP
   C08G 18/18 20060101ALI20210916BHJP
【FI】
   C08G18/10
   C08L75/08
   C08K5/548
   C08K5/3477
   C08L71/02
   C08K3/04
   C08K3/34
   C08G18/48
   C08G18/76 057
   C08G18/79 010
   C08G18/18
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-508459(P2019-508459)
(86)(22)【出願日】2017年3月29日
(86)【国際出願番号】JP2017013059
(87)【国際公開番号】WO2018179178
(87)【国際公開日】20181004
【審査請求日】2020年3月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】平本 祐也
(72)【発明者】
【氏名】松宮 久雄
(72)【発明者】
【氏名】森 和彦
【審査官】 土橋 敬介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−262114(JP,A)
【文献】 特開2003−041230(JP,A)
【文献】 特開2001−213927(JP,A)
【文献】 特開2006−096912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/10
C08L 75/08
C08K 5/548
C08K 5/3477
C08L 71/02
C08K 3/04
C08K 3/34
C08G 18/48
C08G 18/76
C08G 18/79
C08G 18/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主剤(A)及び硬化剤(B)を含む二液硬化型ウレタン系組成物であって、
主剤(A)は、ウレタンプレポリマー(a)、ポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体(b)及びシランカップリング剤(c)を含有し、ポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体(b)の含有量はウレタンプレポリマー(a)100質量部に対して0.5〜3.0質量部であり、シランカップリング剤(c)の含有量はウレタンプレポリマー(a)100質量部に対して0.5〜5.0質量部であり、
硬化剤(B)は、50〜500mgKOH/gの水酸基価を有するポリオール(d)及びアミン触媒(e)を含有し、ポリオール(d)の含有量は硬化剤(B)の総量に対して40〜60質量%であり、アミン触媒(e)の含有量は硬化剤(B)の総量に対して1.0〜10.0質量%であり、
主剤(A)及び硬化剤(B)の混合質量比が3:1〜10:1であってそのいずれでも主剤(A)及び硬化剤(B)中のNCO/OH基当量比が1.0〜5.0である二液硬化型ウレタン系組成物。
【請求項2】
主剤(A)及び硬化剤(B)の少なくとも一方がカーボンブラック(f)をさらに含有し、カーボンブラック(f)の総含有量が主剤(A)及び硬化剤(B)の総量に対して10〜30質量%である、請求項1に記載の二液硬化型ウレタン系組成物。
【請求項3】
主剤(A)及び硬化剤(B)の少なくとも一方がカオリンクレー(g)をさらに含有し、カオリンクレー(g)の総含有量が主剤(A)及び硬化剤(B)の総量に対して10〜35質量%である、請求項1又は2に記載の二液硬化型ウレタン系組成物。
【請求項4】
ウレタンプレポリマー(a)が、数平均分子量8000以上のポリエーテルポリオール(a−1)とジフェニルメタンジイソシアネート(a−2)の反応生成物である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の二液硬化型ウレタン系組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は二液硬化型ウレタン系組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のボディ、フロントドア、リアドア、バックドア、フロントバンパー、リアバンパー、ロッカーモール等の内外装部品には一般的に鋼板が使用されているが、近年の燃費改善要求に応えるため、軽量化が求められている。このため、鋼板に代えてポリプロピレン等のプラスチック材料を自動車の内外装部品として使用する場合が増えている。なお、ポリプロピレン等のプラスチック材料は鋼板と比較して強度が低いため、タルク、ガラスフィラー等を添加して強度を向上させることが一般的である。
【0003】
ポリプロピレン等のプラスチック製自動車部品同士の接着剤としてはウレタン系組成物が提案されている。
ウレタン系組成物としては、空気中の湿気等によって硬化する、湿気硬化型と呼ばれる一液型の組成物と、主剤と硬化剤とからなる二液型の組成物が知られている。これらのうち、接着工程における作業性の観点から、可使時間(ポットライフ、多液塗料において化学反応等で塗料が硬化し始めるまでの時間)を十分確保でき、且つ速硬化が可能となる二液型が好まれる。
【0004】
一般に、ポリプロピレン基材は、表面の極性が小さく、難接着であることから、接着を容易にするために、基材表面に極性基を導入する表面処理を行う。表面処理には、プラズマ処理、コロナ処理、フレーム処理等が適用される。さらに、表面処理を施したポリプロピレン基材同士の接着にウレタン系組成物を直接適用することは困難であるため、各々のポリプロピレン基材に前処理としてプライマー処理を行ってからウレタン系組成物を適用することが一般的である。
しかし近年、ウレタン系組成物の接着において、工程簡略化及び作業環境改善の観点から、ノンプライマー処理化が求められている。特に、プライマー処理工程の排除(レス化)は、組み立て工程のタクト管理が厳しい、自動車製造工程で顕著な要請である。
【0005】
例えば、特許文献1には、一液湿気硬化型のノンプライマー接着剤(ウレタン系組成物)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−131794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のノンプライマー接着剤は一液型であるため、硬化過程での発泡、又は深部硬化性が悪いことが懸念される。なお、深部硬化性とは、ウレタン系組成物において雰囲気中の水分(湿気)に接触しない被膜内部の硬化状況を判断するもので、一定時間後に得られる硬化被膜の厚さで評価する。
また、二液硬化型接着剤を実際に使用する観点からは、主剤と硬化剤の混合比(配合比)を変えた場合であっても、幅広い混合比で優れた性能を発揮することが望ましい。さらに、二液硬化型接着剤においては主剤と硬化剤の混合質量比が1:1に限定されている場合も多いが、接着強度を向上させる観点から、主剤の配合量を増やしたときに優れた性能を発揮することが望ましい。
【0008】
そこで本開示は、主剤と硬化剤の混合質量比を3:1〜10:1の範囲としたときに、深部硬化性、速硬化性及びノンプライマー接着性に優れる二液型ウレタン系組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため本発明者らが鋭意検討した結果、以下の[1]〜[4]に示す二液硬化型ウレタン系組成物が、速硬化性、ノンプライマー接着性及び耐湿熱老化性に優れることを見出した。
[1] 主剤(A)及び硬化剤(B)を含む二液硬化型ウレタン系組成物であって、
主剤(A)は、ウレタンプレポリマー(a)、ポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体(b)及びシランカップリング剤(c)を含有し、ポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体(b)の含有量はウレタンプレポリマー(a)100質量部に対して0.5〜3.0質量部であり、シランカップリング剤(c)の含有量はウレタンプレポリマー(a)100質量部に対して0.5〜5.0質量部であり、
硬化剤(B)は、50〜500mgKOH/gの水酸基価を有するポリオール(d)及びアミン触媒(e)を含有し、ポリオール(d)の含有量は硬化剤(B)の総量に対して40〜60質量%であり、アミン触媒(e)の含有量は硬化剤(B)の総量に対して1.0〜10.0質量%であり、
主剤(A)及び硬化剤(B)の混合質量比が3:1〜10:1であり、且つ
主剤(A)及び硬化剤(B)中のNCO/OH基当量比が1.0〜5.0である二液硬化型ウレタン系組成物。
[2] 主剤(A)及び硬化剤(B)の少なくとも一方がカーボンブラック(f)をさらに含有し、カーボンブラック(f)の総含有量が主剤(A)及び硬化剤(B)の総量に対して10〜30質量%である、[1]に記載の二液硬化型ウレタン系組成物。
[3] 主剤(A)及び硬化剤(B)の少なくとも一方がカオリンクレー(g)をさらに含有し、カオリンクレー(g)の総含有量が主剤(A)及び硬化剤(B)の総量に対して10〜35質量%である、[1]又は[2]に記載の二液硬化型ウレタン系組成物。
[4] ウレタンプレポリマー(a)が、数平均分子量8000以上のポリエーテルポリオール(a−1)とジフェニルメタンジイソシアネート(a−2)の反応生成物である、[1]〜[3]のいずれかに記載の二液硬化型ウレタン系組成物。
【発明の効果】
【0010】
本開示の二液硬化型ウレタン系組成物によれば、主剤と硬化剤の混合質量比を3:1〜10:1の範囲としたときに、深部硬化性、速硬化性及びノンプライマー接着性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の好適な実施形態について説明するが、本開示はこれらの実施形態に何ら限定されるものでは無い。なお、本明細書において、「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。また、本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0012】
本実施形態の二液硬化型ウレタン系組成物(以下、単に「ウレタン系組成物」ともいう。)は、主剤(A)と硬化剤(B)を含む。このウレタン系組成物は、主剤(A)と硬化剤(B)を混合することにより、硬化させることができる。なお、本実施形態のウレタン系組成物においては、主剤(A)及び硬化剤(B)の質量比が3:1〜10:1となるように混合する。
【0013】
主剤(A)は、ウレタンプレポリマー(a)、ポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体(b)及びシランカップリング剤(c)を含有する。硬化剤(B)は、50〜500mgKOH/gの水酸基価を有するポリオール(d)及びアミン触媒(e)を含有する。主剤(A)及び硬化剤(B)の少なくとも一方は、カーボンブラック(f)、カオリンクレー(g)及び可塑剤(h)の少なくともいずれかを含有することが好ましい。以下、各成分について説明する。
【0014】
<ウレタンプレポリマー(a)>
ウレタンプレポリマー(a)は、活性水素基を2個以上有する化合物とイソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート化合物との反応生成物である。本実施形態のウレタンプレポリマーは、イソシアネート基の数が過剰となるように反応させて、分子内にイソシアネート基を有するものであることが好ましい。
活性水素基としては、例えば、ヒドロキシ基(OH基)、カルボキシル基(COOH基)、アミノ基(NH基)、チオール基(SH基)等が挙げられる。活性水素基を2個以上有する化合物としては、ポリオールが好ましく、ポリエーテルポリオール(a−1)がより好ましい。
ポリイソシアネート化合物としては、イソシアネート基が芳香族炭化水素と結合している芳香族ポリイソシアネート、イソシアネート基が脂環式炭化水素と結合している脂環族ポリイソシアネート等が挙げられる。これらの中で、芳香族ポリイソシアネートが好ましく、ジフェニルメタンジイソシアネート(a−2)又はジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)がより好ましく、ジフェニルメタンジイソシアネート(a−2)がさらに好ましい。
活性水素基を2個以上有する化合物及びイソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート化合物は、それぞれ1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0015】
<ポリエーテルポリオール(a−1)>
上記ポリエーテルポリオール(a−1)は、OH基を2個以上有するポリエーテルポリオールであれば特に限定されない。具体的には、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合体、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)、ソルビトール系ポリオール等が挙げられる。これらの中でもポリプロピレングリコール(PPG)が好ましい。また、ポリエーテルポリオール(a−1)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
上記ポリエーテルポリオール(a−1)は数平均分子量8000以上であることが好ましく、数平均分子量10000以上であることがより好ましい。ポリエーテルポリオールの数平均分子量が8000以上であると、ウレタン化した際のプレポリマーの凝集力が大きくなり過ぎないことから、耐熱クリープ性に優れた接着剤となる。ポリエーテルポリオールは製造工程中に生成する副生成物を少なくし、より狭分散化させることで高分子量化できる。現在市販されているPPG(ポリプロピレングリコール)の中で最高の数平均分子量は15000程度である。市販されている高分子量ポリエーテルポリオールとしては、例えば旭硝子株式会社製のプレミノール(登録商標、以下同様)を使用することができる。実施例で用いたプレミノール3012は、グリセリンを開始剤としたポリプロピレングリコールの重合体である。
なお、本明細書中、「数平均分子量」とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を利用し、標準ポリスチレンの検量線を使用して算出したものである。
GPC測定条件は、下記のとおりである。
・測定器 :ACQUITY UPLC APCシステム(Waters社製)
・カラム :APC XT−900、APC XT−200、APC XT−125、APC XT−45 (Waters社製)
・キャリア:テトラヒドロフラン(THF)
・検出器 :示差屈折
・サンプル:0.5質量%THF溶液
・検量線 :ポリスチレン
【0017】
<ジフェニルメタンジイソシアネート(a−2)>
上記ジフェニルメタンジイソシアネート(a−2)としては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’−MDI(モノメリックMDI))、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート)(2,4’−MDI)等が挙げられる。
【0018】
<ポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体(b)>
上記ポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体(b)は、トルエンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等の各種ポリジイソシアネート化合物の3量体である。当該3量体は、1種のポリイソシアネート化合物の3量体であってもよく、2種以上のポリイソシアネート化合物、例えばHDIとTDIとの混合3量体であってもよい。当該3量体の末端官能基は3官能全てがイソシアネート基(NCO基)である。
【0019】
また、上記ポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体(b)としては、例えば、TDIイソシアヌレート3量体(タケネートD204、三井化学SKCポリウレタン株式会社製)、HDIイソシアヌレート3量体(スミジュールN3300、住化バイエルウレタン株式会社製)、IPDIイソシアヌレート3量体(T1890、エボニックジャパン株式会社製)、HDIとTDIとの混合イソシアヌレート3量体(デスモジュールHL、住化バイエルウレタン株式会社製)等の市販品を使用することができる。ポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体(b)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
上記ポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体(b)を添加することにより、ノンプライマー接着性及び耐湿熱老化性を向上させることができる。
ノンプライマー接着性を向上させることができる理由は、ポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体の分子内に3個存在するイソシアネート基(−NCO)がウレタン系組成物中にてウレタン結合を形成し、さらに、ポリプロピレン基材表面にフレーム処理を施すことによって導入された極性基ともウレタン結合を形成する結果、界面接着力を強くすると推測される。
また、耐湿熱老化性を向上させることができる理由は、ポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体の化合物中に存在するイソシアヌレート環がウレタン系組成物中の凝集力発現に寄与するためであると推測される。
【0021】
ウレタン系組成物におけるポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体(b)の含有量はウレタンプレポリマー(a)100質量部に対して、0.5〜3.0質量部であり、1.0〜2.5質量部であることが好ましい。上記ポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体(b)の含有量が0.5質量部未満となると、ウレタン系組成物中のイソシアヌレート環の存在量が減少し、凝集力が低下する結果、耐湿熱老化性が悪化する。また、上記ポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体(b)の含有量が3.0質量部を超えると、ウレタン系組成物中のNCO基の存在量が多くなる結果、ウレタン系組成物が硬化した際に硬化度が高くなり、引剥がしの際に基材界面に応力が集中し界面破壊となるおそれがある、すなわち接着性が悪化する。
【0022】
<シランカップリング剤(c)>
シランカップリング剤(c)は、1つの分子中に反応性の異なる2種類の官能基を有する有機ケイ素化合物である。シランカップリング剤(c)としては、例えば、エポキシシラン、ビニルシラン、イミダゾールシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、スチリルシラン、イソシアネートシラン、スルフィドシラン、ウレイドシラン等が挙げられ、ウレタン系組成物に含有し、ノンプライマー接着性を得るには、メルカプトシラン、アミノシラン、スルフィドシラン、イソシアネートシランが好適である。
【0023】
上記シランカップリング剤(c)は、ウレタン系組成物中にてウレタン結合及びシロキサン結合を形成し、かつ、ポリプロピレン基材表面にフレーム処理を施すことによって導入された極性基を相手に共有結合を形成する。このため、ウレタン系組成物とポリプロピレン基材との間の接着に寄与する。これらのシランカップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
シランカップリング剤(c)の含有量はウレタンプレポリマー(a)100質量部に対して、0.5〜5.0質量部であり、1.0〜4.0質量部であることが好ましく、1.5〜2.5質量部であることがより好ましい。
シランカップリング剤(c)の含有量が0.5質量部未満となると、ウレタン系組成物とポリプロピレン基材の間の密着力が小さくなり、結果的に特に高温下でのノンプライマー接着性が小さくなる。また、シランカップリング剤(c)の含有量が5.0質量部を超えると、ウレタン系組成物のNCO/OH基当量比を大きく変動させるおそれがあり、接着性又は速硬化性の低下をもたらす。
なお、メルカプトシラン、アミノシラン等の活性水素基を有する化合物はOH基当量に換算し、イソシアネートシラン等の活性水素基と反応する官能基を有するものに関してはNCO基当量に換算した。また、シランカップリング剤が有するアルコキシシランの加水分解によって生じるシラノール基はOH基当量の計算に含まないものとする。
【0025】
<ポリオール(d)>
ポリオール(d)としては、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合体、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)、ソルビトール系ポリオール等のポリエーテルポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリシロキサンポリオール、ロジンポリオール、アクリルポリオールなどが挙げられ、ポリプロピレン基材との接着力の観点から、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、ポリオレフィンポリオール又はポリシロキサンポリオールが好適である。ポリオール(d)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
上記オレフィンポリオールとしては、具体的にはポリイソプレンポリオール、ポリブタジエンポリオール、水添ポリイソプレンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール等が挙げられる。
【0027】
上記ポリオール(d)の含有量は、硬化剤(B)の総量に対して、40〜60質量%であり、40〜55質量%であることが好ましく、40〜50質量%であることがより好ましい。ポリオール(d)の含有量が40質量%未満となると、ウレタン系組成物のNCO/OH基当量比が大きくなり、良好な深部硬化性が得られないおそれがある。また、ポリオール(d)の含有量が60質量%を超えると、未反応成分が残り、良好な接着性、速硬化性が得られなくなるおそれがある。
【0028】
上記ポリオール(d)の水酸基価は50〜500mgKOH/gであり、50〜350mgKOH/gであることが好ましく、50〜200mgKOH/gであることがより好ましい。
ポリオール(d)の水酸基価が50mgKOH/g未満となると、ウレタン系組成物のNCO/OH基当量比が大きくなり、主剤と硬化剤の混合質量比が10:1等主剤の割合が大きい場合に、良好な深部硬化性が得られないおそれがある。また、ポリオール(d)の水酸基価が500mgKOH/gを超えると、ウレタン系組成物のNCO/OH基当量比が小さくなり、主剤と硬化剤の混合質量比が3:1等硬化剤の割合が大きい場合に、未反応成分が残り、良好な接着性、速硬化性が得られなくなるおそれがある。
【0029】
なお、硬化剤(B)は、水酸基価が50〜500mgKOH/gの範囲から外れるポリオールをさらに含んでいてもよい。
【0030】
<アミン触媒(e)>
アミン触媒(e)としては、ウレタン化反応又は尿素化反応を促進する公知の触媒が使用できる。アミン触媒(e)は、ウレタン化反応性及び尿素化反応性を高めることができる点から、三級アミンであることが好ましい。
【0031】
アミン触媒(e)の具体例としては、N,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N',N'−テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N',N'',N''−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N',N'',N''−ペンタメチル−(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N,N',N'',N''−ペンタメチルジプロピレントリアミン、N,N,N',N'−テトラメチルグアニジン、1,3,5−トリス(N,N−ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−S−トリアジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、N,N,N',N'−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N−メチル−N'−(2−ジメチルアミノエチル)ピペラジン、N,N'−ジメチルピペラジン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルモルホリン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、1−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−イソブチル−2−メチルイミダゾール、1−ジメチルアミノプロピルイミダゾール、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジメチルイソプロパノールアミン、N,N−ジメチルヘキサノールアミン、N,N−ジメチルアミノエトキシエタノール、N,N,N'−トリメチル−N'−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N,N'−トリメチル−N'−(2−ヒドロキシエチル)プロパンジアミン、N−メチル−N'−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、ビス(ジメチルアミノプロピル)メチルアミン、ビス(ジメチルアミノプロピル)イソプロパノールアミン、1−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾール、1−(2−ヒドロキシプロピル)イミダゾール、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシプロピル)−2−メチルイミダゾール、3−キヌクリジノール等が挙げられる。
特にイミダゾール系アミン化合物は、速硬化性かつオープンタイムを両立する上で好ましい。
上記アミン触媒(e)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
上記アミン触媒(e)の含有量は、硬化剤(B)の総量に対して、1.0〜10.0質量%であり、1.0〜8.0質量%であることが好ましく、1.5〜5.0質量%であることがより好ましい。
【0033】
<カーボンブラック(f)>
カーボンブラック(f)は、その一次平均粒子径が20〜40nmであることが好ましく、25〜35nmであることがより好ましい。カーボンブラックの平均粒子径が上記所定の範囲であることにより、接着剤の粘性及びカーボンブラックの分散性がより適切な範囲に調整され、接着剤の作業性及び強度がより向上する。
【0034】
カーボンブラック(f)としては、具体的には、例えば、旭#70(旭カーボン株式会社製)、シースト3(東海カーボン株式会社製、「シースト」は登録商標)、三菱カーボンブラック#32(三菱化学株式会社製)、ニテロン#200(新日化カーボン株式会社製、「ニテロン」は登録商標)等が好適である。これらのカーボンブラックは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
上記カーボンブラック(f)の総含有量は、主剤(A)と硬化剤(B)の総量に対して10〜30質量%であることが好ましく、10〜25質量%であることがより好ましい。上記カーボンブラック(g)の含有量が上記所定の範囲であることにより、接着剤の強度をより向上させることができ、さらに、未硬化時にはチクソトロピー性を有し、作業性が良好となり、また硬化時には耐発泡性を有し、さらには硬化後には高強度及び光遮蔽効果による高い耐候性、即ち、耐久耐候性を有することになるので好ましい。
【0036】
<カオリンクレー(g)>
カオリンクレー(g)としては、例えば、湿式カオリン、焼成カオリン、乾式カオリン等が挙げられる。カオリンクレー(g)の総含有量は、作業性の観点から、主剤(A)と硬化剤(B)の総量に対して、10〜35質量%であることが好ましく、15〜25質量%であることがより好ましい。
【0037】
なお、本実施形態のウレタン系組成物は、カオリンクレー以外の充填剤、例えば、タルク、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、コロイダル炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等を含有していてもよい。
【0038】
<可塑剤(h)>
本実施形態のウレタン系組成物は、可塑剤(h)を含有していてもよい。可塑剤(h)としては、例えばフタル酸エステル系化合物、アルキルスルホン酸エステル系化合物、アジピン酸エステル系化合物等が挙げられる。フタル酸エステル系化合物の具体例としては、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、フタル酸ブチルベンジル(BBP)等が挙げられる。
【0039】
本実施形態のウレタン系組成物は、上述の成分に加えて、さらに顔料、染料、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、接着性付与剤、分散剤、溶剤等の添加剤を含有してもよい。
【0040】
主剤(A)及び硬化剤(B)中のイソシアネート基(NCO)と水酸基(OH)との存在比率であるNCO/OH基当量比は1.0〜5.0である。NCO/OH基当量比が1.0未満になると、主剤と硬化剤を混合させた際に未反応ポリオールの存在割合が多くなり、未硬化となる又は十分な接着特性が得られない。また、NCO/OH基当量比が5.0を超えると、主剤と硬化剤を混合させた際にイソシアネート及びプレポリマーの存在比率が多くなることにより、空気中の水分との反応量が多くなり、速硬化性及び深部硬化性が損なわれる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例により本開示の目的及び利点をさらに詳細に説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものでは無い。
【0042】
(実施例1〜3及び比較例1〜3)
以下に示す方法で、主剤#1〜6及び硬化剤#1〜6を調製した。なお、主剤#1〜3及び硬化剤#1〜3がそれぞれ実施例1〜3に対応し、主剤#4〜6及び硬化剤#4〜6がそれぞれ比較例1〜3に対応する。
【0043】
<主剤の調製>
(主剤#1)
撹拌機、窒素導入管、真空ポンプ及び加熱冷却装置付き混練容器にプレミノール3012(旭硝子株式会社製のポリエーテルポリオール、数平均分子量(Mn)12000、3官能、水酸基価14.0mgKOH/g)を90.9g、三菱カーボンブラック#32(三菱化学株式会社製のカーボンブラック、一次粒子径28nm)を40g、アイスバーグK(白石カルシウム株式会社製の焼成クレー)を21.0g、DINP(株式会社ジェイプラス製のフタル酸ジイソノニル)を2.7g仕込み、30分、カーボンブラック、焼成クレーの塊が無くなるまで撹拌した。次いで、内容物が100℃になるまで混練容器を加熱し、真空ポンプにより混練容器内部が20mmHgになるまで低圧にし、1時間撹拌し続けた。さらに、内容物の温度が70℃になるまで冷却し、容器内にミリオネートMT(東ソー株式会社製のモノメリックMDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)、「ミリオネート」は登録商標、NCO33.6質量%)を9.1g、錫触媒(ニッカオクチック錫)を200ppm添加し、窒素導入後、1時間撹拌し続けた。さらに、内容物の温度が40℃になるまで冷却し、KBM−803(信越化学工業株式会社製のシランカップリング剤メルカプトシラン、活性水素当量196g/eq)を1.8g、スミジュールN3300(住化バイエルウレタン株式会社製のHDIイソシアヌレート変性体、NCO25.0質量%)を1.8g添加し、10分攪拌した。なお、上記工程で得られたプレミノール3012とミリオネートMTの反応物をウレタンプレポリマーとした。
【0044】
(主剤#2〜6)
主剤#1と同様の方法で、主剤#2〜6を調製した。
【0045】
<硬化剤の調製>
(硬化剤#1)
撹拌機、窒素導入管、真空ポンプ及び加熱冷却装置付き混練容器にR−15HT(出光興産株式会社製のポリブタジエンポリオール、2.3官能、水酸基価103mgKOH/g)を88.0g、プレミノール7012(旭硝子株式会社製のポリエーテルポリオール、3官能、水酸基価16.8mgKOH/g)を12.0g、EDP−300(株式会社ADEKA製のエチレンジアミンプロピレンオキサイド変性体、4官能、水酸基価760mgKOH/g)を2.0g、旭#70(旭カーボン株式会社製のカーボンブラック、一次粒子径28nm)を41.0g、アイスバーグK(白石カルシウム株式会社製の焼成クレー)を67.0g仕込み、30分、カーボンブラック、焼成クレーの塊が無くなるまで撹拌した。次いで、内容物が100℃になるまで混練容器を加熱し、真空ポンプにより混練容器内部が20mmHgになるまで低圧にし、1時間撹拌し続けた。さらに、内容物の温度が40℃になるまで冷却し、U−CAT660M(サンアプロ株式会社製のアミン触媒)を6.0g添加し、10分攪拌した。
【0046】
(硬化剤#2)
撹拌機、窒素導入管、真空ポンプ及び加熱冷却装置付き混練容器にUT−1001(綜研化学株式会社製の多官能ヒドロキシアクリルポリマー、水酸基価58mgKOH/g)を100.0g、EDP−300(株式会社ADEKA製のエチレンジアミンプロピレンオキサイド変性体、4官能、水酸基価760mgKOH/g)を2.0g、旭#70(旭カーボン株式会社製のカーボンブラック、一次粒子径28nm)を41.0g、アイスバーグK(白石カルシウム株式会社製の焼成クレー)を67.0g仕込み、30分、カーボンブラック、焼成クレーの塊が無くなるまで撹拌した。次いで、内容物が100℃になるまで混練容器を加熱し、真空ポンプにより混練容器内部が20mmHgになるまで低圧にし、1時間撹拌し続けた。さらに、内容物の温度が40℃になるまで冷却し、U−CAT660M(サンアプロ株式会社製のアミン触媒)を6.0g添加し、10分攪拌した。
【0047】
(硬化剤#3)
撹拌機、窒素導入管、真空ポンプ及び加熱冷却装置付き混練容器にエクセノール720(旭硝子株式会社製のポリエーテルポリオール、2官能、水酸基価160mgKOH/g)を10.0g、エクセノール2020(旭硝子株式会社製のポリエーテルポリオール、2官能、水酸基価56mgKOH/g)を90.0g、EDP−300(株式会社ADEKA製のエチレンジアミンプロピレンオキサイド変性体、4官能、水酸基価760mgKOH/g)を2.0g、旭#70(旭カーボン株式会社製のカーボンブラック、一次粒子径28nm)を41.0g、アイスバーグK(白石カルシウム株式会社製の焼成クレー)を67.0g仕込み、30分、カーボンブラック、焼成クレーの塊が無くなるまで撹拌した。次いで、内容物が100℃になるまで混練容器を加熱し、真空ポンプにより混練容器内部が20mmHgになるまで低圧にし、1時間撹拌し続けた。さらに、内容物の温度が40℃になるまで冷却し、U−CAT660M(サンアプロ株式会社製のアミン触媒)を6.0g添加し、10分攪拌した。
【0048】
(硬化剤#4)
撹拌機、窒素導入管、真空ポンプ及び加熱冷却装置付き混練容器にエクセノール720(旭硝子株式会社製のポリエーテルポリオール、2官能、水酸基価160mgKOH/g)を77.0g、エクセノール1030(旭硝子株式会社製のポリエーテルポリオール、3官能、水酸基価168mgKOH/g)を23.0g、EDP−300(株式会社ADEKA製のエチレンジアミンプロピレンオキサイド変性体、4官能、水酸基価760mgKOH/g)を2.0g、旭#70(旭カーボン株式会社製のカーボンブラック、一次粒子径28nm)を41.0g、アイスバーグK(白石カルシウム株式会社製の焼成クレー)を67.0g仕込み、30分、カーボンブラック、焼成クレーの塊が無くなるまで撹拌した。次いで、内容物が100℃になるまで混練容器を加熱し、真空ポンプにより混練容器内部が20mmHgになるまで低圧にし、1時間撹拌し続けた。さらに、内容物の温度が40℃になるまで冷却し、U−CAT660M(サンアプロ株式会社製のアミン触媒)を6.0g添加し、10分攪拌した。
【0049】
(硬化剤#5)
撹拌機、窒素導入管、真空ポンプ及び加熱冷却装置付き混練容器にプレミノール7012(旭硝子株式会社製のポリエーテルポリオール、3官能、水酸基価16.8mgKOH/g)を100.0g、EDP−300(株式会社ADEKA製のエチレンジアミンプロピレンオキサイド変性体、4官能、水酸基価760mgKOH/g)を2.0g、旭#70(旭カーボン株式会社製のカーボンブラック、一次粒子径28nm)を41.0g、アイスバーグK(白石カルシウム株式会社製の焼成クレー)を67.0g仕込み、30分、カーボンブラック、カオリンクレーの塊が無くなるまで撹拌した。次いで、内容物が100℃になるまで混練容器を加熱し、真空ポンプにより混練容器内部が20mmHgになるまで低圧にし、1時間撹拌し続けた。さらに、内容物の温度が40℃になるまで冷却し、U−CAT660M(サンアプロ株式会社製のアミン触媒)を6.0g添加し、10分攪拌した。
【0050】
(硬化剤#6)
撹拌機、窒素導入管、真空ポンプ及び加熱冷却装置付き混練容器にEDP−1100(株式会社ADEKA製のエチレンジアミンプロピレンオキサイド変性体、4官能、水酸基価214mgKOH/g)を51.0g、EDP−300(株式会社ADEKA製のエチレンジアミンプロピレンオキサイド変性体、数平均分子量300、4官能、水酸基価760mgKOH/g)を51.0g、旭#70(旭カーボン株式会社製のカーボンブラック、一次粒子径28nm)を41.0g、アイスバーグK(白石カルシウム株式会社製の焼成クレー)を67.0g仕込み、30分、カーボンブラック、カオリンクレーの塊が無くなるまで撹拌した。次いで、内容物が100℃になるまで混練容器を加熱し、真空ポンプにより混練容器内部が20mmHgになるまで低圧にし、1時間撹拌し続けた。さらに、内容物の温度が40℃になるまで冷却し、U−CAT660M(サンアプロ株式会社製のアミン触媒)を6.0g添加し、10分攪拌した。
【0051】
なお、主剤#1〜6及び硬化剤#1〜6の配合組成(単位:質量部)を表1にまとめて示す。
【0052】
<ウレタン系組成物の評価>
上述の主剤及び硬化剤を用いて、深部硬化性、速硬化性及びノンプライマー接着性を以下に示す方法で評価した。なお、主剤と硬化剤の混合質量比は、10:1、6:1及び3:1の3とおりとした。
【0053】
[深部硬化性]
上記実施例1〜3及び比較例1〜3に対応する主剤と硬化剤を上記所定の配合比でプラネタリ装置を用いて混合した。得られた混合物を、直径3cm×高さ3cmの円錐状のポリプロピレン製の容器の中に流し込み、養生のために23℃、50%RH(相対湿度)にて72時間放置し、養生後のサンプルを得た。得られたサンプルを半円状になるようナイフで半分に切断し、断面のタックを評価した。
深部硬化性の評価として、断面のタックが無かった場合は「A」、わずかなタックが残っていた場合は「B」、未硬化もしくは多くのタックが残っていた場合は「C」とした。
【0054】
[速硬化性]
上記実施例1〜3及び比較例1〜3に対応する主剤と硬化剤を上記所定の混合比でプラネタリ装置を用いて混合した。得られた混合物を、フレーム処理を行ったポリプロピレン基材に直接ビード状に塗布し、これに離型紙を重ね接着剤厚さが3mmとなるように圧着した後、養生のために60℃乾燥機に10分間投入し、速硬化性測定サンプルを得た。このサンプルに対して、ナイフカットによる剥離試験を行い、速硬化性を評価した。
接着剤の接着性評価として、接着した部分が凝集破壊の場合は「A」、ポリプロピレン基材表面と接着剤間との界面破壊の場合は「B」とした。
【0055】
[ノンプライマー接着性]
フレーム処理を行ったポリプロピレン基材を2枚用意した。上記実施例1〜3及び比較例1〜3に対応する主剤と硬化剤を上記所定の混合比でプラネタリ装置を用いて混合し、得られた混合物を、一方の基材に3mmの厚さで塗布した。接着面積が250mm2(25mm×10mm)になるように他方の基材の表面と張り合わせ、圧着させることで試験片を作製した。
作製した試験片を養生のために23℃、50%RH(相対湿度)にて72時間放置し、養生後の試験片を得た。この試験片に対して、23℃下でJIS K6850:1999に準じた引張試験を行い、せん断強度を測定し、破壊強度を記録した。接着剤が未硬化の場合は「未硬化」と評価し、測定は行わなかった。また、破壊状態は目視で確認し、接着剤が凝集破壊している場合は「CF」、基材―接着剤間で界面剥離している場合は「AF」とした。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
表2から明らかであるように、実施例1〜3のウレタン系組成物は、主剤と硬化剤の混合質量比が10:1〜3:1の範囲のいずれでも、優れた速硬化性、深部硬化性及びノンプライマー接着性を有している。また、主剤の量が多いほど接着強度に優れる傾向にあることが分かる。一方、比較例1〜3のウレタン系組成物は、主剤と硬化剤の混合質量比が10:1〜3:1の範囲で、速硬化性、深部硬化性及びノンプライマー接着性のうち少なくともいずれかの物性が低下する配合比が存在することが明らかとなった。