特許第6943481号(P6943481)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6943481-多層粘着テープ 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6943481
(24)【登録日】2021年9月13日
(45)【発行日】2021年9月29日
(54)【発明の名称】多層粘着テープ
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20210916BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20210916BHJP
【FI】
   C09J7/38
   C09J133/14
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-548028(P2019-548028)
(86)(22)【出願日】2018年5月18日
(65)【公表番号】特表2020-509139(P2020-509139A)
(43)【公表日】2020年3月26日
(86)【国際出願番号】KR2018005713
(87)【国際公開番号】WO2018216968
(87)【国際公開日】20181129
【審査請求日】2019年9月3日
(31)【優先権主張番号】10-2017-0062846
(32)【優先日】2017年5月22日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・スン・ホン
(72)【発明者】
【氏名】ドン・フン・リム
(72)【発明者】
【氏名】ジュ・ヨン・ソ
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・マン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ウ・ヨン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ホ・キョン・ソン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン・スン・キム
(72)【発明者】
【氏名】スレ・イ
(72)【発明者】
【氏名】グァン・ス・ソ
【審査官】 高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−054006(JP,A)
【文献】 特開2017−075281(JP,A)
【文献】 特開2013−186216(JP,A)
【文献】 特開2018−168291(JP,A)
【文献】 特開2013−014664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
B32B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1外郭粘着層、中間粘着層および第2外郭粘着層が順次設けられ、
前記中間粘着層はアルキル基含有(メタ)アクリレートモノマーの重合単位、カルボキシ基含有モノマーの重合単位、シクロアルキル基含有(メタ)アクリレートモノマーの重合単位、および(メタ)アクリルアミド系モノマーの重合単位を含む中間粘着重合体を含む、多層粘着テープであって、
前記カルボキシ基含有モノマーの重合単位の含量は、前記中間粘着重合体100重量部に対して1重量部以上15重量部以下であり、
前記(メタ)アクリルアミド系モノマーの重合単位の含量は、前記中間粘着重合体100重量部に対して1重量部以上15重量部以下であり、
前記カルボキシ基含有モノマーの重合単位と前記(メタ)アクリルアミド系モノマーの重合単位の総含量は、前記中間粘着重合体100重量部に対して、5重量部以上であり、
前記第1外郭粘着層と前記中間粘着層の厚さ比、および前記第2外郭粘着層と前記中間粘着層の厚さ比は、各々、1:0.7〜1:2である、多層粘着テープ。
【請求項2】
前記カルボキシ基含有モノマーの重合単位と前記(メタ)アクリルアミド系モノマーの重合単位の重量比は、1:0.1〜1:1.8である、請求項1に記載の多層粘着テープ。
【請求項3】
前記第1外郭粘着層および前記第2外郭粘着層は、各々、アルキル基含有(メタ)アクリレートモノマーの重合単位および架橋性モノマーの重合単位を含む外郭粘着重合体を含む、請求項1または2に記載の多層粘着テープ。
【請求項4】
前記架橋性モノマーの重合単位の含量は、前記外郭粘着重合体100重量部に対して1重量部以上30重量部以下である、請求項3に記載の多層粘着テープ。
【請求項5】
前記中間粘着層の厚さは、30μm以上100μm以下である、請求項1から4のいずれか一項に記載の多層粘着テープ。
【請求項6】
前記第1外郭粘着層および前記第2外郭粘着層の厚さは、各々、25μm以上60μm以下である、請求項1から5のいずれか一項に記載の多層粘着テープ。
【請求項7】
前記多層粘着テープは、前記第1外郭粘着層と中間粘着層との間に設けられた第1界面混合層、および前記第2外郭粘着層と前記中間粘着層との間に設けられた第2界面混合層をさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の多層粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
多層粘着テープが提供される。
【背景技術】
【0002】
電子機器には、様々な部材が粘着剤によって貼り付けられる。例えば、液晶表示装置(Liquid Crystal Display、LCD)には、偏光板、位相差板、光学補償フィルム、反射シート、保護フィルムおよび輝度向上フィルムなどのような様々な光学部材が粘着テープによって貼り付けられる。最近、粘着テープを用いる機器の性能向上に応じて、粘着テープに求められる物性も益々多様になっている。一例として、白濁現象を最小化し、再施工のために粘着テープを除去する時に残余物が残らないリワーク性に優れた粘着テープに対する要求があり、それに関する研究が必要な実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】KR 10−2016−0025050 A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
優れた段差埋め込み性およびリワーク性を有する多層粘着テープが提供される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施態様において、第1外郭粘着層、中間粘着層および第2外郭粘着層が順次設けられ、前記中間粘着層はアルキル基含有(メタ)アクリレートモノマーの重合単位、カルボキシ基含有モノマーの重合単位およびアクリルアミド系モノマーの重合単位を含む中間粘着重合体を含む、多層粘着テープが提供される。
【発明の効果】
【0006】
一実施態様による多層粘着テープは、白濁現象を最小化して高い透明度を有する。
一実施態様による多層粘着テープは、優れたリワーク性により、再施工の際に除去が容易である。
一実施態様による多層粘着テープは、優れた段差埋め込み性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施態様による多層粘着テープの積層構造の模式図である。
図2】一実施態様による多層粘着テープの積層構造の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書において、ある部材が他の部材「上に」位置しているとする時、これは、ある部材が他の部材に接している場合だけでなく、二つの部材の間にまた他の部材が存在する場合も含む。
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」とする時、これは、特に反する記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味する。
本明細書において、用語「モノマーの重合単位」とは、そのモノマーが重合反応を経てその重合体の骨格、例えば、主鎖または側鎖を形成している形態を意味する。
本明細書において、単位「重量部」とは、各成分間の重量の比率を意味する。
【0009】
以下では本明細書についてより詳しく説明する。
一実施態様において、第1外郭粘着層、中間粘着層および第2外郭粘着層が順次設けられ、前記中間粘着層はアルキル基含有(メタ)アクリレートモノマーの重合単位、カルボキシ基含有モノマーの重合単位およびアクリルアミド系モノマーの重合単位を含む中間粘着重合体を含む、多層粘着テープが提供される。
【0010】
図1は、一実施態様による多層粘着テープの積層構造の模式図である。具体的には、図1は、第1外郭粘着層101、中間粘着層201および第2外郭粘着層102が順次積層された多層粘着テープを示す。
【0011】
前記多層粘着テープは、中間粘着層にカルボキシ基含有モノマーの重合単位とアクリルアミド系モノマーの重合単位を同時に含む中間粘着重合体を含むことによって、優れたリワーク性を有すると同時に白濁現象を最小化することができる。具体的には、前記多層粘着テープの中間粘着層は、第1および第2外郭粘着層に比べて高い引張強度を有することができる。また、前記多層粘着テープは、前記多層粘着テープを被着体に貼り付けた後、修正が必要であるためにそれを剥ぎ取る時、前記中間粘着層によって容易に切れない。それにより、前記多層粘着テープは、被着体から容易に剥ぎ取ることができるという長所がある。
【0012】
また、前記多層粘着テープの第1および第2外郭粘着層は、低いガラス転移温度を有することができる。よって、前記多層粘着テープは、優れた段差埋め込み性を有することができる。
【0013】
前記アルキル基含有(メタ)アクリレートモノマーの重合単位の含量は、前記中間粘着重合体100重量部に対して、30重量部以上90重量部以下、50重量部以上85重量部以下、60重量部以上80重量部、または70重量部以上80重量部以下であってもよい。
【0014】
前記カルボキシ基含有モノマーはアクリル酸、メタクリル酸、2−カルボキシエチルアクリル酸、3−カルボキシプロピルアクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシ酢酸、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシブチル酸、アクリル酸二量体、イタコン酸およびマレイン酸からなる群より選択される1種以上であってもよいが、これらに制限されるものではない。
【0015】
前記カルボキシ基含有モノマーの重合単位の含量は、前記中間粘着重合体100重量部に対して、1重量部以上15重量部以下、2重量部以上10重量部以下、または1重量部以上5重量部以下であってもよい。前記カルボキシ基含有モノマーの重合単位の含量が前記範囲内である場合、前記中間粘着層の凝集力を過度に高めない範囲に調節することができ、前記中間粘着層の耐熱性を確保することができる。また、前記範囲内で、前記多層粘着テープの段差付近での浮き上がりによる段差性気泡の発生を最小化することができる。
【0016】
前記アクリルアミド系モノマーはアクリルアミド、N,N−ジフェニル(メタ)アクリルアミド、N−(n−ドデシル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、ジメチルアクリルアミドおよびN,N−ジアリール(メタ)アクリルアミドからなる群より選択される1種以上であってもよいが、これらに制限されるものではない。
【0017】
前記アクリルアミド系モノマーの重合単位の含量は、前記中間粘着重合体100重量部に対して、1重量部以上15重量部以下、具体的には、3重量部以上12重量部以下であってもよい。前記アクリルアミド系モノマーの重合単位の含量が前記範囲内である場合、前記中間粘着層の白濁現象を最小化すると同時に前記多層粘着テープのリワーク性と段差埋め込み性が向上できる。
【0018】
前記中間粘着重合体における、前記カルボキシ基含有モノマーの重合単位と前記(メタ)アクリルアミド系モノマーの重合単位の総含量は、前記中間粘着重合体100重量部に対して、5重量部以上30重量部以下、10重量部以上25重量部以下、または10重量部以上15重量部以下であってもよい。
【0019】
前記カルボキシ基含有モノマーの重合単位と前記(メタ)アクリルアミド系モノマーの重合単位の総含量が前記範囲内である場合、前記中間粘着層は、白濁現象を十分に抑制することができ、さらには多層粘着テープの段差埋め込み性およびリワーク性の向上にも役立つ。
【0020】
前記カルボキシ基含有モノマーの重合単位と前記(メタ)アクリルアミド系モノマーの重合単位の重量比は、1:0.1〜1:1.8、具体的には、1:0.2〜1:1.5であってもよい。前記カルボキシ基含有モノマーの重合単位と前記(メタ)アクリルアミド系モノマーの重合単位の重量比が前記範囲内である場合、前記中間粘着層は、白濁抑制機能を有することができ、適切な強度を有することができる。それにより、多層粘着テープの段差埋め込み性も確保することができる。
【0021】
前記中間粘着重合体は、シクロアルキル基含有(メタ)アクリレートモノマーの重合単位をさらに含むことができる。
【0022】
前記シクロアルキル基は、官能基内に不飽和結合が存在しない炭素環構造を含むことができる。また、前記シクロアルキル基は、炭素数3〜20の単環式環(monocyclic ring)または多環式環(polycyclic ring)を含むことができる。
【0023】
前記シクロアルキル基含有(メタ)アクリレートモノマーはシクロヘキシルアクリレート(CHA)、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)、イソボルニルアクリレート(IBOA)、イソボルニルメタクリレート(IBOMA)、イソボルニルメチル(メタ)アクリレートおよび3,3,5−トリメチルシクロヘキシルアクリレート(TMCHA、3,3,5−trimethylcyclohexylacrylate)からなる群より選択される1種以上であってもよいが、これらに制限されるものではない。
【0024】
前記シクロアルキル基含有(メタ)アクリレートモノマーの重合単位の含量は、前記中間粘着重合体100重量部に対して、0重量部超30重量部以下、または5重量部以上15重量部以下であってもよい。前記中間粘着層において、前記シクロアルキル基含有(メタ)アクリレートモノマーの重合単位の含量が前記範囲内である場合、前記多層粘着テープは、適切な付着力と高い段差埋め込み性を同時に有することができる。また、前記含量の範囲内で、前記多層粘着テープのリワーク性が向上できる。具体的には、前記含量の範囲内で、多層粘着テープの強度を適切に保持させることができ、それにより、再施工が必要な場合、前記多層粘着テープは被着体から容易に除去されることができる。また、前記含量の範囲内で、中間粘着剤組成物は容易に塗布および硬化することができ、中間粘着層内で遅延気泡(delayed bubble)の発生を最小化することができる。
【0025】
前記第1外郭粘着層および前記第2外郭粘着層は、各々、アルキル基含有(メタ)アクリレートモノマーの重合単位および架橋性モノマーの重合単位を含む外郭粘着重合体を含むことができる。
【0026】
前記第1外郭粘着層および前記第2外郭粘着層は同一な組成からなるものであってもよい。さらに、前記第1外郭粘着層および前記第2外郭粘着層の厚さは同一であってもよい。
【0027】
前記第1外郭粘着層および前記第2外郭粘着層において、前記アルキル基含有(メタ)アクリレートモノマーの重合単位の含量は、前記外郭粘着重合体100重量部に対して、30重量部以上95重量部以下、または50重量部以上90重量部以下であってもよい。
【0028】
また、前記第1外郭粘着層および前記第2外郭粘着層において、前記架橋性モノマーの重合単位の含量は、前記外郭粘着重合体100重量部に対して、1重量部以上30重量部以下であってもよい。前記架橋性モノマーの重合単位の含量が前記範囲内である場合、前記外郭粘着層の凝集力が適切に保持されるため、前記多層粘着テープは、向上したリワーク性を有することができ、さらには高温高湿に対する耐久性も有することができる。
【0029】
前記アルキル基含有(メタ)アクリレートモノマーは、炭素数1〜20のアルキル基を有する(メタ)アクリレートであってもよい。具体的には、前記アルキル基含有(メタ)アクリレートモノマーはメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−メチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルブチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレートおよびイソオクチル(メタ)アクリレートからなる群より選択される1種以上であってもよいが、これらに制限されるものではない。
【0030】
前記架橋性モノマーとは、架橋性官能基と粘着重合体を形成できる他の官能基を有するモノマーであって、粘着重合体に架橋性官能基を提供できるモノマーを意味する。
【0031】
前記架橋性モノマーは、ヒドロキシ基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマーおよび窒素含有モノマーからなる群より選択される1種以上を含むことができる。具体的には、前記架橋性モノマーは、ヒドロキシ基含有モノマーおよびカルボキシ基含有モノマーを同時に含むことができる。
【0032】
前記ヒドロキシ基含有モノマーは2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチレングリコール(メタ)アクリレートおよび2−ヒドロキシプロピレングリコール(メタ)アクリレートからなる群より選択される1種以上であってもよいが、これらに制限されるものではない。
【0033】
前記カルボキシ基含有モノマーはアクリル酸、メタクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシ酢酸、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシブチル酸、アクリル酸二量体、イタコン酸およびマレイン酸からなる群より選択される1種以上であってもよいが、これらに制限されるものではない。
【0034】
前記窒素含有モノマーは2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、3−イソシアナトプロピル(メタ)アクリレート、4−イソシアナトブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、ジメチルアクリルアミドおよびN−ビニルカプロラクタムからなる群より選択される1種以上であってもよいが、これらに制限されるものではない。
【0035】
前記外郭粘着重合体は、ヘテロシクロアルキル基含有(メタ)アクリレートモノマーの重合単位をさらに含むことができる。
【0036】
前記ヘテロシクロアルキル基は、官能基内に不飽和結合が存在せず炭素以外のヘテロ元素が含まれた環構造を含むことができる。さらに、前記ヘテロシクロアルキル基は、炭素数3〜20の単環式環(monocyclic ring)または多環式環(polycyclic ring)の構造において一つ以上の炭素がヘテロ元素で置換された構造を含むことができる。
【0037】
前記ヘテロシクロアルキル基含有(メタ)アクリレートモノマーはテトラヒドロフルフリルアクリレート(THFA)、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、テトラヒドロピラニルアクリレート(THPA)、アクリロイルモルホリンおよび環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート(CTFA、cyclictrimethylol−propaneformalacrylate)からなる群より選択される1種以上であってもよいが、これらに制限されるものではない。
【0038】
前記ヘテロシクロアルキル基含有(メタ)アクリレートモノマーの重合単位の含量は、前記外郭粘着重合体100重量部に対して、1重量部以上15重量部以下、具体的には、5重量部以上15重量部以下であってもよい。
【0039】
前記中間粘着重合体は、アルキル基含有(メタ)アクリレートモノマー、カルボキシ基含有モノマーおよびアクリルアミド系モノマーを含む組成物を溶液重合して形成されたものであってもよい。具体的には、前記中間粘着重合体は、前記組成物を熱重合および/または光重合によって前記モノマーを重合して形成されたものであってもよい。
【0040】
また、前記第1外郭粘着重合体および前記第2外郭粘着重合体は、各々、アルキル基含有(メタ)アクリレートモノマーおよび極性官能基含有モノマーを含む組成物を溶液重合して形成されたものであってもよい。具体的には、前記第1外郭粘着重合体および前記第2外郭粘着重合体は、各々、前記組成物を熱重合および/または光重合によって前記モノマーを重合して形成されたものであってもよい。
【0041】
前記中間粘着重合体、前記第1外郭粘着重合体および前記第2外郭粘着重合体は、各々、当業界で一般的に用いられる架橋剤、開始剤、粘着付与剤などの追加物質を必要に応じてさらに含むことができる。
【0042】
本明細書において、ガラス転移温度(glass transition temperature、Tg)は、DSC(Differential Scanning Calorimeter)(Q−1000、TA Instrument)を用いて−70℃〜100℃の温度範囲で加熱速度5℃/minで昇温して測定した。この時、ガラス転移温度はDSC曲線の中間点に決定した。
【0043】
本発明の一実施態様によれば、前記中間粘着層のガラス転移温度は、−40℃以上0℃以下、具体的には、−40℃以上−15℃以下、より具体的には、−40℃以上−20℃以下、または−35℃以上−25℃以下であってもよい。前記中間粘着層のガラス転移温度の範囲内で、前記多層粘着テープの打ち抜き性が向上することができ、前記多層粘着テープを容易にハンドリングすることができ、前記多層粘着テープはさらに向上した段差埋め込み性を有することができる。
【0044】
前記第1外郭粘着層および前記第2外郭粘着層のガラス転移温度は、各々、−60℃以上−20℃以下、具体的には、−60℃以上−30℃以下、より具体的には、−60℃以上−40℃以下、または−55℃以上−45℃以下であってもよい。
【0045】
前記第1外郭粘着層および前記第2外郭粘着層の各々のガラス転移温度の範囲内で、前記多層粘着テープは、優れた段差埋め込み性を実現することができ、打ち抜き性の低下を最小化することができる。
【0046】
前記中間粘着層のガラス転移温度は、前記第1外郭粘着層および前記第2外郭粘着層のガラス転移温度より高くてもよい。よって、前記中間粘着層は、前記第1外郭粘着層および前記第2外郭粘着層の各々より高い引張力を有することができる。前記中間粘着層は相対的に高いガラス転移温度および引張力を有するため、前記多層粘着テープは、被着体に貼り付けてから再施工のために除去する時によく切れない。それにより、前記多層粘着テープは、被着体から容易に除去されることができる。よって、前記中間粘着層は、前記多層粘着テープのリワーク性を向上させる役割をすることができる。
【0047】
さらに、前記第1外郭粘着層および前記第2外郭粘着層は、低いガラス転移温度を有するため、高い段差埋め込み性を実現することができる。具体的には、前記第1外郭粘着層および前記第2外郭粘着層は低いガラス転移温度によって高い流動性を実現することができ、それにより、前記多層粘着テープは段差部に効果的に埋め込みできる。
【0048】
前記多層粘着テープは、物性が互いに異なる複数の粘着層を含むことによって、高い段差埋め込み性と優れたリワーク性を同時に実現することができる。特に、前記第1外郭粘着層および前記第2外郭粘着層の各々と前記中間粘着層とのガラス転移温度の差が5℃以上25℃以下である場合、前記多層粘着テープは、最適な性能を発揮することができる。
【0049】
前記中間粘着層の厚さは、30μm以上100μm以下、30μm以上80μm以下、40μm以上70μm以下、または45μm以上65μm以下であってもよい。前記中間粘着層の厚さが前記範囲内である場合、前記多層粘着テープは、向上した段差埋め込み性を有することができ、効果的に白濁現象を抑制することができる。
【0050】
前記第1外郭粘着層および前記第2外郭粘着層の厚さは、各々、25μm以上60μm以下、25μm以上55μm以下、30μm以上60μm以下、40μm以上60μm以下、40μm以上50μm以下、または45μm以上55μm以下であってもよい。前記第1外郭粘着層および前記第2外郭粘着層の厚さが前記範囲内である場合、前記多層粘着テープは、優れた段差埋め込み性と長期耐久性を有することができる。
【0051】
前記多層粘着テープの総厚さは、100μm以上250μm以下、100μm以上200μm以下、または120μm以上170μm以下であってもよい。前記多層粘着テープの総厚さが前記範囲内である場合、前記多層粘着テープは、薄い厚さを有するにもかかわらず、高い粘着性、段差吸収性およびリワーク性を同時に有することができる。
【0052】
前記第1外郭粘着層および前記第2外郭粘着層は、同一な組成の組成物を用いて形成されたものであってもよい。さらに、前記第1外郭粘着層および前記第2外郭粘着層の厚さは同一であってもよい。
【0053】
前記第1外郭粘着層と前記中間粘着層の厚さ比、および前記第2外郭粘着層と前記中間粘着層の厚さ比は、各々、1:0.5〜1:2、1:0.7〜1:2、または1:0.7〜1:1.5であってもよい。前記第1外郭粘着層および前記第2外郭粘着層の各々に対する前記中間粘着層の厚さ比が前記範囲内である場合、前記多層粘着テープは、優れた段差埋め込み性を有すると同時に優れたリワーク性を有する。
【0054】
前記中間粘着層の厚さが前記範囲内であり、前記中間粘着層が前記第1外郭粘着層および第2外郭粘着層との厚さ比を保持する場合、前記多層粘着テープは、優れた段差埋め込み性とリワーク性を同時に有することができる。
【0055】
前記多層粘着テープは、前記第1外郭粘着層と中間粘着層との間に設けられた第1界面混合層、および前記第2外郭粘着層と前記中間粘着層との間に設けられた第2界面混合層をさらに含むことができる。具体的には、前記第1界面混合層は、前記第1外郭粘着層を構成する物質と前記中間粘着層を構成する物質を全て含むことができる。また、前記第2界面混合層は、前記第2外郭粘着層を構成する物質と前記中間粘着層を構成する物質を全て含むことができる。
【0056】
図2は、一実施態様による多層粘着テープの積層構造の模式図である。具体的には、図2は、第1外郭粘着層101と中間粘着層201との間に第1界面混合層301が設けられ、中間粘着層201と第2外郭粘着層102との間に第2界面混合層302が設けられた多層粘着テープの積層構造を示す。
【0057】
前記多層粘着テープは、第1外郭粘着剤組成物、中間粘着剤組成物および 第2外郭粘着剤組成物を順次積層した後、同時に硬化、具体的には光硬化させて製造されるものであってもよい。前記第1外郭粘着剤組成物は硬化後に前記第1外郭粘着層を構成し、前記中間粘着剤組成物は硬化後に前記中間粘着層を構成し、前記第2外郭粘着剤組成物は硬化後に前記第2外郭粘着層を構成することができる。具体的には、前記多層粘着テープは、各層を別途に製造した後にそれを接合するのではなく、液状の粘着剤組成物を積層した後にそれらを同時に硬化する方法により製造できる。したがって、前記多層粘着テープに含まれる各層間には液混じり区間が発生しうる。前記多層粘着テープは、このような液混じり区間により、一般的な多層粘着テープに比べて優れた層間付着力を確保することができ、極低温環境での層間の界面分離現象を防止することができる。
【0058】
前記第1外郭粘着剤組成物と前記中間粘着剤組成物の界面、および前記中間粘着剤組成物と前記 第2外郭粘着剤組成物の界面には、各々、液混じりに応じた界面層が存在しうる。具体的には、前記第1外郭粘着剤組成物と前記中間粘着剤組成物の界面における液混じりによる界面層は、硬化後に前記第1界面混合層を構成することができる。また、前記中間粘着剤組成物と前記第2外郭粘着剤組成物の界面における液混じりによる界面層は、硬化後に前記第2界面混合層を構成することができる。
【0059】
前記第1外郭粘着剤組成物、前記中間粘着剤組成物および前記第2外郭粘着剤組成物は、順次に基材上に塗布されることができる。また、前記第1外郭粘着剤組成物、前記中間粘着剤組成物および前記第2外郭粘着剤組成物は、同時に基材上に塗布されることができる。前記粘着剤組成物を塗布する方法としては、スロット−ダイ、リップ−ダイなどの当業界で一般的に用いられる方法を用いることができる。
【0060】
前記中間粘着層の厚さは、前記第1界面混合層の中心から前記第2界面混合層の中心までの最短距離であってもよい。また、前記第1外郭粘着層の厚さは、前記第1界面混合層の中心から前記第1外郭粘着層の外側面までの最短距離であってもよい。さらに、前記第2外郭粘着層の厚さは、前記第2界面混合層の中心から前記第2外郭粘着層の外側面までの最短距離であってもよい。
【0061】
前記多層粘着テープは、前記中間粘着剤組成物および前記外郭粘着剤組成物を各々フィルムに硬化した後、それらを張り合わせることにより製造されるものであってもよい。具体的には、第1外郭粘着層、中間粘着層および第2外郭粘着層を各々別途にフィルム形態に製造した後、それらを順次積層した後に圧着して前記多層粘着テープを製造することができる。但し、前記製造方法に限定されるものではなく、前記多層粘着テープは、当業界で一般的に適用される製造方法を用いて製造することができる。
【0062】
前記多層粘着テープは、偏光板、位相差板、光学補償フィルム、反射シート、保護フィルムおよび輝度向上フィルムなどのような様々な光学部材の貼り付けのための用途として用いることができる。但し、これらに限定されるものではなく、前記多層粘着テープは、当業界で使用できる用途として特に制限されずに用いることができる。
【実施例】
【0063】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて詳しく説明することにする。但し、本発明に係る実施例は種々の他の形態に変形することができるものであって、本発明の範囲が下記に記述する実施例に限定されるものではない。本明細書の実施例は、当業界における平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0064】
[実施例、比較例および参考例]
下記の表1のとおりに、実施例1および2、比較例1〜5および参考例1による中間粘着剤組成物を製造した。
さらに、組成物100重量部に対して、88重量部の2−エチルヘキシルアクリレート、10重量部のテトラヒドロフルフリルメタクリレート、2重量部のアクリル酸を含む外郭粘着剤組成物を製造した。
【0065】
前記外郭粘着剤組成物、前記中間粘着剤組成物および前記外郭粘着剤組成物を各々45μm、60μmおよび45μmの厚さに順次塗布した後に同時にUV硬化させて、第1外郭粘着層、中間粘着層および第2外郭粘着層が順次設けられた多層粘着テープを製造した。
【0066】
【表1】
【0067】
*EHA:2−エチルヘキシルアクリレート(2−ethylhexyl acrylate)
*IBOMA:イソボルニルメタクリレート(isobonyl metacrylate)
*AA:アクリル酸(acrylic acid)
*HBA:ヒドロキシブチルアクリレート(hydroxybuylacrylate)
*DMAA:ジメチルアクリルアミド(dimethylacrylamide)
【0068】
[実験例1]
実施例1および2、比較例1〜5および参考例1により製造された多層粘着テープの物性の評価結果を下記の表2に示す。
【0069】
【表2】
【0070】
白濁現象の評価
1.1T厚さのガラス基板上に製造された多層粘着テープを貼り付け、前記多層粘着テープ上に0.55T厚さのガラス基板を積層した後、40℃および4bar条件のオートクレーブに20分間放置した。そして、3Jのメタルハライド光を照射する光源を0.55T厚さのガラス基板に隣接するように位置させた後に露光した。さらに、80℃および95RH%条件で3日間放置し、30分間常温で放置した後の多層粘着テープの全体面積で発生した白濁の発生面積を調査して白濁現象を評価した。具体的には、多層粘着テープの全体面積における白濁の発生面積が10%未満の場合には「◎」に、10%以上30%未満の場合には「○」に、30%以上50%未満の場合には「△」に、50%以上の場合には「×」に評価した。
【0071】
段差埋め込み性の評価
20μmの印刷段差を有するベゼル部および印刷段差のない画面部を有するガラス基板上に製造された多層粘着テープを貼り付け、その上に0.55T厚さのガラス基板を積層した。そして、40℃および4bar条件のオートクレーブに20分間放置した後、ベゼル部の4個の頂点部分での段差を十分に克服できないために生成される気泡の個数および24時間経過後の画面部での遅延気泡(delayed bubble)を確認して段差埋め込み性を評価した。具体的には、遅延気泡が2個以下であり、遅延気泡(delayed bubble)が発生しない場合には「◎」に、遅延気泡が2〜3個であり、遅延気泡(delayed bubble)が弱く発生する場合には「○」に、遅延気泡が3〜4個であり、遅延気泡(delayed bubble)が強く発生する場合には「△」に、遅延気泡が4個以上であり、遅延気泡(delayed bubble)が強く発生する場合には「×」に評価した。
【0072】

リワーク性の評価
製造された多層粘着テープをガラス基板に貼り付け、40℃および4bar条件のオートクレーブに20分間放置した後、多層粘着テープを除去する時、多層粘着テープが切れずに一度に全て除去される場合には「◎」に、多層粘着テープが切れるが、5回以下の除去作業が必要な場合には「○」に、多層粘着テープが容易に切れて6回以上の除去作業が必要な場合には「△」に、多層粘着テープが容易に切れて除去作業が不可能な場合には「×」に評価した。
【0073】
表2によれば、カルボキシ基含有モノマーおよびアクリルアミド系モノマーを全て含む粘着剤組成物から製造された中間粘着層が設けられた実施例1および実施例2の場合は、アクリルアミド系モノマー無しにカルボキシ基含有モノマーのみを含む粘着剤組成物から製造された比較例1および比較例2に比べて、白濁現象が効果的に防止されたことが分かる。同様に、実施例1および実施例2の場合は、カルボキシ基含有モノマー無しにアクリルアミド系モノマーのみを含む粘着剤組成物から製造された比較例5に比べて、白濁現象が効果的に防止されたことが分かる。また、カルボキシ基含有モノマーおよびヒドロキシ基含有モノマーを含む粘着剤組成物から製造された中間粘着層が設けられた比較例3および比較例4の場合は、実施例1および実施例2に比べて段差埋め込み性および/またはリワーク性が低いことが分かる。
【0074】
さらに、参考例1の場合は、カルボキシ基含有モノマーおよびアクリルアミド系モノマーを全て含む粘着剤組成物から製造されるが、アクリルアミド系モノマーの含量が過度に高いため、段差埋め込み性が低いのを確認することができる。
【0075】
[参考例2]
中間粘着層の厚さを30μm、第1外郭粘着層および第2外郭粘着層の各々の厚さを60μmに調節したことを除いては、実施例1と同様の方法により多層粘着テープを製造した。
【0076】
[参考例3]
中間粘着層の厚さを100μm、第1外郭粘着層および第2外郭粘着層の各々の厚さを25μmに調節したことを除いては、実施例1と同様の方法により多層粘着テープを製造した。
【0077】
[実験例2]
実施例1、参考例2および参考例3の各層の厚さおよび製造された多層粘着テープの前記実験例1における同様の方法の物性の評価結果を下記の表3に示す。
【0078】
【表3】
【0079】
表3によれば、参考例2は、中間層の厚さが外郭粘着層の厚さに比べて過度に薄いため、リワーク性に劣ることが分かる。また、参考例3は、中間層の厚さが外郭粘着層の厚さに比べて過度に厚いため、段差埋め込み性に劣ることが分かる。
【符号の説明】
【0080】
101 ・・・第1外郭粘着層
102 ・・・第2外郭粘着層
201 ・・・中間粘着層
301 ・・・第1界面混合層
302 ・・・第2界面混合層
図1
図2