特許第6943483号(P6943483)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6943483樹脂組成物、その信頼性評価方法、及びそれを含む色変換フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6943483
(24)【登録日】2021年9月13日
(45)【発行日】2021年9月29日
(54)【発明の名称】樹脂組成物、その信頼性評価方法、及びそれを含む色変換フィルム
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20210916BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20210916BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20210916BHJP
   C08K 5/1545 20060101ALI20210916BHJP
   G01N 11/00 20060101ALI20210916BHJP
【FI】
   G02B5/20
   C08L101/00
   C08K5/00
   C08K5/1545
   G01N11/00 A
   G01N11/00 C
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-563796(P2019-563796)
(86)(22)【出願日】2018年5月21日
(65)【公表番号】特表2020-522003(P2020-522003A)
(43)【公表日】2020年7月27日
(86)【国際出願番号】KR2018005766
(87)【国際公開番号】WO2018212633
(87)【国際公開日】20181122
【審査請求日】2019年11月19日
(31)【優先権主張番号】10-2017-0062427
(32)【優先日】2017年5月19日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジョン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジ ウン
(72)【発明者】
【氏名】キム、スン ハ
(72)【発明者】
【氏名】ハン、ヘ ジン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ドン ウック
(72)【発明者】
【氏名】リー、ミュン ハン
【審査官】 小久保 州洋
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/178871(WO,A1)
【文献】 特開昭62−138229(JP,A)
【文献】 特開平03−070702(JP,A)
【文献】 特表2016−521738(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
C08L 101/00
C08K 5/00
C08K 5/1545
G01N 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子樹脂及び有機蛍光体を含む樹脂組成物の信頼性評価方法であって、
前記樹脂組成物は、溶媒をさらに含み、
前記樹脂組成物が、下記一般式1を満足するか又は一般式2による緩和時間(λ:Relaxation time)が20ms以上であるかを判断する段階を含む、
信頼性評価方法。
[一般式1]
≦30wt%
[一般式2]
【数1】
上記一般式1において、
は、25℃の温度及び10−1のせん断速度で、前記樹脂組成物の濃度による樹脂組成物の相対粘度を測定し、前記測定した値を濃度による相対粘度グラフで示したとき、前記相対粘度グラフの勾配の変曲点での濃度を示し、
上記一般式2において、
は、伸長粘度計であるCaBERを用い、25℃の温度で前記樹脂組成物を同軸であると共に垂直に配置された一対の円形プレートの間に封入し、上側のプレートを50msの時間の間40mmの垂直に引き上げてそのまま維持した状態で、前記樹脂組成物が形成したフィラメントの初期直径を示し、
D(t)は、破断時間(Breakup Time、t)での前記フィラメントの直径を示し、
kは、比例定数を示す。
【請求項2】
相対粘度は、0.8cPの粘度を有する溶媒と比較して測定し、前記溶媒の相対粘度は、1である、
請求項1に記載の信頼性評価方法。
【請求項3】
高分子樹脂は、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂である、
請求項1または2に記載の信頼性評価方法。
【請求項4】
有機蛍光体は、ポリアロマティックハイドロカーボン又はヘテロ環化合物誘導体を含む、
請求項1から3のいずれか一項に記載の信頼性評価方法。
【請求項5】
有機蛍光体は、高分子樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部で含まれる、
請求項1から4のいずれか一項に記載の信頼性評価方法。
【請求項6】
前記溶媒は、トルエン、キシレン、アセトン、クロロホルム、アルコール、MEK(メチルエチルケトン)、MIBK(メチルイソブチルケトン)、EA(酢酸エチル)、酢酸ブチル、DMF(ジメチルホルムアミド)、DMAc(ジメチルアセトアミド)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、NMP(N−メチル−ピロリドン)、シクロヘキサノン(cyclohexanone)、PGMEA(プロピレングリコールメチルエチルアセテート)及びジオキサン(dioxane)からなる群より選択される1種又は2種以上を含む、
請求項1から5のいずれか1項に記載の信頼性評価方法。
【請求項7】
高分子樹脂と、有機蛍光体と、溶媒とを含み、
下記一般式1を満足するか又は一般式2による緩和時間(λ:Relaxation time)が20ms以上である、
樹脂組成物。
[一般式1]
≦30wt%
[一般式2]
【数2】
上記一般式1において、
は、25℃の温度及び10−1のせん断速度で、前記樹脂組成物の濃度による樹脂組成物の相対粘度を測定し、前記測定した値を濃度による相対粘度グラフで示したとき、前記相対粘度グラフの勾配の変曲点での濃度を示し、
上記一般式2において、
は、伸長粘度計であるCaBERを用い、25℃の温度で前記樹脂組成物を同軸であると共に垂直に配置された一対の円形プレートの間に封入し、上側のプレートを50msの時間の間40mmの垂直に引き上げてそのまま維持した状態で、前記樹脂組成物が形成したフィラメントの初期直径を示し、
D(t)は、破断時間(Breakup Time、t)での前記フィラメントの直径を示し、
kは、比例定数を示す。
【請求項8】
請求項に記載の樹脂組成物を含む色変換層を有する、
色変換フィルム。
【請求項9】
色変換層の少なくとも一面に保護フィルム又はバリアフィルムをさらに含む、
請求項に記載の色変換フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は、2017年5月19日に出願された大韓民国特許出願第10−2017−0062427号に基づく優先権の利益を主張し、該当大韓民国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
技術分野
本出願は、樹脂組成物、その信頼性評価方法、及びそれを含む色変換フィルムに関する。
【背景技術】
【0003】
TVの大面積化と共に高画質化、スリム化、高機能化が行われている。高性能、高画質のOLED TVは、相変らず価格競争力が問題点であり、これによって、まだ本格的な市場は開かれていない。したがって、LCDを通してOLEDの長所を類似に確保しようとする努力が続いている。
【0004】
従来のLCDは、色を表現するために染料を含む色変換フィルムが備われ、前記染料としては、無機蛍光体をたくさん用いていたが、前記無機蛍光体の場合、狭い色相範囲(color gamut)を有するので色変換率が落ちる問題があり、最近、これを改善するために無機蛍光体の代わりに有機蛍光体を用いる研究が試みされている。
【0005】
しかし、大部分の有機蛍光体は、水分などの外部的要因によって容易に酸化されるため、光脱色(photobleaching)現象を誘発し、これによって、色変換フィルムの光学特性が落ちる問題点を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願は、優れた光特性が具現可能な樹脂組成物、その信頼性評価方法及びそれを含む色変換フィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願は、樹脂組成物の信頼性評価方法に関する。前記信頼性評価方法は、例えば、LCDなどのようなディスプレイ装置の発光に適用される樹脂組成物に対する信頼性評価方法であってもよい。また、例えば、前記組成物の硬化物は、ディスプレイ装置のバックライトユニットに適用されることができる。
【0008】
例示的な信頼性評価方法は、高分子樹脂及び有機蛍光体を含む樹脂組成物の信頼性評価方法である。前記樹脂組成物は、下記一般式1を満足するか又は一般式2による緩和時間(λ:Relaxation time)が20ms以上であってもよい。
【0009】
[一般式1]
≦30wt%
【0010】
[一般式2]
【数1】
【0011】
上記一般式1において、Cは、25℃の温度及び10−1のせん断速度で、前記樹脂組成物の濃度による樹脂組成物の相対粘度を測定し、前記測定値を濃度による相対粘度グラフで示したとき、前記グラフ勾配の変曲点での濃度を示す。
【0012】
上記一般式2において、Dは、伸長粘度計であるCaBERを用い、25℃の温度で前記樹脂組成物を同軸であると共に垂直に配置された一対の円形プレートの間に封入し、上側のプレートを50msの時間の間40mmの垂直に引き上げてそのまま維持した状態で、前記樹脂組成物が形成したフィラメントの初期直径を示し、D(t)は、破断時間(Breakup Time、t)での前記フィラメントの直径を示し、kは、比例定数を示す。前記比例定数kは、例えば、−10〜10の間の数であってもよい。
【0013】
上記一般式1の方法によって測定されたグラフ勾配の変曲点は、一つ以上であってもよいが、本明細書で用語「変曲点」は、樹脂組成物の濃度が5wt%以上でグラフ勾配が最初に変化する点を意味する。
【0014】
上記一般式1で、樹脂組成物の濃度を増加させると言うことは、樹脂組成物内の固形分の含量を増加させることを意味する。また、用語「相対粘度」は、対照群と比較して測定した相対的な粘度を意味し、前記対照群は、例えば、0.8cPの粘度を有する溶媒であってもよい。一つの例示で、前記0.8cPの粘度を有する溶媒は、相対粘度が1であってもよい。また、前記粘度を測定する装置は特に制限されないが、例えば、公知のレオメーターを用いて測定することができる。
【0015】
本出願で用語「グラフの変曲点での濃度」は、樹脂組成物の2次転移構造濃度(C)と同一の意味で用いられていてもよい。
【0016】
図1は、一般式1によって本出願の実施例及び比較例で製造された樹脂組成物の2次転移構造濃度を示すグラフである。
【0017】
図2は、伸長粘度計であるCaBERを用いてフィラメント直径を測定する方法を模式的に示す図である。
【0018】
図1を参照すると、前記2次転移構造濃度(C)は、A部分の変曲点での樹脂組成物の濃度を意味する。
【0019】
図2のBを参照すると、上記一般式2でDは、伸長粘度計の上側のプレートを50msの時間の間40mmの垂直に引き上げてそのまま維持した状態での樹脂組成物が形成したフィラメントの初期直径を示す。図2のCを参照すると、前記樹脂組成物が形成したフィラメントは、時間の経過によって直径が減少して切れるが、D()は、前記フィラメントが切れる直前の直径を示す。
【0020】
上記で用語「初期直径」は、伸長粘度計の上側のプレートを50msの時間の間40mmの垂直に引き上げた直後に樹脂組成物が形成したフィラメントの直径を意味する。上記用語「直径」は、上部プレートと下部プレートの実質的な中間地点で測定した直径を意味し、「実質的な中間地点」は、上部プレートと下部プレートの中間地点で±5mmの誤差範囲を含む地点を意味する。
【0021】
前記「破断時間(Breakup Time、t)」は、伸長粘度計の上側のプレートを40mmの垂直に引き上げた直後からフィラメント直径が時間によって減少して完全に切れる直前までかかる時間を意味する。前記フィラメントの直径を測定する装置は多様なものがあり、例えば、レーザーマイクロメーター(Laser micrometer)を用いてフィラメントの直径変化をリアルタイムで測定することができる。
【0022】
また、本明細書で用語「緩和時間(λ:Relaxation time)」は、破断時間から樹脂組成物が平衡状態に戻るまでかかる時間を意味する。具体的に、上板プレートを垂直に引き上げると、樹脂組成物内の高分子鎖が伸長されて切れた後、時間の経過によって緩和されて元々の高分子鎖の形態に戻るようになるが、緩和時間は伸長された高分子鎖が元々形態に戻るまでかかる時間を意味する。
【0023】
一つの例示で、前記信頼性評価方法は、2以上の樹脂組成物の固形分含量及び緩和時間を比較して行うことができる。
【0024】
例示的な信頼性評価基準は、上記一般式1で樹脂組成物の2次転移構造濃度(C)が低いほど又は一般式2による緩和時間(λ)が長くなるほど、前記樹脂組成物は信頼性が高いと評価できる。また、このような樹脂組成物が色変換フィルムに製造される場合、前記色変換フィルムは、耐光性に優れると評価できる。
【0025】
一つの具体例で、上記一般式1で示される固形分の含量は、30wt%以下、25wt%以下、24wt%以下、23wt%以下、22wt%以下又は21wt%以下であってもよい。前記固形分の含量の下限は別に制限されず、例えば、0.001wt%以上、0.01wt%以上、0.1wt%以上又は1.0wt%以上であってもよい。本出願で用語「固形分の含量」は、樹脂組成物の濃度と同一に解釈する。また、上記一般式2で表示される緩和時間は、20ms以上、23ms以上、25ms以上又は26ms以上であってもよい。前記緩和時間の上限は特に制限されず、例えば、1000ms以下、500ms以下、100ms以下であってもよい。
【0026】
本出願の樹脂組成物は、上記一般式1又は上記一般式2による各変数を特定範囲で調節することで、フィルムで製造するとき高分子樹脂内の有機蛍光体が均一に分散して特定領域間の性能の偏差が少ない長所があり、また、前記高分子樹脂は、有機蛍光体を水分及び酸素から保護する能力に優れるため、有機蛍光体により光学特性が低下される問題を防止することができる。具体的に、前記樹脂組成物がフィルムに製造される場合、前記有機蛍光体が水分及び酸素と反応して光脱色(photobleaching)現象を誘発する問題を最小化することができ、前記フィルムの優れた耐光性を確保することができる。
【0027】
前記物性を満足する限り、樹脂組成物を構成する素材は特に制限されない。例示的な樹脂組成物は、高分子樹脂及び有機蛍光体を含んでいてもよい。本出願の樹脂組成物は、上記一般式1で示す樹脂組成物の2次転移構造濃度(C)又は上記一般式2で示す緩和時間(λ)を前記範囲内に調節するために、高分子樹脂とそれによる溶媒を適切に選択することができ、それによって、フィルムに製造するとき優れた水分遮断性能を具現すると共に高温高湿に優れた耐久信頼性を有することで、目的とする光学特性が容易に具現可能な色変換フィルムを提供することができる。
【0028】
一つの例示で、本出願の高分子樹脂は、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂であってもよい。用語「熱硬化性樹脂」は、適切な熱の印加又は熟成(aging)工程を通じて硬化できる樹脂を意味する。
【0029】
本出願で熱可塑性樹脂の具体的な種類は、特に制限されない。一つの例示で、熱可塑性樹脂は、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)のようなポリ(メタ)アクリル系、ポリカーボネート系(PC)、ポリスチレン系(PS)、ポリアリレン系(PAR)、ポリウレタン系(TPU)、スチレン−アクリロニトリル系(SAN)、ポリビニリデンフルオライド系(PVDF)、ポリビニルアルコール系(PVA)、改質されたポリビニリデンフルオライド系(modified−PVDF)などを用いることができる。これら樹脂は、1種又は2種以上が含まれることができる。
【0030】
一つの例示で、後述する溶媒の種類との優れた相互作用(Interaction)を考慮するとき、前記熱可塑性樹脂は、ポリ(メタ)アクリル系高分子であってもよい。前記ポリ(メタ)アクリル系高分子を構成する(メタ)アクリル酸エステル単量体の例は、次の通りである。本明細書で用語「(メタ)アクリル」は、アクリル又はメタクリルを意味することができる。前記(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、アルキル(メタ)アクリレートが例示でき、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、2−エチルブチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート又はテトラデシル(メタ)アクリレートなどのような炭素数1〜20のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートなどが例示できる。前記アルキル(メタ)アクリレートは、前記アルキル基の炭素数が1〜20、1〜15、1〜10、1〜8、1〜5又は1〜3であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0031】
また、本出願のポリ(メタ)アクリル系高分子は、前記アルキル(メタ)アクリレート以外にも、(メタ)アクリル酸単量体を含む高分子を含んでいてもよい。一つの例示で、本出願の高分子樹脂は、前記アルキル(メタ)アクリレートを重合単位で含む高分子と前記(メタ)アクリル酸を重合単位で含む高分子の混合物であってもよい。前記混合物の場合、前記アルキル(メタ)アクリレートを重合単位で含む高分子100重量部に対して(メタ)アクリル酸を重合単位で含む高分子は、50〜150重量部、60〜140重量部、70〜130重量部、75〜125重量部、83〜118重量部又は88〜110重量部で含まれることができる。
【0032】
本出願の具体例で、熱可塑性樹脂の重量平均分子量の範囲は、約10万〜200万、15万〜150万又は30万〜100万であってもよい。また、熱硬化性樹脂の重量平均分子量の範囲は、約10万〜200万、15万〜150万又は30万〜100万であってもよい。本明細書で用語「重量平均分子量」は、GPC(Gel Permeation Chromatograph)で測定した標準ポリスチレンに対する換算数値を意味する。
【0033】
一つの例示で、熱硬化性樹脂は、上述した一般式1又は一般式2で示す特性範囲を満足するものであれば、特に制限されない。一つの例示で、熱硬化性樹脂は、少なくとも一つ以上の熱硬化性官能基を含んでいてもよい。例えば、硬化されて接着特性を現わすことができるものであって、エポキシ基、グリシジル基、イソシアネート基、ヒドロキシ基、カルボキシル基又はアミド基などのような熱硬化が可能な官能基を一つ以上含むことができる。また、上記のような樹脂の具体的な種類には、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、エステル樹脂、イミド樹脂又はエポキシ樹脂などが含まれることができるが、これに制限されるものではない。
【0034】
本出願の具体例で、樹脂組成物は、硬化剤を追加で含んでいてもよい。例えば、熱硬化性樹脂と反応して架橋構造などを形成することができる熱硬化剤を追加で含んでいてもよい。
【0035】
一つの例示で、前記硬化剤は、その樹脂に含まれる官能基の種類によって適切な種類を選択及び使用することができる。一つの例示で、前記熱硬化剤は、アミン硬化剤、イミダゾール硬化剤、フェノール硬化剤、リン硬化剤、トリアジン硬化剤、チオール系硬化剤、イソシアヌル酸系硬化剤又は酸無数物硬化剤を含むことができる。
【0036】
本出願で、前記有機蛍光体は、蛍光成分を含有して光による刺激によって発光することができ、耐光性を有する有機物質であれば、特に限定されず、例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基又はハロゲン元素に置換されることができるナフタレン、アントラセン、ナフタセン、ペンタセン、ペリレン、テリレン、クアテリレン、フェナントレン、ピレンなどのポリアロマティックハイドロカーボン;ピリジン、キノリン、アクリジン、インドール、トリプトファン、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、キサンテン、ローダミン、ピロニン、フルオレセイン、エオシン、クマリンなどのヘテロ環化合物誘導体などが挙げられる。
【0037】
一つの例示で、前記有機蛍光体は、Alexa 350、Alexa 430、AMCA、BODIPY 630/650、BODIPY 650/665、BODIPY−FL、BODIPY−R6G、BODIPY−TMR、BODIPY−TRX、 カスケードブルー(Cascade Blue)、Cy3、Cy5、6−FAM、フルオレセインイソチオシアネート、HEX、6−JOE、オレゴングリーン(Oregon Green)488、オレゴングリーン500、オレゴングリーン514、パシフィックブルー(Pacific Blue)、REG、ローダミングリーン(Rhodamine Green)、ローダミンレッド(Rhodamine Red)、レノグラフィン(Renographin)、ROX、TAMRA、TET、テトラメチルローダミン又はテキサスレッド(Texas Red)であってもよい。
【0038】
一つの具体例で、有機蛍光体は、高分子樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部、0.5〜5重量部、1〜4重量部又は1.5〜3重量部で含まれることができる。
【0039】
本出願で樹脂組成物は、溶媒を追加で含んでいてもよい。前記溶媒としては、上述した高分子樹脂の種類によって、優れた相互作用(Interaction)を示す溶媒であってもよく、これは一般式1又は一般式2を通じて選択することができる。前記溶媒は、例えば、トルエン、キシレン、アセトン、クロロホルム、各種アルコール系溶媒、MEK(メチルエチルケトン)、MIBK(メチルイソブチルケトン)、EA(酢酸エチル)、酢酸ブチル、DMF(ジメチルホルムアミド)、DMAc(ジメチルアセトアミド)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、NMP(N−メチル−ピロリドン)、シクロヘキサノン(cyclohexanone)、PGMEA(プロピレングリコールメチルエチルアセテート)及びジオキサン(dioxane)からなる群より選択される1種又は2種以上であってもよく、本出願の樹脂組成物は、前記高分子樹脂種類によって一般式1又は一般式2を満足する溶媒を選択して含むことができる。
【0040】
前記溶媒は、高分子樹脂100重量部に対して、100重量部〜500重量部、150重量部〜450重量部、200重量部〜400重量部又は250重量部〜350重量部で含まれることができるが、これに制限されるものではない。
【0041】
一つの例示で、本出願の樹脂組成物は、高分子樹脂、有機蛍光体及び溶媒を含むが、前記三つの成分間の相互作用(Interaction)を考慮して各成分を選択することが重要である。これによって、本出願は、上述した一般式1又は一般式2による変数が特定範囲を満足するか否かを通じて前記三つの成分の間の混合特性、分散性及び硬化後耐光性などの信頼性を判断することができる。
【0042】
例えば、高分子樹脂と溶媒の間の相互作用より高分子樹脂内の高分子成分の間の相互作用が強い場合、樹脂組成物が溶媒と混合されても高分子成分が固まる傾向を示すことができる。他の例で、組成物内の高分子樹脂の含量が過度に高い場合にも高分子成分が固まる傾向を示すことができる。このような傾向は、後述する色変換フィルムで隙間を形成し、前記隙間に流入された酸素又は水分と有機蛍光体が反応して光脱色(photobleaching)現象が発生できる。すなわち、高分子樹脂と溶媒との間の相互作用が弱い場合、これを含む樹脂組成物及び色変換フィルムは、一般式1の2次転移構造濃度又は一般式2の緩和時間が上述した特定範囲を満足しない。
【0043】
一方、高分子樹脂と溶媒との間の相互作用が強い場合、高分子樹脂が高い含量で組成物に配合されても分散性に優れ、後述する色変換フィルムに製造するとき優れた遮断特性によって有機蛍光体により光学特性が低下される問題を防止することができる。
【0044】
また、本出願は、樹脂組成物に関する。前記樹脂組成物は、上述した信頼性評価方法によって分散性及び耐光性に優れたものと評価される樹脂組成物であってもよい。
【0045】
例示的な前記樹脂組成物は、高分子樹脂及び有機蛍光体を含み、下記一般式1を満足するか又は一般式2による緩和時間(λ:Relaxation time)が20ms以上であってもよい。
【0046】
[一般式1]
≦30wt%
【0047】
[一般式2]
【数2】
【0048】
上記一般式1において、Cは、25℃の温度及び10−1のせん断速度で、前記樹脂組成物の濃度による樹脂組成物の相対粘度を測定し、前記測定値を濃度による相対粘度グラフで示したとき、前記グラフ勾配の変曲点での濃度を示す。
【0049】
上記一般式2において、Dは、伸長粘度計であるCaBERを用い、25℃の温度で前記樹脂組成物を同軸であると共に垂直に配置された一対の円形プレートの間に封入し、上側のプレートを50msの時間の間40mmの垂直に引き上げてそのまま維持した状態で、前記樹脂組成物が形成したフィラメントの初期直径を示し、D(t)は、破断時間(Breakup Time、t)での前記フィラメントの直径を示し、kは、比例定数を示す。前記比例定数kは、例えば、−10〜10の間の数であってもよい。
【0050】
また、本出願は、色変換フィルムに関する。例示的な色変換フィルムは、上述した樹脂組成物を含む色変換層を有することができる。前記色変換フィルムは、上述した特定範囲の2次転移構造濃度又は緩和時間を有する樹脂組成物を含むことで、前記色変換層の優れた外部遮断性が具現されて有機蛍光体の性能下落を防止することができる。具体的に、前記色変換層を構成する高分子樹脂は、低い酸素透過度及び低い水分透湿度を示す構造を形成することで、有機蛍光体を水分及び酸素から保護する能力に優れるため、有機蛍光体が水分又は酸素と反応して光脱色(photobleaching)現象を誘発する問題を防止することができる。
【0051】
本出願の色変換フィルムは、前記色変換層の少なくとも一面に保護フィルム又はバリアフィルムを追加で含んでいてもよい。前記保護フィルム及びバリアフィルムとしては、当技術分野に知られているものなどが使用でき、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを使用することができる。
【0052】
また、本出願は、上述した色変換フィルムを含むバックライトユニットに関する。前記バックライトユニットは、前記色変換フィルムを含むこと以外、当技術分野に知られているバックライトユニット構成を有することができる。
【0053】
例示的なバックライトユニットは、側鎖型光源、前記光源を取り囲む反射板、前記光源から直接発行するか、前記反射板から反射した光を誘導する導光板、前記導光板の一面に備われた反射層及び前記導光板の前記反射層に対向する面の反対面に備われた色変換フィルムを含む。また、光源は、側鎖型だけでなく直下型を使用してもよく、反射板や反射層は、必要によって省略するか他の構成に代替してもよく、必要によって、追加のフィルム、例えば、光拡散フィルム、集光フィルム、輝度向上フィルムなどが追加で備われてもよい。
【発明の効果】
【0054】
本出願は、樹脂組成物の2次転移構造濃度又は緩和時間を調節することにより、優れた外部遮断性と光特性が具現されるだけでなく、光脱色現象も効果的に抑制する樹脂組成物、その信頼性評価方法及びそれを含む色変換フィルムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1】一般式1によって本出願の実施例及び比較例で製造された樹脂組成物の2次転移構造濃度を示すグラフである。
図2】伸長粘度計であるCaBERを用いてフィラメント直径を測定する方法を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下、本発明による実施例及び本発明によらない比較例を通じて本出願をより詳しく説明するが、本出願の範囲は下記提示された実施例によって制限されるものではない。
【0057】
<実施例1>
(1)樹脂組成物の製造
密閉可能な500mL反応容器に、ジメチルホルムアミド(DMF、Sigma Aldrich)74.5重量部、BODIPY−FL(Thermo Fisher)0.5重量部及びポリメチルメタアクリレート及びポリメタアクリル酸を5:5の重量割合で混合した混合物を25重量部で投入し、常温で約1時間の間撹拌して均一な樹脂組成物を製造した。
【0058】
(2)色変換フィルムの製造
上記で製造された樹脂組成物を離型PETの離型面に塗布し、130℃のオーブンで3分間乾燥(5気圧)して、厚さ50μmの色変換層を含む色変換フィルムを製造した。製造されたフィルムに紫外線を窒素雰囲気下で2J/cm照射(A領域基準100mW/cm)したサンプルに対して物性を測定する。
【0059】
(3)2次移転構造濃度(C)の測定
実施例1で製造された樹脂組成物の濃度(固形分の含量)によって測定した前記樹脂組成物の相対粘度を測定した。前記測定された濃度による相対粘度をグラフで示したとき、前記グラフ勾配の変曲点での固形分の含量を測定した。粘度は、粘弾性測定器(Dynamic Hybrid Rheometer、DHR、TA Instruments)を用いて25℃で10−1のせん断速度条件で測定し、0.8cP粘度を有する対照サンプルと前記測定された粘度を比較して相対粘度を計算した。その結果を図1に示した。図1を参照すると、Solvent Aは、実施例1において溶媒で用いられたジメチルホルムアミド(DMF)を示す。
【0060】
<実施例2>
(1)樹脂組成物の製造
密閉可能な500mL反応容器に、ジメチルホルムアミド(DMF、Sigma Aldrich)74.5重量部、BODIPY−FL(Thermo Fisher)0.5重量部及びポリメチルメタアクリレート及びポリメタアクリル酸を5:5の重量割合で混合した混合物を25重量部で投入し、常温で約1時間の間撹拌して均一な樹脂組成物を製造した。
【0061】
(2)色変換フィルムの製造
上記で製造された樹脂組成物を離型PETの離型面に塗布し、130℃のオーブンで3分間乾燥(5気圧)して、厚さ50μmの色変換層を含む色変換フィルムを製造した。製造されたフィルムに紫外線を窒素雰囲気下で2J/cm照射(A領域基準100mW/cm)したサンプルに対して物性を測定する。
【0062】
(3)緩和時間(λ:Relaxation time)の測定
実施例2で製造された樹脂組成物の溶液を、図2に示したように、伸長粘度計であるCaBERを用いて緩和時間を測定した。25℃の温度で前記樹脂組成物を同軸であると共に垂直に配置された一対の円形プレートの間に封入した。上側のプレートを50msの時間で40mmの垂直に引き上げてそのまま維持した状態で、前記樹脂組成物が形成したフィラメントの直径をレーザーマイクロメーター(Laser micrometer)を用いてリアルタイムで測定した。前記結果を時間経過による直径変化グラフで示したとき、破断時間での勾配を測定し、上述した一般式2によって緩和時間(λ:Relaxation time)を測定した。前記緩和時間は、MATLABプログラムを用いて計算した。
【0063】
<比較例1>
ジメチルホルムアミド(DMF)の代わりにプロピレングリコールメチルエチルアセテート(PGME)を用いたこと以外は、実施例1と同一の方法で樹脂組成物及び色変換フィルムを製造した。
【0064】
前記樹脂組成物に対して、実施例1に示したように2次転移構造濃度(C)を測定し、その結果を図1に示した。図1を参照すると、Solvent Bは、比較例1において溶媒で用いられたプロピレングリコールメチルエチルアセテート(PGME)示す。
【0065】
<比較例2>
ジメチルホルムアミド(DMF)の代わりにテトロハイドロフラン(THF)を用いたこと以外は、実施例1と同一の方法で樹脂組成物及び色変換フィルムを製造した。
【0066】
前記樹脂組成物に対して、実施例1に示したように2次転移構造濃度(C)を測定した。
【0067】
<比較例3>
ジメチルホルムアミド(DMF)の代わりにプロピレングリコールメチルエチルアセテート(PGME)を用いたこと以外は、実施例1と同一の方法で樹脂組成物及び色変換フィルムを製造した。
【0068】
前記樹脂組成物に対して、実施例2に示したように緩和時間(λ: Relaxation time)を測定した。
【0069】
<比較例4>
ジメチルホルムアミド(DMF)の代わりにテトラヒドロフラン(THF)を用いたこと以外は、実施例1と同一の方法で樹脂組成物及び色変換フィルムを製造した。
【0070】
前記樹脂組成物に対して、実施例2に示したように緩和時間(λ: Relaxation time)を測定した。
【0071】
前記測定結果を下記表1及び表2に整理して記載した。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
前記実施例及び比較例では、高分子樹脂をポリメチルメタアクリレート及びポリメタアクリル酸にしたとき、溶媒種類を変更することによって一般式1又は一般式2を満足するかを評価した。これを通じて前記特定高分子樹脂に適合な溶媒を選別することができた。
【0075】
実施例及び比較例で製造された色変換フィルムに対する耐光性評価は、樹脂組成物の2次転移構造濃度(C)が低いほど、且つ緩和時間が長いほど優れた耐光性を示した。
図1
図2