特許第6943554号(P6943554)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6943554砥粒分散液の保存方法および容器入り砥粒分散液の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6943554
(24)【登録日】2021年9月13日
(45)【発行日】2021年10月6日
(54)【発明の名称】砥粒分散液の保存方法および容器入り砥粒分散液の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/14 20060101AFI20210927BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20210927BHJP
【FI】
   C09K3/14 550C
   B24B37/00 H
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-191908(P2016-191908)
(22)【出願日】2016年9月29日
(65)【公開番号】特開2018-53148(P2018-53148A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2019年7月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236702
【氏名又は名称】株式会社フジミインコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100154449
【弁理士】
【氏名又は名称】谷 征史
(72)【発明者】
【氏名】横道 典孝
(72)【発明者】
【氏名】神谷 知秀
【審査官】 横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−163054(JP,A)
【文献】 特開2006−130638(JP,A)
【文献】 特開2016−127268(JP,A)
【文献】 特開2002−302552(JP,A)
【文献】 特開2004−331479(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/14
B24B 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水および該水に分散した砥粒を含む砥粒分散液を容器内で保存する方法であって、
砥粒分散液を容器に充填して密封した後において、前記容器への充填時における前記砥粒分散液の温度Tとの関係で、前記容器の保存環境の温度が120時間以上連続して前記温度Tを15℃を超えて上回ることのないように保存することによって前記容器内における前記砥粒分散液の溶存ガス量の減少を抑制することを特徴とし、
ここで、前記砥粒分散液はコロイダルシリカ分散液であり、
前記温度Tは50℃以下である、砥粒分散液の保存方法。
【請求項2】
前記温度Tが30℃以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記容器の密封は、前記容器内に存在する空隙の体積VAiが前記砥粒分散液の体積Vに対して0.5%以下となるように行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記砥粒分散液は、前記砥粒の濃度が5%以上である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記砥粒のBET径が100nm以下である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記砥粒分散液は、磁気ディスク基板を研磨するための研磨用組成物の調製に用いられる、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
水および該水に分散した砥粒を含む砥粒分散液が容器に密封されている容器入り砥粒分散液の製造方法であって、
前記容器入り砥粒分散液の保存温度の上限温度Tmaxを設定すること、ここで前記上限温度Tmaxは、前記容器の保存環境の温度が120時間以上連続して該温度を上回ることのないように保存することが許容される上限の温度である、
前記上限温度Tmaxを15℃以上は下回らない温度Tを有する砥粒分散液を容器に充填すること、および
前記容器を密封すること
を包含し、
ここで、前記砥粒分散液はコロイダルシリカ分散液であり、
前記温度Tは50℃以下である、容器入り砥粒分散液の製造方法。
【請求項8】
前記容器の密封は、前記容器内に存在する空隙の体積VAiが前記砥粒分散液の体積Vに対して0.5%以下となるように行われる、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砥粒分散液の保存方法および容器入り砥粒分散液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属や半金属、非金属、その酸化物等の材料表面に対して、研磨用組成物を用いた研磨加工が行われている。上記研磨用組成物としては、一般に、研磨対象物の材質や研磨目的等に応じた砥粒が水を主体とする液状媒体に分散した形態のものが用いられる。高精度な表面が要求される研磨物の製造に用いられる研磨用組成物には、研磨対象物にスクラッチを生じない性能が求められる。スクラッチ発生の防止に関する技術文献として特許文献1が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−130638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、研磨材粒子分散液の容器内での保管中に該容器の内壁空間部に付着した上記分散液の液滴が乾燥して固形状物が生成し、その固形状物が混入した研磨材粒子分散液を研磨液に用いることで生じるナノスクラッチを防止するために、上記容器の壁面の全面積に対する研磨材粒子分散液の接液面積の比を所定値以上とすることが記載されている。しかし、このような対策を施した容器入り研磨材粒子分散液(以下、砥粒分散液ともいう。)においても、砥粒分散液の乾燥等による凝固物が生じる場合がある。また、特許文献1では、砥粒分散液の容器への充填条件や保存条件が十分に考慮されていない。
【0005】
そこで本発明は、容器内での保存中における凝固物の発生を効果的に抑制し得る砥粒分散液保存方法を提供することを目的とする。関連する他の目的は、保存中における凝固物の発生が防止された容器入り砥粒分散液の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この明細書によると、水および該水に分散した砥粒を含む砥粒分散液を容器内で保存する砥粒分散液保存方法が提供される。その方法は、砥粒分散液を容器に充填して密封した後において、上記容器への充填時における上記砥粒分散液の温度T(以下「充填温度T」ともいう。)との関係で該容器の保存温度の上限温度Tmaxを制限することによって上記砥粒分散液の溶存ガス量の減少を抑制することを特徴とする。このように砥粒分散液の溶存ガス量の減少を抑制することにより、該砥粒分散液から溶存ガスが放出されることによる容器内の空隙体積の増加を抑制し、容器の密封当初における凝固物生成防止効果を好適に維持することができる。したがって、砥粒分散液の保管中に凝固物が生成する事象をより確実に防止することができる。
【0007】
ここに開示される技術は、上記充填温度Tが例えば30℃以上である態様で好ましく実施され得る。このような態様において、本発明の適用効果が好適に発揮され得る。
【0008】
ここに開示される技術は、上記上限温度Tmaxが次式:
max[℃]−T[℃]≦15℃;
を満たすように上記上限温度Tmaxを制限する態様で好ましく実施され得る。このような態様において、本発明の適用効果が好適に発揮され得る。
【0009】
上記容器の密封は、該容器内に存在する空隙の体積VAiが該砥粒分散液の体積Vに対して0.5%以下となるように行われることが好ましい。これにより、砥粒分散液の液滴の乾燥による凝固物の生成をより高度に防止することができる。
【0010】
ここに開示される技術は、上記砥粒分散液における上記砥粒の濃度が5%以上である形態で好ましく実施され得る。このような砥粒濃度の砥粒分散液では、ここに開示される技術を適用して凝固物の生成を防止することが特に有意義である。
【0011】
ここに開示される技術は、上記砥粒のBET径が100nm以下である砥粒分散液に好ましく適用され得る。このようなBET径の砥粒を含む砥粒分散液では、ここに開示される技術を適用して凝固物の生成を防止することが特に有意義である。
【0012】
ここに開示される砥粒分散液は、容器内での保管中において、スクラッチの発生原因となり得る凝固物の生成が抑制されていることから、各種の研磨対象物を研磨するための研磨用組成物の構成成分として好ましく用いられ得る。例えば、スクラッチ低減の要請が強くかつ要求レベルの高い磁気ディスク基板の研磨(例えば、Ni−P基板やガラス基板の仕上げ研磨)に用いられる研磨用組成物を調製する用途に好適である。ここに開示される砥粒分散液(容器内で保管された後の砥粒分散液であり得る。)は、そのままの形態で、あるいは希釈(例えば水による希釈)、他の成分との混合、pH調整等の適宜の操作により研磨用組成物として調製されて、各種の研磨対象物(例えば、磁気ディスク基板)を研磨するための研磨用組成物として好ましく用いられ得る。
【0013】
この明細書によると、また、水および該水に分散した砥粒を含む砥粒分散液が容器に密封されている容器入り砥粒分散液の製造方法が提供される。その方法は、上記容器入り砥粒分散液の保存温度として許容される上限温度Tmaxを設定することを含む。また、上記上限温度Tmaxを15℃以上は下回らない温度Tを有する砥粒分散液を容器に充填することを含む。すなわち、次式:Tmax[℃]−T[℃]≦15℃;を満たす温度Tの砥粒分散液を上記容器に充填することを含む。上記製造方法は、さらに、上記容器を密封することをさらに含む。かかる方法により製造された容器入り砥粒分散液によると、砥粒分散液の液滴の乾燥による凝固物の生成を好適に防止することができる。上記容器の密封は、上記容器内に存在する空隙の体積VAiが上記砥粒分散液の体積Vに対して0.5%以下となるように行うことが好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0015】
<砥粒分散液>
砥粒分散液を充填した容器を密封して保管する場合、容器内の空隙に面する壁面に砥粒分散液の液滴が付着して乾燥することによる凝固物が生成しにくいように砥粒分散液の充填状態を調整して該容器を密封しても、その後の保管状況によっては上記充填状態が変化し、例えば容器内の空隙体積が増加して、上記凝固物の生成防止効果が損なわれてしまうことがある。その原因として、本発明者は、容器に充填される砥粒分散液に溶存ガス(例えば空気)が含まれる点に着目した。一般に、一定量の液体に対する気体の溶解量は温度上昇とともに低下する傾向にある。このため、砥粒分散液とともに容器に充填された溶存ガスは、密封後の温度上昇により砥粒分散液から放出されて容器内に溜まり、該容器内の空隙体積を増加させ得る。このことは、容器に密封された砥粒分散液中の溶存ガス量が、該容器への充填時に比べて減少することを意味する。かかる事象を防止することは、砥粒分散液の保存中における凝固物の発生を抑制する有効な手段となり得る。しかし、容器内の砥粒分散液から溶存ガスが放出されることを抑制するために保存中の温度管理を限りなく厳しくすることは、経済性等の観点から実用的とはいえない場合がある。そこで本発明者は、容器に密封された砥粒分散液の保存中における温度管理を闇雲に厳しくするのではなく、砥粒分散液の充填温度Tとの関係で保存温度の上限温度Tmaxを制限することによって、砥粒分散液の溶存ガス量の減少(すなわち、容器内での溶存ガス放出による空隙体積の増加)を効果的に抑制し、容器の密封当初における凝固物生成防止効果を好適に維持し得ることを見出して本発明を完成した。
【0016】
ここで、容器に密封された砥粒分散液(容器入り砥粒分散液)の保存温度の上限温度Tmaxとは、該容器入り砥粒分散液が保存される環境温度であって、当該温度以上の温度で継続的に保存することが許容される上限の温度をいう。ここでいう「継続的」における継続時間Xは、典型的には、120時間以下の範囲から選択される任意の時間(120時間、24時間、6時間等)に設定される。例えば、上記継続時間Xを120時間に設定した場合、容器入り砥粒分散液の保存温度の上限温度Tmaxを制限するとは、該分散液の保存環境の温度が120時間以上連続して上限温度Tmaxを上回ることのないように上記容器入り砥粒分散液を保存することを意味する。凝固物の発生をより高度に防止する観点から、上記継続時間X(すなわち、上限温度Tmaxを上回る温度環境におかれることが許容される時間の上限)は、通常、96時間以下の範囲とすることが適当であり、48時間以下の範囲とすることが好ましく、24時間以下の範囲とすることがより好ましい。ここに開示される技術は、上記継続時間Xが18時間以下(好ましくは12時間以下、より好ましくは8時間以下、例えば6時間以下、または3時間以下)の範囲である態様で好適に実施され得る。一方、実用性の観点から、上記継続温度Xは、例えば0.1時間以上の範囲であってよく、0.5時間以上の範囲であってもよく、1時間以上の範囲であってもよく、2時間以上であってもよい。ここに開示される方法は、例えば、上記継続時間Xが0.1時間以上12時間以下の範囲から選択される適宜の時間に設定される態様で実施することができる。
【0017】
上限温度Tmaxは、例えば、砥粒分散液の充填温度Tからの温度上昇幅が20℃以下となるように設定することができる。容器内における砥粒分散液の溶存ガス量減少(ひいては容器内の空隙体積の増加)をよりよく抑制する観点から、上記温度上昇幅(すなわち、Tmax[℃]−T[℃])は、15℃以下とすることが好ましく、12℃以下としてもよく、10℃以下としてもよく、10℃未満としてもよく、7℃以下としてもよい。Tmax[℃]−T[℃]は、5℃以下としてもよく、0℃以下としてもよく、0℃未満としてもよい。すなわち、充填温度T0よりも上限温度Tmaxを低くしてもよい。一態様において、Tmax[℃]−T[℃]は、−5℃以下としてもよく、−10℃以下としてもよい。一方、経済性の観点から、Tmax[℃]−T[℃]は、通常、−40℃以上とすることが適当であり、−30℃以上(例えば−20℃以上)とすることが好ましい。
【0018】
ここに開示される技術において、砥粒分散液の充填温度Tは、通常、容器に充填されるために用意された砥粒分散液の温度と概ね一致する。ここで、砥粒分散液を用意することには、該砥粒分散液を開放系で(典型的には、大気圧の空気中に開放された状況下で)攪拌することが含まれ得る。砥粒分散液の充填温度Tは、特に限定されず、例えば0℃〜80℃の範囲とすることができる。容器への充填前、充填操作中または充填後であって容器を密封する前における砥粒分散液の乾燥を抑制する観点から、砥粒分散液の充填温度Tは、通常、90℃以下とすることが適当であり、80℃以下とすることが好ましく、60℃以下(例えば50℃以下)とすることがより好ましい。一態様において、充填温度Tは、45℃以下としてもよく、40℃以下としてもよく、35℃以下としてもよく、30℃以下としてもよく、27℃以下としてもよく、25℃以下としてもよい。一方、上限温度Tmaxをより高くし得るという観点から、充填温度Tは、例えば27℃以上とすることができ、30℃以上としてもよく、32℃以上としてもよく、35℃以上としてもよく、37℃以上としてもよく、40℃以上としてもよい。
【0019】
ここに開示される技術において、上限温度Tmaxは、容器内において砥粒分散液の溶存ガス量が減少する事象を適切に抑制する機能が発揮されるように設定することができ、特に限定されない。上限温度Tmaxは、例えば10℃〜50℃の範囲から選択することができる。一態様において、上限温度Tmaxは、例えば27℃以上であってよく、30℃以上であってもよく、32℃以上であってもよく、35℃以上であってもよく、37℃以上であってもよい。より上限温度Tmaxが高い態様では、本発明の適用効果がよりよく発揮される傾向にある。また、本発明の適用効果は、上限温度Tmaxが25℃以下(例えば20℃以下)である態様においても発揮され得る。
【0020】
(砥粒)
砥粒分散液に含まれる砥粒の材質や性状は特に限定されず、この砥粒分散液を用いて調製され得る研磨用組成物の使用目的や使用態様等に応じて適宜選択することができる。砥粒の例としては、無機粒子、有機粒子、および有機無機複合粒子のいずれも利用可能である。無機粒子の具体例としては、シリカ粒子、アルミナ粒子、酸化セリウム粒子、酸化クロム粒子、二酸化チタン粒子、酸化ジルコニウム粒子、酸化マグネシウム粒子、二酸化マンガン粒子、酸化亜鉛粒子、ベンガラ粒子等の酸化物粒子;窒化ケイ素粒子、窒化ホウ素粒子等の窒化物粒子;炭化ケイ素粒子、炭化ホウ素粒子等の炭化物粒子;ダイヤモンド粒子;炭酸カルシウムや炭酸バリウム等の炭酸塩;等が挙げられる。上記アルミナ粒子としては、α−アルミナ、α−アルミナ以外の中間アルミナおよびこれらの複合物が挙げられる。中間アルミナとは、α−アルミナ以外のアルミナ粒子の総称であり、具体例としてはγ−アルミナ、δ−アルミナ、θ−アルミナ、η−アルミナ、κ−アルミナおよびこれらの複合物が挙げられる。有機粒子の具体例としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)粒子やポリ(メタ)アクリル酸粒子(ここで(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸およびメタクリル酸を包括的に指す意味である。)、ポリアクリロニトリル粒子等が挙げられる。上記砥粒は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
ここに開示される技術は、砥粒分散液を構成する砥粒がシリカ粒子を含む形態で好ましく実施され得る。使用し得るシリカ粒子の例としては、特に限定されないが、コロイダルシリカ(例えば、ケイ酸ソーダ法シリカ、アルコキシド法シリカ等)、フュームドシリカ、沈降シリカ等が挙げられる。ここに開示される砥粒分散液における砥粒は、上記のようなシリカ粒子の1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて含むものであり得る。ここに開示される技術の一態様において、砥粒分散液に含まれる砥粒の全重量のうちシリカ粒子の重量は、例えば50重量%以上であってよく、70重量%以上であってもよく、85重量%以上であってもよく、95重量%以上であってもよく、99重量%以上であってもよい。シリカ粒子以外の砥粒を実質的に含有しない組成(例えば、シリカ粒子以外の砥粒の含有量が砥粒全体の0〜0.1重量%である組成)の砥粒分散液であってもよい。
【0022】
砥粒のBET径は、特に制限されず、例えば1nm〜1000nm程度であり得る。ここに開示される技術を適用して凝固物の生成および該凝固物(粗大粒子等)に起因するスクラッチの発生を防止する意義が大きいという観点から、砥粒のBET径は、好ましくは200nm以下、より好ましくは100nm以下であり得る。ここに開示される技術は、砥粒のBET径が50nm以下(さらには30nm以下、例えば25nm以下)である態様でも好ましく実施され得る。一態様において、砥粒のBET径は20nm以下であってもよい。また、研磨効率の観点から、上記砥粒のBET径は、例えば5nm以上であってよく、10nm以上であってもよく、15nm以上であってもよい。
【0023】
ここで、砥粒のBET径とは、BET法により測定される比表面積(BET値)から、BET径(nm)=6000/(真密度(g/cm)×BET値(m/g))の式により算出される粒子径をいう。例えばシリカ粒子の場合、BET径(nm)=2727/BET値(m/g)によりBET径を算出することができる。比表面積の測定は、例えば、マイクロメリテックス社製の表面積測定装置、商品名「Flow Sorb II 2300」を用いて行うことができる。
【0024】
(水)
ここに開示される砥粒分散液を構成する水としては、イオン交換水(脱イオン水)、純水、超純水、蒸留水等を好ましく用いることができる。ここに開示される砥粒分散液は、水と均一に混合し得る有機溶剤(低級アルコール、低級ケトン等)をさらに含有してもよい。通常は、砥粒分散液に含まれる溶媒全体の体積(すなわち、水および必要に応じて用いられ得る有機溶剤の合計体積)のうち90体積%以上が水であることが好ましく、95体積%以上(典型的には99〜100体積%)が水であることがより好ましい。
【0025】
(その他の成分)
ここに開示される砥粒分散液は、後述する研磨用組成物の構成成分として用いられ得る成分の1種または2種以上を含んでいてもよい。上記研磨用組成物の構成成分は、それぞれ、その全量が砥粒分散液に含まれていてもよく、一部分量が砥粒分散液に含まれ、残りの分量を追加して研磨用組成物が調製されるように構成されていてもよい。ここに開示される砥粒分散液は、一態様において、砥粒、水および有機溶媒以外の成分を実質的に含まない組成(かかる成分を少なくとも意図的には含有させないことをいう。)であり得る。
【0026】
(砥粒含有量)
ここに開示される砥粒分散液の砥粒の含有量(濃度)は、特に限定されない。砥粒分散液の調製容易性や分散安定性の観点から、上記砥粒の含有量は、砥粒分散液の重量のうち50重量%以下であることが好ましく、45重量%以下であってもよく、例えば40重量%以下であってもよい。また、上記砥粒含有量は、例えば0.5重量%以上であってよく、1重量%以上であってもよい。砥粒含有量が多くなるにつれて砥粒分散液の液滴の乾燥による凝固物は概して発生しやすくなるため、本発明の適用意義はより大きくなる傾向にある。かかる観点から、ここに開示される技術の一態様において、砥粒分散液の砥粒含有量は、例えば5重量%以上であってよく、10重量%以上であってもよく、25重量%以上であってもよく、30重量%以上であってもよい。
【0027】
(pH)
砥粒分散液のpHは、特に制限されず、砥粒の材質や砥粒分散液の用途に応じて選択し得る。いくつかの態様において、砥粒の分散安定性の観点から、砥粒分散液のpHは、例えば7.0以上であってよく、8.0以上であってもよく、9.0以上であってもよい。また、砥粒の溶解を防ぐ観点から、砥粒分散液のpHは、通常、12.0以下であることが適当であり、11.0以下であることが好ましく、10.5以下であってもよく、例えば10.0以下であってもよい。また、いくつかの態様において、砥粒分散液のpHは、7.0以下であってもよく、5.0以下であってもよく、2.0以下であってもよい。砥粒分散液のpHを酸性域とすることは、例えば、この砥粒分散液に酸を加えて研磨用組成物を調製する際に生じ得るpHショックによる砥粒の凝集抑制の観点から有利となり得る。なお、これらのpHは、例えば、砥粒としてシリカ粒子を含む形態の砥粒分散液において好ましく採用され得る。
【0028】
<容器入り砥粒分散液>
この明細書によると、このような砥粒分散液が容器に密封されている容器入り砥粒分散液が提供される。かかる容器入り砥粒分散液は、例えば、砥粒分散液を容器に収容することと、該容器を密封することと、を含む方法により製造され得る。ここに開示される容器入り砥粒分散液製造方法の好ましい一態様は、上記容器入り砥粒分散液の保存温度として許容される上限温度Tmaxを設定すること、上記上限温度Tmaxを所定温度以上は下回らない温度(充填温度)Tを有する砥粒分散液を容器に充填すること、および、上記容器を密封すること、を含み得る。すなわち、Tmax[℃]−T[℃]が所定温度[℃]以下となる充填温度Tを有する砥粒分散液を容器に充填することが好ましい。充填温度Tの設定にあたっては、Tmax[℃]−T[℃]を15℃以下とすることが好ましく、12℃以下としてもよく、10℃以下としてもよく、10℃未満としてもよく、7℃以下としてもよい。Tmax[℃]−T[℃]は、5℃以下としてもよく、0℃以下としてもよい。ここに開示される容器入り砥粒分散液の製造方法は、Tmax[℃]−T[℃]が0℃未満となる態様、すなわち、上限温度Tmaxよりも高い充填温度Tの砥粒分散液を容器に充填する態様でも好ましく実施され得る。一態様において、充填温度Tは、上限温度Tmaxより2℃以上高い温度としてもよく、5℃以上高い温度としてもよく、7℃以上高い温度としてもよく、10℃以上高い温度としてもよい。一方、経済性の観点から、Tmax[℃]−T[℃]は、通常、−40℃以上とすることが適当であり、−30℃以上(例えば−20℃以上)とすることが好ましい。
【0029】
特に制限するものではないが、上記容器の密封は、該容器内に存在する空隙の体積Vが上記砥粒分散液の体積Vに対して例えば5%以下となるように行うことができる。すなわち、以下の式:
容器の密封当初における空隙率(%)=(VAi/V)×100;
により算出される(以下、当初空隙率ともいう。)が5%以下となるように容器を密封することが好ましい。容器の密封当初における空隙率(当初空隙率)を低くすることにより、容器内での砥粒分散液からの溶出ガス放出を抑制することによる凝固物発生防止効果がよりよく発揮され得る。かかる観点から、一態様において、当初空隙率VAiは、2%以下とすることができ、1%以下とすることが好ましい。ここに開示される技術は、例えば、当初空隙率VAiが0.5%以下となるように容器を密封する態様で好ましく実施され得る。当初空隙率VAiは、0.3%未満としてもよく、0.25%以下としてもよく、0.2%以下としてもよく、0.15%以下としてもよく、0.1%以下としてもよく、0.05%以下としてもよい。ここに開示される容器入り砥粒分散液製造方法は、当初空隙率が実質的に0%である態様、すなわち容器内の空隙を完全に排除した状態で容器を密封する態様で好ましく実施され得る。当初空隙率VAiは、例えば、容器に充填する砥粒分散液の量(体積)を調節する手法や、砥粒分散液の一部または全部を容器に充填した後に該容器をその容積が減少するように(例えば、後述する基準容積より減少するように)変形させることで容器内の空隙を排除する手法、等により調節することができる。これらの手法を組み合わせてもよい。
【0030】
容器内に充填される砥粒分散液の体積Vは、容器入り砥粒分散液の実用性等の観点から、通常、100mL以上であることが適当である。砥粒分散液の体積Vは、例えば500mL以上であってよく、1L以上であってもよく、2L以上であってもよく、3L以上であってもよい。また、保管中における容器内での凝固物の生成を高度に抑制しやすくする観点から、砥粒分散液の体積Vは、通常、1000L以下であることが適当であり、500L以下であってもよく、100L以下であってもよく、50L以下であってもよい。ここに開示される技術は、例えば、砥粒分散液の体積Vが25L以下(典型的には15L以下)である容器入り砥粒分散液の形態で好適に実施され得る。
【0031】
容器入り砥粒分散液に用いられる容器としては、特に限定されず、液体を収容して気密に封止可能な各種の容器を使用することができる。容器を構成する材料としては、所望の気密性や耐腐食性が得られる限り、各種の樹脂材料、金属材料、セラミック材料、ガラス材料、これらの複合物等が用いられ得る。一態様において、容器外からの押圧や容器内の減圧等によって該容器の容積を基準容積から容易に減少させ得る容器(以下、易変形性容器ともいう。)を好ましく採用することができる。ここで基準容積とは、開放系で容器に外力を加えない状態において、該容器に25℃の水を満たした場合における容積をいう。
【0032】
上記易変形性容器としては、壁面の少なくとも一部が樹脂フィルムにより構成されたものを好ましく採用し得る。上記樹脂フィルムを構成する樹脂材料は、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂等を使用し得る。このような樹脂材料は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられ得る。2種以上の樹脂材料を組み合わせて用いる場合、それらの樹脂材料は、ブレンドして用いられてもよく、ブレンドせずに(例えば積層して)用いられてもよい。容器の製造容易性や変形容易性の観点から、好ましい一態様において、壁面の面積の50%以上(例えば70%以上)が樹脂フィルムにより構成された易変形性容器を用いることができる。壁面の面積の90%以上が樹脂フィルムにより構成されていてもよい。
【0033】
上記樹脂フィルムの好適例として、ポリオレフィン樹脂フィルムが挙げられる。例えば、壁面の面積の50%以上(典型的には70%以上、例えば90%以上)がポリオレフィン樹脂フィルムにより構成された容器を好ましく採用し得る。上記ポリオレフィン樹脂フィルムの好適例として、ポリエチレン樹脂フィルムが挙げられる。かかるポリエチレン樹脂フィルムを構成するポリオレフィン樹脂としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)および直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)のいずれも利用可能である。一態様において、壁面の面積の50%以上(典型的には70%以上、例えば90%以上)がLDPE樹脂フィルムにより構成された容器を好ましく採用し得る。
【0034】
上記易変形性容器の壁面を構成する樹脂フィルムの厚さは特に限定されない。容器の強度や気密性と易変形性とを両立する観点から、上記樹脂フィルムの厚さとしては、通常、0.05mm〜2mm程度が適当であり、0.1mm〜1mm程度が好ましい。
【0035】
ここに開示される技術は、容器(好ましくは易変形性容器)の容積が基準容積から減少するように変形させた状態で砥粒分散液が密封された容器入り砥粒分散液の形態で好ましく実施され得る。このような形態の容器入り砥粒分散液は、温度上昇により砥粒分散液の体積が膨張しても、その体積膨張を容器の容積増加(容積を減少させた状態からの復帰)により吸収することができる。このことは、容器内の空隙体積が小さくなるように(例えば、該空隙の体積が砥粒分散液の体積Vの0.5%以下となるように)して密封された容器入り砥粒分散液において特に有意義である。また、上記形態の容器入り砥粒分散液は、温度低下により砥粒分散液の体積が減少しても、該砥粒分散液の体積減少に応じて上記容器がその容積を減少させるように変形することで、容器内が減圧(負圧)となることを防止または抑制し得る。このことは、容器内におけるガス発生(溶存ガスの放出)を抑制する観点から有利となり得る。
【0036】
ここに開示される容器入り砥粒分散液を構成する容器(好ましくは易変形性容器)は、該容器の容積Vが基準容積Vに対して例えば0.5%以上小さくなるように変形した状態で密封され得る。すなわち、ここに開示される容器入り砥粒分散液製造方法において、該容器の密封は、
容積圧縮率(%)=((V−V)/V)×100
により算出される容積圧縮率が0.5%以上となるように行われ得る。上記容積圧縮率は、1%以上であることが好ましく、2%以上であってもよく、3%以上であってもよく、5%以上であってもよく、7%以上であってもよい。また、実用性の観点から、上記容積圧縮率は、通常、50%以下とすることが適当であり、30%以下とすることが好ましく、20%以下とすることがより好ましい。ここで、容器入り砥粒分散液を構成する容器の容積圧縮率は、該容器入り砥粒分散液の25℃における状態として評価するものとする。
【0037】
<研磨用組成物>
ここに開示される砥粒分散液(容器入り砥粒分散液を構成する砥粒分散液であり得る。以下同じ。)は、容器内での保存中における凝固物の発生が抑制されていることから、該保存後においても研磨用組成物の調製に好ましく用いられ得る。このような砥粒分散液(容器内で保存された後の砥粒分散液であり得る。以下同じ。)を用いて調製される研磨用組成物は、典型的には、該砥粒分散液を含む研磨用組成物として把握され得る。かかる研磨用組成物は、上記砥粒分散液の他に、例えば以下に例示する成分の1種または2種以上を必要に応じて含有し得る。
【0038】
(酸)
ここに開示される砥粒分散液を用いて調製される研磨用組成物は、酸を含有し得る。酸は、研磨用組成物の研磨促進剤として役立ち得る。酸は、あらかじめ砥粒分散液に含有されていてもよく、砥粒分散液に酸を配合して研磨用組成物を調製してもよい。好適に使用され得る酸の例としては、無機酸や有機酸(例えば、炭素原子数が1〜10程度の有機カルボン酸、有機ホスホン酸、有機スルホン酸、アミノ酸等)が挙げられるが、これらに限定されない。酸は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
無機酸の具体例としては、硝酸、硫酸、塩酸、リン酸、次亜リン酸、ホスホン酸、ホウ
酸、スルファミン酸等が挙げられる。
【0040】
有機酸の具体例としては、クエン酸、マレイン酸、リンゴ酸、グリコール酸、コハク酸、イタコン酸、マロン酸、イミノ二酢酸、グルコン酸、乳酸、マンデル酸、酒石酸、クロトン酸、ニコチン酸、酢酸、アジピン酸、ギ酸、シュウ酸、プロピオン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、シクロヘキサンカルボン酸、フェニル酢酸、安息香酸、クロトン酸、メタクリル酸、グルタル酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、グリコール酸、タルトロン酸、グリセリン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ酢酸、ヒドロキシ安息香酸、サリチル酸、イソクエン酸、メチレンコハク酸、没食子酸、アスコルビン酸、ニトロ酢酸、オキサロ酢酸、グリシン、アラニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、プロリン、シスチン、グルタミン、アスパラギン、リシン、アルギニン、ニコチン酸、ピコリン酸、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、エチルグリコールアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、フィチン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、エタン−1,1−ジホスホン酸、エタン−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸、エタンヒドロキシ−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1,2−ジカルボキシ−1,2−ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸、2−ホスホノブタン−1,2−ジカルボン酸、1−ホスホノブタン−2,3,4−トリカルボン酸、α−メチルホスホノコハク酸、アミノポリ(メチレンホスホン酸)、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、アミノエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸等が挙げられる。
【0041】
研磨効率の観点から好ましい酸として、硝酸、硫酸、リン酸、スルファミン酸、フィチン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、メタンスルホン酸等が例示される。なかでも硝酸、硫酸、リン酸、スルファミン酸、メタンスルホン酸が好ましい。
【0042】
研磨用組成物中に酸を含む場合、その含有量は特に限定されない。酸の含有量は、通常、1g/L以上が適当であり、3g/L以上が好ましく、5g/L以上がより好ましい。酸の含有量が少なすぎると、研磨レートが不足しやすくなり、実用上好ましくない場合がある。酸の含有量は、通常、200g/L以下が適当であり、100g/L以下が好ましく、50g/L以下(例えば30g/L以下)がより好ましい。酸の含有量が多すぎると、研磨対象物の面精度が低下しやすくなり、実用上好ましくない場合がある。
【0043】
酸は、該酸の塩の形態で用いられてもよい。塩の例としては、上述した無機酸や有機酸の、金属塩(例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩)、アンモニウム塩(例えば、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩等の第四級アンモニウム塩)、アルカノールアミン塩(例えば、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩)等が挙げられる。
塩の具体例としては、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等のアルカリ金属リン酸塩およびアルカリ金属リン酸水素塩;上記で例示した有機酸のアルカリ金属塩;その他、グルタミン酸二酢酸のアルカリ金属塩、ジエチレントリアミン五酢酸のアルカリ金属塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸のアルカリ金属塩、トリエチレンテトラミン六酢酸のアルカリ金属塩;等が挙げられる。これらのアルカリ金属塩におけるアルカリ金属は、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等であり得る。
【0044】
ここに開示される研磨用組成物に含まれ得る塩としては、無機酸の塩(例えば、アルカリ金属塩やアンモニウム塩)を好ましく採用し得る。例えば、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム、リン酸カリウム等を好ましく使用し得る。
【0045】
(酸化剤)
ここに開示される砥粒分散液を用いて調製される研磨用組成物は、必要に応じて酸化剤を含有し得る。酸化剤は、あらかじめ砥粒分散液に含有されていてもよく、砥粒分散液に酸化剤を配合して研磨用組成物を調製してもよい。酸化剤の例としては、過酸化物、硝酸またはその塩、過ヨウ素酸またはその塩、ペルオキソ酸またはその塩、過マンガン酸またはその塩、クロム酸またはその塩、酸素酸またはその塩、金属塩類、硫酸類等が挙げられるが、これらに限定されない。酸化剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。酸化剤の具体例としては、過酸化水素、過酸化ナトリウム、過酸化バリウム、硝酸、硝酸鉄、硝酸アルミニウム、硝酸アンモニウム、ペルオキソ一硫酸、ペルオキソ一硫酸アンモニウム、ペルオキソ一硫酸金属塩、ペルオキソ二硫酸、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸金属塩、ペルオキソリン酸、ペルオキソ硫酸、ペルオキソホウ酸ナトリウム、過ギ酸、過酢酸、過安息香酸、過フタル酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸、塩素酸、臭素酸、ヨウ素酸、過ヨウ素酸、過塩素酸、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、過マンガン酸カリウム、クロム酸金属塩、重クロム酸金属塩、塩化鉄、硫酸鉄、クエン酸鉄、硫酸アンモニウム鉄等が挙げられる。好ましい酸化剤として、過酸化水素、硝酸鉄、過ヨウ素酸、ペルオキソ一硫酸、ペルオキソ二硫酸および硝酸が例示される。少なくとも過酸化水素を含むことが好ましく、過酸化水素からなることがより好ましい。
【0046】
研磨用組成物中に酸化剤を含む場合、その含有量は、1g/L以上であることが好ましく、より好ましくは3g/L以上、さらに好ましくは4g/L以上である。酸化剤の含有量が少なすぎると、研磨対象物を酸化する速度が遅くなり、研磨レートが低下するため、実用上好ましくない場合がある。また、研磨用組成物中に酸化剤を含む場合、その含有量は、30g/L以下であることが好ましく、より好ましくは15g/L以下である。酸化剤の含有量が多すぎると、研磨対象物の面精度が低下しやすくなり、実用上好ましくない場合がある。
【0047】
(塩基性化合物)
ここに開示される砥粒分散液を用いて調製される研磨用組成物は、必要に応じて塩基性化合物を含有し得る。塩基性化合物は、あらかじめ砥粒分散液に含有されていてもよく、砥粒分散液に塩基性化合物を配合して研磨用組成物を調製してもよい。ここで塩基性化合物とは、研磨用組成物に添加されることによって該組成物のpHを上昇させる機能を有する化合物を指す。塩基性化合物の例としては、アルカリ金属水酸化物、炭酸塩や炭酸水素塩、第四級アンモニウムまたはその塩、アンモニア、アミン、リン酸塩やリン酸水素塩、有機酸塩等が挙げられる。塩基性化合物は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
アルカリ金属水酸化物の具体例としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等が挙げられる。
炭酸塩や炭酸水素塩の具体例としては、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等が挙げられる。
第四級アンモニウムまたはその塩の具体例としては、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム等の水酸化第四級アンモニウム;このような水酸化第四級アンモニウムのアルカリ金属塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩);等が挙げられる。
アミンの具体例としては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、N−(β−アミノエチル)エタノールアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、無水ピペラジン、ピペラジン六水和物、1−(2−アミノエチル)ピペラジン、N−メチルピペラジン、グアニジン、イミダゾールやトリアゾール等のアゾール類、等が挙げられる。
リン酸塩やリン酸水素塩の具体例としては、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等のアルカリ金属塩が挙げられる。
有機酸塩の具体例としては、クエン酸カリウム、シュウ酸カリウム、酒石酸カリウム、酒石酸カリウムナトリウム、酒石酸アンモニウム等が挙げられる。
【0049】
(その他の成分)
ここに開示される砥粒分散液を用いて調製される研磨用組成物は、本発明の効果が著しく妨げられない範囲で、界面活性剤、水溶性高分子、分散剤、キレート剤、防腐剤、防カビ剤等の、研磨用組成物(例えば、Ni−P基板やガラス基板等のような磁気ディスク基板用の研磨用組成物)に使用され得る公知の添加剤を、必要に応じて含有し得る。これらの添加剤は、あらかじめ砥粒分散液に含有されていてもよく、砥粒分散液から研磨用組成物を調製する際に配合してもよい。
【0050】
(研磨液)
ここに開示される研磨用組成物は、典型的には該研磨用組成物を含む研磨液の形態で研磨対象物(例えば磁気ディスク基板)に供給されて、該研磨対象物の研磨に用いられる。上記研磨液は、例えば、研磨用組成物を希釈(典型的には、水により希釈)して調製されたものであり得る。あるいは、研磨用組成物をそのまま研磨液として使用してもよい。すなわち、ここに開示される技術における研磨用組成物の概念には、研磨対象物に供給されて該研磨対象物の研磨に用いられる研磨液(ワーキングスラリー)と、希釈して研磨液として用いられる濃縮液との双方が包含される。このような濃縮液の形態の研磨用組成物は、製造、流通、保存等の際における利便性やコスト低減等の観点から有利である。濃縮倍率は、例えば1.5倍〜50倍程度とすることができる。濃縮液の貯蔵安定性等の観点から、通常は2倍〜20倍(典型的には2倍〜10倍)程度の濃縮倍率が適当である。
【0051】
研磨液における砥粒の含有量は、特に制限されないが、典型的には5g/L以上であり、10g/L以上であることが好ましく、20g/L以上であることがより好ましい。砥粒の含有量の増大によって、より高い研磨レートが実現される傾向にある。研磨後の基板の表面平滑性や研磨の安定性の観点から、通常、上記含有量は、250g/L以下が適当であり、好ましくは200g/L以下、より好ましくは150g/L以下、さらに好ましくは100g/L以下である。
【0052】
(pH)
ここに開示される研磨用組成物のpHは特に制限されない。研磨用組成物のpHは、例えば、12.0以下(典型的には0.5〜12.0)とすることができ、10.0以下(典型的には0.5〜10.0)としてもよい。好ましい一態様において、研磨用組成物のpHは、7.0以下(例えば0.5〜7.0)とすることができ、5.0以下(典型的には1.0〜5.0)としてもよく、4.0以下(例えば1.0〜4.0)としてもよい。研磨液において上記pHが実現されるように、必要に応じて有機酸、無機酸、塩基性化合物等のpH調整剤を含有させることができる。上記pHは、例えば、Ni−P基板等の磁気ディスク基板を研磨するための研磨用組成物に好ましく適用され得る。
【0053】
(研磨用組成物調製キット)
ここに開示される容器入り砥粒分散液は、該容器入り砥粒分散液と、その容器入り砥粒分散液を構成する砥粒分散液(A剤)と混合して研磨用組成物の調製に用いられる材料(B剤)と、を含む研磨用組成物調製キットの構成要素として利用され得る。上記B剤は、砥粒以外の成分(例えば、酸、水溶性高分子その他の添加剤)の1種または2種以上を含み得る。これらは、通常、使用前は分けて保管されており、使用時(研磨対象基板の研磨時)に混合され得る。混合時には、A剤およびB剤の他に、例えば過酸化水素等の酸化剤がさらに混合され得る。例えば、上記酸化剤(例えば過酸化水素)が水溶液(例えば過酸化水素水)の形態で供給される場合、当該水溶液は、上記研磨用組成物調製キットを構成するC剤となり得る。
【0054】
<用途>
ここに開示される砥粒分散液は、研磨用組成物の構成成分として用いられて、研磨後のスクラッチを高度に低減可能な研磨用組成物を提供し得る。ここに開示される砥粒分散液を含む研磨用組成物は、例えば、磁気ディスク基板、シリコンウェーハ(例えば、シリコン単結晶インゴットをスライスして得られたシリコン単結晶ウェーハ)等の半導体基板、レンズや反射ミラー等の光学材料等のように、高精度な表面が要求される各種研磨対象物の研磨に好ましく使用され得る。なかでも磁気ディスク基板を研磨する用途に好適である。ここでいう磁気ディスク基板の例には、Ni−P基板(アルミニウム合金製、ガラス製、ガラス状カーボン製等の基材ディスクの表面にニッケルリンめっき層を有する磁気ディスク基板をいう。)やガラス磁気ディスク基板が含まれる。このような磁気ディスク基板を研磨する用途では、ここに開示される技術を適用することが特に有意義である。Ni−P基板への適用が特に好ましい。
【0055】
ここに開示される砥粒分散液を含む研磨用組成物は、研磨後の表面においてスクラッチを高度に低減し得ることから、研磨対象物のファイナルポリシング工程(最終研磨工程)に特に好ましく使用され得る。この明細書によると、ここに開示される砥粒分散液を含む研磨用組成物を用いたファイナルポリシング工程を備える研磨物の製造方法(例えば磁気ディスク基板の製造方法)および該方法により製造された磁気ディスク基板が提供され得る。なお、ファイナルポリシングとは、目的物の製造プロセスにおける最後のポリシング工程(すなわち、その工程の後にはさらなるポリシングを行わない工程)を指す。
【0056】
ここに開示される砥粒分散液を含む研磨用組成物は、また、ファイナルポリシングよりも上流のポリシング工程に用いられてもよい。ここで、ファイナルポリシングよりも上流のポリシング工程とは、粗研磨工程と最終研磨工程との間の予備研磨工程を指す。予備研磨工程は、典型的には少なくとも1次ポリシング工程を含み、さらに2次、3次・・・等のポリシング工程を含み得る。上記研磨用組成物は、いずれのポリシング工程にも使用可能であり、これらのポリシング工程において同一のまたは異なる研磨用組成物を用いることができる。ここに開示される砥粒分散液を含む研磨用組成物は、例えば、ファイナルポリシングの直前に行われるポリシング工程に用いられてもよい。
【0057】
ここに開示される砥粒分散液を含む研磨用組成物は、例えば以下の操作を含む態様で、研磨対象物(例えば磁気ディスク基板)の研磨に好適に使用することができる。すなわち、ここに開示されるいずれかの砥粒分散液を含む研磨用組成物を研磨液として用意する。次いで、その研磨液を研磨対象物に供給し、常法により研磨する。例えば、一般的な研磨装置に研磨対象物をセットし、該研磨装置の研磨パッドを通じて上記研磨対象物の表面(研磨対象面)に研磨液を供給する。典型的には、上記研磨液を連続的に供給しつつ、研磨対象物の表面に研磨パッドを押しつけて両者を相対的に移動(例えば回転移動)させる。かかる研磨工程を経て研磨対象物の研磨が完了する。上述のような研磨工程は、磁気ディスク基板(例えばNi−P基板)の製造プロセスの一部であり得る。したがって、この明細書によると、上記ポリシング工程を含む磁気ディスク基板の製造方法が提供される。
【実施例】
【0058】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0059】
<容器入り砥粒分散液の作製および保存試験>
(例1)
上面に円筒形の充填口を有する、基準容積5L(リットル)の軟質ポリエチレン製(LDPEフィルム製)容器を用意した。BET径23nmのシリカ粒子を35重量%の濃度で含むpH9.3のコロイダルシリカ分散液を、25℃に調整された室内で開放系において約30分間攪拌した後、上記容器内に4.5L注入した(すなわち、充填温度T=25℃)。上記容器に軽い振動を与えて液面下の容器壁面に付着した泡を除去した後、容器の壁面を手で押して凹ませることにより容器内の空気を充填口から押し出し、容器内の空隙を完全になくした状態で、上記充填口の上端を閉じて容器を密封した。このようにして例1に係る容器入り砥粒分散液を作製した。
この容器入り砥粒分散液について、43℃の温度環境下で144時間保存する保存試験を行った。引き続き43℃において、容器内にあるガスを上記円筒形の充填口に集め、上記充填口に生じた空隙の高さおよび該充填口の内径から容器内の空隙体積、すなわち保存中における発生ガスの体積[mL]を算出した。この発生ガスが空気であるものとして上記発生ガスの体積[mL]を空気の重量[mg]に変換し、これを4.5で除した値を上記保存中における砥粒分散液1L当たりの溶存ガス減少量[mg/L]とした。
【0060】
(例2)
例1と同様のコロイダルシリカ分散液を、43℃に調整された高温高湿槽内に搬入し、該高温高湿槽内の雰囲気に開放された状態で12時間以上保持した。次いで、このコロイダルシリカ分散液を上記高温高湿槽から取り出して上記容器に速やかに充填し(すなわち、充填温度T=43℃)、例1と同様に容器内の空隙を完全になくした状態で充填口を閉じて容器を密封した。このようにして例2に係る容器入り砥粒分散液を作製した。砥粒分散液の容器への充填量は、25℃における体積が4.5Lになる量に調整した。
この容器入り砥粒分散液について、例1と同様に43℃の温度環境下で144時間保存する保存試験を行った後、同様にして砥粒分散液1L当たりの溶存ガス減少量[mg/L]を求めた。
【0061】
(例3)
例2と同様にして作製した容器入り砥粒分散液について、30℃の温度環境下で144時間保存する保存試験を行った。その後、例1と同様にして砥粒分散液1L当たりの溶存ガス減少量[mg/L]を求めた。
以上の結果を表1に示した。
【0062】
<凝固物量の測定>
各例に係る保存試験後の砥粒分散液のうち4Lを、あらかじめ重量を測定したメンブレンフィルタを用いて以下の条件で吸引濾過した。次いで、上記メンブレンフィルタで純水0.5Lを吸引濾過して該フィルタを洗浄した。このフィルタを乾燥させて重量を測定し、(濾過後のフィルタ重量−濾過前のフィルタ重量)/4により、砥粒分散液1L当たりに含まれる凝固物量を求めた。結果を表1に示した。
[濾過条件]
使用フィルタ:
種類 アドバンテック社製のメンブレンフィルタ(φ47mm、ディスク型)
材質 混合セルロースエステル
孔径 1.0μm
吸引ポンプ:
アルバック(ULVAC)機工社製のポータブルアスピレーターMDA-015
【0063】
<研磨用組成物の調製>
各例に係る保存試験後の砥粒分散液と、リン酸と、31%過酸化水素水と、純水とを混合して、使用した砥粒分散液の各々に対応する例1〜3の研磨用組成物を調製した。研磨用組成物中における砥粒の含有量は6%とし、リン酸の含有量は1.5重量%とし、過酸化水素水の含有量は0.4重量%とした。また、塩基性化合物を用いてpHを2.4に調整した。
【0064】
<研磨試験>
(磁気ディスクの研磨)
上記で調製した研磨用組成物をそのまま研磨スラリーとして使用して、以下の条件で研磨対象物を研磨した。研磨対象物としては、表面に無電解ニッケルリンめっき層を備えた直径3.5インチ(外径約95mm、内径約25mmのドーナツ型)、厚さ1.27mmのハードディスク用アルミニウム基板を、Schmitt Measurement System Inc.社製レーザースキャン式表面粗さ計「TMS−3000WRC」により測定される表面粗さ(算術平均粗さ(Ra))の値が6Å以下となるように予備研磨したものを使用した。
【0065】
[研磨条件]
研磨装置:スピードファム株式会社製の両面研磨機、型式「9B−5P」
研磨パッド:スウェードノンバフタイプ
基板の投入枚数:8枚(2枚/キャリア ×4キャリア)×2バッチ
研磨スラリーの供給レート:80mL/分
研磨荷重:120g/cm
下定盤回転数:60rpm
研磨時間:5分
【0066】
(スクラッチ防止性評価)
各例に係る研磨スラリーを用いて研磨した基板の中から計6枚(3枚/1バッチ)を無作為に選択し、各基板の両面を以下の条件で検査した。
[表面検査条件]
測定装置:ケーエルエー・テンコール株式会社製 Candela OSA6100
Rotation: 10000rpm
測定範囲:20mm−45mm
Step size:4mm
Encoder multiplier:×16
検出チャンネル:P−Sc channel
【0067】
上記検査により得られた欠陥マップにおいて、5ピクセル分以上のドットが直列に繋がったものをスクラッチと判定した。上記6枚の基板の両面(計12面)にあるスクラッチ数の合計を12で除して、基板片面あたりのスクラッチ数(本/面)を算出した。その結果に基づいて、各例に係る研磨スラリーのスクラッチ防止性を以下の2段階で評価した。結果を表1に示した。
G:スクラッチの数が5本/面未満(スクラッチ防止性良好)
P:スクラッチの数が5本/面以上(スクラッチ防止性に乏しい)
【0068】
【表1】
【0069】
表1に示されるように、容器内に密封された砥粒分散液を、該容器への充填温度Tとの関係で溶存ガス量の減少が抑制されるように設定された上限温度Tmaxで保存した例2,3によると、より溶存ガス減少量の多い例1に比べて、保存中における凝固物の発生が明らかに抑制された。また、例2,3に係る保存後の砥粒分散液を用いて調製された研磨用組成物によると、例1に比べてスクラッチ防止性が大幅に改善された。
【0070】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。