特許第6943711号(P6943711)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ポリプラスチックス株式会社の特許一覧

特許6943711押出機用ダイ、押出機、及び樹脂組成物の製造方法
<>
  • 特許6943711-押出機用ダイ、押出機、及び樹脂組成物の製造方法 図000003
  • 特許6943711-押出機用ダイ、押出機、及び樹脂組成物の製造方法 図000004
  • 特許6943711-押出機用ダイ、押出機、及び樹脂組成物の製造方法 図000005
  • 特許6943711-押出機用ダイ、押出機、及び樹脂組成物の製造方法 図000006
  • 特許6943711-押出機用ダイ、押出機、及び樹脂組成物の製造方法 図000007
  • 特許6943711-押出機用ダイ、押出機、及び樹脂組成物の製造方法 図000008
  • 特許6943711-押出機用ダイ、押出機、及び樹脂組成物の製造方法 図000009
  • 特許6943711-押出機用ダイ、押出機、及び樹脂組成物の製造方法 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6943711
(24)【登録日】2021年9月13日
(45)【発行日】2021年10月6日
(54)【発明の名称】押出機用ダイ、押出機、及び樹脂組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/345 20190101AFI20210927BHJP
   B29B 9/06 20060101ALI20210927BHJP
   B29K 59/00 20060101ALN20210927BHJP
【FI】
   B29C48/345
   B29B9/06
   B29K59:00
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-188391(P2017-188391)
(22)【出願日】2017年9月28日
(65)【公開番号】特開2019-64004(P2019-64004A)
(43)【公開日】2019年4月25日
【審査請求日】2020年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】390006323
【氏名又は名称】ポリプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】阿部 慎一朗
【審査官】 神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開平3−101903(JP,A)
【文献】 特開2011−56762(JP,A)
【文献】 実開昭56−90317(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 9/00−9/16
B29C 48/00−48/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融樹脂がストランドの形態で吐出する複数の吐出孔を有する吐出面と、
前記吐出面から垂直方向に突出する1の突出部と、を備え、
前記複数の吐出孔が前記吐出面において一直線上に配列し、前記突出部が前記吐出孔の配列方向と平行に一体に形成されており、
前記突出部の根本部分の一部が、前記各吐出孔の外周上部に接している押出機用ダイ。
【請求項2】
溶融樹脂がストランドの形態で吐出する複数の吐出孔を有する吐出面と、
前記吐出面から垂直方向に突出する複数の突出部と、を備え、
前記複数の突出部のそれぞれが、前記吐出面に対する正面視において円弧状であり、かつ、前記円弧状の突出部の曲率半径が前記吐出孔の半径よりも大きく、
前記複数の突出部のそれぞれの根本部分の一部が、前記各吐出孔の外周上部に接している押出機用ダイ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の押出機用ダイが装着されている押出機。
【請求項4】
少なくとも樹脂及び添加剤を請求項に記載の押出機に投入して、前記押出機用ダイから吐出させて樹脂組成物を得る樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
前記樹脂が、ポリアセタール樹脂であり、前記添加剤が、主鎖がポリエチレンであり、側鎖がアクリロニトリル−スチレン共重合体であるグラフト共重合体である、請求項に記載の樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物の押出成形に用いられる押出機用ダイ、押出機、押出機を用いた樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
押出機を用いて樹脂組成物をストランド状に押し出す際、樹脂組成物によっては、その一部の成分が押出機用ダイの吐出孔の周囲に付着することがある。このような付着物は、メヤニと呼ばれることがあり種々の悪影響を及ぼす。例えば、吐出孔の周囲にメヤニが付着した状態で樹脂組成物の押し出しを続けると、メヤニがリング状に成長してストランドに絡まりつくことがある。そのようなメヤニを放置すると製品に混入することがあり、製品へのメヤニの混入により品質低下が危惧される。あるいは、リング状に成長したメヤニが押出機用ダイから離脱する際にストランドが切断されることがある。これは1時間当たり数回の高頻度で発生するため、常に監視し、必要に応じて成形を中断してメヤニを除去したり、押出機用ダイのメンテナンスをしたりする必要がある。
【0003】
そのため、押出機用ダイにおけるメヤニの発生又は成長を抑えるため、従来、種々の検討がなされている(例えば、特許文献1、2)。特許文献1、2には、樹脂が押し出される吐出孔の付近に気体を吹き付けてメヤニを吹き飛ばすための機構を有する押出機用ダイが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−232432号公報
【特許文献2】特開2017−47638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2に開示されている押出機用ダイは、いずれも気体供給源及び樹脂の吐出口に気体を吹き付ける機構が別途必要となる。そのため、やや複雑な機構を要し、その分、押出機用ダイの製造コストや維持コストの増大の原因となる。
【0006】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものである。そして、その目的は、簡単な構造により吐出孔付近の付着物(メヤニ)の成長を抑制しうる押出機用ダイ、その押出機用ダイを用いた押出機、及びその押出機を用いた樹脂組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討した結果、押出機を用いた樹脂組成物の押し出しに際し、押出機用ダイの吐出孔周囲にメヤニが成長してストランドに絡まりついたり、ストランドの切断の原因となったりするのは、メヤニの形状がリング状であることに起因すること見出し本発明を完成するに至った。すなわち、前記課題を解決する本発明は以下の通りである。
【0008】
本発明の押出機用ダイは、溶融樹脂がストランドの形態で吐出する1又は複数の吐出孔を有する吐出面と、吐出面から垂直方向に突出する1又は複数の突出部と、を備え、突出部の根本部分の一部が、各吐出孔の外周上部に接している押出機用ダイである。
本発明の押出機用ダイにおいては、吐出孔の上部に突出部の根本部分の一部が接しているため、メヤニは上部が欠落した形状、すなわち略U字状となり、リング状に成長することはない。そのため鉛直方向下方に脱落しやすくなり、メヤニがストランドに絡まりついたり、ストランドが切断されたりするといった問題を低減することができる。
【0009】
本発明の押出機用ダイにおいては、吐出面の吐出孔は複数であって、該複数の吐出孔が吐出面において一直線上に配列し、突出部が吐出孔の配列方向と平行に一体に形成されている構成とすることが好ましい。
【0010】
本発明の押出機は、上記本発明の押出機用ダイが装着されている押出機である。すなわち、本発明の押出機により樹脂組成物を押し出すに際し、メヤニがストランドに絡まりついたり、ストランドが切断されたりする上記問題点を解消することができる。
【0011】
本発明の樹脂組成物の製造方法は、少なくとも樹脂及び添加剤を、本発明の押出機に投入して、押出機用ダイから吐出させて樹脂組成物を得る樹脂組成物の製造方法である。
本発明の樹脂組成物の製造方法は、前記本発明の押出機を用いるため、樹脂組成物を押し出しする際に本来なら押出機用ダイの吐出孔の周囲にメヤニが発生するような樹脂組成物であっても、メヤニの成長を抑制できるため有用である。例えば、樹脂がポリアセタール樹脂であり、添加剤が、主鎖がポリエチレンであり、側鎖がアクリロニトリル−スチレン共重合体であるグラフト共重合体である樹脂組成物の場合、メヤニが発生することがあり、そのような樹脂組成物の押し出しに際しメヤニに起因する問題を解消することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡単な構造により吐出孔付近の付着物の成長を抑制しうる押出機用ダイ、その押出機用ダイを用いた押出機、及びその押出機を用いた樹脂組成物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】押出機により押し出されたストランドが、ウォーターバスを経てカッティングされるまでの様子を示す概念図である。
図2】本実施形態の押出機用ダイの斜視図である。
図3図2に示す押出機用ダイの正面図である。
図4図2に示す押出機用ダイの側面図である。
図5】本実施形態の押出機用ダイにより樹脂を押し出した際の様子を部分的に示す正面図である。
図6】本実施形態の押出機用ダイの別の形態を示す正面図である。
図7】本実施形態の押出機用ダイの別の形態を示す正面図である。
図8】比較例2で用いた押出機用ダイの(a)正面図、(b)側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<押出機用ダイ>
本実施形態の押出機用ダイは、溶融樹脂がストランドの形態で吐出する1又は複数の吐出孔を有する吐出面と、吐出面から垂直方向に突出する1又は複数の突出部と、を備え、突出部の根本部分の一部が、各吐出孔の外周上部に接していることを特徴としている。吐出孔の外周上部とは、吐出孔の外周の最も上側に位置する部位のみならず、その近傍をも含む。すなわち、後述するように、メヤニが略U字状となり、かつ、成長したメヤニが脱落するのであれば、必ずしも突出部は吐出孔の外周の最上部に形成される必要はない。より具体的には、最上部を12時の位置としたとき、突出部と吐出孔が接する位置は11〜13時の範囲の位置とすることができる。
【0015】
以下にまず、本実施形態の押出機用ダイが使用される押出機及びその周辺の機器の一例について説明する。図1は、押出機10により押し出され、押出機用ダイ12から吐出した樹脂組成物からなるストランド40が、冷却用の水が収容されたウォーターバス30を経てカッター32によりカッティングされてペレット42が作製される様子を概念的に示している。つまり、ストランド40は、押出機10から押し出された後、ウォーターバス30に投入されて冷却され、その後、カッター32に搬送され所定の長さにカッティングされてペレット42となる。本実施形態の押出機用ダイ12は、図1に示すような押出成形のプロセスに用いられる押出機10の樹脂の吐出口に装着されるものである。
【0016】
図2図4は、本実施形態の押出機用ダイ12の一例を示している。押出機用ダイ12は、押し出された樹脂組成物がストランドの形態で吐出する複数の吐出孔18を有する吐出面14と、吐出面14から垂直方向に突出する突出部16とを有する。吐出孔18は、図4に示すように溶融樹脂の流路20に連通しており、押出機から押し出された溶融樹脂は流路20を通過して吐出孔18から吐出する。また、図2図4においては吐出孔18の形状は円形としているが、楕円形、長円形など、変形した円形であってもよい。もっとも、吐出孔18の形状は、吐出するストランドの断面形状が所望の形状となるように設定される。
【0017】
突出部16は、その根本部分が吐出孔18それぞれの外周上部に接するように形成されている(図3参照)。より具体的には、押出機用ダイ12が押出機に装着されたとき、吐出孔18の鉛直方向における上部において突出部16の根本部分が接している。つまり、吐出孔18の外周上部とは、押出機用ダイ12が押出機に装着された場合において、吐出孔18の外周の上側に位置する部位である。そして、突出部16の根本部分が吐出孔18の外周上部に接しているのであるから、吐出孔18の外周上部において突出部16との段差は生じていない(図4参照)。つまり、流路20を流れる溶融樹脂が吐出孔18から吐出する際、突出部16は干渉しない。
なお、本実施形態においては、突出部16の根本部分の一部が、各吐出孔18の外周上部に接しているのであるが、換言すると、吐出面14及び突出部16の交線が吐出孔18の外周上部に接している。
【0018】
本実施形態の押出機用ダイ12を用い、樹脂組成物を吐出孔18から吐出する際において、吐出孔18の周囲にメヤニが生ずる場合であっても、そのメヤニはリング状とはならない。これは、メヤニがリング状に成長しようとしても、吐出孔18の外周上部に接する突出部16がその成長を阻むからである。そして、吐出孔18の外周上部以外の部分においてはメヤニが成長する。そのメヤニは、図5に示すように上部が欠落した略U字状のメヤニ44のようになる。略U字状のメヤニ44は上部で欠落しており、一体となっていないため、全周にわたり欠落した部分がないリング状のメヤニよりも鉛直方向下方への脱落に対する保持力が弱いと考えられる。そのため、略U字状のメヤニ44は成長とともに下側部分が重くなるにつれてやがて鉛直方向下方に脱落することとなる。従って、ストランドにメヤニが付着して最終製品(ペレット)に混入することが低減される。また、リング状のメヤニは成形機用ダイの吐出面から離脱する際にストランドに絡まり、ストランドが切断される原因となるが、略U字状のメヤニ44は下方に脱落しやすいため、ストランドに絡まりにくくストランドの切断が抑えられる。
【0019】
吐出孔18から吐出した樹脂が突出部16の下面と緩衝しないようにするため、突出部16の吐出面14からの突出方向は流路20の方向と平行、又は上側に傾斜するように設けることが好ましい。
【0020】
吐出孔18の直径は、例えば2.0〜7.0mmである。また、突出部16の吐出面14から突出する突出長さは、例えば5〜20mmである。
【0021】
本実施形態の押出機用ダイの材料としては、特に制限はないが、例えば、ステンレス、超硬合金などの金属を用いることができる。また、本実施形態の押出機用ダイの製法としては、突出部を形成することを除き特に制限はなく、公知の押出機用ダイと同様に製造することができる。
【0022】
次いで、本実施形態の押出機用ダイの変形例を2例示す。図2図4に示す形態では、吐出孔18は吐出面14において一直線上に配列し、突出部16が吐出孔18の配列方向と平行に一体に形成されている形態を示した。本実施形態はそのような形態に限定されることはなく、例えば、図6図7に示すように、それぞれの吐出孔18に対して突出部16A、16Bを複数形成してもよい。図6における突出部16Aは、正面視で矩形状の突出部であり、同様に図7における突出部16Bは円弧状の突出部である。いずれの形態においても吐出孔18の外周上部において突出部16A、16Bの根本部分が接した状態となっている。従って、図6及び図7の形態においても、図2図4に示す形態と同様の効果を奏する。なお、図7においては、突出部16Bは、円弧の外側が上向きとなるように設けられているが、その逆、すなわち、円弧の外側が下向きとなるように設けられてもよい。そのような突出部であっても、その根本部分が吐出孔18の外周上部と接するように設けることにより図7に示す形態と同等の効果を奏する。
【0023】
図6に示す突出部16Aの幅(水平方向)は、吐出孔18の直径以上の長さとすることが好ましい。このように設定すると、略U字状のメヤニの上部において欠落した部分が増し、略U字状のメヤニが脱落しやすくなるためである。
また、図7に示す円弧状の突出部16Bは、吐出孔18の円周に沿った円弧であると、吐出孔18から吐出するストランドが突出部16Bの下面に引っかかり、安定した押し出しができなくなる傾向にある(比較例2参照)。そこで、突出部16Bの円弧の曲率半径は、吐出孔18の半径よりも大きくし、吐出孔18の外周と接する部分が少なくなるようにすることが好ましい。
【0024】
以上は、吐出面に複数の吐出孔を有する形態を示したが、吐出孔は1つであってもよい。その場合、その吐出孔に接する突出部も当然に1つである。
【0025】
<押出機>
本実施形態の押出機は、以上の本実施形態の押出機用ダイが装着されていることを特徴としている。本実施形態の押出機としては押出スクリューを有する押出機であれば特に限定はなく、単軸押出機、異方向二軸押出機、同方向二軸押出機等を挙げることができる。そして、本実施形態の押出機は、上述の本実施形態の押出機用ダイが装着されるため、当該押出機用ダイの吐出孔付近のメヤニの成長を抑制することができる。そのため、押し出しの際にメヤニがストランドから脱落しやすくなり、ひいてはメヤニが最終製品に混入することや、メヤニに起因するストランドの切断を低減することができる。
【0026】
<樹脂組成物の製造方法>
本実施形態の樹脂組成物の製造方法は、少なくとも樹脂及び添加剤を、前記本実施形態の押出機に投入して、押出機用ダイから吐出させて樹脂組成物を得ることを特徴としている。本実施形態の樹脂組成物の製造方法において使用される樹脂には特に制限はなく、汎用樹脂でも、エンジニアリング樹脂でもよい。また、使用される添加剤においても制限はなく、各種安定剤、各種機能付与剤、各種物性強化剤等の使用が可能である。本実施形態の製造方法は、特にリング状メヤニを発生しやすい樹脂組成物の製造に有効である。
【0027】
例えば、少なくとも、ポリアセタール樹脂と、主鎖がポリエチレンであり、側鎖がアクリロニトリル−スチレン共重合体であるグラフト共重合体とを、上述の本実施形態の押出機に投入して、押出機用ダイから吐出させてポリアセタール樹脂組成物を得ることができる。このような樹脂組成物を得る際に押出機により押し出しをすると、当該グラフト共重合体を由来とするメヤニが押出機用ダイの吐出孔の周囲に発生しやすい傾向にある。そこで、本実施形態の押出機を用いて押し出しをすると、上述の本実施形態の押出機用ダイにより、メヤニが低減され、最終製品へのメヤニの混入や、ストランドの切断を抑制することができる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0029】
[実施例1]
まず、図2図4に示す形態の押出機用ダイであって、直径4.0mmの円形の吐出孔を有し、吐出面からの突出長さが10mmの突出部を有するものを準備した。次いで、この押出機用ダイを、二軸押出機(日本製鋼所製TEX65)に装着した。
次に、ポリアセタール樹脂(トリオキサン96.7質量%と1,3−ジオキソラン3.3質量%とを共重合させてなるポリアセタール共重合体(メルトインデックス(190℃,荷重2160gで測定):2.5g/10min))100質量部と、主鎖がポリエチレンであり、側鎖がアクリロニトリル−スチレン共重合体であるグラフト共重合体7質量部と、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(製品名:Irganox 1010,BASFジャパン社製)0.5質量部とを、上記二軸押出機に投入し、バレル設定温度:200℃、スクリュー回転数:280rpm、押出量:350kg/hにて押し出しを行った。また、押し出されたストランドは、図1に示すように、ウォーターバス30を経てカッター32に搬送されるようにした。
【0030】
[評価]
1.メヤニの成長
樹脂組成物の押し出し開始から、押出機用ダイの吐出孔付近においてメヤニの成長を目視評価した。メヤニが成長途中で吐出孔付近から脱落した場合を○、メヤニが吐出孔付近を離脱してストランドに絡まった場合を×として評価した。評価結果を表1に示す。
【0031】
2.ストランドの切断
樹脂組成物の押し出し処理を60時間続行し、ストランドが切断される回数を計数した。また、1時間当たりのストランドの切断回数を算出した。それらの結果を表1に示す。
【0032】
[比較例1]
突出部のない押出機用ダイを用いたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物の押し出しを行った。そして、実施例1と同様に評価した。評価結果を表1に示す。
【0033】
[比較例2]
押出機用ダイとして、図8に示す押出機用ダイを用いたこと実施例1と同様にして樹脂組成物の押し出しを行った。そして、実施例1と同様に評価した。評価結果を表1に示す。なお、図8に示す押出機用ダイは、図2図3に示すように突出部16の根本部分が吐出孔18に接するのではなく、突出部16の根本部分を吐出孔18の上部にまで延在させ、突出部16の一部を吐出孔18の外周と一致するようにくり抜いたものである。また、本比較例においては、吐出孔18から吐出直後に膨張したストランドが突出部16のくり抜き部分に引っかかり、安定した押し出しができなかった。
【0034】
[比較例3]
突出部の根本部分が吐出孔の外周最下部に接するように設けた押出機用ダイを用いたこと以外は実施例1と同様にして押し出しを行った。そして、実施例1と同様に評価した。評価結果を表1に示す。なお、本比較例においては、ストランドが下部に設けられた突出部に引っかかり、切断されるという事態が発生した。
【0035】
【表1】
【0036】
表1より、実施例1においては、メヤニの成長が抑制され、ストランドの切断がなかったことが分かる。特に、60時間稼働してもストランドの切断が生じなかったという、非常に優れた結果であった。これに対して、比較例1においては、メヤニの発生、成長、吐出面からの離脱を繰り返し、ストランドの切断は毎時約2回発生という実用上問題となるレベルであった。比較例2及び3においては、ストランドが押出機用ダイの突出部に引っかかり、継続的な押し出しは不可能であった。
【符号の説明】
【0037】
10 押出機
12 押出機用ダイ
14 吐出面
16 突出部
18 吐出孔
20 流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8