特許第6943901号(P6943901)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6943901
(24)【登録日】2021年9月13日
(45)【発行日】2021年10月6日
(54)【発明の名称】端子付き電線の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/18 20060101AFI20210927BHJP
   H01R 4/62 20060101ALI20210927BHJP
   H01R 43/048 20060101ALI20210927BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20210927BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20210927BHJP
【FI】
   H01R4/18 A
   H01R4/62 A
   H01R43/048 Z
   H01B7/00 306
   H01B13/00 521
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-10549(P2019-10549)
(22)【出願日】2019年1月24日
(65)【公開番号】特開2020-119777(P2020-119777A)
(43)【公開日】2020年8月6日
【審査請求日】2020年5月19日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】達川 永吾
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 健作
(72)【発明者】
【氏名】今村 隆寛
【審査官】 山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−087270(JP,A)
【文献】 国際公開第2018/087944(WO,A1)
【文献】 特開2010−003467(JP,A)
【文献】 特開2016−045984(JP,A)
【文献】 特開2003−086037(JP,A)
【文献】 特開2016−177956(JP,A)
【文献】 特開2013−054835(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0285176(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/18
H01R 4/62
H01R 43/048
H01B 7/00
H01B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体部および前記導体部を被覆する被覆部を有する被覆電線が、前記被覆電線の端部において露出した前記導体部に圧着接続する圧着部を有する圧着端子に接続された端子付き電線の製造方法であって、
前記被覆電線は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる前記導体部の扁平率が8以上18以下の扁平撚線であり、
前記被覆電線の端部における前記導体部の扁平率を1以上3以下に低下させる加工を行う扁平率調整工程と、
前記扁平率調整工程の後に、前記導体部における扁平率が低下された部分において前記圧着端子と圧着接続して、前記導体部の圧縮率を40%以上60%以下に加工する端子圧着工程と、を含み、
前記圧着部における前記導体部の扁平率を、前記被覆された部分の導体部の扁平率より小さい、2.5以上6以下にし、
前記扁平率調整工程において、前記導体部に対して順撚加工または逆撚加工を行うことにより、前記導体部の扁平率を低下させる
ことを特徴とする端子付き電線の製造方法。
【請求項2】
導体部および前記導体部を被覆する被覆部を有する被覆電線が、前記被覆電線の端部において露出した前記導体部に圧着接続する圧着部を有する圧着端子に接続された端子付き電線の製造方法であって、
前記被覆電線は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる前記導体部の扁平率が8以上18以下の扁平撚線であり、
前記被覆電線の端部における前記導体部の扁平率を1以上3以下に低下させる加工を行う扁平率調整工程と、
前記扁平率調整工程の後に、前記導体部における扁平率が低下された部分において前記圧着端子と圧着接続して、前記導体部の圧縮率を40%以上60%以下に加工する端子圧着工程と、を含み、
前記圧着部における前記導体部の扁平率を、前記被覆された部分の導体部の扁平率より小さい、2.5以上6以下にし、
前記扁平率調整工程において、前記導体部に対して前記導体部の幅方向かつ内側に向かって外力を作用させることによって、前記導体部の扁平率を低下させる
ことを特徴とする端子付き電線の製造方法。
【請求項3】
前記圧着部における空隙率を10%以下にする
ことを特徴とする請求項1または2に記載の端子付き電線の製造方法。
【請求項4】
前記被覆電線の断面積は、20mm2以上60mm2以下である
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の端子付き電線の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子付き電線およびその製造方法に関し、特に自動車等に用いられる端子付き電線に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の多機能化および高性能化に伴い、自動車に様々な電装機器が搭載されてきている。そのため、自動車の電気回路は複雑化し、各電装機器に電力や電気信号を安定的に供給することが必要不可欠になっている。様々な電気機器が搭載された車両には、ワイヤーハーネス等の配索体が配索されている。配索体は、例えば複数本の被覆電線を束ねることによって形成されたものである。自動車内では、配索体が電気機器に接続されたり、配索体同士がコネクタを介して接続されたりすることによって、電気機器に電力や電気信号が供給される。さらに、配索体同士を接続するコネクタの内部に設けられた圧着端子に、被覆電線が圧着接続されて構成された端子付き電線が提案されている。
【0003】
また、電気自動車(EV:Electric Vehicle)自動車やハイブリッド自動車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)における、バッテリ間などの高電圧部分やその他の低電圧部分などにおいて、バッテリの電力を様々な電気機器に供給するための電源ケーブルには、比較的太線の電線が用いられる。例えば特許文献1には、自動車の車体に沿って延設された板状の金属配線が開示されている。このような板状の導体は放熱性も高く、大電力を流すのに好適である。ところが、このような電線には大電流が流れて発熱が大きいことから、放熱性の向上も要求される。さらに、配索体を自動車に搭載する場合には、燃費の向上のために軽量化も要求される。
【0004】
そこで、軽量化と放熱性の向上のための対策として、導体径が小さくても表面積が大きいことから放熱性に優れた扁平撚線が用いられることがある(特許文献2参照)。自動車の車体に沿って延設される配索体は、配索の際に曲げられる場合が多いが、特許文献2に記載されたような扁平撚線は、屈曲性が高いことから、車体への配索に好適に対応できるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017−95094号公報
【特許文献2】国際公開第2018/087944号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載されたような扁平撚線の端部を圧着端子に圧着接続する場合、扁平撚線の短辺側は圧縮されやすい一方、長辺側は圧縮されにくい。そのため、圧縮が不均一になることによって、電気的特性が悪くなり圧着端子と電線との間の導通が不十分になる可能性があった。この場合、扁平撚線に対応した専用の圧着端子を用いたり、専用の圧着端子を扁平撚線に圧着させるための専用の設備を用いたりする方法も考えられるが、高コスト化するという問題がある。
【0007】
そこで、既存の圧着端子を利用することが望まれるが、既存の圧着端子に対して扁平撚線を圧着させる従来の圧着方法では、撚線と圧着端子の導線圧着部との間の接触抵抗が高抵抗化したり、引張強度が不十分になったりする可能性があった。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その目的は、抵抗の高抵抗化を抑制できるとともに引張強度を確保できる端子付き電線およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、上記目的を達成するために、本発明に係る端子付き電線は、導体部および前記導体部を被覆する被覆部を有する被覆電線が、前記被覆電線の端部において露出した前記導体部に圧着接続する圧着部を有する圧着端子に接続された端子付き電線であって、前記被覆電線は、前記導体部の扁平率が8以上18以下の扁平撚線であり、前記圧着部における前記導体部の扁平率が、前記被覆された部分の導体部の扁平率より小さいことを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様に係る端子付き電線は、上記の発明において、前記導体部は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなり、前記圧着部における前記導体部の圧縮率が40%以上60%以下であることを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様に係る端子付き電線は、上記の発明において、前記圧着部における扁平率が2.5以上6以下であることを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様に係る端子付き電線は、上記の発明において、前記圧着部における空隙率は、10%以下であることを特徴とする。
【0013】
本発明の一態様に係る端子付き電線は、上記の発明において、前記被覆電線の断面積は、20mm2以上60mm2以下であることを特徴とする。
【0014】
本発明の一態様に係る端子付き電線の製造方法は、導体部および前記導体部を被覆する被覆部を有する被覆電線が、前記被覆電線の端部において露出した前記導体部に圧着接続する圧着部を有する圧着端子に接続された端子付き電線の製造方法であって、前記被覆電線は、扁平率が8以上18以下の扁平撚線であり、前記被覆電線の端部における前記導体部の扁平率を低下させる加工を行う扁平率調整工程と、前記扁平率調整工程の後に、前記導体部における扁平率が低下された部分において前記圧着端子と圧着接続する端子圧着工程と、を含むことを特徴とする。
【0015】
本発明の一態様に係る端子付き電線の製造方法は、上記の発明において、前記扁平率調整工程において、前記導体部の扁平率を1以上3以下に加工することを特徴とする。
【0016】
本発明の一態様に係る端子付き電線の製造方法は、上記の発明において、前記導体部は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなり、前記端子圧着工程において、前記導体部の圧縮率を40%以上60%以下に加工することを特徴とする。
【0017】
本発明の一態様に係る端子付き電線の製造方法は、上記の発明において、前記扁平率調整工程において、前記導体部に対して順撚加工または逆撚加工を行うことにより、前記導体部の扁平率を低下させることを特徴とする。
【0018】
本発明の一態様に係る端子付き電線の製造方法は、上記の発明において、前記扁平率調整工程において、前記導体部に対して前記導体部の幅方向かつ内側に向かって外力を作用させることによって、前記導体部の扁平率を低下させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る端子付き電線およびその製造方法によれば、抵抗の高抵抗化を抑制できるとともに引張強度を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の一実施形態による端子付き電線における圧着端子と被覆電線との概略構成を示す模式図である。
図2図2は、本発明の一実施形態における端部が露出された被覆電線の模式的な斜視図である。
図3図3は、本発明の一実施形態による被覆電線の導体の模式的な断面図である。
図4図4は、本発明の一実施形態による端子付き電線の導体圧着部における断面図である。
図5図5は、本発明の一実施形態による端子付き電線の製造方法を説明するためのフローチャートである。
図6図6は、順撚加工を説明するための導体の模式図である。
図7図7は、逆撚加工を説明するための導体の模式図である。
図8図8は、短辺圧縮加工を説明するための導体の模式的な断面図である。
図9図9は、従来技術による、導体に対して扁平率調整工程を行わずに導体圧着部に圧着させた場合の端子付き電線の導体圧着部における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施形態の全図においては、同一または対応する部分には同一の符号を付す。また、本発明は以下に説明する一実施形態によって限定されるものではない。
【0022】
まず、本発明の一実施形態に係る端子付き電線100について説明する前に、図1を参照して、圧着端子および被覆電線の概略構成について説明する。被覆電線10は、長手方向Xに延伸する導体部としての扁平形状の導体11、および導体11の外周に形成された被覆部としての絶縁性の被覆12とを有する。被覆電線10は、先端部において導体11の外周の被覆12が除去されて、所定の長さの導体11が露出している。被覆電線10は、長手方向Xにおいて、前方側が先端側であり、後方側が基端側である。
【0023】
図2は、端部が露出された被覆電線の模式的な斜視図であり、図3は、導体11の模式的な断面図である。導体11は、複数の素線を撚って構成した芯線であって、本一実施形態においては素線の数が19であることから、導体11は19芯の芯線とも呼ばれる。各素線は、アルミニウム素線であり、例えば純度の高いアルミニウムやアルミニウム合金からなる。本一実施形態において被覆電線10は、断面積が例えば20mm2(20sq)以上60mm2(60sq)以下の、例えば25sqの電線である。被覆12は、絶縁性を有する例えばポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンやノンハロゲン材料などの樹脂からなる。被覆12を構成する樹脂には、可塑剤などの添加材が添加されていてもよい。
【0024】
また、図3に示すように、導体11の平均の高さAおよび幅Bとから、それぞれの素線間が密であることを考慮すると、導体11の扁平率は以下の(1)式で定義できる。なお、(1)式における断面積は導体11の長手方向に垂直な断面の断面積である。
導体11の扁平率=B/A=B2/断面積 …(1)
これにより、導体11は扁平率が高いほどより扁平であることになる。本一実施形態による被覆電線10は、特段の処理を施さない場合、導体11の扁平率が8以上18以下の扁平撚線である。
【0025】
圧着接続前の圧着端子20は、オープンバレル形式の端子である。圧着端子20は、表面に錫メッキ(Snメッキ)処理が施された黄銅などの銅合金からなる板材が加工されて形成される。圧着端子20は、先端側である長手方向Xの前方から基端側である後方に向かって順次接続された、端子接続部21、トランジション部22、導体圧着部23、および被覆圧着部24を有する。
【0026】
端子接続部21は、本実施形態では雌型圧着端子の接続構造からなり、先端側である長手方向Xの前方から、基端側である後方に向かって延伸し、雄型圧着端子が有する挿入タブが挿入される中空四角柱体である。本一実施形態においては、四角柱体の対向する2面は幅方向Yに平行であり、他の対向する2面は高さ方向Zに平行である。なお、本一実施形態では端子接続部21は雌型圧着端子の接続構造であるが、接続構造はこれに限定されず、雄型圧着端子や丸型圧着端子などの他の形状の接続構造であってもよい。
【0027】
トランジション部22は、端子接続部21と導体圧着部23とを接続する部分である。導体圧着部23は、YZ平面における断面が、高さ方向Zにおける上側に開口しているとともに下側に底部が位置するU字形状であって、かつ長手方向Xに延伸した形状を有する。被覆圧着部24も同様に、YZ平面における断面が、高さ方向Zにおける上側に開口しているとともに下側に底部が位置するU字形状であり、かつ長手方向Xに延在した形状を有する。導体圧着部23と被覆圧着部24とは下側で連結している。なお、本明細書において、高さ方向Zにおける上側および下側は、構成要素間の相対的な位置関係を説明するために便宜的に向きを特定したものである。
【0028】
導体圧着部23の表面23aには、複数のセレーション23bが形成されている。本一実施形態におけるセレーション23bの本数は3本であるが、本数は3本に限定されるものではない。
【0029】
図4は、本一実施形態による端子付き電線100の導体圧着部23における断面図を示す。図4に示すように、本一実施形態による端子付き電線100の導体圧着部23の部分においては、導体11が導体圧着部23において圧着接続されている。この場合、被覆電線10の導体11は、上述した図2および図3に示す導体11に比して扁平率が低下した状態になっている。換言すると、導体圧着部23における導体11の扁平率は、被覆電線10において被覆12に被覆された部分の導体11の扁平率よりも小さくなるように構成されている。
【0030】
(端子付き電線の製造方法)
次に、上述した、導体圧着部23において導体11の扁平率が低下した状態の端子付き電線の製造方法について説明する。図5は、本一実施形態による端子付き電線の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【0031】
図5に示すように、端子付き電線の製造方法においては、ステップST1において、扁平率調整工程を行う。すなわち、被覆電線10の先端部において、導体11を露出させた状態にした後、導体11の扁平率を低下させる加工を行う。扁平率調整工程としては、具体的には、順撚加工、逆撚加工、および短辺圧縮加工などがある。
【0032】
図6は、順撚加工を説明するための模式図である。図6(a)は、導体11の短辺側から見た図である。図6(a)に示すように、順撚加工は、複数の素線が撚られた導体11に対して、現状の撚りの方向に対してさらに巻き締める加工である。撚りの方向としては、S巻き方向とZ巻き方向がある。すなわち、順撚加工は、導体11の巻き方向がS巻き方向の場合にはS巻き方向に沿ってさらに巻き締め、Z巻き方向の場合にはZ巻き方向に沿ってさらに巻き締める加工である。順撚加工によって、図6(b)に示すように、導体11の短辺側の厚さが増加して、導体11の扁平率を低下させることができ、導体11の断面形状を、円形状や正方形状に近づけることができる。
【0033】
図7は、逆撚加工を説明するための模式図である。図7(a)は、導体11の短辺側から見た図である。図7(a)に示すように、逆撚加工は、複数の素線が撚られた導体11に対して、現状の撚りの方向に対して反対側に撚りを戻し、さらに巻き締める加工である。すなわち、逆撚加工は、導体11の巻き方向がS巻き方向の場合にはZ巻き方向に沿って撚りを戻して巻き締め、Z巻き方向の場合にはS巻き方向に沿って撚りを戻して巻き締める加工である。逆撚加工によって、図7(b)に示すように、導体11の短辺側の厚さが増加して、導体11の扁平率を低下させることができ、導体11の断面形状を、円形状や正方形状に近づけることができる。
【0034】
図8は、短辺圧縮加工を説明するための模式的な断面図である。図8に示すように、図2に示す導体11の短辺の側(図8中、左右側)から導体11の内方向に向かって外力を作用させる。これにより、導体11の素線の束が図8に示すように押しつぶされて、導体11の扁平率を低下させることができる。短辺圧縮加工によって、導体11の扁平率を下げることができ、導体11の断面形状を、円形状や正方形状に近づけることができる。
【0035】
その後、図5に示すステップST2に移行して、端子圧着工程を行う。すなわち、まず、ステップST1において被覆電線10の先端において導体11の扁平率が低下した状態で、露出した導体11の先端部が導体圧着部23の底部に収容される。この際、被覆12の先端側の一部が被覆圧着部24の底部に収容されるように、被覆電線10と圧着端子20とを重ね合わせる。続いて、圧着端子20の外周に圧力を加えて、圧着端子20を露出している導体11と被覆12の一部とに圧着接続する。これにより、圧着端子20は、導体圧着部23の表面23aが導体11と接触して導体11を包み込み、被覆圧着部24が被覆12の一部を包み込むように圧着接続される。したがって、導体圧着部23は導体11の外周に沿って接触して圧着される。また、被覆圧着部24は被覆12の外周に沿って接触して圧着される。以上により、端子付き電線100が完成する。
【0036】
(実施例1〜9、参考例1,2、および比較例1〜3)
次に、上述した一実施形態による端子付き電線の具体的な実施例、参考例、および実施例および参考例の効果を説明するための比較例について説明する。実施例、参考例、および比較例において用いられる端子付き電線は、圧着端子としてオープンバレル形式の圧着端子が用いられる。また、被覆電線10として、導体11がアルミニウムまたはアルミニウム合金からなり、断面積が25mm2(25sq)であって扁平率が8の被覆電線を用いる。実施例および参考例による端子付き電線は、上述した一実施形態による端子付き電線の製造方法に基づいて作製する。比較例による端子付き電線は、上述した扁平率調整工程を行わずに従来の製造方法に基づいて作製する。実施例、参考例、および比較例においては、端子付き電線の製造の際に、導体11の圧縮率が30〜70%の種々の圧縮率になるようにして、被覆電線10を圧着端子20に圧着させる。なお、圧縮率は、以下の(2)式で定義され、断面積は導体11の長手方向に垂直な断面の断面積である。実施例および参考例においては、扁平率調整工程である逆撚加工によって、導体11の扁平率を、1〜5の種々の扁平率になるように調整する。
圧縮率(%)=(圧縮されて減少した断面積)/(圧縮前の断面積)×100
={1−(圧縮後の断面積)/(圧縮前の断面積)}×100 …(2)
【0037】
以上のように製造された端子付き電線に対して、圧着後扁平率、空隙率、端子薄肉化率、抵抗上昇値、および引張強度を計測した。圧着後扁平率は、圧着端子20の導体圧着部23に圧着された後の導体11の扁平率である。空隙率は、導体圧着部23と導体11との間に生じる隙間の比率である。端子薄肉化率は、導体圧着部23の底部の薄肉化の比率である。抵抗上昇値は、詳細は後述するが、温度サイクル試験後の抵抗の上昇量である。引張強度は、端子付き電線に引張り力を加えた場合の耐引張強度である。
【0038】
空隙率は、以下の(3)式で定義される。
隙間(%)=圧着端子20の長手方向に垂直な導体圧着部23の断面における
空隙面積/端子内部面積×100 …(3)
【0039】
端子薄肉化率は、以下の(4)式で定義される。ここで、端子厚は、図4において導体圧着部23の底部の厚さ(端子厚C)である。
端子薄肉化率(%)=圧着後端子厚/圧着前端子厚 …(4)
【0040】
抵抗上昇値は、温度サイクル試験前の電気抵抗値に対する温度サイクル試験後の電気抵抗値の上昇量である。温度サイクル試験は、各端子付き電線に、環境温度140℃で15分、−40℃で15分を1サイクルとして240サイクルを行う環境下に置く試験とした。温度サイクル試験後、再び各端子付き電線の電気抵抗値を測定した。実施例1〜9、参考例1,2、および比較例1〜3の結果を表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
表1から、比較例1〜3においては、導体圧着部23における導体11の圧着後の扁平率が、圧着前の扁平率よりも大きいことが分かる。これは、導体11に対して扁平率調整工程を行っておらず、扁平撚線からなる被覆電線10の扁平な導体11を上下歯型で圧着することで、さらに扁平率が上がったためと考えられる。比較例1〜3においてはいずれも、抵抗上昇値(mΩ)が1mΩを超えていることが分かる。比較例1,2,3においてはそれぞれ、引張強度(N)が550N、600N、および650Nであり、いずれも引張強度が700N未満であることが分かる。特に比較例3においては、圧縮率が40%と低いことから導体11が導体圧着部23から抜けやすくなり、引張強度が低くなることが判明した。ここで、導体11の扁平率は、8以上18以下である。表1から、比較例1〜3においては、扁平撚線としては扁平率が比較的小さい値の8である被覆電線10であっても、端子付き電線とした場合の引張強度は低く、抵抗上昇値も大きいことが分かる。これにより、導体11の扁平率が8より大きく18以下の被覆電線10においてはさらに、引張強度が低くなり、抵抗上昇値が大きくなることが分かる。
【0043】
図9は、従来技術による、導体11に対して扁平率調整工程を行わずに導体圧着部23に圧着させた場合の端子付き電線の導体圧着部23の断面図である。表1および図9に示すように、比較例2,3による端子付き電線においては、大きな隙間が生じており、接続性が悪いことが分かる。さらに、隙間が大きいと隙間部分に水分が溜まって、圧着端子20や導体11に腐食などが生じる可能性がある。なお、表1に示す比較例1においては、生じた隙間は3%と小さいが、端子薄肉化率(%)が35%と薄くなり、引張強度(N)も550Nと弱くなっていることが分かる。これは、扁平形状の導体11に対して圧縮率を60%としたことによって、扁平形状の導体11がさらに薄くなって強度が低下したり、圧着端子20の基材の強度が低下したりすることに起因すると考えられる。
【0044】
これに対し、表1から、実施例1〜9および参考例1,2においてはいずれも、圧縮率を30〜70%としても、抵抗上昇値(mΩ)が車載の際に必要な1mΩ以下に抑制されていることが分かる。本発明者の知見によれば、導体11の変形がなかったり隙間が大きかったりする圧着不足や、導体圧着部23に腐食が生じていた場合、抵抗上昇値が1mΩを超えるため、抵抗上昇値(mΩ)は、1mΩ以下が好ましい。さらに、引張強度(N)に関しても、車載の際に必要な700N以上を確保可能であることが分かる。本発明者の知見によれば、引張強度が700N未満であると、圧着不足で導体11が導体圧着部23に圧着される部分が半分以下になると考えられるため、引張強度は700N以上が好ましい。したがって、扁平率調整工程を実行して、導体圧着部23における導体11の扁平率を被覆された部分の導体11の扁平率より小さくすることによって、扁平率調整工程を行わない端子付き電線に比して、引張強度を高くでき、抵抗上昇値を低減できることが分かる。
【0045】
次に、表1の実施例1〜9と参考例1,2とを比較する。実施例1〜9および参考例1,2においては、扁平率調整工程によって導体11の扁平率を1以上5以下の範囲で種々の扁平率に変えている。実施例1〜9においては、導体11の圧縮率を、参考例1,2における圧縮率に比して限定して、30%より大きく70%未満、好適には40%以上60%以下にする。また、実施例1〜9においては、参考例1,2に比して導体11の圧縮率を限定することによって、導体11の圧着後扁平率を2より大きく7未満、好適には2.5以上6以下にする。表1から、実施例1〜9による端子付き電線においては、参考例1に比して、端子付き電線の導体圧着部23の内部に生じる隙間を低減できることが分かる。また、実施例1〜9の場合は、参考例2に比して、圧着端子20の薄肉化を抑制できることが分かる。
【0046】
次に、表1の実施例1〜6と実施例7〜9とを比較する。実施例1〜9においては、端子圧着工程によって圧縮率を40%以上60%以下の範囲で種々の圧着率に変えている。実施例1〜6においては、導体11の調整後扁平率を、実施例7〜9における調整後扁平率に比して限定して、1以上5未満、好適には1以上3以下にする。その上で、実施例1〜6による端子付き電線においては、導体11の圧着後扁平率を2より大きく7未満、好適には2.5以上6以下にする。表1から、実施例1〜6による端子付き電線においては、実施例8,9に比して、導体圧着部23の内部に生じる隙間を低減できることが分かる。また、実施例1〜6による端子付き電線においては、実施例8,9に比して、抵抗上昇値の増加を抑制できることが分かる。さらに、実施例1〜6の場合は、実施例7〜9に比して、端子付き電線における引張強度を、700〜900Nより大きく、1000N以上にできることが分かる。
【0047】
また、本発明者が、導体11の扁平率が8より大きく18以下の被覆電線10についても比較例1〜3実施例1〜9、および参考例1,2と同様の計測を行ったところ、上述した表1と同様の結果が得られることが確認された。さらに、導体11の断面積が20mm2(20sq)以上60mm2(60sq)以下の被覆電線10についても比較例1〜3実施例1〜9、および参考例1,2と同様の計測を行ったところ、上述した表1と同様の結果が得られることが確認された。
【0048】
以上説明した本発明の一実施形態によれば、扁平率が8〜18の扁平撚線からなる被覆電線10の導体11に対して扁平率調整工程を行って、端部において露出した導体11の扁平率を低下させた後に、圧着端子に圧着させている。これにより、作製される端子付き電線における抵抗の高抵抗化を抑制できるとともに引張強度を確保することが可能になる。また、圧着時における導体11の圧着率を限定することにより、端子薄肉化を抑制できる。さらに、圧着前の導体11の扁平率をより低い扁平率にして、圧着後の導体11の扁平率をより低い扁平率にすることによって、導体圧着部23の内部に生じる隙間を低減でき、端子付き電線の内部への浸水を抑制して、腐食などの発生を抑制できる。
【0049】
以上、本発明の一実施形態について具体的に説明したが、本発明は、上述の一実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。例えば、上述の一実施形態において挙げた数値はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる数値を用いてもよい。
【0050】
上述の一実施形態においては、圧着端子としてオープンバレル形式の圧着端子を用いたが、クローズドバレル型の圧着端子(α端子)を用いてもよい。
【符号の説明】
【0051】
10 被覆電線
11 導体
12 被覆
20 圧着端子
21 端子接続部
22 トランジション部
23 導体圧着部
23a 表面
23b セレーション
24 被覆圧着部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9